キュウソネコカミ DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018 -Despair Makes Cowards Courageous- @Zepp DiverCity 4/6
- 2018/04/06
- 23:40
シーン登場時の「すぐに消えそうなバンド」という声はどこへやら、消えるどころか、さらにバンドとして進化を遂げていることを示した傑作アルバム「にゅ~うぇいぶ」を昨年リリースし、一体いつ休んでいるのか?&制作しているのか?と心配になるくらいにライブ三昧の日々を過ごしている、キュウソネコカミ。
今回のワンマンツアー、東京公演は前日は新木場STUDIO COAST、この日はZepp DiverCityでの変則的な2days。前回のツアーの東京公演は渋谷O-EASTというこのバンドの状況を考えると狭いと言える会場だっただけに、本来のキャパに戻ったとも言える。
開演前のステージには紗幕が張られており、この時点で「今日は何が起こるんだろうか?」と期待を抱かせる中、19時を過ぎた頃に場内が暗転すると、紗幕にはバンドのマスコットキャラのネズミくんと、ライブのプロデューサーとしておなじみのP青木のアニメーションによる前説兼諸注意が。あらかじめ録音されたものにもかかわらず噛みまくるというP青木のポンコツっぷりに表情を変えるネズミくんが実に可愛らしい。
前説が終わると、10秒前からのカウントダウンが始まり、0になったところで紗幕が落ちると、そこにはすでにメンバーがスタンバイしており、すぐさま音が鳴る。中国のお城を思い起こさせるようなステージセットに、いきなり客席に向かって放たれまくるレーザー光線。広いライブハウスだからこその演出が早くも全開になる中、
「止まったら死ぬかもしれない 目の色変えて動き出せよ」
「困ったら仲間の顔見て 誰にも負けない生き様ぶちかませ」
と、メンバー全員がサビを歌い、かつてないほどの声の分厚さを感じさせながら、バンドとしての新たな宣誓とも言える「5RATS」からスタート。もうこの段階で暑く、熱いが、「サギグラファー」ではセイヤが
「愛してくれよ 無加工のキュウソを!」
と歌詞を変えて歌い、早くも客席にはキュウソの音楽を愛する人の熱で満ち溢れていく。
ライブを重ねまくったことによってメンバー個々の演奏とそれが合わさったことによるバンドのグルーヴが一段と力強さと鋭さを増しているが、ライブではおなじみである「ファントムバイブレーション」のイントロのセッション的なアレンジも「これなんの曲だっけ?」と思ってしまうくらいにブラッシュアップされており、何度となく聴いているおなじみの曲なのにもかかわらず、マンネリ感は全く感じさせない。
「付かず離れずメンヘラ」
というサビのフレーズとヨコタのシンセのサウンドがクセになる、キュウソならではのラブソング「メンヘラちゃん」と、「にゅ~うぇいぶ」の曲を軸にしながら、踊ろうと思っていなくても踊らずにはいられなくなるのは、カワクボとソゴウというバンドの土台を支えるリズム隊の演奏がしっかりしているから。
「しんき…台場ー!」
と、別会場での変則的な東京2daysなだけにやはりセイヤがついつい間違えそうになってしまいながらも、「ウマピラス」という謎フレーズの前のブレイクを溜めまくった「辛あわせ」あたりはワンマンでないとなかなか聴けないカップリング曲。
キュウソと言えば、主にセイヤとヨコタのメンバーによる面白いMCややり取りも楽しみであり持ち味の1つでもあるが、前半はひたすらに突っ走りまくり、
「各地でも何回もやっている」
