a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom- @赤坂BLITZ 7/8
- 2018/07/08
- 23:33
サポートギターだった、青木テツが正式加入して4人になったa flood of circle。この4人でのデビューアルバムとでも言うような2度目のセルフタイトルアルバム「a flood of circle」(1度目のセルフタイトルはインディーズ時代の初音源)をリリースしてのツアーも全国をフラッドだからこそのロックンロールなライブバンドたちとの対バンで周り、ファイナルとして東京は赤坂BLITZに帰還。
この赤坂BLITZはかつてメジャー3rdアルバム「ZOOMANITY」のリリースツアーでもファイナルを行なった場所であり、その日が結果的に前任ベーシストである石井康崇在籍時のラストライブであった。もう8年前のことである。
開演前のステージには今回のツアーのキービジュアルである、鳥が羽ばたく絵とともにツアータイトルとバンド名が映し出されたスクリーンがあり、18時を少し過ぎたあたりで場内が暗転し、ノイズ音が響くとともにそのスクリーンの絵がブレ始める。スクリーンが上がると今回のツアーのタイトルの元ネタになっている「Where Is My Freedom」のイントロが流れる中でメンバーが登場し、楽器を構えるとそのままSEが生演奏に切り替わるという、[ALEXANDROS]の「Burger Queen」で始まるライブのような、フラッドとしては明らかに新機軸と言えるオープニング。
そして音がめちゃくちゃデカい。ハンドマイクで客席を煽りながら歌う亮介の強烈なしゃがれたがなり声のボーカル以上に、その音の大きさと、もはや「フラッド流ラウドロック」と思ってしまうほどの音の重さと厚さ。1曲目の時点がバンドが4月のテツ加入式典の時よりはるかにとんでもない進化を果たしているのがよくわかる。
「おはようございます、a flood of circleです!」
と亮介がおなじみの挨拶をするとアルバムのリード曲「Blood & Bones」へ。新加入のテツがその存在感を強烈にアピールするギターを弾きながら、コーラスではもはやコーラスというよりもシャウトと言っていいくらいに声を張り上げまくっている。これは今までのサポートギタリストたちではまず見れなかったしやらなかった(というかやる必要性が曲の再現性だけを考えるんなら全くない)パフォーマンスなだけに、単にギターを弾く新メンバーではないテツの一面を見ることができる。
最新作からの「Lightning」以降も前半はひたすらにかっ飛ばしていくべく、ダイバーが続出する中でテツと亮介がアウトロでギターソロを弾き合う「Dancing Zombiez」、テツがひたすら中指を立てて曲のイメージをさらに引き立てる「FUCK FOREVER」、亮介がテツのマイクに寄って行って一本のマイクでコーラスをした「GO」とこれまでの代表曲も動員してロックンロールにぶち上げていく。
亮介のソロアルバムのタイトルと同タイトルの曲であり、
「栄光の勝利へと手を伸ばせよ 世界が輝くその瞬間を想ってる」
という歌詞が、フラッドがそうした世界を目指し続けていることを示している「Leo」からはギアチェンジし、亮介がいつものブルースを歌うかのような語り方で
「俺たちの向かう先は一方通行」
と言うので、てっきり「One Way Blues」をやるのかと思いきや、ブルース的な濃さとは真逆の「Summer Soda」へ。「Kids」などのような燃え上がる暑さの夏でなければ、茹だるようなダルさを感じるような夏でもなく、爽やかな風を感じさせる瞬間の夏としての曲。フラッドとしてもこうした角度の夏の曲は初めてと言っていいが、そもそもが今の日本のロックシーンにこうした夏の爽やかさを感じさせてくれるような曲自体がほとんどないような気もする。(思い当たるのはバンド名からして爽やかなサイダーガールくらいか)
バンドとしての、というか日本全体へのメッセージとしてリアルさをさらに増してしまうような出来事が最近立て続けにあったからこその「再生」ではそれまでの熱狂とは明らかに異なる、ステージから目が離せない緊張感があったが、今回のツアーを振り返るMCでは
亮介「フェリーで移動してると、俺たちみたいなバンドマンとか自衛隊とか、遠征してる高校球児とか、やたらと男くさい人ばっかりなんだけど、そんな中でテツがムーっていうオカルト雑誌を読みながらワールドカップを見てると、そういう人たちですら引いてるのがわかるっていう(笑)」
