9mm Parabellum Bullet presents 「カオスの百年 vol.12」 @日比谷野外音楽堂 5/27
- 2018/05/27
- 23:02
日比谷野音のイメージってどういうものだろうか。のどかな、ピースフル…それこそ野音に似合うバンドとしてSPECIAL OTHERSやbonobosの名前が挙がるし、この日は日比谷公園内でビールフェスタ的なものも行われていたし、そうしたイメージが強いのは間違いないだろう。(昔にはこの会場で悲しい事故が起きたりもしているのだが)
しかし、9mm Parabellum Bulletにとってはこの日比谷野音は因縁の場所であり、リベンジの舞台である。2年前のこの会場でのワンマンにおいてライブ中に滝がギターを弾けなくなってライブは消化不良のまま終了、それ以降バンドはサポートギターを加えてのライブを余儀なくされた、今に至るまでの9mmの試行錯誤と傷だらけのバンドストーリーの始まりとなってしまった場所だからである。
今回は対バンシリーズ「カオスの百年」の特別編であり、この日の対バンは9mmのアコースティックユニット、AC 9mm。これまでにも9mmはアンプラグド編成などでライブを行っているが、対バンと言いながらも全て9mm内で完結している。
ステージにはよくわからないような球体も置かれている中、まずはかみじょうが1人ステージに。ネクタイを装着していることに驚いていると、先に1人でドラムを叩き始める。アコースティックとはいえ手数の多さはやはりかみじょう。また、遠くからは風船のようにも見える球体はドラムセットであり、内部が様々な色に発光するというギミック付きのアコースティックならではの新兵器。
続いて和彦もステージに。椅子に座ってかみじょうのドラムに合わせてベースを弾くと、最後に卓郎がハットを被り、白シャツにネクタイというフォーマルな出で立ちでステージに。やはり椅子に座ってアコギを弾きながら歌い始めたのは「Answer and Answer」。9mmがやるからにはやはり単なる楽器を変えました、という類のアコースティックではないが、ギターが卓郎のみということもあり、卓郎のボーカルと9mmのメロディをじっくりと堪能できる。
「Answer and Answer」は歌い始めるまではなんの曲なのか全くわからなかったが、次の曲はイントロの和彦のベースラインですぐにわかった。1stアルバムの「Heart-Shaped Gear」である。実に久しぶりに聴いた曲だが、その後の1stアルバムの収録曲の連打っぷりからすると、この編成では普段の9mmではなかなか演奏する機会のないこうした曲を演奏する場としても機能するのかもしれない。
その中でも「Battle March」は卓郎がエフェクターを踏むと、アコースティックなのにいきなりノイジーなサウンドが場内に響く。それは続く「荒地」(これまたレアな選曲)でも同じように使われていた。
「最初にかみじょうくんが出ていけばみんな立ち上がるだろう、と思ったんだけど…みなさん上品にお座りで(笑)」
と卓郎が言ったように、席ありの会場でのライブは何度も経験しているとはいえども、着席したまま9mmのライブを見るというのは実に新鮮である。また、こうした既存バンドのアコースティック編成にありがちだが、このバンドは9mmとは別の新人バンドという設定らしい。
最も遅いBPMのアレンジでより一層卓郎の歌を聴かせた「星に願いを」から、卓郎と和彦が手拍子を促すと観客が手拍子した「ハートに火をつけて」は原曲のダンサブルな感じとは全く違う、オシャレなバーで流れていそうなアレンジ。これは和彦がアレンジしてきたものらしいが、ややジャズっぽい要素はこれまでの9mmの曲にもあったとはいえ、それがメンバーそれぞれが持っていたものであるということがうかがい知れる。
そして最後の曲はまさかアコースティックでやるのか!という「太陽が欲しいだけ」。座っていた観客たちもサビでは空に向かって手を伸ばしていたが、その光景を見ると、まだギリギリ明るいと言えるこの時間だからこそここで演奏したのかとも思う。
一応、この編成でもこれからライブを行っていくつもりらしいが、それは単にアコースティックでやりたいから、というよりも滝もサポートメンバーも不在の時でも3人だけでなんとかライブをやれる方法を模索した結果なんではないだろうか。この編成ならば、大きい会場じゃなくても、機材をいつもよりも持ちはこばなくてもライブができる。もちろん、こうしてライブで聴くとそこには3人の工夫と努力の結晶であることがよくわかるのだが。ちなみに滝も関係者席のあたりで3人の姿を見守っていた。
