RHYMESTER presents 「人間交差点」 @お台場特設会場 5/13
- 2018/05/14
- 07:41
もはやヒップホップシーンのみならず、サブカルチャー全般のご意見番的な存在となりつつある、RHYMESTER。これまでにもヒップホップアーティストのみならず、様々なジャンルのアーティストとコラボしてきたが、その幅広い活動の軌跡を1日で見せる主催フェス、人間交差点が今年も開催。
ロックファンとしては昨年からMURO FESが行われていることでおなじみの青海駅すぐそばの野外特設会場に、KICK THE CAN CREWやPUNPEEというヒップホップアーティスト、Base Ball BearやSCOOBIE DOといった過去にコラボしているバンド、BRAHMANという意外なバンドから、DJやアイドルまでを網羅した、まさに人間交差点というタイトルがピッタリの幅広い出演者が揃った。
夜から雨が強くなるという予報の中、9:30からDJやアイドルが出演しており、朝から会場にはたくさんの、しかもやはり他の春フェスとは全く異なる、見た目が完全にバラッバラな観客が集結している。
11:30~ Nakamura Emi
主催者のRHYMESTERが登場し、
「このバックステージは中世社会ですから、痴漢はできる限り残虐な手法で死刑」
「飲み過ぎと痴漢の合わせ技が1番ヤバい。みなさん、メンバーって呼ばれないように楽しんでください」
とさすがのブラックなネタを交えまくりながらの諸注意と前説を行うと、次のアーティストを紹介。
ギターとドラムのサポートメンバーを迎えてNakamura Emiが登場すると、アコギを打楽器のように使いながら生い立ちを語る「Rebirth」からスタート。普通に歌うのではなく、ヒップホップの影響が強い、言葉数の多い歌唱形態はRHYMESTERの音楽に出会ったことによるものらしいが、即興的に歌詞に
「人間交差点2018」
と入れるあたりはさすがである。
なかなかこうしたスタイルの女性アーティストはいないが、だからこそ唯一無二の存在になっているとも言え、アニメなどのタイアップソングを持っているという点もこうしたフェスという場においては実に強いし、タイアップに合わせたフレーズ選びもあるのだが、その中にしっかり自身の人生を入れてくるというのが、
「かつては弾き語りで、愛とかも全然わからないくせにバラードのラブソングを歌ってた。それがRHYMESTERの音楽に出会って、リアルを歌おうと思った」
とこのスタイルで音楽をやる強い意志を感じさせる。
ややメロウな、「やんちゃな高校の同級生の男子が結婚して子供が生まれて守るものができていく」ということを歌った「スケボーマン」、「スマホがない時代に、好きな人の家に電話したら誰が出るかわからないドキドキ感」を歌詞に落とし込み、それが幼少の頃から現在までを繋ぐキーになる「新聞」と、1曲1曲、1フレーズ1フレーズの強度が本当に強いし、だからこそ全く聞き流すことができない。
サポートメンバー2人のソロも挟み、このメンバーでステージに立つからこそのグルーヴをしっかり感じさせてから最後には仕事をしていた期間があったからこそ書ける「モチベーション」、そして自身の生き方の宣誓的な「YAMABIKO」で、見た目のほんわかした印象とは全く真逆の、戦う女性としての衝撃的なライブを終えた。
もともとはオーソドックスなシンガーだったということもあり、普通に歌ってもめちゃくちゃ上手い。しかしその歌唱力をフルに発揮するようなスタイルではない、このヒップホップの影響が強い音楽性を選んでいる、というあたりが、ヒップホップがどれだけ人の人生を変えてしまうくらいに強い音楽であるか、ということがわかる。
実はこの日、この後に高知でもライブがあるため、すぐに移動しなければならないという。なのでMummy-Dは
「来年に取っておこうかと思ったんだけど、来年にはもう大ブレイクしているから今年トップバッターでなんとか出てもらった」
と語っていた。確かにそうなる予感がすごくしている。
1.Rebirth
2.Don't
3.かかってこいよ
4.スケボーマン
5.新聞
6.モチベーション
7.YAMABIKO
かかってこいよ
https://youtu.be/st4ZoMhFiVY
12:20~ SCOOBIE DO
日本のファンクミュージックの伝道者であるSCOOBIE DO。意外にもこのフェスには初出演となる。
リハからおなじみ山下達郎「Ride On Time」を演奏して会場を温めると、メンバーのセッション的な演奏からコヤマシュウの前口上というおなじみのオープニングで、
「どんな会場でも俺たちが音を鳴らせばそこはアウェイからホームになる!」
と「アウェイ」からスタートするというのは自虐というよりも自信の表れであろう。
「真夜中のダンスホール」ではマツキとナガイケがコヤマとともにステップを踏み、間奏ではEXILEのようなダンスを見せるのもただ音を鳴らすのではなく、観客を楽しませながら演奏するという「LIVE CHAMP」としての誇りを感じさせる。
MOBYがヒップホップのリズムを刻みながら打ち込みのサウンドも使い、コヤマのスイートソウルシンガーっぷりを発揮すると、
「俺たちこのフェスずっと出たかったんだよ!それはこの曲をオリジナルバージョンでできるからだー!」
とコヤマが言い、ステージにはDJ JINのターンテーブルとともにRHYMESTERの3人が登場。かつてのコラボ曲「What's Goin' On」でファンクとヒップホップの達人同士の融合を見せながら、
「この世は才能次第」→Mummy-D
「この世はセンス次第」→DJ JIN
「この世は顔次第」→宇多丸
と、普段はメンバーに当てはめるパートをこの日はRHYMESTERに当てはめ、まさかの顔をフィーチャーされた宇多丸はサングラスを外してドヤ顔を見せる。やはりサングラスがないと強面から一転してキュートさすら感じる。
しかしこれだけでは終わらない。もう1曲両者のコラボ曲があるから、ということでSCOOBIE DOバージョンの「やっぱ音楽は素晴らしい」ではコール&レスポンスも交えながらコラボ。DJ JINも音源同様にその低い声でラップを披露した。
RHYMESTERとのコラボを終えると、コヤマ、マツキ、ナガイケの3人がその場をくるくると回りながら演奏する「Back on」から、ラストは昨年リリースのアルバムのリード曲である「Cold Dancer」。爆発するようなパーティーナンバーではなく、やや大人の渋みを感じさせるファンクナンバーは今のバンドの方向性を感じさせるし、そうした曲だからこそ、
「生かされてるこんな命を 燃やさずにどうする」
というフレーズがしっかりと聴こえながら刺さってくる。
そうしたベテランだからこそ、周りのシーンとは迎合しないで自分たちの道を突き進むという姿勢はさすがだし、
「出会って12年くらい。またこうやって一緒にやれるのは、お互い止まらず、ポシャらずにずっと続いてきたから」
という久しぶりのコラボを見るとこのバンドが磨き抜いてきた武器の鋭さと、「やっぱ音楽は素晴らしい!」ということを再認識させられる。
リハ.Ride On Time
1.アウェイ
2.真夜中のダンスホール
3.ensemble
4.What's Goin' On feat.RHYMESTER
5.やっぱ音楽は素晴らしい feat.RHYMESTER
6.Back on
7.Cold Dancer
Cold Dancer
https://youtu.be/Gl86AGsdclQ
13:10~ DJ IZOH + DJ KENTARO
世界最大のDJ大会「DMC world final」の新旧日本人チャンピオンである、DJ IZOHとDJ KENTARO(スペシャ視聴者には様々な面でおなじみ)の2人がタッグを組んで出演。
RHYMESTERの曲をサンプリングしながらも自身たちの紹介ソングにしてしまうという大ネタ使いから、時にそれぞれのソロにスイッチしつつ、時にはなんと2人が肩を組みながらスクラッチを連発したりするという、この日のためだけにというにはあまりにも難易度が高すぎるパフォーマンスを見せる。
QUEEN「We Will Rock You」の超ダンサブルなミックスもありながら、ラストに使うのはやはりRHYMESTERで、ザ・キングオブステージのフェスに立った、ザ・キングオブDJっぷりを短い時間の中でしっかりと見せつけた。
DJ Kentaro Live @ TAICOCLUB '10
https://youtu.be/ULu2nsVUpwQ
13:40~ Base Ball Bear
なぜか宇多丸がレギュラーを務めるラジオ番組のスタッフたちがステージに登場し、その中の1人(完全に見た目は普通のおっさん)が
