チャットモンチー こなそんフェス 2018 @アスティとくしま 7/21
- 2018/07/22
- 22:47
7月4日に涙のラストワンマンを行なった、チャットモンチー。ワンマンとしてはそのライブが最後だが、活動最後の日に選んだのは、自身の地元である徳島での主催フェス「こなそんフェス」だった。
2年前にはアジカンやPerfumeも出演し、「私たちの地元の徳島にたくさんの人が来て欲しい」という2人の志を持ったフェス。最後だからこそ、のアーティストも集まり、チャットモンチーの最後を彩る。
会場のアスティとくしまは徳島駅からバスで15分くらいの場所にある、文芸館などに併設された、まさに各自治体にある公民館というか体育館といった様相。一応キャパは5000人と聞くとかなりデカい。
外には徳島の名産であるすだちなどを使った飲食スペースもあり、徳島だからこそのフェスであることを存分に感じさせる。
開演前には法被を着たチャットモンチーの2人と、吉本新喜劇の小籔千豊が登場して前説。今や川谷絵音と一緒にジェニーハイというバンドをやっている小籔千豊は
「僕がドラムを初めて、バンドができるようになったのはチャットモンチーのおかげ。フェスは楽しいものだけど、僕は悲しみに暮れてます(笑)」
と、やはりチャットモンチーが最後のライブを寂しく思っている様子。
13:00~ シュノーケル
いよいよ開演を迎えた、チャットモンチー最後の2日間。そのトップバッターを担うのは、かつてチャットモンチー、Base Ball Bearとともに「若若男女サマーツアー」という合同ツアーを行なった、シュノーケル。2010年に活動休止したが、2014年に活動を再開しており、3バンドが揃う最後の日にこのフェスのステージに立つ。
つるうちはな(キーボード)、岡愛子(ギター)の女性サポートメンバー2人を加えた5人編成で登場。なぜかこのタイミングで名前を本名の香葉村多望から変えたKABA_3(ベース)はかつてよりもかなり太ったように見える。
「オーイ!」
と、こちらは昔からほとんどシルエットが変わらない西村晋弥(ボーカル&ギター)が叫ぶと、「奇跡」でこのフェスの始まりを鳴らす。サポートメンバーによる分厚いバンドサウンドは曲にあらかじめ必要とされているものであったことがわかるし、何よりもドラムの山田雅人も含めて、全員がメガネをかけているという出で立ちや歌詞からはいかにもな文系ギターロックバンドというイメージを持たれがちだが、ライブでの演奏を見ると、実にたくましいギターロックバンドであるということがわかるのもよくわかる。
つるうちはなが曲タイトルが書かれた旗を振りながらステージを疾走する再始動後の「NewPOP」でアッパーにフェスを盛り上げると、
「僕らがバンド活動してきて1番楽しいって思ってることが、チャットモンチーとBase Ball Bearと一緒に廻った、若若男女サマーツアーで。あれから10年経って、僕ら全員いろいろあったけど、今こうして同じステージに立っているっていうのは絶対に何か理由があると思っています」
と、あの夏が今でもバンドにとって忘れ得ぬ大切な思い出であることを西村が語って「理由」を演奏しようとするのだが、つるうちはなが演奏に入れずにまさかのやり直しになり、西村が同じ話を途中からもう一回するという展開に。
その「理由」は
「まぶしくて まぶしくて 僕らはそれを奇跡と呼んだ
君と僕が出会った10年後のこと」
というフレーズで締められる。それはまるでこの日、あの夏を思い返すメンバーの心境そのものであるかのように。
西村の死生観を力強いギターロックに乗せた「シュレーディンガーの僕を」でさらにバンドの演奏は力強さを増すと、
「最後にもう1曲…チャットモンチーと同じ時間を過ごした曲!」
と言って演奏されたのは、このバンドの名前を広く知らしめるとともに、チャットモンチーと同じステージに立つきっかけになった「波風サテライト」。この曲を演奏する姿は、確かに10年前の「あの夏」を思い出させた。
でも、もうあの頃には戻れない。3組のメンバーも我々も年齢を重ねて若者と言えるような年齢ではなくなったし、いろいろなことを経験してこの日、この場所にやってきた。もちろんそこには涙を流したくなるようなこともあった。
それでも、いち早く立ち止まることを選んだシュノーケルが今こうして我々の前に立ってライブをやっている。それにこの上ないくらいに希望を感じている。
わざわざシュノーケルを見るためだけに徳島まで来る人はそうそういないだろうし、そうした集客であったりも含めて、今、フェスにシュノーケルを呼ぶメリットはほとんどないし、実際にフェスに名前が載ることも全くないバンドだ。でもシュノーケルとベボベが同じ日に同じステージに立つ瞬間を作らないと、きっとチャットモンチーは終われなかった。シュノーケルも、チャットモンチーも、Base Ball Bearも、もちろんあの夏にあのツアーを見に行っていた我々にも、あのツアーは特別な、本当に大切な思い出だし、今でも最も大事な存在なのだ。
10年前はこの3組にいろんなことが待ち受けてるなんて思ってもいないくらい、メンバーも我々も若者だった。
1.奇跡
2.NewPOP
3.理由
4.シュレーディンガーの僕を
5.波風サテライト
理由
https://youtu.be/L6Bm5IIoMXw
13:40~ yonige
ガールズバンド、しかもスリーピース編成のバンドがこのフェスに出演するというだけで大きな意味を含んでいる。(yonigeは今のメンバーは牛丸ありさとごっきんの2人で、サポートドラマーのホリエは男性だが)
前週のJAPAN'S NEXTや春フェスの時と同様に「最愛の恋人たち」のメロディはおだやかだがギターはノイジーなサウンドで立ち上がると、「our time city」の後には、
牛丸「もう、何から話したらいいんかな?」
ごっきん「うちらはチャットモンチーの養分を吸い込んでブクブクになったバンドで。
まだyonigeをやる前の高校生の時に、万引きシャンプーっていうバンド名でチャットモンチーのコピーをやってたんやけど、その時にスタジオに入ってみんなでキャッキャしてたのがバンドやってて1番楽しい思い出」
という、やはりチャットモンチーに影響を受けてバンドの道に進んだエピソードを語る。
だからこそ、半端な姿は見せられない、とばかりに、いつもと同じようでいて、牛丸のボーカルはいつもよりも伸びやか、ごっきんもどことなくいつもよりも頭を振りながらベースを弾いているように見える。つまり、いつもより気合いが入っているように見える。
それは原曲よりもはるかにテンポが速くなった「アボカド」でも、サイケデリックに酔いしれるバラード曲「沙希」でも変わらない。
ごっきん「チャットモンチーに出会ったのいつ?」
牛丸「小学6年生の時に。「耳鳴り」で」
ごっきん「早っ!うち高校生になってからやで!」
牛丸「遅っ(笑)」
ごっきん「でもチャットモンチーを聴くと、今でも高校生の時に通学で歩いたり、チャリ乗ったり、バイク乗ったりしてたのを思い出す。バイクは禁止だったんで、しっかり停学になったけど(笑)
