ARABAKI ROCK FEST.2018 @エコキャンプみちのく 4/28
- 2018/04/30
- 00:52
東北地方に春の訪れを告げる、春フェスの先駆け的な存在である、ARABAKI ROCK FEST.。のちにこの会場でAIR JAMやRADWIMPSのワンマンライブも行われた、宮城県の県南部に位置するエコキャンプみちのくでの開催。
MICHINOKU STAGE
HATAHATA STAGE
TSUGARU STAGE
ARAHABAKI STAGE
HANAGASA STAGE
BAN-ETSU STAGE
東北ライブハウス大作戦 STAGE
の7つという多くのステージを使用し、朝から深夜まで様々な世代、ジャンルのバンドから、プロレス団体や津軽三味線などの地元に根ざした出演者が名を連ねる。
11:00~ BRADIO [HATAHATA STAGE]
開演ギリギリに入場し、すぐさまHATAHATA STAGEへ。このステージのトップバッターにして、今年のこのフェスの始まりを鳴らすのは、ファンクミュージックをパーティーミュージックにする3人組、BRADIO。ドラムの田邊が脱退してからの体制のライブを見るのは初となる。
華々しいSEの後にサポートドラマーとともに、スーツに身を包んだ3人が登場。おなじみの挨拶的なキメの連発から、西武ライオンズの外崎選手の応援歌としても話題を呼んだ「Flyers」からスタートするのだが、まだ午前中とは思えないくらいに真行寺の声はパワフル。ほぼファルセットのみのサビ部分も実にキレイに出ている。間奏のギターソロ部分では真ん中のお立ち台に立ってギターを弾きまくる大山の足の間から真行寺が顔を出したりと、パーティーバンドっぷりを最初から遺憾無く発揮していく。
真行寺は歌いながら踊りまくり、ダンスに特化した最新シングル「きらめきDancin'」ではステージ上を走りまくり、袖にいるスタッフとハイタッチを交わすという運動量の多さ。それでいて息が全くきれないというあたりにこの男の体力と運動能力の高さ、それを維持する努力を感じさせる。
サビでの振り付けが楽しい「スパイシーマドンナ」では大山と酒井もステップを踏みながら演奏するという、サウンド的にも視覚的にも楽しさが広がっていくと、早くも
「俺たちのソウルトレイン、次が終着駅」
とラストの「Back To The Funk」では真行寺が振り付けを指南すると、客席全員がステップを踏んだりして踊りまくる。真行寺も歌詞に「アラバキ」という単語を入れると大歓声が上がり、演奏後の大きな拍手はこのバンドがこのフェス初出演にして完全に受け入れられたことを示していた。
BRADIOはファンクを自身の音楽の中心に置くことを選んだバンドである。こんなにも濃いファンクミュージックが晴天の空に似合うのは、朝イチとは思えないくらいに走り回ったり踊りまくったりしながら、パワフル過ぎるボーカルを響かせた、真行寺をはじめとするメンバーの音楽へのポジティブなパワーがあってこそ。
そのパワーはこのバンドがもっと大きなステージに立つための最大の要素になるはず。その未来はすでに見えてきている。
1.Flyers
2.Golden Liar
3.きらめきDancin'
4.スパイシーマドンナ
5.Back To The Funk
きらめきDancin'
https://youtu.be/9YQCvM1-jIc
12:00~ MONOEYES [MICHINOKU STAGE]
時間前にステージに登場したのは、開催地である宮城川崎町の町長である、小山修作氏。このフェスがこの場所で開催していることへの感謝を語ったかと思ったら、
「次に出てくるバンドも「You are not alone.Get up」と歌ってます!みなさん、次のMONOEYESに全てをぶつけてください!」
と、MONOEYESへ熱烈なラブコール。これは細美武士が毎年のようにこのフェスに出てくれているという関係性から生まれたものなんだろうか。
その後におなじみスターウォーズのSEが流れるとメンバーが登場し、のっけから楽器を抱えてジャンプしまくる「Free Throw」からスタートすると、近年はあまりフェスでは演奏されていなかった「Cold Reaction」。この辺りはメインステージで持ち時間ということもあるのだろうが、素直に嬉しいところ。
「普段お前らも色々なことと戦ってるだろうけど、今日1日は自由にな。嘘を吐くなよ。自分自身に!」
と細美武士が挨拶し、「When I Was A King」でその場をグルグル回りながらベースを弾いていたスコットがメインボーカルを務める「Roxette」で、雲ひとつない快晴、汗をかいてしまうような暑さという気候もあって、一気に夏フェスに来ているかのような感覚に。
町長が歌詞を引用したことで自ずとこの日のテーマソングのような存在になった「Get Up」(細美も「俺は修作を気に入った」と町長を讃えていた)を演奏すると、
「今日7時起きだから、昨日はホテルの近くのコンビニに行って水だけ買おうとしたんだけど、エレベーターを出たらTOSHI-LOWがいて(笑)
「一杯行く?」って言われたから「お、おう」って言って飲みに行ってきて。今度こそ水を買ってきて寝ようと思ったら、またTOSHI-LOWに会って(笑)
「もう一杯行く?」っていうから、コンビニで缶ビールを買ってきて飲んでました(笑)
今日はもう1バンド(the HIATUS)あるけど、それまでに正気を保っていられる気がしません(笑)」
と言いながら早くも缶ビールを飲むのも仕方ないくらいの気候。そして「Two Little Fishes」ではそのTOSHI-LOWがステージに登場し、スコットの隣でずっとベースを弾く姿を凝視しながら、サビではスコットと肩を組んでコーラスするという、この地だからこその雰囲気がそうさせるのか、というこの日最初の奇跡が。TOSHI-LOWはだいぶ前日の酒の影響を感じさせたけれども、細美武士とTOSHI-LOWの2人のことであるこの曲を2人で歌うのを目の前で見れているというのは両者のファンにとってはこの上なく幸せなものだった。
そして「Run Run」で再び疾走すると、「明日公園で」でベースを銃に見立てて戸高にぶっ放していたスコットが最後も決める「Borders & Walls」で爽快な締め。
MONOEYESはthe HIATUSに比べると巨大なステージが似合うバンドではないけれど、このフェスにおいてはこのメインステージで見ていたいと思わせるようなライブだった。それはこのステージが4大フェスのメインステージほど大きいものではなく、結果として自分がこのステージで最初にライブを見たのがこのバンドになったからかもしれないが。
1.Free Throw
2.Cold Reaction
3.My Instant Song
4.When I Was A King
5.Roxette
6.Get Up
7.Two Little Fishes w/ TOSHI-LOW
8.Run Run
9.明日公園で
10.Borders & Walls
Get Up
https://youtu.be/tMVQ7trVuGM
13:00~ Dizzy Sunfist [ARAHABAKI STAGE]
最新アルバム「DREAMS NEVER END」がヒットし、一躍メロディックパンク界の急先鋒的な存在になった、Dizzy Sunfist。パンク、ラウド系のバンドが居並ぶARAHABAKI STAGEにて、このフェスに初出演。
アルバムのボーナストラック的に、明らかにSE用に作られたであろう「Let's Go Dizzy」が流れる中、メンバーが登場すると、あやぺた(ボーカル&ギター)の髪色が鮮やかなピンクとパープルの中間みたいな色で染め抜かれているのが目を惹く。
「Life Is A Suspense」「No Answer」と新作からの曲を伸びやかなメロディと、あやぺたといやま(ベース)の美しいハーモニーを乗せたツービートのパンクサウンドで響かせると、早くもダイバーが続出。まるで晴天の下のライブハウスであるかのよう。
バンドの代名詞的な曲である「Dizzy Beat」、初期曲をフェスで演奏する、演奏できるという姿勢が常にライブをして生きていることを証明する「Someday」と、このバンドが他のパンクバンドよりも頭一つ抜け出せたのは、メンバーが女性だからということではなく、ひたすらに良いメロディという、メロディックパンクの「メロディック」の部分を研ぎ澄ますことができるバンドだから。決して斬新なことをしなくても、そこさえ優れていれば、必ず響く人がたくさんいるということを身を持って示している。
あやぺたのギャル的な見た目からはかけ離れた、計算や戦略など一切ない、常に100%で思っていることを言う(滑舌は良くない)MCではこのフェスにこうして初めて出演することができた喜びを爆発させ、最新アルバムのリード曲である「Summer Never Ends」でもう完全にここは夏フェス…といきたいところだったのだが、曲中にいきなり全く外音が出なくなるというアクシデントが発生し、客席にかろうじて聴こえるのはドラムの生音だけという状態に。
そんな状況でもバンドは演奏をやめなかったが、全く音が聴こえなくてもガッカリすることが一切なかったのは、観客が
「オイ!オイ!」
とリズムに合わせて叫んだり、手拍子をするなどしてバンドを盛り立てていたから。バンドの全力な姿勢、「夢は死なへん!」というスローガンは、バンドの音楽を聴いている人たちにも確実に根付いている。だからこのステージにいた全員はこの逆境をも思いっきり楽しんでいた。
とはいえ、この後の曲もそのまま外音が出ない状態で演奏するわけにもいかず、復旧作業の間にMCで間をつなぐことになるのだが、そんな時であってもまったりすることはできず、大きな声を張り上げるあやぺた。(ボーカルマイクだけはすぐに復旧した)
そんなわけで今までやったことのないウェーブを客席でやってみせたりしながら、
「初めてでこんなアクシデントあったら一生忘れられへん!」
