WANIMA ”Everybody!! Tour” @幕張メッセ 9~11ホール 4/21
- 2018/04/21
- 23:58
昨年3月に初のアリーナワンマンとして、さいたまスーパーアリーナでワンマンライブを行なってからのWANIMAのさらなる加速ぶりはもの凄いものがあった。
曲が次々に大型タイアップとしてテレビで流れ、バンド自身も様々な音楽番組に出演、さらには紅白歌合戦にも出演と、国民的なパンクバンドとしての位置を完全に不動のものにした。
そんな状況で年明けすぐにリリースされた2ndフルアルバム「Everybody!!」も当然のようにオリコン1位を獲得。2月からスタートした全国ツアーも全公演ソールドアウトという、お茶の間に着火した勢いがしっかり現場にも燃え移っている。
この日はツアー終盤、幕張メッセ2daysの初日。この幕張メッセ2daysすらもソールドアウトしているという状況はもはや恐ろしさすら感じる。
会場に入るとまず驚くのは、ステージが場内のど真ん中にあること。つまり、360°客席のセンターステージ。かつてBRAHMANもこの会場でセンターステージのライブを行なっているが、その時とは全く違う印象を抱くのは、そのステージの立派な造り。四隅を巨大な柱が支え、4方すべての上方にモニターが設置されている。
幕張メッセでロックバンドのライブが開催される際はオールスタンディングであるのが常であるが、一部ブロックには椅子が設置された指定席があるのも子供連れや高い年齢層の観客に配慮した、今のWANIMAの状況を表している。
ディズニーランドの音楽がBGMとしてひたすらに流れる中、18時を過ぎると場内が暗転し、前回のツアーのオープニングSEとして製作され、「Everybody!!」の1曲目に収録された「JUICE UP!!のテーマ」が爆音で流れ出し、早くも巻き起こる合唱。するとステージ下から3人がそれぞれポーズを取りながらせり上がってくるという登場。KENTAは早くもステージ上をはしゃぎ回りながら来てくれた観客に手を振ったりし、SEが終わると、そのまま「OLE!!」の演奏がはじまり、特効がいきなり炸裂する中、ステージ上のメンバーが回転し、360°あらゆる角度から見られることを想定した装置も生かしながら、SEの時以上に大きな合唱が会場を包んでいく。
KENTAの
「Everybody!!ツアー幕張メッセ!せーの!」
という言葉の後に
「開催しまーす!」
の大合唱が起こると、スタートこそアッパーな「OLE!!」であったが、続く「花火」は夏の切なさを感じさせる。登場からここまででいつも以上に様々な演出を使用したからか、やや緊張感を漂わせていたKENTAが花火の音を声で表現して曲を締める。今から夏の野外の夜に聴くのが楽しみになる曲である。
なぜかハモりを駆使したバンド紹介から、KENTAとFUJIは登場からここまでで会場を賑やかしまくっていたが、
「まだ一言も喋ってないギターのKO-SHINくん!次の曲をどうするのか言ってみなさい!」
とKO-SHINがKENTAに振られると、
「幕張ー!俺が引っ張るから、ついて来いー!WANIMA中盤戦!せーの!」
「開催しまーす!」
と紫と緑が混じり合うというカラフルな髪の色をしたKO-SHINが再び大合唱を煽ると、WANIMAのエロサイドの曲と言える「CHEEKY」ではステージの柱が色鮮やかに発光し、モニターには演奏するメンバーの他にもキャラクターのアニメーションが映し出されたりと、実に視覚的に忙しい。
しかしながらこうしたエロサイドの曲になるとサウンドとしてはレゲエやスカといった要素が色濃くなるのだが、そうしたパンクではないスタイルの曲でも演奏に力強さを感じるのは、間違いなくFUJIのドラムによるもの。一音一音が実に重く響く見た目通りにパワフルなドラムは、この男が加入してからようやくバンドが軌道に乗り始めたというバンドのストーリーに、そのキャラクター以上に説得力を持たせている。
「あなたがいれば…」
というフレーズから始まると一転して切なさを感じさせ、モッシュやダイブやサークルという激しい楽しみ方ではなく、ひたすらに汗を流しながら演奏するメンバーの姿と曲に込められた感情に向き合うことになる「TRACE」からは「Everybody!!」ツアーではあるが、様々な曲が聴けるんじゃないかという期待が高まってくる。
