ツタロックフェス2018 @幕張メッセ9~11ホール 3/18
- 2018/03/19
- 19:22
「駅前TSUTAYAさんで僕はビートルズを借りた セックス・ピストルズを借りた」
と歌ったのは神聖かまってちゃん(「ロックンロールは鳴り止まないっ」)だが、そのTSUTAYAの主催するライブイベント、ツタロックがフェスバージョンとして開催。前日にビクターロック祭りが行われた会場をそのまま使い、2ステージ制で、
MASSIVE STAGEには
04 Limited Sazabys
Base Ball Bear
KANA-BOON
クリープハイプ
MAN WITH A MISSION
[ALEXANDROS]
My Hair is Bad
が出演(出演順)し、COSMIC STAGEには
フレデリック
yonige
sumika
D.A.N
OGRE YOU ASSHOLE
SUPER BEAVER
KANDYTOWN (CLOSING ACT)
という豪華な出演者が揃ったことで、このキャパでもチケットは即完。この広い幕張メッセ9~11ホールが狭く感じるほどに会場の各エリアは人が多く、入場やロッカーの待機列もかなり長いものになっていた。
10:30~ 04 Limited Sazabys [MASSIVE STAGE]
この日のトップバッターを務めるのは、様々なフェスでトップバッターとして出演した際に、
「夜型で朝が早いのがキツい」
と訴えてきた、フォーリミこと04 Limited Sazabys。近年使い始めた自作のSEでこの日も気合い入りまくりなメンバーたちがステージに登場すると、いきなりの「monolith」の爆音が会場を包み、朝イチから一気に狂騒空間が生まれる。GENは普段の
「きっと間違えられないな」
というフレーズをこの日の会場やタイトルに変えることはこの日はせず。
「ガンガン行こうぜ、ツタロック!」
とすぐさま「Buster call」へなだれ込むのだが、GENが歌い上げる部分はなく、サビ始まりとなったため、さらにスピード感が増す。
「fiction」も含めて、緩急やペース配分など考えもせず、ひたすら豪速球を連発しながらもキレがさらに増しているような印象すら受ける。
「普段からT-POINT貯めまくってるし、そのポイントをTSUTAYAで使いまくってますからね。RYU-TAなんか俺たちのT-POINTカードを自分で使っている(笑)」(フォーリミのメンバーがデザインされているT-POINTカードが発行されている)
と、普段からプライベートな面でTSUTAYAにお世話になっていることをGENが語ると、ちょっと前まではライブのクライマックスで演奏されることも多かった「swim」がこの中盤のタイミングで演奏される。かつてインディーズ期にはライブの最後を担う曲だった「Buster call」すらも今や序盤に演奏されるようになってきている。それはその最後を担うような、最大のキラーチューンと言っていいような曲を次々にこのバンドが生み出しているから。
「みんなが知ってる曲をやります!」
と言って演奏されたのは立ち位置的にはカップリング曲である「happiness」だが、コンタクトレンズのCMソングとして大量オンエアされたこの曲すらもシングルのタイトル曲やアルバムのリード曲になっていないということが近年のフォーリミの絶好調っぷりを改めて示している。
「春は性欲も溜まる季節ですね。俺たちのライブでたくさん気持ちよくなって、T-POINTだけじゃなくて、思い出ポイントも貯めて帰ってください!」
と実にGENらしいMCから始まったのは後半から一気に加速していく「me?」。
そして「midnight cruising」から、
「春は別れの季節。卒業とか異動とか、別れが色々あると思いますけど、再会の歌を聴いてください!」
と「Terminal」で切なさを倍増させると、ラストは
「自分自身に強く生まれ変われ!」
というメッセージが力強いサウンドに乗って突き刺さる「Squall」。結果的にリリースされたばかりの最新シングル収録曲が披露されることはなかったが、それまでの最新曲であるこの曲が今のフォーリミのクライマックスを文句なしに務める曲になっている。それはこれからも新しい曲が出れば更新されていくはず。そこにこそフォーリミがこのポジションまで登りつめることができた理由があるし、ライブハウスを主戦場とするパンク・メロコアバンドとしての空気を持ったままで、フォーリミはこのクラスのキャパのステージにワンマンで立とうとしている。春には東名阪のアリーナツアーもあるが、その後にはすぐにここまで来れるはず。
1.monolith
2.Buster call
3.fiction
4.swim
5.Warp
6.happiness
7.me?
