THE BAWDIES Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2018 @新木場STUDIO COAST 4/22
- 2018/04/22
- 23:03
2009年の5月6日。恵比寿リキッドルームで「Kings」という、スタイルは違えど同じ志を持った5バンドが作り上げるイベントが開催されていた。当時、そのイベントを引っ張っていたのは、すでに前年にROCK IN JAPAN FES.やSUMMER SONICに出演し、ライブシーンにおける若手バンドの代表格となっていたthe telephonesと、Oasisの幕張メッセでの来日公演にオープニングアクトとして出演し、洋楽ファンすらも唸らせたQUATTRO。
しかし、その中で最も衝撃的だったのは、そのライブの直前にメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」をリリースしたばかりの、スーツに身を包んだロックンロールバンド、THE BAWDIESだった。
まだ彼らのファンは最前列から2~3列くらいまで、というアウェー感の強い状況ではあったが、「このバンドはこれからもっと大きなとこれにすぐに行くだろうな」という確信を抱かせるぐらい、メジャーデビュー時点でライブが飛び抜けていたバンドであった。
その通りに階段を駆け上がり、日本武道館で2回のワンマンを行うなど、日本におけるロックンロールバンドの最前線に立ち続けてきたTHE BAWDIESもついにメジャーデビュー10周年、結成からは15周年を迎えた。
それを記念した、初のベストアルバムもリリースされての全国ツアーが開催。この日の新木場STUDIO COASTはツアー初日となる。
開演前のステージにはバンドロゴが描かれた暗幕がかかっており、18時を過ぎた頃に場内が暗転すると、流れ始めたのはかつてのSEであった「SOUL MAN」。近年はウィルソン・ピケットの「ダンス天国」がSEとして固定されていたが、これには周年ツアーということで、原点回帰的な意味合いもあるのだろうか。いずれにせよ客席にはどよめきと合唱が混在している。
暗幕があるので登場した時のメンバーの様子はわからないが、SEが止まった瞬間に走り出すかのようなドラムのビートが。間違いなくそれは「EMOTION POTION」のものであることが一瞬でわかるが、音が鳴り始めても暗幕はそのまま。ROYのベースに続き、ギターの音までもが聴こえると、歌い出しの前の「ドン!」という力強いスネアのブレイクの瞬間に暗幕が落ち、デビュー当時のような黒いスーツに身を包んだ4人の姿が。MARCYは黒髪になり、TAXMANとROYは髪型がかなりさっぱりしたような印象。JIMは変わらずに踊りまくりながら笑顔いっぱいでギターを弾いている。そんなメンバーたちの後ろには巨大なバンドロゴがそびえ、そのロゴは電飾がついていて、鮮やかに輝く。
のっけからROYのシャウトが響き渡り、ツアー初日の1曲目からバンドはすでに最高の状態にいることがわかるが、久しぶりのワンマンということもあってか、スタンディングエリアはもちろん、2階のバルコニー席までも埋め尽くした観客も「NO WAY」で声を出し、飛び跳ねまくる。みんながTHE BAWDIESのロックンロールを求めていたことが本当によくわかる。
早くも放たれた「YOU GOTTA DANCE」でいきなりクライマックスかのようにさらに飛び跳ねまくると、
「この曲から始まったと思っております。もうライブはとっくに始まってますけども(笑)、我々の歴史がこの曲で始まったと言っても過言ではない、という意味です」
とROYが話すと、ROY、JIM、TAXMANの3人がセンターに集まってネックを上下させる「I BEG YOU」へ。さすがベスト盤のリリースツアーだな、と思うのは、「YOU GOTTA DANCE」しかりこの「I BEG YOU」しかり、これまでのライブで最後を担うこともあったキラーチューンたちがこの序盤で演奏されているからである。
早くもROYによるMARCYいじりも始まりながら、ドラマの主題歌としてヒットし、バンドの代表曲となった「ROCK ME BABY」の前には、赤い照明が燃え盛るようなバンドのグルーヴを視覚的に映し出す中、セッション的な演奏が加わっている。こうした部分が見れるのはやはりツアーならではである。