あと徳島はよく遠征で来るんですけど、夜に海で花火したりして。すごい楽しかった。大好きな街です」
とチャットモンチーとともに育ち、チャットモンチーが育った徳島を愛する話をすると、新曲「リボルバー」のポップなメロディが会場を包み、ラストは「さよならプリズナー」で美しいメロディと熱狂を両立させてライブを終えた。
いつもよりも気合いが入っているように見えた(JAPAN'S NEXTの時のようなサウンドトラブルもなかったし)のは、間違いなくチャットモンチーのフェスに呼ばれたからであろう。その憧れの存在から、この日確かにyonigeの2人はバトンを受け取った。その確信や自信が見えたライブだった。
自分はチャットモンチーが登場するまで、女性ボーカルの曲を全く聴いていなかった。もしチャットモンチーがいなかったら、今でもそうだったかもしれないし、そうだったとしたらyonigeの音楽にも出会っていないし、こうしてライブにも行ってないだろう。
そもそも、チャットモンチーがいなかったらyonige自体がこうしてシーンに登場していない可能性もあるわけで、そうして考えるとやはりチャットモンチーが音楽シーンにもたらしたものは本当にデカい。もう感謝しても感謝しきれない。
1.最愛の恋人たち
2.our time city
3.センチメンタルシスター
4.ワンルーム
5.アボカド
6.バッドエンド週末
7.沙希
8.リボルバー
9.さよならプリズナー
リボルバー
https://youtu.be/w_3atGoniPM
転換中には野性爆弾とガリットチュウ福島による、ネタライブ。川島の「ダウンタウンの浜田雅功の白塗りモノマネ」という最近おなじみのネタだが、「自分が舐めた指を福島にも舐めさせようとする」など、完全に意味不明な展開であり、最後には福島も「えっ!?」と素でビックリするくらいいきなりネタが終わる。
15:05~ Base Ball Bear
2年前に開催された時も出演している、チャットモンチーの同期であり、最大の同志でもあるバンド、Base Ball Bear。前回は湯浅が失踪中(公式には体調不良とアナウンスされ、まだ脱退はしていなかった)で、サポートギターとしてthe telephonesの石毛輝を加えた編成で出演したが、今回は今年の春以降の形である、サポートを入れないスリーピースでの出演である。
リハで「17才」をまるまる1曲演奏してからおなじみのXTCのSEでメンバーがステージに登場すると、「BREEEEZE GIRL」「祭りのあと」と、この3人編成でもおなじみの夏曲を連発するのだが、普段から演奏されている曲であるとはいえ、この日、この場所で聴くと、これまでにこのバンドがチャットモンチーと積み重ねて来た歴史を思い返して胸が熱くなる。
「今日、俺はどんな心境になるんだろうか、と。昨日からずっと考えていたわけです。チャットモンチーが完結するフェスで、自分がどう思うのか。もしかしたら泣いてしまうんじゃないかと。でも楽屋にチャットの2人が書いた、メッセージカードがあるんですけど、そのカードに「泣かないでね」って書いてあって。これで泣いたら俺は相当みっともないぞ、と(笑)
我々としても2年前に出た時は色々あって、サポートギターに石毛君に出てもらって。うちらのゴタゴタをチャットモンチーのお祭りに持ち込みたくなかったから。
で、今年はこうしてスリーピースでやってるわけですけど、スリーピースの先輩であるチャットモンチーに、僕らがスリーピースでバンドをやることを本当に楽しんでるところを見てもらいたいな、と。チャットモンチーも先にメンバーが抜けたりしたのをずっと横で見てきましたから。
でも、俺たちは絶対やめねーからな!!!」
という、チャットモンチーをずっと隣で見てきたからこその小出の言葉。普段は熱いことをほとんど言わない、むしろそういうことを言うような人を冷めた目で見ているような小出が言うからこその、辞めない宣言は13年くらいこのバンドを見てきて、最も頼もしく見えた。
それは演奏も同じで、スリーピースになったことでメンバーの中で最も物理的にステージ上を動けるようになった関根がステージの前に出てきて笑顔を見せながらベースを弾いたり、両サイドまで走って行ってベースを弾いたり。スリーピースになったことで、確実にメンバーそれぞれの普段は増えている。小出はリードギターを弾きながら歌うことになっているし、関根はツアーではチャップマンスティックという新しい楽器を演奏し、堀之内も過去の曲では手数をかなり増やしている。そうした努力や苦労すらも、全くネガティヴな感じがなく、むしろ
「これこうしたら凄くね!?」
みたいに楽しみながらアレンジしているのが目に浮かんでくる。それはスリーピースの先輩であるチャットモンチーにも間違いなく伝わっているはず。
「真夏の条件」の間奏で小出と関根が向かい合って演奏をするという熱い場面もあり、「The CUT」では小出のラップとともにリズム隊のみによる演奏のグルーヴがさらに増していく。そしてラストは
「チャットモンチーの2人のこれまでと、これからの音楽人生がドラマチックなものでありますように」
と2人への思いを込めた「ドラマチック」。それはやはりシュノーケルと同様に、一緒に過ごしていた、「あの夏」を思い起こさせるものであった。
終わることを選んだチャットモンチーと、続けることを選んだBase Ball Bear。ともにそこに至るまでには、メンバーの脱退という出来事があったわけだが、湯浅がいなくなった時に、すでに高橋久美子が脱退して、2人だけで活動を続けていたチャットモンチーの姿を、ベボベの3人はずっと見てきた。だからこそ自分たちもやれるという勇気やバンドへの信念をチャットモンチーからもらってきたはず。単なる同期ではない、バンドという生命体の命を救いあってきた、最大の戦友。
チャットモンチーは完結してしまうけれど、ベボベが活動を続けていこうとする姿は本当にカッコいいし、頼もしい。バンドだけでなく、何事も続けることの方が難しいだけに、ベボベの選択を自分は全面的に支持したいし、これからもずっと、一緒に年齢を重ねていきたい。チャットモンチーが完結を選んだことで、ベボベという存在がさらに自分の中で大きなものになっている。
リハ.17才
1.BREEEEZE GIRL
2.祭りのあと
3.GIRL FRIEND
4.逆バタフライ・エフェクト
5.真夏の条件
6.The CUT
7.ドラマチック
BREEEEZE GIRL
https://youtu.be/bLnRythb-pw
この転換時間には南海キャンディーズのネタライブ。
「しずちゃんとチャットモンチーのあっこさんが飲みに行ったりしている関係だというのを、楽屋にあったメッセージカードで初めて知った」
というくらいに存在を無視されている山ちゃんが、シェアハウスで生活するいけすかない若者たちをぶった斬るというネタで爆笑を巻き起こす。かつて日の丸を背負って戦ったしずちゃんのボクシングも自然にネタに取り入れるあたりは本当にさすがだ。
16:30~ EGO-WRAPPIN'
この日の出演者の中では1番「?」というか、チャットモンチーとの関係性があまり見えてこない、EGO-WRAPPIN'。ホーン隊も含めた、THE GOSSIP OF JAXXを含めた7人編成で登場。