1.Answer and Answer
2.Heart-Shaped Gear
3.Psychopolis
4.Battle March
5.荒地
6.星に願いを
7.ハートに火をつけて
8.太陽が欲しいだけ
アコースティックからいつもの形への大幅なセットチェンジ。当然かみじょうのドラムセットもACの可愛らしいものから、いつもの要塞へと様変わり。
セットチェンジが終わり、場内にAtari Teenage Riotの「Digital Hardcore」が流れると、通常通りの出で立ちをしたメンバーがステージに。「BABEL」ツアー以降バンドを支えてきたfolcaの為川裕也がサポートで加わっているが、最後にステージに帽子を被った滝が出てくると、より一層大きな歓声と拍手が起こる。みんな、こうして9mmのステージに滝が立つ姿をずっと待っていたのだ。
すると「The World」でスタートし、トリプルギターでの分厚いサウンド、滝のコーラスが確かに聴こえる。
「目を凝らして焼き付けてみる」
というフレーズの通りに、滝がギターを弾いている姿をみんなが焼き付けようとしている。かみじょうのドラムもさらに手数が増えている。
インディーズ期の「Mr.Suicide」では為川がもはや完全に9mmに染まったかのようにブレイク部分で和彦に合わせてジャンプし、一方で滝はコーラスで叫びまくっている。もう完全に滝でしかない。
春フェスでも演奏していた「Supernova」のあの印象的なリフも滝のギターによって演奏され、「BABEL」の「Story of Glory」では
「わけなんかなくて笑っていた 俺たちは今無敵なんだ」
という最後のサビに連なるフレーズを卓郎ではなく滝が歌う。「BABEL」ツアーでは滝がステージに立ったのはファイナルでのアンコールだけだったため、ついにこうして完成形であり、あるべき形として「BABEL」の曲をライブで聴くことができるし、
「ステージに刻まれた いくつものを奇跡を
思い出して 終われないって
約束して 超えていくよ」
というフレーズはどうやっても前回のこの会場でのライブ以降の9mmのストーリーに重なって聴こえてきてしまう。
同じく「BABEL」の「I.C.R.A」でも滝が為川とともにコーラスをするのだが、ステージの逆側では和彦がベースをぶん回した挙句にステージに置き、自身は丸腰でステージ上を暴れまくっている。この遠慮や冷静さが一切ない爆裂っぷりも滝の存在によって一層引き出されたものなのだろうか。
「Vampiregirl」での観客と滝・為川の一体化した大合唱が響くと、ここでサポートギターが為川からHEREの武田将幸に交代。その際に武田が出てきて為川とハイタッチしてから代わるという姿に、9mmのサポートを通じて繋がったこの2人の絆を感じさせた。
「告知した通りに、新曲を作りました。みんなを連れていくからこれからも一緒に行きましょう、っていう内容の曲です」
と卓郎が説明してから演奏された新曲「Carry On」はまさにその言葉がそのまま歌詞になり、サウンドはこれぞ9mmな爆裂型ロックナンバー。卓郎のイントロのギターはどこか「Punishment」を彷彿とさせるが、卓郎は
「もうダメかもしれない、辞めようって思った時に浮かんでくるのはいつも今までライブをしてきた時に見てきたみんなの顔で。それを思い出すと、まだやれるって思える」
と、この2年間の葛藤と、それを乗り越えてきた原動力がこうしてライブを見に来ているファンの姿であることを語った。
2年前のこのライブの前まではそんなことを言うようなバンドでは全くなかった。もちろんいつも卓郎は観客に最大限の感謝をしていたが、バンドに対してネガティヴな感情を出すことを全くしなかったから。でも2年前からそうした感情が少なからず芽生えていて、なんのためにこのバンドをやっているのか、というところと向き合わざるを得なくなった。それはもちろん自分たちが楽しいから始めたバンドなのは間違いないけれど、もはや9mmは自分たちのためだけのバンドではなくなった。こうしてどんな状態であっても観に来てくれる人たちがいて、その中から
「9mmを聴いて、ライブを見てバンドを始めた」
という後輩バンドと接する機会も増えた。辞める理由よりも、辞められない理由の方が多くなっていたのだ。