TAXMANのカッティングギターが鳴らされると、こちらもCMのタイアップ曲としてバンドの代表曲になった「LEMONADE」ではこの日初めて聴き入る時間に。この曲がリリースまではひたすらにアッパーな曲がシングル曲としてリリースされていただけに、こうしたタイプの曲をシングルとしてリリースするのには当時は大変な勇気が必要な決断だったと思われるが、バンド側のその選択が間違っていなかったことは、この曲の受け入れられ方を見ればすぐにわかる。
JIMが高いポジションでくるくると回転しながらギターを弾く「NICE AND SLOW」から、この日初のTAXMANボーカル曲「LOVER BOY」へ。こうしてワンマンのような長い尺のライブの中盤に、決してROYのように濃いとは言えないTAXMANのボーカル曲が挟まれることによって、THE BAWDIESの持つメロディのポップさ、キャッチーさがあらわになっていく。
MCでは再びROYによるMARCYいじりが始まるも、JIMとTAXMANが
「これまでを振り返る、新しい一面が今でも見つかるって、MARCYのことばっかりじゃん!(笑)
昔はもっとみんなで話してたじゃん!(笑)」
とROYのMARCYのみをいじる内容に反発し、ROYは苦い顔をして乗り切ろうとするという、ある意味では長い年月を重ねた経験を見せる。
「昔はもっとクールだった!そんな変な顔しなかった!」
という、確かに昔はROYはめちゃくちゃ尖ってたよなぁ(それは声も含めて)と回想せざるを得ない2人のツッコミが入ると、ROYはやけっぱちになって、
「ロックンロールやらせてくれよっ!」
と何かを蹴飛ばすように足を上げ、「THE EDGE」から再びロックンロールに振り切れていく。
間奏部分での合唱パートも完全におなじみとなっているが、フェスなどでは満足な声の量が返って来ずにやり直したりすることも多い「SING YOUR SONG」ではそんなやり直しなど要求する必要もないくらいに、一発目から場内を大合唱が飲み込んでいく。そうなるのも当たり前なのだ。ここに集まった人たちはみんなTHE BAWDIESが好きで仕方なくて、THE BAWDIESのロックンロールで歌ったり踊ったりしたいんだから。
すると近年のライブではおなじみの、小芝居の始まりを告げるような音が鳴ると、今回は高校の女子カーリング部が舞台で、もぐもぐタイムにパンとソーセージを食べるという設定。「そだねー」というオリンピック時の流行語もJIMとTAXMANによってここぞとばかりに連発された中で始まった「HOT DOG」はさすがの破壊力。
ROYとTAXMANのハーモニーが重なるポップな「KICKS!」から、イントロのフレーズで大歓声が上がったのは「KEEP YOUR HAPPY」。近年はメドレーの中で短く演奏されることが多かった曲であるが、こうして1曲丸々ライブで聴きながら、みんな思い思いに体を揺らしているのを見ると、タイトル通りに「この幸せな時間がずっと続いてくれたらいいのに」と思う。
「懐かしい曲を!」
と言って演奏された「BABY SUE」、
「普段生きていたら色々なことがあると思います。不安とかを吐き出したり騒いで忘れるのも重要ですが、たまには寄り添うことも大事なんじゃないかと」
という「SAD SONG」の流れはTHE BAWDIESの激しいロックンロールというイメージとは違ったタイプの曲たちだが、こうしたタイプの曲があることを知って、THE BAWDIESにハマった人も実は多い。とりわけ「SAD SONG」はバンド初の武道館ワンマンの時にも、会場にいた人はもちろん、スペシャでの生中継を見ていた人からも最も印象に残った曲として挙げられていたのを見た。
しかしもはやライブも終盤。まるで新曲を演奏しているかのようなセッション的なイントロが追加された「45s」からは再びグルーヴで押しまくるロックンロールに回帰し、この日2曲目となるTAXMANボーカル曲「B.P.B」のサビでの飛び跳ね(JIMも一緒に飛び跳ねている)は実に楽しい。
しかしながらROYは
「TAXMANの曲が多過ぎたな」
と、わずか2曲でもTAXMANの曲が多かったと感じている様子。しかしTAXMANは、
「「HOT DOG」の小芝居、お前が全部作ってるみたいに言ってるけど、10個くらいは俺がゴーストライターしてるんだからな!(笑)」
と、ある意味衝撃のネタバラし。しかしながらTAXMANはこの日のようなオタクキャラが、JIMは女性の役が気に入っているようで、今回の小芝居はいつにも増して2人が乗り気だったという。MARCYは忍者役が好きらしいので、このツアーのどこかでそれぞれが好きなキャラをやる小芝居が披露されるとのこと。
そんな微笑ましいやり取りもありながら、
「乗り遅れないでくださいよ!」