というショートチューン「家」を2連発してからようやく小休止するのだが、小休止を挟んでまたもや「家」を投下するという予測不能っぷり。しかしこの3回目ではレーザーやCO2噴射など、用意された演出を無駄にフル活用しつつ、最後のフレーズを「Tamahome」とタイアップ先の企業に合わせて変えると、ステージ背面にもレーザー光線で「Tamahome」の文字が映し出される。その流れでもはや悪ノリと言ってもいい、TamahomeのオリジナルCM曲「ハッピーライフ」までカバーしてしまうが、悪ノリとは思えないくらいに演奏自体はカッコいいものになっているのがバンドとしての地力の強さである。
ヨコタが股間にガス噴射機を挟んで歌うという初期曲の「性ビジネスは不滅」「ウツロウココロ」というレア曲が聴けるのは嬉しい限りだが、この金がかかっているステージのセットはいつ使うんだろうか?と思っていると、ここでセイヤが一瞬姿を消す。
おっさんが不倫相手と一緒にお台場に来ていることを匂わせるような影アナ(お台場を舞台にしていたということは各会場で変えているはず)が流れた後に、ヨコタがシンセからキーボードにスイッチすると、セットの上から金色のジャケットを着たセイヤが登場。歌謡曲というよりももはや演歌的な「ギラギラおじさん」だが、間奏では
「既婚者のピアノ!」
と結婚しているヨコタをいじりつつ、
「箱根~」「熱海~」
という不倫旅行で訪れる場所のコール&レスポンスも行い、最後にはジャケットの内側をセイヤが見せると「ダンディ坂野」(確かに金のジャケットを着ているが、ギラギラおじさんかというと?)の文字が貼ってあることにより、最後の決めポーズは懐かしのゲッツ。
一転してセイヤがジャケットを脱ぐと、そのまま客席に突入していく「TOSHI-LOWさん」ではBRAHMAN的なハードな音像をも軽々とメンバーは乗りこなし、セイヤもTOSHI-LOWになりきるというよりも、TOSHI-LOWが憑依しているかのような男臭い歌唱法に。以前は完全にひょろひょろ体型だったセイヤの肉体がムキムキになっているように見えたのもTOSHI-LOWが憑依していたからだろうか。
さらにセイヤが地球のヘルメットを被って歌い、最後にはローラースケート的なものを履いたのか、ステージ上をぐるぐると回るという、曲に合わせたパフォーマンスが次々に炸裂した「俺は地球」は幕張メッセイベントホールでワンマンを行なった時あたりからライブでやっていたものの、ドツボにハマってアレンジが混迷を極めていた曲であったが、すっかりその経験をも昇華したかのようなパフォーマンスである。
ここでようやくMC…かと思いきや、セイヤとヨコタ不在の、オカザワ&カワクボ&ソゴウという、普段のライブでは喋らない3人によるMCタイムという挑戦。
カワクボ「ある雑誌の撮影でメンバーで並んで写真を撮ったら、セイヤとソゴウに挟まれたことによって、5cmくらいのお立ち台に立たされて身長を合わされた(笑)」
という小柄だからこそのカワクボによる嘆きもありながらも、結局は新曲がアニメの主題歌になったこと、そのアニメが翌日からオンエアされることという告知がメイン。そのアニメは「MAJOR 2」という野球アニメなのだが、野球経験者であるカワクボがセンター、オカザワがサードを守っていたという経歴に対してソゴウが、
「サードってオカザワみたいなやつじゃなくて、ガッチリ体型の強打者がやるイメージやん」
と、自身のサード観を展開するが(去年まで巨人にした村田修一や、かつて巨人にいた江藤智あたりのイメージか?)、野球にあまり詳しくない人が多いのか、なぜかスベったみたいな空気になってしまい、合流したセイヤとヨコタに突っ込まれまくる。
「NO MORE 劣化実写化」ではNO MORE映画泥棒もステージに登場して海賊盤はダメダメダンスを踊り、「GALAXY」の我々は宇宙人ダンスと続いて一体感が増していくと、童貞をテーマにした2曲「サクランボウイ」「KMDT25」を連発し、さらにありのままの自分をさらけ出す「わかってんだよ」と、そうしたいわゆるクラスのヒエラルキーで下部に属していた男たちだからこそのヤケクソエネルギーがエモさにそのまま変換されていく。キュウソは銀杏BOYZに多大なる影響を受けてきたバンドであり(かつてツアーではカバーもやっていた)、このあたりの曲でのエモさはその系譜をキュウソが受け継いでいることの証明でもある。