「BABEL」ツアーではかみじょうがコーラスをしていた「Everyone~」では滝がコーラスができることによってかみじょうはドラムに専念し、イントロが打ち込みの「生命のワルツ」で再び爆裂サウンドを轟かし、「Scenes」では
「この美しい場面を」
のフレーズに合わせて滝が「見せてくれ!」と言わんばかりに両手を広げる。
大合唱が響き、滝がギターを弾きながら転げ回った「Termination」までの流れで演奏できる曲の幅の広さに心から安心感を覚えると、「talking machine」のおなじみのイントロの演奏が始まり、卓郎がマラカスを2本手に取ると、滝が1つもらい、2人揃ってマラカスを振りまくる。以前は卓郎がマラカスを振り、滝がギターで演奏する、というパターンだったが、今回は武田と和彦がそれぞれ演奏することで、滝がマラカスを振れるようになっている。これは間違いなく滝の不在という期間を経験したからこそ、その不在を埋めてきた2人の力によってできたことであろう。卓郎に合わせてジャンプする滝の姿は本当に楽しそうだった。
そしてラストは「新しい光」でサビの大合唱が巻き起こると、客席に向けて金テープが発射。その美しい光景は、この日のライブを祝しているかのようであった。
アンコールではメンバーに加え、武田と為川が2人ともステージに登場し、6人編成となって、卓郎がツアーの告知、それすなわちこれからも9mmは全く変わることなく続いていくことを告げると、この2年間で仲間入りした2人とともに「Black Market Blues」を演奏し、やはり卓郎が歌詞を
「日比谷野音にたどり着いたぜー!」
と変え、武田と為川は2人で1つのマイクでコーラスしたり順番にコーラスしたりというコンビネーションを見せる。この2人がいなかったら、この2年間、こうして今までと変わらぬペースで9mmのライブを見ることは絶対にできなかった。サポートという位置付けではあるけれど、前に卓郎が紹介していたように、間違いなくもはや9mmの5人目のメンバーだ。
そして最後に滝のギターが刻みまくるイントロから始まった「Punishment」ではかみじょう以外のメンバーが全員ステージの前に出てきて一直線に並んでブレイク部分でネックを立てるという、昨年末のCDJでも見せた、9mmオールスターズでのカッコよさの究極系のようなパフォーマンス。その圧巻の演奏を終えると、卓郎がメンバーを1人ずつ紹介。自身の後、つまり最後に、2年前と違って最後までステージに立ち続けた滝を紹介した。みんなが待っていたものを、メンバーも待っていた。この日、この会場にいた全ての人の想いは一つになっていた。
ステージを去る前にかみじょうがスティックを投げたりしつつ、卓郎はいつものように、いやいつも以上にあらゆる方向の客席に向き合って感謝をしていた。その表情は、これからも9mmをやっていけることを本当に楽しみにしているかのような清々しさだった。
この2年間、バンドもファンも試練の時間を味わった。特に滝離脱直後はできる曲がほとんどなく、定番曲しか演奏できなかったので、セトリが毎回同じだった。普通のバンドならそれでもよかったかもしれないが、9mmはそのイベント、対バン相手、場所など様々な要素によってセトリを柔軟に変えてきたバンドだっただけに、あまりに同じセトリが続いた時は、
「もうフェスとかでは重要視しなくてもいいかもしれない」
と思ったことすらあった。
しかし、去年のアルバム「BABEL」とそのツアーを経て、サポートの2人とのグルーヴも増し、演奏できる曲も増えた。そしてこうして滝も戻ってきた。その過程をちゃんと見続けてきたからこそ、9mmがただのリベンジではなく、この2年間で新たに出会った仲間、メンバー個々が新たに習得した技術やアレンジを総動員し、過去最強の9mmとしてこの日比谷野音で新たな伝説を作った瞬間に立ち会えたのは感無量である。
つまり、そうしてバンドが行ってきたこの2年間のライブ1本1本、どれも無駄なものはなかったし、我々が見てきたライブ1本1本もどれも無駄なものは何もなかった。その積み重ねの果てにこの日の最強のライブがあり、今の最強の9mmの姿があったのだ。
失っていた期間があったからこそ、今こうしてまた9mmを最強のバンドだと思えることが本当に嬉しいし、これからも今までと変わらないくらいにライブを見まくりたいと思う。まだ残響RECORD所属時代に、初めて9mmを見た時と同じくらい、いや、間違いなくその時以上に、これからも9mmのライブが見れることにドキドキしている。
1.The World
2.Mr.Suicide
3.Lost!!
