チャットモンチー こなそんフェス 2018 @アスティとくしま day2 7/22
- 2018/07/23
- 20:57
チャットモンチーの主催フェス、こなそんフェスの2日目。本当にこの日がチャットモンチーを見れる最後。前日にBase Ball Bearの小出が言っていたように、ライブが終わった後にどんな気持ちになるのだろうか。
この日は前日のチャットモンチー大阪支部のドラマーである小籔千豊に変わり、同じ吉本新喜劇の宇都宮まきがメインMCとしてチャットモンチーの2人とともに前説に登場。かなり天然である宇都宮まきは、小籔千豊に比べるとまだまだ無名な自身をこの位置に抜擢してくれたチャットモンチーの2人に感謝するとともに、チャットモンチーへの愛なら負けないという心意気をアピールしていた。
13:00~ Hump Back
この日のトップバッターは、JAPAN'S NEXTでduo music exchangeを入場規制にするなど、今急速に人気を拡大している、NINTH APOLLO所属のスリーピースガールズバンド、Hump Back。
チャットモンチーのトリビュートアルバムに「湯気」で参加したことでも話題になったが、ものすごく緊張しているのが伝わってくるような表情の3人がステージに登場すると、
「大阪から来たロックバンド、Hump Backです!」
とだけ林萌々子(ボーカル&ギター)が挨拶し、いきなりその「湯気」からスタートするという鮮やかな先制攻撃。林は間奏では早くもステージ前に出てきて、原曲のままではないソリッドなギターソロを弾く。原曲に忠実なようでいて、自身のエッセンスをちゃんと入れているのが、チャットモンチーの影響を受けてはいるが、そのままのバンドではないということをしっかり示している。
「チャットモンチーのことを話し出したら25分じゃ到底足りない!でもチャットモンチーにもらったものを見せるには充分な時間をもらったと思ってます!」
とチャットモンチーへの思いを叫び、バンドの位置を1段階上まで引き上げた最新シングル「拝啓、少年よ」でそのエモーションをさらに炸裂させていく。
「Hump Backはもともと高校生の時にチャットモンチーのコピーバンドとして始まって…」
と自分たちがバンドを始めたきっかけがチャットモンチーであることを語り始めた林はすぐに一目もはばからずに涙を流してしまう。
それはそうだ。ずっと憧れだった人たちの最後のライブに読んでもらって、こうしてステージに立っているのだ。他にチャットモンチーと関係性が深いバンドもたくさんいるのに、まだまだ有名ではないし、深い関係ではない自分たちを選んでくれた。その意味をわかっていれば、涙が出てくるのは当然だ。
「自分自身を信じろ!それができないならロックバンドを信じろ!私たちはチャットモンチーをずっと信じて生きてきた!」
と自分たちの生きる指針が常にチャットモンチーであったことを叫んだ頃には林の目からは涙は消え、バンドからも緊張は消えていた。
「短編小説」からはベースのぴかがぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏し、この瞬間を本当に楽しんでいるのが伝わってくる。
「さようならって言えそうにないなぁ!!!」
と「サラバ青春」のフレーズを力強く叫んだりと、完全にチャットモンチーの音楽が体の奥底にまで染みついているというか、チャットモンチーの音楽がこのバンドの土台になっている。だから一点の曇りも迷いもなく、こうして曲のフレーズが口から出てくるのである。
「チャットモンチーは私にとって青春のすべてだった。だからこれからは、私たちが誰かにとっての青春になります!」
と、チャットモンチーがずっと持ってきたバトンを自分たちが受け取ったことを堂々と宣言し、最後に演奏されたのはバンドを始めた時のみんなで音を鳴らす楽しさや衝動が音源からでも伝わってくる「月まで」で、最初で最後のチャットモンチーとの対バンを、溢れるくらいの愛を見せながらしっかりとやりきってみせた。
「音楽は誰かの影響を受けて始めて、そいつがまた誰かに影響を与えて続いていく」
これはリンキン・パークのチェスターが亡くなった時にDragon Ashのkjが口にした言葉だが、本当にその通りだ。チャットモンチーに影響を受けたHump Backがまた誰かに影響を与えていく。今中学生や高校生である女の子たちがこのバンドの音楽を聴いて楽器を手にする。そうやってチャットモンチーはいなくなっても、魂ははるか先の世代まで継承されていく。
で、このフェスの後で1番変わるのはこのHump Backだと思う。他にもっとチャットモンチーと深い関係を持つバンドがたくさんいる中で、このバンドを呼んだ。他にもスリーピースのガールズバンドはたくさんいる中でこのバンドを選んだのは、このバンドがスタイルではなくて、チャットモンチーの精神を受け継いでいるから。林の男勝りとも感じるようなギラついた負けん気は、確かにチャットモンチーも持っていたものだ。
何よりも、Hump Backはつい数年前まで、メンバーが全く固定できずに、林が1人だけでバンド名を背負って活動してきた。それはかつて橋本絵莉子がたどった道と全く同じである。だからチャットモンチーの2人は林がどれだけ厳しい道を歩いてきたのかをよくわかっているし、そうした歴史を持ったバンドになったのは決して偶然じゃない。なるべくしてなった、つまりは選ばれたのだ。かつてチャットモンチーがそうされた時のように。
1.湯気
2.拝啓、少年よ
3.短編小説
4.星丘公園
5.月まで
拝啓、少年よ
https://youtu.be/d6i4AtCxrDo
13:40~ 四星球
チャットモンチーと同じくこの徳島のバンドであり、メンバー同士が大学の同級生。コミックバンドを自認し、パンクバンドなどとの対バンのイメージが強いが、実はチャットモンチーと最も長い歴史を共有してきたバンドである。
「チャットモンチー、今まで四星球を全国に紹介してくれて本当にありがとう!チャットモンチーが完結するっていうことで、巣立ちの歌」
というアナウンスとともに「巣立ちの歌」がSEとして流れると、顔を緑色に塗り、すだちくんのコスプレをした4人がステージに登場。
「我々はホール向きのバンドではないですけれども!」
とライブハウスで生きてきたバンドだからこそのプライドを口にし、「妖怪泣き笑い」でスタートするのだが、振り付けを行わない人のリストバンドをハサミで切ろうとしたり、チャットモンチーの福岡の父親の顔写真を覆面のようにしたりと、書ききれないくらいにネタ満載だが、その中に
「チャットモンチーとは16年前から、お互いに鳴門教育大学の友達しか客がいないようなライブハウスで一緒にやってきました!」
というバンドの歴史を感じさせることを挟んでくるので、まさに泣き笑いしたくなってしまう。
新曲「言うてますけども」はなぜかサビ中に観客がステージに向かって「カッコいい!」という言葉を連呼しまくるというものなのだが、何があっても「言うてますけども」と言えば話題を変えたり、気持ちを切り替えることができるという意味では究極のポジティブソングである。北島が色々喋ったあとに「とか!」と言うと
「言うてますけども! 言うてますけども!」
とサビが始まるため、この日は多分10回くらいサビを演奏していた。
「僕らは昨日からずっとここに来てライブ見させてもらってるんですけど、一昨日もリハでここに来て。リハの合間に裏のケータリングでごはん食べようと思ったら、えっちゃんと一緒になって。いろんな店のケータリングが並んでるんだけど、この会場のアスティもケータリング出してくれてて、ポットに「アスティ」っていうシールが貼ってあったんだけど、えっちゃんがそのポットを押したら、