また、「KMDT25」の途中、ちょうど盆踊りのサウンドになったあたりで、最前ブロックにいた女性が倒れてしまうという出来事があった。それにいち早く気づいたのはセイヤで、すぐさまスタッフを呼んで救出させたのだが、速やかに通路を空けた観客は
「楽しくても 思いやりとマナーを忘れるな」
というキュウソのライブの精神が完全に染み付いているし、救出されるのを待ちながらも手拍子を続けてライブを途切れさせなかった(ライブが途切れたら倒れた人が責任を感じてしまうはず)一体感は素晴らしいものがあった。
「男はみんな剛毛だ!イケメンはみんな脱毛している!みんな、目を覚ませ!」
と、なぜか肌がツルツルだと思われることがよくあるというセイヤが胸の内をぶちまける「MEGA SHAKE IT!!」からは怒涛のクライマックスへ。「家」を連発したことによって、この段階ですでに曲数は20を超えており、もうそろそろ終わってもおかしくないくらいではあったが、曲中にTamahomeからの差し入れを掲げた「KMTR645」、セイヤが客席真ん中あたりまで人の上を歩いていった「DQNなりたい~」、「ニャー!」の声とともに飛び跳ねまくる「NEKOSAMA」と、面白さやギミックだけではない、ライブでのキラーチューン、それすなわち強い曲をこんなにも持っているバンドであるということに改めて気付かされるし、この終盤でさらにバンドの演奏がガッチリと噛み合ってきているように感じるあたりは恐ろしさすら感じる。
そしてラストの「ハッピーポンコツ」では銀テープが発射されたのだが、この曲ならではの幸せな空気に包まれた中、セイヤは
「銀テープは分け合ってな!」
と、キュウソのファンから心優しさを感じるのは、メンバー自身が誰よりも心優しく、それをファンがしっかりと嗅ぎとっているからであるというのがわかる一言を残してステージを去って行った。
アンコールではメンバーが全員ツアーTシャツに着替えて登場すると、翌週に控えた地元である神戸の国際記念ホールでのワンマンが全然売り切れておらず、
「19:30に終わるから新幹線で東京に日帰りできるで!」
とこの日の観客に来てもらうべく決死のアピール。現実的には厳しいだろうけど、この日のライブを見た人は行けるんなら神戸も行きたいと思ったはず。それくらいに本編だけでもこの日のライブは素晴らしいものになっていた。
しかしその素晴らしさをさらに増幅させたのが、「ビビった」の後に演奏された、正真正銘最後の曲にして新曲の「The band」。ロックバンドであり続けたいと願うキュウソと、ロックバンドを愛し続けていきたいと願う我々。その両方の気持ちを落とし込んだ、「わかってんだよ」を超える、キュウソ史上最高の熱さとエモさを持った曲。
今のキュウソのライブにあるのは、ロックバンドとして生きていく、このバンドで生きていくという強い意志。それは今のワンマンを見れば一目でわかるが、それを自身の音楽にできる力を今のキュウソは持っている。だからこそTOSHI-LOWやサンボマスターという、男が惚れるような男たちから愛されている。やはりあまりこのバンドを知らない人たちからしたら、「面白いバンド」「物販のキャラが可愛いだけのバンド」「楽しいだけのバンド」に見られがちだが、キュウソがそんなバンドだったらとっくに消えている。そんなバンドではないということをキュウソは自分たちのライブを持って証明しているし、ロックバンドとしてのその戦いはこれからも続く。その上でこの「The band」はこれ以上ないキュウソのロックバンドであることの証明になるし、きっとライブでこの曲を聴くたびに、