よって次はWANIMAの初期からのエロサイド曲「BIG UP」で再び妖しく照明が光るのだが、この曲の間奏でスペシャルゲストこと、FUJIの長渕剛モノマネが降臨。今回はなぜか「長渕剛がミッキーマウスマーチを歌う」というよくわからないネタであったが、KENTAから
「千葉だからディズニーランドだと思ってこの曲とか開演前BGMを仕込んだのに、幕張は全然関係ないってスタッフに言われた(笑)
熊本出身の田舎者だから違いがわからんけん(笑)」
と、この日の開演前BGMがひたすらディズニー縛りだったことも種明かし。
「この日のライブは夢の国を作り出そうとしているのか?」
というのは深読みし過ぎていたみたいだが、地方出身の人からしたらやはり千葉のイメージはディズニーランドなんだろうか。
マイクスタンドを手でさすりまくりながら、最後には
「先っぽだけ!先っぽだけ!先っぽだけ!
先っぽだけと言わずに全部奥まで入れさせて!」
と曲に合わせてKENTAの下ネタが炸裂していた。
するとここで早くも「Everybody!!」の先である新曲「Drive」を披露。
バンド紹介でもハモりを駆使していたが、歌い出しが3人のハモりというのが実に新鮮で、KENTAが演奏前に言っていたように、実にシンプルな、「盛る」のではなく「削ぎ落とす」曲で、パンクというよりはもっと大文字のスタジアムロック的な曲。すでに映画のタイアップも決まっているが、KENTAの言葉からはまださらなるアレンジの余地がありそうな予感もしている。
KENTAがベースを置いてステージ4方向に向けて走り回りながら歌い始めた「いいから」、パンクならではの高速BPMだからこその巨大な左回りサークルが発生した「Hey Lady」で、聴き入るしかなかった新曲の後に再び大合唱を轟かせると、
「一旦休憩!」
とFUJIが宣言し、ステージは暗闇に包まれる。
宣言通りにしばしのインターバルを置いてからステージが明るくなると、KO-SHINはアコギを持ち、FUJIはカホンに座り、KENTAはハンドマイク。昨年のさいたまスーパーアリーナでも披露されたアコースティックセットでの演奏である。
アコースティックでありながらも大合唱が起きた「雨上がり」、KO-SHINのアコギがスパニッシュな雰囲気に生まれ変わらせた「昨日の歌」、みんなで大合唱するための「終わりのはじまり」と、過去曲のアコースティックアレンジとなったが、こうして丸裸と言ってもいいようなアレンジで演奏されることによって、WANIMAのメロディの素晴らしさを改めて知ることができる。WANIMAがこれだけ巨大な存在になれたのはパンクバンドであったからというのは自分の中で変わらないし、そこはずっと頼もしさを感じている部分でもあるが、もし仮にWANIMAがパンクバンドでなかったとしても、このメロディをもってすればどんなジャンルのバンドであってもこのくらい巨大な存在になっていたかもしれない。そう思わせるくらいにメロディの力が圧倒的なのである。これだけ素晴らしいメロディの曲を作れるからこそ、他のバンドでは手が届かないところにWANIMAは行けたのだし、結局のところ音楽に1番大事なものはメロディであると実感させられる。
アコースティックを終えると、
「俺たちは準備完了してるけん!みんなとともに歌う準備できてるけど、みんなはどうや!?」
と問いかけると、一曲まるまる凄まじい声量の大合唱が起こり、もはやパンクシーン、ロックシーンだけでなく、国民的なアンセムになったことをまざまざと見せつけた「ともに」で駆け上がると、KO-SHINが好きな曲であるという「ANCHOR」から再び「Everybody!!」モードへ。
とはいえ次に演奏されたのはバラード曲「SNOW」。それまでのド派手な照明は一切なく、真っ暗になった場内を観客の携帯のライトが、まるで電灯に照らされた雪のように広がっていくと、ステージ上からも雪が客席に降り注ぐ。こうしたバラード曲を聴けるのはやはりワンマンツアーならではだし、こうした曲に合わせた演出が見れるのはこのキャパならではと言える。
「俺たちより若い人たちは就活とかいろんなもんと戦ってるだろうけど、グッと食いしばって頑張るんだぞ!