8.midnight cruising
9.Terminal
10.Squall
Squall
https://youtu.be/-kB2K_4odA0
11:15~ フレデリック [COSMIC STAGE]
セカンドステージという位置づけであるCOSMIC STAGEだが、今や武道館でワンマンをやるようになったバンドも次々に登場してくる。その皮切りになるのが、来月に神戸のアリーナで初ワンマンを行うフレデリックだが、やはりこのキャパは始まる前から超満員となっている。
「フレデリック、始めます」
というおなじみのSEでメンバーが登場すると、いきなり幕張メッセをダンス空間に変えてしまう「オンリーワンダー」でスタートし、
「今日は骨の髄まで踊らせて帰宅させます!」
と「KITAKU BEATS」から康司と高橋武によるリズム隊がシームレスに楽曲を繋いでいく「ナイトステップ」という流れではこの日ならではの単語も歌詞の中に盛り込みながら、狂騒的というよりもむしろじっくりと踊らせていくようなモードに。
健司がハンドマイクで歌う「まちがいさがしの国」は今の世の中や社会を見ているとますますそのメッセージが強く響いてくる曲だが、この曲をワンマンのみならずフェスでもやり続けているということは、バンドには明確に今の日本に対して言いたいことや思うことがあって、それをしっかり自分たちの音楽として発信しているということ。逆に、バンドがこの曲をやらなくていいような状況になれば、世の中が少しまともな方向に進んだと言えるのかもしれない。
「すごく良い曲を」
と紹介された「たりないeye」はツアーでも大事な場面で演奏された曲だったが、結果的には「オワラセナイト」も「かなしいうれしい」も演奏されないという、今までの、まさにフェスセトリ的な戦い方ではなく、このバンドは今も増え続けている、ひたすらに観客を踊らせまくる、いわゆる高速ダンスロックというバンドたちとは違う、自分たちだけの戦い方を見つけたような感すらある。
それが見つかったのは「TOGENKYO」が出たからというのは「TOGENKYO」のツアーに行ったからこそよくわかることであるが、だからと言ってひたすらにそっちに寄せるようなことはせず、最後にはダンサブルなライブならではのイントロが追加された「オドループ」で踊らせまくり、凄まじい大きさの手拍子の音を生み出してみせた。
年末にツアーファイナルを見て、年明けにツアーの追加公演を見に行って、その後にこうしてフェスで見ると、フレデリックはフェスで勝ってきたバンドであると見られがちだし、フェスで見れればいいと思っている人もたくさんいると思う。でもこのバンドの、このバンドだけの戦い方をフルに発揮できる場所はやはりワンマンなのだと思う。関東でも今年中に武道館クラスでワンマンをやってくれるだろうか。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.ナイトステップ
4.まちがいさがしの国
5.たりないeye
6.TOGENKYO
7.オドループ
TOGENKYO
https://youtu.be/OfBd8kxo4mQ
12:00~ Base Ball Bear [MASSIVE STAGE]
おなじみのXCTのSEが流れてステージに現れたメンバーたちから感じる違和感。いや、それだけじゃない、ステージ上のセットからして、これまで13年間見続けてきたBase Ball Bearのそれではない。
実際にメンバーがステージに上がると、「光源」ツアーの追加公演で小出が言っていたように、長らくサポートメンバーとして素晴らしいギタープレイを見せてくれていた、第5のメンバーこと弓木英梨乃にいったん別れを告げ、バンドは3人だけでライブをやっていこうとしていたことを思い出した。そう、この日は3人だけのベボベの始まりの日となったのである。
ライブ開始前の儀式である堀之内会議も3人だけで行われ、小出が下手、関根が上手(これまで下手だった関根がなぜ上手になったんだろうか)にそれぞれ分かれると、まさにこの日のバンドの新しい挑戦を歌ったかのような「changes」でスタートし、「PERFECT BLUE」へなだれ込んで行くが、やはりギターが一本だけ、同期の音すらも使わないというのは明らかに今までよりも音が足りない。しかしながら小出がメインギターを弾いたり、堀之内が手数を増やしたり、関根が音を動かしまくったりと、そもそもが4人で演奏される前提の曲を、スカスカになることなく3人で演奏するようなアレンジがなされている。つまり、今までに数えきれないくらいに演奏してきたこの曲たちも、また1からアレンジし直しているのである。そこにはどれほどの労力、努力があったのだろうか。少なくとも、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れたりというメンバー個々のスキルアップがここで活きてきていることは間違いない。
ギターサウンドというよりもリズムのグルーヴで、あの頃の空気を作り出していく「文化祭の夜」はこの編成にうってつけと言えるが、そのままアウトロからつながるような形でリズム隊のみが演奏する中で小出がラップを乗せていくというアレンジになった「The CUT」は鳥肌モノのカッコよさ。前日にビクターロック祭りに出演したRHYMESTERのゲスト出演もあるか?と思っていたが、3人での始まりであったこの日だからこそ、他のゲストを入れることなく3人だけでライブをやりきることが何よりも重要なことだった。(それこそこの日はKANDYTOWNに盟友の呂布もいたので、頼めば出てくれたはず)
「今回はちょっと珍しくて。年齢的に年上のバンドはいますが、芸歴的には我々が今日1番上なんじゃないかと。そんなおじさんならではの、中堅だからこその地肩の強さをとくと見せたいと思います」
と、2000年代中盤にデビューしたこの世代がついにフェスの中で最もベテランになってきたことに驚きつつ、来るべき夏に思いを馳せる「ドラマチック」でこのバンドよりもかなり年下の世代であろう人たちも沸かせると、「真夏の条件」では小出が
「ギター俺!」
と、かつては湯浅が、近年は弓木が担ってきたギターソロを自身の手で継承してみせる。
そしてラストはもはや「ダンス湯浅将平」も、弓木の凄まじいギターソロもなくなった「十字架 You and I」。3人になっても続けることを選んだメンタルの強さだけでなく、小出の言う通りに、中堅だからこそのフィジカルの強さもしっかりと見せつけた。
この文はすべてのアクトが終わってから書いているので、結論から言うと自分はこの日のベストアクトはこのバンドだと思っている。他の後輩バンドたちが、メンバーが1人減った時に、減った状態のままでライブができるだろうか?と考えると、それはできないはず。ベボベも若手の頃だったらできなかった。でも今ならできる。それはベボベが一度も辞めることも止まることもせずに、ひたすら自分たちの持つ武器を磨き続けてきたから。そしてそれはこれからもずっと続いていく。これからの3人のベボベにも、本当に期待している。
1.changes
2.PERFECT BLUE
3.文化祭の夜
4.The CUT
5.ドラマチック
6.真夏の条件
7.十字架 You and I
changes
https://youtu.be/Jo0oTzmwQPU
12:45~ yonige [COSMIC STAGE]
ツアーを終えたばかりという仕上がった状態での出演となった、yonige。この広い会場にThe SALOVERSの「ビオトープ -生物生育空間-」がSEとして流れると、牛丸ありさとごっきんに加え、サポートドラマーの堀江(DREADNOTE)という3人がステージに登場。
牛丸が思いっきり歪んだギターを鳴らすと、ごっきんも頭を振りまくりながらベースを弾く、スリーピース・ギターロックバンドのダイナミズムを感じさせる「ワンルーム」からスタート。非常にテンポ良く曲を連発していくのは楽器を取り替えたりする手間や時間がないからとも言えるが、ここまでテンポが良いと持ち時間の短さを感じさせない。
ライブならではの高速化しまくる「アボカド」を演奏すると、
ごっきん「yonigeは大阪の寝屋川出身なんですけど、実はTSUTAYAの創業者の方は寝屋川の隣の枚方出身なんですよ。だからうちらのすぐ近くにスタバと一緒になってる、めちゃデカくてキレイなTSUTAYAがあって。高校生の時からそこに入り浸ってました」
牛丸「みんな朝早いですけど、眠くないですか?まだまだ盛り上がっていけますか?
