VIVA LA ROCK 2018 @さいたまスーパーアリーナ 5/4
- 2018/05/07
- 00:12
「ゴールデンウィークに埼玉でロックフェスを!」という、音楽雑誌MUSICAを発行している会社「FACT」の社長兼、「BUMP OF CHICKENに日本で1番密着しているライター」兼、「大泉洋と毎月美味しいものを食べている音楽ライター」である、鹿野淳の志によってさいたまスーパーアリーナで開催されている、VIVA LA ROCK。
さいたま新都心駅からすぐという利便性と(鹿野淳は信じられないくらいの雨男なので、屋内会場開催は理にかなっている)、日によって出演者の色が固められているというラインアップの妙もあってか、今年は3日~5日の3日間すべてのチケットがソールドアウト。前日の初日にはサカナクションやスピッツなどを始め、メインステージ以外にはインディーポップ、海外の現行のオルタナティブなブラックミュージックを日本で鳴らすアーティストが多く出演したが、この日は若手の筆頭格であるTHE ORAL CIGARETTESがメインステージのトリを務めるなど、今最も勢いのある若手ロックバンドが居並ぶ。
今年もステージは
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
の4ステージ。そのうちGARDEN STAGEは野外ステージであり、今年もチケットがなくても見れる、けやきひろばでのフリーエリア。
入場すると、去年まではあったウェルカムドリンクがなくなっているという衝撃の事実に驚きながら、STAR STAGEではすでにMy Hair is Badがリハを敢行中。まだ人はアリーナ前方ブロックしかいなかったが、後方エリアにもスピーカーを設置したことにより、音は格段に良くなっており、音質的には距離感を感じなくなっている。これは運営サイドの努力の証と言えるだろう。
リハ.音楽家になりたくて
リハ.復讐
リハ.グッバイマイマリー
リハ.優しさの行方
10:30~ Dizzy Sunfist [VIVA! STAGE]
今年からステージの位置が変わり、昨年までステージがあった位置が外からの出入り口に変更された、VIVA! STAGE。(しかしライブ中は閉鎖されているため、あんまり効果はない気がする)
そのVIVA! STAGEのこの日のトップバッターは、Dizzy Sunfist。このバンドがこのステージのトップバッターを任されたという点からも、この日のラインアップの激しさがうかがえる。
「Let's Go Dizzy」のSEで登場し、冒頭2曲の流れは先週のアラバキの時と変わらないが、1曲目のイントロからダイバー続出するという観客の激しい歓迎っぷり。
そこからはアラバキと少し変えてきたのだが、それは持ち時間がアラバキよりも5分多いからか、あるいはアラバキではサウンドトラブルがあって曲順を変えたからか、あるいはその両方だろうか。
その変えたうち、というかアラバキではやらなかった「Into The Future」は、ひたすらに激しいメロディックパンクでダイブの嵐を起こしていた中にあって、緩急で言えば緩にあたる曲。こういう曲をサラッとフェスのセトリに入れてくるパンクバンドはなかなかいないが、それはメンバーが自分たちが研ぎ澄ませてきた楽曲のメロディ(それも最新作に入ってる曲のもの)の力を最大限に信頼しているからであろう。
そう、やはりメロディックパンクと言われる以上、大事なのはメロディなのである。それこそがこのバンドがこんな大きなステージに立つことができるようになった最大の要素。なかなかパンクというスタイルでこのキャパに立てるバンドはいないし、
「夢は諦めなければ叶うなんて安っぽいことは言わへん!夢は諦めなければ絶対に死なへん!」
という、負け続けようとも殴られ続けようとも、自分たちが信じた音楽を、自分たちが信じた道を貫く。それがあるからこのバンドは強いし、それが1曲目のイントロからダイブしまくるという観客の姿勢にも強い影響を与えている。
アラバキのサウンドトラブルはあやぺたが言っていたように忘れられないような出来事であったが、やはり「Summer Never Ends」がちゃんと聴けなかったのは消化不良感もあった。それを完全に解消してくれた上に、フェスが始まった!と気合いを入れてくれた、最高のファーストアクト。
また、主催者の鹿野淳や編集長の有泉智子だけでなく、普通の人はまず知らない存在である、自分たちのインタビューを担当してくれている矢島大地の名前も出して感謝を告げるあたり、本当に義理堅いというか、正統なパンクイズムの継承者であると思う。
1.Life Is A Suspense
2.No Answer
3.Joking
4.Someday
5.Summer Never Ends
6.Into The Future
7.Shooting star
8.Tonight,Tonight,Tonight
9.The Dream Is Not Dead
Life Is A Suspense
https://youtu.be/Y9MQUP4ixUs
11:05~ My Hair is Bad [STAR STAGE]
去年のこのメインであるSTAR STAGEへの出演はまだ抜擢感が強かった。しかし3月に日本武道館2daysを即完させたことにより、My Hair is Badはこのステージに相応しい存在となって帰ってきた。
さすがに2回目のステージとなると堂々としているというか、椎木のボーカルからも、バヤリースとやまじゅんのリズムからも緊張感はほとんど感じない。椎木はやたらと
「3月には桜が咲いて、5月になるともう忘れられている。そして夏になって」
と、季節感を感じさせる、夏の前だからこその言葉を発していたが、それが「真赤」の最後の
「夏の匂いがした」
というフレーズに説得力を持たせる。この日の気候もまた、夏の匂いがしていた。
その夏が一瞬で過ぎ去っていくかのような「クリサンセマム」から、バヤリースのベースのリズムが否が応でも踊らせ、しかもライブならではのかなり速いテンポになっている「元彼氏として」。
「音楽だけで食えるようになってるし!」
と歌詞を変えて歌えるようになったのも、さすがメインステージに出ているバンドである。
「この後、このステージには頼りになる先輩が出てくる!でも頼ってばかり、ありがとうばかりではいられない!終わりよければ全て良し!でもトップバッターとして何ができるか!機嫌を取りにきたんじゃねぇ!ロックバンドをやりに来たんだ!」
と椎木がトップバッターとしての言葉を並べまくる「フロムナウオン」でさらにバンドそのものの音までもが鋭さを増していくと、一転して慈愛に満ちた「いつか結婚しても」から、
「MUSICAに捧げます!」
と、自分たちを最大限にフィーチャーしてくれているMUSICAへの「告白」をして、この日のトップバッターとしての役割を全うした。
武道館の後に発表されたワンマンは、都内では日比谷野音とZepp。もうそのキャパでもチケットは全然取れない。それを証明するかのように、フェスにしてもやたらと早い時間であっても、スタンディングエリアは超満員だった。もちろんライブハウスで生きてきたバンドだし、そこがこれからも生きる場所であるのは間違いないだろうけど、武道館の先にある舞台が確かに見えたようなライブだった。
1.アフターアワー
2.熱狂を終え
3.ドラマみたいだ
4.真赤
5.クリサンセマム
6.元彼氏として
7.フロムナウオン
8.いつか結婚しても
9.告白
告白
https://youtu.be/yR0KgP7OrSw
11:45~ ポルカドットスティングレイ [VIVA! STAGE]
練られたMVなどでバズを起こしまくっている、女性ボーカルの雫を中心とした4人組バンド、ポルカドットスティングレイ。去年の春からフェスに出るようになったが、このフェスには初出演。
このバンドの名前を世に知らしめた「テレキャスター・ストライプ」から始まると、メンバーの演奏は実に上手いし、こうしたフェスに集まるようなロックキッズたちのツボを突くような、踊れるビートやオシャレなコードの取り入れ方などは実に巧みであり、メンバー個々のポテンシャルの高さを感じさせる。
だが、自分が「テレキャスター・ストライプ」のMVを初めて見た時に感じた、「サウンドのスタイルとしては明らかに自分が好んで聴くようなタイプなのに、何も感じないという違和感」をこの日のライブからも感じてしまった。
それは、自分が好きなバンドたち、特にパンクやラウド、ロックンロールというサウンドで生きているようなバンドたちが持っている、「こういう音楽が好きだから、こういう音楽・こういうバンドをやっている」という感情。それがこのバンドからは全く感じられないから、まるでボカロ、ロボットがライブをしているかのように感じてしまう。
そこには
「お客様が喜んでくれるような曲を作る」
という雫の音楽への姿勢が多分に関係しているからだと思われるが、そういう発言を目に、耳にしているからこそ、より一層このバンドがどんな音楽をやりたいのかが見えなくなるし、無味無臭な、それこそ自分が1番自発的に聴こうと思わない売れ線J-POPのように聴こえてきてしまう。
「じゃあ見なければ良かったじゃないか」
と思われるだろうけど、それは実際にこの目でライブを見なければわからない。もしかしたらライブを見たら印象が変わっていた可能性もあるが、今回は変わらなかったということ。
そうした、音楽ファンのニーズに応えた楽曲を作るというのは新たなバンドの形のようにも見えるし、それを受け入れられない自分のような人間は老害と言われるかもしれない。
でも自分がJ-POPよりもロックバンドを好きになったのは、ロックバンドには確かな音楽への愛情と、その音楽で生きていくという意志を感じたから。
「すごいすごくないはどうだっていい ただ信じたいミュージック鳴らすだけ」
と自分が好きなThe Mirrazは歌っている。このバンドにはその「信じたいミュージック」があるだろうか。個々の技術はめちゃくちゃ高いだけに、もしそれが見えるようになったらもっとすごいバンドになると思うのだが。
1.テレキャスター・ストライプ
2.BLUE
3.サレンダー
4.少女のつづき
5.エレクトリック・パブリック
6.シンクロニシカ
7.ICHIDAIJI
ICHIDAIJI
https://youtu.be/WJW7kS9AAI4
12:20~ KEYTALK [STAR STAGE]
もはやすっかりこのメインステージでの常連バンドとなったKEYTALK。それを示すかのように、アリーナスタンディングエリアは規制レベルの超満員。さすがすでに横浜アリーナでもワンマンをやっているバンドである。
いきなりの「YURAMEKI SUMMER」で早くもこの会場を夏フェスに変えてしまうと、最新アルバム「RAINBOW」のリードトラックであり、妖しい雰囲気がバンドの新たな一面を浮かび上がらせつつも、首藤義勝というソングライターの器用さ・幅の広さを感じさせる「暁のザナドゥ」を披露。基本的にアルバム曲でも過去曲でもガンガンセットリストに入れてくるバンドであるが、他のアルバム曲がセトリに入らなかったのはまだツアー中だからだろうか。
一転してポップに飛び跳ねる「Love me」から、アラバキの時は「マスターゴッド」をやっていた部分でこの日演奏されたのは「YGB」。やろうと思えばフェス仕様のオールヒットシングルというセトリも全然作れるバンドではあるが、こうして1週間ごとにやる曲を変える、しかもそれが決して定番曲ではない曲であるのを見ると、毎回ライブで見ても損しないし、そうした曲がいつでもできる状態にあるという、ライブで生きているバンドであることを再認識させてくれる。
この日も赤いユニフォームを着て伸びやかな声を出していた巨匠と、トリッキーなギターでサウンドのロック色を強める小野武正が並んでステップを踏みながらギターを弾く「Summer Venus」では義勝が三代目J Soul Brothers的なポーズを取るなど、ライブのパフォーマンスもキレている。
武正が自身と義勝が埼玉出身であることを語り、埼玉県民の割合を調べたりしながら、この季節にぴったりな「桜花爛漫」、再び一気に夏に向かう「MABOROSHI SUMMER」と定番曲を畳み掛けるクライマックスへ向かうのだが、「MABOROSHI SUMMER」の最後のサビ直前で義勝が巨匠のマイクスタンドを倒してしまい、巨匠が歌に入れなくなってしまう。
「どうする?」
という空気がバンドに流れる。次の瞬間には倒した犯人である義勝が3人に向かって人差し指を立てる。それを見た3人は再びラストサビ直前から演奏し、巨匠もすんなりサビに入る。わずか一瞬、しかも言葉を交わしていない。目で合図しただけ。それだけでサビ前の数秒前までだけ巻き戻すことができる。メンバーの出で立ちがいわゆる「可愛い」(特に中日ドラゴンズのユニフォームを着ていたドラムの八木が)と言われる、舐められがちなKEYTALKのバンドとしての地力の強さと、こうしたアクシデントにすぐさま対応できる経験値の高さ、そして4人の絆を改めて感じさせた一瞬であった。
