ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2018 「BONES & YAMS」 @新木場STUDIO COAST 7/12
- 2018/07/12
- 23:55
前日に続いてのアジカンの「BEST HIT AKG 2」「骨盤」「芋盤」を提げたツアーの終盤戦、新木場STUDIO COAST 2daysの2日目。このツアー4公演目の参加にして、最後の参加となる。
前日もレポした通り(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-519.html?sp)、今回のツアーで数多く演奏されているレア曲の中でも、おそらく人生においてライブで聴くのが最後になる曲も間違いなく何曲もあるはずなので、しっかり目と耳に焼き付けておきたい。
この日もオープニングアクトのNick Moonが打ち込みも駆使しながらシンセを弾き、浮遊感のあるサウンドとその儚くも美しいボーカルを響かせる。
「今日は蒸し蒸し暑いですね」
「アジカンが大好き。アジカンのスタッフが大好き。みんなが大好き」
と、ツアー前半でも流暢だった日本語はさらにレベルアップしている。
「私はフジロックに出ます!またね!」
と東京の観客たちに再会を約束したが、見るたびに好きになってきている。それは音楽はもちろん、Nickの人間性によるものも大きい。また日本に来た時に。
そして今ツアー4回目のアジカン。やはり基本的に流れは変わらないので、前日及び
DiverCity2日目(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-504.html?sp)
Zepp Tokyo初日(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-512.html?sp)
のレポも参照していただきたい。
「Right Now」で伊地知潔がスティックを持った右腕を高く掲げ、「エントランス」ではイントロで喜多建介が人差し指を高く掲げる。何度見ても胸が熱くなる光景だし、伊地知は「エントランス」の時にドラムを叩きながら口ずさんでいる。メンバーが本当にライブを楽しんでいる様子が伝わってくる。ゴッチの声も前日よりはるかに良く出ていて、伸びがある。
喜多は「荒野を歩け」でギターソロを決めながら右足を高く上げ、自由に踊りながら歌うゴッチ以上に運動量は多そう。実際にかなりステージを左右に移動しながら演奏していた。
「白に染めろ」「極楽寺ハートブレイク」あたりはもうこのツアーで聴き納めというか、もうライブでやらなそうな曲たち。それだけにこうして何度も聴けたのは実に嬉しいし、こうした曲でもイントロでは歓声が上がっていたのはさすがにこのツアーに来るくらいコアなアジカンファンたちである。
「ムスタング」と日によって入れ替わりで演奏される6曲目はこの日は「ロードムービー」。
「3塁ベンチの夏が終わる」
というフレーズに、全国で開幕した高校野球の球児たちの一瞬で過ぎ行く夏に想いを馳せざるを得ない。かつてのゴッチ少年のように。
ゴッチ「名古屋場所の力士の控え室みたいなところが滑りやすくて、白鵬が転んで怪我をしたのが本当に心配。これだけ人がいれば大相撲関係者の方もいらっしゃるんじゃない?5人友達を辿れば誰でも辿り着くって言うからね(笑)」
喜多「あなたは相撲と癒着してるからすぐ辿り着くだろうけど(笑)」
ゴッチ「みんなも5人友達を辿れば俺たちに辿り着くよ。だから今日は関係者ライブ!(笑)」
という、明らかに喋るネタがなさそうなゴッチのMCからは、シモリョーがカップリングバージョンのコーラスを入れる、ミックスバージョンの「サイレン」から初期に分類されるような時期の曲が続く。わかりやすく盛り上がる曲たちではないが、ゴッチの言う通りに自由に踊ったりして各々が曲を噛みしめている。
「今年アルバムを出して、年明けてからライブハウスとホールを廻るツアーもやります。40本くらいやるのかな。ホールの方がいいっていう人もいるでしょ?(笑)
でも俺は昔、アジカンのライブで
「ホールの前の方の席と後ろの方の席が同じ値段なのはおかしい。前の方が高い値段にするべきだ」