さっきリハで「バイ・マイ・サイ」っていう曲をやったら、ツーステしてる人がいた(笑)」
ごっきん「うちらの曲でツーステ無理やろ!(笑)」
とフェスでも大阪の姉ちゃん感丸出しなMCで和ませつつ、ごっきんはベースを抱えたまま明らかに慣れてないツーステを踏むと、それに動揺したのか、牛丸が歌い出しで出遅れた「センチメンタルシスター」へ。O-EASTでのワンマンの時も自身の直前の言動によって出遅れただけに、この曲前になんかしらの面白いMCをすると入りにくいんだろうか。
牛丸のポエトリーリーディングのような言葉がこの会場の空間に次々に浮かんできて、それをかき消すような轟音ギターの音が響く「しがないふたり」から「悲しみはいつもの中」、「さよならプリズナー」とポップさとオルタナさを両立させた、まさにyonige的な曲が続くと、最後に演奏されたのは「さよならアイデンティティー」でも「恋と退屈」でもなければ、CMで大量オンエアされた「笑おう」でもなく、ワンマンのラストでおなじみの轟音シューゲイザーナンバー「最愛の恋人たち」で、まさに白昼夢のごとき陶酔感を描いて余韻に浸らせた。ポップでオルタナなギターロックのyonigeもいいけれど、こちらのサイドのyonigeもたまらないし、ワンマン以外の場でこっちのサイドの曲を堪能できるとは思っていなかった。
しかしながら演奏はもちろん、去年の夏フェスあたりから何度も言っているように、牛丸は本当に歌が上手くなった。自分たちはフェス向きのバンドではないということを自認しているが、この牛丸のボーカリストとしての覚醒っぷりはこれからフェスでさらに大きなステージに立つ時に必ず大切な武器になる。現にこのバンドはそうした場所にもうすでに手をかけている。その時に牛丸のボーカルは今よりもしっかり評価されるようになるはずだ。
1.ワンルーム
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.アボカド
5.センチメンタルシスター
6.しがないふたり
7.悲しみはいつもの中
8.さよならプリズナー
9.最愛の恋人たち
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
13:30~ KANA-BOON [MASSIVE STAGE]
SEもなくメンバーがステージに登場した、KANA-BOON。いきなりの「フルドライブ」で満員の観客を踊らせまくると、昨年リリースの最新アルバム「NAMiDA」収録のハードな音像の「ディストラクションビートミュージック」、タイアップアニメの内容に合わせるようにこちらもハードな「Fighter」と連発するが、リリース時は「鮪のハイトーンな声には似合わない」とすら言われていたこうしたタイプの曲が、今やバンドの筋力の強さを最も証明できるような曲になってきている。それはめしだの一件以降にメンバー全員がこのバンドで生きていくと改めて誓い、特にリズム隊の2人からそうした意識が伝わってくるような演奏になったからである。
最新アルバムのタイトル曲である「涙」で少ししんみりとした空気に持っていくも、
「TSUTAYAさんにはいつもお世話になっていまして。よく渋谷店に行くんですけど、この前プリキュアのDVDのコーナーを見ていたら、ファンの人に声をかけられまして(笑)
別に幼女趣味があるわけではないんですけど、めちゃくちゃ恥ずかしかったです(笑)」
と鮪のMCはやはり脱力するというか、かっこいいロックスターの日常とは真逆の、我々となんら変わらない生活を送っていることがうかがえる。
しかし
「春の歌を」
と続けて言った時には、「これは当然「さくらのうた」だろう」と思ったのだが、あのイントロでの名曲確定的なメンバー全員でのキメが入らず、あれ?と思っていたら、演奏されたのは「桜の詩」の方であった。確かにカップリング集がリリースされたばかりであることを考えると、こっちの方が演奏されてしかるべきだし、そのリリースによって、毎回シングルには必ずクオリティの高い、捨て曲感一切なしの2曲を入れ続けてきたKANA-BOONのカップリング曲がフェスでも毎回聴けるようになるのかもしれない。
「お腹空きましたね~。みんなを満腹にしたいと思います!」
とおなじみの「ないものねだり」から、「シルエット」で疾走し、ラストはバンドの決意表明的な「バトンロード」というあたりは近年のフェスにおける締めとしてすっかり定着してきた。
「今年でKANA-BOONはメジャーデビュー5周年を迎えました。今年はリリースもライブもたくさんやっていくんで、よろしくです!」
と鮪が今年の活動への意気込みを語ったが、売り上げもツアーの動員も今やKANA-BOONは右肩下がりになりつつある。なんならCOSMIC STAGEに出ていてKANA-BOONより売れているというバンドすらいるような状態である。
めしだの一件もあったとはいえ、バンドとしてはそれを乗り越えられたと思っている。では何が足りないのか。それはやはり決定的な曲である。「ディストラクションビートミュージック」も「涙」も悪くはない。でもやはり「ないものねだり」や「シルエット」を凌ぐほどの曲ではないことは確か。KANA-BOONの魅力はひたすらに楽曲の良さであり、それが初めからあったからこそ若手バンドの中で最も早くブレイクすることができた。その持っている素質は間違いなく世代の中でダントツであるだけに、有無を言わさずに年間ベストクラスのアルバムができた時に再びKANA-BOONはこのキャパでワンマンをやっても埋めることができるはずだし(以前ここでワンマンをやった時は全く埋まらなかったし、今やワンマンではZeppすら売り切れていない)、それができるバンドだと信じている。
1.フルドライブ
2.ディストラクションビートミュージック
3.Fighter
4.涙
5.桜の詩
6.ないものねだり
7.シルエット
8.バトンロード
桜の詩
https://youtu.be/LKYl6-HJ_vQ
14:15~ sumika [COSMIC STAGE]
エンターテイメント性溢れるSEが流れて元気にステージに現れたsumika。この日もサポートベーシストを迎えた5人編成で、それぞれが持ち場に着くと、黒田(ギター)、小川(キーボード)、そして片岡(ボーカル&ギター)の声が美しく重なり合っていくオープニングナンバー「Answer」からスタートし、小川のキャッチーなピアノのフレーズが流れると、もはや