「Base Ball Bear、行ってみよう」
とおよそバンドを呼び込むとは思えないような脱力必至の呼び込みで登場した、Base Ball Bear。このフェスには2年連続出演にして、今年はサポートを加えていた去年とは異なり、スリーピース編成での出演である。
「真夏の条件」「BREEEEZE GIRL」と夏曲が続く序盤はJAPAN JAM同様だが、いわゆるロックフェスではない中だけにアウェー感も多少はあったのだが、そんな中でも「BREEEEZE GIRL」には歓声と腕が客席から上がっていたあたり、近年もCMで流れていたこの曲はバンドの中でも最もたくさんの人に認知されている曲なのかもしれない。それはワンマンや普段のフェスに行くだけではわからない、異種格闘技的なフェスだからこそ感じることのできる感覚。
「基本的にこのフェスは連続出演することはないらしいんですけど、そんな中で2年連続出演ありがとうございます。今年はご覧の通りスリーピースになりまして。RHYMESTERと同じスリーピースです」
と改めて小出が挨拶すると、最も4人時代のアレンジと飛距離が少ない「そんなに好きじゃなかった」から、まだ夏ではないこの時期が1番似合うと思っている「short hair」でこの日最もセンチメンタルな風を吹かせる。
JAPAN JAMではアンコールで演奏した「ドラマチック」もこの中盤で演奏すると、
「ではここでスペシャルゲスト。意外なゲスト」
と言って登場したのは、
「まさかここで出てくるとは!(笑)」
と自分たちで言いながら、一切の意外感がないRHYMESTER。今年はともに3人の3on3の編成で演奏されるのはもちろん「The Cut」。Mummy-Dが堀之内のドラムの音だけの上にラップを乗せると、徐々に関根のベース、小出のギター、さらにはDJ JINのターンテーブルと音が増えていくごとにグルーヴも増していく。小出がすべてのパートを1人でラップして歌うバージョンも凄まじいが、やはりRHYMESTERも一緒になると必然的にそれを上回るグルーヴが生まれるし、そのグルーヴこそがベボベが「C2」で目指し、会得したものである。
そしてラストはそのグルーヴを3人だけでしっかりと出してみせる「十字架You and I」。この選曲はそうした強いグルーヴを持つアーティストが集まるこのフェスだからこその選曲だったのかもしれないが、3人編成になったことによって、どちらかというとシンプルなギターロック曲の方が合うようになるんじゃないか、と感じていた今のベボベが、決してそういうサウンドだけにとどまらないバンドであるということを改めて証明していた。
普段のギターロックバンドが多いフェスだと正統派なようでいて実は全然正統派じゃないバンドということを感じるくらいにBase Ball Bearは曲やリズムの構造が凝りまくっているバンドなのだが、このフェスのこの濃い出演者の中だと逆に最も正統派っぷりを感じさせた。ライブが終わった頃に雨が本降りになるというのも、ロック界の二大太陽神バンド(もう一組はDragon Ash)っぷりの面目躍如。
リハ.17才
1.真夏の条件
2.BREEEEZE GIRL
3.そんなに好きじゃなかった
4.short hair
5.ドラマチック
6.The Cut feat.RHYMESTER
7.十字架You and I
The Cut feat.RHYMESTER
https://youtu.be/_gzOzwaRA2E
14:30~ BAD HOP
フロム川崎の8人MC若手ヒップホップユニット、BAD HOP。すでにZeppクラスでワンマンを行なっている、日本ヒップホップシーンの期待の星である。
サウンド的には現行のUSヒップホップの潮流も感じさせる、ギャングスタ的な匂いの強いヒップホップ(リリックにも「川崎区で有名になりたきゃ人殺すかラッパーになるかだ」(「Kawasaki Drift」)というものがある)であり、自分はあまりそうしたヒップホップは得意じゃなかったりするのだが、8人もいると過剰人員だったり、役割が被っているメンバーもいそうなものなのに、全員声やフロウが全く違うというあたりはこのメンバーで活動する必然性を感じさせる。
「去年出たヒップホップのフェスのトリが俺らで、その前がRHYMESTERだったんだけど、RHYMESTERがライブ終わる前に「次に出るBAD HOPはこれからの日本のヒップホップを担う若手だから絶対チェックして盛り上げてくれ!」って言ってくれて、すげー嬉しくて。今日がその時の恩を返す最初の機会になったのかな、って」
と素直にRHYMESTERへの感謝を述べていた。見た目は完全に悪ガキではあるけれど、そうしたヒップホップへの愛情と偉大な先輩への感謝がこうした大きな舞台に立てている理由の1つでもあると思う。
Kawasaki Drift
https://youtu.be/I4t8Fuk-SCQ
15:20~ GOMA & The Jungle Rhythm Section
オーストラリアの先住民・アボリジニの民族楽器である長い筒のような管楽器ディジュリドゥ奏者のGOMAを中心とした、GOMA & The Jungle Rhythm Section。完全に本降りの雨の中での登場である。
ドラム1台とパーカッション2台という、その名の通りのリズムセクションを従えて登場すると、反復するドラムのビートにキメなどで変化をつけるパーカッション、そして呪術的なディジュリドゥの音色が否が応でも踊らせる。
そうした音楽性は非常に野外の解放的なムード、さらに言えば自然に合うものであると思うのだが、本人も10月に千葉の白浜でキャンプ型の主催フェスを開催することを発表するなど、自身の音楽の強みをよくわかっているはず。
また、交通事故にあって記憶を失くしたりという壮絶な人生を歩んできた男でもあるのだが、そうしたもろもろのドキュメンタリーがなんとNHK Eテレの1時間番組になるらしい。(かつてスペシャでも事故に遭った後にドキュメンタリーが放送されていた)
尖った言葉の持ち主たちが集結している、ヒップホップアーティストが主催者であるこのフェスにおいて、最も頭を使うことなく、ただただ音に身と感覚を任せて楽しむことができる存在。そうしたアーティストをこの真ん中あたりの時間に配置するあたり、RHYMESTERはさすがである。
ONE GROOVE
https://youtu.be/UbiaPX9YKm8
16:10~ BRAHMAN
今回の出演者の中で最も意外な存在である、BRAHMAN。宇多丸が
「あまりの雨の激しさに、バックステージでは醜い責任の押し付け合いが始まっています(笑)
次に出るバンドのボーカリストが「俺たちの90年代の行いの悪さが…」と(笑)
来年、会場が屋内に移っていたら俺たちの心が折れたと思って(笑)
でも本当はこの会場はオリンピックの開発で使えなくなるんで、屋内に変わっても逃げたわけじゃねーからな!(笑)」
とすら言うくらいの雨の激しさになってきている中でのライブ。
ステージにはいつものようにKOHKI、MAKOTO、RONZIの3人が先に登場し、ややメロウな音を奏で始めると、ステージにはTOSHI-LOWではなくRHYMESTERの3人が登場し、まさかの「耳ヲ貸スベキ」のBRAHMAN演奏バージョンに。曲の終盤にTOSHI-LOWもステージに登場すると、
「東北の声に!」「熊本の声に!」「お台場の声に!」
と耳ヲ貸スベキ人たちがいる場所を叫ぶ。
TOSHI-LOWとRHYMESTERがガッチリと抱き合うと、
「人間交差点、初見参!BRAHMAN始めます!」
と「賽の河原」からはいつものようにストロングスタイルのライブを展開し、雨が降りしきる中&地面がアスファルト&必ずしもホームではないという状況の中であるが、ダイバーが発生。さすがにいつものライブよりも数は少なめではあったが。
「ANSWER FOR…」でTOSHI-LOWが客席に突入すると、やはりTOSHI-LOW目がけたダイバーが続出。しかしながらこの日客席に突入するようなアクトはおらず、ましてや初めてBRAHMANのライブを見るヒップホップファンもたくさんいるからか、TOSHI-LOWが観客に支えられながら立つとどよめきと拍手が起こる。
「鼎の問」ではスクリーンがないため、その音と歌詞のみにじっくりと向き合い、それは最近では細美武士が登場するのが当たり前になりつつあった「今夜」でも同様。そんな中、
「こんな雨、見た目や服装や髪型だけで争いが起こった90年代の東京の血の雨に比べれば全然大したことねぇよ!(笑)
RHYMESTERは90年代からずっと友達、いやもう親戚のような存在。いとこやはとこみたいな、普段は一緒には住んでない親戚。