「うわ!お湯が出てきた!」
ってビックリしてて。えっちゃん、なんでお湯にそんなビックリしてんの?って聞いたら、
「アスティをアイスティーだと思った」
って言ってて(笑)」
という橋本の相変わらずの天然っぷりをうかがわせるエピソードを披露すると、その橋本絵莉子がステージに登場。
「チャットモンチーのこと、いじりすぎ!」
とちょっとムッとした表情の橋本に北島がアイスティーを差し出してやはり爆笑に変えると、四星球の曲に橋本がゲストボーカルで参加した「蛍の影」をデュエットバージョンで披露。チャットモンチーにも「惚たる蛍」という曲があるが、ギターのフレーズなども含めて、この曲はその「惚たる蛍」のオマージュ、リスペクトソングだろう。
「この曲を練習する時に四星球のスタジオ行ったらめちゃくちゃ静かで、スタジオ間違えたのかと思った(笑)
普段とステージでは違うんやで」
と橋本も四星球に反撃していたのはさすが。
「Mr.COSMO」では北島がライブハウスと全く変わらずにステージを降りて客席に突入し、観客の椅子の上を練り歩くというパフォーマンスを見せたが、さらには観客を席から解放して一緒に客席の通路を走り回り、UFOを呼ぶくだりの後には「飛び魚のバタフライ」よろしく、飛び魚(ダンボール製)を持った男たちが出現するのだが、その後に飛び魚を持って登場したのは、なんと福岡晃子の父親。スーツ着用で北島にマイクを向けられると、チャットモンチーのことではなく、四星球が9月に徳島で行う文化祭の宣伝をするという仕込みっぷり。
結局その後には福岡もステージに出てくるのだが、父親が出てくることは全く知らされていなかったらしく、
「もう自分でも感情がなんなのかわからん!」
とのこと。
そんな福岡の使い方をしたかと思いきや、
「みんなに一個だけ諦めて欲しいことがあるんです。それはみんなはチャットモンチーの1番のファンにはなれないっていうことなんです。なぜなら、チャットモンチーの1番のファンはあっこちゃんなんです。
大学に入学した次の日に、同じクラスだったあっこちゃんと「音楽が好き」っていう話をして。「どんなバンドが好きなの?」って聞いたら、
「チャットモンチーっていう同い年の徳島のバンドがいるんだけど、進学を機にボーカルの人だけになっちゃって。絶対に続けて欲しい、辞めて欲しくないから、私がベースをやることにした」
って言ってて。で、その関係性が今でも続いている。あっこちゃんはもうチャットモンチーになったから、自分のファンでもある。でも2年前にこのフェスに出させてもらった時に、打ち上げでえっちゃんと話したら、えっちゃんもあっこちゃんのファンなんです。それはきっとこれからも変わらない」
という、同級生だからこそ語れる2人の話で観客はもちろん、袖で聞いていた福岡もタオルで顔を抑えるくらいに号泣していた。四星球のライブは笑えるだけでなく、どこか泣けるようなところがある(それはライブバンドとしての熱い部分を持っているから)というのはライブを見たことがある人には周知の事実だが、まさかこんなにも泣かせるようなことを言うとは。
「でも、えっちゃんのお母さんは僕のファンです!(笑)」
とオチをつけるあたりはさすがだが。
そしてラストはチャットモンチーの武道館ワンマンで最後に演奏された「サラバ青春」でスクリーンに歌詞が映って、みんなが歌っていたのから着想を得た、「クラーク博士と僕」をチャットモンチーバージョンに歌詞を変えた「クラーク博士と僕とモンチー」というこの日限りの曲。テンポも原曲よりもはるかに落とし、
「14年前に自主制作CDを作ろうとPCでCDを焼きまくって、CDケースを買いにダイソーに行ったらどこも売り切れていた。最後の店に行ったら福岡晃子がCDケースを買い占めていた」
と、ともにまだ何者でもなかった時代のことを歌い、
「その時にチャットモンチーが作ってたCDのタイトルは「チャットモンチーになりたい」でした。腹の底ではそのタイトルを笑ってましたが、今はチャットモンチーになれたんだよね」
と2人に最後の言葉と、ダイソーで大量に買ってきたCDケースを送り、
「最後はみんなでジャンプして終わろう!」
と言って全員を座らせるが、ジャンプのリズムを叩くはずのモリスがステージからダッシュして袖に捌けていき、結局ジャンプできず、
「続きはまたいつか!」
と言ってステージから去って行った。
「最後は」
っていうのはきっと、バンドが終わる時のことだ。でも四星球はまだまだ終わらない。だから最後のジャンプをするのは今じゃない。そしてこれから四星球は自分たちが徳島という地元を背負って活動していくはずだ。
SE.巣立ちの歌
1.妖怪泣き笑い
2.クラーク博士と僕
3.言うてますけども
4.蛍の影 w/ 橋本絵莉子
5.Mr.COSMO w/ 福岡晃子親子
6.クラーク博士と僕とモンチー
蛍の影
https://youtu.be/F4LJndHi4fs
転換中にはこの日最初のお笑い芸人である、尼神インターの2人が登場。「チャットモンチー」もお題に取り入れた心理テストネタだが、全て誠子が「ブス」と呼ばれるというあまりにおなじみの展開。2人ともチャットモンチーが好きなんだろうな~というのは随所からわかったが。
15:05~ THE イナズマ戦隊
メンバー全員が出てきてサウンドチェックをしながら郷ひろみや西城秀樹という懐かしのヒット曲を演奏していた、THE イナズマ戦隊。そんな姿からは想像もできなかったが、前日に出演したフェスから徳島に向かう飛行機が欠航したために、会場に着いたのはなんと15分前だという。
そんな余裕のなさを最初から一切感じさせないあたりはさすがバンド結成21年目、もはや大ベテランの域に達してきているバンドである。
「関ジャニ∞から渋谷すばる君が脱退するっていうことで。この曲を歌えるのは俺たちしかいない!」
と自身が関ジャニ∞に提供した「ズッコケ男道」を日々ライブハウスに生きる男たちの賛歌として演奏すると、
「知らない人もいると思うけど、この曲は関ジャニ∞のカバーじゃなくて、俺たちの曲を関ジャニ∞のみんなが広めてくれたんです」
と、実に上中らしい、関ジャニ∞への感謝の告げ方。もしかしたら、この曲を関ジャニ∞が歌ってくれたことがこのバンドの存在をつなぎとめたかもしれない、と思うのは考えすぎだろうか。
しかしながら普段は小さいライブハウスを中心に活動しているとは思えないくらいに、このバンドはこの規模でのライブに慣れている感がすごい。それは上中がしょっちゅうカメラ目線で歌い、スクリーンを見ている後ろの方の席の観客の人にもしっかり自身の歌が伝わるようなパフォーマンスを見せているから。
最新曲「マイジェネレーション」での40代に突入しても未だに青春真っ只中であるという姿はバンドを続けていることの美しさを感じさせてくれるし、上中が小学校2年生の時に亡くなった父親の年齢を自身が超えたことを思って書いたという「33歳」は家族や大切な人の顔が脳裏に浮かばずにはいられない。短い時間で様々な人生賛歌を歌っている。
事務所の後輩であるチャットモンチーの2人のこれからの活動と人生へエールを送りつつ、それを曲として響かせたのが、15年ほど前、青春パンクブーム真っ只中の中で、パンクではないバンドなのにパンクであるかのような熱さを持ったこのバンドの存在をロックシーンに知らしめた曲である「応援歌」。
「オイ!!オマエ!!がんばれや!!