4.Supernova
5.Story of Glory
6.I.C.R.A
7.Vampiregirl
8.Carry On (新曲)
9.Everyone is fighting on this stage of Lonely
10.生命のワルツ
11.Scenes
12.Termination
13.talking machine
14.新しい光
encore
15.Black Market Blues
16.Punishment
生命のワルツ
https://youtu.be/rVqgv3LzAuc
Next→ 6/6 NICO Touches the Walls @Zepp Tokyo

しかし、9mm Parabellum Bulletにとってはこの日比谷野音は因縁の場所であり、リベンジの舞台である。2年前のこの会場でのワンマンにおいてライブ中に滝がギターを弾けなくなってライブは消化不良のまま終了、それ以降バンドはサポートギターを加えてのライブを余儀なくされた、今に至るまでの9mmの試行錯誤と傷だらけのバンドストーリーの始まりとなってしまった場所だからである。
今回は対バンシリーズ「カオスの百年」の特別編であり、この日の対バンは9mmのアコースティックユニット、AC 9mm。これまでにも9mmはアンプラグド編成などでライブを行っているが、対バンと言いながらも全て9mm内で完結している。
ステージにはよくわからないような球体も置かれている中、まずはかみじょうが1人ステージに。ネクタイを装着していることに驚いていると、先に1人でドラムを叩き始める。アコースティックとはいえ手数の多さはやはりかみじょう。また、遠くからは風船のようにも見える球体はドラムセットであり、内部が様々な色に発光するというギミック付きのアコースティックならではの新兵器。
続いて和彦もステージに。椅子に座ってかみじょうのドラムに合わせてベースを弾くと、最後に卓郎がハットを被り、白シャツにネクタイというフォーマルな出で立ちでステージに。やはり椅子に座ってアコギを弾きながら歌い始めたのは「Answer and Answer」。9mmがやるからにはやはり単なる楽器を変えました、という類のアコースティックではないが、ギターが卓郎のみということもあり、卓郎のボーカルと9mmのメロディをじっくりと堪能できる。
「Answer and Answer」は歌い始めるまではなんの曲なのか全くわからなかったが、次の曲はイントロの和彦のベースラインですぐにわかった。1stアルバムの「Heart-Shaped Gear」である。実に久しぶりに聴いた曲だが、その後の1stアルバムの収録曲の連打っぷりからすると、この編成では普段の9mmではなかなか演奏する機会のないこうした曲を演奏する場としても機能するのかもしれない。
その中でも「Battle March」は卓郎がエフェクターを踏むと、アコースティックなのにいきなりノイジーなサウンドが場内に響く。それは続く「荒地」(これまたレアな選曲)でも同じように使われていた。
「最初にかみじょうくんが出ていけばみんな立ち上がるだろう、と思ったんだけど…みなさん上品にお座りで(笑)」
と卓郎が言ったように、席ありの会場でのライブは何度も経験しているとはいえども、着席したまま9mmのライブを見るというのは実に新鮮である。また、こうした既存バンドのアコースティック編成にありがちだが、このバンドは9mmとは別の新人バンドという設定らしい。
最も遅いBPMのアレンジでより一層卓郎の歌を聴かせた「星に願いを」から、卓郎と和彦が手拍子を促すと観客が手拍子した「ハートに火をつけて」は原曲のダンサブルな感じとは全く違う、オシャレなバーで流れていそうなアレンジ。これは和彦がアレンジしてきたものらしいが、ややジャズっぽい要素はこれまでの9mmの曲にもあったとはいえ、それがメンバーそれぞれが持っていたものであるということがうかがい知れる。
そして最後の曲はまさかアコースティックでやるのか!という「太陽が欲しいだけ」。座っていた観客たちもサビでは空に向かって手を伸ばしていたが、その光景を見ると、まだギリギリ明るいと言えるこの時間だからこそここで演奏したのかとも思う。
一応、この編成でもこれからライブを行っていくつもりらしいが、それは単にアコースティックでやりたいから、というよりも滝もサポートメンバーも不在の時でも3人だけでなんとかライブをやれる方法を模索した結果なんではないだろうか。この編成ならば、大きい会場じゃなくても、機材をいつもよりも持ちはこばなくてもライブができる。もちろん、こうしてライブで聴くとそこには3人の工夫と努力の結晶であることがよくわかるのだが。ちなみに滝も関係者席のあたりで3人の姿を見守っていた。
1.Answer and Answer