中納良恵のセクシーな歌声とともに、ジャジーかつブルージーな演奏でゆったりと始まった前半。新曲も含めて、この辺りは踊るというよりはゆらゆらと体を動かすというような楽しみ方。しかし森雅樹のギターの凄まじさたるや、まるでアメリカのブルースミュージシャンのごとしである。
「久しぶりにチャットモンチーの2人に会ったら、すごくキレイになっていてビックリしたな~」
と森は語っていたが、それはチャットモンチーとの関係の深さをうかがわせるとともに、中納も全く年齢を感じさせないというか、見た目が変わらないのも凄いと思うのだが。
一転して後半は中納をはじめとしたステージ上のメンバーも踊りまくり、飛び跳ねまくりのアッパーなダンスチューンを連発。
基本的にこのバンドの音楽は自分にとっては好みというわけではないし、やはりこの日も最もアウェー感を感じるアクトとなっていたが、例えば「GO ACTION」などはライブで聴くととてつもなくカッコいいし、そこに宿るグルーヴは凄まじい。普段自分が見ているような、ライブハウスで生きているバンドとは違えど、やはりこのバンドもライブで生きてきたバンドであるということがよくわかる。
後半にもアッパーな新曲を挟み、ラストはやはりバンド最大のヒット曲である「くちばしにチェリー」で演奏も客席もどんどん熱を増していく。ツービート主体のドラムも含め、この曲はthe band apartなどとは違った形でのジャズとパンクの融合を果たした曲である。こうした曲が作れるのは2人がとてつもない音楽ジャンキーであるからだし、バンドが演奏から確かな熱量を放っているからである。
そしてライブ中、ステージ袖ではあっこがずっと楽しそうに踊っていた。その姿は、なぜこのバンドがこのフェスに招かれたのかというのを最もわかりやすく示していた。
1.PARANOIA
2.新曲
3.A Love Song
4.BRAND NEW DAY
5.GO ACTION
6.新曲
7.くちばしにチェリー
くちばしにチェリー
https://youtu.be/f2w9JwQaT4U
18:10~ 奥田民生
かつてはチャットモンチーがトリビュートアルバムに「息子」で参加したり、プロデューサーとして曲に参加したりと、チャットモンチーの第2の師匠的な存在(最初の師匠は初期のプロデューサーだった、いしわたり淳治)と言える、奥田民生。近年おなじみの、ステージにはサボテンなどが配置され、中央にソファ(誰も座らない)が置かれているために、本人が下手側、ドラマー湊雅史、ベース小原礼、キーボード斉藤有太という、MTRY編成での出演である。
奥田民生がサングラスをかけ、このバンドの紹介的な「MTRY」からスタートし、凄腕メンバーたちによるグルーヴを見せつけながら、「イージュー☆ライダー」という大ヒット曲で大合唱を巻き起こすという、飄々としているように見えて、自分たちがやりたいことと観客に求められているもののバランス感覚はやはり抜群。
「夕方に食べたラーメンがすごく美味しくて、ゲップすらも美味しい」
と、徳島のラーメンを堪能したことをうかがわせるMCから、どんどん曲はブルース色の強い渋さを増していく。
チャットモンチーのことには触れることなく、ひたすらに曲を演奏するという自身のスタイルを貫きながら、「俺のギター」からはブルースからロックンロールへと転じ、最後は今でもテレビで流れまくっている「さすらい」で大合唱となったが、やはりバンドの安定感の高さは本当に素晴らしい。1人ですべて楽器を演奏できる奥田民生が選んだ人たちであり、なおかつずっと活動をともにしてきているという事実がそれを物語っているが、ライブを見ると本当にシンプルなんだけど奥深いロックンロールバンドであることがよくわかる。
1.MTRY
2.イージュー☆ライダー
3.エンジン
4.KAISUIYOKUMASTER
5.サケとブルース
6.白から黒
7.俺のギター
8.ヘイ上位
9.さすらい
さすらい
https://youtu.be/pdbSLpBgQ2I
最後の転換では、M-1グランプリでも結果を残している兄弟コンビ、ミキが登場。
兄・昴生が結婚したばかりということで、弟・亜生が
「俺と嫁さんのどっちが大事やねん!」
と迫るという内容なのだが、「奥田民生さんとチャットモンチーさんの間ってどんな罰ゲームやねん!」「カラオケでよく「シャングリラ」を歌う。電気グルーヴの(笑)」と音楽ネタもふんだんに入れ込むのだが、
「ロックのライブのノリやめい!今はお笑いやから割り切れ!(笑)」
と「フゥ~!」という歓声が上がりがちなロックファンのノリに昴生は慣れていない様子。それでも爆笑を巻き起こすのはさすがだ。
19:30~ チャットモンチー
そしてついにトリのチャットモンチーの時間に。セッティングが終わったステージはギターとベースとドラムのみという、3人だった時のシンプルなもの。果たして「こなそんフェス」という文字がプリントされたドラムを叩くのは誰なのか。
そんな中で2人が登場すると、ドラマーは現れず、
「最近の私たちの徳島でのヒット曲」
というFM徳島のジングル的な、10秒ほどの曲「きっきょん」を2番まで演奏。それでも20秒ほどである。
するといよいよドラマーを呼び込む。呼び込まれたのは、この日のメインMCであり、チャットモンチー大阪支部のドラマーでもある、小籔千豊。オープニングの時と同様に、自身にドラムという新しい道を教えてくれたチャットモンチーの完結を惜しみながら、実にシンプルなドラミングで「風吹けば恋」、さらには「真夜中遊園地」を演奏する。
初期の2人とだったらちょうどいいくらいだったかもしれない。しかし今の2人は当時とは比べ物にならないくらいに演奏が上手くなっている。それをわかっていながらもステージでドラムを叩くということを引き受け、しかも多くの人が聴きたかったであろうこの2曲をしっかり叩けるように合わせてきた小籔千豊にはリスペクトしかない。すべらない話に出ている時よりもはるかに。
小籔千豊が捌けると、ドラムセットまでもが撤収される。しかし福岡晃子は「好きな動物は象」など、次に出てくるドラマーの紹介を始める。ドラムセットが運ばれてくると、そのセットにすでに座っていたのは、なんと奥田民生。こんなにもベテランらしからぬ登場をしてくるとは。
どうやらこの登場の仕方は急遽決めたらしく、チャットモンチーの2人も完全にビックリしていたが、自身のライブの時とは違い、サングラスをかけずに作業着というラフな出で立ちで、完全に酔っ払っている。
そんな奥田民生と一緒に演奏されたのは、徳島県民ならみんな知っているという、祭りの時期によくCMで流れる「阿波のたぬき祭りのCMの曲」。奥田民生は確実にこの曲を知らなかったはずで、譜面を見ながら演奏していたが、酔っ払っているのにこんなにドラムが叩けるというのは本当にとてつもない。さすが「ひとりカンタービレ」など、ギター以外の楽器も本職顔負けの技術で演奏してきた男である。