「みんなの声で!」
と片岡が煽る必要がないくらいに大合唱が自然に発生するくらいにもはやロックシーンのみならず、国民的な曲になりそうな雰囲気すら感じる「Lovers」へ。黒田と小川が演奏中にいちいち挟むアクションも面白いが、
「参加賞になんて興味はない!一等賞を取りにきました!」
という片岡の言葉からは、ポップにコーティングされた内側にある、前身バンド時代から変わらぬパンクの精神性を強く感じることができる。
カラフルなサウンドと軽快なリズムでまさに「ダンスをする」「カルチャーショッカー」を終えると、今年はまだ成人式の中で少し演奏しただけなので、本格的なライブはこの日が初であることを告げ、「ソーダ」で再びメンバーの美しいハーモニーを聴かせ、
「フェスももう中盤ですけど、疲れてないですか?みなさんに回復の呪文をかけてあげましょう!」
と「ふっかつのじゅもん」のアッパーなサウンドには疲れを吹き飛ばして踊りまくる確かな力が備わっている。
片岡がギターを弾かずにゆらゆらとステージを歩き回りながら歌う「Summer Vacation」は一転してアッパーではなく気だるい夏の空気感を運んでくる。いわゆるインディーポップ的な要素が強いために、アルバムのリード曲として公開された時は驚きの声が大きかったが、今やすっかりフェスでも大事な位置を担う曲になっている。そういう意味ではこの曲をリードにしたメンバーの選択は間違っていなかったということだろう。
「最後に、ありったけの想いを「伝えたい」っていう5文字に込めて歌いたいと思います!でもこの曲は僕らだけでは完成させることができません!みなさんの力を貸してください!」
と片岡は観客の声によってこの曲が真価を発揮することを語って「「伝言歌」」を演奏して大合唱を巻き起こしたが、その中で
「あの日、渋谷クアトロに行かなければ荒井(ドラム)に出会わなかった。あの日、新宿Marbleに行かなければ隼ちゃん(黒田)に出会わなかった。あの日、横浜のライブハウスに行かなければおがりん(小川)に出会わなかった。
もしかしたら、今日このフェスで出会って仲良くなって、後に一緒にバンドを組んだり。あるいは、付き合ったり結婚したりするかもしれない。
24時間の中のたった40分じゃない、人生の中で今が忘れられない瞬間になるように!すべての自分の選択が、みんながここに来たという選択が意味のあることになるように!」
と片岡が数あるライブのうちの一つではなく、この日この場所でのこのライブは間違いなくこの瞬間にしかないものであると語った。
sumikaはフェスでは実はあんまりやる曲は変わらない。(特に「Familia」リリース以降は)
でも同じ選曲であっても、一回一回全く違うライブを作り上げてくれる。やり方やサウンドは全く違うが、それはサンボマスターに通じるところがある。そうしたライブができるからこそ、このバンドがこのキャパを満員にできて、武道館でワンマンができるのも必然的なことなのだ。それをとびきりポップな音楽でやることができると考えると、このバンドが日本を代表するようなバンドになっても全くおかしいことではない。
1.Answer
2.Lovers
3.カルチャーショッカー
4.ソーダ
5.ふっかつのじゅもん
6.Summer Vacation
7.「伝言歌」
Lovers
https://youtu.be/FFITBgsyVr4
15:00~ クリープハイプ [MASSIVE STAGE]
KANA-BOON同様にSEなしでフラッとメンバーがステージに登場した、クリープハイプ。白シャツ姿の尾崎世界観が
「今日はなんか緊張するなぁ。そりゃそうか、セックスの前はドキドキしますよね」
と発すると、長谷川カオナシがステージ下手前に出ていってイントロのベースを弾き始め、いきなりの「HE IS MINE」という先制攻撃。
「TSUTAYAのフェスなんだから、大きな声で返却してください!」
と尾崎が煽るといきなりの
「セックスしよう!」
の大合唱。観客も声が出ているが、それよりも尾崎の声が本当によく出ている。一時期の不安定さが嘘のようだし、ツアーを経たバンドの演奏の一枚岩感が、映画のジャケットを模した新アー写同様にここにきてさらに増している。
「君の故郷を代表するあの大きなTSUTAYAは」(「愛の標識」)
「幕張の六畳間」(「鬼」)
とライブ定番の人気曲のフレーズを次々に今日、この場所、このフェスでしかない単語に変えていく尾崎の反射神経が冴え渡る中、
「TSUTAYAでよくAVを借りていて。返却日に雨が降っていると返すのが面倒なので、次の日の朝11時までに返却ポストに入れればいいや、と思って次の日に目覚ましをかけて寝るんですけど、10時45分くらいに起きるとやっぱり返しに行くのがめんどくさくて(笑)」
と実に尾崎らしいというか、あまりにリアル過ぎるTSUTAYAエピソードを語ると、ほのぼのとした空気すら感じる「大丈夫」からバンドを代表する名曲「イノチミジカシコイセヨオトメ」ですべての観客の女性の心を震わせると、
「先へ。さらにその先へ行きたいと思います。あのAVの借りも返したいと思います(笑)」
と「オレンジ」で光の先の景色を描き、カオナシによるイントロのライブアレンジがさらにグルーヴィーな「イト」と新旧の代表曲を続けると、最後に演奏されたのは銀杏BOYZがカバーしてからは毎回ライブのセットリストに入るようになった「二十九、三十」。
「前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで」
と、素直に「頑張れ」とか「負けるな」とは言って背中を押すようなことはしない。尾崎はきっとそう言われるのが好きじゃないタイプだ。でもこの曲を聴いているとそうして背中を押されるよりも、また明日からも頑張ろうと思える。それは誰かの力で進むのではなくで、自分の意思で進もうと思えるから。それはもう二十九でもなければ三十でもなくなったからかもしれないけれど。
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.鬼
4.大丈夫
5.イノチミジカシコイセヨオトメ
6.オレンジ
7.イト
8.二十九、三十