というテツのブレなさを明かして笑いを誘い、
HISAYO「広島の時かな?打ち上げした後にみんなでワールドカップの日本の試合を見よう、って言ったら、最初は乗り気だったのに時間になったら誰も集まらなかった(笑)」
と仲が良いのかそうでないのかわからないHISAYOの話でも笑いが起こる。ちなみにバズマザーズとの対バンでは打ち上げが1ミリも盛り上がらなかったらしい。
そんな中でドラムの一丘はかつてラジオをやっていたこの赤坂の地でその経験を生かしたMCをしようとするが、やっぱりスベり気味。しかし、
「成長って人との出会いだと思うんですよ。俺たちは色々あったけど、いろんな人に出会ったから成長できたし、いろんな経験ができたと思ってる」
といきなりまともなことを語り、久々に自身が作詞作曲した「Rising」につなげてみせる。「Black Magic Funclub」は一丘が手がけたからこそのリズムアプローチも含めた飛び道具感があったが、この曲はある意味ではどっからどう聴いてもフラッドのロックンロールである。だからアルバムを通して聴いても亮介の曲との違和感が全くない。
亮介によるぶっ飛ばしていく宣言から、「The Beautiful Monkeys」では過去最速なんじゃないかと思うくらいに速く、グルーヴも増した演奏で、ダイバーも惰性ではなく、もう飛ばずにはいられない!という衝動に突き動かされてダイブしているのがよくわかるくらいの演奏の凄まじさである。
亮介がタンバリンを叩きながら歌い、そのタンバリンを曲途中でHISAYOの首にかけるというのが曲のロックンロールっぷりとは対照的に実に微笑ましい「ミッドナイト・サンシャイン」の後の「One Way Blues」では亮介がついに客席に突入して歌う。例えばBRAHMANのTOSHI-LOWやキュウソネコカミのセイヤがこうして客席に突入していくボーカルの代表的存在となっているが、「観客に支えられながらしっかり歩いて立つ」という行為のスムーズさと美しさはこのフラッドの亮介がダントツであるように思う。それは支えている人たちによるところも大きいが。
ステージに戻った亮介がこのツアー、そしてこれまでのバンドの歩みを総括するようなMCをしてからの「NEW TRIBE」はこの4人での生まれ変わったバンドサウンドで鳴らされ、一時期はライブのセトリから外れつつあった「プシケ」も、この4人の名前とこの日の日付けと場所が入ることにより、紛れもなく我々が今ここにいてフラッドのライブを見ているという実感に浸らせてくれる。
大合唱とダイバーが続出する中で演奏された「シーガル」に続き、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也がプロデュースしたことにより、客観的な視点から見たフラッドの武器が総動員された、バンドの新たな代表曲「ミッドナイト・クローラー」では銀テープが客席に放たれるという、フラッドのライブらしからぬ演出も。これはメンバーも知らない、スタッフによるサプライズ演出だったらしいが。
亮介が
「いろんなことがあるけど、休むやつは休め!動くやつは動け!そしてまた歩き出せ!」
という亮介らしい言い方で、災害に見舞われた日本を鼓舞しながら、
「心配ないぜ 俺が確かに君を知ってるから」
とサビを歌ってから演奏するというアレンジがなされた、アルバムの最終曲「Wing Song」のあらゆる人を受け止めるような懐の深さが会場を包んで本編は終了。すると去り際にテツが
「心配ないぜ~」
と口ずさんだ。フラッドは俺が入ったんだからもう大丈夫だ、という自信に満ち溢れていた。その姿は入ったばかりとは思えないほどに頼もしかった。もう、本当になんの心配もいらないのかもしれない。
アンコールを待つ中、オープニングと同じスクリーンには
「11月にNEWシングル発売!全曲UNISON SQUARE GARDEN田淵智也プロデュース!
ツアーも開催!そして春にはNEWアルバムリリース!」
という告知が。フラッドはずっと、メンバーが毎回のごとくに変わっているとは思えないくらいに、1年を待たずにアルバムあるいは最低でもミニアルバムくらいのボリュームの作品が出る、という凄まじいペースでリリースをしてツアーをやってきたバンドだが、まさかアルバムのツアーファイナルで次のアルバムとツアーの告知をするとは。もうデビューして10年以上経つが、こんなサイクルで活動しているバンドが他にいるだろうか?