だから友達から「今クラブにいるんだけど、DJ JINが盛り上げまくっててヤバい!」っていう連絡が来れば嬉しいし、宇多丸がテレビやラジオで御意見を言っているのを見ると、「いいぞ!もっと言ってやれ!」って嬉しくなる。
でも心配なこともあって。宇多丸がそうやって忙しくなると、RHYMESTERのライブが減る。そうすると、Mummy-Dが暇になる(笑)あんな天才を暇なまま寝かせておくのはもったいない。ということで、俺はMummy-Dを船に乗ろうと誘った。はごろもフーズが用意した船に(笑)
まさか90年代に尖りまくっていたパンクスとラッパーがシーチキン、いや、親戚として船に乗るとは(笑)」
と、はごろもフーズのCMでMummy-Dと共演した経緯を語って爆笑を巻き起こし、
「でもRHYMESTERはいつも優しいんだ。俺たちが東北の被災地でライブやるから出てくれ、って言ったら、すぐに「行こう」って返事をくれる。そんな、あの街への想いを」
とRHYMESTERが自分たちとともに被災地の力になってくれたことへの感謝を告げ、阪神大震災が起こった後にソウル・フラワー・ユニオンの中川敬が作った「満月の夕」のカバーを雨で冷え切った心と体を暖めるように鳴らし、TOSHI-LOWがステージに戻ると、
「さぁ幕が開くことは 終わりが来ることだ」
と、始まりがあれば終わりがある。それはどんなに楽しかったり、かけがえのない時間であっても…ということを歌う「真善美」で、TOSHI-LOWがマイクを叩きつけるように床に落としてステージを去ると、1番後ろの飲食ブースのあたりで見ていた人たちからも、大きな拍手と歓声が巻き起こった。フェスにおける最強のジョーカー・BRAHMANは普段の客層とは全く違うこのフェスでも全てをかっさらって行った。
1.耳ヲ貸スベキ feat.RHYMESTER
2.賽の河原
3.SEE OFF
4.DEEP
5.BEYOND THE MOUNTAIN
6.ANSWER FOR…
7.鼎の問
8.今夜
9.満月の夕
10.真善美
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
17:00~ PUNPEE
雨と風は強くなる一方。だがフロントエリアに集まった観客の数も増える一方。前説のためにステージに立ったサイプレス上野が
「めちゃくちゃ嫉妬している」
と評した、現在の日本のヒップホップシーンの若きエース、PUNPEEである。
2DJ編成でメガネに黒いシャツという、BAD HOPとは全く異なる、文系ヒップホップそのままの出で立ちで登場すると、まずは「人間交差点」という単語が入りまくった、この日この場所だからこそのフリースタイルでラッパーとしての実力と反射神経の良さを示す。リズムへの乗せ方も実に独特である。
するといきなり
「歌える人はみんなで歌いましょう」
と、まさかの加山雄三にフィーチャーされた「お嫁においで 2015」という大ネタをいきなり投下。もちろんコーラス部分では大合唱が発生。
昨年リリースしたソロアルバム「MODERN TIMES」がヒップホップシーンを超えたところまで届く一大傑作となったため、もちろんその収録曲が軸にありながらも、自分の今持ちうる最強の武器を全て使うといった内容のパフォーマンス。RHYMESTERのメンバーや曲タイトル、歌詞を巧みに取り入れたフリースタイルも合間に挟みながら、「Play My Music」では実に賑やかなゲスト、METEORが登場し、テンションの高さで寒さと雨を忘れさせようとばかりに奮闘。PUNPEEが
「めちゃくちゃ良い曲なんで」
と評した、そのMETEORの「4800日後」までもPUNPEEがラップで参加して披露するという、フィーチャリング曲に参加してもらいながらもフックアップしていこうという姿勢も見せる。METEORの方がPUNPEEよりも先輩らしいが。
メロウであり、それ以上にポップであるというのが「MODERN TIMES」が評価された理由でもあると思うのだが、その中でも作品の内容の核となる「タイムマシーンに乗って」から、トラックメイカーSTUTSとフィーチャリングし、名曲と騒がれた「夜を使いはたして」と、作った曲のみならず参加した曲のポップさ、名曲っぷりに改めて驚かされると、
「「MODERN TIMES」がああいう物語性を持った作品になったのは、RHYMESTERのアルバムの作り方をずっと見せてもらってきたからで。だからこそあのアルバムはRHYMESTERなしでは絶対に生まれなかったんですけど、前にラジオに呼んでもらった時に、「新曲ができたんですけど、フリーでダウンロードにしようと思ってるんですよ」って言ったら、「こんな素晴らしい曲は絶対売らなきゃダメだ!シングルにするべき!」って言ってくれた曲を最後にやります」
と言って、かなりロックなサウンドの「Hero」で締めるも、
「最後に歌詞間違えました!(笑)」
と叫んでステージを去っていった。
同じ若手ヒップホップでも、BAD HOPとは全くタイプが違う。PUNPEEからは確かにRHYMESTERから繋がるような、知性の高さとユーモアのセンスを備えたヒップホップの系譜にいることを感じる。(どちらがいいとか悪いとかではなく)
それはZeebraやKREVAも持ち合わせていたものなだけに、ヒップホップシーンを飛び越えた存在になるために、かなり重要な要素だと思う。
1.フリースタイル
2.お嫁においで 2015
3.Raneissance
4.Scenario (Film)
5.Movie On The Sunday
6.Play My Music feat.METEOR
7.4800日後 feat.METEOR
8.タイムマシーンに乗って
9.夜を使いはたして
10.Hero
お嫁においで 2015
https://youtu.be/gLS_4iPoZ40
17:50~ KICK THE CAN CREW
さらに雨は強さを増しているが、ここに来て観客のテンションは最高潮。今回の目玉と言えるKICK THE CAN CREWの登場である。
KREVA=青、MCU=黄色、LITTLEが赤というわかりやすい色分けの衣装で登場すると、再始動後初の新曲であった「千%」で、このグループとしての歴史、各々のソロ活動、さらには再始動してからのこれまでを「経てからのここ」を感じさせる。
ちょっと変わった337拍子こと「地球ブルース ~337~」というお祭りチューンで雨の中を盛り上げると、
「良い感じだからもうやっちゃおうかな!」
と、早くもRHYMESTERを招き入れる。宇多丸はなぜか金髪ロングのカツラを被っていたが、それはこの後に披露する曲の歌詞に合わせたものであった。その曲は出世作「VITALIZER」収録のRHYMESTERフィーチャリング曲「神輿ロッカーズ」でまさに祭りのごとき盛り上がりぶりになるのだが、Mummy-Dのパートが終わるとなぜかビートが止まり、最初からやり直すことに。これは機材トラブルだったのか、あえてだったのかはメンバーのリアクションからはあまりよくわからない。結局RHYMESTERが登場するところからやり直すということになったが。
最後にはDJ JINもステージに現れると、KREVAが、
「昔、この曲ができた時にJINさんがラジオでめちゃくちゃ褒めてくれて。俺がトラックを作ったんだけど、凄いトラックメイカーにトラックを褒めてもらえたのがめちゃくちゃ嬉しくて。だから次の曲はJINさんに曲フリをしてもらっていいですか!?」
とDJ JINにお願いすると、
「まだ何も終わっちゃいないぜ!」
とJINが叫び、夏の切なさを感じさせる「イツナロウバ」へ。
さらにはCASSETTE VISIONのラップ部分までも3人で乗りこなす「TRIIIIIICO!」、このタフな状況ですら
「上がってる!」
と大合唱が起こった「マルシェ」とヒットチューンを連発すると、「神輿ロッカーズ」をやり直したからか、それとも雨を考慮してか、あっという間に「sayonara sayonara」から、こうしてまたこの曲を野外のライブで聴けるのが実に嬉しい「アンバランス」で無数の観客の腕が揺れる。
9月には実に久しぶりの日本武道館ワンマンも決まったが、これからの夏フェスでもその姿を見ることができるだろうか。
しかしヒップホップというスタイルを貫いたままでここまで幅広い世代、幅広いジャンルのファンが知っている曲をたくさん生み出した、というグループは他にRIP SLYMEくらいしかいない気がする。そうした意味でも本当に偉大なグループだと思うし、そんなグループがこうして最前線に戻ってきたことが実に嬉しい。
1.千%
2.地球ブルース ~337~
3.神輿ロッカーズ feat.RHYMESTER
4.イツナロウバ
5.TRIIIIIICO!