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
15:45~ D.A.N [COSMIC STAGE]
明らかに異色である。ここまでこのステージに登場してきたバンドは今まさにアリーナクラスに手をかけようとしている、エモーショナルさを強く持ったバンドたちだったが、薄暗い照明の中にD.A.Nのメンバー4人が登場すると、それだけで違うイベントに来たかのように空気が一変する。
基本的には市川仁也(ベース)と川上輝(ドラム)の反復するリズムを軸とした、ミニマルミュージックの要素が強いが、そこに櫻木大悟(ボーカル&ギター&シンセ)の色っぽくも神聖さを感じさせる歌が乗ることにより、どこか近年のアメリカのオルタナティブなR&Bのような歌モノとしての要素も感じさせる。さらにはサポートメンバーである小林うてな(シンセなど)のスティールパン(なかなかバンドのライブではお目にかかれない楽器)の音が「Zidane」に華を添えている。
ライブハウスというよりもクラブ、野外というよりも室内というようなイメージの音楽なだけに、照明が明るくなるような瞬間もほとんどなく、曲と曲の間を開けたり、MCをするようなこともない、ひたすらに自分たちの音を鳴らすのがステージに立っている意味であるというようなストイックさ。
しかし機械的になりがちな反復するビートもCDで聴くよりははるかに人間味を感じさせるし、櫻木のボーカルもCDではサウンドの中の一種、というイメージが強かったが、しっかり歌として機能している。この手のバンドはライブで見てもそこまでCDで聴く印象と変わらないバンドも多い中で、これはかなりイメージが変わった。
しかしながら観客は本当に少なかった。sumikaに至るまでのこのステージの満員っぷりとは違うフェスにワープしたかのようですらあった。客層が違うと言えばそれまでだが、他のバンドたちはこのバンドが持っていないものを持っている。逆に他のバンドが持っていないけれど、このバンドが持っているものも確かにある。その持っているものが多くの人に刺さるかどうかの違い。今の所はそれが他のバンドが持っているものであるということ。それはどちらがいいとか悪いとかではなく。
1.Zidane
2.SSWB
3.Native Dancer
4.Time Machine
5.Chance
Zidane
https://youtu.be/epsMJXoFzjs
16:30~ MAN WITH A MISSION [MASSIVE STAGE]
この日まで、ドラムのスペア・リブが体調不良でライブを休養していた、MAN WITH A MISSION。究極の生命体なのに体調不良とかあるのか、という気もしなくはないが、この日は久しぶりに完全体のバンドのパフォーマンスとなる。
しかしながらさすがにこのキャパでワンマンをやっているのが当たり前というクラスのバンドだけあって、凄まじい観客の数の前に狼たちが登場。DJサンタモニカのスクラッチによってサウンドが鳴らされると、トーキョー・タナカが軽やかに踊りまくる「FLY AGAIN」で早くも観客がフレーズに合わせて手を左右に振り、タナカとカミカゼ・ボーイはステージ左右の花道を走り回りながら隅から隅まで観客を煽るというあたりはさすがにアリーナクラス慣れしているバンドである。
ゲストとして登場こそしなかったが10-FEETのTAKUMAをフィーチャーしている「database」でこのバンドの持つミクスチャー感を発揮すると、壮大な「Hey Now」、重心を低めにした「My Hero」と海外でライブを行うことが当たり前になってきたからこそのスケールの大きな曲でバンドの持つ幅の広さをさらに実感させてくれる。
この日、ここまではどのバンドも派手な演出もなかったのだが、「Take What U Want」ではレーザー光線が飛び交うという演出もあり、ジャン・ケン・ジョニーはMCでスペア・リブが復帰したことを告知すると、
「我々が最初にツタロックに出させてもらった時は、渋谷のクアトロで行われた時でした。それからこんなに大きな場所でやるようになって、我々がそこに出ているというのが本当に感慨深いです」
とイベントの進化をしみじみと語っていたが、それもそこまで昔の話ではない。でも今やこのバンドがクアトロのキャパでやるなんて全く想像できないことだし、もしやるとなったら暴動が起きるくらいのレベルのことである。それくらいにイベントよりもこのバンドの進化のスピードの速さはおそるべきものがある。
その気持ちを音に込めたかのような「Emotions」から、東京スカパラダイスオーケストラとコラボした新曲「Freak It!」では
「大和魂」「握りこぶし」
という、このバンド単独ではまず出てこないであろう、和の要素を含んだフレーズが多数出てくるが、バンドだけでもこのサウンドの迫力となると、もしスカパラがステージに参加したら一体どうなってしまうのだろうか。
そしてラストはやはり「Raise your flag」。
「きっといつか いつかどこか 辿り着くと信じて」
という、一見すると薄く感じてしまうようなサビのフレーズ。だが前例のない、非人間として活動を続け、世界にまで進出したバンドだからこそ、このフレーズはこの先、このバンドがどこまで行くのかということをそのまま歌っているかのように感じる。
ぶっちゃけた話、設定としてはタナカとジャン・ケン以外は誰がステージに立っていてもわからないかもしれない。他の人が狼になってさえいれば。しかしライブを見ていると、紛れもなくこのバンドはこの5人じゃないと絶対に成り立たないバンドなんだな、ということがよくわかる。(それはサポートのE.D ヴェダーも含め)
設定から始まったようなバンドではあるけれど、おそらくというか間違いなく、この生命体は地球でこの5人しかいないはずだから。だからみんなスペア・リブが戻ってきたことを心から喜び、他のどのメンバーよりも名前を叫んでいた。話題を呼んだのは確かにその見た目と設定かもしれないが、その奥にあるものをこのバンドのたくさんのファンたちはしっかりと嗅ぎとっている。
1.FLY AGAIN
2.database
3.Hey Now
4.My Hero
5.Take What U Want
6.Emotions
7.Freak It!