とあやぺたは言っていたが、アクシデントが起こった後も演奏をやめないこのバンドの姿、それを支える観客の絆は、忘れようとしても一生忘れられそうにない。
1.Life Is A Suspense
2.No Answer
3.Dizzy Beat
4.Someday
5.Summer Never Ends
6.Joking
7.Shooting star
8.The Dream Is Not Dead
Summer Never Ends
https://youtu.be/KLUS7hi1Ahk
13:30~ 04 Limited Sazabys [MICHINOKU STAGE]
前日にミュージックステーションに初出演。その後にすぐさまこのフェスに向かうという強行スケジュールでの出演となった、04 Limited Sazabys。その勢いを示すかのように、2年連続出演にして、今年はMICHINOKU STAGEに出演。
最近おなじみのオリジナルSEでこの日も元気良く登場。疲れとかを一切見せないあたりは本当にこのバンドがどんな状況でも音楽ができること、自分たちの音楽を聴いてもらえることに喜びを感じていることがよくわかる。
GENが思いっきり腕を振り下ろしての
「2年目のアラバキ、MICHINOKUステージは!」
と歌詞を変えた「monolith」からスタートすると、「fiction」「escape」というハードな音像の曲でひたすら攻めまくる。疲れを感じないどころか、むしろ日々音を鳴らし続けていることで、さらに力強くなっているようにすら感じる。
RYU-TAの煽りからの「Chicken race」で踊らせると、最新シングル「My HERO」も披露。自身らにとって憧れの存在であるバンドたちと共演し、ヒーローの姿を間近で見てきたからこそのこの曲は、フォーリミ自身がキッズたちのヒーロー的な存在になってきていることすらも感じさせる。
「あの頃の気持ちを思い出せ!」
とショートチューン「Remember」では激しい左回りのサークルが客席に発生し、ステージ両サイドのモニターがしっかりその様子を捉えていた。
しかし「My Hero」などを聴いていても、わざわざ思い出すこともないくらいに、フォーリミのメンバーたちはあの頃、まだ誰にも知られていなかった頃の悔しさを全く忘れていないように思うし、それがバンドにとっての最大の原動力になっている。
「東北なのに、俺たちのやっている名古屋のYON FESより暑い!」
とこの日の気候の良さ、フェス日和っぷりを改めて口にすると、ペトロールズを見たかったが自分たちと被っていて見れない、とこのフェスのラインナップの幅広さを称えながら、自身たちが幅広い音楽にアンテナを張りながら常に刺激を受けていることを語り、フェスでは最近あまりやっていなかった「nem…」で眠気から目覚めさせると、
「行けたらいいな 君の街まで 大した距離でもないからね」
という歌い出しの後に、
「やっぱりちょっと遠かったけど~(笑)」
と付け加えた、後半で一気に急加速する「me?」と、持ち時間が長いメインステージだからこその選曲も。
真昼間でも流星群が降り注ぐ「midnight cruising」から、KOUHEIのドラマーとして、バンマスとしての存在感が一層際立つ「Squall」は本当にもはやこのバンドどころか、現日本ロックシーンきっての名曲と言っていいくらいの曲である。
そしてラストは
「日本のロックシーンに光が射しますように!東北に光が射しますように!」
と、ただライブをしにきたんじゃなく、この場所に光を与えるために来たんだ、と「swim」を演奏。そうやって震災後の東北に向き合ってきたバンドたちの姿をこのバンドは見てきた。だからこそ、ミュージックステーション→この日のフェス→横浜アリーナワンマンという、普通ならあり得ない金土日のスケジュールであってもこうしてこのフェスに出演している。そして4人で音を出せば本当にカッコいいバンドだと思わせてくれる。
その二日間でテレビにもフェスにも出た。でもフォーリミはライブハウスでもフェスでもテレビですらも全く変わることがない。だからきっと、次の日の横浜アリーナをはじめとしたアリーナツアーでもなにも変わらないのであろう。
MONOEYES→Dizzy Sunfist→フォーリミという流れは、実にパンク色の強いものである。大ベテランから若手、ラウドからフォークまで、本当に様々な世代、音楽性のアーティストが集うこのフェスに、こうしてパンクバンドが居ならび、観客がガンガンダイブしている。
今、大きな野外フェスではダイブ禁止というところも多い。それは仕方がない。そうせざるを得ない理由や、前例があったのは間違いないのだから。だから基本的に自分はそのフェスにルールがあるのならばそれを支持するし、文句は言わないんだけど、こんなに気持ちいい空気の中でパンクバンドがライブをしていて、観客が笑顔で転がっていって、セキュリティの人たちも殺伐としておらず、むしろ笑顔で受け止めているような姿を見ると、本当はどんな場所でもこういう景色を見れるようでいて欲しいとも思う。それは本当に難しいことだが、このフェスがその景色を守ってきた上でこうしてパンクバンドをたくさん呼んでいるという意思があるのならば、そこだけはずっと変わらないでいて欲しい。
1.monolith
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.My HERO
6.Remember
7.nem…
8.me?
9.midnight cruising
10.Squall
11.swim
My HERO
https://youtu.be/5WDVtyb3YLg
初めて来るフェスだと、ステージ間の距離感というものが、実際に歩いてみないとわからない。なので公式サイトに「30分かかる」と書いてあった、MICHINOKUからBAN-ETSUを、フォーリミ→KEYTALKの5分間の時間差で詰めようとしたのだが、さすがに全く間に合わず、KEYTALKは後半からしか見れず。
しかし「Summer Venus」「太陽系リフレイン」という曲をこの気候で連発されたら、気分はもう完全に夏フェスだ。最後にビールを一気飲みした巨匠は本当に気持ち良さそうだった。
15:35~ The Birthday [BAN-ETSU STAGE]
そんなMICHINOKUからだいぶ離れた、第2のメインステージ的なキャパを誇るBAN-ETSU STAGEに登場するのは、The Birthday。
この暑い気候の中でもいつもと同じようにスーツ姿で4人が登場すると、
「愛の帝王!愛の手を!合いの手を!」
というチバの言葉遊びが面白い「LOVE GOD HAND」からスタートするのだが、チバがいきなり歌詞を吹っ飛ばすフレーズも。チバは苦笑いだが、メンバーは一切動じることがないのはさすがだ。
どんどん削ぎ落とされたロックンロールになることによって、逆にチバ特有のメロディの良さが際立つ「SAKURA」、チバがギターを置き、ハンドマイクを持って踊りながら歌う「24時」「LOVE SHOT」と、雲ひとつない青空の下というシチュエーションがあまり似合わない、むしろ真夜中の歌舞伎町とかで聴く方が似合いそうな濃いロックンロールを連発するも、
「野外イベントなんていうのは晴れたらそれだけで成功みたいなもんなんだよ。だから今日は大成功!」
とこの天気に触れた新たなチバ語録を残し、未発表の新曲を披露。これはシンプルなロックンロール曲で、その前のハンドマイク曲の濃さに比べるとシングル曲として世に出てもおかしくないくらい。
「とんでもない歌が 鳴り響く予感がする
そんな朝が来て俺」
という歌い出しのフレーズをチバが他の楽器の音を排して歌うどころか、観客に合唱すらさせると、サビでも様々なフレーズを観客に合唱させる。そこで大合唱となる姿を見て実に楽しそうなチバ。The Birthday始動直後はこんな姿は全く想像できなかったが、ロックンロールはみんなで歌える音楽であるということを、もう50歳のメンバーが中心であるバンドが改めて教えてくれる。
それを象徴するかのようにラストの「声」ではクハラだけではなく、ヒライハルキとフジイケンジもコーラスに加わり、演奏の厚みだけではなく、文字通りに声の厚みも増していった。その姿からは、もう完全に大ベテランと言ってもいいようなバンドであっても、いななお進化を続けていく姿勢を感じさせた。
1.LOVE GOD HAND
2.SAKURA
3.1977
4.24時
5.LOVE SHOT
6.新曲
7.くそったれの世界
8.声
くそったれの世界
https://youtu.be/8YDs2LGOl6M
16:30~ yonige [HANAGASA STAGE]
唯一のテント型ステージであるHANAGASA STAGE。このフェス初出演にして始まる前からすでにそのテントからはみ出すくらいの人が詰めかけたのは、yonige。
おなじみThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEが流れると、牛丸ありさとごっきんの2人がサポートドラマーの堀江(DREADNOTE)とともに登場。ドラムセットに集まった3人が気合いを入れると、「ワンルーム」の轟音ギターがテントの中に響き渡っていく。
基本的には内容は先月のツタロックの時とは変わらないものだが、
ごっきん「数々の打ち上げで荒く吐いてた我々にとっては、荒吐っていう文字を見るだけでドキドキする(笑)誰やこんな地名つけたやつ!(笑)」
牛丸「七尾旅人さんと布袋寅泰さんが見たかったのに、この時間に丸かぶりしていて全部見れない(笑)っていうことはどういうことかというと、やるしかないっていうことや!」
とこのフェスだからこそのエピソードを話しながら気合いを入れていく。
しかしながらそれが激しいサウンドの曲のエモさに転換されていくのではなく、「センチメンタルシスター」や「しがないふたり」という聴かせるタイプの曲の深さになっていく。