俺がそばで見ててやるから!!」
というサビのフレーズをマイクを通さずにこの広い会場に響かせた上中の姿は、これからも先輩としてチャットモンチーの2人の姿をずっと見ててやるから、という頼もしさに満ちていた。
リハ.GOLDFINGER'99
リハ.ギャランドゥ
1.喜びの歌
2.ズッコケ男道
3.バカ者よ大志を抱け
4.オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ
5.マイジェネレーション
6.33歳
7.応援歌
応援歌
https://youtu.be/ulspeT9J_KY
この転換中には、チャットモンチーの「Magical Fiction」のMVに出演していた、テツandトモの2人が登場。いきなり客席の中を走り回るテツも、歌声がさらに伸びやかになっているトモも、もはや40代後半とは思えないくらいに若々しい。
「チャットモンチーのなんでだろう」や「テツのアゴの上にマイクスタンドを乗せる」という芸で大歓声を浴びると、最後にはチャットモンチーの2人もステージに登場して「Magical Fiction」のMVのダンスを踊る。あまりに難しすぎて2人は全然踊れていなかったが。
大ブレイクを経て以降も変わらぬ姿も素晴らしいが、かつてNHKの「爆笑オンエアバトル」で今となってはあまりに豪華な芸人たちと並んでも全く負けなかったくらいに強かった姿を見ていたものとしては、この2人の姿を生で見れたのは本当に感慨深い。
16:30~ 森山直太朗
先にサポートメンバーたちがスタンバイしていて演奏を始めると、爽やかに走ってステージに登場し、なぜか最後方のあたりに向かって
「後で電話するから!」
的なジェスチャーを行い、楽曲やサウンドは非常に洗練されたポップなものであるのだが、早くもこれはただごとでは済まない感じに満ちている、森山直太朗。
曲を終え、森山直太朗が話し始めると、なぜか虫が飛ぶ音が会場に流れ始め、
「なんか、この会場、めちゃくちゃ虫が多いな!みなさん、頭上の虫を手で潰してください!」
と観客に頭上で手を叩かせ、それがいつの間にか手拍子になり、
「徳島のみなさん!引っかかりましたね!実はこの会場には虫なんかいないんです!みなさんに自然に手拍子をしてもらうための罠だったのです!」
とわかりきっていることをいたって堂々と口にすると、歌詞が信じられないくらいにシュールかつ、昭和のトレンディ歌手のような振り付けを交えて森山直太朗が歌う「よく虫が死んでいる」で、その一挙手一投足すべてで笑いを巻き起こすというエンターテイナーっぷりを見せつけたかと思いきや、いきなり「夏の終わり」という笑いの一切起こらない名曲で森山直太朗の歌の上手さに浸らせるので、もう何が起こるのか全く見当がつかない。
と思うとやはり美しいサウンドに
「さっきまで体の中にいたのに
出てきた途端に嫌われるなんて
やっぱりお前は うんこだな」
というとんでもない歌詞が乗る、リリース時にニュースになるくらいに波紋を呼んだ「うんこ」で演奏中なのに会場をざわつかせるということをやってみせる。
そんな予想を裏切りまくるライブの中で最も良い方向に予想を裏切ったのは、チャットモンチーの2人を迎えてのデュエットとなった「世界が終わる夜に」。しかし森山直太朗はチャットモンチーのことを
「みんなでキャンプに行ったりしたし、本当にいろいろありましたよ」
と思い出を語りながら「チャット&モンチー」とひたすら言い間違えるという小芝居をして爆笑を巻き起こす。
なのに曲に入るとキーボードのみならずバイオリンとチェロも含めたバンド編成だからこその、曲にさらなる壮大さを宿らせるというMCと演奏の落差がとんでもないし、これはクセになってしまいそうだ。14年前、大ブレイク中にROCK IN JAPAN FES.に出た時は全然面白いところなんかなかったのに。
もうタイトルからして「なんじゃそれ」な「どこもかしこも駐車場」という一度聴いたら絶対忘れられないシュール過ぎる曲を演奏すると、8月22に「822(パニーニ)」というフルアルバムがリリースされるが、今日はその収録曲を1曲もやっていない、と言ってやはり爆笑を巻き起こすと、最後にピアノと森山直太朗のみという形で演奏されたのは大ヒット曲にして、翌年以降に「さくら」というタイトルの曲が量産されるきっかけを作ったとも言える「さくら」で美しいボーカルを響かせた。まるでチャットモンチーの門出を祝うかのように。
1.魂、それはあいつからの贈り物
2.よく虫が死んでいる
3.夏の終わり
4.うんこ
5.世界が終わる夜に w/ チャットモンチー
6.どこもかしこも駐車場
7.さくら
どこもかしこも駐車場
https://youtu.be/tOLsZr7Dt5k
18:10~ スピッツ
1時間の休憩時間の後にトリ前として登場したのは、大御所であり、チャットモンチーに多大なる影響を与えてきたスピッツ。
麦わら帽子を被った、夏らしい出で立ちの草野マサムネのエバーグリーンなボーカルが響く「バニーガール」という意外な形で始まるが、ライブ後に福岡が「スピッツの中で私たちが好きだって言った曲を覚えててやってくれた!」とツイッターで言っていたのは、かつて対バンした時にアンコールで演奏したこの曲のことだろう。
崎山が4つ打ちのリズムを刻み始めたのは、なんと「シャングリラ」。完コピのように見えて、UKロック色の強い陰鬱な空気を感じさせるのは、ポップな中で「生死」という重いテーマを歌ってきたスピッツだからこそ。崎山のドラムも細かい手数が追加されており、
田村「この曲俺らにくれないかな?」
草野「引き継ぐよね」
というくらいにスピッツのものになっていた。もちろんそれは草野マサムネの声で歌われたからというのも非常に大きな要素だ。
実はこの曲は7年前に高知でスピッツとチャットモンチーが対バンした時にもカバーしていたらしいが、その時のことを鮮明に覚えているスピッツのメンバーはやはりとんでもない。エレファントカシマシのように、50代とは思えないくらいに(見た目も50代には見えない)ライブの本数が多いバンドだが、一本たりとも忘れるような温度でライブをやったことなどないのであろう。
「2人だけにはわかる」
という歌詞がチャットモンチーの2人のことを歌っているかのように聞こえてくる「魔法のコトバ」、会場中がその美しいメロディに酔いしれた大ヒット曲「空も飛べるはず」と、完全に会場の空気をスピッツのものにしていくと、
草野「もったいない気もしますけど…完結してどうするんだろうね?」
三輪「それを俺に聞くの?(笑)」
というほんわかしたやり取りもありつつ、この曲数の中でこの曲を入れるのか?という「スピカ」も演奏される。
そして打ち込みのサウンドが独特の浮遊感を感じさせる「運命の人」と短い時間の中にもヒット曲をしっかり何曲も入れてくるというサービス精神を見せると、最後に演奏されたのはおなじみの「8823」ではなく、ベストアルバムの新曲として収録された、バンドの初期衝動全開の、かつて初期はビートロックバンドだったというスピッツの若かりし頃(ブルーハーツを聴いて衝撃を受けて現在のスタイルになったというのは有名な話)を今になって思い起こさせるような「1987→」で田村が弾けまくる。
この曲のチョイスは、バンドを続けることを選び続けたスピッツから、バンドを止めることを選んだチャットモンチーへの明確なメッセージだろう。どれだけ歳を重ねてもかっこいいことができるのがバンドだ、ということをこの日のスピッツやTHE イナズマ戦隊の姿は教えてくれる。どちらがいいという話ではないが、彼らには続けてきたバンドだからこそ見えるものが見えている。
1.バニーガール
2.シャングリラ
3.魔法のコトバ
4.空も飛べるはず
5.スピカ
6.運命の人
7.1987→
スピカ
https://youtu.be/skTm1_kwR8w
もう残すライブはチャットモンチーのみ。もう少しで完結してしまう。そんな緊張感すら感じる中で登場した、最後のお笑いアクトは吉本新喜劇のヤンシー&マリコンヌ。おなじみのリンボーネタから、かつてマリコンヌが「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」でやっていた「宝塚音楽学校の生徒」「リアルゴリラ」というネタまでも総動員。あまりのバカバカしさに緊張がほぐれたという意味では最もこの位置に適していたのかもしれない。
19:30~ チャットモンチー
そしてついにチャットモンチーの最後のライブ。前日同様にこの日もギター、ベース、ドラムというシンプルなスリーピース編成。きっとこの2人で活動しているうちは、もうこの編成で新しくできること、自分たちがワクワクできることはない。「誕生」だっていきなり聴いたらこのシンプルなスリーピースだったバンドが作ったアルバムだとは思えないし、武道館でもストリングス隊を入れたりと、2人になってからのチャットモンチーはその自由さを生かして自分たちの興味の赴くままに音楽を進化・変化させてきた。それを一切せずに原点に立ち返る形でライブをしたのは、間違いなくこれが最後だからだし、ここがチャットモンチーの始まりの場所である徳島だからである。
「あんまり喋るとヤバイかもしれん」
と早くも観客の声に感極まっていた福岡に変わり、
「じゃあ任せて!」
と珍しくリーダーとして喋る橋本。いわく、
「ワンマンだとお客さんの愛を感じられるけど、フェス形式だとそれに加えて出演者の愛も感じることができる。だからバンドをやってる人でいつか解散したりする時はこういうフェススタイルでやるのがオススメですよ」
と、今から解散の準備をさせるんかい、とやはり天然っぷりは変わらず。
前日同様にまずは2人だけで「30秒で作った」というFM徳島のジングル曲「きっきょん」を演奏すると、この日もドラマーを迎えて演奏するというスタイルへ。福岡がドラマーに行ったアンケートに
「犬になってチャットモンチーの2人に飼われたい」
と答えた、最初のサポートドラマーはHump Backの美咲。もの凄く緊張しているのがわかるくらいに美咲は一言も喋らず、Hump Backが好きな曲だという「恋の煙」を演奏したが、