そしてやはり最後は義勝のスラップベースが踊らせまくる「MATSURI BAYASHI」から、ラストの「MONSTER DANCE」ではステージ前から火花が吹き上がるという特効も炸裂した。
やはりライブを見ると、なぜここまで巨大な存在になったのかというのがよくわかる。そういう意味では、やはりライブでこそ真価を発揮するバンドなのかもしれない。
1.YURAMEKI SUMMER
2.暁のザナドゥ
3.Love me
4.YGB
5.Summer Venus
6.桜花爛漫
7.MABOROSHI SUMMER
8.MATSURI BAYASHI
9.MONSTER DANCE
暁のザナドゥ
https://youtu.be/fmIN5z4cuUM
13:00~ yonige [VIVA! STAGE]
こちらも先週はアラバキに出ていた、yonige。しかしながらThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEでメンバーが登場すると、牛丸ありさの髪が黒に変わっており、ハーフということで元よりモデルのような容姿がより一層モデルっぽくなっている。
アラバキを始め、最近は去年リリースのアルバム「girls like girls」のリード曲だった「ワンルーム」でスタートするというパターンが多かったが、この日は「さよならプリズナー」「our time city」という代表曲の連発でスタート。
「大阪寝屋川、yonigeです」
と牛丸が挨拶すると、「あのこのゆくえ」「センチメンタルシスター」とインディーズ期からの代表曲を続ける。アラバキのHANAGASA STAGEは音響的にやや弱く、少し物足りない感もあったが、この日はさすがにスピーカーを後方エリアにも設置するという音響環境の進化があったため、牛丸のボーカルも非常にクリアに聞こえる。
「去年も出さしてもらったんですけど、去年は出番終わった後に牛丸が泥酔してしまって(笑)
翌日も移動だったんで早く帰らなきゃと思ってたんですけど、気づいたらバンドマン両脇にかかえてて、近年稀に見る醜態でした(笑)」
と、CAVE STAGEに出演してクリープハイプと丸かぶりしていたからか、牛丸が泥酔してしまった去年のエピソードを暴露すると、「ワンルーム」から轟音ギターロックが炸裂。
アラバキでは「しがないふたり」「悲しみはいつもの中」という浸らせるような曲を後半に演奏していたが、この日は代表曲である「アボカド」「さよならアイデンティティー」という、これぞyonigeな歌詞の視点を持ったエモーショナルなギターロックを最後に持ってきた。これはアラバキとビバラの客層でやる曲を変えているのかもしれないが、そうだとするとKEYTALK同様に毎週のごとくフェスに出ていても毎回見たくなるし、そうした選択の幅を持つバンドになったんだな、とも思う。初めてライブを見た時はまだ持ち曲が10曲とかしかなかっただけに。
1.さよならプリズナー
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.センチメンタルシスター
5.ワンルーム
6.アボカド
7.さよならアイデンティティー
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
13:35~ VIVA LA J-ROCK ANTHEMS [STAR STAGE]
このフェスのウリというか、最もこのフェスでしか見ることができないアクト。プロデューサーでありベーシストの亀田誠治、ドラムのピエール中野(凛として時雨)、ギターの加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)、ギター兼ピアノの津野米咲(赤い公園)というバンドメンバーにゲストボーカルが加わり、日本のロック史に残る名曲を演奏していくという企画である。
バンドメンバーが楽器を手にすると、演奏し始めたのはあまりに記名性が高すぎるイントロ。その瞬間に全員なんの曲かわかっていたのだが、その曲「One Night Carnival」を歌うために登場したのは、ヤバイTシャツ屋さんのこやまたくやとしはだありぼぼ。セリフ部分も含めてステージを歩き回りながら、時にはしばたが「テレビでたまに見る、井森美幸のアイドル時代のダンス」を踊りながら完璧に歌いこなしているのだが、ヤバTの「実は真っ当な音楽集団なのにめちゃくちゃ発想が面白い」という点は、キュウソネコカミや岡崎体育よりも氣志團の影響が強いんじゃないか、とも思う。
それを証明するかのように、間奏ではドラムのもりもとがステージに乱入したのだが、氣志團の本物の学ランを着用するというガチ仕込みっぷり。なぜか
「フレー!フレー!ビバラ!」
とエールを送ったのだが、完全に出オチだった感は否めない。
続いてのゲストボーカルは亀田誠治が
「すごいイケメンが来ますよ!」
と期待感を煽らせながら、しっかり出てきた時には黄色い歓声が上がりまくった、山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)。
歌うのはL'Arc~en~Cielのヒット曲「HONEY」だが、この全くの違和感のなさ。普段から歌ってきたりしていた曲なのかもしれないが、近年のオーラルは確かにラルクの影響を感じさせる部分があるだけにこの違和感のなさにつながっているのかもしれない。ファルセットやフェイクの入れ方を含め、本人がかつてコンプレックスだったと語る山中の声が大きな武器になっていることがよくわかる。
続いてはイントロから亀田誠治のベースがブインブインに唸りまくり、プロデューサーとしてではなくベーシストとしての顔を強く出していく。それはかつて自身が演奏していた、椎名林檎の「本能」だからだったのだが、ピエール中野も言っていたが、今こうして亀田誠治がこの曲を演奏する姿を見ることができるのは実に貴重である。また、ゲストボーカルのアイナ・ジ・エンドの妖艶な歌い方は、ラウドなイメージが強いBiSHのイメージとはかなり異なり、彼女のボーカリストとしての技術と表現力、憑依力の高さを感じさせた。
続いてのゲストボーカルはKANA-BOONの谷口鮪。呼び込んでもなかなか出てこなかったので、「あれ?」みたいな空気になりながら、小走りでステージに登場すると、
「普段の僕のイメージとはだいぶ違うと思いますけど、大好きな曲を歌います」
と言って津野のピアノとともに歌い始めたのは、斉藤和義の名曲「歌うたいのバラッド」。ミスチルの桜井和寿もBank Bandでカバーしている曲であるが、普段のKANA-BOONとは全く違うタイプの曲だからこそ、鮪の歌の上手さが実によくわかるし、KANA-BOONがこれだけ支持を集めるバンドになったのは、ただ単に踊れる4つ打ちバンドだったからではない、という普通は見れない一面が見える。かつて、技巧プレイヤー集団であるパスピエのメンバーたちをして、
「鮪さんは本当に歌が上手い。普通の人ではKANA-BOONの歌はあんな風に歌えない」
と評されていたが、それがお世辞ではなく、リアルな感想であったことがよくわかる。
豪華な競演もいよいよ後半へ。ここで登場したのは、前日にFLOWER FLOWERとして出演していた、yui。ショートカットでアコギを抱えた姿はかつてのYUI時代を彷彿とさせるが、歌い始めたのはスピッツの「チェリー」というストライク過ぎる選曲。しかし、YUIの最大のヒット曲も「チェリー(CHE.R.RY)」だよなぁ、と思っていると、間奏でいきなりその「CHE.R.RY」に切り替わり、yuiが一瞬だけYUIに戻って
「恋しちゃったんだ 多分気付いてないでしょう?」
とあの有名過ぎるフレーズを歌い、大歓声が巻き起こる。そしてそのサビを何度も繰り返し、自身はマイクから離れて観客に大合唱させる。その光景こそ、「世代を超えて歌い継がれる」というこのアクトの意義を最も体現していた。最後には再びスピッツの「チェリー」に戻っていたが、ある意味では今回のこのアクトのMVPはyuiであった。
そしてトリを任されたのは、R-指定とDJ松永のCreepy Nuts。2人が出てくる前からコーラス部分が演奏されて大合唱が起きていたのは、ハイロウズ「日曜日よりの使者」。R-指定はメロ部分を原曲の歌詞をうまく使いながらラップにアレンジしていくのだが、これがあまりにカッコ良すぎて、このバージョンを音源化して欲しくなったし、R-指定のラッパーとしてのスキルのあまりの高さには唸らざるを得ない。
DJ松永がスクラッチを入れまくりながら、最後にはゲストボーカルを始め、THE ORAL CIGARETTES、KEYTALK、Dizzy Sunfistら、この日の出演者が一斉にステージに登場して大合唱を巻き起こす。KEYTALKのメンバーが端っこでひたすらツーステしていたのはよくわからなかったが、毎年思うのはこの素敵なセッション、そしてボーカリストたちの新たな一面を見せてくれるこの企画、これからも毎年続けて欲しい。
1.One Night Carnival (氣志團) / ヤバイTシャツ屋さん
2.HONEY (L'Arc~en~Ciel) / 山中拓也 (THE ORAL CIGARETTES)
3.本能 (椎名林檎) / アイナ・ジ・エンド (BiSH)
4.歌うたいのバラッド (斉藤和義) / 谷口鮪 (KANA-BOON)
5.チェリー (スピッツ) ~ CHE.R.RY (YUI) / yui (FLOWER FLOWER)
6.日曜日よりの使者 (ザ・ハイロウズ) / Creepy Nuts
日曜日よりの使者
https://youtu.be/l7Tdleowcqw
14:20~ 夜の本気ダンス [VIVA! STAGE]
このステージの常連的存在の夜の本気ダンス。バンド名とは裏腹に真昼間の時間帯への出演である。
初っ端から踊らせまくりなのはやはりこのバンドならではだが、もはやそれは単純な4つ打ちのダンスビートだけではなく、特に鈴鹿のドラムの手数はかなりのものである。
その鈴鹿は
「さっき、ねごとが出たやろ?俺らとねごとで昼なのに夜の…」
と話し始めるが、マイケル(ベース)に
「ねごとちゃう!yonigeや!」
と訂正され、毎回練られたMCで爆笑を巻き起こしてきたが、この日は天然っぷりで笑われてしまうという、MCで出鼻を挫かれる展開に。
しかしそれを帳消しにするかのように、「Japanese Style」からは「本気ダンスタイム」という、かつてのDOPING PANDAの「無限大ダンスタイム」を彷彿とさせるノンストップに曲を繋いでいくアレンジに突入。合間にはメンバーのソロ回しも繋いでいくなど、ただ単に踊ればいいという感じではなく、バンドのグルーヴに浸らせて乗らせることで踊らせていく。
正直、自分はデビュー当時にこのバンドのライブを見た時はかなり物足りなく感じてしまった。それはまだまだバンドの力量が期待に追いついていない部分があったからだと今になると思うが、ギターが西田になり、メンバーが音楽だけで生きていける環境になったことで(鈴鹿はちょっと前まで普通に働きながら音楽をやっていた)、各々のスキルとバンド全体の実力が飛躍的に向上している。それによって自分たちがやりたかったことがちゃんとできるようになっている。こんなにかっこいいバンドになるなんて、その頃、それこそ鈴鹿が
「このフェスには2年目から出させてもらってるけど、その年は前夜祭も本編も後夜祭も出るっていうフル稼働っぷりだった」
と言っていた、フェスに出始めた頃からは想像だにしなかった。
「今日は電話の先輩が久しぶりに電波入りはるから、どんなライブ見せてくれるのか楽しみやな~」
と鈴鹿がtelephonesへの愛を語ると、後半は米田がネクタイを外し、本気モードに入るのだが、だからといってアッパーな曲を連発するのではなく、「BIAS」を入れてむしろ緩急をつけてくるあたりに、このバンドが自分たちなりのフェスでの戦い方を見つけたことを実感する。
そしてラストは米田がメガネすらも吹っ飛ばして踊りながら熱唱した「Take My Hand」。ドラマの主題歌にもなったし、自分もこのバンドの中で最大のキラーチューンだと思っている。しかし思ったほどのセールスをあげることはできなかった。そこで頭によぎるのは、やはり電話の先輩ことtelephones。彼らもまた、フェスではたくさんの人が来てくれて盛り上がるのに、音源が売れないという悩みを抱えていた。夜ダンの面々がそこまで悩んでいるかはわからないが、このバンドももはや踊れて楽しいだけのバンドではないことをこうしてライブで証明しているだけに、ちゃんと動員や評価に見合ったセールスを得られるようになってほしい。
1.Call out
2.WHERE?