亮介はもう言ってしまえば、「天才」というタイプのミュージシャンではない。確かに曲が無尽蔵であるかのように次々と出てくるが、これまでの音楽シーンにないものを作ったり、音楽や存在が革新的である、というような(例えば米津玄師のような)人ではない。
でも、ただただひたすらにロックンロールとブルースが、ひいては音楽が大好きで仕方がないから曲を作る。そしてバンドでツアーを回るのが楽しくて仕方がないから、その曲を持ってツアーに出る。もはや「バンドもただリリースしてツアーやるだけでは活動できない」という声もよく聞くこのご時世の中で、ひたすらにそのサイクルを速くすることで活動していくことで、そうした意見がフラッドにはまるで通用しないことを身を以て証明していく。それはこれからも全く変わらないどころか、さらにペースが速くなりそうな予感すらしている。
それぞれ若干衣装チェンジしてアンコールに登場すると、テツが
「TIME TO ROCKN' ROLL」
というフレーズに合わせて物販で売られていた、自身の腕につけた時計を指差し、もうタイトルを誰よりも実践するかのようにジャンプしまくる「見る前に跳べ」から、間奏で亮介がHISAYOを呼ぶと、テツとともに3人で並んで演奏し、今度は下手に3人で移動してまた並んで演奏するというのが楽しそうで仕方がない「ベストライド」で、文字通りに最高をはるかに更新して終了した。
一丘がスティックまで投げたので、もう終わりかと思いきや、まだなんかありそうな雰囲気が漂っており、再びメンバーが登場。
「もう君たちに言えるのはこれだけ!」
と言って演奏された「I LOVE YOU」では間奏で亮介が一丘に
「超ロックンロールバージョンで!」
と言うと、いきなりテンポが倍以上に上がるという超高速バージョンに。もう演奏している本人たちが何よりも楽しそうだった。それはこの日はもちろん、今回のツアーがとても楽しいものであったことの証明であった。
「俺たちのベストはいつも今なんだよ」
と「ベストライド」で歌ってきた通り、フラッドは形が変わりながらも常に最高を更新し続けてきた。それができたからこそこれだけメンバーが入れ替わっているのに、動員が極端に落ちたりとかはしていない。(もっとも増えてもいないが)
今回もやはり今までの最高を塗り替えるようなライブだったのだが、今までが「過去を1レベルでも更新する」ものだったとしたら、今回は軽く20レベルくらいは更新している。
なぜそれができたのか。それはもちろんテツが正式メンバーになり、フラッドが4人になったからである。どれだけすごい人であっても、やはりサポートと正式メンバーでは込める意志が全く違う。3人+1人の時はアー写も3人だったし、レコーディングも基本的には3人だった。
しかし4人になったことにより、活動の全てをステージに立つ4人が全責任を持つようになった。全員がバンドを背負っているということだ。
その状態で作られた「a flood of circle」は当然今までのどのアルバムよりもメンバー全員の意志と意識が一音一音から出ている。基本的にフラッドのアルバムは毎回そこまで大胆に変わったりはしない、ロックンロールとブルースを軸にしたものだが、その音に込められたものは今までとは全く違う。そしてそれはライブという、メンバーが目の前で演奏している場でより一層強く感じることができる。
やっぱり今までは度重なる編成の変化もあったし、カッコよさと楽曲の良さが抜群なのは心からわかってはいたけど、これ以上デカいところに行けるんだろうか?っていう停滞感も感じざるを得なかった。でもこの日のライブを見て確信した。フラッドはこの4人の完全体で突き進んでいけば、絶対もっといい景色を見せてくれるようになる。それぐらい、今のフラッドは過去最高を大幅に更新している。次のアルバムのツアーの時にはさらにとんでもないバンドに進化しているだろう。
もうメンバーも変わることはない。だから、心配ないぜ 俺が確かにフラッドのカッコよさを知ってるから。
1.Where Is My Freedom
2.Blood & Bones
3.Lightning
4.Dancing Zombiez
5.FUCK FOREVER
6.GO
7.Leo
8.Summer Soda
9.再生
10.Rising
11.The Beautiful Monkeys
12.ミッドナイト・サンシャイン
13.One Way Blues