「夢にまで見た 夢に手が届きそう」
というフレーズの通り、というかチャットモンチーに憧れてきた女子にとっては、チャットモンチーの2人と一緒に演奏するというのは夢すらも超えたような出来事だ。
美咲は決して上手いドラマーじゃないし、まだ他のドラマーたちに比べると自分のスタイルを確立しているというわけでもない。でもこの経験はこれからバンドとして生きていく上で他のどんなことにも変えがたいものになるはず。スリーピースのガールズバンドでこの2人の後ろでドラムを叩いたバンドマンはもう他にいないのだから。Hump Backはこれから必ず変わるとライブレポに書いたが、それは林はもちろん、この経験でメンバー全員が変わるはず。これは一生の誇りになるくらいの時間。
続けざまに橋本がギターを弾き始めたのは、Hump Backがライブでカバーした「湯気」の本家バージョン。Hump Backのバージョンも良いが、やはり最後にこの曲を聴きたいという人もたくさんいたことと思う。そして間奏で2人と向かい合ってドラムを叩く美咲はどう思いながら叩いていたのだろうか。最後まで喋ることはなかったが、その姿を見ているだけでなんだか感動してしまった。2人の顔が明らかに何かを託したような、ちゃんと渡せたような顔をしていたから。だからこそ福岡は美咲がステージから去る時に
「Hump Backを信じるよ!」
とライブ中の林の言葉に応えた。この瞬間、チャットモンチーが長い間背負い続けてきた、あまりにも重いバトンは本当に手渡された。
そんな空気をガラッと変えたのが、メンバーがドラムセットを運ぶバイトに扮して登場した四星球のモリス。まさやんは飲酒しながらドラムセットを運ぶというダメバイトっぷりで、北島は譜面台を橋本のところに運ぶと、譜面台を見ながら、
「なになに、知らぬ間に始まった人生が…」
と、あたかも「クラーク博士と僕」を演奏するかのようなフリを見せるが、当然そんなことはなく、最初に演奏されたのは前日は奥田民生と一緒に演奏した徳島県民にはおなじみの「阿波のたぬき祭りのCM曲」。ある意味では同郷である四星球と一緒にやるためのような曲であるが、途中でたぬきのお面を被ったメンバーたちが乱入し、
福岡「四星球の後はめちゃくちゃやりづらい!」
モリス「やられる側になって初めてその気持ちがわかった(笑)」
というぐらいにかき回されまくった中でモリスともう1曲一緒にやった曲は「ハナノユメ」。最後のサビ前のコール&レスポンスでは橋本が煽ると大きな合唱が響いたが、こうして他の人の曲をなんなく演奏できるくらいに、実は四星球はしっかりとした技術を持っているバンドである。ただ面白いだけではなくて、そうした基礎体力があるからこそ、面白いことができる。四星球が今やあらゆるフェスに引っ張りだこになった理由はそこにある。
再びメンバーがドラムセットを袖まで運んで撤収するも、北島はわざわざ他のメンバーと逆方向から去っていき、
福岡「そっちから捌けたらええやん!あいつ、大学で同じクラスで、同じ誕生日なんですよ。だから毎年一緒に祝われるっていう最悪な(笑)」
橋本「問題児やったやろ?」
福岡「めっちゃ反省文書かされてたからな(笑)」
と、散々いじられた側からのせめてもの反撃。
次なるドラマーは、大柄な見た目からして安心感と安定感があるTHE イナズマ戦隊の久保裕行。THE イナズマ戦隊の野球のユニフォームの上から「かもし連」の法被を着ているというスタイル。
演奏した曲は初日は小籔千豊が叩いていた「風吹けば恋」と「真夜中遊園地」。小籔千豊が叩いていただけに、もしかしたらこの2曲は叩きやすいのかもしれないが、ギリギリのスケジュールの中で曲を覚え(おそらくリハーサルもできていないはず)、事務所の先輩として2人を温かくかつ優しく(もう絶対優しいのが見ていてわかる)見守ってくれていたのは本当に心強かったはず。福岡も
「ギリギリのスケジュールの中で出てくれて本当に感謝してます!」
と先輩へ感謝を告げていた。
そして、いよいよ最後のサポートドラマー。つまり、チャットモンチーで最後にドラムを叩く人である。
それはもちろん、スピッツの崎山龍男。だが、まさかスピッツのドラマーがチャットモンチーのドラムを叩くなんて我々はもちろん、本人たちも思っていなかっただろうし、最後のライブの最後の時間にこの3人で立っていることなど誰が想像していただろうか。
本人たちもそのことを口にしていたが、おなじみの巨大なドラムセットに座り、スティックをクルクルと回すと大歓声が起きる中で演奏されたのは初期の「ツマサキ」。しかし最初に泣きそうだった福岡の代わりにMCをして気丈なところを見せた橋本が、途中で感極まってしまってマイクスタンドから離れた。もちろん我々からしても「ツマサキ」は大事なチャットモンチーの曲だが、本人たちにとってはそれ以上に大事な、本当にたくさんの(もしかしたら福岡や高橋久美子以外のメンバーだった人の思い出も)思い出が詰まった曲なのかもしれない。それくらい、この曲は長い歴史を持った曲になっていた。
そして、
「また歌えなくなってマイクスタンドから離れるかもしれんから…その時はみんなで歌ってな」
と言って演奏された、正真正銘チャットモンチー最後の曲はやはり「シャングリラ」。崎山は先ほどスピッツでもこの曲を演奏しているが、かなり手数を加えていたスピッツバージョンとは異なり、完全にオリジナルに忠実な演奏。つまり、同じ曲を演奏しているのに、2パターン覚えてきたのだ。その崎山の頼もしさ。そして崎山にとっても「終わるバンドでドラムを叩く」というのは長いバンド人生の中で初めてのことだったんじゃないだろうか。
なんて冷静なことを考えていられないくらいの「シャングリラ」の大合唱。こうしてこの曲をライブで聴けるのも、チャットモンチーが大好きな人たちと声を合わせて「シャングリラ」と叫ぶのも、これで最後だ。そう思うと、やはり涙をこらえることができなかった。会場が明るくなるのは、まるで武道館のライブの最後の曲のよう。そして銀テープも放射される。この瞬間、チャットモンチーのライブは終わった。チャットモンチーが完結した瞬間。それは武道館の時の最後とは違って、やはり笑顔だった。泣いている顔を見るとついついこちらも泣いてしまうけれど、笑顔でライブができるような状況ではない時もたくさんあっただけに、自分はチャットモンチーが笑顔で演奏しているのを見るのが本当に好きだった。最後にそれが見れて、本当に良かった。
1.きっきょん
2.恋の煙 w/ 美咲 (Hump Back)
3.湯気 w/ 美咲 (Hump Back)
4.阿波のたぬき祭りのCM曲 w/ モリス (四星球)
5.ハナノユメ w/ モリス (四星球)
6.風吹けば恋 w/ 久保裕行 (THE イナズマ戦隊)
7.真夜中遊園地 w/ 久保裕行 (THE イナズマ戦隊)
8.ツマサキ w/ 崎山龍男 (スピッツ)
9.シャングリラ w/ 崎山龍男 (スピッツ)
シャングリラ
https://youtu.be/NEb9MTNk3y4
そして演奏を終えた2人によるトーク。
福岡「東京に行くと似たようなバンドがごまんといるって言われてたけど、そんなにいなかったな(笑)
私たちはこれから何をするかは全く決めてません!」
としばしリフレッシュすることを告げると、吉本新喜劇のテーマとともに宇都宮まきが登場し、
「昨日、新喜劇が4回公演あったから、私は久美子さんがドラムを叩くのを見れなかった。でも久美子さんの姿が見たい!みんなも見たいよね!?」
と言うと、阿波踊りの衣装を着込み、太鼓を固定した出で立ちで登場。そのまま「かもし連」の阿波踊りに。
この日もチャットモンチーと高橋久美子を先頭に、出演者総登場で踊りまくり、最後にはすだち酒で乾杯。2人の最後の言葉は、
「チャットモンチーでした!」
だった。
四星球の北島は
「チャットモンチーは完結しますけど、2人がやってる「かもし連」は完結しません。だからまた「かもし連」主催のこなそんフェスが開催されるかもしれない」
と言っていた。そう考えると、こうして2人が徳島で阿波踊りをやっていることに希望を感じる。そう、かつて2007年のROCK IN JAPAN FES.のLAKE STAGEにトップバッターとして出演した時に、前説の山崎洋一郎が、
「希望の光なんてなくったっていいじゃないか、って歌いながら希望に溢れているチャットモンチーの音楽が僕は大好きです!」
と言っていた。チャットモンチーが後ろ向きな時なんて一度もなかった。いつだってチャットモンチーは希望の光に満ちていたのだ。
チャットモンチーについての思いはすでに完結を発表した時に書いた。
(「足を引っ張らずに、手を引っ張って -チャットモンチー完結-」
http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-446.html?sp)
バンドが完結した今、言えることはやはり感謝しかない。それは、チャットモンチーがいてくれたことで、自分はチャットモンチーと出会う前よりもっと音楽を好きになれた感謝。
チャットモンチーがいなかったら、今でも女性ボーカルの曲を聴いていなかったかもしれないし、ねごとやyonige、Hump Backやリーガルリリーというガールズバンドのライブに行ったりすることもなかったかもしれない。そもそもチャットモンチーがいなかったらそのバンドたちもいなかったかもしれない。
でも自分はチャットモンチーと出会えたことによって、そうした女性ボーカルの音楽を聴くようになった。好きな音楽の幅がさらに広がった。それによって音楽を聴くのがより楽しくなった。そのきっかけをくれた、自分の中にあった壁をぶち壊してくれたチャットモンチーには感謝しかないのである。
もちろん、チャットモンチーをデビューからずっと見てきて、辛い時期もあった。でもそれを自分たちの力だけで乗り越えていこうとする姿に自分は確かに力と勇気をもらってきた。そうしてもらってきたものをこれからも大事にしながらチャットモンチーが作った音楽と、3人のこれからの人生に向き合っていきたい。今まで、本当にありがとうございました。出会えて、ずっと見てこれて、本当に感謝!