「ロックバンドは最高だね ライブハウスは最高だね」
と思うはず。きっとキュウソのメンバーたちも、そう思ってロックバンドという人生を選んだんだ。
終了後、恒例の記念撮影。それが終わってもメンバーは長い時間観客に手を振り、セイヤは終演SEとして流れた「The band」を再び口ずさんでいた。こんなにリリース日が待ち遠しいキュウソの新曲が今まであっただろうか。
キュウソのライブは「セイヤ以外ダイブ禁止」だったり、水撒きに厳重注意をしていたり、大きなサークルを組むことを自重させたりと、実は制約が結構多い。それだけに好きに暴れたいような身軽な出で立ちのキッズたちが離れていってしまいそうだが、そういう人もバンドの提唱するマナーやルールの範囲内で楽しんでいるし、逆にメンバーよりも年上であろう人もたくさんいる。
前述のように、キュウソがただ楽しいだけのバンドだったり、面白いだけのバンドだったら、こんなにたくさんの人が時間やお金を使って曲を聴いたりライブを見に来たりしない。キュウソのライブを見に来ている人はみんな、このバンドの音楽の素晴らしさ、ライブのカッコよさをわかっているからこそ、こうしてキュウソに時間とお金を費やしている。
つまり、愛しているのだ、無加工のキュウソを。
1.5RATS
2.サギグラファー
3.ファントムバイブレーション
4.メンヘラちゃん
5.イマジネンス
6.辛あわせ
7.邪邪邪 vs ジャスティス
8.家
9.家
10.家
11.ハッピーライフ
12.性ビジネスは不滅
13.ウツロウココロ
14.ギラギラおじさん
15.TOSHI-LOWさん
16.俺は地球
17.NO MORE 劣化実写化
18.GALAXY
19.サクランボウイ
20.KMDT25
21.わかってんだよ
22.MEGA SHAKE IT!!
23.KMTR645
24.DQNなりたい、40代で死にたい
25.NEKOSAMA
26.ハッピーポンコツ
encore
27.ビビった
28.The band
The band
https://youtu.be/cP-ycyKl888
Next→ 4/7 a flood of circle @渋谷CLUB QUATTRO

今回のワンマンツアー、東京公演は前日は新木場STUDIO COAST、この日はZepp DiverCityでの変則的な2days。前回のツアーの東京公演は渋谷O-EASTというこのバンドの状況を考えると狭いと言える会場だっただけに、本来のキャパに戻ったとも言える。
開演前のステージには紗幕が張られており、この時点で「今日は何が起こるんだろうか?」と期待を抱かせる中、19時を過ぎた頃に場内が暗転すると、紗幕にはバンドのマスコットキャラのネズミくんと、ライブのプロデューサーとしておなじみのP青木のアニメーションによる前説兼諸注意が。あらかじめ録音されたものにもかかわらず噛みまくるというP青木のポンコツっぷりに表情を変えるネズミくんが実に可愛らしい。
前説が終わると、10秒前からのカウントダウンが始まり、0になったところで紗幕が落ちると、そこにはすでにメンバーがスタンバイしており、すぐさま音が鳴る。中国のお城を思い起こさせるようなステージセットに、いきなり客席に向かって放たれまくるレーザー光線。広いライブハウスだからこその演出が早くも全開になる中、
「止まったら死ぬかもしれない 目の色変えて動き出せよ」
「困ったら仲間の顔見て 誰にも負けない生き様ぶちかませ」
と、メンバー全員がサビを歌い、かつてないほどの声の分厚さを感じさせながら、バンドとしての新たな宣誓とも言える「5RATS」からスタート。もうこの段階で暑く、熱いが、「サギグラファー」ではセイヤが
「愛してくれよ 無加工のキュウソを!」
と歌詞を変えて歌い、早くも客席にはキュウソの音楽を愛する人の熱で満ち溢れていく。