俺たちより年上の人たちはもっと長生きして、ずっとWANIMAのライブに来続けてください!俺たち金は貸せないけど、力なら貸せるんで!」
と、KENTAがWANIMAのデビュー時から一貫している「聴いてくれる人の力になるような音楽、存在でいたい」という姿勢を改めて言葉にし、
「浮かんで消えた思いが 絶えず増える心のアザが
”シビれるような明日を”
最後に手繰り寄せ」
という歌詞がまさにその姿勢をそのまま歌う「ヒューマン」からはクライマックスへ。
「もう時間もすっかり夜やけん!オドルヨルやけん!」
と「オドルヨル」、ステージから炎が吹き出した「サブマリン」とエロサイド2連発を終えると、あと2曲でライブが終わってしまうこと、
「WANIMAはこれからもどんどん新しいことに挑戦していくけん!」
とバンドのこれからの姿勢を語ると、新たなバンドのアンセムになるであろう「シグナル」から、アルバムの最後を飾る曲として作られ、こうしてライブでも最後に演奏されることになったタイトル曲「Everybody!!」で最後にも大合唱を巻き起こした。
演奏を終えたメンバーがステージから捌けるまでは「エビバデ!!のテーマ」という新曲が終演SEとして流れたが、モニターにはスタジオでリハーサルをしている3人の姿が。するとKO-SHINが
「エビバデ!!ツアーなのにエビの気持ちがわかってない!」
とよくわからないことを口走ると、メンバー3人がエビの格好をして様々なミッションに挑むという内容の映像が流れる。タイキックを受けたり、泳いだりと、忙しい中にもかかわらずかなり体を張った内容であった。
映像が終わると、すでにステージにはメンバーの姿が。KENTAとKO-SHINが帽子をかぶる中、聴いてくれている人たちの背中を押すような「CHARM」。一年前のさいたまスーパーアリーナで新曲として演奏されていたこの曲が、今ではすっかりバンドの代表曲になっている。
するとここでツアーの各地で行われてきたリクエストコーナーへ。KENTAが
「今日誕生日の人ー!」
と誕生日の人からリクエストを募ろうとするも、やはりこの規模では数人いたらしく(本当かどうかはわからないが)、誕生日の人に決めてもらうのは断念。その中には免許証を掲げていた人もおり、
「誕生日っていうのが嘘ではないと。今日が私の誕生日っていう照明だと」
といじっていたが、結局は指定席の席番号が書かれたクジを引くという形に。メンバーはてっきりアッパーな曲が来ると思っていたらしいが、引いた女性が選んだのは「Hey yo…」というまさかのバラード。しかしながら歌っている時にKENTAが声を詰まらせてしまう場面もあり、その表情からも感極まっていたのかと思いきや、
「久しぶり過ぎて歌詞が飛んでしまった」
ということで、リベンジを期すべく、先ほどの免許証を掲げていた女性にリクエストを募ると、「エル」という回答が。
「これも久しぶり過ぎて、さっきみたいに歌詞が飛ぶかもしれん!やけん、みんな歌ってくれ!」
と言うと、歌い出しから大きな合唱が轟く。とりわけ、
「明日晴れるかな 晴れたらいいのにな」