2.Heart-Shaped Gear
3.Psychopolis
4.Battle March
5.荒地
6.星に願いを
7.ハートに火をつけて
8.太陽が欲しいだけ
アコースティックからいつもの形への大幅なセットチェンジ。当然かみじょうのドラムセットもACの可愛らしいものから、いつもの要塞へと様変わり。
セットチェンジが終わり、場内にAtari Teenage Riotの「Digital Hardcore」が流れると、通常通りの出で立ちをしたメンバーがステージに。「BABEL」ツアー以降バンドを支えてきたfolcaの為川裕也がサポートで加わっているが、最後にステージに帽子を被った滝が出てくると、より一層大きな歓声と拍手が起こる。みんな、こうして9mmのステージに滝が立つ姿をずっと待っていたのだ。
すると「The World」でスタートし、トリプルギターでの分厚いサウンド、滝のコーラスが確かに聴こえる。
「目を凝らして焼き付けてみる」
というフレーズの通りに、滝がギターを弾いている姿をみんなが焼き付けようとしている。かみじょうのドラムもさらに手数が増えている。
インディーズ期の「Mr.Suicide」では為川がもはや完全に9mmに染まったかのようにブレイク部分で和彦に合わせてジャンプし、一方で滝はコーラスで叫びまくっている。もう完全に滝でしかない。
春フェスでも演奏していた「Supernova」のあの印象的なリフも滝のギターによって演奏され、「BABEL」の「Story of Glory」では
「わけなんかなくて笑っていた 俺たちは今無敵なんだ」
という最後のサビに連なるフレーズを卓郎ではなく滝が歌う。「BABEL」ツアーでは滝がステージに立ったのはファイナルでのアンコールだけだったため、ついにこうして完成形であり、あるべき形として「BABEL」の曲をライブで聴くことができるし、
「ステージに刻まれた いくつものを奇跡を
思い出して 終われないって
約束して 超えていくよ」
というフレーズはどうやっても前回のこの会場でのライブ以降の9mmのストーリーに重なって聴こえてきてしまう。
同じく「BABEL」の「I.C.R.A」でも滝が為川とともにコーラスをするのだが、ステージの逆側では和彦がベースをぶん回した挙句にステージに置き、自身は丸腰でステージ上を暴れまくっている。この遠慮や冷静さが一切ない爆裂っぷりも滝の存在によって一層引き出されたものなのだろうか。
「Vampiregirl」での観客と滝・為川の一体化した大合唱が響くと、ここでサポートギターが為川からHEREの武田将幸に交代。その際に武田が出てきて為川とハイタッチしてから代わるという姿に、9mmのサポートを通じて繋がったこの2人の絆を感じさせた。
「告知した通りに、新曲を作りました。みんなを連れていくからこれからも一緒に行きましょう、っていう内容の曲です」
と卓郎が説明してから演奏された新曲「Carry On」はまさにその言葉がそのまま歌詞になり、サウンドはこれぞ9mmな爆裂型ロックナンバー。卓郎のイントロのギターはどこか「Punishment」を彷彿とさせるが、卓郎は
「もうダメかもしれない、辞めようって思った時に浮かんでくるのはいつも今までライブをしてきた時に見てきたみんなの顔で。それを思い出すと、まだやれるって思える」
と、この2年間の葛藤と、それを乗り越えてきた原動力がこうしてライブを見に来ているファンの姿であることを語った。
2年前のこのライブの前まではそんなことを言うようなバンドでは全くなかった。もちろんいつも卓郎は観客に最大限の感謝をしていたが、バンドに対してネガティヴな感情を出すことを全くしなかったから。でも2年前からそうした感情が少なからず芽生えていて、なんのためにこのバンドをやっているのか、というところと向き合わざるを得なくなった。それはもちろん自分たちが楽しいから始めたバンドなのは間違いないけれど、もはや9mmは自分たちのためだけのバンドではなくなった。こうしてどんな状態であっても観に来てくれる人たちがいて、その中から
「9mmを聴いて、ライブを見てバンドを始めた」
という後輩バンドと接する機会も増えた。辞める理由よりも、辞められない理由の方が多くなっていたのだ。
「BABEL」ツアーではかみじょうがコーラスをしていた「Everyone~」では滝がコーラスができることによってかみじょうはドラムに専念し、イントロが打ち込みの「生命のワルツ」で再び爆裂サウンドを轟かし、「Scenes」では
「この美しい場面を」
のフレーズに合わせて滝が「見せてくれ!」と言わんばかりに両手を広げる。