3.Japanese Style
4.fuckin' so tired
5.B!tch
6.By My Side
7.BIAS
8.TAKE MY HAND
TAKE MY HAND
https://youtu.be/c9mY1alrifY
15:00~ 凛として時雨 [STAR STAGE]
フェスに出演するというのが事件扱いされるくらいにピエール中野のバイタリティに比して、バンド本体は稼働することが少ない、凛として時雨。新作アルバムを携えての久々のツアーを終えての出演というタイミングの良さもあったのだろうが。
もはやメンバーがステージに登場しただけで会場の空気はガラッと変わる。基本的に明るい照明を使うことは全くなく、最新アルバム収録シングル曲「DIE meets HARD」から始まる楽曲もダーク。
しかしながら久しぶりに見ると、TKと345のハイトーン、というか金切り声と言ってもいいような声はどこから出しているのか、そして演奏のとんでもない複雑なサウンドをギター1本だけで鳴らしているという演奏技術のあまりの高さに驚かされる。
だがその複雑な演奏と、新作のツアーが終わったばかりという状況を考えても、セトリはかなりわかりやすい、これぞフェスセトリというような代表曲が並んだものになった。(そもそもフェスにあまり出ないがゆえにフェスセトリがあまりわからない)
もはや暴走状態というくらいに加速する「abnormalize」から「Telecastic fake show」という後に真っ赤な照明に照らされながら鳴らされたのは、ライブの締めの定番曲である「傍観」。ゆったりと言葉を紡ぎながら徐々に感情を高ぶらせていき、最後には先に演奏を終えた345とピエール中野がステージを去る中、1人ギターを弾くTKがギターをぶん回しまくっていた。
MCなしということもあるが、持ち時間をかなり巻いての終わりになったのは、次に隣のステージで盟友の9mmが控えていることの配慮だろうか。TK from 凛として時雨、345のKoji Nakamuraなどへのサポート、大森靖子をはじめとするピエール中野のドラムなど、今や個々の活動をいたるところで見ることができるが、やはり本隊での3人が1番とんでもない人たちだな、と思える。
1.DIE meets HARD
2.Who What Who What
3.i was music
4.DISCO FLIGHT
5.想像のSecurity
6.abnormalize
7.Telecastic fake show
8.傍観
DIE meets HARD
https://youtu.be/PAyJshW6-qA
15:45~ 9mm Parabellum Bullet [VIVA! STAGE]
去年、卓郎が弾き語りでGARDEN STAGEに出ているとはいえ、9mmがこのフェスに出るのは最も驚きの発表であった。
それはROCKS TOKYO時代から、鹿野淳が主催するフェスには一度も呼ばれたことがないし、なんならMUSICAにインタビューが載ったことも全くないという、フジファブリックらと同様に、鹿野から無視されているバンドという認識がファンの間にも定着しているからである。
実際のライブはこの日は為川裕也(folca)をサポートギターに加えた4人編成で「反逆のマーチ」からスタートすると、
「ディスコは好きかー!」
と普段とは違う前フリで「Discommunication」へ。これは間違いなくthe telephonesの復活を祝っているものと思われたが、実際に久々に演奏された(さいたまスーパーノヴァだから)「Supernova」ではtelephones「Monkey Discooooooo」のリフを弾くというtelephonesへの愛を見せる。
さらにはMCでも10年前に渋谷のO-EASTで凛として時雨とthe telephonesと3組で初めて対バンした時の思い出を語るなど、9mmはこの日誰よりもtelephonesのためにステージに立っていた。もしかしたら、フェスサイドが9mmにオファーしたのもその3組を揃えたかったからなのかもしれない。それならば今まで全く接点を持とうとしなかった9mmを呼んだのも納得がいく。やはり他のバンドとは違ってバンド側がMUSICAや鹿野淳への感謝を告げるようなことはなかったが。
最後の「新しい光」では合唱を起こしながら和彦がベースを床に置いて叩きまくるという奏法を見せながらも、基本的にフェスではおなじみの曲が並んだセトリではあったが、それでもかつてEMI ROCKSの時にこの会場でライブを行なった際に
「さいたまスーパーノヴァ!」
と言って演奏し、場所に合わせた選曲をしていたのと同じことができるようになっているのは、これからもフェスで9mmを見るのが楽しみになってくる。早くもJAPAN JAM最終日にも見れるが、果たしてそこではどんなライブを見せてくれるのか。
1.反逆のマーチ
2.Discommunication
3.ガラスの街のアリス
4.Supernova
5.Black Market Blues
6.ハートに火をつけて
7.ロング・グッドバイ
8.新しい光
Supernova
https://youtu.be/kmawA9Jns14
16:35~ サイダーガール [CAVE STAGE]
このフェス開催初年度から「全然ステージが見えない」と言われまくっていたCAVE STAGE。だから好きなバンドが出ていてもあまり足を運びたくないステージなのだが、去年リリースしたアルバム「SODA POP FUNCLUB 1」が非常に良かったサイダーガールは見ておきたいと思い、意を決して足を踏み入れた。
しかしながらUVERworldの真裏という時間にもかかわらず超満員の客席となっており、案の定全くステージが見えない。フジムラ(ベース)と知(ギター)の両サイドが長身なのでたまに視界に入るが、基本的にはステージがどんな感じなのか、メンバーがどういうふうに音を鳴らしているのかが全くわからない。
ただわかるのは「パレット」などの曲でYurin(ボーカル&ギター)が「歌って!」と言うと大きな合唱が起きたこと。(ステージが狭く天井も低いためによく響く)
ライブを見るのはかなり久しぶりなのだが、いつの間にかこんなにみんなで歌えるようなバンドになっていたのである。
6月にリリースする新作に収録される新曲「約束」も含めて、バンド名の通りに爽やかなギターロックバンドなのだが、「メランコリー」はダンスロック的なアプローチで、世の中への違和感を訴える曲。それが単なる快楽的なダンスではなく、世の中への違和感を感じているからこそ踊るという、このバンドならではのダンスチューンになっている。
「正直、僕だったらUVERworld見に行きます(笑)」
と自虐しながらもYurinは
「でも、だからこそここに来てくれて本当にありがとうございます!」
と力強く口にし、その感謝の気持ちを「ドラマチック」「オーバードライブ」という代表曲2曲に託した。それは本当に爽やかな後味だったが、きっとこういう狭い穴蔵の中よりも、快晴の空の広大な場所で飲んだ方が、このサイダーは絶対に美味しいはずだ。
1.エバーグリーン
2.パレット
3.約束 (新曲)
4.メランコリー
5.ドラマチック
6.オーバードライブ
パレット
https://youtu.be/FpQyszV16Zg
17:15~ ヤバイTシャツ屋さん [VIVA! STAGE]
ツアー後にこやまたくやが喉の手術をしてから初のライブとなる、ヤバイTシャツ屋さん。1ヶ月半という期間は短いと捉えられるだろうけれど、ライブをやりまくってここまで来たこのバンドにとっては初めてと言っていいくらいに長い時間であったはずだ。
ツアー同様に「はじまるよ~ はじまるよ~」という脱力必至なSEで3人が登場すると、いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で踊りまくり合唱しまくりというノリが初っ端から凄まじい。
メロコアバンドとして攻めまくる前半から、やはりこやまは声がよく出るようになってきている。手術前まではかなりキツそうに歌っている時もあったが、そんな心配はもうなく、本人も
「手術したからめっちゃ歌いやすいー!」
と叫んでいた。しかし新たなキャラ付けを狙ったMCはやはりそのキャラの通りにはならず。
というか、初めてCAVE STAGEに出た2年前あたりはMCの分量が多かったし、そこで笑いを取るようなパフォーマンスが多かった。だが今ではそんなパフォーマンスがいらないくらいに、曲をやることが最大のエンターテイメントになっている。
しかし「肩have a good day」では曲の最後の最後でこやまが中々歌い切らずに、しばたに励まされるようにしてから歌い切る、という曲を演奏しているだけなのに笑いが起こる。こんな歌詞の内容の曲が名バラードになっているという状況もすごいが。
千葉ロッテマリーンズの選手の誰かに入場曲として使って欲しい「とりあえず噛む」の高速ツービートが鳴り響くと、
「初めて出た2年前がCAVE、去年はここのトップ、今年はトリ前。来年はこのままいけばここのトリか、STAR STAGEか。俺たちはSTAR STAGEに行きたいと思ってます!俺たちをSTARにしてくれー!」
と目標を改めて語り、その感情が音に乗り移ったかのように「ヤバみ」では曲のテンポが速くなり、最後は「入籍!入籍!入籍!入籍~!」の大合唱が響いた「ハッピーウェディング前ソング」でもはやこのステージでは収まらないくらいの熱狂を生んで見せた。
ツアーでわかっていたことだが、このバンドは上昇志向の持ち主ではあれど、意外なほどにライブハウスへの思いも強く持っているバンドだった。それは10-FEETやロットングラフティーなどの憧れたバンドがそういうバンドだったからだが、それこそデカい会場でワンマンをやるくらいなら、Zepp Tokyoで5日間くらいワンマンをやりたいというくらいに。
でもそうした思考の持ち主だからこそ、フェスの時くらいはデカいステージに立っている姿を見てみたいものであるし、もうこのバンドはそこに立つべき存在であることは間違いない。来年このバンドはSTARになっているはず。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Tank-top of the world
3.無線LANばり便利
4.L・O・V・Eタオル
5.Universal Serial Bus
6.肩have a good day -2018ver.-
7.とりあえず噛む
8.ヤバみ
9.ハッピーウエディング前ソング
肩have a good day -2018ver.-
https://youtu.be/s06mLNxS7lo
17:55~ the telephones [STAR STAGE]
2月頃にこのさいたま新都心近辺に貼られたポスター。それは紛れもなくかつてのthe telephonesのシルエットだった。その直後の正式な出演発表。このスーパーアリーナでのLAST PARTYから2年半。これから本格的に活動再開するのか、これっきりのものなのか。様々な感情が渦巻く、the telephonesの復活ライブ。
かつてのサッカーユニフォームなど、様々な形でtelephonesへの愛を示す人たち、それは我々ファンもそうだし、9mmや夜ダンのようにステージに立つ側の人もそう。そんな人たちが今か今かと待ち構える中で時間になると、「Hapiness,Hapiness,Hapiness」が流れてミラーボールが回るというあの頃と全く変わらない始まり方…かと思いきや、ステージ上のモニターには、LAST PARTYの時の映像が。涙ぐみながらベースを弾く涼平、上半身裸のノブ、スパイクモヒカンの誠治、
「どこまでも不器用な4人組、the telephonesでした!」
と最後のあいさつをした石毛。全てこの目に焼き付いている光景だ。そして映像が終わると再び「Hapiness,Hapiness,Hapiness」が流れてフロアを照らしながら輝くミラーボール。アフロのカツラを被ってステージに出てきた4人。なにもあの頃と変わっていない。もう、こっちの感覚も、「ついにtelephonesが帰ってきた!」という構えたものではなく、「ああ、ライブ見るのちょっと久しぶりだな」くらいのものに、4人の姿を見た瞬間に変わっていた。やはり誠治はスーパーアリーナではスパイクモヒカンになっていたし。
「VIVA LA ROCK!一瞬だけ帰ってきました!埼玉県北浦和からやってきた、the telephonesです!スーパーアリーナ、いきなり猿のように、踊ろうぜー!」
といきなりの「Monkey Discooooooo」からスタート。もちろん猿のように暴れまくる客席。休止後にも例えば9mmのサポートギターを石毛がやった時や、石毛とノブのDJなどでもこの曲は聴いていた。だからなのか、合いの手やジャンプする時のタイミングなど、完璧に体に染み付いていた。で、それは自分以外のtelephonesのTシャツを着た人、アリーナにいた人も間違いなくそうだった。もう遺伝子にtelephonesの音楽が刻み込まれているのだ。ステージ上では石毛がブリッジしながらギターを弾くのもかつてと全く変わらない。涼平は明らかに緊張感を漂わせていたけれど。
続いては「HABANERO」。イントロのタメは後期の高速バージョンではなく、従来のグッとタメるバージョン。このシンセの高揚感で踊らせるのもまたtelephonesのサウンドである。石毛は間奏で側転を見せたりと、lovefilmやYap!!!ではそこまで激しいアクションを見せることはなくなっているが、身体能力は全く衰えていない。