14.NEW TRIBE
15.プシケ
16.シーガル
17.ミッドナイト・クローラー
18.Wink Song
encore
19.見る前に跳べ
20.ベストライド
encore2
21.I LOVE YOU
ミッドナイト・クローラー
https://youtu.be/-WyoEnUmY44
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この赤坂BLITZはかつてメジャー3rdアルバム「ZOOMANITY」のリリースツアーでもファイナルを行なった場所であり、その日が結果的に前任ベーシストである石井康崇在籍時のラストライブであった。もう8年前のことである。
開演前のステージには今回のツアーのキービジュアルである、鳥が羽ばたく絵とともにツアータイトルとバンド名が映し出されたスクリーンがあり、18時を少し過ぎたあたりで場内が暗転し、ノイズ音が響くとともにそのスクリーンの絵がブレ始める。スクリーンが上がると今回のツアーのタイトルの元ネタになっている「Where Is My Freedom」のイントロが流れる中でメンバーが登場し、楽器を構えるとそのままSEが生演奏に切り替わるという、[ALEXANDROS]の「Burger Queen」で始まるライブのような、フラッドとしては明らかに新機軸と言えるオープニング。
そして音がめちゃくちゃデカい。ハンドマイクで客席を煽りながら歌う亮介の強烈なしゃがれたがなり声のボーカル以上に、その音の大きさと、もはや「フラッド流ラウドロック」と思ってしまうほどの音の重さと厚さ。1曲目の時点がバンドが4月のテツ加入式典の時よりはるかにとんでもない進化を果たしているのがよくわかる。
「おはようございます、a flood of circleです!」
と亮介がおなじみの挨拶をするとアルバムのリード曲「Blood & Bones」へ。新加入のテツがその存在感を強烈にアピールするギターを弾きながら、コーラスではもはやコーラスというよりもシャウトと言っていいくらいに声を張り上げまくっている。これは今までのサポートギタリストたちではまず見れなかったしやらなかった(というかやる必要性が曲の再現性だけを考えるんなら全くない)パフォーマンスなだけに、単にギターを弾く新メンバーではないテツの一面を見ることができる。
最新作からの「Lightning」以降も前半はひたすらにかっ飛ばしていくべく、ダイバーが続出する中でテツと亮介がアウトロでギターソロを弾き合う「Dancing Zombiez」、テツがひたすら中指を立てて曲のイメージをさらに引き立てる「FUCK FOREVER」、亮介がテツのマイクに寄って行って一本のマイクでコーラスをした「GO」とこれまでの代表曲も動員してロックンロールにぶち上げていく。
亮介のソロアルバムのタイトルと同タイトルの曲であり、
「栄光の勝利へと手を伸ばせよ 世界が輝くその瞬間を想ってる」
という歌詞が、フラッドがそうした世界を目指し続けていることを示している「Leo」からはギアチェンジし、亮介がいつものブルースを歌うかのような語り方で
「俺たちの向かう先は一方通行」
と言うので、てっきり「One Way Blues」をやるのかと思いきや、ブルース的な濃さとは真逆の「Summer Soda」へ。「Kids」などのような燃え上がる暑さの夏でなければ、茹だるようなダルさを感じるような夏でもなく、爽やかな風を感じさせる瞬間の夏としての曲。フラッドとしてもこうした角度の夏の曲は初めてと言っていいが、そもそもが今の日本のロックシーンにこうした夏の爽やかさを感じさせてくれるような曲自体がほとんどないような気もする。(思い当たるのはバンド名からして爽やかなサイダーガールくらいか)
バンドとしての、というか日本全体へのメッセージとしてリアルさをさらに増してしまうような出来事が最近立て続けにあったからこその「再生」ではそれまでの熱狂とは明らかに異なる、ステージから目が離せない緊張感があったが、今回のツアーを振り返るMCでは
亮介「フェリーで移動してると、俺たちみたいなバンドマンとか自衛隊とか、遠征してる高校球児とか、やたらと男くさい人ばっかりなんだけど、そんな中でテツがムーっていうオカルト雑誌を読みながらワールドカップを見てると、そういう人たちですら引いてるのがわかるっていう(笑)」
というテツのブレなさを明かして笑いを誘い、