そしてもう1曲はやはり奥田民生がプロデュースした「コンビニエンス・ハネムーン」。福岡もベースではなくギターを弾くが、こんな編成でこの曲を聴くことができるとは。昨今の若手ロックバンドの「音を足して足して積み重ねる」のとは真逆の、ひたすらに「音を削いで削いでいく」というソロにも通じる奥田民生サウンド。とんでもなく贅沢な時間だった。奥田民生はそのままドラムを叩きながらドラムセットごと退場していくというのもあまりに面白すぎるというか、普段こんな姿は絶対見れない。
奥田民生と入れ替わりにステージに現れたのは、「好きな動物はくじら」であるという、シュノーケルのドラマーの山田雅人。かつて同じ事務所に所属していたという同士が叩く曲はチャットモンチーのデビュー曲である「ハナノユメ」。ドラムセット自体もそうだし、実にシンプルな演奏だったが、福岡は
「シュノーケル、一回辞めたんだけど、帰ってきて。それでこのフェスに出てくれてる。最後に一緒にできて本当に良かった!」
とシュノーケルを讃えていた。
山田のドラムセットの代わりに運ばれてきたのは、この日の中では最も派手かつ見慣れているドラムセットなのだが、先頭に立って運んでいる男が明らかに体がデカすぎる。振り向くとやはりその男はBase Ball Bearの堀之内大介であり、かつて若若男女サマーツアーでよくやってた曲という堀之内のリクエストで「恋の煙」を演奏。奇しくもこの曲はトリビュートアルバムには参加しなかった小出がEPのカップリングで「同期 ver.」として参加した曲であるが、ここまでのドラマーたちと比べても堀之内は全く負けていないというか、むしろ1番似合っていた。それはずっと最も近くで切磋琢磨してきたというのもあるだろうが、ベボベに訪れた数々の変化がメンバーそれぞれの演奏力の向上に結びついているということを示していたように思う。
最後のサビ前でのブレイク部分では、なんと橋本が「歓声をくれ」とばかりに手で観客を煽る。今までこういうことはしてこなかったどころか、むしろ煩わしいんじゃないかとすら感じさせた橋本が。やっぱりそれは最後だからこそなのだろうか。
「恋の煙」を終え、さて次は?と思っていると、堀之内のドラムは撤収されず、さらに次々と運び込まれる機材。ドラムセットもシンプルなものがもう一つ、ミニKORGまでもがセッティングされると、
「せっかくだから、みんな出てきてー!」
という福岡の声によってステージに現れたのは、なんとBase Ball Bearとシュノーケルのメンバーたち。つまりは若若男女サマーツアーの最後に毎回やっていた、出演者全員集合でのセッション。それぞれが楽器を手にし、司会役の小出は
「昔にやっていた時は余った人は楽器持たないで踊ってたんだけど」
と言っていたが、全員が演奏するようになったのは、あの頃から全体の人数が2人減った(チャットモンチーの高橋久美子とベボベの湯浅将平)ということもあるはず。そういう意味でも、やっぱりあの頃と変わったのは年齢だけじゃない。
その小出のことを
「こいちゃんは本当に立派になった。若若男女サマーツアーの時、最初は全然喋ってくれなかったのに、ファイナルの時は誰よりも寂しそうにしてた。でも次の年になったらまた元に戻ってる(笑)1年に一回しか会わない、いとこみたいに(笑)」
といじる福岡。そうしたやり取りが見れるのも、この日で最後。もう全員が30代中盤の、最後の若若男女サマーツアー大集合で演奏されたのは、
「この曲は僕らの青春と言っても過言ではないでしょう!」
と小出が言う通りに、かつてツアーでアンコールの時にセッションしていた「今夜はブギー・バック」。小出がラップパート、橋本と西村がボーカルパートを歌うというのもあの頃と同じだが、メンバーそれぞれの演奏力はあの頃とは全く違う。それを見せるために間奏部分ではそれぞれのソロパートも挟まれ、ラストはサビを観客も合唱して大円団。
かと思いきや、ミニKORGを演奏していた福岡が
「ちょっと待って!みんなでこの曲を演奏しないと終われないでしょ!」
とベースに持ち替える。しかし突然小出が
「じゃあちょっと友達もう1人連れてくるから待ってて!」
と言って、袖から手を引いてきたのはまさかの高橋久美子。そしてステージの中央には、
「SMAの事務所の倉庫に置きっ放しになっていたのを持ってきた」
と小出が言う、かつて高橋が使っていたドラムセットが。その高橋はドラムセットに向かう前から
「堀之内くんと山田くんがドラムを叩いている姿を見てるだけで…」
と涙を流している。かつては自分も叩いていた「今夜はブギー・バック」のセッションでドラムを叩いてくれた2人。ある意味では自分の不在を埋めてくれた2人の頼もしさを見て涙が流れたのだろう。
そして高橋はドラムセットに座り、「シャングリラ」のイントロのバスドラを蹴り始める。本当に実に久しぶりの、高橋久美子のドラム。間違いなく脱退以降初のことだが、やはりブランクを感じさせるというか、慣れていない感がすごく出ていた。でもそうした技術的なことなんかどうでも良かった。またこのメンバーが一緒にステージに立っていて、高橋がドラムを叩いている。それだけで良かったんだ。
だからすでに泣いていた高橋に加えて、橋本も曲途中でいきなり観客に歌を任せたのだが、橋本も泣いていた。涙で歌えなくなっていた。でも会場には大きな歌声が響いていた。それはそうだ、みんな数えきれないくらいに聴いてきた曲なのだから。この瞬間が見れただけで、徳島まで見に来た意味は確かにあった。ステージに立っていた人たちと同様に、自分もあの夏に若者だったから。
1.きっきょん
2.風吹けば恋 w/ 小籔千豊
3.真夜中遊園地 w/ 小籔千豊
4.阿波のたぬき祭りのCM曲 w/ 奥田民生
5.コンビニエンス・ハネムーン w/ 奥田民生
6.ハナノユメ w/ 山田雅人(シュノーケル)
7.恋の煙 w/ 堀之内大介 (Base Ball Bear)
8.今夜はブギー・バック w/ Base Ball Bear,シュノーケル
9.シャングリラ w/ 高橋久美子、Base Ball Bear,シュノーケル
シャングリラ
https://youtu.be/NEb9MTNk3y4
最後は出演者総登場の阿波踊りでフィナーレを迎えたが、この日はやっぱりBase Ball Bearとシュノーケルがいたことが1番大きい。もはや今のフェスにおいては全く豪華な出演者じゃないし、両バンドを全然知らない人や、若若男女サマーツアーのことを知らない若い人たちにとっては、内輪ノリに見えたかもしれない。
でもやっぱり、これをやらないとチャットモンチーは完結できなかった。あのツアーに参加した我々が、今でも本当に美しい青春の思い出としてあのツアーを記憶しているように、日本中のいろんな場所でライブをしてきたメンバーたちも、あの夏のことが忘れられない思い出になっている。
あのツアーの頃、ようやく自分たちと同じ世代のバンドが台頭してきた。そしてそのバンドたちの未来に心からワクワクしていたし、これからは我々の世代が中心になる時代だ、と心を踊らせていた。もう、その時代は過ぎてしまったかもしれない。でも、自分たちが信じて、大切にしてきたあの夏は、やはり最高に美しいものだった。最後の最後にそれを確かめることができた。今までずっと一緒に生きてこれて、本当に良かったよ。