それはこのステージが構造上、おそらく前の方にいないと音がしっかり聴こえない(だからこそテントからはみ出している部分の人には音響面は物足りなく感じる)という部分でそうした曲の方が合っていたというのもあるかもしれないが、もはやフェスでは「さよならアイデンティティー」や「アボカド」というノイジーなギターサウンドの曲をやらずとも成り立つくらいのレベルになってきている。だからこそこのステージだったのはちょっと惜しいが、ここまで人が押し寄せる存在になるということをオファー時点では予期していなかったのだろうか。
1.ワンルーム
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.センチメンタルシスター
5.しがないふたり
6.悲しみはいつもの中
7.さよならプリズナー
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
17:00~ the HIATUS [BAN-ETSU STAGE]
この日すでにMONOEYESでのライブを終えている細美武士。今度は夕方のBAN-ETSU STAGEにthe HIATUSとして出演。
おなじみのトライバルなSEでメンバー5人が登場すると、伊澤一葉の奏でるピアノの音が美しい「Clone」からスタート。MONOEYESのライブ中に
「この後正気を保っていられるかわからない(笑)」
と語っていた細美だが、そこまで酔っ払っているようには見えない(確かに飲んではいるが)ような声の伸び具合。この曲はサビのボーカルがしっかり出なかったらかなり物足りなく感じてしまいそうな曲ではあるが、今までそう感じたことがないのは細美の歌の上手さはもちろん、
「毎日飲み過ぎて耐性がついてきたのかもしれない」
というくらいに飲んでも体に影響がなくなってきたからかもしれない。
なので飲んでいるからこそのハイテンションさに振り切れることなく、非常に高い集中力はいつもとなんら変わらないように見える。だからこそこの日は「The Flare」のように各楽器の音が激しくぶつかり合うような曲よりも、「Geranium」や「Unhurt」のように繊細に音を積み上げて行くような曲を多くしたのは正解だと言える。何よりも、
「この時間にこの場所でライブができることを本当に幸せに思っています。この場所でどうしてもやりたかった曲」
と言って披露された、普段はワンマンですら全く演奏されることのない「Sunset Off The Coastline」が本当に素晴らしかった。ステージの後ろには夕日になって沈みつつある太陽。それを抱えるようにして演奏するメンバーたちと歌う細美武士。その姿が普段よりも解放されているように見えたのは、やはり細美がずっと支援を行い、オフの日に足繁く復興活動に足を運んできた東北の地だからというのが大きいのかもしれない。
雲ひとつない空が青を濃くしていく中に溶け合っていくかのような「Radio」、切実な叫びが響き渡る「Insomnia」と細美武士のボーカルの素晴らしさを堪能できる両極端な2曲を演奏すると、「紺碧の夜に」でダイバーが大量に発生し、細美も実に嬉しそうな表情を浮かべている。
そして最後は沈みゆく太陽に捧げるかのような「Sunburn」…かと思いきや、明らかにステージ上のメンバーは演奏が始まると戸惑いを浮かべ(伊澤が全くピアノを弾いていなかった)、
「あ、できないか。じゃあ「Sunburn」はまた今度。また必ず来るから。仲間の歌をやります」
とこの場所での再会を約束し、「Silver Birch」で大団円を迎えたのだった。
また、ライブ中にMCでウエノコウジが50歳を迎えたことに対し、
「これからも精進しながらロック道を歩いていきたいと思っていますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
と信じられないくらい低姿勢で50歳以降の決意を語っていた。その姿は、いずれそのくらいの歳になっても、我々もウエノコウジが歩いて行った道の上を歩いていきたいと思わせてくれた。見ている側だっていつまでもロック道を歩いていきたいのである。
1.Clone
2.Geranium
3.The Flare
4.Unhurt
5.Sunset Off The Coastline
6.Radio
7.Insomnia
8.紺碧の夜に
9.Silver Birch
Clone
https://youtu.be/h9aLBoHFeOQ
18:30~ 忘れらんねえよ柴田 with タナカヒロキ(LEGO BIG MORL) [Extra Stage @MOVE LOUNGE]
HANAGASA STAGEエリアの飲食ブースにある喫煙所の中にある、実に簡易的な、弾き語りくらいしかできなそうな小さなステージ。陽も落ちてすっかり寒くなったそのステージにひっそりと登場したのは、忘れらんねえよのボーカルの柴田隆浩と、忘れらんねえよのサポートギターであるLEGO BIG MORLのタナカヒロキ。
出番の30分前からセッティングに登場すると、
「あ!菅田将暉がいる!……いるわけねーだろ!あっさり振り返りやがって!」
と観客を笑わせながら、なぜかMISIAの「Everything」をボーカルチェックで歌い上げたり、トリビュートアルバムに参加したチャットモンチーの「ハナノユメ」を歌ったりと、やりたい放題しながら、最後には「忘れらんねえよ」をリハにもかかわらず1曲丸々歌うというサービスっぷり。
本番では忘れらんねえよの近年のライブではおなじみの、[ALEXANDROS]「ワタリドリ」がSEとして流れる中、観客に支えられて「ワタリドリ」のようにステージに降り立つ。
「今日は、柴田メンバーと、タナカメンバー、それからみなさんメンバーでお送りします!」
と、問題を起こした某アイドルグループの男が「○○メンバー」と呼ばれていたのを真似たタイムリーなMCで笑わせながら、「バンドやろうぜ」「この高鳴りをなんと呼ぶ」という忘れらんねえよの名曲を、柴田のエレキギターとタナカのアコギというギターのみの削ぎ落とされた形で演奏。柴田はなぜかめちゃくちゃ声がよく出ている。
柴田「本当はバンドで出たかったんだけどいろいろあって、今は出れない状態で…(観客笑)
そうそう!メンバー脱退なんかそうやって笑ってくれればいいんですよ!
でもヒロキ君は前にLEGOでアラバキに出たのは9年前?本人も出たことを覚えてないっていう(笑)」
タナカ「いやいや!覚えてるから!LEGOが初めて出たフェスがここだもん。でも今回はこんなコミックバンドじゃなくて、ちゃんとしたバンドで出たかったなぁ(笑)」
と互いのアラバキエピソードで笑わせたあと、柴田が
「新曲をやります。めちゃくちゃ自信がある曲です。絶対売れる!」
と言って柴田が歌い始めたのは、まさかの華原朋美のヒット曲「I'm Proud」。そりゃあ売れるだろう、っていうかそもそも実際に売れた曲である。新曲でもなんでもないが。リハでのMISIAといい、柴田は女性ボーカルの曲を歌うのにハマっているのだろうか。
「どうせこのステージに集まっている奴らは全員処女か童貞だ!(笑)
そんな寂しいやつらにピッタリの、恋愛必勝法的なフレーズが入っている曲を今日は持ってきた!もっと売れてもいい曲だと思うんだけどな~」
と「犬にしてくれ」で観客をいじると、名曲「夜間飛行」のメロディにプロトタイプ的な歌詞、しかもかなりの下ネタなやつ(「夜間飛行」がリリースされる前はこの歌詞だった)が乗る「ハッピーバースデーとはいえ俺は誕生会に呼ばれていない」というある意味ではレアな選曲はこの編成だからこそだったんだろうか。
そしてラストはやはり「忘れらんねえよ」を観客がスマホライトを掲げた中で大合唱するのだが、ワンコーラス終わった後にみんなスマホを降ろしたあと、男性が1人だけスマホを掲げると、
「もういい。もうやらなくて大丈夫だ(笑)」
と言って制して爆笑を巻き起こす。そして本来なら間奏部分あたりで観客に運ばれるようにして客席中央まで行ってビールを一気飲みしようとしていたのだろうが、時間の関係でそれができず、曲が終わってから普通にステージを降りて客席を歩いてビールをゲットし一気飲み。
「みなさんメンバー!タナカメンバー!柴田メンバーでお送りしました!」
と最後まで山口達也の事件をいじってから、普通に客席からどこかへ消えていった。
基本的には普段の忘れらんねえよのライブを歌とギターだけという極限まで削ぎ落とされた形で演奏するというものだったが、それによってわかるのは、このバンドの持つ面白さではなく、むしろメロディの良さ。それさえ変わらなければ、忘れらんねえよは柴田だけになっても絶対に大丈夫だし、本格的にその部分で勝負をしにいく予感もする。
1.バンドやろうぜ
2.この高鳴りをなんと呼ぶ
3.I'm Proud (華原朋美のカバー)
4.犬にしてくれ
5.ハッピーバースデーとはいえ俺は誕生会に呼ばれていない
6.忘れらんねえよ
バンドやろうぜ
https://youtu.be/AEsRLAHfS0k
19:30~ ストレイテナー THE ROCK STEADY'S 20th ANNIVERSARY CLUB BAND [MICHINOKU STAGE]
ストレイテナーである。と書くと実に普通、しかも「メインステージのトリがテナー?」と近年のフェスにおける動員力を知っている人は思ってしまうかもしれないが、この日のストレイテナーのライブは、これぞアラバキの醍醐味!というような、トリビュートアルバムに参加した面々を中心としたゲストが集まった、特別なものなのである。
とはいえ、持ち時間90分という破格の長さなので、まずは4人のみで登場し、いきなり「ROCKSTEADY」「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」というバンドきっての代表曲にして名曲の連発という出し惜しみのなさ。
ひなっちとナカヤマシンペイのリズム隊は冒頭からいつにも増してみなぎっていてこのライブへの気合いを感じさせるが、ホリエはこの後の展開を考えているのかやや緊張感を感じさせる。大山純はいつものように飄々としているが。