というフレーズはメンバーのコーラスも相まって、より一層大きく聞こえたが、なぜ合唱することがこんなにもその場所にいる我々の心と体を揺さぶるのか。それは歌っている人それぞれにその曲への様々な想いや感情があり、それが合わさることによって、ただCDで聴いているだけではわからなかった曲の力が現れるから。合唱という行為は時には「メンバーの声が聞こえない」というネガティヴなものになってしまいがちだが、WANIMAのライブではWANIMAの曲を合唱することで曲が完成しているという感すらある。こんなにたくさんの曲を、サビだけでない部分までみんなが歌えるようなバンドを自分は他に知らない。Oasisのライブを見た時だって、やはり合唱が起きる曲と起きない曲があった。それくらい、WANIMAの曲はどの曲にも普遍性が宿っている。
そして銀テープが放たれる中、「これだけは」をトドメとばかりに最後に演奏したのだが、やはり大合唱が起こる。この曲にいたってはシングルのカップリング曲である。その曲をみんなが知っているだけではなく、みんなが歌える。やっぱりこんなバンドは他にいない。
ジャンルなんてもはやどうでもいい、というのはミュージシャン自身もよく口にしていることだが、パンクロックで人生が変わった自分のような人間にとっては、パンクであるということは何よりも大きなことである。WANIMAはパンクバンドでありながら、今までのパンクバンドが届かなかったところに手が届いている。
早くから神格化が始まっていたTHE BLUE HEARTSは実は売れた曲というのは数えるくらいしかないし、Hi-STANDARDはブームを生み出したすぐ後に活動休止した。GOING STEADYもまた絶頂期に突如として解散した。メジャーデビューシングルでいきなりオリコン1位を獲得した175Rもその勢いは長くは続かなかった。
それくらい、パンクバンドが長く続いていくのは難しい。パンクというのはサウンド的には単純なものであるため、同じことをしていたら飽きられるし、かといって方向転換をすると最も叩かれやすいという、実に難しいスタイルだからである。
しかしWANIMAはそんな杞憂すらも軽々と飛び越えていきそうな気がしている。それはとかく「若者のための音楽」になりがちなパンクロックを、子供から自分の親世代の人たちまでという、まるでポップミュージックのように聴く人の世代を選ぶことがない位置にまで持ってきてしまったから。
そしてそうやって自分よりもはるかに年上の方々が、子供たちと一緒にライブに来ている姿を見ると、パンクは若者のための音楽のようであって、本当に曲が素晴らしいものであれば、一生聴き続けていくことができる音楽であることを証明してくれているように見える。
自分が50代、60代になった時に、まだWANIMAがパンクロックを鳴らしていたら。きっと自分はこうしてライブを見に来るだろうし、周りにはそういう人がたくさんいるはず。何よりも、メンバーたちは変わらぬ笑顔でその歳になった我々を受け入れてくれるはず。演奏が終わり、終演SEとして「切手のない贈りもの」「JUICE UP!!のテーマ」が流れながらサインボールを投げたり、4方向の観客を背景に写真を撮る3人の姿を見て、心からそう思えた。
そして360°というシステムは自分にとっては実に見やすいものであると思った。普通の幕張メッセのステージでのライブよりも、視覚的にも聴覚的にもステージが遠く感じなかったから。さらに演奏しているメンバーが回転することで、正面やサイド、背面といういろんな角度からメンバーの演奏している姿を見ることができたから。
だからツアーファイナルとなる西武ドームでのライブも、どれだけキャパがデカくなってもメンバーを遠くに感じるようなことには絶対にならないはず。それこそが、WANIMAのメンバーの持つ最大の魅力なのかもしれない。
1.OLE!!