8.Raise your flag
Freak It!
https://youtu.be/TMSN3a2x98w
17:15~ OGRE YOU ASSHOLE [COSMIC STAGE]
かつては大型フェスでも常連的な存在であり、サカナクションやthe telephonesとともに21世紀の最初の10年の新しい音楽の形を模索していた、OGRE YOU ASSHOLE。こうしたいわゆるロックフェス的なところに出てくるのは実に久しぶりである。
自分もかつてはよくライブを見ていたが、近年は全くライブを見ていない(CDは毎作欠かさず聴いているが)のだが、メンバーが登場すると、出戸(ボーカル&ギター)、馬渕(ギター)、勝浦(ドラム)のかつてと全く変わらない出で立ちに一安心するが、かつてのサイケデリックなギターロックからは完全に一変、先ほどこのステージに出たD.A.Nのような、サイケデリックさが強くなりまくった、ドープなミニマルミュージックになっている。
というよりもD.A.Nがこのバンドから大きな影響を受けているということがよくわかるのだが、都会的な空気を感じるD.A.Nに対して、OGREは密室的。それはやはり音楽を作る環境がそのままその音楽に現れていて実に面白いが、長野の山奥で自分たちの好きなことだけを追い求めたらここまでフェス向きの音楽ではなくなるのか、とも思う。
「ロープ」はもともと「long ver.」というこうした音楽に通じるバージョンのものがあったが、最もバンドのサウンドの、もうかつてのようなサイケデリックだけどあくまでギターロック、みたいなところから変換したと感じたのは「フラッグ」「見えないルール」というかつてライブでよく聴いていた曲たちが、今のバンドのサウンドに合わせた形に完全に生まれ変わっていたこと。だから最初はなんの曲なのかわからなかったのだが、メロディと歌詞は確かにかつての面影を残している。つまりどれだけ深いところまで行っても、このバンドがもともと持っていたポップさはかすかに生きているのである。
かつて以上に全く喋ったりすることもなく、「ワイパー」の陶酔感たっぷりのサウンドに浸らせてライブを終えた4人。その姿からは流行りや求められているものには目もくれずに自分たちのやりたいことだけをやり続けていこうとするミュージシャンとしての気高き意志が見えたが、そうなると「コインランドリー」や「ピンホール」といった曲をライブで聴きたいと思ってしまうのはもう野暮なことなんだろうな…。
1.寝つけない
2.ロープ
3.フラッグ
4.見えないルール
5.ワイパー
ロープ
https://youtu.be/rV674UenG0s
18:00~ [ALEXANDROS] [MASSIVE STAGE]
このタイミングで[Alexandros]から大文字表記の[ALEXANDROS]に変更。ライブもCDJでの年越しアクト以来である。
大歓声に迎えられてメンバーが登場すると、白井のギターが奏で始めたのは「ワタリドリ」のギターのフレーズ。少し髪が爽やかになった白シャツ姿の川上洋平はいつも通りにステージ左右の花道まで使って全方位の観客に向かって歌声を届けるが、こうした大きなフェスにおけるカメラの使い方はやはり実に見事だし、一切不安定になることのないボーカルもやはり素晴らしい。それはバンドメンバーの演奏もそうだが、常に100%以上の状態のライブを見せるというのはフィジカルもメンタルも常に強くなくてはいけないし、それを維持するだけでなく常に向上させるために凄まじい努力を裏で重ねているのだろうというのは想像に難くない。
去年からダンサブルなアレンジに生まれ変わっている「Run Away」はオリジナルバージョンとダンサブルなバージョンのちょうど中間くらいと言っていいような2018年バージョンになっており、「明日、また」「I Don't Believe In You」とテレビで聴く機会も多かった、現状の最新シングル収録曲2曲もサウンドの感触は全然違うとはいえ、すっかりフェスにおいてもアンセムと言えるような曲になってきている。
すると川上のラップとサトヤスのドラムという削ぎ落とされまくっているがゆえになんの曲なのかすら若干わからなくなっているアレンジにAメロが変更されたのは「Kaiju」。削ぎ落とされながらも重さは失われてはいないのがさすがサトヤスだが、このアレンジだからこそサビでの爆発力がより一層強くなっている。
去年から披露され続けているが、曲調がハードロックであるということ以外はタイトルもリリースも何かもがもが未定である新曲を披露すると、すでに隣のステージではSUPER BEAVERがリハを始めており、曲間にはその音がこちらのステージまで聞こえてきていることで、