みたいなこと言ったら、
「それやったら後ろの方の席のチケットが売れません!」
ってスタッフに言われてさ(笑)」
とツアーや「俺は根暗だったからいつもライブハウスの端っこで見ていた」などライブにまつわるゴッチのエピソードが話されたが、何よりも嬉しいのはやはりすでにツアーが決まっているということ。ホールということは「Wonder Future」ツアーの時のような、斬新な演出があるのではないかと期待してしまう。そもそもが2枚組のアルバムで、パワーポップ的な内容にするために重めな空気の「生者のマーチ」をアルバムから外してベストに入れた、というだけにコンセプトの強いものになりそうなだけに。
その最新曲「生者のマーチ」も演奏された後半ではさらにバンドの演奏が熱を帯びていく。特に前日はゴッチが盛大に展開を間違えた「夜を越えて」「サイエンスフィクション」というあたりはゴッチと喜多の2人にさらにエンジンがかかったように見える。
6曲目同様に日ごとに曲が入れ替わる16曲目はこの日は「融雪」。すでにこのツアーで聴いているが、「未だ見ぬ明日に」「サイエンスフィクション」に続いてこの曲まで演奏されると、改めて「ワールド ワールド ワールド」の後にリリースされたミニアルバム「未だ見ぬ明日に」収録の各曲のクオリティの高さが浮き彫りになる。「脈打つ生命」や「深呼吸」もごく稀にライブで演奏されることもあるし。
「「かかってこいよー!」とか言わないからね。かかってこられたら全力で逃げる(笑)
「まだまだ行けるかー!」ってねぇ、どこにも行くんじゃねぇ!っていうね(笑)
性格悪いおじさんだわ~(笑)」
という、ロックバンドのフロントマンがライブの終盤によく口にすることをいじるゴッチのMCが意外にもあっさりと終わったので、ゴッチが曲タイトルをコールしても準備ができていなかった伊地知が
「ボサッとしてんなよ!(笑)」
とゴッチに怒られるという場面もあったが、メンバーもこのツアーに参加した人も、この部分のMCがこんなにあっさり終わるとは思っていなかったであろうだけに致し方ない。
ゴッチの「イェー!」というシャウトが高らかに響き、再録版の「ソルファ」にもリアレンジバージョンが収録された「Re:Re:」は、ライブバージョンのアレンジがあのリアレンジに至ったことがよくわかり、「Standard」ではゴッチがサビで歌いながらギターを高く掲げる。見た目的にはロックスターではないかもしれないが、こうした挙動や意志、発言の一つ一つが本当に自分にとってのロックスターだ。それでいてずっと最前線を走り続けていることも含めて。
そしてラストは「ワールド ワールド ワールド」から、アジカンのそれまでの歩みを中村祐介が描いたジャケットのイラストなどで総括したようなMVの映像を喚起させる、七色の虹のような照明の中で演奏され、ゴッチの「世界!世界!世界!」のシャウトが前日よりもはるかに伸びやかに響き渡った「新しい世界」で本編は終了。この曲でライブが終わった時の爽快感は本当に何ものにも変えがたい。
アンコールではもはやおなじみのNick Moonとともに登場し、Radiohead「High & Dry」のカバーでコラボ。薄明かりの照明と、Nickのファルセットボーカルが曲の幻想感をさらに際立てる。Nickが元々やっていたKYTEはRadioheadの影響を感じるようなバンドだったというのもあるが、まるで自分の曲であるかのように、本当にこの曲に合っている。
ゴッチ「Nick、終演後に毎回サイン会やってるんだけど、ツイッターでNickと一緒に写真を撮っている人を見ると、俺たちより人気あるんじゃないか?って思うくらいにみんないい顔をして写真撮ってる(笑)
昔はNANO-MUGENとかでもしょっちゅうそういうことあったもんなぁ(笑)」
喜多「ファン持ってかれるっていうね(笑)」
ゴッチ「そういう言い方をするんじゃないよ、建ちゃんは(笑)
音楽は棒倒しゲームみたいに、どれだけ多く砂を集めたやつの勝ちっていうわけじゃないんだから(笑)
勝ち負けもわからないしね。孫悟空とピッコロ大魔王だって戦ったら孫悟空が勝ったけど、料理対決だったらどっちが勝ってたかわかんないじゃん(笑)
だから好きな音楽が増えるのは嬉しいし、音楽を好きな人が増えるのも嬉しいよね」