2.花火
3.CHEEKY
4.TRACE
5.BIG UP
6.Drive (新曲)
7.いいから
8.Hey Lady
9.雨上がり (アコースティック)
10.昨日の歌 (アコースティック)
11.終わりのはじまり (アコースティック)
12.ともに
13.ANCHOR
14.SNOW
15.ヒューマン
16.オドルヨル
17.サブマリン
18.シグナル
19.Everybody!!
encore
20.CHARM
21.Hey yo…
22.エル
23.これだけは
ヒューマン
https://youtu.be/MqfNcXPse6w
Next→ 4/22 THE BAWDIES @新木場STUDIO COAST
曲が次々に大型タイアップとしてテレビで流れ、バンド自身も様々な音楽番組に出演、さらには紅白歌合戦にも出演と、国民的なパンクバンドとしての位置を完全に不動のものにした。
そんな状況で年明けすぐにリリースされた2ndフルアルバム「Everybody!!」も当然のようにオリコン1位を獲得。2月からスタートした全国ツアーも全公演ソールドアウトという、お茶の間に着火した勢いがしっかり現場にも燃え移っている。
この日はツアー終盤、幕張メッセ2daysの初日。この幕張メッセ2daysすらもソールドアウトしているという状況はもはや恐ろしさすら感じる。
会場に入るとまず驚くのは、ステージが場内のど真ん中にあること。つまり、360°客席のセンターステージ。かつてBRAHMANもこの会場でセンターステージのライブを行なっているが、その時とは全く違う印象を抱くのは、そのステージの立派な造り。四隅を巨大な柱が支え、4方すべての上方にモニターが設置されている。
幕張メッセでロックバンドのライブが開催される際はオールスタンディングであるのが常であるが、一部ブロックには椅子が設置された指定席があるのも子供連れや高い年齢層の観客に配慮した、今のWANIMAの状況を表している。
ディズニーランドの音楽がBGMとしてひたすらに流れる中、18時を過ぎると場内が暗転し、前回のツアーのオープニングSEとして製作され、「Everybody!!」の1曲目に収録された「JUICE UP!!のテーマ」が爆音で流れ出し、早くも巻き起こる合唱。するとステージ下から3人がそれぞれポーズを取りながらせり上がってくるという登場。KENTAは早くもステージ上をはしゃぎ回りながら来てくれた観客に手を振ったりし、SEが終わると、そのまま「OLE!!」の演奏がはじまり、特効がいきなり炸裂する中、ステージ上のメンバーが回転し、360°あらゆる角度から見られることを想定した装置も生かしながら、SEの時以上に大きな合唱が会場を包んでいく。
KENTAの
「Everybody!!ツアー幕張メッセ!せーの!」
という言葉の後に
「開催しまーす!」
の大合唱が起こると、スタートこそアッパーな「OLE!!」であったが、続く「花火」は夏の切なさを感じさせる。登場からここまででいつも以上に様々な演出を使用したからか、やや緊張感を漂わせていたKENTAが花火の音を声で表現して曲を締める。今から夏の野外の夜に聴くのが楽しみになる曲である。
なぜかハモりを駆使したバンド紹介から、KENTAとFUJIは登場からここまでで会場を賑やかしまくっていたが、
「まだ一言も喋ってないギターのKO-SHINくん!次の曲をどうするのか言ってみなさい!」
とKO-SHINがKENTAに振られると、
「幕張ー!俺が引っ張るから、ついて来いー!WANIMA中盤戦!せーの!」
「開催しまーす!」
と紫と緑が混じり合うというカラフルな髪の色をしたKO-SHINが再び大合唱を煽ると、WANIMAのエロサイドの曲と言える「CHEEKY」ではステージの柱が色鮮やかに発光し、モニターには演奏するメンバーの他にもキャラクターのアニメーションが映し出されたりと、実に視覚的に忙しい。
しかしながらこうしたエロサイドの曲になるとサウンドとしてはレゲエやスカといった要素が色濃くなるのだが、そうしたパンクではないスタイルの曲でも演奏に力強さを感じるのは、間違いなくFUJIのドラムによるもの。一音一音が実に重く響く見た目通りにパワフルなドラムは、この男が加入してからようやくバンドが軌道に乗り始めたというバンドのストーリーに、そのキャラクター以上に説得力を持たせている。
「あなたがいれば…」