HISAYO「広島の時かな?打ち上げした後にみんなでワールドカップの日本の試合を見よう、って言ったら、最初は乗り気だったのに時間になったら誰も集まらなかった(笑)」
と仲が良いのかそうでないのかわからないHISAYOの話でも笑いが起こる。ちなみにバズマザーズとの対バンでは打ち上げが1ミリも盛り上がらなかったらしい。
そんな中でドラムの一丘はかつてラジオをやっていたこの赤坂の地でその経験を生かしたMCをしようとするが、やっぱりスベり気味。しかし、
「成長って人との出会いだと思うんですよ。俺たちは色々あったけど、いろんな人に出会ったから成長できたし、いろんな経験ができたと思ってる」
といきなりまともなことを語り、久々に自身が作詞作曲した「Rising」につなげてみせる。「Black Magic Funclub」は一丘が手がけたからこそのリズムアプローチも含めた飛び道具感があったが、この曲はある意味ではどっからどう聴いてもフラッドのロックンロールである。だからアルバムを通して聴いても亮介の曲との違和感が全くない。
亮介によるぶっ飛ばしていく宣言から、「The Beautiful Monkeys」では過去最速なんじゃないかと思うくらいに速く、グルーヴも増した演奏で、ダイバーも惰性ではなく、もう飛ばずにはいられない!という衝動に突き動かされてダイブしているのがよくわかるくらいの演奏の凄まじさである。
亮介がタンバリンを叩きながら歌い、そのタンバリンを曲途中でHISAYOの首にかけるというのが曲のロックンロールっぷりとは対照的に実に微笑ましい「ミッドナイト・サンシャイン」の後の「One Way Blues」では亮介がついに客席に突入して歌う。例えばBRAHMANのTOSHI-LOWやキュウソネコカミのセイヤがこうして客席に突入していくボーカルの代表的存在となっているが、「観客に支えられながらしっかり歩いて立つ」という行為のスムーズさと美しさはこのフラッドの亮介がダントツであるように思う。それは支えている人たちによるところも大きいが。
ステージに戻った亮介がこのツアー、そしてこれまでのバンドの歩みを総括するようなMCをしてからの「NEW TRIBE」はこの4人での生まれ変わったバンドサウンドで鳴らされ、一時期はライブのセトリから外れつつあった「プシケ」も、この4人の名前とこの日の日付けと場所が入ることにより、紛れもなく我々が今ここにいてフラッドのライブを見ているという実感に浸らせてくれる。
大合唱とダイバーが続出する中で演奏された「シーガル」に続き、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也がプロデュースしたことにより、客観的な視点から見たフラッドの武器が総動員された、バンドの新たな代表曲「ミッドナイト・クローラー」では銀テープが客席に放たれるという、フラッドのライブらしからぬ演出も。これはメンバーも知らない、スタッフによるサプライズ演出だったらしいが。
亮介が
「いろんなことがあるけど、休むやつは休め!動くやつは動け!そしてまた歩き出せ!」
という亮介らしい言い方で、災害に見舞われた日本を鼓舞しながら、
「心配ないぜ 俺が確かに君を知ってるから」
とサビを歌ってから演奏するというアレンジがなされた、アルバムの最終曲「Wing Song」のあらゆる人を受け止めるような懐の深さが会場を包んで本編は終了。すると去り際にテツが
「心配ないぜ~」
と口ずさんだ。フラッドは俺が入ったんだからもう大丈夫だ、という自信に満ち溢れていた。その姿は入ったばかりとは思えないほどに頼もしかった。もう、本当になんの心配もいらないのかもしれない。
アンコールを待つ中、オープニングと同じスクリーンには
「11月にNEWシングル発売!全曲UNISON SQUARE GARDEN田淵智也プロデュース!
ツアーも開催!そして春にはNEWアルバムリリース!」
という告知が。フラッドはずっと、メンバーが毎回のごとくに変わっているとは思えないくらいに、1年を待たずにアルバムあるいは最低でもミニアルバムくらいのボリュームの作品が出る、という凄まじいペースでリリースをしてツアーをやってきたバンドだが、まさかアルバムのツアーファイナルで次のアルバムとツアーの告知をするとは。もうデビューして10年以上経つが、こんなサイクルで活動しているバンドが他にいるだろうか?