ライブを重ねまくったことによってメンバー個々の演奏とそれが合わさったことによるバンドのグルーヴが一段と力強さと鋭さを増しているが、ライブではおなじみである「ファントムバイブレーション」のイントロのセッション的なアレンジも「これなんの曲だっけ?」と思ってしまうくらいにブラッシュアップされており、何度となく聴いているおなじみの曲なのにもかかわらず、マンネリ感は全く感じさせない。
「付かず離れずメンヘラ」
というサビのフレーズとヨコタのシンセのサウンドがクセになる、キュウソならではのラブソング「メンヘラちゃん」と、「にゅ~うぇいぶ」の曲を軸にしながら、踊ろうと思っていなくても踊らずにはいられなくなるのは、カワクボとソゴウというバンドの土台を支えるリズム隊の演奏がしっかりしているから。
「しんき…台場ー!」
と、別会場での変則的な東京2daysなだけにやはりセイヤがついつい間違えそうになってしまいながらも、「ウマピラス」という謎フレーズの前のブレイクを溜めまくった「辛あわせ」あたりはワンマンでないとなかなか聴けないカップリング曲。
キュウソと言えば、主にセイヤとヨコタのメンバーによる面白いMCややり取りも楽しみであり持ち味の1つでもあるが、前半はひたすらに突っ走りまくり、
「各地でも何回もやっている」
というショートチューン「家」を2連発してからようやく小休止するのだが、小休止を挟んでまたもや「家」を投下するという予測不能っぷり。しかしこの3回目ではレーザーやCO2噴射など、用意された演出を無駄にフル活用しつつ、最後のフレーズを「Tamahome」とタイアップ先の企業に合わせて変えると、ステージ背面にもレーザー光線で「Tamahome」の文字が映し出される。その流れでもはや悪ノリと言ってもいい、TamahomeのオリジナルCM曲「ハッピーライフ」までカバーしてしまうが、悪ノリとは思えないくらいに演奏自体はカッコいいものになっているのがバンドとしての地力の強さである。
ヨコタが股間にガス噴射機を挟んで歌うという初期曲の「性ビジネスは不滅」「ウツロウココロ」というレア曲が聴けるのは嬉しい限りだが、この金がかかっているステージのセットはいつ使うんだろうか?と思っていると、ここでセイヤが一瞬姿を消す。
おっさんが不倫相手と一緒にお台場に来ていることを匂わせるような影アナ(お台場を舞台にしていたということは各会場で変えているはず)が流れた後に、ヨコタがシンセからキーボードにスイッチすると、セットの上から金色のジャケットを着たセイヤが登場。歌謡曲というよりももはや演歌的な「ギラギラおじさん」だが、間奏では
「既婚者のピアノ!」
と結婚しているヨコタをいじりつつ、
「箱根~」「熱海~」
という不倫旅行で訪れる場所のコール&レスポンスも行い、最後にはジャケットの内側をセイヤが見せると「ダンディ坂野」(確かに金のジャケットを着ているが、ギラギラおじさんかというと?)の文字が貼ってあることにより、最後の決めポーズは懐かしのゲッツ。
一転してセイヤがジャケットを脱ぐと、そのまま客席に突入していく「TOSHI-LOWさん」ではBRAHMAN的なハードな音像をも軽々とメンバーは乗りこなし、セイヤもTOSHI-LOWになりきるというよりも、TOSHI-LOWが憑依しているかのような男臭い歌唱法に。以前は完全にひょろひょろ体型だったセイヤの肉体がムキムキになっているように見えたのもTOSHI-LOWが憑依していたからだろうか。
さらにセイヤが地球のヘルメットを被って歌い、最後にはローラースケート的なものを履いたのか、ステージ上をぐるぐると回るという、曲に合わせたパフォーマンスが次々に炸裂した「俺は地球」は幕張メッセイベントホールでワンマンを行なった時あたりからライブでやっていたものの、ドツボにハマってアレンジが混迷を極めていた曲であったが、すっかりその経験をも昇華したかのようなパフォーマンスである。