とメンバーとの微笑ましいやり取りもありながら、喜多がシモリョーに向かって一礼すると、そのシモリョーが電子音を弾く「ムスタング」へ。これは「ソラニン」のカップリングに収録された「mix for 芽衣子」のバージョンと言っていいと思われるが、この曲までも演奏されたことにより、やはり「未だ見ぬ明日に」色が強いツアーというイメージになった。
するとゴッチがマイクスタンドからスッと離れ、リズムに合わせた妙なダンスを踊り始める。流れ始めたイントロは…まさかの喜多ボーカル曲の「嘘とワンダーランド」。いや、再録「ソルファ」ツアーでも喜多ボーカルは披露されていたし、そこまでレア曲というわけではないのだが、まさかここでやるとは。これまでのアンコールで演奏された曲が割と代表曲的な曲が多かっただけになおさら。
ゴッチとは全く異なるハイトーンボイスで歌う喜多がところどころに「ソイヤッ!」という長渕剛ライクな掛け声を入れると、完全なアドリブだったのか、ゴッチも山田も笑いを隠すことができない。
そんな喜多の姿を、
「次にAKG総選挙やったら建ちゃんがセンターだよ(笑)アルバムに投票用紙つけるから(笑)
でも本当はセンターって嫌なんだよね。いろんな音が返ってきちゃうから聴きにくいんだよね。だからたまにボーカルがセンターにいないバンドはそういう時期だっていうこと。
ART-SCHOOLも木下理樹がセンターじゃない時期もあったしね(笑)」
といじりながら、結局はなぜか全く関係ない木下理樹いじりになるという、木下の愛されっぷり。前回のツアーに対バンで出演した時もいじられまくっていたし。
「嘘とワンダーランド」が演奏されたので、持ち回りで選曲を担当しているというアンコールがこの日は喜多が選んだことが丸わかりなのだが、最後に演奏されたのは「君という花」。ゴッチが間奏まで全くギターを弾かずにハンドマイクで動き回りながら歌うという、最後だからこそのテンションの振り切れっぷりを見せると、「らっせーらっせー!」の大合唱。
ゴッチはツアー開始前にセトリを決める際、
「建さんは「この曲はファンに人気があるから外せない!」って勝手にファンを味方につけて意見を押し通そうとしてくる(笑)」
と言っていたが、案外喜多の意見は的外れではない。今やアジカンを最も引っ張っているのは喜多であると言っていいくらいなのだから。ゴッチがソロ、山田がプロデュース、伊地知がPHONO TONESとそれぞれ活動の場を広げる中で、1人だけ基本的にはそうした活動をしなかった、アジカンだけで生きてきた男。今でもひたすら立ち止まらずに進み続けるアジカンの姿を見れるのは、この男のおかげなのかもしれない。
シモリョーも含めた5人が肩を組んで挨拶をすると、この日もゴッチのピックはよく飛んだ。東京公演4つ目の参加にして、最も良いライブを更新した一夜だった。
そんなに見ても飽きないのは、やはり楽しそうに演奏するメンバーの姿が見れるから。立ち止まらずに活動してきたとはいえ、いろんな状況とストラグルしてきたバンドなだけに、なかなか全員が楽しそうには見えない時もあったし、長いツアーをとりあえずこなそうとしている時もあった。でも今は全く違う。全員がアジカンであること、アジカンの曲を演奏することを本当に楽しんでいるのが見ていてわかる。そんな状態で生まれる2枚組の新作アルバムが本当に楽しみだ。
そして、フェスなどでは絶対にやらないようなレア曲のイントロに歓喜する、アジカンファンたち。これだけ長い年月活動し、たくさんの曲を生み出してきたバンドなだけに、それぞれ思い入れのある曲がある。でもなかなか今まではそうした曲をライブで聴ける機会はなかった。それが聴けたのが今回のツアーだった。代表曲ばかりが求められるバンドもいるし、アジカンもフェスに出る際はそれを求められているかもしれない。でも自分にとっては、最もレア曲を聴きたいバンドはアジカンだ。それはやはり、それぞれの曲に少なからず思い入れがあるし、ライブで聴けばその曲が世に出た時の自分の人生や周りにいた人たち、かつてライブで聴いた時の光景が一瞬で蘇ってくるから。
そう思えるのは、やはりアジカンが一度も長い間を置かずに活動してきてくれたから。それはお互いが生きてる限りは続いていく。やっぱり、君じゃないとさ!