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2年前にはアジカンやPerfumeも出演し、「私たちの地元の徳島にたくさんの人が来て欲しい」という2人の志を持ったフェス。最後だからこそ、のアーティストも集まり、チャットモンチーの最後を彩る。
会場のアスティとくしまは徳島駅からバスで15分くらいの場所にある、文芸館などに併設された、まさに各自治体にある公民館というか体育館といった様相。一応キャパは5000人と聞くとかなりデカい。
外には徳島の名産であるすだちなどを使った飲食スペースもあり、徳島だからこそのフェスであることを存分に感じさせる。
開演前には法被を着たチャットモンチーの2人と、吉本新喜劇の小籔千豊が登場して前説。今や川谷絵音と一緒にジェニーハイというバンドをやっている小籔千豊は
「僕がドラムを初めて、バンドができるようになったのはチャットモンチーのおかげ。フェスは楽しいものだけど、僕は悲しみに暮れてます(笑)」
と、やはりチャットモンチーが最後のライブを寂しく思っている様子。
13:00~ シュノーケル
いよいよ開演を迎えた、チャットモンチー最後の2日間。そのトップバッターを担うのは、かつてチャットモンチー、Base Ball Bearとともに「若若男女サマーツアー」という合同ツアーを行なった、シュノーケル。2010年に活動休止したが、2014年に活動を再開しており、3バンドが揃う最後の日にこのフェスのステージに立つ。
つるうちはな(キーボード)、岡愛子(ギター)の女性サポートメンバー2人を加えた5人編成で登場。なぜかこのタイミングで名前を本名の香葉村多望から変えたKABA_3(ベース)はかつてよりもかなり太ったように見える。
「オーイ!」
と、こちらは昔からほとんどシルエットが変わらない西村晋弥(ボーカル&ギター)が叫ぶと、「奇跡」でこのフェスの始まりを鳴らす。サポートメンバーによる分厚いバンドサウンドは曲にあらかじめ必要とされているものであったことがわかるし、何よりもドラムの山田雅人も含めて、全員がメガネをかけているという出で立ちや歌詞からはいかにもな文系ギターロックバンドというイメージを持たれがちだが、ライブでの演奏を見ると、実にたくましいギターロックバンドであるということがわかるのもよくわかる。
つるうちはなが曲タイトルが書かれた旗を振りながらステージを疾走する再始動後の「NewPOP」でアッパーにフェスを盛り上げると、
「僕らがバンド活動してきて1番楽しいって思ってることが、チャットモンチーとBase Ball Bearと一緒に廻った、若若男女サマーツアーで。あれから10年経って、僕ら全員いろいろあったけど、今こうして同じステージに立っているっていうのは絶対に何か理由があると思っています」
と、あの夏が今でもバンドにとって忘れ得ぬ大切な思い出であることを西村が語って「理由」を演奏しようとするのだが、つるうちはなが演奏に入れずにまさかのやり直しになり、西村が同じ話を途中からもう一回するという展開に。
その「理由」は
「まぶしくて まぶしくて 僕らはそれを奇跡と呼んだ
君と僕が出会った10年後のこと」
というフレーズで締められる。それはまるでこの日、あの夏を思い返すメンバーの心境そのものであるかのように。
西村の死生観を力強いギターロックに乗せた「シュレーディンガーの僕を」でさらにバンドの演奏は力強さを増すと、
「最後にもう1曲…チャットモンチーと同じ時間を過ごした曲!」
と言って演奏されたのは、このバンドの名前を広く知らしめるとともに、チャットモンチーと同じステージに立つきっかけになった「波風サテライト」。この曲を演奏する姿は、確かに10年前の「あの夏」を思い出させた。
でも、もうあの頃には戻れない。3組のメンバーも我々も年齢を重ねて若者と言えるような年齢ではなくなったし、いろいろなことを経験してこの日、この場所にやってきた。もちろんそこには涙を流したくなるようなこともあった。
それでも、いち早く立ち止まることを選んだシュノーケルが今こうして我々の前に立ってライブをやっている。それにこの上ないくらいに希望を感じている。
わざわざシュノーケルを見るためだけに徳島まで来る人はそうそういないだろうし、そうした集客であったりも含めて、今、フェスにシュノーケルを呼ぶメリットはほとんどないし、実際にフェスに名前が載ることも全くないバンドだ。でもシュノーケルとベボベが同じ日に同じステージに立つ瞬間を作らないと、きっとチャットモンチーは終われなかった。シュノーケルも、チャットモンチーも、Base Ball Bearも、もちろんあの夏にあのツアーを見に行っていた我々にも、あのツアーは特別な、本当に大切な思い出だし、今でも最も大事な存在なのだ。
10年前はこの3組にいろんなことが待ち受けてるなんて思ってもいないくらい、メンバーも我々も若者だった。
1.奇跡
2.NewPOP
3.理由
4.シュレーディンガーの僕を
5.波風サテライト
理由
https://youtu.be/L6Bm5IIoMXw
13:40~ yonige
ガールズバンド、しかもスリーピース編成のバンドがこのフェスに出演するというだけで大きな意味を含んでいる。(yonigeは今のメンバーは牛丸ありさとごっきんの2人で、サポートドラマーのホリエは男性だが)
前週のJAPAN'S NEXTや春フェスの時と同様に「最愛の恋人たち」のメロディはおだやかだがギターはノイジーなサウンドで立ち上がると、「our time city」の後には、
牛丸「もう、何から話したらいいんかな?」
ごっきん「うちらはチャットモンチーの養分を吸い込んでブクブクになったバンドで。
まだyonigeをやる前の高校生の時に、万引きシャンプーっていうバンド名でチャットモンチーのコピーをやってたんやけど、その時にスタジオに入ってみんなでキャッキャしてたのがバンドやってて1番楽しい思い出」
という、やはりチャットモンチーに影響を受けてバンドの道に進んだエピソードを語る。
だからこそ、半端な姿は見せられない、とばかりに、いつもと同じようでいて、牛丸のボーカルはいつもよりも伸びやか、ごっきんもどことなくいつもよりも頭を振りながらベースを弾いているように見える。つまり、いつもより気合いが入っているように見える。
それは原曲よりもはるかにテンポが速くなった「アボカド」でも、サイケデリックに酔いしれるバラード曲「沙希」でも変わらない。
ごっきん「チャットモンチーに出会ったのいつ?」
牛丸「小学6年生の時に。「耳鳴り」で」
ごっきん「早っ!うち高校生になってからやで!」
牛丸「遅っ(笑)」
ごっきん「でもチャットモンチーを聴くと、今でも高校生の時に通学で歩いたり、チャリ乗ったり、バイク乗ったりしてたのを思い出す。バイクは禁止だったんで、しっかり停学になったけど(笑)
あと徳島はよく遠征で来るんですけど、夜に海で花火したりして。すごい楽しかった。大好きな街です」