ここでようやくMC…かと思いきや、セイヤとヨコタ不在の、オカザワ&カワクボ&ソゴウという、普段のライブでは喋らない3人によるMCタイムという挑戦。
カワクボ「ある雑誌の撮影でメンバーで並んで写真を撮ったら、セイヤとソゴウに挟まれたことによって、5cmくらいのお立ち台に立たされて身長を合わされた(笑)」
という小柄だからこそのカワクボによる嘆きもありながらも、結局は新曲がアニメの主題歌になったこと、そのアニメが翌日からオンエアされることという告知がメイン。そのアニメは「MAJOR 2」という野球アニメなのだが、野球経験者であるカワクボがセンター、オカザワがサードを守っていたという経歴に対してソゴウが、
「サードってオカザワみたいなやつじゃなくて、ガッチリ体型の強打者がやるイメージやん」
と、自身のサード観を展開するが(去年まで巨人にした村田修一や、かつて巨人にいた江藤智あたりのイメージか?)、野球にあまり詳しくない人が多いのか、なぜかスベったみたいな空気になってしまい、合流したセイヤとヨコタに突っ込まれまくる。
「NO MORE 劣化実写化」ではNO MORE映画泥棒もステージに登場して海賊盤はダメダメダンスを踊り、「GALAXY」の我々は宇宙人ダンスと続いて一体感が増していくと、童貞をテーマにした2曲「サクランボウイ」「KMDT25」を連発し、さらにありのままの自分をさらけ出す「わかってんだよ」と、そうしたいわゆるクラスのヒエラルキーで下部に属していた男たちだからこそのヤケクソエネルギーがエモさにそのまま変換されていく。キュウソは銀杏BOYZに多大なる影響を受けてきたバンドであり(かつてツアーではカバーもやっていた)、このあたりの曲でのエモさはその系譜をキュウソが受け継いでいることの証明でもある。
また、「KMDT25」の途中、ちょうど盆踊りのサウンドになったあたりで、最前ブロックにいた女性が倒れてしまうという出来事があった。それにいち早く気づいたのはセイヤで、すぐさまスタッフを呼んで救出させたのだが、速やかに通路を空けた観客は
「楽しくても 思いやりとマナーを忘れるな」
というキュウソのライブの精神が完全に染み付いているし、救出されるのを待ちながらも手拍子を続けてライブを途切れさせなかった(ライブが途切れたら倒れた人が責任を感じてしまうはず)一体感は素晴らしいものがあった。
「男はみんな剛毛だ!イケメンはみんな脱毛している!みんな、目を覚ませ!」
と、なぜか肌がツルツルだと思われることがよくあるというセイヤが胸の内をぶちまける「MEGA SHAKE IT!!」からは怒涛のクライマックスへ。「家」を連発したことによって、この段階ですでに曲数は20を超えており、もうそろそろ終わってもおかしくないくらいではあったが、曲中にTamahomeからの差し入れを掲げた「KMTR645」、セイヤが客席真ん中あたりまで人の上を歩いていった「DQNなりたい~」、「ニャー!」の声とともに飛び跳ねまくる「NEKOSAMA」と、面白さやギミックだけではない、ライブでのキラーチューン、それすなわち強い曲をこんなにも持っているバンドであるということに改めて気付かされるし、この終盤でさらにバンドの演奏がガッチリと噛み合ってきているように感じるあたりは恐ろしさすら感じる。
そしてラストの「ハッピーポンコツ」では銀テープが発射されたのだが、この曲ならではの幸せな空気に包まれた中、セイヤは
「銀テープは分け合ってな!」
と、キュウソのファンから心優しさを感じるのは、メンバー自身が誰よりも心優しく、それをファンがしっかりと嗅ぎとっているからであるというのがわかる一言を残してステージを去って行った。
アンコールではメンバーが全員ツアーTシャツに着替えて登場すると、翌週に控えた地元である神戸の国際記念ホールでのワンマンが全然売り切れておらず、