6.マルシェ
7.sayonara sayonara
8.アンバランス
千%
https://youtu.be/wFKvOPQyVL0
18:40~ RHYMESTER
ここまでは転換の間をつないでいたのはRHYMESTERのメンバーの誰かしら+出演者なり関係者だったのだが、さすがに次の出演者が出てくるわけにもいかない、というわけでステージにはまさかのTOSHI-LOW、小出祐介、PUNPEE、GOMAという、今まで一度も絡んだことがないという面々。それだけに何を喋るのかと思いきや、TOSHI-LOWが小出に
「失踪したギタリスト、帰ってきた?(笑)」
GOMAに
「記憶戻った?(笑)」
と愛がありながらも強烈すぎる先制パンチ。結局は誰がRHYMESTERの名前を呼んで呼び込むのか?という話になるが、観客も含めて全員で呼び込むことに。小出が
「この感じこそ人間交差点!」
と締めようとしているのに、TOSHI-LOWは最後まで
「俺がギターで入ってやるよ、俺は失踪しないタイプだから(笑)」
と小出に絡んでいた。
そんな荒らされた空気感の中でRHYMESTERの3人がオンステージ。大トリでありながら、間違いなくここまでで最も雨も風も強いという非常事態である。
自己紹介的なフリースタイルを挟んでから、宇多丸のラジオ「アフター6ジャンクション」のテーマソングである新曲からスタート。まだ番組内ではワンコーラスしか流れていないのを、この日はフルコーラス初披露。広く聴かれるということを念頭に置いたのか、RHYMESTERのラップならではのキレ味はもちろんありながらも、幅広い層に届きそうなポップさを兼ね備えている。
ヒップホップのビートというよりは「ダンサブル」というタイトル通りにダンスミュージックのエッセンスを強く取り入れた昨年の「Future Is Born」と、かなり過酷な状況なだけに、喋りたいこともたくさんあるだろうが、かなり巻き気味で曲を連発していく。
そしてここからは人間交差点の名前にふさわしいゲスト陣が次々に登場。まずはPUNPEEを呼び込み、日本語インテリラップの継承を見せる「Kids In The Park」。PUNPEEのライブ時にRHYMESTERが出てこなかったのはこのタイミングでやったからである。
しかし次に招かれたのは、すでに先ほどコラボしている、KICK THE CAN CREW。先ほどはKICKメインでRHYMESTERはフィーチャリングされる側だったが、今度は逆バージョンということで「10Balls + 2」で5MCの華麗なマイクリレーを見せると、さらになんと「B-Boyイズム」までもKICKとのマイクリレーバージョンに。パンチラインだらけのリリックをKICKのメンバーも分担してラップしていくのだが、一切の違和感がなかったあたりはKICKの3人も間違いなく「B-Boyイズム」の持ち主だからであろう。
しかしながらやはり雨が相当キツい、ということで、トリであるにもかかわらず、イベントのタイトルにもなっている曲「人間交差点」を披露して、いったん締め。とはいえ、
「一回引っ込んで、また出てきてってやってる余裕は一切ない」
ということで、捌けることなくアンコールへ突入。
すでにステージにバンドセットが用意されていたのだが、ここでそのバンドメンバーことSCOOBIE DOもステージに。
「RHYMESTERには「ONCE AGAIN」みたいな良い曲と、そうでない曲がある(笑)そのそうでない曲のほう(笑)」
と作り手なのに自虐しながら披露されたのは、生バンドバージョンでの「けしからん」。SCOOBIE DOの演奏はこの曲の新たな気付きと解釈を与えてさらにファンキーな曲になり、生演奏だからこそのダイナミズムも曲に宿っていく。自身たちの曲ももう数えきれないくらいにリリースされている中で、こうして他のアーティストの曲がすぐさま演奏する状態であるというあたりにSCOOBIE DOのバンドの実力の高さを改めて思い知らされる。
そしてあっという間のラストもSCOOBIE DOとともに演奏された「カミング・スーン」。来るべき次の季節を待ちわびる曲であるのだが、曲の終盤にはこの日のために作られた、コヤマのメロウなボーカルも追加されるという特別バージョンであった。
演奏が終わるとまだ残っていた出演者たちをステージに招いたのだが、ほとんどの出演者が残っており、ステージは完全に全員集合感が出ていた。また、例年はここで出演者に話をフリまくり、なかなか終わらない会話が展開されるらしいのだが、今回はこの雨により、すぐさまDJ JINの一本締めで
「活動30年の中で間違いなく最悪の天気(笑)さんぴんキャンプを超えてる!(笑)」
というくらいの悪天候に見舞われた、4年目の人間交差点は幕を閉じた。
この日の勝者は間違いなくこんな天候でも全く帰らなかった観客。しかし観客を帰らせなかったのは、豪華なコラボを見せてくれるだろうという期待感で観客を離さず、実際にそうしたコラボを連発し、雨だから極力早く終われるようにライブを行なったRHYMESTERの力によるもの。
そしてそうしたコラボを見ていると、ヒップホップという音楽はロックよりもはるかに自由だな、と思える。楽器を弾くという構造上、ロックバンドはそんなにコラボなどを頻繁に行うことはできない。でもヒップホップはそれができる。
「それはヒップホップというよりも、RHYMESTERが凄いんじゃないか」
というようにも思えるし、実際にRHYMESTERは凄いのだが、そのRHYMESTERがヒップホップ最強論者としてヒップホップをレペゼンしているのだから、それはもうヒップホップそのものの話なのである。そしてそれはやはり「人間交差点」というタイトルそのものだったのである。
なかなかここまでガッツリとヒップホップのライブを見ることはないため、実に新鮮だった。果たして来年はどんな場所で開催され、どんな出演者が出演し、どんな形のコラボを見せてくれるのか。単にライブを見せるのではなく、「人と人を繋げる」という明確な意志が見えるフェス。それはこれからのRHYMESTERやそれぞれの出演者の活動に少なくない影響を及ぼすはず。
1.アフター6
2.Future Is Born
3.Kids In The Park feat.PUNPEE
4.10Balls + 2 feat.KICK THE CAN CREW
5.B-Boyイズム feat.KICK THE CAN CREW
6.人間交差点
encore
7.けしからん feat.SCOOBIE DO
8.カミング・スーン feat.SCOOBIE DO
Future Is Born
https://youtu.be/jvjuqpkBV18
Next→ 5/25 Base Ball Bear @渋谷CLUB QUATTRO
ロックファンとしては昨年からMURO FESが行われていることでおなじみの青海駅すぐそばの野外特設会場に、KICK THE CAN CREWやPUNPEEというヒップホップアーティスト、Base Ball BearやSCOOBIE DOといった過去にコラボしているバンド、BRAHMANという意外なバンドから、DJやアイドルまでを網羅した、まさに人間交差点というタイトルがピッタリの幅広い出演者が揃った。
夜から雨が強くなるという予報の中、9:30からDJやアイドルが出演しており、朝から会場にはたくさんの、しかもやはり他の春フェスとは全く異なる、見た目が完全にバラッバラな観客が集結している。
11:30~ Nakamura Emi
主催者のRHYMESTERが登場し、
「このバックステージは中世社会ですから、痴漢はできる限り残虐な手法で死刑」
「飲み過ぎと痴漢の合わせ技が1番ヤバい。みなさん、メンバーって呼ばれないように楽しんでください」
とさすがのブラックなネタを交えまくりながらの諸注意と前説を行うと、次のアーティストを紹介。
ギターとドラムのサポートメンバーを迎えてNakamura Emiが登場すると、アコギを打楽器のように使いながら生い立ちを語る「Rebirth」からスタート。普通に歌うのではなく、ヒップホップの影響が強い、言葉数の多い歌唱形態はRHYMESTERの音楽に出会ったことによるものらしいが、即興的に歌詞に