ノブがカウベルを打ち鳴らす、かつて様々なフェスでノブがやりたい放題やりまくってきた「Baby,Baby,Baby」ではやはりノブがステージから飛び降りて客席を走りまくる。しかしそれだけでは飽き足らず、なんとアリーナのブロック間を電飾のついた自転車で走行しながら、カゴの中に入っていたボールを客席に投げまくるという、かつてと同じではなく、かつてよりもさらに進化したパフォーマンスを見せる。最後にステージに登る時にはかなり体力を消耗しているようにも見えたが、telephones以降、メンバーに飛び道具的なキャラがいるバンドも増えた。しかしやはりtelephonesは、というかノブは今でもその先を走り続けている。
また、ノブはステージに戻るとシャツを脱いで上半身裸になったのだが、右肩にはマジックで「51」という数字が書かれていた。それはこの日の朝に、今年はもう選手としてプレーすることはない、と発表された、シアトル・マリナーズのイチローの背番号。ノブは松井秀喜が引退した時も、9mmの卓郎と一緒にその功績を語り尽くしていたという。我々ファンがtelephonesから日々の生活を生きる力をもらってきたように、ノブは間違いなく松井秀喜やイチローがプレーする姿からそうした力をもらって生きてきていた。決して真面目な話をするタイプではないし、この日もMCは空回りしまくっていたけれど、ノブのこの日のライブへの強い思いが伝わってきた。
ダウナーなイントロから一転してバブリーなシンセのフレーズがきらめき出す「SAITAMA DANCE MIRRORBALLERS!!!」は埼玉出身のバンドが埼玉でライブをやっているという実感に浸らせてくれ、涼平のベースラインが観客を踊らせ続けてきた「electric girl」と、おおよそ見当はついていたとはいえ、ファンには嬉しい選曲が続く。
自身のモヒカンヘアの顔が印刷されたTシャツが即完売した誠治を皮切りに、一人一人久しぶりのtelephonesのライブについての感想を語ると、ノブのダンス指南から、モニターにはリリース当時に「気持ち悪い!(笑)」と話題になったMVが映し出された「Don't Stop The Move,Keep On Dancing!!!」で、まさに止まることなく踊らせ続けることを宣誓すると、ひたすらに暴れまくる「I Hate DISCOOOOOOO!!!」、そして石毛が客席に向かって、今からあの曲のイントロのあのフレーズを弾くぞ?と言わんばかりにギターを構えてから演奏されたのはやはり「urban disco」で、実に久しぶりに
「I am disco!!!」
の大合唱が会場に響き渡る。客席にはいつの間にかこのフェスの守護神と呼ばれるような巨大な風船の人形が回遊している。
そして最後はやはり、このバンドが活動の中で最も体現してきた、愛とディスコを鳴らす「Love&DISCO」。初めてさいたまスーパーアリーナでワンマンをやった時と同じように、あるいはそれ以降に立ってきたこのフェスのこのステージの時と同じように、そして2年半前のLAST PARTYの時と同じように、客席の上にはtelephonesを祝う飛行船が飛んでいた。
これが復活のライブであることや、これから先にまたライブが見れるという保証がないこと、そうしたことを全て忘れさせてくれるくらいにただひたすらに今この一瞬が本当に楽しかった。telephonesのライブや音楽にはそうした力が確かにあった。だから今でもこれだけたくさんの人がずっと待っていたのだ。
「1年も休むと忘れられてしまう」というくらいに速い現在の音楽シーンのサイクル。2年半という時間は短いようでいて、そのサイクルに当てはめるとかなり長いブランクだ。だからこそこのフェスにtelephonesが出ると発表された時に「今の若いファンはもうtelephonesを知らない」「メインステージはもうキツいんじゃないか」という声が出ていたのも仕方のないところだろう。でもtelephonesは今のシーンでもメインステージに立って、幅広い世代の人の前でライブができるバンドであるということを確認させてくれた。それはかつて散々言われていた、「ただ楽しいだけ ただ踊れるだけ」というバンドではtelephonesはなかったということでもあった。それはファンはみんなわかっていたことだけど。
なぜ自分にとってtelephonesはこんなに特別なバンドなのか。それは、かつて10代の頃の自分にとっては客席にいる人たちは完全なる他者であり、関わりを持たない、なんなら邪魔とすら思っていた存在だった。
でも2008年にtelephonesのライブを初めて見て、その時にようやく気付いたのだ。周りにいる人は同じ音楽が好きな仲間だということに。その仲間たちと肩を組んだりして踊ったり歌ったりすることがこんなにも楽しいものだったなんて。それに気付いたら、ライブに行くのがそれまでよりさらに楽しくなった。ステージだけじゃなくて、客席を見たりするようにもなった。そうしてtelephonesの音楽とライブは自分の価値観を変えてくれたのだ。それが特別じゃなくてなんだというのだろうか。
だからこそ、この日、バンドの演奏が良かったことよりも、おそらくかつて一緒にtelephonesのライブにいたであろう人たちがたくさんいたのが何よりも嬉しかった。
lovefilmもYap!!!も、石毛輝のソロも、フレンズやFINAL FLASHも好きだ。でもその全ての始まりだったtelephonesはやっぱり今でも特別なバンドだった。見れて、ここにいることができて本当に良かったんだ。
1.Monkey Discooooooo
2.HABANERO
3.Baby,Baby,Baby
4.SAITAMA DANCE MIRRORBALLERS!!!
5.electric girl
6.Don't Stop The Move,Keep On Dancing!!!
7.I Hate DISCOOOOOOO!!!!!!
8.urban disco
9.Love&DISCO
Love&DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
18:45~ ORANGE RANGE [VIVA! STAGE]
the telephonesが終わってからステージにたどり着くと、すでに演奏が始まっていたのだが、このキャパですら入りきらないんじゃないかというさすがの人気・動員力を見せていた、ORANGE RANGE。このフェスには初出演である。
春の屋内のフェス、しかも夜の時間という夏らしさを一切感じないような状況であっても「上海ハニー」「Special Summer Sale」と夏の曲が続くと一気に雰囲気は夏になる。それはどこまでも陽性なメンバーたちのキャラクターによるものも非常に大きいと思われるが、YAMATOはなぜか突発的に下ネタの単語を連発するという自由っぷり。
だが自由なのはキャラクターだけではなく、音楽性も本当に自由。新曲と紹介されて演奏された「Hopping」は打ち込みも使った、バンドの頭脳・NAOTOの趣向が強く出ている曲であるが、どっからどう聴いても変な曲である。それは次の
「NO SUSHI NO LIFE!」
という、タワレコの標語をもじったフレーズを大合唱させた「SUSHI食べたい feat.ソイソース」も間違いなく変な曲。ではあるのだが一度聴くと癖になってしまう中毒性はやはりORANGE RANGEだな、と思う。
しかもそんな変な曲が続いた後に超大ヒット曲にして名バラード「花」を演奏するという落差の大きさ。続く「以心電信」も含めて大合唱が巻き起こるのだが、リアルタイムでこれらの曲を聴いていた世代から、親子で来た年齢が高めの方、リリース時はまだ幼稚園児くらいだったんじゃないかという10代の人までもが全員で歌っている。それはメガヒット当時に「すぐ消える」と言われまくっていたこのバンドの楽曲が、時代を超えても残っていくような普遍性を備えていることの証明であり、200万枚以上CDが売れても、決して消費されるだけの存在ではなかったということでもある。
さらに「イケナイ太陽」で再び会場を常夏に変貌させると、ラストはこのバンドがロック色の強いこの日のこのステージでトリを任された理由を1曲で示すかのようなラウドな「キリキリマイ」。デビュー当時からこんな曲をすでに持っていたバンドであるが、その説得力は今になってさらに増している。それは震災後に被災地の100人規模の小さな会場にライブをしに行ったりという人間性と経験がしっかり音から滲み出ているからである。
すぐさま出てきたアンコールでは残ってくれた人たちの期待に応えるべく「お願い!セニョリータ」と最後にまた夏ソングを披露したのだが、これだけヒット曲をやってもまだまだ演奏していないヒット曲がたくさんあるというのはこのバンドの凄さを改めて実感せざるを得ない。
今やすっかりテレビに出たりすることも少なくなったが、それでもこんなにたくさんの人がライブを見にきているということは、このバンドにはテレビの中ではない生きる場所がちゃんとあったということである。無論、それはライブという場所である。まだまだ健在どころか、ライブはかつてよりはるかに素晴らしくなっている。
1.チラチラリズム
2.上海ハニー
3.Special Summer Sale
4.Hopping
5.SUSHI食べたい feat.ソイソース
6.花
7.以心電信
8.イケナイ太陽
9.キリキリマイ
encore
10.お願い!セニョリータ
SUSHI食べたい feat.ソイソース
https://youtu.be/epfPe2U_2Xk
19:35~ THE ORAL CIGARETTES [STAR STAGE]
the telephones復活という報を聞いた時、その日のメインステージのトリは間違いなくthe telephonesがやるんだろうと思っていた。しかしながらこの日トリを務めるのは、THE ORAL CIGARETTES。MUSICAと、このフェスとともに成長してきたバンドにこの日の締めを任せたのである。
かつてのような前口上はなくなり、中西がドラムセットを叩き始めると、「ONE'S AGAIN」からスタート。山中は早くもステージを左右に歩き回りながら歌うことでこの広い会場、しかもアリーナだけでなくスタンド席まで埋め尽くしたオーディエンスたちを掌握していく。
近年の中ではむしろ珍しい部類に入る、ストレートなギターロック曲「CATCH ME」を終えると、
「激しい曲だけじゃなく、暴れられるような曲だけじゃなく、ちゃんと俺たちの色を出して、それを刻み付けていきたい」
と言って、モニターに歌詞などの映像が映し出された「マナーモード」「接触」というあたりは緩急で言うならば「緩」の部分であるが、こうした曲の妖しい世界観は、ゴス・耽美と言ってもいいような、どちらかと言うとV系のバンドが持つ要素に近い。この日のJ-ROCK ANTHEMSで山中はL'Arc~en~Cielの「HONEY」を歌っていたが、そうしたタイプの曲に違和感を感じないのは山中がかつてコンプレックスだったと語っていた声の力が大きい。つまり、山中の声はオーラルの強い武器になっている。
すると一転して
「天変地異なんて起こるわけがない。
そんな気もしたあの日はどこへと
あぁ、いつかあの場所で歌えたらいいな
届くかな君にも 空はまだ青色だから」
と、被災地へ希望を向けた「ReI」で光を映し出す。このコントラストにはびっくりしたが、「ReI」はバンドがこの曲を軸にしたプロジェクトを展開するほどに大事にしてきた曲であるし、ギターの鈴木がマイクを通さずともずっと口ずさみながらギターを弾くほどに、単純にメロディの力が実に強い。これは間違いなくオーラルの新たなキラーチューン、それも明確な意志を宿した名曲である。
「今日、ニュース見てたんやけど、大谷翔平君ってすごいよな。帽子がもうメジャーの殿堂記念館に飾られてるんやって。羽生結弦君もそうやけど、年下ですごいストイックに頑張ってる人たちは本当にすごいなって。
さっき、UVERworldのTAKUYA∞君にも言われました、バンドマン温いよな、って。そんなん言われるとさぁ、俺すっごくムカつくんだよなぁ!」
と爆裂モードのスイッチが入ると、インディーズ時代の代表曲「Mr.ファントム」では鈴木とあきらかにあきらがラストサビ前で思いっきり交差するように大ジャンプをかまし、「狂乱Hey Kids!!」「BLACK MEMORY」というキラーチューンを続けて、熱狂に叩き込みながら本編を終えた。
アンコールで再びメンバーがステージに現われると、山中が
「やっぱり、ここでワンマンやりたいっすわ」
と、去年も口にしたものの、まだ叶っていない野望を改めて語り、もっと大きな存在になってこのフェスのトリに戻ってくる覚悟を告げながらも、
「どれだけ大きくなっても、絶対に初心は忘れない!」
とメジャーデビューシングル「起死回生STORY」をその所信表明として演奏し、初の大役を見事に果たした。
「まだトリには早い」という声を自らの手で封じ込めるかのように、曲のスケールとクオリティ、動員力、そしてトリとしての責任。その全てを今のオーラルが手にしていることを自分たちのライブでしっかりと証明してみせた。
山中は
「新時代を俺たちの手で作っていきたい!」
と口にした(それはかつてtelephonesが口にしていたが叶わなかったことでもある)が、果たしてこの日のライブはその新時代の幕開けの第一歩となるのだろうか。
1.ONE'S AGAIN
2.カンタンナコト
3.CATCH ME
4.マナーモード
5.接触
6.ReI
7.Mr.ファントム
8.狂乱Hey Kids!!