1.Right Now
2.エントランス
3.荒野を歩け
4.白に染めろ
5.極楽寺ハートブレイク
6.ロードムービー
7.サイレン
8.無限グライダー
9.永遠に
10.ノーネーム
11.未だ見ぬ明日に
12.架空生物のブルース
13.生者のマーチ
14.夜を越えて
15.サイエンスフィクション
16.融雪
17.Re:Re:
18.Standard
19.ワールド ワールド ワールド
20.新しい世界
encore
21.High & Dry w/ Nick Moon
22.ムスタング
23.嘘とワンダーランド
24.君という花
君という花
https://youtu.be/MIY3lM-jGkI
Next→ 7/14 佐々木亮介 @新宿LOFT HEAVEN
前日もレポした通り(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-519.html?sp)、今回のツアーで数多く演奏されているレア曲の中でも、おそらく人生においてライブで聴くのが最後になる曲も間違いなく何曲もあるはずなので、しっかり目と耳に焼き付けておきたい。
この日もオープニングアクトのNick Moonが打ち込みも駆使しながらシンセを弾き、浮遊感のあるサウンドとその儚くも美しいボーカルを響かせる。
「今日は蒸し蒸し暑いですね」
「アジカンが大好き。アジカンのスタッフが大好き。みんなが大好き」
と、ツアー前半でも流暢だった日本語はさらにレベルアップしている。
「私はフジロックに出ます!またね!」
と東京の観客たちに再会を約束したが、見るたびに好きになってきている。それは音楽はもちろん、Nickの人間性によるものも大きい。また日本に来た時に。
そして今ツアー4回目のアジカン。やはり基本的に流れは変わらないので、前日及び
DiverCity2日目(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-504.html?sp)
Zepp Tokyo初日(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-512.html?sp)
のレポも参照していただきたい。
「Right Now」で伊地知潔がスティックを持った右腕を高く掲げ、「エントランス」ではイントロで喜多建介が人差し指を高く掲げる。何度見ても胸が熱くなる光景だし、伊地知は「エントランス」の時にドラムを叩きながら口ずさんでいる。メンバーが本当にライブを楽しんでいる様子が伝わってくる。ゴッチの声も前日よりはるかに良く出ていて、伸びがある。
喜多は「荒野を歩け」でギターソロを決めながら右足を高く上げ、自由に踊りながら歌うゴッチ以上に運動量は多そう。実際にかなりステージを左右に移動しながら演奏していた。
「白に染めろ」「極楽寺ハートブレイク」あたりはもうこのツアーで聴き納めというか、もうライブでやらなそうな曲たち。それだけにこうして何度も聴けたのは実に嬉しいし、こうした曲でもイントロでは歓声が上がっていたのはさすがにこのツアーに来るくらいコアなアジカンファンたちである。
「ムスタング」と日によって入れ替わりで演奏される6曲目はこの日は「ロードムービー」。
「3塁ベンチの夏が終わる」
というフレーズに、全国で開幕した高校野球の球児たちの一瞬で過ぎ行く夏に想いを馳せざるを得ない。かつてのゴッチ少年のように。
ゴッチ「名古屋場所の力士の控え室みたいなところが滑りやすくて、白鵬が転んで怪我をしたのが本当に心配。これだけ人がいれば大相撲関係者の方もいらっしゃるんじゃない?5人友達を辿れば誰でも辿り着くって言うからね(笑)」
喜多「あなたは相撲と癒着してるからすぐ辿り着くだろうけど(笑)」
ゴッチ「みんなも5人友達を辿れば俺たちに辿り着くよ。だから今日は関係者ライブ!(笑)」
という、明らかに喋るネタがなさそうなゴッチのMCからは、シモリョーがカップリングバージョンのコーラスを入れる、ミックスバージョンの「サイレン」から初期に分類されるような時期の曲が続く。わかりやすく盛り上がる曲たちではないが、ゴッチの言う通りに自由に踊ったりして各々が曲を噛みしめている。
「今年アルバムを出して、年明けてからライブハウスとホールを廻るツアーもやります。40本くらいやるのかな。ホールの方がいいっていう人もいるでしょ?(笑)
でも俺は昔、アジカンのライブで
「ホールの前の方の席と後ろの方の席が同じ値段なのはおかしい。前の方が高い値段にするべきだ」
みたいなこと言ったら、
「それやったら後ろの方の席のチケットが売れません!」