大合唱が響き、滝がギターを弾きながら転げ回った「Termination」までの流れで演奏できる曲の幅の広さに心から安心感を覚えると、「talking machine」のおなじみのイントロの演奏が始まり、卓郎がマラカスを2本手に取ると、滝が1つもらい、2人揃ってマラカスを振りまくる。以前は卓郎がマラカスを振り、滝がギターで演奏する、というパターンだったが、今回は武田と和彦がそれぞれ演奏することで、滝がマラカスを振れるようになっている。これは間違いなく滝の不在という期間を経験したからこそ、その不在を埋めてきた2人の力によってできたことであろう。卓郎に合わせてジャンプする滝の姿は本当に楽しそうだった。
そしてラストは「新しい光」でサビの大合唱が巻き起こると、客席に向けて金テープが発射。その美しい光景は、この日のライブを祝しているかのようであった。
アンコールではメンバーに加え、武田と為川が2人ともステージに登場し、6人編成となって、卓郎がツアーの告知、それすなわちこれからも9mmは全く変わることなく続いていくことを告げると、この2年間で仲間入りした2人とともに「Black Market Blues」を演奏し、やはり卓郎が歌詞を
「日比谷野音にたどり着いたぜー!」
と変え、武田と為川は2人で1つのマイクでコーラスしたり順番にコーラスしたりというコンビネーションを見せる。この2人がいなかったら、この2年間、こうして今までと変わらぬペースで9mmのライブを見ることは絶対にできなかった。サポートという位置付けではあるけれど、前に卓郎が紹介していたように、間違いなくもはや9mmの5人目のメンバーだ。
そして最後に滝のギターが刻みまくるイントロから始まった「Punishment」ではかみじょう以外のメンバーが全員ステージの前に出てきて一直線に並んでブレイク部分でネックを立てるという、昨年末のCDJでも見せた、9mmオールスターズでのカッコよさの究極系のようなパフォーマンス。その圧巻の演奏を終えると、卓郎がメンバーを1人ずつ紹介。自身の後、つまり最後に、2年前と違って最後までステージに立ち続けた滝を紹介した。みんなが待っていたものを、メンバーも待っていた。この日、この会場にいた全ての人の想いは一つになっていた。
ステージを去る前にかみじょうがスティックを投げたりしつつ、卓郎はいつものように、いやいつも以上にあらゆる方向の客席に向き合って感謝をしていた。その表情は、これからも9mmをやっていけることを本当に楽しみにしているかのような清々しさだった。
この2年間、バンドもファンも試練の時間を味わった。特に滝離脱直後はできる曲がほとんどなく、定番曲しか演奏できなかったので、セトリが毎回同じだった。普通のバンドならそれでもよかったかもしれないが、9mmはそのイベント、対バン相手、場所など様々な要素によってセトリを柔軟に変えてきたバンドだっただけに、あまりに同じセトリが続いた時は、
「もうフェスとかでは重要視しなくてもいいかもしれない」
と思ったことすらあった。
しかし、去年のアルバム「BABEL」とそのツアーを経て、サポートの2人とのグルーヴも増し、演奏できる曲も増えた。そしてこうして滝も戻ってきた。その過程をちゃんと見続けてきたからこそ、9mmがただのリベンジではなく、この2年間で新たに出会った仲間、メンバー個々が新たに習得した技術やアレンジを総動員し、過去最強の9mmとしてこの日比谷野音で新たな伝説を作った瞬間に立ち会えたのは感無量である。
つまり、そうしてバンドが行ってきたこの2年間のライブ1本1本、どれも無駄なものはなかったし、我々が見てきたライブ1本1本もどれも無駄なものは何もなかった。その積み重ねの果てにこの日の最強のライブがあり、今の最強の9mmの姿があったのだ。
失っていた期間があったからこそ、今こうしてまた9mmを最強のバンドだと思えることが本当に嬉しいし、これからも今までと変わらないくらいにライブを見まくりたいと思う。まだ残響RECORD所属時代に、初めて9mmを見た時と同じくらい、いや、間違いなくその時以上に、これからも9mmのライブが見れることにドキドキしている。
1.The World
2.Mr.Suicide
3.Lost!!
4.Supernova
5.Story of Glory
6.I.C.R.A
7.Vampiregirl
8.Carry On (新曲)
9.Everyone is fighting on this stage of Lonely
10.生命のワルツ
11.Scenes
12.Termination
13.talking machine
14.新しい光
encore
15.Black Market Blues
16.Punishment
生命のワルツ
https://youtu.be/rVqgv3LzAuc
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