「19:30に終わるから新幹線で東京に日帰りできるで!」
とこの日の観客に来てもらうべく決死のアピール。現実的には厳しいだろうけど、この日のライブを見た人は行けるんなら神戸も行きたいと思ったはず。それくらいに本編だけでもこの日のライブは素晴らしいものになっていた。
しかしその素晴らしさをさらに増幅させたのが、「ビビった」の後に演奏された、正真正銘最後の曲にして新曲の「The band」。ロックバンドであり続けたいと願うキュウソと、ロックバンドを愛し続けていきたいと願う我々。その両方の気持ちを落とし込んだ、「わかってんだよ」を超える、キュウソ史上最高の熱さとエモさを持った曲。
今のキュウソのライブにあるのは、ロックバンドとして生きていく、このバンドで生きていくという強い意志。それは今のワンマンを見れば一目でわかるが、それを自身の音楽にできる力を今のキュウソは持っている。だからこそTOSHI-LOWやサンボマスターという、男が惚れるような男たちから愛されている。やはりあまりこのバンドを知らない人たちからしたら、「面白いバンド」「物販のキャラが可愛いだけのバンド」「楽しいだけのバンド」に見られがちだが、キュウソがそんなバンドだったらとっくに消えている。そんなバンドではないということをキュウソは自分たちのライブを持って証明しているし、ロックバンドとしてのその戦いはこれからも続く。その上でこの「The band」はこれ以上ないキュウソのロックバンドであることの証明になるし、きっとライブでこの曲を聴くたびに、
「ロックバンドは最高だね ライブハウスは最高だね」
と思うはず。きっとキュウソのメンバーたちも、そう思ってロックバンドという人生を選んだんだ。
終了後、恒例の記念撮影。それが終わってもメンバーは長い時間観客に手を振り、セイヤは終演SEとして流れた「The band」を再び口ずさんでいた。こんなにリリース日が待ち遠しいキュウソの新曲が今まであっただろうか。
キュウソのライブは「セイヤ以外ダイブ禁止」だったり、水撒きに厳重注意をしていたり、大きなサークルを組むことを自重させたりと、実は制約が結構多い。それだけに好きに暴れたいような身軽な出で立ちのキッズたちが離れていってしまいそうだが、そういう人もバンドの提唱するマナーやルールの範囲内で楽しんでいるし、逆にメンバーよりも年上であろう人もたくさんいる。
前述のように、キュウソがただ楽しいだけのバンドだったり、面白いだけのバンドだったら、こんなにたくさんの人が時間やお金を使って曲を聴いたりライブを見に来たりしない。キュウソのライブを見に来ている人はみんな、このバンドの音楽の素晴らしさ、ライブのカッコよさをわかっているからこそ、こうしてキュウソに時間とお金を費やしている。
つまり、愛しているのだ、無加工のキュウソを。
1.5RATS
2.サギグラファー
3.ファントムバイブレーション
4.メンヘラちゃん
5.イマジネンス
6.辛あわせ
7.邪邪邪 vs ジャスティス
8.家
9.家
10.家
11.ハッピーライフ
12.性ビジネスは不滅
13.ウツロウココロ
14.ギラギラおじさん
15.TOSHI-LOWさん
16.俺は地球
17.NO MORE 劣化実写化
18.GALAXY
19.サクランボウイ
20.KMDT25
21.わかってんだよ
22.MEGA SHAKE IT!!
23.KMTR645
24.DQNなりたい、40代で死にたい
25.NEKOSAMA
26.ハッピーポンコツ
encore
27.ビビった
28.The band
The band
https://youtu.be/cP-ycyKl888
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