「こういうのもフェスだよね。昔、デビュー前は代々木公園でストリートライブをしてたんだけど、周りにはバンドもいたし、弾き語りの人もいたし、芸人さんもいたし、アイドルさんもいたし、大道芸の人もいたし。
でも今でも向こうのステージで騒いでるバンドをぶっ殺そうと思ってやってます!仲良いけど(笑)」
とSUPER BEAVERへのフォローをしながらバンドの持つ闘争心が今も失われていないことを語ると、コーラス部分では観客の大合唱が響いた「Adventure」から、ラストは川上が磯部や白井と向き合いながらハンドマイクで歌うおなじみの「Kick & Spin」で、最後のサビが終わるとステージ最前線から川上が下がり、その瞬間、ステージ前から大量の特効が炸裂した。それはこのバンドがロックシーンの絶対王者であることを証明してるかのようだった。
8月にはこのすぐ近くのZOZOマリンスタジアム(ロッテファンでもこの呼び方は慣れない)で始めてスタジアムワンマンを行う。どんな景色を見せてくれるのか実に楽しみだが、逆に言うとそれまであと5ヶ月もワンマンが見れないのは実に辛くもある。
1.ワタリドリ
2.Run Away
3.明日、また
4.I Don't Believe In You
5.Kaiju
6.新曲
7.Adventure
8.Kick & Spin
明日、また
https://youtu.be/qVDgV2JQydk
18:50~ SUPER BEAVER [COSMIC STAGE]
クロージングアクトもいるとはいえ、このステージのトリである。D.A.N→OGREの流れが嘘のような超満員の観客の前にメンバーが登場すると、
「昨今珍しい踊れないロックバンド、このステージのトリを仰せつかりました、SUPER BEAVERです」
と髪型がストレートになった渋谷が挨拶し、観客がメンバーに合わせて手拍子をする「美しい日」からスタート。
「証明」では観客の合唱も促したが、踊れないバンドであるこのバンドが、なぜ渋谷がホッとするくらいにこのステージを満員にさせ、来月の武道館ワンマンがチケットが手に入らないという状態になっているのか。それはメンバーが鳴らす一音一音、MCも含めた渋谷の発する一語一句、合唱や手拍子といった、ライブを構成する要素の全てに意志があるからである。それが音となって現れていく。だから見ていて感動してしまうのである。
とはいえこの日は、
「踊れないバンドと言いましたけども」
と「irony」では珍しく観客を踊らせるが、いわゆるダンスミュージック的なサウンドで踊らせるのではなく、ロカビリー的なロックンロールサウンドで踊らせるのが実に愚直なこのバンドらしい。
そうして狂騒的な空間を作ったかと思いきや、「人として」で自分たちがカッコいいと思える生き様について説き、
「青臭いだとか愚直だとかバカみたいなことだとか散々言われてきましたけども!」
と「青い春」でそう言われても曲げない変わらない自分たちの言いたいことを曲にしてみせる。
確かにこのバンドの歌詞は実に青臭い、ストレートそのもののような歌詞である。だが渋谷の放つ言葉を聞いていると、捻ろうと思えばいくらでも捻った、難解な表現の歌詞も作れるはずだ。でもバンドはあえてストレートなことしか言わない。それは一度はどん底まで落ちて、バンドをやめるところまでいった経験がそうしたストレートなことを言うべきだという理由になっているからである。そのストレートな言葉を最大限の熱量を持ってして放つ。そこにバンドの物語があるからこそ説得力が生まれる。
だからこのバンドが武道館まできたのも決して偶然ではなくて、今この時代に必要とされる熱さをこのバンドが持っているからである。そしてそれはたくさんの人の力でより大きなものになっていく。最後の「秘密」の大合唱がそれを確かに感じさせた。
1.美しい日
2.証明
3.正攻法
4.irony
5.人として
6.青い春
7.秘密
正攻法
https://youtu.be/ywgoqmpfRTY
19:40~ My Hair is Bad [MASSIVE STAGE]
この日、メインステージのトリに抜擢されたのは、My Hair is Bad。MAN WITH A MISSIONや[ALEXANDROS]を抑えてのトリという大役である。
出番の時間ギリギリまでリハで曲を演奏していたので、一度捌けることなくそのまま本番へ。
「ドキドキしようぜ!」
とおなじみの「アフターアワー」からスタートすると、昨年リリースの最新アルバムから「熱狂を終え」「復讐」というマイヘアらしいエモーショナルなギターロック曲も演奏される。
「高校生の頃、毎週地元のライブハウスにライブを見に行っていた。バンドのことも音楽の知識もなかったけど、一つわかったのは、トリに相応しいバンドがトリをやるべきだっていうこと。トリに相応しいライブをやります!