「2年前に出た時は天気が悪くてすごい寒くて。でも今日は本当に最高の天気で、月が本当にキレイに見える」
というホリエのロマンチックさを際立てる「彩雲」、最新曲であり、ライブ初披露となった「The Future Is Mine」の
「過去をさあ見に行こう 過去も変えていく未来を
いつかきっとわかるんだ その未来が今なんだって」
という歌詞が20年続けてきたからこそ歌える説得力に満ちている。
そしてここからはいよいよゲストが登場。まずは最初からドラムセットが用意されていたことで期待が高まっていた、この日はthe HIATUSで出演した柏倉隆史。ホリエがキーボードを弾き、ツインドラムという編成で「Lightning」を演奏するのだが、全く直線的ではなく、むしろ点描画を描くように複雑かつ手数の多いドラムを叩く柏倉によって、曲がテナーというよりもFULLARMORかのようなポストロック色の強いものに生まれ変わっている。ドラムが一台加わるだけでここまで曲そのものを変えてしまう柏倉は本当にすごいドラマーだと思わされるし、細美武士が「the HIATUSの曲の骨格は俺と隆史で作る」と言っていたのも納得である。
柏倉と入れ替わるように次に登場したのは、今回のゲスト陣の紅一点、majiko。
「ストレイテナーは女性アーティストに人気がない(笑)」
とホリエが自虐しながら、トリビュートアルバムでカバーしていた「冬の太陽」をトリビュートバージョンの、しっとりと聴かせるアレンジで演奏。ひなっちは椅子に座ってベースを弾くというのも普段は見れない体制であるが、majikoは歌が上手いだけではなく、曲の空気を変えることができる声を持っているボーカリストである。ロックシーンとは違う場所にいたにもかかわらず、ホリエがプロデュースを買って出たのも納得である。
「ここからはブチ上げて行こうぜ!」
と言うと、majikoに変わってステージに元気良く登場したのは、go!go!vanillasの牧達弥。ということは演奏されるのはバニラズがカバーした「KILLER TUNE」になるわけだが、バンドが演奏したのは、原曲とはかけ離れたカントリーっぽいアレンジ。つまりはバニラズバージョンをテナーのメンバーが演奏しているのである。トリビュートされたバンドがトリビュートバージョンの演奏をマスターしているというのはなかなか聴いたことがないし、そうしたバンドの中にないような要素のアレンジをあっさり演奏できるストレイテナーというバンドの凄さを改めて思い知る。
しかもそのバニラズバージョンで終わりではなく、オリジナルバージョンにサラッと繋いで見せるのだから、原曲バージョンを聴きたいファンも納得せざるを得ない。しかも組曲であるかのように、ホリエがプロデュースしたバニラズ「おはようカルチャー」すらも演奏してしまう器用さ。テナーで演奏面で語られるのはひたすらひなっちのベースであるが、バンド全体の器用さも相当なものである。
続いては翌日にバンドとしての出演を控える、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎。今度は「Melodic Storm」をテナーのオリジナルバージョンで演奏するというものだったが、それなのにいつもと全く違うように聴こえるのは、やはり卓郎の声によるもの。卓郎はめちゃくちゃ歌が上手いというわけではないが、その歌声で曲をガラッと変えることができるボーカリストである。つまり、9mmの核はやはり滝のギター及び作る曲だと思いがちだが、卓郎の歌声もまた9mmのもう一つの核だったのだ。だからこそこの日の「Melodic Storm」はいつものテナーのものとは全く違って聴こえた。
「次はthe pillows、今日はTHE PREDETORSで出演した…」
とホリエが紹介するも、
「違う違う!」
とシンペイに指摘され、
「あ!!次はTHE BACK HORNの…」
と、THE BACK HORNの山田将司を完全に忘れていた様子。なので将司はホリエのことを指差しながら登場し、
「飛ばさないでよ~(笑)
でもこれからも一緒に共鳴して、シンクロしていきましょう!」
と自身たちのバンドのテーマと完全に一致した選曲である「シンクロ」。
THE BACK HORNと言えば「コバルトブルー」などの激しい曲が多いバンドというイメージもあるし、そうしたタイプのテナーの曲をそうして激しいアレンジにすることもできたとは思うのだが、あえてこの曲を選んだのはそうしたTHE BACK HORNの掲げるテーマがこの曲そのものだったからであるし、THE BACK HORNは「世界中に花束を」や「未来」「美しい名前」、最近でも「あなたが待ってる」など、テナー同様に名バラードをいくつも持っているバンドだからでもある。
そして先に紹介されかけたthe pillows、この日はTHE PREDETORSとして出演した、山中さわおが登場。
「あれはないよな~。山田くんが良い人で良かったな(笑)」
とビール片手にホリエにツッコミを入れ、ホリエが「ビールの歌」と紹介した「Farewell Dear Deadman」を実に滑らかな発音で歌う。山中はさすがベテラン、バンドサイドの演奏に自らを合わせるというような歌い方をしていたようにも見える。
しかし山中は1曲終わっても帰らず、
「もう1曲リクエストされました。15年の付き合いになるさわおさんだけど、まさに15年前に俺たちストレイテナーを世に押し上げてくれた曲!」
と言って演奏されたのは、かつてMr.ChildrenやBUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENが参加し、the pillowsの存在をより広いところに知らしめたトリビュートアルバム「SYNCHRONIZED ROCKERS」に収録され、このタイミングでついにライブ初披露となったthe pillowsのカバー「RUNNERS HIGH」。テナーバージョンのさらに疾走感を増したアレンジが貴重すぎるものを見ているテンションの昂りをさらに押し上げていった。
そしてホリエがギターを置き、緊張した面持ちでステージに招き入れたのは、この日このステージに出演した布袋寅泰。トレードマークの幾何学模様のペイントが施されたギターを持って登場すると、
「布袋さんとストレイテナーのなんの曲をやるんだ、と思ってる人もいるでしょうけど…やりませんよ!(笑)」
と言って演奏されたのは、なんとかつて布袋寅泰が氷室京介らと組んでいた、伝説のバンドBOOWYの「B・BLUE」と「Dreamin'」。布袋寅泰はおなじみの左足を上げ下げしながらというギターの弾き方をし、ホリエはどこか氷室京介を意識しているかのような歌い方をしていた。
バニラズの牧やmajikoがテナーに憧れていたように、かつて子供の頃のホリエらテナーのメンバーもBOOWYに影響を受けてきた。そうやって音楽は次の世代に継承されていくし、ひなっちが布袋寅泰とセッションをしたのがこの日に繋がったように、音楽には憧れの人たちと同じステージに立てるようになる力がある。
そしてゲスト勢のラストを飾るのはこれまでにテナーのステージに何度か登場している、タブゾンビと田中邦和のブラスコンビ。音源でもこの2人を招いて録音された「From Noon Till Dawn」で
「今だったら言える、アラバキ愛してるー!」
と歌詞を変えて叫んでこの日最大の爆発力を見せると、
「本当に大事な曲」
と紹介された「MARCH」をブラスを加えた荘厳なアレンジで演奏。それはどこかこの東北への祈りを込めているかのようにも見えた。
演奏が終わると最後にはゲスト勢がステージに全員集合。
「人数が多過ぎるから、並ぶとグダグダになる(笑)」
ということで並んで手を繋ぐというようなことはなかったが、改めてこの面々を見ると圧巻だし、テナーはこんなにもすごいアーティストたちに愛されている。そしてそんなすごいアーティストたちが加わっても、あくまで主役はテナーでいることができる。きっと普段見ているよりも、テナーはずっとすごいバンドだ。
そんな、テナーを愛してきた人たちの想いによって作られた、言葉にならない想いが奏でた、一夜限りの宴だった。
1.ROCKSTEADY
2.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
3.彩雲
4.The Future Is Now
5.Lightning w/ 柏倉隆史
6.冬の太陽 w/ majiko
7.KILLER TUNE ~ おはようカルチャー w/ 牧達弥
8.Melodic Storm w/ 菅原卓郎
9.シンクロ w/ 山田将司
10.Farewell Dear Deadman w/ 山中さわお
11.RUNNERS HIGH w/ 山中さわお
12.B・BLUE w/ 布袋寅泰
13.Dreamin' w/ 布袋寅泰
14.From Noon Till Dawn w/ タブゾンビ、田中邦和
15.MARCH w/ タブゾンビ、田中邦和
The Future Is Now
https://youtu.be/uFBgZ5RhdHE
自分はこの日初めてアラバキに足を踏み入れた。初めて行くフェスだと、どうしても普段から行っているようなライブが基準になるため、「開場時間もうちょっと早めればいいのに」とか「MICHINOKUとBAN-ETSU以外の持ち時間が短いな~」とか思うことはある。
でも楽しかったのは間違いないし、テナー以外にもこのフェスじゃなきゃ見れないようなスペシャルアクトもたくさんあっただろう。何より、こうして終わって帰ってくると、終わってしまったな~というアラバキロスとでもいうような寂しい気持ちがある。
だけど今回で、こうやって行けるっていうのがわかった。(かなり帰りはキツかったけど)
だからこそ、きっとまたいつか来るはず。というより、テナーみたいに好きなバンドがスペシャルライブみたいなのをやるんなら絶対見に来ると思う。なので、アラバキ、またいつか!