9.BLACK MEMORY
encore
10.起死回生STORY
ReI
https://youtu.be/gFYZ5PPJhCw
フェス自体について思うところも本当に多い、という意味ではなかなか音楽だけに集中できないフェスなのだが、それは翌日、最終日の文末にでも。
Next→ 5/5 VIVA LA ROCK @さいたまスーパーアリーナ
さいたま新都心駅からすぐという利便性と(鹿野淳は信じられないくらいの雨男なので、屋内会場開催は理にかなっている)、日によって出演者の色が固められているというラインアップの妙もあってか、今年は3日~5日の3日間すべてのチケットがソールドアウト。前日の初日にはサカナクションやスピッツなどを始め、メインステージ以外にはインディーポップ、海外の現行のオルタナティブなブラックミュージックを日本で鳴らすアーティストが多く出演したが、この日は若手の筆頭格であるTHE ORAL CIGARETTESがメインステージのトリを務めるなど、今最も勢いのある若手ロックバンドが居並ぶ。
今年もステージは
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
の4ステージ。そのうちGARDEN STAGEは野外ステージであり、今年もチケットがなくても見れる、けやきひろばでのフリーエリア。
入場すると、去年まではあったウェルカムドリンクがなくなっているという衝撃の事実に驚きながら、STAR STAGEではすでにMy Hair is Badがリハを敢行中。まだ人はアリーナ前方ブロックしかいなかったが、後方エリアにもスピーカーを設置したことにより、音は格段に良くなっており、音質的には距離感を感じなくなっている。これは運営サイドの努力の証と言えるだろう。
リハ.音楽家になりたくて
リハ.復讐
リハ.グッバイマイマリー
リハ.優しさの行方
10:30~ Dizzy Sunfist [VIVA! STAGE]
今年からステージの位置が変わり、昨年までステージがあった位置が外からの出入り口に変更された、VIVA! STAGE。(しかしライブ中は閉鎖されているため、あんまり効果はない気がする)
そのVIVA! STAGEのこの日のトップバッターは、Dizzy Sunfist。このバンドがこのステージのトップバッターを任されたという点からも、この日のラインアップの激しさがうかがえる。
「Let's Go Dizzy」のSEで登場し、冒頭2曲の流れは先週のアラバキの時と変わらないが、1曲目のイントロからダイバー続出するという観客の激しい歓迎っぷり。
そこからはアラバキと少し変えてきたのだが、それは持ち時間がアラバキよりも5分多いからか、あるいはアラバキではサウンドトラブルがあって曲順を変えたからか、あるいはその両方だろうか。
その変えたうち、というかアラバキではやらなかった「Into The Future」は、ひたすらに激しいメロディックパンクでダイブの嵐を起こしていた中にあって、緩急で言えば緩にあたる曲。こういう曲をサラッとフェスのセトリに入れてくるパンクバンドはなかなかいないが、それはメンバーが自分たちが研ぎ澄ませてきた楽曲のメロディ(それも最新作に入ってる曲のもの)の力を最大限に信頼しているからであろう。
そう、やはりメロディックパンクと言われる以上、大事なのはメロディなのである。それこそがこのバンドがこんな大きなステージに立つことができるようになった最大の要素。なかなかパンクというスタイルでこのキャパに立てるバンドはいないし、
「夢は諦めなければ叶うなんて安っぽいことは言わへん!夢は諦めなければ絶対に死なへん!」
という、負け続けようとも殴られ続けようとも、自分たちが信じた音楽を、自分たちが信じた道を貫く。それがあるからこのバンドは強いし、それが1曲目のイントロからダイブしまくるという観客の姿勢にも強い影響を与えている。
アラバキのサウンドトラブルはあやぺたが言っていたように忘れられないような出来事であったが、やはり「Summer Never Ends」がちゃんと聴けなかったのは消化不良感もあった。それを完全に解消してくれた上に、フェスが始まった!と気合いを入れてくれた、最高のファーストアクト。
また、主催者の鹿野淳や編集長の有泉智子だけでなく、普通の人はまず知らない存在である、自分たちのインタビューを担当してくれている矢島大地の名前も出して感謝を告げるあたり、本当に義理堅いというか、正統なパンクイズムの継承者であると思う。
1.Life Is A Suspense
2.No Answer
3.Joking
4.Someday
5.Summer Never Ends
6.Into The Future
7.Shooting star
8.Tonight,Tonight,Tonight
9.The Dream Is Not Dead
Life Is A Suspense
https://youtu.be/Y9MQUP4ixUs
11:05~ My Hair is Bad [STAR STAGE]
去年のこのメインであるSTAR STAGEへの出演はまだ抜擢感が強かった。しかし3月に日本武道館2daysを即完させたことにより、My Hair is Badはこのステージに相応しい存在となって帰ってきた。
さすがに2回目のステージとなると堂々としているというか、椎木のボーカルからも、バヤリースとやまじゅんのリズムからも緊張感はほとんど感じない。椎木はやたらと
「3月には桜が咲いて、5月になるともう忘れられている。そして夏になって」
と、季節感を感じさせる、夏の前だからこその言葉を発していたが、それが「真赤」の最後の
「夏の匂いがした」
というフレーズに説得力を持たせる。この日の気候もまた、夏の匂いがしていた。
その夏が一瞬で過ぎ去っていくかのような「クリサンセマム」から、バヤリースのベースのリズムが否が応でも踊らせ、しかもライブならではのかなり速いテンポになっている「元彼氏として」。
「音楽だけで食えるようになってるし!」
と歌詞を変えて歌えるようになったのも、さすがメインステージに出ているバンドである。
「この後、このステージには頼りになる先輩が出てくる!でも頼ってばかり、ありがとうばかりではいられない!終わりよければ全て良し!でもトップバッターとして何ができるか!機嫌を取りにきたんじゃねぇ!ロックバンドをやりに来たんだ!」
と椎木がトップバッターとしての言葉を並べまくる「フロムナウオン」でさらにバンドそのものの音までもが鋭さを増していくと、一転して慈愛に満ちた「いつか結婚しても」から、
「MUSICAに捧げます!」
と、自分たちを最大限にフィーチャーしてくれているMUSICAへの「告白」をして、この日のトップバッターとしての役割を全うした。
武道館の後に発表されたワンマンは、都内では日比谷野音とZepp。もうそのキャパでもチケットは全然取れない。それを証明するかのように、フェスにしてもやたらと早い時間であっても、スタンディングエリアは超満員だった。もちろんライブハウスで生きてきたバンドだし、そこがこれからも生きる場所であるのは間違いないだろうけど、武道館の先にある舞台が確かに見えたようなライブだった。
1.アフターアワー
2.熱狂を終え
3.ドラマみたいだ
4.真赤
5.クリサンセマム
6.元彼氏として
7.フロムナウオン
8.いつか結婚しても
9.告白
告白
https://youtu.be/yR0KgP7OrSw
11:45~ ポルカドットスティングレイ [VIVA! STAGE]
練られたMVなどでバズを起こしまくっている、女性ボーカルの雫を中心とした4人組バンド、ポルカドットスティングレイ。去年の春からフェスに出るようになったが、このフェスには初出演。
このバンドの名前を世に知らしめた「テレキャスター・ストライプ」から始まると、メンバーの演奏は実に上手いし、こうしたフェスに集まるようなロックキッズたちのツボを突くような、踊れるビートやオシャレなコードの取り入れ方などは実に巧みであり、メンバー個々のポテンシャルの高さを感じさせる。
だが、自分が「テレキャスター・ストライプ」のMVを初めて見た時に感じた、「サウンドのスタイルとしては明らかに自分が好んで聴くようなタイプなのに、何も感じないという違和感」をこの日のライブからも感じてしまった。
それは、自分が好きなバンドたち、特にパンクやラウド、ロックンロールというサウンドで生きているようなバンドたちが持っている、「こういう音楽が好きだから、こういう音楽・こういうバンドをやっている」という感情。それがこのバンドからは全く感じられないから、まるでボカロ、ロボットがライブをしているかのように感じてしまう。
そこには
「お客様が喜んでくれるような曲を作る」
という雫の音楽への姿勢が多分に関係しているからだと思われるが、そういう発言を目に、耳にしているからこそ、より一層このバンドがどんな音楽をやりたいのかが見えなくなるし、無味無臭な、それこそ自分が1番自発的に聴こうと思わない売れ線J-POPのように聴こえてきてしまう。
「じゃあ見なければ良かったじゃないか」
と思われるだろうけど、それは実際にこの目でライブを見なければわからない。もしかしたらライブを見たら印象が変わっていた可能性もあるが、今回は変わらなかったということ。
そうした、音楽ファンのニーズに応えた楽曲を作るというのは新たなバンドの形のようにも見えるし、それを受け入れられない自分のような人間は老害と言われるかもしれない。
でも自分がJ-POPよりもロックバンドを好きになったのは、ロックバンドには確かな音楽への愛情と、その音楽で生きていくという意志を感じたから。
「すごいすごくないはどうだっていい ただ信じたいミュージック鳴らすだけ」
と自分が好きなThe Mirrazは歌っている。このバンドにはその「信じたいミュージック」があるだろうか。個々の技術はめちゃくちゃ高いだけに、もしそれが見えるようになったらもっとすごいバンドになると思うのだが。
1.テレキャスター・ストライプ
2.BLUE
3.サレンダー
4.少女のつづき
5.エレクトリック・パブリック
6.シンクロニシカ
7.ICHIDAIJI
ICHIDAIJI
https://youtu.be/WJW7kS9AAI4
12:20~ KEYTALK [STAR STAGE]
もはやすっかりこのメインステージでの常連バンドとなったKEYTALK。それを示すかのように、アリーナスタンディングエリアは規制レベルの超満員。さすがすでに横浜アリーナでもワンマンをやっているバンドである。
いきなりの「YURAMEKI SUMMER」で早くもこの会場を夏フェスに変えてしまうと、最新アルバム「RAINBOW」のリードトラックであり、妖しい雰囲気がバンドの新たな一面を浮かび上がらせつつも、首藤義勝というソングライターの器用さ・幅の広さを感じさせる「暁のザナドゥ」を披露。基本的にアルバム曲でも過去曲でもガンガンセットリストに入れてくるバンドであるが、他のアルバム曲がセトリに入らなかったのはまだツアー中だからだろうか。
一転してポップに飛び跳ねる「Love me」から、アラバキの時は「マスターゴッド」をやっていた部分でこの日演奏されたのは「YGB」。やろうと思えばフェス仕様のオールヒットシングルというセトリも全然作れるバンドではあるが、こうして1週間ごとにやる曲を変える、しかもそれが決して定番曲ではない曲であるのを見ると、毎回ライブで見ても損しないし、そうした曲がいつでもできる状態にあるという、ライブで生きているバンドであることを再認識させてくれる。
この日も赤いユニフォームを着て伸びやかな声を出していた巨匠と、トリッキーなギターでサウンドのロック色を強める小野武正が並んでステップを踏みながらギターを弾く「Summer Venus」では義勝が三代目J Soul Brothers的なポーズを取るなど、ライブのパフォーマンスもキレている。
武正が自身と義勝が埼玉出身であることを語り、埼玉県民の割合を調べたりしながら、この季節にぴったりな「桜花爛漫」、再び一気に夏に向かう「MABOROSHI SUMMER」と定番曲を畳み掛けるクライマックスへ向かうのだが、「MABOROSHI SUMMER」の最後のサビ直前で義勝が巨匠のマイクスタンドを倒してしまい、巨匠が歌に入れなくなってしまう。
「どうする?」
という空気がバンドに流れる。次の瞬間には倒した犯人である義勝が3人に向かって人差し指を立てる。それを見た3人は再びラストサビ直前から演奏し、巨匠もすんなりサビに入る。わずか一瞬、しかも言葉を交わしていない。目で合図しただけ。それだけでサビ前の数秒前までだけ巻き戻すことができる。メンバーの出で立ちがいわゆる「可愛い」(特に中日ドラゴンズのユニフォームを着ていたドラムの八木が)と言われる、舐められがちなKEYTALKのバンドとしての地力の強さと、こうしたアクシデントにすぐさま対応できる経験値の高さ、そして4人の絆を改めて感じさせた一瞬であった。