とチャットモンチーとともに育ち、チャットモンチーが育った徳島を愛する話をすると、新曲「リボルバー」のポップなメロディが会場を包み、ラストは「さよならプリズナー」で美しいメロディと熱狂を両立させてライブを終えた。
いつもよりも気合いが入っているように見えた(JAPAN'S NEXTの時のようなサウンドトラブルもなかったし)のは、間違いなくチャットモンチーのフェスに呼ばれたからであろう。その憧れの存在から、この日確かにyonigeの2人はバトンを受け取った。その確信や自信が見えたライブだった。
自分はチャットモンチーが登場するまで、女性ボーカルの曲を全く聴いていなかった。もしチャットモンチーがいなかったら、今でもそうだったかもしれないし、そうだったとしたらyonigeの音楽にも出会っていないし、こうしてライブにも行ってないだろう。
そもそも、チャットモンチーがいなかったらyonige自体がこうしてシーンに登場していない可能性もあるわけで、そうして考えるとやはりチャットモンチーが音楽シーンにもたらしたものは本当にデカい。もう感謝しても感謝しきれない。
1.最愛の恋人たち
2.our time city
3.センチメンタルシスター
4.ワンルーム
5.アボカド
6.バッドエンド週末
7.沙希
8.リボルバー
9.さよならプリズナー
リボルバー
https://youtu.be/w_3atGoniPM
転換中には野性爆弾とガリットチュウ福島による、ネタライブ。川島の「ダウンタウンの浜田雅功の白塗りモノマネ」という最近おなじみのネタだが、「自分が舐めた指を福島にも舐めさせようとする」など、完全に意味不明な展開であり、最後には福島も「えっ!?」と素でビックリするくらいいきなりネタが終わる。
15:05~ Base Ball Bear
2年前に開催された時も出演している、チャットモンチーの同期であり、最大の同志でもあるバンド、Base Ball Bear。前回は湯浅が失踪中(公式には体調不良とアナウンスされ、まだ脱退はしていなかった)で、サポートギターとしてthe telephonesの石毛輝を加えた編成で出演したが、今回は今年の春以降の形である、サポートを入れないスリーピースでの出演である。
リハで「17才」をまるまる1曲演奏してからおなじみのXTCのSEでメンバーがステージに登場すると、「BREEEEZE GIRL」「祭りのあと」と、この3人編成でもおなじみの夏曲を連発するのだが、普段から演奏されている曲であるとはいえ、この日、この場所で聴くと、これまでにこのバンドがチャットモンチーと積み重ねて来た歴史を思い返して胸が熱くなる。
「今日、俺はどんな心境になるんだろうか、と。昨日からずっと考えていたわけです。チャットモンチーが完結するフェスで、自分がどう思うのか。もしかしたら泣いてしまうんじゃないかと。でも楽屋にチャットの2人が書いた、メッセージカードがあるんですけど、そのカードに「泣かないでね」って書いてあって。これで泣いたら俺は相当みっともないぞ、と(笑)
我々としても2年前に出た時は色々あって、サポートギターに石毛君に出てもらって。うちらのゴタゴタをチャットモンチーのお祭りに持ち込みたくなかったから。
で、今年はこうしてスリーピースでやってるわけですけど、スリーピースの先輩であるチャットモンチーに、僕らがスリーピースでバンドをやることを本当に楽しんでるところを見てもらいたいな、と。チャットモンチーも先にメンバーが抜けたりしたのをずっと横で見てきましたから。
でも、俺たちは絶対やめねーからな!!!」
という、チャットモンチーをずっと隣で見てきたからこその小出の言葉。普段は熱いことをほとんど言わない、むしろそういうことを言うような人を冷めた目で見ているような小出が言うからこその、辞めない宣言は13年くらいこのバンドを見てきて、最も頼もしく見えた。
それは演奏も同じで、スリーピースになったことでメンバーの中で最も物理的にステージ上を動けるようになった関根がステージの前に出てきて笑顔を見せながらベースを弾いたり、両サイドまで走って行ってベースを弾いたり。スリーピースになったことで、確実にメンバーそれぞれの普段は増えている。小出はリードギターを弾きながら歌うことになっているし、関根はツアーではチャップマンスティックという新しい楽器を演奏し、堀之内も過去の曲では手数をかなり増やしている。そうした努力や苦労すらも、全くネガティヴな感じがなく、むしろ
「これこうしたら凄くね!?」
みたいに楽しみながらアレンジしているのが目に浮かんでくる。それはスリーピースの先輩であるチャットモンチーにも間違いなく伝わっているはず。
「真夏の条件」の間奏で小出と関根が向かい合って演奏をするという熱い場面もあり、「The CUT」では小出のラップとともにリズム隊のみによる演奏のグルーヴがさらに増していく。そしてラストは
「チャットモンチーの2人のこれまでと、これからの音楽人生がドラマチックなものでありますように」
と2人への思いを込めた「ドラマチック」。それはやはりシュノーケルと同様に、一緒に過ごしていた、「あの夏」を思い起こさせるものであった。
終わることを選んだチャットモンチーと、続けることを選んだBase Ball Bear。ともにそこに至るまでには、メンバーの脱退という出来事があったわけだが、湯浅がいなくなった時に、すでに高橋久美子が脱退して、2人だけで活動を続けていたチャットモンチーの姿を、ベボベの3人はずっと見てきた。だからこそ自分たちもやれるという勇気やバンドへの信念をチャットモンチーからもらってきたはず。単なる同期ではない、バンドという生命体の命を救いあってきた、最大の戦友。
チャットモンチーは完結してしまうけれど、ベボベが活動を続けていこうとする姿は本当にカッコいいし、頼もしい。バンドだけでなく、何事も続けることの方が難しいだけに、ベボベの選択を自分は全面的に支持したいし、これからもずっと、一緒に年齢を重ねていきたい。チャットモンチーが完結を選んだことで、ベボベという存在がさらに自分の中で大きなものになっている。
リハ.17才
1.BREEEEZE GIRL
2.祭りのあと
3.GIRL FRIEND
4.逆バタフライ・エフェクト
5.真夏の条件
6.The CUT
7.ドラマチック
BREEEEZE GIRL
https://youtu.be/bLnRythb-pw
この転換時間には南海キャンディーズのネタライブ。
「しずちゃんとチャットモンチーのあっこさんが飲みに行ったりしている関係だというのを、楽屋にあったメッセージカードで初めて知った」
というくらいに存在を無視されている山ちゃんが、シェアハウスで生活するいけすかない若者たちをぶった斬るというネタで爆笑を巻き起こす。かつて日の丸を背負って戦ったしずちゃんのボクシングも自然にネタに取り入れるあたりは本当にさすがだ。
16:30~ EGO-WRAPPIN'
この日の出演者の中では1番「?」というか、チャットモンチーとの関係性があまり見えてこない、EGO-WRAPPIN'。ホーン隊も含めた、THE GOSSIP OF JAXXを含めた7人編成で登場。