Next→ 4/29 The Mirraz @新宿MARZ


MICHINOKU STAGE
HATAHATA STAGE
TSUGARU STAGE
ARAHABAKI STAGE
HANAGASA STAGE
BAN-ETSU STAGE
東北ライブハウス大作戦 STAGE
の7つという多くのステージを使用し、朝から深夜まで様々な世代、ジャンルのバンドから、プロレス団体や津軽三味線などの地元に根ざした出演者が名を連ねる。
11:00~ BRADIO [HATAHATA STAGE]
開演ギリギリに入場し、すぐさまHATAHATA STAGEへ。このステージのトップバッターにして、今年のこのフェスの始まりを鳴らすのは、ファンクミュージックをパーティーミュージックにする3人組、BRADIO。ドラムの田邊が脱退してからの体制のライブを見るのは初となる。
華々しいSEの後にサポートドラマーとともに、スーツに身を包んだ3人が登場。おなじみの挨拶的なキメの連発から、西武ライオンズの外崎選手の応援歌としても話題を呼んだ「Flyers」からスタートするのだが、まだ午前中とは思えないくらいに真行寺の声はパワフル。ほぼファルセットのみのサビ部分も実にキレイに出ている。間奏のギターソロ部分では真ん中のお立ち台に立ってギターを弾きまくる大山の足の間から真行寺が顔を出したりと、パーティーバンドっぷりを最初から遺憾無く発揮していく。
真行寺は歌いながら踊りまくり、ダンスに特化した最新シングル「きらめきDancin'」ではステージ上を走りまくり、袖にいるスタッフとハイタッチを交わすという運動量の多さ。それでいて息が全くきれないというあたりにこの男の体力と運動能力の高さ、それを維持する努力を感じさせる。
サビでの振り付けが楽しい「スパイシーマドンナ」では大山と酒井もステップを踏みながら演奏するという、サウンド的にも視覚的にも楽しさが広がっていくと、早くも
「俺たちのソウルトレイン、次が終着駅」
とラストの「Back To The Funk」では真行寺が振り付けを指南すると、客席全員がステップを踏んだりして踊りまくる。真行寺も歌詞に「アラバキ」という単語を入れると大歓声が上がり、演奏後の大きな拍手はこのバンドがこのフェス初出演にして完全に受け入れられたことを示していた。
BRADIOはファンクを自身の音楽の中心に置くことを選んだバンドである。こんなにも濃いファンクミュージックが晴天の空に似合うのは、朝イチとは思えないくらいに走り回ったり踊りまくったりしながら、パワフル過ぎるボーカルを響かせた、真行寺をはじめとするメンバーの音楽へのポジティブなパワーがあってこそ。
そのパワーはこのバンドがもっと大きなステージに立つための最大の要素になるはず。その未来はすでに見えてきている。
1.Flyers
2.Golden Liar
3.きらめきDancin'
4.スパイシーマドンナ
5.Back To The Funk
きらめきDancin'
https://youtu.be/9YQCvM1-jIc
12:00~ MONOEYES [MICHINOKU STAGE]
時間前にステージに登場したのは、開催地である宮城川崎町の町長である、小山修作氏。このフェスがこの場所で開催していることへの感謝を語ったかと思ったら、
「次に出てくるバンドも「You are not alone.Get up」と歌ってます!みなさん、次のMONOEYESに全てをぶつけてください!」
と、MONOEYESへ熱烈なラブコール。これは細美武士が毎年のようにこのフェスに出てくれているという関係性から生まれたものなんだろうか。
その後におなじみスターウォーズのSEが流れるとメンバーが登場し、のっけから楽器を抱えてジャンプしまくる「Free Throw」からスタートすると、近年はあまりフェスでは演奏されていなかった「Cold Reaction」。この辺りはメインステージで持ち時間ということもあるのだろうが、素直に嬉しいところ。
「普段お前らも色々なことと戦ってるだろうけど、今日1日は自由にな。嘘を吐くなよ。自分自身に!」
と細美武士が挨拶し、「When I Was A King」でその場をグルグル回りながらベースを弾いていたスコットがメインボーカルを務める「Roxette」で、雲ひとつない快晴、汗をかいてしまうような暑さという気候もあって、一気に夏フェスに来ているかのような感覚に。
町長が歌詞を引用したことで自ずとこの日のテーマソングのような存在になった「Get Up」(細美も「俺は修作を気に入った」と町長を讃えていた)を演奏すると、
「今日7時起きだから、昨日はホテルの近くのコンビニに行って水だけ買おうとしたんだけど、エレベーターを出たらTOSHI-LOWがいて(笑)
「一杯行く?」って言われたから「お、おう」って言って飲みに行ってきて。今度こそ水を買ってきて寝ようと思ったら、またTOSHI-LOWに会って(笑)
「もう一杯行く?」っていうから、コンビニで缶ビールを買ってきて飲んでました(笑)
今日はもう1バンド(the HIATUS)あるけど、それまでに正気を保っていられる気がしません(笑)」
と言いながら早くも缶ビールを飲むのも仕方ないくらいの気候。そして「Two Little Fishes」ではそのTOSHI-LOWがステージに登場し、スコットの隣でずっとベースを弾く姿を凝視しながら、サビではスコットと肩を組んでコーラスするという、この地だからこその雰囲気がそうさせるのか、というこの日最初の奇跡が。TOSHI-LOWはだいぶ前日の酒の影響を感じさせたけれども、細美武士とTOSHI-LOWの2人のことであるこの曲を2人で歌うのを目の前で見れているというのは両者のファンにとってはこの上なく幸せなものだった。
そして「Run Run」で再び疾走すると、「明日公園で」でベースを銃に見立てて戸高にぶっ放していたスコットが最後も決める「Borders & Walls」で爽快な締め。
MONOEYESはthe HIATUSに比べると巨大なステージが似合うバンドではないけれど、このフェスにおいてはこのメインステージで見ていたいと思わせるようなライブだった。それはこのステージが4大フェスのメインステージほど大きいものではなく、結果として自分がこのステージで最初にライブを見たのがこのバンドになったからかもしれないが。
1.Free Throw
2.Cold Reaction
3.My Instant Song
4.When I Was A King
5.Roxette
6.Get Up
7.Two Little Fishes w/ TOSHI-LOW
8.Run Run
9.明日公園で
10.Borders & Walls
Get Up
https://youtu.be/tMVQ7trVuGM
13:00~ Dizzy Sunfist [ARAHABAKI STAGE]
最新アルバム「DREAMS NEVER END」がヒットし、一躍メロディックパンク界の急先鋒的な存在になった、Dizzy Sunfist。パンク、ラウド系のバンドが居並ぶARAHABAKI STAGEにて、このフェスに初出演。
アルバムのボーナストラック的に、明らかにSE用に作られたであろう「Let's Go Dizzy」が流れる中、メンバーが登場すると、あやぺた(ボーカル&ギター)の髪色が鮮やかなピンクとパープルの中間みたいな色で染め抜かれているのが目を惹く。
「Life Is A Suspense」「No Answer」と新作からの曲を伸びやかなメロディと、あやぺたといやま(ベース)の美しいハーモニーを乗せたツービートのパンクサウンドで響かせると、早くもダイバーが続出。まるで晴天の下のライブハウスであるかのよう。
バンドの代名詞的な曲である「Dizzy Beat」、初期曲をフェスで演奏する、演奏できるという姿勢が常にライブをして生きていることを証明する「Someday」と、このバンドが他のパンクバンドよりも頭一つ抜け出せたのは、メンバーが女性だからということではなく、ひたすらに良いメロディという、メロディックパンクの「メロディック」の部分を研ぎ澄ますことができるバンドだから。決して斬新なことをしなくても、そこさえ優れていれば、必ず響く人がたくさんいるということを身を持って示している。
あやぺたのギャル的な見た目からはかけ離れた、計算や戦略など一切ない、常に100%で思っていることを言う(滑舌は良くない)MCではこのフェスにこうして初めて出演することができた喜びを爆発させ、最新アルバムのリード曲である「Summer Never Ends」でもう完全にここは夏フェス…といきたいところだったのだが、曲中にいきなり全く外音が出なくなるというアクシデントが発生し、客席にかろうじて聴こえるのはドラムの生音だけという状態に。
そんな状況でもバンドは演奏をやめなかったが、全く音が聴こえなくてもガッカリすることが一切なかったのは、観客が
「オイ!オイ!」
とリズムに合わせて叫んだり、手拍子をするなどしてバンドを盛り立てていたから。バンドの全力な姿勢、「夢は死なへん!」というスローガンは、バンドの音楽を聴いている人たちにも確実に根付いている。だからこのステージにいた全員はこの逆境をも思いっきり楽しんでいた。
とはいえ、この後の曲もそのまま外音が出ない状態で演奏するわけにもいかず、復旧作業の間にMCで間をつなぐことになるのだが、そんな時であってもまったりすることはできず、大きな声を張り上げるあやぺた。(ボーカルマイクだけはすぐに復旧した)
そんなわけで今までやったことのないウェーブを客席でやってみせたりしながら、
「初めてでこんなアクシデントあったら一生忘れられへん!」
とあやぺたは言っていたが、アクシデントが起こった後も演奏をやめないこのバンドの姿、それを支える観客の絆は、忘れようとしても一生忘れられそうにない。
1.Life Is A Suspense
2.No Answer
3.Dizzy Beat