そしてやはり最後は義勝のスラップベースが踊らせまくる「MATSURI BAYASHI」から、ラストの「MONSTER DANCE」ではステージ前から火花が吹き上がるという特効も炸裂した。
やはりライブを見ると、なぜここまで巨大な存在になったのかというのがよくわかる。そういう意味では、やはりライブでこそ真価を発揮するバンドなのかもしれない。
1.YURAMEKI SUMMER
2.暁のザナドゥ
3.Love me
4.YGB
5.Summer Venus
6.桜花爛漫
7.MABOROSHI SUMMER
8.MATSURI BAYASHI
9.MONSTER DANCE
暁のザナドゥ
https://youtu.be/fmIN5z4cuUM
13:00~ yonige [VIVA! STAGE]
こちらも先週はアラバキに出ていた、yonige。しかしながらThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEでメンバーが登場すると、牛丸ありさの髪が黒に変わっており、ハーフということで元よりモデルのような容姿がより一層モデルっぽくなっている。
アラバキを始め、最近は去年リリースのアルバム「girls like girls」のリード曲だった「ワンルーム」でスタートするというパターンが多かったが、この日は「さよならプリズナー」「our time city」という代表曲の連発でスタート。
「大阪寝屋川、yonigeです」
と牛丸が挨拶すると、「あのこのゆくえ」「センチメンタルシスター」とインディーズ期からの代表曲を続ける。アラバキのHANAGASA STAGEは音響的にやや弱く、少し物足りない感もあったが、この日はさすがにスピーカーを後方エリアにも設置するという音響環境の進化があったため、牛丸のボーカルも非常にクリアに聞こえる。
「去年も出さしてもらったんですけど、去年は出番終わった後に牛丸が泥酔してしまって(笑)
翌日も移動だったんで早く帰らなきゃと思ってたんですけど、気づいたらバンドマン両脇にかかえてて、近年稀に見る醜態でした(笑)」
と、CAVE STAGEに出演してクリープハイプと丸かぶりしていたからか、牛丸が泥酔してしまった去年のエピソードを暴露すると、「ワンルーム」から轟音ギターロックが炸裂。
アラバキでは「しがないふたり」「悲しみはいつもの中」という浸らせるような曲を後半に演奏していたが、この日は代表曲である「アボカド」「さよならアイデンティティー」という、これぞyonigeな歌詞の視点を持ったエモーショナルなギターロックを最後に持ってきた。これはアラバキとビバラの客層でやる曲を変えているのかもしれないが、そうだとするとKEYTALK同様に毎週のごとくフェスに出ていても毎回見たくなるし、そうした選択の幅を持つバンドになったんだな、とも思う。初めてライブを見た時はまだ持ち曲が10曲とかしかなかっただけに。
1.さよならプリズナー
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.センチメンタルシスター
5.ワンルーム
6.アボカド
7.さよならアイデンティティー
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
13:35~ VIVA LA J-ROCK ANTHEMS [STAR STAGE]
このフェスのウリというか、最もこのフェスでしか見ることができないアクト。プロデューサーでありベーシストの亀田誠治、ドラムのピエール中野(凛として時雨)、ギターの加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)、ギター兼ピアノの津野米咲(赤い公園)というバンドメンバーにゲストボーカルが加わり、日本のロック史に残る名曲を演奏していくという企画である。
バンドメンバーが楽器を手にすると、演奏し始めたのはあまりに記名性が高すぎるイントロ。その瞬間に全員なんの曲かわかっていたのだが、その曲「One Night Carnival」を歌うために登場したのは、ヤバイTシャツ屋さんのこやまたくやとしはだありぼぼ。セリフ部分も含めてステージを歩き回りながら、時にはしばたが「テレビでたまに見る、井森美幸のアイドル時代のダンス」を踊りながら完璧に歌いこなしているのだが、ヤバTの「実は真っ当な音楽集団なのにめちゃくちゃ発想が面白い」という点は、キュウソネコカミや岡崎体育よりも氣志團の影響が強いんじゃないか、とも思う。
それを証明するかのように、間奏ではドラムのもりもとがステージに乱入したのだが、氣志團の本物の学ランを着用するというガチ仕込みっぷり。なぜか
「フレー!フレー!ビバラ!」
とエールを送ったのだが、完全に出オチだった感は否めない。
続いてのゲストボーカルは亀田誠治が
「すごいイケメンが来ますよ!」
と期待感を煽らせながら、しっかり出てきた時には黄色い歓声が上がりまくった、山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)。
歌うのはL'Arc~en~Cielのヒット曲「HONEY」だが、この全くの違和感のなさ。普段から歌ってきたりしていた曲なのかもしれないが、近年のオーラルは確かにラルクの影響を感じさせる部分があるだけにこの違和感のなさにつながっているのかもしれない。ファルセットやフェイクの入れ方を含め、本人がかつてコンプレックスだったと語る山中の声が大きな武器になっていることがよくわかる。
続いてはイントロから亀田誠治のベースがブインブインに唸りまくり、プロデューサーとしてではなくベーシストとしての顔を強く出していく。それはかつて自身が演奏していた、椎名林檎の「本能」だからだったのだが、ピエール中野も言っていたが、今こうして亀田誠治がこの曲を演奏する姿を見ることができるのは実に貴重である。また、ゲストボーカルのアイナ・ジ・エンドの妖艶な歌い方は、ラウドなイメージが強いBiSHのイメージとはかなり異なり、彼女のボーカリストとしての技術と表現力、憑依力の高さを感じさせた。
続いてのゲストボーカルはKANA-BOONの谷口鮪。呼び込んでもなかなか出てこなかったので、「あれ?」みたいな空気になりながら、小走りでステージに登場すると、
「普段の僕のイメージとはだいぶ違うと思いますけど、大好きな曲を歌います」
と言って津野のピアノとともに歌い始めたのは、斉藤和義の名曲「歌うたいのバラッド」。ミスチルの桜井和寿もBank Bandでカバーしている曲であるが、普段のKANA-BOONとは全く違うタイプの曲だからこそ、鮪の歌の上手さが実によくわかるし、KANA-BOONがこれだけ支持を集めるバンドになったのは、ただ単に踊れる4つ打ちバンドだったからではない、という普通は見れない一面が見える。かつて、技巧プレイヤー集団であるパスピエのメンバーたちをして、
「鮪さんは本当に歌が上手い。普通の人ではKANA-BOONの歌はあんな風に歌えない」
と評されていたが、それがお世辞ではなく、リアルな感想であったことがよくわかる。
豪華な競演もいよいよ後半へ。ここで登場したのは、前日にFLOWER FLOWERとして出演していた、yui。ショートカットでアコギを抱えた姿はかつてのYUI時代を彷彿とさせるが、歌い始めたのはスピッツの「チェリー」というストライク過ぎる選曲。しかし、YUIの最大のヒット曲も「チェリー(CHE.R.RY)」だよなぁ、と思っていると、間奏でいきなりその「CHE.R.RY」に切り替わり、yuiが一瞬だけYUIに戻って
「恋しちゃったんだ 多分気付いてないでしょう?」
とあの有名過ぎるフレーズを歌い、大歓声が巻き起こる。そしてそのサビを何度も繰り返し、自身はマイクから離れて観客に大合唱させる。その光景こそ、「世代を超えて歌い継がれる」というこのアクトの意義を最も体現していた。最後には再びスピッツの「チェリー」に戻っていたが、ある意味では今回のこのアクトのMVPはyuiであった。
そしてトリを任されたのは、R-指定とDJ松永のCreepy Nuts。2人が出てくる前からコーラス部分が演奏されて大合唱が起きていたのは、ハイロウズ「日曜日よりの使者」。R-指定はメロ部分を原曲の歌詞をうまく使いながらラップにアレンジしていくのだが、これがあまりにカッコ良すぎて、このバージョンを音源化して欲しくなったし、R-指定のラッパーとしてのスキルのあまりの高さには唸らざるを得ない。
DJ松永がスクラッチを入れまくりながら、最後にはゲストボーカルを始め、THE ORAL CIGARETTES、KEYTALK、Dizzy Sunfistら、この日の出演者が一斉にステージに登場して大合唱を巻き起こす。KEYTALKのメンバーが端っこでひたすらツーステしていたのはよくわからなかったが、毎年思うのはこの素敵なセッション、そしてボーカリストたちの新たな一面を見せてくれるこの企画、これからも毎年続けて欲しい。
1.One Night Carnival (氣志團) / ヤバイTシャツ屋さん
2.HONEY (L'Arc~en~Ciel) / 山中拓也 (THE ORAL CIGARETTES)
3.本能 (椎名林檎) / アイナ・ジ・エンド (BiSH)
4.歌うたいのバラッド (斉藤和義) / 谷口鮪 (KANA-BOON)
5.チェリー (スピッツ) ~ CHE.R.RY (YUI) / yui (FLOWER FLOWER)
6.日曜日よりの使者 (ザ・ハイロウズ) / Creepy Nuts
日曜日よりの使者
https://youtu.be/l7Tdleowcqw
14:20~ 夜の本気ダンス [VIVA! STAGE]
このステージの常連的存在の夜の本気ダンス。バンド名とは裏腹に真昼間の時間帯への出演である。
初っ端から踊らせまくりなのはやはりこのバンドならではだが、もはやそれは単純な4つ打ちのダンスビートだけではなく、特に鈴鹿のドラムの手数はかなりのものである。
その鈴鹿は
「さっき、ねごとが出たやろ?俺らとねごとで昼なのに夜の…」
と話し始めるが、マイケル(ベース)に
「ねごとちゃう!yonigeや!」
と訂正され、毎回練られたMCで爆笑を巻き起こしてきたが、この日は天然っぷりで笑われてしまうという、MCで出鼻を挫かれる展開に。
しかしそれを帳消しにするかのように、「Japanese Style」からは「本気ダンスタイム」という、かつてのDOPING PANDAの「無限大ダンスタイム」を彷彿とさせるノンストップに曲を繋いでいくアレンジに突入。合間にはメンバーのソロ回しも繋いでいくなど、ただ単に踊ればいいという感じではなく、バンドのグルーヴに浸らせて乗らせることで踊らせていく。
正直、自分はデビュー当時にこのバンドのライブを見た時はかなり物足りなく感じてしまった。それはまだまだバンドの力量が期待に追いついていない部分があったからだと今になると思うが、ギターが西田になり、メンバーが音楽だけで生きていける環境になったことで(鈴鹿はちょっと前まで普通に働きながら音楽をやっていた)、各々のスキルとバンド全体の実力が飛躍的に向上している。それによって自分たちがやりたかったことがちゃんとできるようになっている。こんなにかっこいいバンドになるなんて、その頃、それこそ鈴鹿が
「このフェスには2年目から出させてもらってるけど、その年は前夜祭も本編も後夜祭も出るっていうフル稼働っぷりだった」
と言っていた、フェスに出始めた頃からは想像だにしなかった。
「今日は電話の先輩が久しぶりに電波入りはるから、どんなライブ見せてくれるのか楽しみやな~」
と鈴鹿がtelephonesへの愛を語ると、後半は米田がネクタイを外し、本気モードに入るのだが、だからといってアッパーな曲を連発するのではなく、「BIAS」を入れてむしろ緩急をつけてくるあたりに、このバンドが自分たちなりのフェスでの戦い方を見つけたことを実感する。
そしてラストは米田がメガネすらも吹っ飛ばして踊りながら熱唱した「Take My Hand」。ドラマの主題歌にもなったし、自分もこのバンドの中で最大のキラーチューンだと思っている。しかし思ったほどのセールスをあげることはできなかった。そこで頭によぎるのは、やはり電話の先輩ことtelephones。彼らもまた、フェスではたくさんの人が来てくれて盛り上がるのに、音源が売れないという悩みを抱えていた。夜ダンの面々がそこまで悩んでいるかはわからないが、このバンドももはや踊れて楽しいだけのバンドではないことをこうしてライブで証明しているだけに、ちゃんと動員や評価に見合ったセールスを得られるようになってほしい。
1.Call out
2.WHERE?