中納良恵のセクシーな歌声とともに、ジャジーかつブルージーな演奏でゆったりと始まった前半。新曲も含めて、この辺りは踊るというよりはゆらゆらと体を動かすというような楽しみ方。しかし森雅樹のギターの凄まじさたるや、まるでアメリカのブルースミュージシャンのごとしである。
「久しぶりにチャットモンチーの2人に会ったら、すごくキレイになっていてビックリしたな~」
と森は語っていたが、それはチャットモンチーとの関係の深さをうかがわせるとともに、中納も全く年齢を感じさせないというか、見た目が変わらないのも凄いと思うのだが。
一転して後半は中納をはじめとしたステージ上のメンバーも踊りまくり、飛び跳ねまくりのアッパーなダンスチューンを連発。
基本的にこのバンドの音楽は自分にとっては好みというわけではないし、やはりこの日も最もアウェー感を感じるアクトとなっていたが、例えば「GO ACTION」などはライブで聴くととてつもなくカッコいいし、そこに宿るグルーヴは凄まじい。普段自分が見ているような、ライブハウスで生きているバンドとは違えど、やはりこのバンドもライブで生きてきたバンドであるということがよくわかる。
後半にもアッパーな新曲を挟み、ラストはやはりバンド最大のヒット曲である「くちばしにチェリー」で演奏も客席もどんどん熱を増していく。ツービート主体のドラムも含め、この曲はthe band apartなどとは違った形でのジャズとパンクの融合を果たした曲である。こうした曲が作れるのは2人がとてつもない音楽ジャンキーであるからだし、バンドが演奏から確かな熱量を放っているからである。
そしてライブ中、ステージ袖ではあっこがずっと楽しそうに踊っていた。その姿は、なぜこのバンドがこのフェスに招かれたのかというのを最もわかりやすく示していた。
1.PARANOIA
2.新曲
3.A Love Song
4.BRAND NEW DAY
5.GO ACTION
6.新曲
7.くちばしにチェリー
くちばしにチェリー
https://youtu.be/f2w9JwQaT4U
18:10~ 奥田民生
かつてはチャットモンチーがトリビュートアルバムに「息子」で参加したり、プロデューサーとして曲に参加したりと、チャットモンチーの第2の師匠的な存在(最初の師匠は初期のプロデューサーだった、いしわたり淳治)と言える、奥田民生。近年おなじみの、ステージにはサボテンなどが配置され、中央にソファ(誰も座らない)が置かれているために、本人が下手側、ドラマー湊雅史、ベース小原礼、キーボード斉藤有太という、MTRY編成での出演である。
奥田民生がサングラスをかけ、このバンドの紹介的な「MTRY」からスタートし、凄腕メンバーたちによるグルーヴを見せつけながら、「イージュー☆ライダー」という大ヒット曲で大合唱を巻き起こすという、飄々としているように見えて、自分たちがやりたいことと観客に求められているもののバランス感覚はやはり抜群。
「夕方に食べたラーメンがすごく美味しくて、ゲップすらも美味しい」
と、徳島のラーメンを堪能したことをうかがわせるMCから、どんどん曲はブルース色の強い渋さを増していく。
チャットモンチーのことには触れることなく、ひたすらに曲を演奏するという自身のスタイルを貫きながら、「俺のギター」からはブルースからロックンロールへと転じ、最後は今でもテレビで流れまくっている「さすらい」で大合唱となったが、やはりバンドの安定感の高さは本当に素晴らしい。1人ですべて楽器を演奏できる奥田民生が選んだ人たちであり、なおかつずっと活動をともにしてきているという事実がそれを物語っているが、ライブを見ると本当にシンプルなんだけど奥深いロックンロールバンドであることがよくわかる。
1.MTRY
2.イージュー☆ライダー
3.エンジン
4.KAISUIYOKUMASTER
5.サケとブルース
6.白から黒
7.俺のギター
8.ヘイ上位
9.さすらい
さすらい
https://youtu.be/pdbSLpBgQ2I
最後の転換では、M-1グランプリでも結果を残している兄弟コンビ、ミキが登場。
兄・昴生が結婚したばかりということで、弟・亜生が
「俺と嫁さんのどっちが大事やねん!」
と迫るという内容なのだが、「奥田民生さんとチャットモンチーさんの間ってどんな罰ゲームやねん!」「カラオケでよく「シャングリラ」を歌う。電気グルーヴの(笑)」と音楽ネタもふんだんに入れ込むのだが、
「ロックのライブのノリやめい!今はお笑いやから割り切れ!(笑)」
と「フゥ~!」という歓声が上がりがちなロックファンのノリに昴生は慣れていない様子。それでも爆笑を巻き起こすのはさすがだ。
19:30~ チャットモンチー
そしてついにトリのチャットモンチーの時間に。セッティングが終わったステージはギターとベースとドラムのみという、3人だった時のシンプルなもの。果たして「こなそんフェス」という文字がプリントされたドラムを叩くのは誰なのか。
そんな中で2人が登場すると、ドラマーは現れず、
「最近の私たちの徳島でのヒット曲」
というFM徳島のジングル的な、10秒ほどの曲「きっきょん」を2番まで演奏。それでも20秒ほどである。
するといよいよドラマーを呼び込む。呼び込まれたのは、この日のメインMCであり、チャットモンチー大阪支部のドラマーでもある、小籔千豊。オープニングの時と同様に、自身にドラムという新しい道を教えてくれたチャットモンチーの完結を惜しみながら、実にシンプルなドラミングで「風吹けば恋」、さらには「真夜中遊園地」を演奏する。
初期の2人とだったらちょうどいいくらいだったかもしれない。しかし今の2人は当時とは比べ物にならないくらいに演奏が上手くなっている。それをわかっていながらもステージでドラムを叩くということを引き受け、しかも多くの人が聴きたかったであろうこの2曲をしっかり叩けるように合わせてきた小籔千豊にはリスペクトしかない。すべらない話に出ている時よりもはるかに。
小籔千豊が捌けると、ドラムセットまでもが撤収される。しかし福岡晃子は「好きな動物は象」など、次に出てくるドラマーの紹介を始める。ドラムセットが運ばれてくると、そのセットにすでに座っていたのは、なんと奥田民生。こんなにもベテランらしからぬ登場をしてくるとは。
どうやらこの登場の仕方は急遽決めたらしく、チャットモンチーの2人も完全にビックリしていたが、自身のライブの時とは違い、サングラスをかけずに作業着というラフな出で立ちで、完全に酔っ払っている。
そんな奥田民生と一緒に演奏されたのは、徳島県民ならみんな知っているという、祭りの時期によくCMで流れる「阿波のたぬき祭りのCMの曲」。奥田民生は確実にこの曲を知らなかったはずで、譜面を見ながら演奏していたが、酔っ払っているのにこんなにドラムが叩けるというのは本当にとてつもない。さすが「ひとりカンタービレ」など、ギター以外の楽器も本職顔負けの技術で演奏してきた男である。
そしてもう1曲はやはり奥田民生がプロデュースした「コンビニエンス・ハネムーン」。福岡もベースではなくギターを弾くが、こんな編成でこの曲を聴くことができるとは。昨今の若手ロックバンドの「音を足して足して積み重ねる」のとは真逆の、ひたすらに「音を削いで削いでいく」というソロにも通じる奥田民生サウンド。とんでもなく贅沢な時間だった。奥田民生はそのままドラムを叩きながらドラムセットごと退場していくというのもあまりに面白すぎるというか、普段こんな姿は絶対見れない。