4.Someday
5.Summer Never Ends
6.Joking
7.Shooting star
8.The Dream Is Not Dead
Summer Never Ends
https://youtu.be/KLUS7hi1Ahk
13:30~ 04 Limited Sazabys [MICHINOKU STAGE]
前日にミュージックステーションに初出演。その後にすぐさまこのフェスに向かうという強行スケジュールでの出演となった、04 Limited Sazabys。その勢いを示すかのように、2年連続出演にして、今年はMICHINOKU STAGEに出演。
最近おなじみのオリジナルSEでこの日も元気良く登場。疲れとかを一切見せないあたりは本当にこのバンドがどんな状況でも音楽ができること、自分たちの音楽を聴いてもらえることに喜びを感じていることがよくわかる。
GENが思いっきり腕を振り下ろしての
「2年目のアラバキ、MICHINOKUステージは!」
と歌詞を変えた「monolith」からスタートすると、「fiction」「escape」というハードな音像の曲でひたすら攻めまくる。疲れを感じないどころか、むしろ日々音を鳴らし続けていることで、さらに力強くなっているようにすら感じる。
RYU-TAの煽りからの「Chicken race」で踊らせると、最新シングル「My HERO」も披露。自身らにとって憧れの存在であるバンドたちと共演し、ヒーローの姿を間近で見てきたからこそのこの曲は、フォーリミ自身がキッズたちのヒーロー的な存在になってきていることすらも感じさせる。
「あの頃の気持ちを思い出せ!」
とショートチューン「Remember」では激しい左回りのサークルが客席に発生し、ステージ両サイドのモニターがしっかりその様子を捉えていた。
しかし「My Hero」などを聴いていても、わざわざ思い出すこともないくらいに、フォーリミのメンバーたちはあの頃、まだ誰にも知られていなかった頃の悔しさを全く忘れていないように思うし、それがバンドにとっての最大の原動力になっている。
「東北なのに、俺たちのやっている名古屋のYON FESより暑い!」
とこの日の気候の良さ、フェス日和っぷりを改めて口にすると、ペトロールズを見たかったが自分たちと被っていて見れない、とこのフェスのラインナップの幅広さを称えながら、自身たちが幅広い音楽にアンテナを張りながら常に刺激を受けていることを語り、フェスでは最近あまりやっていなかった「nem…」で眠気から目覚めさせると、
「行けたらいいな 君の街まで 大した距離でもないからね」
という歌い出しの後に、
「やっぱりちょっと遠かったけど~(笑)」
と付け加えた、後半で一気に急加速する「me?」と、持ち時間が長いメインステージだからこその選曲も。
真昼間でも流星群が降り注ぐ「midnight cruising」から、KOUHEIのドラマーとして、バンマスとしての存在感が一層際立つ「Squall」は本当にもはやこのバンドどころか、現日本ロックシーンきっての名曲と言っていいくらいの曲である。
そしてラストは
「日本のロックシーンに光が射しますように!東北に光が射しますように!」
と、ただライブをしにきたんじゃなく、この場所に光を与えるために来たんだ、と「swim」を演奏。そうやって震災後の東北に向き合ってきたバンドたちの姿をこのバンドは見てきた。だからこそ、ミュージックステーション→この日のフェス→横浜アリーナワンマンという、普通ならあり得ない金土日のスケジュールであってもこうしてこのフェスに出演している。そして4人で音を出せば本当にカッコいいバンドだと思わせてくれる。
その二日間でテレビにもフェスにも出た。でもフォーリミはライブハウスでもフェスでもテレビですらも全く変わることがない。だからきっと、次の日の横浜アリーナをはじめとしたアリーナツアーでもなにも変わらないのであろう。
MONOEYES→Dizzy Sunfist→フォーリミという流れは、実にパンク色の強いものである。大ベテランから若手、ラウドからフォークまで、本当に様々な世代、音楽性のアーティストが集うこのフェスに、こうしてパンクバンドが居ならび、観客がガンガンダイブしている。
今、大きな野外フェスではダイブ禁止というところも多い。それは仕方がない。そうせざるを得ない理由や、前例があったのは間違いないのだから。だから基本的に自分はそのフェスにルールがあるのならばそれを支持するし、文句は言わないんだけど、こんなに気持ちいい空気の中でパンクバンドがライブをしていて、観客が笑顔で転がっていって、セキュリティの人たちも殺伐としておらず、むしろ笑顔で受け止めているような姿を見ると、本当はどんな場所でもこういう景色を見れるようでいて欲しいとも思う。それは本当に難しいことだが、このフェスがその景色を守ってきた上でこうしてパンクバンドをたくさん呼んでいるという意思があるのならば、そこだけはずっと変わらないでいて欲しい。
1.monolith
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.My HERO
6.Remember
7.nem…
8.me?
9.midnight cruising
10.Squall
11.swim
My HERO
https://youtu.be/5WDVtyb3YLg
初めて来るフェスだと、ステージ間の距離感というものが、実際に歩いてみないとわからない。なので公式サイトに「30分かかる」と書いてあった、MICHINOKUからBAN-ETSUを、フォーリミ→KEYTALKの5分間の時間差で詰めようとしたのだが、さすがに全く間に合わず、KEYTALKは後半からしか見れず。
しかし「Summer Venus」「太陽系リフレイン」という曲をこの気候で連発されたら、気分はもう完全に夏フェスだ。最後にビールを一気飲みした巨匠は本当に気持ち良さそうだった。
15:35~ The Birthday [BAN-ETSU STAGE]
そんなMICHINOKUからだいぶ離れた、第2のメインステージ的なキャパを誇るBAN-ETSU STAGEに登場するのは、The Birthday。
この暑い気候の中でもいつもと同じようにスーツ姿で4人が登場すると、
「愛の帝王!愛の手を!合いの手を!」
というチバの言葉遊びが面白い「LOVE GOD HAND」からスタートするのだが、チバがいきなり歌詞を吹っ飛ばすフレーズも。チバは苦笑いだが、メンバーは一切動じることがないのはさすがだ。
どんどん削ぎ落とされたロックンロールになることによって、逆にチバ特有のメロディの良さが際立つ「SAKURA」、チバがギターを置き、ハンドマイクを持って踊りながら歌う「24時」「LOVE SHOT」と、雲ひとつない青空の下というシチュエーションがあまり似合わない、むしろ真夜中の歌舞伎町とかで聴く方が似合いそうな濃いロックンロールを連発するも、
「野外イベントなんていうのは晴れたらそれだけで成功みたいなもんなんだよ。だから今日は大成功!」
とこの天気に触れた新たなチバ語録を残し、未発表の新曲を披露。これはシンプルなロックンロール曲で、その前のハンドマイク曲の濃さに比べるとシングル曲として世に出てもおかしくないくらい。
「とんでもない歌が 鳴り響く予感がする
そんな朝が来て俺」
という歌い出しのフレーズをチバが他の楽器の音を排して歌うどころか、観客に合唱すらさせると、サビでも様々なフレーズを観客に合唱させる。そこで大合唱となる姿を見て実に楽しそうなチバ。The Birthday始動直後はこんな姿は全く想像できなかったが、ロックンロールはみんなで歌える音楽であるということを、もう50歳のメンバーが中心であるバンドが改めて教えてくれる。
それを象徴するかのようにラストの「声」ではクハラだけではなく、ヒライハルキとフジイケンジもコーラスに加わり、演奏の厚みだけではなく、文字通りに声の厚みも増していった。その姿からは、もう完全に大ベテランと言ってもいいようなバンドであっても、いななお進化を続けていく姿勢を感じさせた。
1.LOVE GOD HAND
2.SAKURA
3.1977
4.24時
5.LOVE SHOT
6.新曲
7.くそったれの世界
8.声
くそったれの世界
https://youtu.be/8YDs2LGOl6M
16:30~ yonige [HANAGASA STAGE]
唯一のテント型ステージであるHANAGASA STAGE。このフェス初出演にして始まる前からすでにそのテントからはみ出すくらいの人が詰めかけたのは、yonige。
おなじみThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEが流れると、牛丸ありさとごっきんの2人がサポートドラマーの堀江(DREADNOTE)とともに登場。ドラムセットに集まった3人が気合いを入れると、「ワンルーム」の轟音ギターがテントの中に響き渡っていく。
基本的には内容は先月のツタロックの時とは変わらないものだが、
ごっきん「数々の打ち上げで荒く吐いてた我々にとっては、荒吐っていう文字を見るだけでドキドキする(笑)誰やこんな地名つけたやつ!(笑)」
牛丸「七尾旅人さんと布袋寅泰さんが見たかったのに、この時間に丸かぶりしていて全部見れない(笑)っていうことはどういうことかというと、やるしかないっていうことや!」
とこのフェスだからこそのエピソードを話しながら気合いを入れていく。
しかしながらそれが激しいサウンドの曲のエモさに転換されていくのではなく、「センチメンタルシスター」や「しがないふたり」という聴かせるタイプの曲の深さになっていく。