Next→ 7/27 クボケンジ @代官山UNIT

この日は前日のチャットモンチー大阪支部のドラマーである小籔千豊に変わり、同じ吉本新喜劇の宇都宮まきがメインMCとしてチャットモンチーの2人とともに前説に登場。かなり天然である宇都宮まきは、小籔千豊に比べるとまだまだ無名な自身をこの位置に抜擢してくれたチャットモンチーの2人に感謝するとともに、チャットモンチーへの愛なら負けないという心意気をアピールしていた。
13:00~ Hump Back
この日のトップバッターは、JAPAN'S NEXTでduo music exchangeを入場規制にするなど、今急速に人気を拡大している、NINTH APOLLO所属のスリーピースガールズバンド、Hump Back。
チャットモンチーのトリビュートアルバムに「湯気」で参加したことでも話題になったが、ものすごく緊張しているのが伝わってくるような表情の3人がステージに登場すると、
「大阪から来たロックバンド、Hump Backです!」
とだけ林萌々子(ボーカル&ギター)が挨拶し、いきなりその「湯気」からスタートするという鮮やかな先制攻撃。林は間奏では早くもステージ前に出てきて、原曲のままではないソリッドなギターソロを弾く。原曲に忠実なようでいて、自身のエッセンスをちゃんと入れているのが、チャットモンチーの影響を受けてはいるが、そのままのバンドではないということをしっかり示している。
「チャットモンチーのことを話し出したら25分じゃ到底足りない!でもチャットモンチーにもらったものを見せるには充分な時間をもらったと思ってます!」
とチャットモンチーへの思いを叫び、バンドの位置を1段階上まで引き上げた最新シングル「拝啓、少年よ」でそのエモーションをさらに炸裂させていく。
「Hump Backはもともと高校生の時にチャットモンチーのコピーバンドとして始まって…」
と自分たちがバンドを始めたきっかけがチャットモンチーであることを語り始めた林はすぐに一目もはばからずに涙を流してしまう。
それはそうだ。ずっと憧れだった人たちの最後のライブに読んでもらって、こうしてステージに立っているのだ。他にチャットモンチーと関係性が深いバンドもたくさんいるのに、まだまだ有名ではないし、深い関係ではない自分たちを選んでくれた。その意味をわかっていれば、涙が出てくるのは当然だ。
「自分自身を信じろ!それができないならロックバンドを信じろ!私たちはチャットモンチーをずっと信じて生きてきた!」
と自分たちの生きる指針が常にチャットモンチーであったことを叫んだ頃には林の目からは涙は消え、バンドからも緊張は消えていた。
「短編小説」からはベースのぴかがぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏し、この瞬間を本当に楽しんでいるのが伝わってくる。
「さようならって言えそうにないなぁ!!!」
と「サラバ青春」のフレーズを力強く叫んだりと、完全にチャットモンチーの音楽が体の奥底にまで染みついているというか、チャットモンチーの音楽がこのバンドの土台になっている。だから一点の曇りも迷いもなく、こうして曲のフレーズが口から出てくるのである。
「チャットモンチーは私にとって青春のすべてだった。だからこれからは、私たちが誰かにとっての青春になります!」
と、チャットモンチーがずっと持ってきたバトンを自分たちが受け取ったことを堂々と宣言し、最後に演奏されたのはバンドを始めた時のみんなで音を鳴らす楽しさや衝動が音源からでも伝わってくる「月まで」で、最初で最後のチャットモンチーとの対バンを、溢れるくらいの愛を見せながらしっかりとやりきってみせた。
「音楽は誰かの影響を受けて始めて、そいつがまた誰かに影響を与えて続いていく」
これはリンキン・パークのチェスターが亡くなった時にDragon Ashのkjが口にした言葉だが、本当にその通りだ。チャットモンチーに影響を受けたHump Backがまた誰かに影響を与えていく。今中学生や高校生である女の子たちがこのバンドの音楽を聴いて楽器を手にする。そうやってチャットモンチーはいなくなっても、魂ははるか先の世代まで継承されていく。
で、このフェスの後で1番変わるのはこのHump Backだと思う。他にもっとチャットモンチーと深い関係を持つバンドがたくさんいる中で、このバンドを呼んだ。他にもスリーピースのガールズバンドはたくさんいる中でこのバンドを選んだのは、このバンドがスタイルではなくて、チャットモンチーの精神を受け継いでいるから。林の男勝りとも感じるようなギラついた負けん気は、確かにチャットモンチーも持っていたものだ。
何よりも、Hump Backはつい数年前まで、メンバーが全く固定できずに、林が1人だけでバンド名を背負って活動してきた。それはかつて橋本絵莉子がたどった道と全く同じである。だからチャットモンチーの2人は林がどれだけ厳しい道を歩いてきたのかをよくわかっているし、そうした歴史を持ったバンドになったのは決して偶然じゃない。なるべくしてなった、つまりは選ばれたのだ。かつてチャットモンチーがそうされた時のように。
1.湯気
2.拝啓、少年よ
3.短編小説
4.星丘公園
5.月まで
拝啓、少年よ
https://youtu.be/d6i4AtCxrDo
13:40~ 四星球
チャットモンチーと同じくこの徳島のバンドであり、メンバー同士が大学の同級生。コミックバンドを自認し、パンクバンドなどとの対バンのイメージが強いが、実はチャットモンチーと最も長い歴史を共有してきたバンドである。
「チャットモンチー、今まで四星球を全国に紹介してくれて本当にありがとう!チャットモンチーが完結するっていうことで、巣立ちの歌」
というアナウンスとともに「巣立ちの歌」がSEとして流れると、顔を緑色に塗り、すだちくんのコスプレをした4人がステージに登場。
「我々はホール向きのバンドではないですけれども!」
とライブハウスで生きてきたバンドだからこそのプライドを口にし、「妖怪泣き笑い」でスタートするのだが、振り付けを行わない人のリストバンドをハサミで切ろうとしたり、チャットモンチーの福岡の父親の顔写真を覆面のようにしたりと、書ききれないくらいにネタ満載だが、その中に
「チャットモンチーとは16年前から、お互いに鳴門教育大学の友達しか客がいないようなライブハウスで一緒にやってきました!」
というバンドの歴史を感じさせることを挟んでくるので、まさに泣き笑いしたくなってしまう。
新曲「言うてますけども」はなぜかサビ中に観客がステージに向かって「カッコいい!」という言葉を連呼しまくるというものなのだが、何があっても「言うてますけども」と言えば話題を変えたり、気持ちを切り替えることができるという意味では究極のポジティブソングである。北島が色々喋ったあとに「とか!」と言うと
「言うてますけども! 言うてますけども!」
とサビが始まるため、この日は多分10回くらいサビを演奏していた。
「僕らは昨日からずっとここに来てライブ見させてもらってるんですけど、一昨日もリハでここに来て。リハの合間に裏のケータリングでごはん食べようと思ったら、えっちゃんと一緒になって。いろんな店のケータリングが並んでるんだけど、この会場のアスティもケータリング出してくれてて、ポットに「アスティ」っていうシールが貼ってあったんだけど、えっちゃんがそのポットを押したら、
「うわ!お湯が出てきた!」
ってビックリしてて。えっちゃん、なんでお湯にそんなビックリしてんの?って聞いたら、
「アスティをアイスティーだと思った」
って言ってて(笑)」
という橋本の相変わらずの天然っぷりをうかがわせるエピソードを披露すると、その橋本絵莉子がステージに登場。
「チャットモンチーのこと、いじりすぎ!」
とちょっとムッとした表情の橋本に北島がアイスティーを差し出してやはり爆笑に変えると、四星球の曲に橋本がゲストボーカルで参加した「蛍の影」をデュエットバージョンで披露。チャットモンチーにも「惚たる蛍」という曲があるが、ギターのフレーズなども含めて、この曲はその「惚たる蛍」のオマージュ、リスペクトソングだろう。
「この曲を練習する時に四星球のスタジオ行ったらめちゃくちゃ静かで、スタジオ間違えたのかと思った(笑)
普段とステージでは違うんやで」
と橋本も四星球に反撃していたのはさすが。
「Mr.COSMO」では北島がライブハウスと全く変わらずにステージを降りて客席に突入し、観客の椅子の上を練り歩くというパフォーマンスを見せたが、さらには観客を席から解放して一緒に客席の通路を走り回り、UFOを呼ぶくだりの後には「飛び魚のバタフライ」よろしく、飛び魚(ダンボール製)を持った男たちが出現するのだが、その後に飛び魚を持って登場したのは、なんと福岡晃子の父親。スーツ着用で北島にマイクを向けられると、チャットモンチーのことではなく、四星球が9月に徳島で行う文化祭の宣伝をするという仕込みっぷり。