「人間交差点2018」
と入れるあたりはさすがである。
なかなかこうしたスタイルの女性アーティストはいないが、だからこそ唯一無二の存在になっているとも言え、アニメなどのタイアップソングを持っているという点もこうしたフェスという場においては実に強いし、タイアップに合わせたフレーズ選びもあるのだが、その中にしっかり自身の人生を入れてくるというのが、
「かつては弾き語りで、愛とかも全然わからないくせにバラードのラブソングを歌ってた。それがRHYMESTERの音楽に出会って、リアルを歌おうと思った」
とこのスタイルで音楽をやる強い意志を感じさせる。
ややメロウな、「やんちゃな高校の同級生の男子が結婚して子供が生まれて守るものができていく」ということを歌った「スケボーマン」、「スマホがない時代に、好きな人の家に電話したら誰が出るかわからないドキドキ感」を歌詞に落とし込み、それが幼少の頃から現在までを繋ぐキーになる「新聞」と、1曲1曲、1フレーズ1フレーズの強度が本当に強いし、だからこそ全く聞き流すことができない。
サポートメンバー2人のソロも挟み、このメンバーでステージに立つからこそのグルーヴをしっかり感じさせてから最後には仕事をしていた期間があったからこそ書ける「モチベーション」、そして自身の生き方の宣誓的な「YAMABIKO」で、見た目のほんわかした印象とは全く真逆の、戦う女性としての衝撃的なライブを終えた。
もともとはオーソドックスなシンガーだったということもあり、普通に歌ってもめちゃくちゃ上手い。しかしその歌唱力をフルに発揮するようなスタイルではない、このヒップホップの影響が強い音楽性を選んでいる、というあたりが、ヒップホップがどれだけ人の人生を変えてしまうくらいに強い音楽であるか、ということがわかる。
実はこの日、この後に高知でもライブがあるため、すぐに移動しなければならないという。なのでMummy-Dは
「来年に取っておこうかと思ったんだけど、来年にはもう大ブレイクしているから今年トップバッターでなんとか出てもらった」
と語っていた。確かにそうなる予感がすごくしている。
1.Rebirth
2.Don't
3.かかってこいよ
4.スケボーマン
5.新聞
6.モチベーション
7.YAMABIKO
かかってこいよ
https://youtu.be/st4ZoMhFiVY
12:20~ SCOOBIE DO
日本のファンクミュージックの伝道者であるSCOOBIE DO。意外にもこのフェスには初出演となる。
リハからおなじみ山下達郎「Ride On Time」を演奏して会場を温めると、メンバーのセッション的な演奏からコヤマシュウの前口上というおなじみのオープニングで、
「どんな会場でも俺たちが音を鳴らせばそこはアウェイからホームになる!」
と「アウェイ」からスタートするというのは自虐というよりも自信の表れであろう。
「真夜中のダンスホール」ではマツキとナガイケがコヤマとともにステップを踏み、間奏ではEXILEのようなダンスを見せるのもただ音を鳴らすのではなく、観客を楽しませながら演奏するという「LIVE CHAMP」としての誇りを感じさせる。
MOBYがヒップホップのリズムを刻みながら打ち込みのサウンドも使い、コヤマのスイートソウルシンガーっぷりを発揮すると、
「俺たちこのフェスずっと出たかったんだよ!それはこの曲をオリジナルバージョンでできるからだー!」
とコヤマが言い、ステージにはDJ JINのターンテーブルとともにRHYMESTERの3人が登場。かつてのコラボ曲「What's Goin' On」でファンクとヒップホップの達人同士の融合を見せながら、
「この世は才能次第」→Mummy-D
「この世はセンス次第」→DJ JIN
「この世は顔次第」→宇多丸
と、普段はメンバーに当てはめるパートをこの日はRHYMESTERに当てはめ、まさかの顔をフィーチャーされた宇多丸はサングラスを外してドヤ顔を見せる。やはりサングラスがないと強面から一転してキュートさすら感じる。
しかしこれだけでは終わらない。もう1曲両者のコラボ曲があるから、ということでSCOOBIE DOバージョンの「やっぱ音楽は素晴らしい」ではコール&レスポンスも交えながらコラボ。DJ JINも音源同様にその低い声でラップを披露した。
RHYMESTERとのコラボを終えると、コヤマ、マツキ、ナガイケの3人がその場をくるくると回りながら演奏する「Back on」から、ラストは昨年リリースのアルバムのリード曲である「Cold Dancer」。爆発するようなパーティーナンバーではなく、やや大人の渋みを感じさせるファンクナンバーは今のバンドの方向性を感じさせるし、そうした曲だからこそ、
「生かされてるこんな命を 燃やさずにどうする」
というフレーズがしっかりと聴こえながら刺さってくる。
そうしたベテランだからこそ、周りのシーンとは迎合しないで自分たちの道を突き進むという姿勢はさすがだし、
「出会って12年くらい。またこうやって一緒にやれるのは、お互い止まらず、ポシャらずにずっと続いてきたから」
という久しぶりのコラボを見るとこのバンドが磨き抜いてきた武器の鋭さと、「やっぱ音楽は素晴らしい!」ということを再認識させられる。
リハ.Ride On Time
1.アウェイ
2.真夜中のダンスホール
3.ensemble
4.What's Goin' On feat.RHYMESTER
5.やっぱ音楽は素晴らしい feat.RHYMESTER
6.Back on
7.Cold Dancer
Cold Dancer
https://youtu.be/Gl86AGsdclQ
13:10~ DJ IZOH + DJ KENTARO
世界最大のDJ大会「DMC world final」の新旧日本人チャンピオンである、DJ IZOHとDJ KENTARO(スペシャ視聴者には様々な面でおなじみ)の2人がタッグを組んで出演。
RHYMESTERの曲をサンプリングしながらも自身たちの紹介ソングにしてしまうという大ネタ使いから、時にそれぞれのソロにスイッチしつつ、時にはなんと2人が肩を組みながらスクラッチを連発したりするという、この日のためだけにというにはあまりにも難易度が高すぎるパフォーマンスを見せる。
QUEEN「We Will Rock You」の超ダンサブルなミックスもありながら、ラストに使うのはやはりRHYMESTERで、ザ・キングオブステージのフェスに立った、ザ・キングオブDJっぷりを短い時間の中でしっかりと見せつけた。
DJ Kentaro Live @ TAICOCLUB '10
https://youtu.be/ULu2nsVUpwQ
13:40~ Base Ball Bear
なぜか宇多丸がレギュラーを務めるラジオ番組のスタッフたちがステージに登場し、その中の1人(完全に見た目は普通のおっさん)が
「Base Ball Bear、行ってみよう」
とおよそバンドを呼び込むとは思えないような脱力必至の呼び込みで登場した、Base Ball Bear。このフェスには2年連続出演にして、今年はサポートを加えていた去年とは異なり、スリーピース編成での出演である。
「真夏の条件」「BREEEEZE GIRL」と夏曲が続く序盤はJAPAN JAM同様だが、いわゆるロックフェスではない中だけにアウェー感も多少はあったのだが、そんな中でも「BREEEEZE GIRL」には歓声と腕が客席から上がっていたあたり、近年もCMで流れていたこの曲はバンドの中でも最もたくさんの人に認知されている曲なのかもしれない。それはワンマンや普段のフェスに行くだけではわからない、異種格闘技的なフェスだからこそ感じることのできる感覚。
「基本的にこのフェスは連続出演することはないらしいんですけど、そんな中で2年連続出演ありがとうございます。今年はご覧の通りスリーピースになりまして。RHYMESTERと同じスリーピースです」
と改めて小出が挨拶すると、最も4人時代のアレンジと飛距離が少ない「そんなに好きじゃなかった」から、まだ夏ではないこの時期が1番似合うと思っている「short hair」でこの日最もセンチメンタルな風を吹かせる。