というフレーズから始まると一転して切なさを感じさせ、モッシュやダイブやサークルという激しい楽しみ方ではなく、ひたすらに汗を流しながら演奏するメンバーの姿と曲に込められた感情に向き合うことになる「TRACE」からは「Everybody!!」ツアーではあるが、様々な曲が聴けるんじゃないかという期待が高まってくる。
よって次はWANIMAの初期からのエロサイド曲「BIG UP」で再び妖しく照明が光るのだが、この曲の間奏でスペシャルゲストこと、FUJIの長渕剛モノマネが降臨。今回はなぜか「長渕剛がミッキーマウスマーチを歌う」というよくわからないネタであったが、KENTAから
「千葉だからディズニーランドだと思ってこの曲とか開演前BGMを仕込んだのに、幕張は全然関係ないってスタッフに言われた(笑)
熊本出身の田舎者だから違いがわからんけん(笑)」
と、この日の開演前BGMがひたすらディズニー縛りだったことも種明かし。
「この日のライブは夢の国を作り出そうとしているのか?」
というのは深読みし過ぎていたみたいだが、地方出身の人からしたらやはり千葉のイメージはディズニーランドなんだろうか。
マイクスタンドを手でさすりまくりながら、最後には
「先っぽだけ!先っぽだけ!先っぽだけ!
先っぽだけと言わずに全部奥まで入れさせて!」
と曲に合わせてKENTAの下ネタが炸裂していた。
するとここで早くも「Everybody!!」の先である新曲「Drive」を披露。
バンド紹介でもハモりを駆使していたが、歌い出しが3人のハモりというのが実に新鮮で、KENTAが演奏前に言っていたように、実にシンプルな、「盛る」のではなく「削ぎ落とす」曲で、パンクというよりはもっと大文字のスタジアムロック的な曲。すでに映画のタイアップも決まっているが、KENTAの言葉からはまださらなるアレンジの余地がありそうな予感もしている。
KENTAがベースを置いてステージ4方向に向けて走り回りながら歌い始めた「いいから」、パンクならではの高速BPMだからこその巨大な左回りサークルが発生した「Hey Lady」で、聴き入るしかなかった新曲の後に再び大合唱を轟かせると、
「一旦休憩!」
とFUJIが宣言し、ステージは暗闇に包まれる。
宣言通りにしばしのインターバルを置いてからステージが明るくなると、KO-SHINはアコギを持ち、FUJIはカホンに座り、KENTAはハンドマイク。昨年のさいたまスーパーアリーナでも披露されたアコースティックセットでの演奏である。
アコースティックでありながらも大合唱が起きた「雨上がり」、KO-SHINのアコギがスパニッシュな雰囲気に生まれ変わらせた「昨日の歌」、みんなで大合唱するための「終わりのはじまり」と、過去曲のアコースティックアレンジとなったが、こうして丸裸と言ってもいいようなアレンジで演奏されることによって、WANIMAのメロディの素晴らしさを改めて知ることができる。WANIMAがこれだけ巨大な存在になれたのはパンクバンドであったからというのは自分の中で変わらないし、そこはずっと頼もしさを感じている部分でもあるが、もし仮にWANIMAがパンクバンドでなかったとしても、このメロディをもってすればどんなジャンルのバンドであってもこのくらい巨大な存在になっていたかもしれない。そう思わせるくらいにメロディの力が圧倒的なのである。これだけ素晴らしいメロディの曲を作れるからこそ、他のバンドでは手が届かないところにWANIMAは行けたのだし、結局のところ音楽に1番大事なものはメロディであると実感させられる。
アコースティックを終えると、
「俺たちは準備完了してるけん!みんなとともに歌う準備できてるけど、みんなはどうや!?」
と問いかけると、一曲まるまる凄まじい声量の大合唱が起こり、もはやパンクシーン、ロックシーンだけでなく、国民的なアンセムになったことをまざまざと見せつけた「ともに」で駆け上がると、KO-SHINが好きな曲であるという「ANCHOR」から再び「Everybody!!」モードへ。
とはいえ次に演奏されたのはバラード曲「SNOW」。それまでのド派手な照明は一切なく、真っ暗になった場内を観客の携帯のライトが、まるで電灯に照らされた雪のように広がっていくと、ステージ上からも雪が客席に降り注ぐ。こうしたバラード曲を聴けるのはやはりワンマンツアーならではだし、こうした曲に合わせた演出が見れるのはこのキャパならではと言える。
「俺たちより若い人たちは就活とかいろんなもんと戦ってるだろうけど、グッと食いしばって頑張るんだぞ!