結局その後には福岡もステージに出てくるのだが、父親が出てくることは全く知らされていなかったらしく、
「もう自分でも感情がなんなのかわからん!」
とのこと。
そんな福岡の使い方をしたかと思いきや、
「みんなに一個だけ諦めて欲しいことがあるんです。それはみんなはチャットモンチーの1番のファンにはなれないっていうことなんです。なぜなら、チャットモンチーの1番のファンはあっこちゃんなんです。
大学に入学した次の日に、同じクラスだったあっこちゃんと「音楽が好き」っていう話をして。「どんなバンドが好きなの?」って聞いたら、
「チャットモンチーっていう同い年の徳島のバンドがいるんだけど、進学を機にボーカルの人だけになっちゃって。絶対に続けて欲しい、辞めて欲しくないから、私がベースをやることにした」
って言ってて。で、その関係性が今でも続いている。あっこちゃんはもうチャットモンチーになったから、自分のファンでもある。でも2年前にこのフェスに出させてもらった時に、打ち上げでえっちゃんと話したら、えっちゃんもあっこちゃんのファンなんです。それはきっとこれからも変わらない」
という、同級生だからこそ語れる2人の話で観客はもちろん、袖で聞いていた福岡もタオルで顔を抑えるくらいに号泣していた。四星球のライブは笑えるだけでなく、どこか泣けるようなところがある(それはライブバンドとしての熱い部分を持っているから)というのはライブを見たことがある人には周知の事実だが、まさかこんなにも泣かせるようなことを言うとは。
「でも、えっちゃんのお母さんは僕のファンです!(笑)」
とオチをつけるあたりはさすがだが。
そしてラストはチャットモンチーの武道館ワンマンで最後に演奏された「サラバ青春」でスクリーンに歌詞が映って、みんなが歌っていたのから着想を得た、「クラーク博士と僕」をチャットモンチーバージョンに歌詞を変えた「クラーク博士と僕とモンチー」というこの日限りの曲。テンポも原曲よりもはるかに落とし、
「14年前に自主制作CDを作ろうとPCでCDを焼きまくって、CDケースを買いにダイソーに行ったらどこも売り切れていた。最後の店に行ったら福岡晃子がCDケースを買い占めていた」
と、ともにまだ何者でもなかった時代のことを歌い、
「その時にチャットモンチーが作ってたCDのタイトルは「チャットモンチーになりたい」でした。腹の底ではそのタイトルを笑ってましたが、今はチャットモンチーになれたんだよね」
と2人に最後の言葉と、ダイソーで大量に買ってきたCDケースを送り、
「最後はみんなでジャンプして終わろう!」
と言って全員を座らせるが、ジャンプのリズムを叩くはずのモリスがステージからダッシュして袖に捌けていき、結局ジャンプできず、
「続きはまたいつか!」
と言ってステージから去って行った。
「最後は」
っていうのはきっと、バンドが終わる時のことだ。でも四星球はまだまだ終わらない。だから最後のジャンプをするのは今じゃない。そしてこれから四星球は自分たちが徳島という地元を背負って活動していくはずだ。
SE.巣立ちの歌
1.妖怪泣き笑い
2.クラーク博士と僕
3.言うてますけども
4.蛍の影 w/ 橋本絵莉子
5.Mr.COSMO w/ 福岡晃子親子
6.クラーク博士と僕とモンチー
蛍の影
https://youtu.be/F4LJndHi4fs
転換中にはこの日最初のお笑い芸人である、尼神インターの2人が登場。「チャットモンチー」もお題に取り入れた心理テストネタだが、全て誠子が「ブス」と呼ばれるというあまりにおなじみの展開。2人ともチャットモンチーが好きなんだろうな~というのは随所からわかったが。
15:05~ THE イナズマ戦隊
メンバー全員が出てきてサウンドチェックをしながら郷ひろみや西城秀樹という懐かしのヒット曲を演奏していた、THE イナズマ戦隊。そんな姿からは想像もできなかったが、前日に出演したフェスから徳島に向かう飛行機が欠航したために、会場に着いたのはなんと15分前だという。
そんな余裕のなさを最初から一切感じさせないあたりはさすがバンド結成21年目、もはや大ベテランの域に達してきているバンドである。
「関ジャニ∞から渋谷すばる君が脱退するっていうことで。この曲を歌えるのは俺たちしかいない!」
と自身が関ジャニ∞に提供した「ズッコケ男道」を日々ライブハウスに生きる男たちの賛歌として演奏すると、
「知らない人もいると思うけど、この曲は関ジャニ∞のカバーじゃなくて、俺たちの曲を関ジャニ∞のみんなが広めてくれたんです」
と、実に上中らしい、関ジャニ∞への感謝の告げ方。もしかしたら、この曲を関ジャニ∞が歌ってくれたことがこのバンドの存在をつなぎとめたかもしれない、と思うのは考えすぎだろうか。
しかしながら普段は小さいライブハウスを中心に活動しているとは思えないくらいに、このバンドはこの規模でのライブに慣れている感がすごい。それは上中がしょっちゅうカメラ目線で歌い、スクリーンを見ている後ろの方の席の観客の人にもしっかり自身の歌が伝わるようなパフォーマンスを見せているから。
最新曲「マイジェネレーション」での40代に突入しても未だに青春真っ只中であるという姿はバンドを続けていることの美しさを感じさせてくれるし、上中が小学校2年生の時に亡くなった父親の年齢を自身が超えたことを思って書いたという「33歳」は家族や大切な人の顔が脳裏に浮かばずにはいられない。短い時間で様々な人生賛歌を歌っている。
事務所の後輩であるチャットモンチーの2人のこれからの活動と人生へエールを送りつつ、それを曲として響かせたのが、15年ほど前、青春パンクブーム真っ只中の中で、パンクではないバンドなのにパンクであるかのような熱さを持ったこのバンドの存在をロックシーンに知らしめた曲である「応援歌」。
「オイ!!オマエ!!がんばれや!!
俺がそばで見ててやるから!!」
というサビのフレーズをマイクを通さずにこの広い会場に響かせた上中の姿は、これからも先輩としてチャットモンチーの2人の姿をずっと見ててやるから、という頼もしさに満ちていた。
リハ.GOLDFINGER'99
リハ.ギャランドゥ
1.喜びの歌
2.ズッコケ男道
3.バカ者よ大志を抱け
4.オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ
5.マイジェネレーション
6.33歳
7.応援歌
応援歌
https://youtu.be/ulspeT9J_KY
この転換中には、チャットモンチーの「Magical Fiction」のMVに出演していた、テツandトモの2人が登場。いきなり客席の中を走り回るテツも、歌声がさらに伸びやかになっているトモも、もはや40代後半とは思えないくらいに若々しい。
「チャットモンチーのなんでだろう」や「テツのアゴの上にマイクスタンドを乗せる」という芸で大歓声を浴びると、最後にはチャットモンチーの2人もステージに登場して「Magical Fiction」のMVのダンスを踊る。あまりに難しすぎて2人は全然踊れていなかったが。
大ブレイクを経て以降も変わらぬ姿も素晴らしいが、かつてNHKの「爆笑オンエアバトル」で今となってはあまりに豪華な芸人たちと並んでも全く負けなかったくらいに強かった姿を見ていたものとしては、この2人の姿を生で見れたのは本当に感慨深い。
16:30~ 森山直太朗
先にサポートメンバーたちがスタンバイしていて演奏を始めると、爽やかに走ってステージに登場し、なぜか最後方のあたりに向かって
「後で電話するから!」
的なジェスチャーを行い、楽曲やサウンドは非常に洗練されたポップなものであるのだが、早くもこれはただごとでは済まない感じに満ちている、森山直太朗。
曲を終え、森山直太朗が話し始めると、なぜか虫が飛ぶ音が会場に流れ始め、
「なんか、この会場、めちゃくちゃ虫が多いな!みなさん、頭上の虫を手で潰してください!」
と観客に頭上で手を叩かせ、それがいつの間にか手拍子になり、
「徳島のみなさん!引っかかりましたね!実はこの会場には虫なんかいないんです!みなさんに自然に手拍子をしてもらうための罠だったのです!」
とわかりきっていることをいたって堂々と口にすると、歌詞が信じられないくらいにシュールかつ、昭和のトレンディ歌手のような振り付けを交えて森山直太朗が歌う「よく虫が死んでいる」で、その一挙手一投足すべてで笑いを巻き起こすというエンターテイナーっぷりを見せつけたかと思いきや、いきなり「夏の終わり」という笑いの一切起こらない名曲で森山直太朗の歌の上手さに浸らせるので、もう何が起こるのか全く見当がつかない。
と思うとやはり美しいサウンドに