ってスタッフに言われてさ(笑)」
とツアーや「俺は根暗だったからいつもライブハウスの端っこで見ていた」などライブにまつわるゴッチのエピソードが話されたが、何よりも嬉しいのはやはりすでにツアーが決まっているということ。ホールということは「Wonder Future」ツアーの時のような、斬新な演出があるのではないかと期待してしまう。そもそもが2枚組のアルバムで、パワーポップ的な内容にするために重めな空気の「生者のマーチ」をアルバムから外してベストに入れた、というだけにコンセプトの強いものになりそうなだけに。
その最新曲「生者のマーチ」も演奏された後半ではさらにバンドの演奏が熱を帯びていく。特に前日はゴッチが盛大に展開を間違えた「夜を越えて」「サイエンスフィクション」というあたりはゴッチと喜多の2人にさらにエンジンがかかったように見える。
6曲目同様に日ごとに曲が入れ替わる16曲目はこの日は「融雪」。すでにこのツアーで聴いているが、「未だ見ぬ明日に」「サイエンスフィクション」に続いてこの曲まで演奏されると、改めて「ワールド ワールド ワールド」の後にリリースされたミニアルバム「未だ見ぬ明日に」収録の各曲のクオリティの高さが浮き彫りになる。「脈打つ生命」や「深呼吸」もごく稀にライブで演奏されることもあるし。
「「かかってこいよー!」とか言わないからね。かかってこられたら全力で逃げる(笑)
「まだまだ行けるかー!」ってねぇ、どこにも行くんじゃねぇ!っていうね(笑)
性格悪いおじさんだわ~(笑)」
という、ロックバンドのフロントマンがライブの終盤によく口にすることをいじるゴッチのMCが意外にもあっさりと終わったので、ゴッチが曲タイトルをコールしても準備ができていなかった伊地知が
「ボサッとしてんなよ!(笑)」
とゴッチに怒られるという場面もあったが、メンバーもこのツアーに参加した人も、この部分のMCがこんなにあっさり終わるとは思っていなかったであろうだけに致し方ない。
ゴッチの「イェー!」というシャウトが高らかに響き、再録版の「ソルファ」にもリアレンジバージョンが収録された「Re:Re:」は、ライブバージョンのアレンジがあのリアレンジに至ったことがよくわかり、「Standard」ではゴッチがサビで歌いながらギターを高く掲げる。見た目的にはロックスターではないかもしれないが、こうした挙動や意志、発言の一つ一つが本当に自分にとってのロックスターだ。それでいてずっと最前線を走り続けていることも含めて。
そしてラストは「ワールド ワールド ワールド」から、アジカンのそれまでの歩みを中村祐介が描いたジャケットのイラストなどで総括したようなMVの映像を喚起させる、七色の虹のような照明の中で演奏され、ゴッチの「世界!世界!世界!」のシャウトが前日よりもはるかに伸びやかに響き渡った「新しい世界」で本編は終了。この曲でライブが終わった時の爽快感は本当に何ものにも変えがたい。
アンコールではもはやおなじみのNick Moonとともに登場し、Radiohead「High & Dry」のカバーでコラボ。薄明かりの照明と、Nickのファルセットボーカルが曲の幻想感をさらに際立てる。Nickが元々やっていたKYTEはRadioheadの影響を感じるようなバンドだったというのもあるが、まるで自分の曲であるかのように、本当にこの曲に合っている。
ゴッチ「Nick、終演後に毎回サイン会やってるんだけど、ツイッターでNickと一緒に写真を撮っている人を見ると、俺たちより人気あるんじゃないか?って思うくらいにみんないい顔をして写真撮ってる(笑)
昔はNANO-MUGENとかでもしょっちゅうそういうことあったもんなぁ(笑)」
喜多「ファン持ってかれるっていうね(笑)」
ゴッチ「そういう言い方をするんじゃないよ、建ちゃんは(笑)
音楽は棒倒しゲームみたいに、どれだけ多く砂を集めたやつの勝ちっていうわけじゃないんだから(笑)
勝ち負けもわからないしね。孫悟空とピッコロ大魔王だって戦ったら孫悟空が勝ったけど、料理対決だったらどっちが勝ってたかわかんないじゃん(笑)
だから好きな音楽が増えるのは嬉しいし、音楽を好きな人が増えるのも嬉しいよね」
とメンバーとの微笑ましいやり取りもありながら、喜多がシモリョーに向かって一礼すると、そのシモリョーが電子音を弾く「ムスタング」へ。これは「ソラニン」のカップリングに収録された「mix for 芽衣子」のバージョンと言っていいと思われるが、この曲までも演奏されたことにより、やはり「未だ見ぬ明日に」色が強いツアーというイメージになった。