3.Japanese Style
4.fuckin' so tired
5.B!tch
6.By My Side
7.BIAS
8.TAKE MY HAND
TAKE MY HAND
https://youtu.be/c9mY1alrifY
15:00~ 凛として時雨 [STAR STAGE]
フェスに出演するというのが事件扱いされるくらいにピエール中野のバイタリティに比して、バンド本体は稼働することが少ない、凛として時雨。新作アルバムを携えての久々のツアーを終えての出演というタイミングの良さもあったのだろうが。
もはやメンバーがステージに登場しただけで会場の空気はガラッと変わる。基本的に明るい照明を使うことは全くなく、最新アルバム収録シングル曲「DIE meets HARD」から始まる楽曲もダーク。
しかしながら久しぶりに見ると、TKと345のハイトーン、というか金切り声と言ってもいいような声はどこから出しているのか、そして演奏のとんでもない複雑なサウンドをギター1本だけで鳴らしているという演奏技術のあまりの高さに驚かされる。
だがその複雑な演奏と、新作のツアーが終わったばかりという状況を考えても、セトリはかなりわかりやすい、これぞフェスセトリというような代表曲が並んだものになった。(そもそもフェスにあまり出ないがゆえにフェスセトリがあまりわからない)
もはや暴走状態というくらいに加速する「abnormalize」から「Telecastic fake show」という後に真っ赤な照明に照らされながら鳴らされたのは、ライブの締めの定番曲である「傍観」。ゆったりと言葉を紡ぎながら徐々に感情を高ぶらせていき、最後には先に演奏を終えた345とピエール中野がステージを去る中、1人ギターを弾くTKがギターをぶん回しまくっていた。
MCなしということもあるが、持ち時間をかなり巻いての終わりになったのは、次に隣のステージで盟友の9mmが控えていることの配慮だろうか。TK from 凛として時雨、345のKoji Nakamuraなどへのサポート、大森靖子をはじめとするピエール中野のドラムなど、今や個々の活動をいたるところで見ることができるが、やはり本隊での3人が1番とんでもない人たちだな、と思える。
1.DIE meets HARD
2.Who What Who What
3.i was music
4.DISCO FLIGHT
5.想像のSecurity
6.abnormalize
7.Telecastic fake show
8.傍観
DIE meets HARD
https://youtu.be/PAyJshW6-qA
15:45~ 9mm Parabellum Bullet [VIVA! STAGE]
去年、卓郎が弾き語りでGARDEN STAGEに出ているとはいえ、9mmがこのフェスに出るのは最も驚きの発表であった。
それはROCKS TOKYO時代から、鹿野淳が主催するフェスには一度も呼ばれたことがないし、なんならMUSICAにインタビューが載ったことも全くないという、フジファブリックらと同様に、鹿野から無視されているバンドという認識がファンの間にも定着しているからである。
実際のライブはこの日は為川裕也(folca)をサポートギターに加えた4人編成で「反逆のマーチ」からスタートすると、
「ディスコは好きかー!」
と普段とは違う前フリで「Discommunication」へ。これは間違いなくthe telephonesの復活を祝っているものと思われたが、実際に久々に演奏された(さいたまスーパーノヴァだから)「Supernova」ではtelephones「Monkey Discooooooo」のリフを弾くというtelephonesへの愛を見せる。
さらにはMCでも10年前に渋谷のO-EASTで凛として時雨とthe telephonesと3組で初めて対バンした時の思い出を語るなど、9mmはこの日誰よりもtelephonesのためにステージに立っていた。もしかしたら、フェスサイドが9mmにオファーしたのもその3組を揃えたかったからなのかもしれない。それならば今まで全く接点を持とうとしなかった9mmを呼んだのも納得がいく。やはり他のバンドとは違ってバンド側がMUSICAや鹿野淳への感謝を告げるようなことはなかったが。
最後の「新しい光」では合唱を起こしながら和彦がベースを床に置いて叩きまくるという奏法を見せながらも、基本的にフェスではおなじみの曲が並んだセトリではあったが、それでもかつてEMI ROCKSの時にこの会場でライブを行なった際に
「さいたまスーパーノヴァ!」
と言って演奏し、場所に合わせた選曲をしていたのと同じことができるようになっているのは、これからもフェスで9mmを見るのが楽しみになってくる。早くもJAPAN JAM最終日にも見れるが、果たしてそこではどんなライブを見せてくれるのか。
1.反逆のマーチ
2.Discommunication
3.ガラスの街のアリス
4.Supernova
5.Black Market Blues
6.ハートに火をつけて
7.ロング・グッドバイ
8.新しい光
Supernova
https://youtu.be/kmawA9Jns14
16:35~ サイダーガール [CAVE STAGE]
このフェス開催初年度から「全然ステージが見えない」と言われまくっていたCAVE STAGE。だから好きなバンドが出ていてもあまり足を運びたくないステージなのだが、去年リリースしたアルバム「SODA POP FUNCLUB 1」が非常に良かったサイダーガールは見ておきたいと思い、意を決して足を踏み入れた。
しかしながらUVERworldの真裏という時間にもかかわらず超満員の客席となっており、案の定全くステージが見えない。フジムラ(ベース)と知(ギター)の両サイドが長身なのでたまに視界に入るが、基本的にはステージがどんな感じなのか、メンバーがどういうふうに音を鳴らしているのかが全くわからない。
ただわかるのは「パレット」などの曲でYurin(ボーカル&ギター)が「歌って!」と言うと大きな合唱が起きたこと。(ステージが狭く天井も低いためによく響く)
ライブを見るのはかなり久しぶりなのだが、いつの間にかこんなにみんなで歌えるようなバンドになっていたのである。
6月にリリースする新作に収録される新曲「約束」も含めて、バンド名の通りに爽やかなギターロックバンドなのだが、「メランコリー」はダンスロック的なアプローチで、世の中への違和感を訴える曲。それが単なる快楽的なダンスではなく、世の中への違和感を感じているからこそ踊るという、このバンドならではのダンスチューンになっている。
「正直、僕だったらUVERworld見に行きます(笑)」
と自虐しながらもYurinは
「でも、だからこそここに来てくれて本当にありがとうございます!」
と力強く口にし、その感謝の気持ちを「ドラマチック」「オーバードライブ」という代表曲2曲に託した。それは本当に爽やかな後味だったが、きっとこういう狭い穴蔵の中よりも、快晴の空の広大な場所で飲んだ方が、このサイダーは絶対に美味しいはずだ。
1.エバーグリーン
2.パレット
3.約束 (新曲)
4.メランコリー
5.ドラマチック
6.オーバードライブ
パレット
https://youtu.be/FpQyszV16Zg
17:15~ ヤバイTシャツ屋さん [VIVA! STAGE]
ツアー後にこやまたくやが喉の手術をしてから初のライブとなる、ヤバイTシャツ屋さん。1ヶ月半という期間は短いと捉えられるだろうけれど、ライブをやりまくってここまで来たこのバンドにとっては初めてと言っていいくらいに長い時間であったはずだ。
ツアー同様に「はじまるよ~ はじまるよ~」という脱力必至なSEで3人が登場すると、いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で踊りまくり合唱しまくりというノリが初っ端から凄まじい。
メロコアバンドとして攻めまくる前半から、やはりこやまは声がよく出るようになってきている。手術前まではかなりキツそうに歌っている時もあったが、そんな心配はもうなく、本人も
「手術したからめっちゃ歌いやすいー!」
と叫んでいた。しかし新たなキャラ付けを狙ったMCはやはりそのキャラの通りにはならず。
というか、初めてCAVE STAGEに出た2年前あたりはMCの分量が多かったし、そこで笑いを取るようなパフォーマンスが多かった。だが今ではそんなパフォーマンスがいらないくらいに、曲をやることが最大のエンターテイメントになっている。
しかし「肩have a good day」では曲の最後の最後でこやまが中々歌い切らずに、しばたに励まされるようにしてから歌い切る、という曲を演奏しているだけなのに笑いが起こる。こんな歌詞の内容の曲が名バラードになっているという状況もすごいが。
千葉ロッテマリーンズの選手の誰かに入場曲として使って欲しい「とりあえず噛む」の高速ツービートが鳴り響くと、
「初めて出た2年前がCAVE、去年はここのトップ、今年はトリ前。来年はこのままいけばここのトリか、STAR STAGEか。俺たちはSTAR STAGEに行きたいと思ってます!俺たちをSTARにしてくれー!」
と目標を改めて語り、その感情が音に乗り移ったかのように「ヤバみ」では曲のテンポが速くなり、最後は「入籍!入籍!入籍!入籍~!」の大合唱が響いた「ハッピーウェディング前ソング」でもはやこのステージでは収まらないくらいの熱狂を生んで見せた。
ツアーでわかっていたことだが、このバンドは上昇志向の持ち主ではあれど、意外なほどにライブハウスへの思いも強く持っているバンドだった。それは10-FEETやロットングラフティーなどの憧れたバンドがそういうバンドだったからだが、それこそデカい会場でワンマンをやるくらいなら、Zepp Tokyoで5日間くらいワンマンをやりたいというくらいに。
でもそうした思考の持ち主だからこそ、フェスの時くらいはデカいステージに立っている姿を見てみたいものであるし、もうこのバンドはそこに立つべき存在であることは間違いない。来年このバンドはSTARになっているはず。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Tank-top of the world
3.無線LANばり便利
4.L・O・V・Eタオル
5.Universal Serial Bus
6.肩have a good day -2018ver.-
7.とりあえず噛む
8.ヤバみ
9.ハッピーウエディング前ソング
肩have a good day -2018ver.-
https://youtu.be/s06mLNxS7lo
17:55~ the telephones [STAR STAGE]
2月頃にこのさいたま新都心近辺に貼られたポスター。それは紛れもなくかつてのthe telephonesのシルエットだった。その直後の正式な出演発表。このスーパーアリーナでのLAST PARTYから2年半。これから本格的に活動再開するのか、これっきりのものなのか。様々な感情が渦巻く、the telephonesの復活ライブ。
かつてのサッカーユニフォームなど、様々な形でtelephonesへの愛を示す人たち、それは我々ファンもそうだし、9mmや夜ダンのようにステージに立つ側の人もそう。そんな人たちが今か今かと待ち構える中で時間になると、「Hapiness,Hapiness,Hapiness」が流れてミラーボールが回るというあの頃と全く変わらない始まり方…かと思いきや、ステージ上のモニターには、LAST PARTYの時の映像が。涙ぐみながらベースを弾く涼平、上半身裸のノブ、スパイクモヒカンの誠治、
「どこまでも不器用な4人組、the telephonesでした!」
と最後のあいさつをした石毛。全てこの目に焼き付いている光景だ。そして映像が終わると再び「Hapiness,Hapiness,Hapiness」が流れてフロアを照らしながら輝くミラーボール。アフロのカツラを被ってステージに出てきた4人。なにもあの頃と変わっていない。もう、こっちの感覚も、「ついにtelephonesが帰ってきた!」という構えたものではなく、「ああ、ライブ見るのちょっと久しぶりだな」くらいのものに、4人の姿を見た瞬間に変わっていた。やはり誠治はスーパーアリーナではスパイクモヒカンになっていたし。
「VIVA LA ROCK!一瞬だけ帰ってきました!埼玉県北浦和からやってきた、the telephonesです!スーパーアリーナ、いきなり猿のように、踊ろうぜー!」
といきなりの「Monkey Discooooooo」からスタート。もちろん猿のように暴れまくる客席。休止後にも例えば9mmのサポートギターを石毛がやった時や、石毛とノブのDJなどでもこの曲は聴いていた。だからなのか、合いの手やジャンプする時のタイミングなど、完璧に体に染み付いていた。で、それは自分以外のtelephonesのTシャツを着た人、アリーナにいた人も間違いなくそうだった。もう遺伝子にtelephonesの音楽が刻み込まれているのだ。ステージ上では石毛がブリッジしながらギターを弾くのもかつてと全く変わらない。涼平は明らかに緊張感を漂わせていたけれど。
続いては「HABANERO」。イントロのタメは後期の高速バージョンではなく、従来のグッとタメるバージョン。このシンセの高揚感で踊らせるのもまたtelephonesのサウンドである。石毛は間奏で側転を見せたりと、lovefilmやYap!!!ではそこまで激しいアクションを見せることはなくなっているが、身体能力は全く衰えていない。