JAPAN JAMではアンコールで演奏した「ドラマチック」もこの中盤で演奏すると、
「ではここでスペシャルゲスト。意外なゲスト」
と言って登場したのは、
「まさかここで出てくるとは!(笑)」
と自分たちで言いながら、一切の意外感がないRHYMESTER。今年はともに3人の3on3の編成で演奏されるのはもちろん「The Cut」。Mummy-Dが堀之内のドラムの音だけの上にラップを乗せると、徐々に関根のベース、小出のギター、さらにはDJ JINのターンテーブルと音が増えていくごとにグルーヴも増していく。小出がすべてのパートを1人でラップして歌うバージョンも凄まじいが、やはりRHYMESTERも一緒になると必然的にそれを上回るグルーヴが生まれるし、そのグルーヴこそがベボベが「C2」で目指し、会得したものである。
そしてラストはそのグルーヴを3人だけでしっかりと出してみせる「十字架You and I」。この選曲はそうした強いグルーヴを持つアーティストが集まるこのフェスだからこその選曲だったのかもしれないが、3人編成になったことによって、どちらかというとシンプルなギターロック曲の方が合うようになるんじゃないか、と感じていた今のベボベが、決してそういうサウンドだけにとどまらないバンドであるということを改めて証明していた。
普段のギターロックバンドが多いフェスだと正統派なようでいて実は全然正統派じゃないバンドということを感じるくらいにBase Ball Bearは曲やリズムの構造が凝りまくっているバンドなのだが、このフェスのこの濃い出演者の中だと逆に最も正統派っぷりを感じさせた。ライブが終わった頃に雨が本降りになるというのも、ロック界の二大太陽神バンド(もう一組はDragon Ash)っぷりの面目躍如。
リハ.17才
1.真夏の条件
2.BREEEEZE GIRL
3.そんなに好きじゃなかった
4.short hair
5.ドラマチック
6.The Cut feat.RHYMESTER
7.十字架You and I
The Cut feat.RHYMESTER
https://youtu.be/_gzOzwaRA2E
14:30~ BAD HOP
フロム川崎の8人MC若手ヒップホップユニット、BAD HOP。すでにZeppクラスでワンマンを行なっている、日本ヒップホップシーンの期待の星である。
サウンド的には現行のUSヒップホップの潮流も感じさせる、ギャングスタ的な匂いの強いヒップホップ(リリックにも「川崎区で有名になりたきゃ人殺すかラッパーになるかだ」(「Kawasaki Drift」)というものがある)であり、自分はあまりそうしたヒップホップは得意じゃなかったりするのだが、8人もいると過剰人員だったり、役割が被っているメンバーもいそうなものなのに、全員声やフロウが全く違うというあたりはこのメンバーで活動する必然性を感じさせる。
「去年出たヒップホップのフェスのトリが俺らで、その前がRHYMESTERだったんだけど、RHYMESTERがライブ終わる前に「次に出るBAD HOPはこれからの日本のヒップホップを担う若手だから絶対チェックして盛り上げてくれ!」って言ってくれて、すげー嬉しくて。今日がその時の恩を返す最初の機会になったのかな、って」
と素直にRHYMESTERへの感謝を述べていた。見た目は完全に悪ガキではあるけれど、そうしたヒップホップへの愛情と偉大な先輩への感謝がこうした大きな舞台に立てている理由の1つでもあると思う。
Kawasaki Drift
https://youtu.be/I4t8Fuk-SCQ
15:20~ GOMA & The Jungle Rhythm Section
オーストラリアの先住民・アボリジニの民族楽器である長い筒のような管楽器ディジュリドゥ奏者のGOMAを中心とした、GOMA & The Jungle Rhythm Section。完全に本降りの雨の中での登場である。
ドラム1台とパーカッション2台という、その名の通りのリズムセクションを従えて登場すると、反復するドラムのビートにキメなどで変化をつけるパーカッション、そして呪術的なディジュリドゥの音色が否が応でも踊らせる。
そうした音楽性は非常に野外の解放的なムード、さらに言えば自然に合うものであると思うのだが、本人も10月に千葉の白浜でキャンプ型の主催フェスを開催することを発表するなど、自身の音楽の強みをよくわかっているはず。
また、交通事故にあって記憶を失くしたりという壮絶な人生を歩んできた男でもあるのだが、そうしたもろもろのドキュメンタリーがなんとNHK Eテレの1時間番組になるらしい。(かつてスペシャでも事故に遭った後にドキュメンタリーが放送されていた)
尖った言葉の持ち主たちが集結している、ヒップホップアーティストが主催者であるこのフェスにおいて、最も頭を使うことなく、ただただ音に身と感覚を任せて楽しむことができる存在。そうしたアーティストをこの真ん中あたりの時間に配置するあたり、RHYMESTERはさすがである。
ONE GROOVE
https://youtu.be/UbiaPX9YKm8
16:10~ BRAHMAN
今回の出演者の中で最も意外な存在である、BRAHMAN。宇多丸が
「あまりの雨の激しさに、バックステージでは醜い責任の押し付け合いが始まっています(笑)
次に出るバンドのボーカリストが「俺たちの90年代の行いの悪さが…」と(笑)
来年、会場が屋内に移っていたら俺たちの心が折れたと思って(笑)
でも本当はこの会場はオリンピックの開発で使えなくなるんで、屋内に変わっても逃げたわけじゃねーからな!(笑)」
とすら言うくらいの雨の激しさになってきている中でのライブ。
ステージにはいつものようにKOHKI、MAKOTO、RONZIの3人が先に登場し、ややメロウな音を奏で始めると、ステージにはTOSHI-LOWではなくRHYMESTERの3人が登場し、まさかの「耳ヲ貸スベキ」のBRAHMAN演奏バージョンに。曲の終盤にTOSHI-LOWもステージに登場すると、
「東北の声に!」「熊本の声に!」「お台場の声に!」
と耳ヲ貸スベキ人たちがいる場所を叫ぶ。
TOSHI-LOWとRHYMESTERがガッチリと抱き合うと、
「人間交差点、初見参!BRAHMAN始めます!」
と「賽の河原」からはいつものようにストロングスタイルのライブを展開し、雨が降りしきる中&地面がアスファルト&必ずしもホームではないという状況の中であるが、ダイバーが発生。さすがにいつものライブよりも数は少なめではあったが。
「ANSWER FOR…」でTOSHI-LOWが客席に突入すると、やはりTOSHI-LOW目がけたダイバーが続出。しかしながらこの日客席に突入するようなアクトはおらず、ましてや初めてBRAHMANのライブを見るヒップホップファンもたくさんいるからか、TOSHI-LOWが観客に支えられながら立つとどよめきと拍手が起こる。
「鼎の問」ではスクリーンがないため、その音と歌詞のみにじっくりと向き合い、それは最近では細美武士が登場するのが当たり前になりつつあった「今夜」でも同様。そんな中、
「こんな雨、見た目や服装や髪型だけで争いが起こった90年代の東京の血の雨に比べれば全然大したことねぇよ!(笑)
RHYMESTERは90年代からずっと友達、いやもう親戚のような存在。いとこやはとこみたいな、普段は一緒には住んでない親戚。
だから友達から「今クラブにいるんだけど、DJ JINが盛り上げまくっててヤバい!」っていう連絡が来れば嬉しいし、宇多丸がテレビやラジオで御意見を言っているのを見ると、「いいぞ!もっと言ってやれ!」って嬉しくなる。
でも心配なこともあって。宇多丸がそうやって忙しくなると、RHYMESTERのライブが減る。そうすると、Mummy-Dが暇になる(笑)あんな天才を暇なまま寝かせておくのはもったいない。ということで、俺はMummy-Dを船に乗ろうと誘った。はごろもフーズが用意した船に(笑)