するとゴッチがマイクスタンドからスッと離れ、リズムに合わせた妙なダンスを踊り始める。流れ始めたイントロは…まさかの喜多ボーカル曲の「嘘とワンダーランド」。いや、再録「ソルファ」ツアーでも喜多ボーカルは披露されていたし、そこまでレア曲というわけではないのだが、まさかここでやるとは。これまでのアンコールで演奏された曲が割と代表曲的な曲が多かっただけになおさら。
ゴッチとは全く異なるハイトーンボイスで歌う喜多がところどころに「ソイヤッ!」という長渕剛ライクな掛け声を入れると、完全なアドリブだったのか、ゴッチも山田も笑いを隠すことができない。
そんな喜多の姿を、
「次にAKG総選挙やったら建ちゃんがセンターだよ(笑)アルバムに投票用紙つけるから(笑)
でも本当はセンターって嫌なんだよね。いろんな音が返ってきちゃうから聴きにくいんだよね。だからたまにボーカルがセンターにいないバンドはそういう時期だっていうこと。
ART-SCHOOLも木下理樹がセンターじゃない時期もあったしね(笑)」
といじりながら、結局はなぜか全く関係ない木下理樹いじりになるという、木下の愛されっぷり。前回のツアーに対バンで出演した時もいじられまくっていたし。
「嘘とワンダーランド」が演奏されたので、持ち回りで選曲を担当しているというアンコールがこの日は喜多が選んだことが丸わかりなのだが、最後に演奏されたのは「君という花」。ゴッチが間奏まで全くギターを弾かずにハンドマイクで動き回りながら歌うという、最後だからこそのテンションの振り切れっぷりを見せると、「らっせーらっせー!」の大合唱。
ゴッチはツアー開始前にセトリを決める際、
「建さんは「この曲はファンに人気があるから外せない!」って勝手にファンを味方につけて意見を押し通そうとしてくる(笑)」
と言っていたが、案外喜多の意見は的外れではない。今やアジカンを最も引っ張っているのは喜多であると言っていいくらいなのだから。ゴッチがソロ、山田がプロデュース、伊地知がPHONO TONESとそれぞれ活動の場を広げる中で、1人だけ基本的にはそうした活動をしなかった、アジカンだけで生きてきた男。今でもひたすら立ち止まらずに進み続けるアジカンの姿を見れるのは、この男のおかげなのかもしれない。
シモリョーも含めた5人が肩を組んで挨拶をすると、この日もゴッチのピックはよく飛んだ。東京公演4つ目の参加にして、最も良いライブを更新した一夜だった。
そんなに見ても飽きないのは、やはり楽しそうに演奏するメンバーの姿が見れるから。立ち止まらずに活動してきたとはいえ、いろんな状況とストラグルしてきたバンドなだけに、なかなか全員が楽しそうには見えない時もあったし、長いツアーをとりあえずこなそうとしている時もあった。でも今は全く違う。全員がアジカンであること、アジカンの曲を演奏することを本当に楽しんでいるのが見ていてわかる。そんな状態で生まれる2枚組の新作アルバムが本当に楽しみだ。
そして、フェスなどでは絶対にやらないようなレア曲のイントロに歓喜する、アジカンファンたち。これだけ長い年月活動し、たくさんの曲を生み出してきたバンドなだけに、それぞれ思い入れのある曲がある。でもなかなか今まではそうした曲をライブで聴ける機会はなかった。それが聴けたのが今回のツアーだった。代表曲ばかりが求められるバンドもいるし、アジカンもフェスに出る際はそれを求められているかもしれない。でも自分にとっては、最もレア曲を聴きたいバンドはアジカンだ。それはやはり、それぞれの曲に少なからず思い入れがあるし、ライブで聴けばその曲が世に出た時の自分の人生や周りにいた人たち、かつてライブで聴いた時の光景が一瞬で蘇ってくるから。
そう思えるのは、やはりアジカンが一度も長い間を置かずに活動してきてくれたから。それはお互いが生きてる限りは続いていく。やっぱり、君じゃないとさ!
1.Right Now
2.エントランス
3.荒野を歩け
4.白に染めろ
5.極楽寺ハートブレイク
6.ロードムービー
7.サイレン
8.無限グライダー
9.永遠に
10.ノーネーム
11.未だ見ぬ明日に
12.架空生物のブルース
13.生者のマーチ
14.夜を越えて
15.サイエンスフィクション
16.融雪
17.Re:Re:
18.Standard
19.ワールド ワールド ワールド
20.新しい世界
encore
21.High & Dry w/ Nick Moon
22.ムスタング
23.嘘とワンダーランド
24.君という花
君という花
https://youtu.be/MIY3lM-jGkI
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