と「IT'S TOO LATE」からはクライマックス。昨年からサビ前のタメを作るアレンジに変え、よりライブ仕様に生まれ変わった「JUST BE COOL」では場内の客電が点き、まるで2回目の武道館ワンマンで最後に演奏された時のことを彷彿とさせる。
しかしながらこの日はこれで終わりではない。ベスト盤はただの総括や振り返りではなく、さらにこの先へ進むためのものである、というのを示すべく、ベスト盤収録の、ガレージ感の強いロックンロールナンバーの新曲「FEELIN' FREE」でその姿勢を示すとともに、やっぱりTHE BAWDIESのロックンロールは最高にカッコいいな、と改めて実感させられる終わり方だった。
アンコールではメンバー全員がジャケットを脱いで白シャツ姿になり、
「みなさんに感謝を」
と言い、「I'M IN LOVE WITH YOU」でこうして目の前でメンバーが演奏をして、THE BAWDIESが大好きな人たちがこうして集まっていることの幸せを実感させてくれると、ラストはやはり「KEEP ON ROCKIN'」。間奏では観客の手拍子のみがサウンドとなり、我々全員がTHE BAWDIESのライブを作っているという空気に浸らせてくれると、コール&レスポンスは以前までのSEだった「ダンス天国」のフレーズ。やや難度が高いものではあるが、そこはやはりこれまでにライブで何度も聴いてきた曲なだけに、すぐにレスポンスできるあたりはさすがTHE BAWDIESのファンたちであった。JIMが客席最前列の柵に登ってレスポンスを促したというさらに燃えるような要素もあったが、もうこの瞬間を心から楽しみつくしてやる!こんなに楽しくて幸せな空間は他にない!という意思がその大合唱からは感じられた。
演奏が終わると、浮かれひょっとここと、TAXMANによる恒例のわっしょいコーナー。これまで様々な趣向を凝らしたわっしょいを行なってきたが、今回のツアーはシンプルに、ということで、スタンダードなわっしょいになったのだが、TAXMANが先ほどのJIM同様に客席最前の柵に乗っかってわっしょいを叫んだのは、熱量が高かったライブハウスならでは。
しかし今回はこれでもまだ終わらず、ROYがカメラマン橋本塁を呼んで、客席をバックに写真撮影。その際のコールは
「インディアナ!」「雅彦ー!」
という、前日に放送されたスペシャの特番で明らかになった、獣道とかにグイグイ入っていき、岩場をジャンプしてよじ登るというアウトドア派であったMARCYの新たなあだ名であったが、TAXMANいわく
「このコール&レスポンスあるんなら、わっしょいいらなくねぇ!?(笑)」
とのこと。
撮影が終わると、ピックなどを客席に投げ込みながら、観客に感謝を告げてステージを去っていった。最高の周年ツアー、全都道府県ツアーの始まり。その終着点はバンドにとって3回目となる日本武道館ワンマンだが、ROYが
「ベスト盤、38曲入ってるんで、一回のライブでは全部やり切れないんですね。だから各地で曲を入れ替えたりするだろうし」
と言っていただけに、武道館前にどこか他の地方にも行ってみたい気がしている。
昨日のスペシャの特番でもメンバーが
「小さい頃からずっと一緒にいるから、何周年っていう実感がない」
と言っていたが、何周年だからというのではなく、THE BAWDIESはこれまでも、きっと自分が出会う前からも、もちろん今日も最高だった。それはこれからもずっと変わらないことなんだろう。
近年こそフェスなどではアウェー感を感じることもある。(去年そのことについて書いたのが、http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-463.html?sp)
だけど初めてTHE BAWDIESのライブを見たあの日、「これは人気出るだろうな」と感じたが、それだけじゃない、このバンドには他のバンドとは違うオーラがあった。それはロックの神様がかけたとしか思えない、スーパーサイヤ人や、覇王色の覇気のような、選ばれたロックバンドにだけかかる魔法のようなもの。これまでのこのバンドのライブではいつもそれを感じてきたが、それはずっと変わっていない。今もこのバンドはロックンロールの魔法の中にいる。
1.EMOTION POTION
2.NO WAY
3.YOU GOTTA DANCE
4.I BEG YOU
5.ROCK ME BABY
6.LEMONADE
7.NICE AND SLOW
8.LOVER BOY
9.THE EDGE
10.SING YOUR SONG
11.HOT DOG
12.KICKS!