俺たちより年上の人たちはもっと長生きして、ずっとWANIMAのライブに来続けてください!俺たち金は貸せないけど、力なら貸せるんで!」
と、KENTAがWANIMAのデビュー時から一貫している「聴いてくれる人の力になるような音楽、存在でいたい」という姿勢を改めて言葉にし、
「浮かんで消えた思いが 絶えず増える心のアザが
”シビれるような明日を”
最後に手繰り寄せ」
という歌詞がまさにその姿勢をそのまま歌う「ヒューマン」からはクライマックスへ。
「もう時間もすっかり夜やけん!オドルヨルやけん!」
と「オドルヨル」、ステージから炎が吹き出した「サブマリン」とエロサイド2連発を終えると、あと2曲でライブが終わってしまうこと、
「WANIMAはこれからもどんどん新しいことに挑戦していくけん!」
とバンドのこれからの姿勢を語ると、新たなバンドのアンセムになるであろう「シグナル」から、アルバムの最後を飾る曲として作られ、こうしてライブでも最後に演奏されることになったタイトル曲「Everybody!!」で最後にも大合唱を巻き起こした。
演奏を終えたメンバーがステージから捌けるまでは「エビバデ!!のテーマ」という新曲が終演SEとして流れたが、モニターにはスタジオでリハーサルをしている3人の姿が。するとKO-SHINが
「エビバデ!!ツアーなのにエビの気持ちがわかってない!」
とよくわからないことを口走ると、メンバー3人がエビの格好をして様々なミッションに挑むという内容の映像が流れる。タイキックを受けたり、泳いだりと、忙しい中にもかかわらずかなり体を張った内容であった。
映像が終わると、すでにステージにはメンバーの姿が。KENTAとKO-SHINが帽子をかぶる中、聴いてくれている人たちの背中を押すような「CHARM」。一年前のさいたまスーパーアリーナで新曲として演奏されていたこの曲が、今ではすっかりバンドの代表曲になっている。
するとここでツアーの各地で行われてきたリクエストコーナーへ。KENTAが
「今日誕生日の人ー!」
と誕生日の人からリクエストを募ろうとするも、やはりこの規模では数人いたらしく(本当かどうかはわからないが)、誕生日の人に決めてもらうのは断念。その中には免許証を掲げていた人もおり、
「誕生日っていうのが嘘ではないと。今日が私の誕生日っていう照明だと」
といじっていたが、結局は指定席の席番号が書かれたクジを引くという形に。メンバーはてっきりアッパーな曲が来ると思っていたらしいが、引いた女性が選んだのは「Hey yo…」というまさかのバラード。しかしながら歌っている時にKENTAが声を詰まらせてしまう場面もあり、その表情からも感極まっていたのかと思いきや、
「久しぶり過ぎて歌詞が飛んでしまった」
ということで、リベンジを期すべく、先ほどの免許証を掲げていた女性にリクエストを募ると、「エル」という回答が。
「これも久しぶり過ぎて、さっきみたいに歌詞が飛ぶかもしれん!やけん、みんな歌ってくれ!」
と言うと、歌い出しから大きな合唱が轟く。とりわけ、
「明日晴れるかな 晴れたらいいのにな」
というフレーズはメンバーのコーラスも相まって、より一層大きく聞こえたが、なぜ合唱することがこんなにもその場所にいる我々の心と体を揺さぶるのか。それは歌っている人それぞれにその曲への様々な想いや感情があり、それが合わさることによって、ただCDで聴いているだけではわからなかった曲の力が現れるから。合唱という行為は時には「メンバーの声が聞こえない」というネガティヴなものになってしまいがちだが、WANIMAのライブではWANIMAの曲を合唱することで曲が完成しているという感すらある。こんなにたくさんの曲を、サビだけでない部分までみんなが歌えるようなバンドを自分は他に知らない。Oasisのライブを見た時だって、やはり合唱が起きる曲と起きない曲があった。それくらい、WANIMAの曲はどの曲にも普遍性が宿っている。