まさか90年代に尖りまくっていたパンクスとラッパーがシーチキン、いや、親戚として船に乗るとは(笑)」
と、はごろもフーズのCMでMummy-Dと共演した経緯を語って爆笑を巻き起こし、
「でもRHYMESTERはいつも優しいんだ。俺たちが東北の被災地でライブやるから出てくれ、って言ったら、すぐに「行こう」って返事をくれる。そんな、あの街への想いを」
とRHYMESTERが自分たちとともに被災地の力になってくれたことへの感謝を告げ、阪神大震災が起こった後にソウル・フラワー・ユニオンの中川敬が作った「満月の夕」のカバーを雨で冷え切った心と体を暖めるように鳴らし、TOSHI-LOWがステージに戻ると、
「さぁ幕が開くことは 終わりが来ることだ」
と、始まりがあれば終わりがある。それはどんなに楽しかったり、かけがえのない時間であっても…ということを歌う「真善美」で、TOSHI-LOWがマイクを叩きつけるように床に落としてステージを去ると、1番後ろの飲食ブースのあたりで見ていた人たちからも、大きな拍手と歓声が巻き起こった。フェスにおける最強のジョーカー・BRAHMANは普段の客層とは全く違うこのフェスでも全てをかっさらって行った。
1.耳ヲ貸スベキ feat.RHYMESTER
2.賽の河原
3.SEE OFF
4.DEEP
5.BEYOND THE MOUNTAIN
6.ANSWER FOR…
7.鼎の問
8.今夜
9.満月の夕
10.真善美
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
17:00~ PUNPEE
雨と風は強くなる一方。だがフロントエリアに集まった観客の数も増える一方。前説のためにステージに立ったサイプレス上野が
「めちゃくちゃ嫉妬している」
と評した、現在の日本のヒップホップシーンの若きエース、PUNPEEである。
2DJ編成でメガネに黒いシャツという、BAD HOPとは全く異なる、文系ヒップホップそのままの出で立ちで登場すると、まずは「人間交差点」という単語が入りまくった、この日この場所だからこそのフリースタイルでラッパーとしての実力と反射神経の良さを示す。リズムへの乗せ方も実に独特である。
するといきなり
「歌える人はみんなで歌いましょう」
と、まさかの加山雄三にフィーチャーされた「お嫁においで 2015」という大ネタをいきなり投下。もちろんコーラス部分では大合唱が発生。
昨年リリースしたソロアルバム「MODERN TIMES」がヒップホップシーンを超えたところまで届く一大傑作となったため、もちろんその収録曲が軸にありながらも、自分の今持ちうる最強の武器を全て使うといった内容のパフォーマンス。RHYMESTERのメンバーや曲タイトル、歌詞を巧みに取り入れたフリースタイルも合間に挟みながら、「Play My Music」では実に賑やかなゲスト、METEORが登場し、テンションの高さで寒さと雨を忘れさせようとばかりに奮闘。PUNPEEが
「めちゃくちゃ良い曲なんで」
と評した、そのMETEORの「4800日後」までもPUNPEEがラップで参加して披露するという、フィーチャリング曲に参加してもらいながらもフックアップしていこうという姿勢も見せる。METEORの方がPUNPEEよりも先輩らしいが。
メロウであり、それ以上にポップであるというのが「MODERN TIMES」が評価された理由でもあると思うのだが、その中でも作品の内容の核となる「タイムマシーンに乗って」から、トラックメイカーSTUTSとフィーチャリングし、名曲と騒がれた「夜を使いはたして」と、作った曲のみならず参加した曲のポップさ、名曲っぷりに改めて驚かされると、
「「MODERN TIMES」がああいう物語性を持った作品になったのは、RHYMESTERのアルバムの作り方をずっと見せてもらってきたからで。だからこそあのアルバムはRHYMESTERなしでは絶対に生まれなかったんですけど、前にラジオに呼んでもらった時に、「新曲ができたんですけど、フリーでダウンロードにしようと思ってるんですよ」って言ったら、「こんな素晴らしい曲は絶対売らなきゃダメだ!シングルにするべき!」って言ってくれた曲を最後にやります」
と言って、かなりロックなサウンドの「Hero」で締めるも、
「最後に歌詞間違えました!(笑)」
と叫んでステージを去っていった。
同じ若手ヒップホップでも、BAD HOPとは全くタイプが違う。PUNPEEからは確かにRHYMESTERから繋がるような、知性の高さとユーモアのセンスを備えたヒップホップの系譜にいることを感じる。(どちらがいいとか悪いとかではなく)
それはZeebraやKREVAも持ち合わせていたものなだけに、ヒップホップシーンを飛び越えた存在になるために、かなり重要な要素だと思う。
1.フリースタイル
2.お嫁においで 2015
3.Raneissance
4.Scenario (Film)
5.Movie On The Sunday
6.Play My Music feat.METEOR
7.4800日後 feat.METEOR
8.タイムマシーンに乗って
9.夜を使いはたして
10.Hero
お嫁においで 2015
https://youtu.be/gLS_4iPoZ40
17:50~ KICK THE CAN CREW
さらに雨は強さを増しているが、ここに来て観客のテンションは最高潮。今回の目玉と言えるKICK THE CAN CREWの登場である。
KREVA=青、MCU=黄色、LITTLEが赤というわかりやすい色分けの衣装で登場すると、再始動後初の新曲であった「千%」で、このグループとしての歴史、各々のソロ活動、さらには再始動してからのこれまでを「経てからのここ」を感じさせる。
ちょっと変わった337拍子こと「地球ブルース ~337~」というお祭りチューンで雨の中を盛り上げると、
「良い感じだからもうやっちゃおうかな!」
と、早くもRHYMESTERを招き入れる。宇多丸はなぜか金髪ロングのカツラを被っていたが、それはこの後に披露する曲の歌詞に合わせたものであった。その曲は出世作「VITALIZER」収録のRHYMESTERフィーチャリング曲「神輿ロッカーズ」でまさに祭りのごとき盛り上がりぶりになるのだが、Mummy-Dのパートが終わるとなぜかビートが止まり、最初からやり直すことに。これは機材トラブルだったのか、あえてだったのかはメンバーのリアクションからはあまりよくわからない。結局RHYMESTERが登場するところからやり直すということになったが。
最後にはDJ JINもステージに現れると、KREVAが、
「昔、この曲ができた時にJINさんがラジオでめちゃくちゃ褒めてくれて。俺がトラックを作ったんだけど、凄いトラックメイカーにトラックを褒めてもらえたのがめちゃくちゃ嬉しくて。だから次の曲はJINさんに曲フリをしてもらっていいですか!?」
とDJ JINにお願いすると、
「まだ何も終わっちゃいないぜ!」
とJINが叫び、夏の切なさを感じさせる「イツナロウバ」へ。
さらにはCASSETTE VISIONのラップ部分までも3人で乗りこなす「TRIIIIIICO!」、このタフな状況ですら
「上がってる!」
と大合唱が起こった「マルシェ」とヒットチューンを連発すると、「神輿ロッカーズ」をやり直したからか、それとも雨を考慮してか、あっという間に「sayonara sayonara」から、こうしてまたこの曲を野外のライブで聴けるのが実に嬉しい「アンバランス」で無数の観客の腕が揺れる。
9月には実に久しぶりの日本武道館ワンマンも決まったが、これからの夏フェスでもその姿を見ることができるだろうか。
しかしヒップホップというスタイルを貫いたままでここまで幅広い世代、幅広いジャンルのファンが知っている曲をたくさん生み出した、というグループは他にRIP SLYMEくらいしかいない気がする。そうした意味でも本当に偉大なグループだと思うし、そんなグループがこうして最前線に戻ってきたことが実に嬉しい。
1.千%
2.地球ブルース ~337~
3.神輿ロッカーズ feat.RHYMESTER
4.イツナロウバ
5.TRIIIIIICO!