奥田民生と入れ替わりにステージに現れたのは、「好きな動物はくじら」であるという、シュノーケルのドラマーの山田雅人。かつて同じ事務所に所属していたという同士が叩く曲はチャットモンチーのデビュー曲である「ハナノユメ」。ドラムセット自体もそうだし、実にシンプルな演奏だったが、福岡は
「シュノーケル、一回辞めたんだけど、帰ってきて。それでこのフェスに出てくれてる。最後に一緒にできて本当に良かった!」
とシュノーケルを讃えていた。
山田のドラムセットの代わりに運ばれてきたのは、この日の中では最も派手かつ見慣れているドラムセットなのだが、先頭に立って運んでいる男が明らかに体がデカすぎる。振り向くとやはりその男はBase Ball Bearの堀之内大介であり、かつて若若男女サマーツアーでよくやってた曲という堀之内のリクエストで「恋の煙」を演奏。奇しくもこの曲はトリビュートアルバムには参加しなかった小出がEPのカップリングで「同期 ver.」として参加した曲であるが、ここまでのドラマーたちと比べても堀之内は全く負けていないというか、むしろ1番似合っていた。それはずっと最も近くで切磋琢磨してきたというのもあるだろうが、ベボベに訪れた数々の変化がメンバーそれぞれの演奏力の向上に結びついているということを示していたように思う。
最後のサビ前でのブレイク部分では、なんと橋本が「歓声をくれ」とばかりに手で観客を煽る。今までこういうことはしてこなかったどころか、むしろ煩わしいんじゃないかとすら感じさせた橋本が。やっぱりそれは最後だからこそなのだろうか。
「恋の煙」を終え、さて次は?と思っていると、堀之内のドラムは撤収されず、さらに次々と運び込まれる機材。ドラムセットもシンプルなものがもう一つ、ミニKORGまでもがセッティングされると、
「せっかくだから、みんな出てきてー!」
という福岡の声によってステージに現れたのは、なんとBase Ball Bearとシュノーケルのメンバーたち。つまりは若若男女サマーツアーの最後に毎回やっていた、出演者全員集合でのセッション。それぞれが楽器を手にし、司会役の小出は
「昔にやっていた時は余った人は楽器持たないで踊ってたんだけど」
と言っていたが、全員が演奏するようになったのは、あの頃から全体の人数が2人減った(チャットモンチーの高橋久美子とベボベの湯浅将平)ということもあるはず。そういう意味でも、やっぱりあの頃と変わったのは年齢だけじゃない。
その小出のことを
「こいちゃんは本当に立派になった。若若男女サマーツアーの時、最初は全然喋ってくれなかったのに、ファイナルの時は誰よりも寂しそうにしてた。でも次の年になったらまた元に戻ってる(笑)1年に一回しか会わない、いとこみたいに(笑)」
といじる福岡。そうしたやり取りが見れるのも、この日で最後。もう全員が30代中盤の、最後の若若男女サマーツアー大集合で演奏されたのは、
「この曲は僕らの青春と言っても過言ではないでしょう!」
と小出が言う通りに、かつてツアーでアンコールの時にセッションしていた「今夜はブギー・バック」。小出がラップパート、橋本と西村がボーカルパートを歌うというのもあの頃と同じだが、メンバーそれぞれの演奏力はあの頃とは全く違う。それを見せるために間奏部分ではそれぞれのソロパートも挟まれ、ラストはサビを観客も合唱して大円団。
かと思いきや、ミニKORGを演奏していた福岡が
「ちょっと待って!みんなでこの曲を演奏しないと終われないでしょ!」
とベースに持ち替える。しかし突然小出が
「じゃあちょっと友達もう1人連れてくるから待ってて!」
と言って、袖から手を引いてきたのはまさかの高橋久美子。そしてステージの中央には、
「SMAの事務所の倉庫に置きっ放しになっていたのを持ってきた」
と小出が言う、かつて高橋が使っていたドラムセットが。その高橋はドラムセットに向かう前から
「堀之内くんと山田くんがドラムを叩いている姿を見てるだけで…」
と涙を流している。かつては自分も叩いていた「今夜はブギー・バック」のセッションでドラムを叩いてくれた2人。ある意味では自分の不在を埋めてくれた2人の頼もしさを見て涙が流れたのだろう。
そして高橋はドラムセットに座り、「シャングリラ」のイントロのバスドラを蹴り始める。本当に実に久しぶりの、高橋久美子のドラム。間違いなく脱退以降初のことだが、やはりブランクを感じさせるというか、慣れていない感がすごく出ていた。でもそうした技術的なことなんかどうでも良かった。またこのメンバーが一緒にステージに立っていて、高橋がドラムを叩いている。それだけで良かったんだ。
だからすでに泣いていた高橋に加えて、橋本も曲途中でいきなり観客に歌を任せたのだが、橋本も泣いていた。涙で歌えなくなっていた。でも会場には大きな歌声が響いていた。それはそうだ、みんな数えきれないくらいに聴いてきた曲なのだから。この瞬間が見れただけで、徳島まで見に来た意味は確かにあった。ステージに立っていた人たちと同様に、自分もあの夏に若者だったから。
1.きっきょん
2.風吹けば恋 w/ 小籔千豊
3.真夜中遊園地 w/ 小籔千豊
4.阿波のたぬき祭りのCM曲 w/ 奥田民生
5.コンビニエンス・ハネムーン w/ 奥田民生
6.ハナノユメ w/ 山田雅人(シュノーケル)
7.恋の煙 w/ 堀之内大介 (Base Ball Bear)
8.今夜はブギー・バック w/ Base Ball Bear,シュノーケル
9.シャングリラ w/ 高橋久美子、Base Ball Bear,シュノーケル
シャングリラ
https://youtu.be/NEb9MTNk3y4
最後は出演者総登場の阿波踊りでフィナーレを迎えたが、この日はやっぱりBase Ball Bearとシュノーケルがいたことが1番大きい。もはや今のフェスにおいては全く豪華な出演者じゃないし、両バンドを全然知らない人や、若若男女サマーツアーのことを知らない若い人たちにとっては、内輪ノリに見えたかもしれない。
でもやっぱり、これをやらないとチャットモンチーは完結できなかった。あのツアーに参加した我々が、今でも本当に美しい青春の思い出としてあのツアーを記憶しているように、日本中のいろんな場所でライブをしてきたメンバーたちも、あの夏のことが忘れられない思い出になっている。
あのツアーの頃、ようやく自分たちと同じ世代のバンドが台頭してきた。そしてそのバンドたちの未来に心からワクワクしていたし、これからは我々の世代が中心になる時代だ、と心を踊らせていた。もう、その時代は過ぎてしまったかもしれない。でも、自分たちが信じて、大切にしてきたあの夏は、やはり最高に美しいものだった。最後の最後にそれを確かめることができた。今までずっと一緒に生きてこれて、本当に良かったよ。
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