13.KEEP YOU HAPPY
14.BABY SUE
15.SAD SONG
16.45s
17.B.P.B
18.IT'S TOO LATE
19.JUST BE COOL
20.FEELIN' FREE
encore
21.I'M IN LOVE WITH YOU
22.KEEP ON ROCKIN'
FEELIN' FREE
https://youtu.be/9QPYXir2gmk
Next→ 4/29 The Mirraz @新宿MARZ

しかし、その中で最も衝撃的だったのは、そのライブの直前にメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」をリリースしたばかりの、スーツに身を包んだロックンロールバンド、THE BAWDIESだった。
まだ彼らのファンは最前列から2~3列くらいまで、というアウェー感の強い状況ではあったが、「このバンドはこれからもっと大きなとこれにすぐに行くだろうな」という確信を抱かせるぐらい、メジャーデビュー時点でライブが飛び抜けていたバンドであった。
その通りに階段を駆け上がり、日本武道館で2回のワンマンを行うなど、日本におけるロックンロールバンドの最前線に立ち続けてきたTHE BAWDIESもついにメジャーデビュー10周年、結成からは15周年を迎えた。
それを記念した、初のベストアルバムもリリースされての全国ツアーが開催。この日の新木場STUDIO COASTはツアー初日となる。
開演前のステージにはバンドロゴが描かれた暗幕がかかっており、18時を過ぎた頃に場内が暗転すると、流れ始めたのはかつてのSEであった「SOUL MAN」。近年はウィルソン・ピケットの「ダンス天国」がSEとして固定されていたが、これには周年ツアーということで、原点回帰的な意味合いもあるのだろうか。いずれにせよ客席にはどよめきと合唱が混在している。
暗幕があるので登場した時のメンバーの様子はわからないが、SEが止まった瞬間に走り出すかのようなドラムのビートが。間違いなくそれは「EMOTION POTION」のものであることが一瞬でわかるが、音が鳴り始めても暗幕はそのまま。ROYのベースに続き、ギターの音までもが聴こえると、歌い出しの前の「ドン!」という力強いスネアのブレイクの瞬間に暗幕が落ち、デビュー当時のような黒いスーツに身を包んだ4人の姿が。MARCYは黒髪になり、TAXMANとROYは髪型がかなりさっぱりしたような印象。JIMは変わらずに踊りまくりながら笑顔いっぱいでギターを弾いている。そんなメンバーたちの後ろには巨大なバンドロゴがそびえ、そのロゴは電飾がついていて、鮮やかに輝く。
のっけからROYのシャウトが響き渡り、ツアー初日の1曲目からバンドはすでに最高の状態にいることがわかるが、久しぶりのワンマンということもあってか、スタンディングエリアはもちろん、2階のバルコニー席までも埋め尽くした観客も「NO WAY」で声を出し、飛び跳ねまくる。みんながTHE BAWDIESのロックンロールを求めていたことが本当によくわかる。
早くも放たれた「YOU GOTTA DANCE」でいきなりクライマックスかのようにさらに飛び跳ねまくると、
「この曲から始まったと思っております。もうライブはとっくに始まってますけども(笑)、我々の歴史がこの曲で始まったと言っても過言ではない、という意味です」
とROYが話すと、ROY、JIM、TAXMANの3人がセンターに集まってネックを上下させる「I BEG YOU」へ。さすがベスト盤のリリースツアーだな、と思うのは、「YOU GOTTA DANCE」しかりこの「I BEG YOU」しかり、これまでのライブで最後を担うこともあったキラーチューンたちがこの序盤で演奏されているからである。
早くもROYによるMARCYいじりも始まりながら、ドラマの主題歌としてヒットし、バンドの代表曲となった「ROCK ME BABY」の前には、赤い照明が燃え盛るようなバンドのグルーヴを視覚的に映し出す中、セッション的な演奏が加わっている。こうした部分が見れるのはやはりツアーならではである。
TAXMANのカッティングギターが鳴らされると、こちらもCMのタイアップ曲としてバンドの代表曲になった「LEMONADE」ではこの日初めて聴き入る時間に。この曲がリリースまではひたすらにアッパーな曲がシングル曲としてリリースされていただけに、こうしたタイプの曲をシングルとしてリリースするのには当時は大変な勇気が必要な決断だったと思われるが、バンド側のその選択が間違っていなかったことは、この曲の受け入れられ方を見ればすぐにわかる。