6.マルシェ
7.sayonara sayonara
8.アンバランス
千%
https://youtu.be/wFKvOPQyVL0
18:40~ RHYMESTER
ここまでは転換の間をつないでいたのはRHYMESTERのメンバーの誰かしら+出演者なり関係者だったのだが、さすがに次の出演者が出てくるわけにもいかない、というわけでステージにはまさかのTOSHI-LOW、小出祐介、PUNPEE、GOMAという、今まで一度も絡んだことがないという面々。それだけに何を喋るのかと思いきや、TOSHI-LOWが小出に
「失踪したギタリスト、帰ってきた?(笑)」
GOMAに
「記憶戻った?(笑)」
と愛がありながらも強烈すぎる先制パンチ。結局は誰がRHYMESTERの名前を呼んで呼び込むのか?という話になるが、観客も含めて全員で呼び込むことに。小出が
「この感じこそ人間交差点!」
と締めようとしているのに、TOSHI-LOWは最後まで
「俺がギターで入ってやるよ、俺は失踪しないタイプだから(笑)」
と小出に絡んでいた。
そんな荒らされた空気感の中でRHYMESTERの3人がオンステージ。大トリでありながら、間違いなくここまでで最も雨も風も強いという非常事態である。
自己紹介的なフリースタイルを挟んでから、宇多丸のラジオ「アフター6ジャンクション」のテーマソングである新曲からスタート。まだ番組内ではワンコーラスしか流れていないのを、この日はフルコーラス初披露。広く聴かれるということを念頭に置いたのか、RHYMESTERのラップならではのキレ味はもちろんありながらも、幅広い層に届きそうなポップさを兼ね備えている。
ヒップホップのビートというよりは「ダンサブル」というタイトル通りにダンスミュージックのエッセンスを強く取り入れた昨年の「Future Is Born」と、かなり過酷な状況なだけに、喋りたいこともたくさんあるだろうが、かなり巻き気味で曲を連発していく。
そしてここからは人間交差点の名前にふさわしいゲスト陣が次々に登場。まずはPUNPEEを呼び込み、日本語インテリラップの継承を見せる「Kids In The Park」。PUNPEEのライブ時にRHYMESTERが出てこなかったのはこのタイミングでやったからである。
しかし次に招かれたのは、すでに先ほどコラボしている、KICK THE CAN CREW。先ほどはKICKメインでRHYMESTERはフィーチャリングされる側だったが、今度は逆バージョンということで「10Balls + 2」で5MCの華麗なマイクリレーを見せると、さらになんと「B-Boyイズム」までもKICKとのマイクリレーバージョンに。パンチラインだらけのリリックをKICKのメンバーも分担してラップしていくのだが、一切の違和感がなかったあたりはKICKの3人も間違いなく「B-Boyイズム」の持ち主だからであろう。
しかしながらやはり雨が相当キツい、ということで、トリであるにもかかわらず、イベントのタイトルにもなっている曲「人間交差点」を披露して、いったん締め。とはいえ、
「一回引っ込んで、また出てきてってやってる余裕は一切ない」
ということで、捌けることなくアンコールへ突入。
すでにステージにバンドセットが用意されていたのだが、ここでそのバンドメンバーことSCOOBIE DOもステージに。
「RHYMESTERには「ONCE AGAIN」みたいな良い曲と、そうでない曲がある(笑)そのそうでない曲のほう(笑)」
と作り手なのに自虐しながら披露されたのは、生バンドバージョンでの「けしからん」。SCOOBIE DOの演奏はこの曲の新たな気付きと解釈を与えてさらにファンキーな曲になり、生演奏だからこそのダイナミズムも曲に宿っていく。自身たちの曲ももう数えきれないくらいにリリースされている中で、こうして他のアーティストの曲がすぐさま演奏する状態であるというあたりにSCOOBIE DOのバンドの実力の高さを改めて思い知らされる。
そしてあっという間のラストもSCOOBIE DOとともに演奏された「カミング・スーン」。来るべき次の季節を待ちわびる曲であるのだが、曲の終盤にはこの日のために作られた、コヤマのメロウなボーカルも追加されるという特別バージョンであった。
演奏が終わるとまだ残っていた出演者たちをステージに招いたのだが、ほとんどの出演者が残っており、ステージは完全に全員集合感が出ていた。また、例年はここで出演者に話をフリまくり、なかなか終わらない会話が展開されるらしいのだが、今回はこの雨により、すぐさまDJ JINの一本締めで
「活動30年の中で間違いなく最悪の天気(笑)さんぴんキャンプを超えてる!(笑)」
というくらいの悪天候に見舞われた、4年目の人間交差点は幕を閉じた。
この日の勝者は間違いなくこんな天候でも全く帰らなかった観客。しかし観客を帰らせなかったのは、豪華なコラボを見せてくれるだろうという期待感で観客を離さず、実際にそうしたコラボを連発し、雨だから極力早く終われるようにライブを行なったRHYMESTERの力によるもの。
そしてそうしたコラボを見ていると、ヒップホップという音楽はロックよりもはるかに自由だな、と思える。楽器を弾くという構造上、ロックバンドはそんなにコラボなどを頻繁に行うことはできない。でもヒップホップはそれができる。
「それはヒップホップというよりも、RHYMESTERが凄いんじゃないか」
というようにも思えるし、実際にRHYMESTERは凄いのだが、そのRHYMESTERがヒップホップ最強論者としてヒップホップをレペゼンしているのだから、それはもうヒップホップそのものの話なのである。そしてそれはやはり「人間交差点」というタイトルそのものだったのである。
なかなかここまでガッツリとヒップホップのライブを見ることはないため、実に新鮮だった。果たして来年はどんな場所で開催され、どんな出演者が出演し、どんな形のコラボを見せてくれるのか。単にライブを見せるのではなく、「人と人を繋げる」という明確な意志が見えるフェス。それはこれからのRHYMESTERやそれぞれの出演者の活動に少なくない影響を及ぼすはず。
1.アフター6
2.Future Is Born
3.Kids In The Park feat.PUNPEE
4.10Balls + 2 feat.KICK THE CAN CREW
5.B-Boyイズム feat.KICK THE CAN CREW
6.人間交差点
encore
7.けしからん feat.SCOOBIE DO
8.カミング・スーン feat.SCOOBIE DO
Future Is Born
https://youtu.be/jvjuqpkBV18
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