それはこのステージが構造上、おそらく前の方にいないと音がしっかり聴こえない(だからこそテントからはみ出している部分の人には音響面は物足りなく感じる)という部分でそうした曲の方が合っていたというのもあるかもしれないが、もはやフェスでは「さよならアイデンティティー」や「アボカド」というノイジーなギターサウンドの曲をやらずとも成り立つくらいのレベルになってきている。だからこそこのステージだったのはちょっと惜しいが、ここまで人が押し寄せる存在になるということをオファー時点では予期していなかったのだろうか。
1.ワンルーム
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.センチメンタルシスター
5.しがないふたり
6.悲しみはいつもの中
7.さよならプリズナー
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
17:00~ the HIATUS [BAN-ETSU STAGE]
この日すでにMONOEYESでのライブを終えている細美武士。今度は夕方のBAN-ETSU STAGEにthe HIATUSとして出演。
おなじみのトライバルなSEでメンバー5人が登場すると、伊澤一葉の奏でるピアノの音が美しい「Clone」からスタート。MONOEYESのライブ中に
「この後正気を保っていられるかわからない(笑)」
と語っていた細美だが、そこまで酔っ払っているようには見えない(確かに飲んではいるが)ような声の伸び具合。この曲はサビのボーカルがしっかり出なかったらかなり物足りなく感じてしまいそうな曲ではあるが、今までそう感じたことがないのは細美の歌の上手さはもちろん、
「毎日飲み過ぎて耐性がついてきたのかもしれない」
というくらいに飲んでも体に影響がなくなってきたからかもしれない。
なので飲んでいるからこそのハイテンションさに振り切れることなく、非常に高い集中力はいつもとなんら変わらないように見える。だからこそこの日は「The Flare」のように各楽器の音が激しくぶつかり合うような曲よりも、「Geranium」や「Unhurt」のように繊細に音を積み上げて行くような曲を多くしたのは正解だと言える。何よりも、
「この時間にこの場所でライブができることを本当に幸せに思っています。この場所でどうしてもやりたかった曲」
と言って披露された、普段はワンマンですら全く演奏されることのない「Sunset Off The Coastline」が本当に素晴らしかった。ステージの後ろには夕日になって沈みつつある太陽。それを抱えるようにして演奏するメンバーたちと歌う細美武士。その姿が普段よりも解放されているように見えたのは、やはり細美がずっと支援を行い、オフの日に足繁く復興活動に足を運んできた東北の地だからというのが大きいのかもしれない。
雲ひとつない空が青を濃くしていく中に溶け合っていくかのような「Radio」、切実な叫びが響き渡る「Insomnia」と細美武士のボーカルの素晴らしさを堪能できる両極端な2曲を演奏すると、「紺碧の夜に」でダイバーが大量に発生し、細美も実に嬉しそうな表情を浮かべている。
そして最後は沈みゆく太陽に捧げるかのような「Sunburn」…かと思いきや、明らかにステージ上のメンバーは演奏が始まると戸惑いを浮かべ(伊澤が全くピアノを弾いていなかった)、
「あ、できないか。じゃあ「Sunburn」はまた今度。また必ず来るから。仲間の歌をやります」
とこの場所での再会を約束し、「Silver Birch」で大団円を迎えたのだった。
また、ライブ中にMCでウエノコウジが50歳を迎えたことに対し、
「これからも精進しながらロック道を歩いていきたいと思っていますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
と信じられないくらい低姿勢で50歳以降の決意を語っていた。その姿は、いずれそのくらいの歳になっても、我々もウエノコウジが歩いて行った道の上を歩いていきたいと思わせてくれた。見ている側だっていつまでもロック道を歩いていきたいのである。
1.Clone
2.Geranium
3.The Flare
4.Unhurt
5.Sunset Off The Coastline
6.Radio
7.Insomnia
8.紺碧の夜に
9.Silver Birch
Clone
https://youtu.be/h9aLBoHFeOQ
18:30~ 忘れらんねえよ柴田 with タナカヒロキ(LEGO BIG MORL) [Extra Stage @MOVE LOUNGE]
HANAGASA STAGEエリアの飲食ブースにある喫煙所の中にある、実に簡易的な、弾き語りくらいしかできなそうな小さなステージ。陽も落ちてすっかり寒くなったそのステージにひっそりと登場したのは、忘れらんねえよのボーカルの柴田隆浩と、忘れらんねえよのサポートギターであるLEGO BIG MORLのタナカヒロキ。
出番の30分前からセッティングに登場すると、
「あ!菅田将暉がいる!……いるわけねーだろ!あっさり振り返りやがって!」
と観客を笑わせながら、なぜかMISIAの「Everything」をボーカルチェックで歌い上げたり、トリビュートアルバムに参加したチャットモンチーの「ハナノユメ」を歌ったりと、やりたい放題しながら、最後には「忘れらんねえよ」をリハにもかかわらず1曲丸々歌うというサービスっぷり。
本番では忘れらんねえよの近年のライブではおなじみの、[ALEXANDROS]「ワタリドリ」がSEとして流れる中、観客に支えられて「ワタリドリ」のようにステージに降り立つ。
「今日は、柴田メンバーと、タナカメンバー、それからみなさんメンバーでお送りします!」
と、問題を起こした某アイドルグループの男が「○○メンバー」と呼ばれていたのを真似たタイムリーなMCで笑わせながら、「バンドやろうぜ」「この高鳴りをなんと呼ぶ」という忘れらんねえよの名曲を、柴田のエレキギターとタナカのアコギというギターのみの削ぎ落とされた形で演奏。柴田はなぜかめちゃくちゃ声がよく出ている。
柴田「本当はバンドで出たかったんだけどいろいろあって、今は出れない状態で…(観客笑)
そうそう!メンバー脱退なんかそうやって笑ってくれればいいんですよ!
でもヒロキ君は前にLEGOでアラバキに出たのは9年前?本人も出たことを覚えてないっていう(笑)」
タナカ「いやいや!覚えてるから!LEGOが初めて出たフェスがここだもん。でも今回はこんなコミックバンドじゃなくて、ちゃんとしたバンドで出たかったなぁ(笑)」
と互いのアラバキエピソードで笑わせたあと、柴田が
「新曲をやります。めちゃくちゃ自信がある曲です。絶対売れる!」
と言って柴田が歌い始めたのは、まさかの華原朋美のヒット曲「I'm Proud」。そりゃあ売れるだろう、っていうかそもそも実際に売れた曲である。新曲でもなんでもないが。リハでのMISIAといい、柴田は女性ボーカルの曲を歌うのにハマっているのだろうか。
「どうせこのステージに集まっている奴らは全員処女か童貞だ!(笑)
そんな寂しいやつらにピッタリの、恋愛必勝法的なフレーズが入っている曲を今日は持ってきた!もっと売れてもいい曲だと思うんだけどな~」
と「犬にしてくれ」で観客をいじると、名曲「夜間飛行」のメロディにプロトタイプ的な歌詞、しかもかなりの下ネタなやつ(「夜間飛行」がリリースされる前はこの歌詞だった)が乗る「ハッピーバースデーとはいえ俺は誕生会に呼ばれていない」というある意味ではレアな選曲はこの編成だからこそだったんだろうか。
そしてラストはやはり「忘れらんねえよ」を観客がスマホライトを掲げた中で大合唱するのだが、ワンコーラス終わった後にみんなスマホを降ろしたあと、男性が1人だけスマホを掲げると、
「もういい。もうやらなくて大丈夫だ(笑)」
と言って制して爆笑を巻き起こす。そして本来なら間奏部分あたりで観客に運ばれるようにして客席中央まで行ってビールを一気飲みしようとしていたのだろうが、時間の関係でそれができず、曲が終わってから普通にステージを降りて客席を歩いてビールをゲットし一気飲み。
「みなさんメンバー!タナカメンバー!柴田メンバーでお送りしました!」
と最後まで山口達也の事件をいじってから、普通に客席からどこかへ消えていった。
基本的には普段の忘れらんねえよのライブを歌とギターだけという極限まで削ぎ落とされた形で演奏するというものだったが、それによってわかるのは、このバンドの持つ面白さではなく、むしろメロディの良さ。それさえ変わらなければ、忘れらんねえよは柴田だけになっても絶対に大丈夫だし、本格的にその部分で勝負をしにいく予感もする。
1.バンドやろうぜ
2.この高鳴りをなんと呼ぶ
3.I'm Proud (華原朋美のカバー)
4.犬にしてくれ
5.ハッピーバースデーとはいえ俺は誕生会に呼ばれていない
6.忘れらんねえよ
バンドやろうぜ
https://youtu.be/AEsRLAHfS0k
19:30~ ストレイテナー THE ROCK STEADY'S 20th ANNIVERSARY CLUB BAND [MICHINOKU STAGE]
ストレイテナーである。と書くと実に普通、しかも「メインステージのトリがテナー?」と近年のフェスにおける動員力を知っている人は思ってしまうかもしれないが、この日のストレイテナーのライブは、これぞアラバキの醍醐味!というような、トリビュートアルバムに参加した面々を中心としたゲストが集まった、特別なものなのである。
とはいえ、持ち時間90分という破格の長さなので、まずは4人のみで登場し、いきなり「ROCKSTEADY」「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」というバンドきっての代表曲にして名曲の連発という出し惜しみのなさ。
ひなっちとナカヤマシンペイのリズム隊は冒頭からいつにも増してみなぎっていてこのライブへの気合いを感じさせるが、ホリエはこの後の展開を考えているのかやや緊張感を感じさせる。大山純はいつものように飄々としているが。
「2年前に出た時は天気が悪くてすごい寒くて。でも今日は本当に最高の天気で、月が本当にキレイに見える」