JIMが高いポジションでくるくると回転しながらギターを弾く「NICE AND SLOW」から、この日初のTAXMANボーカル曲「LOVER BOY」へ。こうしてワンマンのような長い尺のライブの中盤に、決してROYのように濃いとは言えないTAXMANのボーカル曲が挟まれることによって、THE BAWDIESの持つメロディのポップさ、キャッチーさがあらわになっていく。
MCでは再びROYによるMARCYいじりが始まるも、JIMとTAXMANが
「これまでを振り返る、新しい一面が今でも見つかるって、MARCYのことばっかりじゃん!(笑)
昔はもっとみんなで話してたじゃん!(笑)」
とROYのMARCYのみをいじる内容に反発し、ROYは苦い顔をして乗り切ろうとするという、ある意味では長い年月を重ねた経験を見せる。
「昔はもっとクールだった!そんな変な顔しなかった!」
という、確かに昔はROYはめちゃくちゃ尖ってたよなぁ(それは声も含めて)と回想せざるを得ない2人のツッコミが入ると、ROYはやけっぱちになって、
「ロックンロールやらせてくれよっ!」
と何かを蹴飛ばすように足を上げ、「THE EDGE」から再びロックンロールに振り切れていく。
間奏部分での合唱パートも完全におなじみとなっているが、フェスなどでは満足な声の量が返って来ずにやり直したりすることも多い「SING YOUR SONG」ではそんなやり直しなど要求する必要もないくらいに、一発目から場内を大合唱が飲み込んでいく。そうなるのも当たり前なのだ。ここに集まった人たちはみんなTHE BAWDIESが好きで仕方なくて、THE BAWDIESのロックンロールで歌ったり踊ったりしたいんだから。
すると近年のライブではおなじみの、小芝居の始まりを告げるような音が鳴ると、今回は高校の女子カーリング部が舞台で、もぐもぐタイムにパンとソーセージを食べるという設定。「そだねー」というオリンピック時の流行語もJIMとTAXMANによってここぞとばかりに連発された中で始まった「HOT DOG」はさすがの破壊力。
ROYとTAXMANのハーモニーが重なるポップな「KICKS!」から、イントロのフレーズで大歓声が上がったのは「KEEP YOUR HAPPY」。近年はメドレーの中で短く演奏されることが多かった曲であるが、こうして1曲丸々ライブで聴きながら、みんな思い思いに体を揺らしているのを見ると、タイトル通りに「この幸せな時間がずっと続いてくれたらいいのに」と思う。
「懐かしい曲を!」
と言って演奏された「BABY SUE」、
「普段生きていたら色々なことがあると思います。不安とかを吐き出したり騒いで忘れるのも重要ですが、たまには寄り添うことも大事なんじゃないかと」
という「SAD SONG」の流れはTHE BAWDIESの激しいロックンロールというイメージとは違ったタイプの曲たちだが、こうしたタイプの曲があることを知って、THE BAWDIESにハマった人も実は多い。とりわけ「SAD SONG」はバンド初の武道館ワンマンの時にも、会場にいた人はもちろん、スペシャでの生中継を見ていた人からも最も印象に残った曲として挙げられていたのを見た。
しかしもはやライブも終盤。まるで新曲を演奏しているかのようなセッション的なイントロが追加された「45s」からは再びグルーヴで押しまくるロックンロールに回帰し、この日2曲目となるTAXMANボーカル曲「B.P.B」のサビでの飛び跳ね(JIMも一緒に飛び跳ねている)は実に楽しい。
しかしながらROYは
「TAXMANの曲が多過ぎたな」
と、わずか2曲でもTAXMANの曲が多かったと感じている様子。しかしTAXMANは、
「「HOT DOG」の小芝居、お前が全部作ってるみたいに言ってるけど、10個くらいは俺がゴーストライターしてるんだからな!(笑)」
と、ある意味衝撃のネタバラし。しかしながらTAXMANはこの日のようなオタクキャラが、JIMは女性の役が気に入っているようで、今回の小芝居はいつにも増して2人が乗り気だったという。MARCYは忍者役が好きらしいので、このツアーのどこかでそれぞれが好きなキャラをやる小芝居が披露されるとのこと。
そんな微笑ましいやり取りもありながら、
「乗り遅れないでくださいよ!」
と「IT'S TOO LATE」からはクライマックス。昨年からサビ前のタメを作るアレンジに変え、よりライブ仕様に生まれ変わった「JUST BE COOL」では場内の客電が点き、まるで2回目の武道館ワンマンで最後に演奏された時のことを彷彿とさせる。