「さっきまで体の中にいたのに
出てきた途端に嫌われるなんて
やっぱりお前は うんこだな」
というとんでもない歌詞が乗る、リリース時にニュースになるくらいに波紋を呼んだ「うんこ」で演奏中なのに会場をざわつかせるということをやってみせる。
そんな予想を裏切りまくるライブの中で最も良い方向に予想を裏切ったのは、チャットモンチーの2人を迎えてのデュエットとなった「世界が終わる夜に」。しかし森山直太朗はチャットモンチーのことを
「みんなでキャンプに行ったりしたし、本当にいろいろありましたよ」
と思い出を語りながら「チャット&モンチー」とひたすら言い間違えるという小芝居をして爆笑を巻き起こす。
なのに曲に入るとキーボードのみならずバイオリンとチェロも含めたバンド編成だからこその、曲にさらなる壮大さを宿らせるというMCと演奏の落差がとんでもないし、これはクセになってしまいそうだ。14年前、大ブレイク中にROCK IN JAPAN FES.に出た時は全然面白いところなんかなかったのに。
もうタイトルからして「なんじゃそれ」な「どこもかしこも駐車場」という一度聴いたら絶対忘れられないシュール過ぎる曲を演奏すると、8月22に「822(パニーニ)」というフルアルバムがリリースされるが、今日はその収録曲を1曲もやっていない、と言ってやはり爆笑を巻き起こすと、最後にピアノと森山直太朗のみという形で演奏されたのは大ヒット曲にして、翌年以降に「さくら」というタイトルの曲が量産されるきっかけを作ったとも言える「さくら」で美しいボーカルを響かせた。まるでチャットモンチーの門出を祝うかのように。
1.魂、それはあいつからの贈り物
2.よく虫が死んでいる
3.夏の終わり
4.うんこ
5.世界が終わる夜に w/ チャットモンチー
6.どこもかしこも駐車場
7.さくら
どこもかしこも駐車場
https://youtu.be/tOLsZr7Dt5k
18:10~ スピッツ
1時間の休憩時間の後にトリ前として登場したのは、大御所であり、チャットモンチーに多大なる影響を与えてきたスピッツ。
麦わら帽子を被った、夏らしい出で立ちの草野マサムネのエバーグリーンなボーカルが響く「バニーガール」という意外な形で始まるが、ライブ後に福岡が「スピッツの中で私たちが好きだって言った曲を覚えててやってくれた!」とツイッターで言っていたのは、かつて対バンした時にアンコールで演奏したこの曲のことだろう。
崎山が4つ打ちのリズムを刻み始めたのは、なんと「シャングリラ」。完コピのように見えて、UKロック色の強い陰鬱な空気を感じさせるのは、ポップな中で「生死」という重いテーマを歌ってきたスピッツだからこそ。崎山のドラムも細かい手数が追加されており、
田村「この曲俺らにくれないかな?」
草野「引き継ぐよね」
というくらいにスピッツのものになっていた。もちろんそれは草野マサムネの声で歌われたからというのも非常に大きな要素だ。
実はこの曲は7年前に高知でスピッツとチャットモンチーが対バンした時にもカバーしていたらしいが、その時のことを鮮明に覚えているスピッツのメンバーはやはりとんでもない。エレファントカシマシのように、50代とは思えないくらいに(見た目も50代には見えない)ライブの本数が多いバンドだが、一本たりとも忘れるような温度でライブをやったことなどないのであろう。
「2人だけにはわかる」
という歌詞がチャットモンチーの2人のことを歌っているかのように聞こえてくる「魔法のコトバ」、会場中がその美しいメロディに酔いしれた大ヒット曲「空も飛べるはず」と、完全に会場の空気をスピッツのものにしていくと、
草野「もったいない気もしますけど…完結してどうするんだろうね?」
三輪「それを俺に聞くの?(笑)」
というほんわかしたやり取りもありつつ、この曲数の中でこの曲を入れるのか?という「スピカ」も演奏される。
そして打ち込みのサウンドが独特の浮遊感を感じさせる「運命の人」と短い時間の中にもヒット曲をしっかり何曲も入れてくるというサービス精神を見せると、最後に演奏されたのはおなじみの「8823」ではなく、ベストアルバムの新曲として収録された、バンドの初期衝動全開の、かつて初期はビートロックバンドだったというスピッツの若かりし頃(ブルーハーツを聴いて衝撃を受けて現在のスタイルになったというのは有名な話)を今になって思い起こさせるような「1987→」で田村が弾けまくる。
この曲のチョイスは、バンドを続けることを選び続けたスピッツから、バンドを止めることを選んだチャットモンチーへの明確なメッセージだろう。どれだけ歳を重ねてもかっこいいことができるのがバンドだ、ということをこの日のスピッツやTHE イナズマ戦隊の姿は教えてくれる。どちらがいいという話ではないが、彼らには続けてきたバンドだからこそ見えるものが見えている。
1.バニーガール
2.シャングリラ
3.魔法のコトバ
4.空も飛べるはず
5.スピカ
6.運命の人
7.1987→
スピカ
https://youtu.be/skTm1_kwR8w
もう残すライブはチャットモンチーのみ。もう少しで完結してしまう。そんな緊張感すら感じる中で登場した、最後のお笑いアクトは吉本新喜劇のヤンシー&マリコンヌ。おなじみのリンボーネタから、かつてマリコンヌが「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」でやっていた「宝塚音楽学校の生徒」「リアルゴリラ」というネタまでも総動員。あまりのバカバカしさに緊張がほぐれたという意味では最もこの位置に適していたのかもしれない。
19:30~ チャットモンチー
そしてついにチャットモンチーの最後のライブ。前日同様にこの日もギター、ベース、ドラムというシンプルなスリーピース編成。きっとこの2人で活動しているうちは、もうこの編成で新しくできること、自分たちがワクワクできることはない。「誕生」だっていきなり聴いたらこのシンプルなスリーピースだったバンドが作ったアルバムだとは思えないし、武道館でもストリングス隊を入れたりと、2人になってからのチャットモンチーはその自由さを生かして自分たちの興味の赴くままに音楽を進化・変化させてきた。それを一切せずに原点に立ち返る形でライブをしたのは、間違いなくこれが最後だからだし、ここがチャットモンチーの始まりの場所である徳島だからである。
「あんまり喋るとヤバイかもしれん」
と早くも観客の声に感極まっていた福岡に変わり、
「じゃあ任せて!」
と珍しくリーダーとして喋る橋本。いわく、
「ワンマンだとお客さんの愛を感じられるけど、フェス形式だとそれに加えて出演者の愛も感じることができる。だからバンドをやってる人でいつか解散したりする時はこういうフェススタイルでやるのがオススメですよ」
と、今から解散の準備をさせるんかい、とやはり天然っぷりは変わらず。
前日同様にまずは2人だけで「30秒で作った」というFM徳島のジングル曲「きっきょん」を演奏すると、この日もドラマーを迎えて演奏するというスタイルへ。福岡がドラマーに行ったアンケートに
「犬になってチャットモンチーの2人に飼われたい」
と答えた、最初のサポートドラマーはHump Backの美咲。もの凄く緊張しているのがわかるくらいに美咲は一言も喋らず、Hump Backが好きな曲だという「恋の煙」を演奏したが、
「夢にまで見た 夢に手が届きそう」
というフレーズの通り、というかチャットモンチーに憧れてきた女子にとっては、チャットモンチーの2人と一緒に演奏するというのは夢すらも超えたような出来事だ。
美咲は決して上手いドラマーじゃないし、まだ他のドラマーたちに比べると自分のスタイルを確立しているというわけでもない。でもこの経験はこれからバンドとして生きていく上で他のどんなことにも変えがたいものになるはず。スリーピースのガールズバンドでこの2人の後ろでドラムを叩いたバンドマンはもう他にいないのだから。Hump Backはこれから必ず変わるとライブレポに書いたが、それは林はもちろん、この経験でメンバー全員が変わるはず。これは一生の誇りになるくらいの時間。
続けざまに橋本がギターを弾き始めたのは、Hump Backがライブでカバーした「湯気」の本家バージョン。Hump Backのバージョンも良いが、やはり最後にこの曲を聴きたいという人もたくさんいたことと思う。そして間奏で2人と向かい合ってドラムを叩く美咲はどう思いながら叩いていたのだろうか。最後まで喋ることはなかったが、その姿を見ているだけでなんだか感動してしまった。2人の顔が明らかに何かを託したような、ちゃんと渡せたような顔をしていたから。だからこそ福岡は美咲がステージから去る時に
「Hump Backを信じるよ!」
とライブ中の林の言葉に応えた。この瞬間、チャットモンチーが長い間背負い続けてきた、あまりにも重いバトンは本当に手渡された。