亮介はもう言ってしまえば、「天才」というタイプのミュージシャンではない。確かに曲が無尽蔵であるかのように次々と出てくるが、これまでの音楽シーンにないものを作ったり、音楽や存在が革新的である、というような(例えば米津玄師のような)人ではない。
でも、ただただひたすらにロックンロールとブルースが、ひいては音楽が大好きで仕方がないから曲を作る。そしてバンドでツアーを回るのが楽しくて仕方がないから、その曲を持ってツアーに出る。もはや「バンドもただリリースしてツアーやるだけでは活動できない」という声もよく聞くこのご時世の中で、ひたすらにそのサイクルを速くすることで活動していくことで、そうした意見がフラッドにはまるで通用しないことを身を以て証明していく。それはこれからも全く変わらないどころか、さらにペースが速くなりそうな予感すらしている。
それぞれ若干衣装チェンジしてアンコールに登場すると、テツが
「TIME TO ROCKN' ROLL」
というフレーズに合わせて物販で売られていた、自身の腕につけた時計を指差し、もうタイトルを誰よりも実践するかのようにジャンプしまくる「見る前に跳べ」から、間奏で亮介がHISAYOを呼ぶと、テツとともに3人で並んで演奏し、今度は下手に3人で移動してまた並んで演奏するというのが楽しそうで仕方がない「ベストライド」で、文字通りに最高をはるかに更新して終了した。
一丘がスティックまで投げたので、もう終わりかと思いきや、まだなんかありそうな雰囲気が漂っており、再びメンバーが登場。
「もう君たちに言えるのはこれだけ!」
と言って演奏された「I LOVE YOU」では間奏で亮介が一丘に
「超ロックンロールバージョンで!」
と言うと、いきなりテンポが倍以上に上がるという超高速バージョンに。もう演奏している本人たちが何よりも楽しそうだった。それはこの日はもちろん、今回のツアーがとても楽しいものであったことの証明であった。
「俺たちのベストはいつも今なんだよ」
と「ベストライド」で歌ってきた通り、フラッドは形が変わりながらも常に最高を更新し続けてきた。それができたからこそこれだけメンバーが入れ替わっているのに、動員が極端に落ちたりとかはしていない。(もっとも増えてもいないが)
今回もやはり今までの最高を塗り替えるようなライブだったのだが、今までが「過去を1レベルでも更新する」ものだったとしたら、今回は軽く20レベルくらいは更新している。
なぜそれができたのか。それはもちろんテツが正式メンバーになり、フラッドが4人になったからである。どれだけすごい人であっても、やはりサポートと正式メンバーでは込める意志が全く違う。3人+1人の時はアー写も3人だったし、レコーディングも基本的には3人だった。
しかし4人になったことにより、活動の全てをステージに立つ4人が全責任を持つようになった。全員がバンドを背負っているということだ。
その状態で作られた「a flood of circle」は当然今までのどのアルバムよりもメンバー全員の意志と意識が一音一音から出ている。基本的にフラッドのアルバムは毎回そこまで大胆に変わったりはしない、ロックンロールとブルースを軸にしたものだが、その音に込められたものは今までとは全く違う。そしてそれはライブという、メンバーが目の前で演奏している場でより一層強く感じることができる。
やっぱり今までは度重なる編成の変化もあったし、カッコよさと楽曲の良さが抜群なのは心からわかってはいたけど、これ以上デカいところに行けるんだろうか?っていう停滞感も感じざるを得なかった。でもこの日のライブを見て確信した。フラッドはこの4人の完全体で突き進んでいけば、絶対もっといい景色を見せてくれるようになる。それぐらい、今のフラッドは過去最高を大幅に更新している。次のアルバムのツアーの時にはさらにとんでもないバンドに進化しているだろう。
もうメンバーも変わることはない。だから、心配ないぜ 俺が確かにフラッドのカッコよさを知ってるから。
1.Where Is My Freedom
2.Blood & Bones
3.Lightning
4.Dancing Zombiez
5.FUCK FOREVER
6.GO
7.Leo
8.Summer Soda
9.再生
10.Rising
11.The Beautiful Monkeys
12.ミッドナイト・サンシャイン
13.One Way Blues
14.NEW TRIBE
15.プシケ
16.シーガル
17.ミッドナイト・クローラー
18.Wink Song
encore
19.見る前に跳べ
20.ベストライド
encore2
21.I LOVE YOU
ミッドナイト・クローラー
https://youtu.be/-WyoEnUmY44
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