しかしながらこの日はこれで終わりではない。ベスト盤はただの総括や振り返りではなく、さらにこの先へ進むためのものである、というのを示すべく、ベスト盤収録の、ガレージ感の強いロックンロールナンバーの新曲「FEELIN' FREE」でその姿勢を示すとともに、やっぱりTHE BAWDIESのロックンロールは最高にカッコいいな、と改めて実感させられる終わり方だった。
アンコールではメンバー全員がジャケットを脱いで白シャツ姿になり、
「みなさんに感謝を」
と言い、「I'M IN LOVE WITH YOU」でこうして目の前でメンバーが演奏をして、THE BAWDIESが大好きな人たちがこうして集まっていることの幸せを実感させてくれると、ラストはやはり「KEEP ON ROCKIN'」。間奏では観客の手拍子のみがサウンドとなり、我々全員がTHE BAWDIESのライブを作っているという空気に浸らせてくれると、コール&レスポンスは以前までのSEだった「ダンス天国」のフレーズ。やや難度が高いものではあるが、そこはやはりこれまでにライブで何度も聴いてきた曲なだけに、すぐにレスポンスできるあたりはさすがTHE BAWDIESのファンたちであった。JIMが客席最前列の柵に登ってレスポンスを促したというさらに燃えるような要素もあったが、もうこの瞬間を心から楽しみつくしてやる!こんなに楽しくて幸せな空間は他にない!という意思がその大合唱からは感じられた。
演奏が終わると、浮かれひょっとここと、TAXMANによる恒例のわっしょいコーナー。これまで様々な趣向を凝らしたわっしょいを行なってきたが、今回のツアーはシンプルに、ということで、スタンダードなわっしょいになったのだが、TAXMANが先ほどのJIM同様に客席最前の柵に乗っかってわっしょいを叫んだのは、熱量が高かったライブハウスならでは。
しかし今回はこれでもまだ終わらず、ROYがカメラマン橋本塁を呼んで、客席をバックに写真撮影。その際のコールは
「インディアナ!」「雅彦ー!」
という、前日に放送されたスペシャの特番で明らかになった、獣道とかにグイグイ入っていき、岩場をジャンプしてよじ登るというアウトドア派であったMARCYの新たなあだ名であったが、TAXMANいわく
「このコール&レスポンスあるんなら、わっしょいいらなくねぇ!?(笑)」
とのこと。
撮影が終わると、ピックなどを客席に投げ込みながら、観客に感謝を告げてステージを去っていった。最高の周年ツアー、全都道府県ツアーの始まり。その終着点はバンドにとって3回目となる日本武道館ワンマンだが、ROYが
「ベスト盤、38曲入ってるんで、一回のライブでは全部やり切れないんですね。だから各地で曲を入れ替えたりするだろうし」
と言っていただけに、武道館前にどこか他の地方にも行ってみたい気がしている。
昨日のスペシャの特番でもメンバーが
「小さい頃からずっと一緒にいるから、何周年っていう実感がない」
と言っていたが、何周年だからというのではなく、THE BAWDIESはこれまでも、きっと自分が出会う前からも、もちろん今日も最高だった。それはこれからもずっと変わらないことなんだろう。
近年こそフェスなどではアウェー感を感じることもある。(去年そのことについて書いたのが、http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-463.html?sp)
だけど初めてTHE BAWDIESのライブを見たあの日、「これは人気出るだろうな」と感じたが、それだけじゃない、このバンドには他のバンドとは違うオーラがあった。それはロックの神様がかけたとしか思えない、スーパーサイヤ人や、覇王色の覇気のような、選ばれたロックバンドにだけかかる魔法のようなもの。これまでのこのバンドのライブではいつもそれを感じてきたが、それはずっと変わっていない。今もこのバンドはロックンロールの魔法の中にいる。
1.EMOTION POTION
2.NO WAY
3.YOU GOTTA DANCE
4.I BEG YOU
5.ROCK ME BABY
6.LEMONADE
7.NICE AND SLOW
8.LOVER BOY
9.THE EDGE
10.SING YOUR SONG
11.HOT DOG
12.KICKS!
13.KEEP YOU HAPPY
14.BABY SUE
15.SAD SONG
16.45s
17.B.P.B
18.IT'S TOO LATE
19.JUST BE COOL
20.FEELIN' FREE
encore
21.I'M IN LOVE WITH YOU
22.KEEP ON ROCKIN'
FEELIN' FREE
https://youtu.be/9QPYXir2gmk
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