そんな空気をガラッと変えたのが、メンバーがドラムセットを運ぶバイトに扮して登場した四星球のモリス。まさやんは飲酒しながらドラムセットを運ぶというダメバイトっぷりで、北島は譜面台を橋本のところに運ぶと、譜面台を見ながら、
「なになに、知らぬ間に始まった人生が…」
と、あたかも「クラーク博士と僕」を演奏するかのようなフリを見せるが、当然そんなことはなく、最初に演奏されたのは前日は奥田民生と一緒に演奏した徳島県民にはおなじみの「阿波のたぬき祭りのCM曲」。ある意味では同郷である四星球と一緒にやるためのような曲であるが、途中でたぬきのお面を被ったメンバーたちが乱入し、
福岡「四星球の後はめちゃくちゃやりづらい!」
モリス「やられる側になって初めてその気持ちがわかった(笑)」
というぐらいにかき回されまくった中でモリスともう1曲一緒にやった曲は「ハナノユメ」。最後のサビ前のコール&レスポンスでは橋本が煽ると大きな合唱が響いたが、こうして他の人の曲をなんなく演奏できるくらいに、実は四星球はしっかりとした技術を持っているバンドである。ただ面白いだけではなくて、そうした基礎体力があるからこそ、面白いことができる。四星球が今やあらゆるフェスに引っ張りだこになった理由はそこにある。
再びメンバーがドラムセットを袖まで運んで撤収するも、北島はわざわざ他のメンバーと逆方向から去っていき、
福岡「そっちから捌けたらええやん!あいつ、大学で同じクラスで、同じ誕生日なんですよ。だから毎年一緒に祝われるっていう最悪な(笑)」
橋本「問題児やったやろ?」
福岡「めっちゃ反省文書かされてたからな(笑)」
と、散々いじられた側からのせめてもの反撃。
次なるドラマーは、大柄な見た目からして安心感と安定感があるTHE イナズマ戦隊の久保裕行。THE イナズマ戦隊の野球のユニフォームの上から「かもし連」の法被を着ているというスタイル。
演奏した曲は初日は小籔千豊が叩いていた「風吹けば恋」と「真夜中遊園地」。小籔千豊が叩いていただけに、もしかしたらこの2曲は叩きやすいのかもしれないが、ギリギリのスケジュールの中で曲を覚え(おそらくリハーサルもできていないはず)、事務所の先輩として2人を温かくかつ優しく(もう絶対優しいのが見ていてわかる)見守ってくれていたのは本当に心強かったはず。福岡も
「ギリギリのスケジュールの中で出てくれて本当に感謝してます!」
と先輩へ感謝を告げていた。
そして、いよいよ最後のサポートドラマー。つまり、チャットモンチーで最後にドラムを叩く人である。
それはもちろん、スピッツの崎山龍男。だが、まさかスピッツのドラマーがチャットモンチーのドラムを叩くなんて我々はもちろん、本人たちも思っていなかっただろうし、最後のライブの最後の時間にこの3人で立っていることなど誰が想像していただろうか。
本人たちもそのことを口にしていたが、おなじみの巨大なドラムセットに座り、スティックをクルクルと回すと大歓声が起きる中で演奏されたのは初期の「ツマサキ」。しかし最初に泣きそうだった福岡の代わりにMCをして気丈なところを見せた橋本が、途中で感極まってしまってマイクスタンドから離れた。もちろん我々からしても「ツマサキ」は大事なチャットモンチーの曲だが、本人たちにとってはそれ以上に大事な、本当にたくさんの(もしかしたら福岡や高橋久美子以外のメンバーだった人の思い出も)思い出が詰まった曲なのかもしれない。それくらい、この曲は長い歴史を持った曲になっていた。
そして、
「また歌えなくなってマイクスタンドから離れるかもしれんから…その時はみんなで歌ってな」
と言って演奏された、正真正銘チャットモンチー最後の曲はやはり「シャングリラ」。崎山は先ほどスピッツでもこの曲を演奏しているが、かなり手数を加えていたスピッツバージョンとは異なり、完全にオリジナルに忠実な演奏。つまり、同じ曲を演奏しているのに、2パターン覚えてきたのだ。その崎山の頼もしさ。そして崎山にとっても「終わるバンドでドラムを叩く」というのは長いバンド人生の中で初めてのことだったんじゃないだろうか。
なんて冷静なことを考えていられないくらいの「シャングリラ」の大合唱。こうしてこの曲をライブで聴けるのも、チャットモンチーが大好きな人たちと声を合わせて「シャングリラ」と叫ぶのも、これで最後だ。そう思うと、やはり涙をこらえることができなかった。会場が明るくなるのは、まるで武道館のライブの最後の曲のよう。そして銀テープも放射される。この瞬間、チャットモンチーのライブは終わった。チャットモンチーが完結した瞬間。それは武道館の時の最後とは違って、やはり笑顔だった。泣いている顔を見るとついついこちらも泣いてしまうけれど、笑顔でライブができるような状況ではない時もたくさんあっただけに、自分はチャットモンチーが笑顔で演奏しているのを見るのが本当に好きだった。最後にそれが見れて、本当に良かった。
1.きっきょん
2.恋の煙 w/ 美咲 (Hump Back)
3.湯気 w/ 美咲 (Hump Back)
4.阿波のたぬき祭りのCM曲 w/ モリス (四星球)
5.ハナノユメ w/ モリス (四星球)
6.風吹けば恋 w/ 久保裕行 (THE イナズマ戦隊)
7.真夜中遊園地 w/ 久保裕行 (THE イナズマ戦隊)
8.ツマサキ w/ 崎山龍男 (スピッツ)
9.シャングリラ w/ 崎山龍男 (スピッツ)
シャングリラ
https://youtu.be/NEb9MTNk3y4
そして演奏を終えた2人によるトーク。
福岡「東京に行くと似たようなバンドがごまんといるって言われてたけど、そんなにいなかったな(笑)
私たちはこれから何をするかは全く決めてません!」
としばしリフレッシュすることを告げると、吉本新喜劇のテーマとともに宇都宮まきが登場し、
「昨日、新喜劇が4回公演あったから、私は久美子さんがドラムを叩くのを見れなかった。でも久美子さんの姿が見たい!みんなも見たいよね!?」
と言うと、阿波踊りの衣装を着込み、太鼓を固定した出で立ちで登場。そのまま「かもし連」の阿波踊りに。
この日もチャットモンチーと高橋久美子を先頭に、出演者総登場で踊りまくり、最後にはすだち酒で乾杯。2人の最後の言葉は、
「チャットモンチーでした!」
だった。
四星球の北島は
「チャットモンチーは完結しますけど、2人がやってる「かもし連」は完結しません。だからまた「かもし連」主催のこなそんフェスが開催されるかもしれない」
と言っていた。そう考えると、こうして2人が徳島で阿波踊りをやっていることに希望を感じる。そう、かつて2007年のROCK IN JAPAN FES.のLAKE STAGEにトップバッターとして出演した時に、前説の山崎洋一郎が、
「希望の光なんてなくったっていいじゃないか、って歌いながら希望に溢れているチャットモンチーの音楽が僕は大好きです!」
と言っていた。チャットモンチーが後ろ向きな時なんて一度もなかった。いつだってチャットモンチーは希望の光に満ちていたのだ。
チャットモンチーについての思いはすでに完結を発表した時に書いた。
(「足を引っ張らずに、手を引っ張って -チャットモンチー完結-」
http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-446.html?sp)
バンドが完結した今、言えることはやはり感謝しかない。それは、チャットモンチーがいてくれたことで、自分はチャットモンチーと出会う前よりもっと音楽を好きになれた感謝。
チャットモンチーがいなかったら、今でも女性ボーカルの曲を聴いていなかったかもしれないし、ねごとやyonige、Hump Backやリーガルリリーというガールズバンドのライブに行ったりすることもなかったかもしれない。そもそもチャットモンチーがいなかったらそのバンドたちもいなかったかもしれない。
でも自分はチャットモンチーと出会えたことによって、そうした女性ボーカルの音楽を聴くようになった。好きな音楽の幅がさらに広がった。それによって音楽を聴くのがより楽しくなった。そのきっかけをくれた、自分の中にあった壁をぶち壊してくれたチャットモンチーには感謝しかないのである。
もちろん、チャットモンチーをデビューからずっと見てきて、辛い時期もあった。でもそれを自分たちの力だけで乗り越えていこうとする姿に自分は確かに力と勇気をもらってきた。そうしてもらってきたものをこれからも大事にしながらチャットモンチーが作った音楽と、3人のこれからの人生に向き合っていきたい。今まで、本当にありがとうございました。出会えて、ずっと見てこれて、本当に感謝!
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