ノブがカウベルを打ち鳴らす、かつて様々なフェスでノブがやりたい放題やりまくってきた「Baby,Baby,Baby」ではやはりノブがステージから飛び降りて客席を走りまくる。しかしそれだけでは飽き足らず、なんとアリーナのブロック間を電飾のついた自転車で走行しながら、カゴの中に入っていたボールを客席に投げまくるという、かつてと同じではなく、かつてよりもさらに進化したパフォーマンスを見せる。最後にステージに登る時にはかなり体力を消耗しているようにも見えたが、telephones以降、メンバーに飛び道具的なキャラがいるバンドも増えた。しかしやはりtelephonesは、というかノブは今でもその先を走り続けている。
また、ノブはステージに戻るとシャツを脱いで上半身裸になったのだが、右肩にはマジックで「51」という数字が書かれていた。それはこの日の朝に、今年はもう選手としてプレーすることはない、と発表された、シアトル・マリナーズのイチローの背番号。ノブは松井秀喜が引退した時も、9mmの卓郎と一緒にその功績を語り尽くしていたという。我々ファンがtelephonesから日々の生活を生きる力をもらってきたように、ノブは間違いなく松井秀喜やイチローがプレーする姿からそうした力をもらって生きてきていた。決して真面目な話をするタイプではないし、この日もMCは空回りしまくっていたけれど、ノブのこの日のライブへの強い思いが伝わってきた。
ダウナーなイントロから一転してバブリーなシンセのフレーズがきらめき出す「SAITAMA DANCE MIRRORBALLERS!!!」は埼玉出身のバンドが埼玉でライブをやっているという実感に浸らせてくれ、涼平のベースラインが観客を踊らせ続けてきた「electric girl」と、おおよそ見当はついていたとはいえ、ファンには嬉しい選曲が続く。
自身のモヒカンヘアの顔が印刷されたTシャツが即完売した誠治を皮切りに、一人一人久しぶりのtelephonesのライブについての感想を語ると、ノブのダンス指南から、モニターにはリリース当時に「気持ち悪い!(笑)」と話題になったMVが映し出された「Don't Stop The Move,Keep On Dancing!!!」で、まさに止まることなく踊らせ続けることを宣誓すると、ひたすらに暴れまくる「I Hate DISCOOOOOOO!!!」、そして石毛が客席に向かって、今からあの曲のイントロのあのフレーズを弾くぞ?と言わんばかりにギターを構えてから演奏されたのはやはり「urban disco」で、実に久しぶりに
「I am disco!!!」
の大合唱が会場に響き渡る。客席にはいつの間にかこのフェスの守護神と呼ばれるような巨大な風船の人形が回遊している。
そして最後はやはり、このバンドが活動の中で最も体現してきた、愛とディスコを鳴らす「Love&DISCO」。初めてさいたまスーパーアリーナでワンマンをやった時と同じように、あるいはそれ以降に立ってきたこのフェスのこのステージの時と同じように、そして2年半前のLAST PARTYの時と同じように、客席の上にはtelephonesを祝う飛行船が飛んでいた。
これが復活のライブであることや、これから先にまたライブが見れるという保証がないこと、そうしたことを全て忘れさせてくれるくらいにただひたすらに今この一瞬が本当に楽しかった。telephonesのライブや音楽にはそうした力が確かにあった。だから今でもこれだけたくさんの人がずっと待っていたのだ。
「1年も休むと忘れられてしまう」というくらいに速い現在の音楽シーンのサイクル。2年半という時間は短いようでいて、そのサイクルに当てはめるとかなり長いブランクだ。だからこそこのフェスにtelephonesが出ると発表された時に「今の若いファンはもうtelephonesを知らない」「メインステージはもうキツいんじゃないか」という声が出ていたのも仕方のないところだろう。でもtelephonesは今のシーンでもメインステージに立って、幅広い世代の人の前でライブができるバンドであるということを確認させてくれた。それはかつて散々言われていた、「ただ楽しいだけ ただ踊れるだけ」というバンドではtelephonesはなかったということでもあった。それはファンはみんなわかっていたことだけど。
なぜ自分にとってtelephonesはこんなに特別なバンドなのか。それは、かつて10代の頃の自分にとっては客席にいる人たちは完全なる他者であり、関わりを持たない、なんなら邪魔とすら思っていた存在だった。
でも2008年にtelephonesのライブを初めて見て、その時にようやく気付いたのだ。周りにいる人は同じ音楽が好きな仲間だということに。その仲間たちと肩を組んだりして踊ったり歌ったりすることがこんなにも楽しいものだったなんて。それに気付いたら、ライブに行くのがそれまでよりさらに楽しくなった。ステージだけじゃなくて、客席を見たりするようにもなった。そうしてtelephonesの音楽とライブは自分の価値観を変えてくれたのだ。それが特別じゃなくてなんだというのだろうか。
だからこそ、この日、バンドの演奏が良かったことよりも、おそらくかつて一緒にtelephonesのライブにいたであろう人たちがたくさんいたのが何よりも嬉しかった。
lovefilmもYap!!!も、石毛輝のソロも、フレンズやFINAL FLASHも好きだ。でもその全ての始まりだったtelephonesはやっぱり今でも特別なバンドだった。見れて、ここにいることができて本当に良かったんだ。
1.Monkey Discooooooo
2.HABANERO
3.Baby,Baby,Baby
4.SAITAMA DANCE MIRRORBALLERS!!!
5.electric girl
6.Don't Stop The Move,Keep On Dancing!!!
7.I Hate DISCOOOOOOO!!!!!!
8.urban disco
9.Love&DISCO
Love&DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
18:45~ ORANGE RANGE [VIVA! STAGE]
the telephonesが終わってからステージにたどり着くと、すでに演奏が始まっていたのだが、このキャパですら入りきらないんじゃないかというさすがの人気・動員力を見せていた、ORANGE RANGE。このフェスには初出演である。
春の屋内のフェス、しかも夜の時間という夏らしさを一切感じないような状況であっても「上海ハニー」「Special Summer Sale」と夏の曲が続くと一気に雰囲気は夏になる。それはどこまでも陽性なメンバーたちのキャラクターによるものも非常に大きいと思われるが、YAMATOはなぜか突発的に下ネタの単語を連発するという自由っぷり。
だが自由なのはキャラクターだけではなく、音楽性も本当に自由。新曲と紹介されて演奏された「Hopping」は打ち込みも使った、バンドの頭脳・NAOTOの趣向が強く出ている曲であるが、どっからどう聴いても変な曲である。それは次の
「NO SUSHI NO LIFE!」
という、タワレコの標語をもじったフレーズを大合唱させた「SUSHI食べたい feat.ソイソース」も間違いなく変な曲。ではあるのだが一度聴くと癖になってしまう中毒性はやはりORANGE RANGEだな、と思う。
しかもそんな変な曲が続いた後に超大ヒット曲にして名バラード「花」を演奏するという落差の大きさ。続く「以心電信」も含めて大合唱が巻き起こるのだが、リアルタイムでこれらの曲を聴いていた世代から、親子で来た年齢が高めの方、リリース時はまだ幼稚園児くらいだったんじゃないかという10代の人までもが全員で歌っている。それはメガヒット当時に「すぐ消える」と言われまくっていたこのバンドの楽曲が、時代を超えても残っていくような普遍性を備えていることの証明であり、200万枚以上CDが売れても、決して消費されるだけの存在ではなかったということでもある。
さらに「イケナイ太陽」で再び会場を常夏に変貌させると、ラストはこのバンドがロック色の強いこの日のこのステージでトリを任された理由を1曲で示すかのようなラウドな「キリキリマイ」。デビュー当時からこんな曲をすでに持っていたバンドであるが、その説得力は今になってさらに増している。それは震災後に被災地の100人規模の小さな会場にライブをしに行ったりという人間性と経験がしっかり音から滲み出ているからである。
すぐさま出てきたアンコールでは残ってくれた人たちの期待に応えるべく「お願い!セニョリータ」と最後にまた夏ソングを披露したのだが、これだけヒット曲をやってもまだまだ演奏していないヒット曲がたくさんあるというのはこのバンドの凄さを改めて実感せざるを得ない。
今やすっかりテレビに出たりすることも少なくなったが、それでもこんなにたくさんの人がライブを見にきているということは、このバンドにはテレビの中ではない生きる場所がちゃんとあったということである。無論、それはライブという場所である。まだまだ健在どころか、ライブはかつてよりはるかに素晴らしくなっている。
1.チラチラリズム
2.上海ハニー
3.Special Summer Sale
4.Hopping
5.SUSHI食べたい feat.ソイソース
6.花
7.以心電信
8.イケナイ太陽
9.キリキリマイ
encore
10.お願い!セニョリータ
SUSHI食べたい feat.ソイソース
https://youtu.be/epfPe2U_2Xk
19:35~ THE ORAL CIGARETTES [STAR STAGE]
the telephones復活という報を聞いた時、その日のメインステージのトリは間違いなくthe telephonesがやるんだろうと思っていた。しかしながらこの日トリを務めるのは、THE ORAL CIGARETTES。MUSICAと、このフェスとともに成長してきたバンドにこの日の締めを任せたのである。
かつてのような前口上はなくなり、中西がドラムセットを叩き始めると、「ONE'S AGAIN」からスタート。山中は早くもステージを左右に歩き回りながら歌うことでこの広い会場、しかもアリーナだけでなくスタンド席まで埋め尽くしたオーディエンスたちを掌握していく。
近年の中ではむしろ珍しい部類に入る、ストレートなギターロック曲「CATCH ME」を終えると、
「激しい曲だけじゃなく、暴れられるような曲だけじゃなく、ちゃんと俺たちの色を出して、それを刻み付けていきたい」
と言って、モニターに歌詞などの映像が映し出された「マナーモード」「接触」というあたりは緩急で言うならば「緩」の部分であるが、こうした曲の妖しい世界観は、ゴス・耽美と言ってもいいような、どちらかと言うとV系のバンドが持つ要素に近い。この日のJ-ROCK ANTHEMSで山中はL'Arc~en~Cielの「HONEY」を歌っていたが、そうしたタイプの曲に違和感を感じないのは山中がかつてコンプレックスだったと語っていた声の力が大きい。つまり、山中の声はオーラルの強い武器になっている。
すると一転して
「天変地異なんて起こるわけがない。
そんな気もしたあの日はどこへと
あぁ、いつかあの場所で歌えたらいいな
届くかな君にも 空はまだ青色だから」
と、被災地へ希望を向けた「ReI」で光を映し出す。このコントラストにはびっくりしたが、「ReI」はバンドがこの曲を軸にしたプロジェクトを展開するほどに大事にしてきた曲であるし、ギターの鈴木がマイクを通さずともずっと口ずさみながらギターを弾くほどに、単純にメロディの力が実に強い。これは間違いなくオーラルの新たなキラーチューン、それも明確な意志を宿した名曲である。
「今日、ニュース見てたんやけど、大谷翔平君ってすごいよな。帽子がもうメジャーの殿堂記念館に飾られてるんやって。羽生結弦君もそうやけど、年下ですごいストイックに頑張ってる人たちは本当にすごいなって。
さっき、UVERworldのTAKUYA∞君にも言われました、バンドマン温いよな、って。そんなん言われるとさぁ、俺すっごくムカつくんだよなぁ!」
と爆裂モードのスイッチが入ると、インディーズ時代の代表曲「Mr.ファントム」では鈴木とあきらかにあきらがラストサビ前で思いっきり交差するように大ジャンプをかまし、「狂乱Hey Kids!!」「BLACK MEMORY」というキラーチューンを続けて、熱狂に叩き込みながら本編を終えた。
アンコールで再びメンバーがステージに現われると、山中が
「やっぱり、ここでワンマンやりたいっすわ」
と、去年も口にしたものの、まだ叶っていない野望を改めて語り、もっと大きな存在になってこのフェスのトリに戻ってくる覚悟を告げながらも、
「どれだけ大きくなっても、絶対に初心は忘れない!」
とメジャーデビューシングル「起死回生STORY」をその所信表明として演奏し、初の大役を見事に果たした。
「まだトリには早い」という声を自らの手で封じ込めるかのように、曲のスケールとクオリティ、動員力、そしてトリとしての責任。その全てを今のオーラルが手にしていることを自分たちのライブでしっかりと証明してみせた。
山中は
「新時代を俺たちの手で作っていきたい!」
と口にした(それはかつてtelephonesが口にしていたが叶わなかったことでもある)が、果たしてこの日のライブはその新時代の幕開けの第一歩となるのだろうか。
1.ONE'S AGAIN
2.カンタンナコト
3.CATCH ME
4.マナーモード
5.接触
6.ReI
7.Mr.ファントム
8.狂乱Hey Kids!!
9.BLACK MEMORY
encore
10.起死回生STORY
ReI
https://youtu.be/gFYZ5PPJhCw
フェス自体について思うところも本当に多い、という意味ではなかなか音楽だけに集中できないフェスなのだが、それは翌日、最終日の文末にでも。
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