というホリエのロマンチックさを際立てる「彩雲」、最新曲であり、ライブ初披露となった「The Future Is Mine」の
「過去をさあ見に行こう 過去も変えていく未来を
いつかきっとわかるんだ その未来が今なんだって」
という歌詞が20年続けてきたからこそ歌える説得力に満ちている。
そしてここからはいよいよゲストが登場。まずは最初からドラムセットが用意されていたことで期待が高まっていた、この日はthe HIATUSで出演した柏倉隆史。ホリエがキーボードを弾き、ツインドラムという編成で「Lightning」を演奏するのだが、全く直線的ではなく、むしろ点描画を描くように複雑かつ手数の多いドラムを叩く柏倉によって、曲がテナーというよりもFULLARMORかのようなポストロック色の強いものに生まれ変わっている。ドラムが一台加わるだけでここまで曲そのものを変えてしまう柏倉は本当にすごいドラマーだと思わされるし、細美武士が「the HIATUSの曲の骨格は俺と隆史で作る」と言っていたのも納得である。
柏倉と入れ替わるように次に登場したのは、今回のゲスト陣の紅一点、majiko。
「ストレイテナーは女性アーティストに人気がない(笑)」
とホリエが自虐しながら、トリビュートアルバムでカバーしていた「冬の太陽」をトリビュートバージョンの、しっとりと聴かせるアレンジで演奏。ひなっちは椅子に座ってベースを弾くというのも普段は見れない体制であるが、majikoは歌が上手いだけではなく、曲の空気を変えることができる声を持っているボーカリストである。ロックシーンとは違う場所にいたにもかかわらず、ホリエがプロデュースを買って出たのも納得である。
「ここからはブチ上げて行こうぜ!」
と言うと、majikoに変わってステージに元気良く登場したのは、go!go!vanillasの牧達弥。ということは演奏されるのはバニラズがカバーした「KILLER TUNE」になるわけだが、バンドが演奏したのは、原曲とはかけ離れたカントリーっぽいアレンジ。つまりはバニラズバージョンをテナーのメンバーが演奏しているのである。トリビュートされたバンドがトリビュートバージョンの演奏をマスターしているというのはなかなか聴いたことがないし、そうしたバンドの中にないような要素のアレンジをあっさり演奏できるストレイテナーというバンドの凄さを改めて思い知る。
しかもそのバニラズバージョンで終わりではなく、オリジナルバージョンにサラッと繋いで見せるのだから、原曲バージョンを聴きたいファンも納得せざるを得ない。しかも組曲であるかのように、ホリエがプロデュースしたバニラズ「おはようカルチャー」すらも演奏してしまう器用さ。テナーで演奏面で語られるのはひたすらひなっちのベースであるが、バンド全体の器用さも相当なものである。
続いては翌日にバンドとしての出演を控える、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎。今度は「Melodic Storm」をテナーのオリジナルバージョンで演奏するというものだったが、それなのにいつもと全く違うように聴こえるのは、やはり卓郎の声によるもの。卓郎はめちゃくちゃ歌が上手いというわけではないが、その歌声で曲をガラッと変えることができるボーカリストである。つまり、9mmの核はやはり滝のギター及び作る曲だと思いがちだが、卓郎の歌声もまた9mmのもう一つの核だったのだ。だからこそこの日の「Melodic Storm」はいつものテナーのものとは全く違って聴こえた。
「次はthe pillows、今日はTHE PREDETORSで出演した…」
とホリエが紹介するも、
「違う違う!」
とシンペイに指摘され、
「あ!!次はTHE BACK HORNの…」
と、THE BACK HORNの山田将司を完全に忘れていた様子。なので将司はホリエのことを指差しながら登場し、
「飛ばさないでよ~(笑)
でもこれからも一緒に共鳴して、シンクロしていきましょう!」
と自身たちのバンドのテーマと完全に一致した選曲である「シンクロ」。
THE BACK HORNと言えば「コバルトブルー」などの激しい曲が多いバンドというイメージもあるし、そうしたタイプのテナーの曲をそうして激しいアレンジにすることもできたとは思うのだが、あえてこの曲を選んだのはそうしたTHE BACK HORNの掲げるテーマがこの曲そのものだったからであるし、THE BACK HORNは「世界中に花束を」や「未来」「美しい名前」、最近でも「あなたが待ってる」など、テナー同様に名バラードをいくつも持っているバンドだからでもある。
そして先に紹介されかけたthe pillows、この日はTHE PREDETORSとして出演した、山中さわおが登場。
「あれはないよな~。山田くんが良い人で良かったな(笑)」
とビール片手にホリエにツッコミを入れ、ホリエが「ビールの歌」と紹介した「Farewell Dear Deadman」を実に滑らかな発音で歌う。山中はさすがベテラン、バンドサイドの演奏に自らを合わせるというような歌い方をしていたようにも見える。
しかし山中は1曲終わっても帰らず、
「もう1曲リクエストされました。15年の付き合いになるさわおさんだけど、まさに15年前に俺たちストレイテナーを世に押し上げてくれた曲!」
と言って演奏されたのは、かつてMr.ChildrenやBUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENが参加し、the pillowsの存在をより広いところに知らしめたトリビュートアルバム「SYNCHRONIZED ROCKERS」に収録され、このタイミングでついにライブ初披露となったthe pillowsのカバー「RUNNERS HIGH」。テナーバージョンのさらに疾走感を増したアレンジが貴重すぎるものを見ているテンションの昂りをさらに押し上げていった。
そしてホリエがギターを置き、緊張した面持ちでステージに招き入れたのは、この日このステージに出演した布袋寅泰。トレードマークの幾何学模様のペイントが施されたギターを持って登場すると、
「布袋さんとストレイテナーのなんの曲をやるんだ、と思ってる人もいるでしょうけど…やりませんよ!(笑)」
と言って演奏されたのは、なんとかつて布袋寅泰が氷室京介らと組んでいた、伝説のバンドBOOWYの「B・BLUE」と「Dreamin'」。布袋寅泰はおなじみの左足を上げ下げしながらというギターの弾き方をし、ホリエはどこか氷室京介を意識しているかのような歌い方をしていた。
バニラズの牧やmajikoがテナーに憧れていたように、かつて子供の頃のホリエらテナーのメンバーもBOOWYに影響を受けてきた。そうやって音楽は次の世代に継承されていくし、ひなっちが布袋寅泰とセッションをしたのがこの日に繋がったように、音楽には憧れの人たちと同じステージに立てるようになる力がある。
そしてゲスト勢のラストを飾るのはこれまでにテナーのステージに何度か登場している、タブゾンビと田中邦和のブラスコンビ。音源でもこの2人を招いて録音された「From Noon Till Dawn」で
「今だったら言える、アラバキ愛してるー!」
と歌詞を変えて叫んでこの日最大の爆発力を見せると、
「本当に大事な曲」
と紹介された「MARCH」をブラスを加えた荘厳なアレンジで演奏。それはどこかこの東北への祈りを込めているかのようにも見えた。
演奏が終わると最後にはゲスト勢がステージに全員集合。
「人数が多過ぎるから、並ぶとグダグダになる(笑)」
ということで並んで手を繋ぐというようなことはなかったが、改めてこの面々を見ると圧巻だし、テナーはこんなにもすごいアーティストたちに愛されている。そしてそんなすごいアーティストたちが加わっても、あくまで主役はテナーでいることができる。きっと普段見ているよりも、テナーはずっとすごいバンドだ。
そんな、テナーを愛してきた人たちの想いによって作られた、言葉にならない想いが奏でた、一夜限りの宴だった。
1.ROCKSTEADY
2.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
3.彩雲
4.The Future Is Now
5.Lightning w/ 柏倉隆史
6.冬の太陽 w/ majiko
7.KILLER TUNE ~ おはようカルチャー w/ 牧達弥
8.Melodic Storm w/ 菅原卓郎
9.シンクロ w/ 山田将司
10.Farewell Dear Deadman w/ 山中さわお
11.RUNNERS HIGH w/ 山中さわお
12.B・BLUE w/ 布袋寅泰
13.Dreamin' w/ 布袋寅泰
14.From Noon Till Dawn w/ タブゾンビ、田中邦和
15.MARCH w/ タブゾンビ、田中邦和
The Future Is Now
https://youtu.be/uFBgZ5RhdHE
自分はこの日初めてアラバキに足を踏み入れた。初めて行くフェスだと、どうしても普段から行っているようなライブが基準になるため、「開場時間もうちょっと早めればいいのに」とか「MICHINOKUとBAN-ETSU以外の持ち時間が短いな~」とか思うことはある。
でも楽しかったのは間違いないし、テナー以外にもこのフェスじゃなきゃ見れないようなスペシャルアクトもたくさんあっただろう。何より、こうして終わって帰ってくると、終わってしまったな~というアラバキロスとでもいうような寂しい気持ちがある。
だけど今回で、こうやって行けるっていうのがわかった。(かなり帰りはキツかったけど)
だからこそ、きっとまたいつか来るはず。というより、テナーみたいに好きなバンドがスペシャルライブみたいなのをやるんなら絶対見に来ると思う。なので、アラバキ、またいつか!
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