そして銀テープが放たれる中、「これだけは」をトドメとばかりに最後に演奏したのだが、やはり大合唱が起こる。この曲にいたってはシングルのカップリング曲である。その曲をみんなが知っているだけではなく、みんなが歌える。やっぱりこんなバンドは他にいない。
ジャンルなんてもはやどうでもいい、というのはミュージシャン自身もよく口にしていることだが、パンクロックで人生が変わった自分のような人間にとっては、パンクであるということは何よりも大きなことである。WANIMAはパンクバンドでありながら、今までのパンクバンドが届かなかったところに手が届いている。
早くから神格化が始まっていたTHE BLUE HEARTSは実は売れた曲というのは数えるくらいしかないし、Hi-STANDARDはブームを生み出したすぐ後に活動休止した。GOING STEADYもまた絶頂期に突如として解散した。メジャーデビューシングルでいきなりオリコン1位を獲得した175Rもその勢いは長くは続かなかった。
それくらい、パンクバンドが長く続いていくのは難しい。パンクというのはサウンド的には単純なものであるため、同じことをしていたら飽きられるし、かといって方向転換をすると最も叩かれやすいという、実に難しいスタイルだからである。
しかしWANIMAはそんな杞憂すらも軽々と飛び越えていきそうな気がしている。それはとかく「若者のための音楽」になりがちなパンクロックを、子供から自分の親世代の人たちまでという、まるでポップミュージックのように聴く人の世代を選ぶことがない位置にまで持ってきてしまったから。
そしてそうやって自分よりもはるかに年上の方々が、子供たちと一緒にライブに来ている姿を見ると、パンクは若者のための音楽のようであって、本当に曲が素晴らしいものであれば、一生聴き続けていくことができる音楽であることを証明してくれているように見える。
自分が50代、60代になった時に、まだWANIMAがパンクロックを鳴らしていたら。きっと自分はこうしてライブを見に来るだろうし、周りにはそういう人がたくさんいるはず。何よりも、メンバーたちは変わらぬ笑顔でその歳になった我々を受け入れてくれるはず。演奏が終わり、終演SEとして「切手のない贈りもの」「JUICE UP!!のテーマ」が流れながらサインボールを投げたり、4方向の観客を背景に写真を撮る3人の姿を見て、心からそう思えた。
そして360°というシステムは自分にとっては実に見やすいものであると思った。普通の幕張メッセのステージでのライブよりも、視覚的にも聴覚的にもステージが遠く感じなかったから。さらに演奏しているメンバーが回転することで、正面やサイド、背面といういろんな角度からメンバーの演奏している姿を見ることができたから。
だからツアーファイナルとなる西武ドームでのライブも、どれだけキャパがデカくなってもメンバーを遠くに感じるようなことには絶対にならないはず。それこそが、WANIMAのメンバーの持つ最大の魅力なのかもしれない。
1.OLE!!
2.花火
3.CHEEKY
4.TRACE
5.BIG UP
6.Drive (新曲)
7.いいから
8.Hey Lady
9.雨上がり (アコースティック)
10.昨日の歌 (アコースティック)
11.終わりのはじまり (アコースティック)
12.ともに
13.ANCHOR
14.SNOW
15.ヒューマン
16.オドルヨル
17.サブマリン
18.シグナル
19.Everybody!!
encore
20.CHARM
21.Hey yo…
22.エル
23.これだけは
ヒューマン
https://youtu.be/MqfNcXPse6w
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