集まってくれたあんたらと、あの頃の自分自身のために!」
と気合いが入りまくっているからか、椎木は早くも少し声が枯れ気味ではあるが、バヤリースの体全体を使ったベースプレイと、まるでラウドバンドのドラムのように重さと手数を備えるようになったやまじゅんのリズム隊がそれをしっかり支え、椎木のバックバンド的な音になることなく、しっかりこの3人でMy Hair is Badの音楽になっている。
「世界一短いラブソング」
として「クリサンセマム」を一瞬で叩きつけると、ダンサブルなリズムがテンポが速くなりまくることで一層スピード感を増す「元彼氏として」とマイヘアでしかない視線のラブソングが続き、椎木は
「俺と別れてよかったな!こんなデカいステージでトリをやっている!」
と曲終わりで元彼氏として叫ぶ。
「コンビニでレジを打って金を貰う。音楽をやって金を貰う。同じ金は金だ。でもやりたいことをやる素晴らしさを俺は知ってる。俺はやる。お前はどうする?やるかやらねぇか」
と椎木が決死の形相で今の自分の思いを次々に口にする「クリサンセマム」もこうしてこの大きなステージでトリをやっているからこその言葉で溢れ、マシンガンのような言葉の連射を終えると、一転して
「優しい歌を」
と一気にテンポを落として吐き出すのではなく包み込むように歌ったのは「いつか結婚しても」。そして最後まで残ってくれた観客に何度も何度も感謝して、最後に「告白」を演奏してバンドはステージを去った。
しかしアンコールを求める声に応えて再び3人がステージに現れると、明日が誕生日であることを椎木が話し、25歳最後のステージとしての「真赤」をかつてないくらいにエモーショナルに鳴らして終わりかと思いきや、そのままトドメとばかりに、
「それから何年後 誰かが描写して
そのまま二人は
美しい噂になったんだ」
と、この日のライブがマイヘア初のフェスのメインステージのトリとしての美しい噂になることを示唆するかのように「噂」を一瞬で鳴らすと、これで終わりではなく、
「KANDYTOWNへ走れー!」
とあくまで1人の音楽ファンとして同じ音楽ファンたちに叫んでステージを去っていった。
これからこの先、きっとこうした規模のフェスのメインステージでマイヘアがトリをやるようになる時が何度も来る。その時にこの日、ここにいた人たちはこの日のライブのことをきっと思い出すはず。それくらい、トリをやることに自覚を持って、トリに相応しいライブをマイヘアは見事にやりきってみせた。さぁ、月末の武道館ワンマンはどんなその日にしかない言葉を紡ぐ?
リハ1.音楽家になりたくて
リハ2.グッバイ・マイマリー
1.アフターアワー
2.熱狂を終え
3.ドラマみたいだ
4.復讐
5.クリサンセマム
6.元彼氏として
7.フロムナウオン
8.いつか結婚しても
9.告白
encore
10.真赤
11.噂
いつか結婚しても
https://youtu.be/xXAJy4OtcZo
20:35~ KANDYTOWN (CLOSING ACT) [COSMIC STAGE]
クロージングアクトは世田谷の若手ヒップホップチーム、KANDYTOWN。昨年リリースのアルバムはヒップホップファンのみならず、音楽ファンからも幅広い評価を得たが、こうしたフェスの場ではなかなか見れないだけに貴重な機会。
DJがトラックを流し始めると、MC陣が次々にステージに登場してマイクリレーしていくが、曲ごとにラップするメンバーが異なり、MCが曲によって出たり入ったりしていく様は、世田谷の公園や空き地などで集まったメンバーが好きにラップしているというこのチームの原風景そのもののよう。
ロックファンとしてはこのチームの中で最も馴染みがある存在はBase Ball Bearの曲などにも参加している呂布だが、このチームの中では呂布はラップというよりもメロウなヴァースを担当しており、ラッパーというよりもシンガーというような立ち位置である。
アメリカではOFWGKTAという、タイラー・ザ・クリエイターやフランク・オーシャンが所属する大人数グループもあるが、日本ではRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWなど、少人数のグループが多いだけに、こうして曲ごとに出入りがあったり、曲によっては座っているだけというメンバーがいるというのは実に新鮮な光景である。
音楽的にも現行のアメリカのヒップホップ、R&Bの要素が強く、日本の歌モノヒップホップとは全く音楽性が違って内相的なトラックとリリックなだけにこうしたフェスではなかなかウケないかもしれないが、それこそOFWGKTAのように、この中から新たなスターが出てくる可能性も十分にある。
1.Few Colors
2.Round & Round
3.Twentyfive
4.The Man Who Knew Too Much
5.Chevy
6.Dallaz
7.Good Times (Remix)
8.All In One
9.Ain't No Holding Back
10.Get Light
11.R.T.N
12.Forever (Remix)
R.T.N
https://youtu.be/kIXrGAaSZNo
この日の出演者たちはみんな20代中盤から30代中盤あたりという世代。(MAN WITH A MISSIONは除く)
そこまでめちゃくちゃ若いというわけでもないだけに、彼らはみんなTSUTAYAでCDを買ったり借りたりした経験が確かにあって、それが今こうしてステージに立つ上で大事なものになっている。だからこそ、このツタロックというフェスは他のフェスとはまた違う独特な空気がある。
今は店舗が減ってきたりとなかなか厳しい状況になってきているのは間違いないが、ネットで音楽を聴いたり買ったりするだけでは得られないような経験がCD屋では得られる。それは自分自身もそうだし、この日の出演者たちも同じはず。だからこそこれからもこうしてライブイベントもやりながら、音楽と触れ合える場所をなくさないでほしいと心から思う。
Next→ 3/31 My Hair is Bad @日本武道館
と歌ったのは神聖かまってちゃん(「ロックンロールは鳴り止まないっ」)だが、そのTSUTAYAの主催するライブイベント、ツタロックがフェスバージョンとして開催。前日にビクターロック祭りが行われた会場をそのまま使い、2ステージ制で、
MASSIVE STAGEには
04 Limited Sazabys
Base Ball Bear
KANA-BOON
クリープハイプ
MAN WITH A MISSION
[ALEXANDROS]
My Hair is Bad
が出演(出演順)し、COSMIC STAGEには
フレデリック
yonige
sumika
D.A.N
OGRE YOU ASSHOLE
SUPER BEAVER
KANDYTOWN (CLOSING ACT)
という豪華な出演者が揃ったことで、このキャパでもチケットは即完。この広い幕張メッセ9~11ホールが狭く感じるほどに会場の各エリアは人が多く、入場やロッカーの待機列もかなり長いものになっていた。
10:30~ 04 Limited Sazabys [MASSIVE STAGE]
この日のトップバッターを務めるのは、様々なフェスでトップバッターとして出演した際に、
「夜型で朝が早いのがキツい」
と訴えてきた、フォーリミこと04 Limited Sazabys。近年使い始めた自作のSEでこの日も気合い入りまくりなメンバーたちがステージに登場すると、いきなりの「monolith」の爆音が会場を包み、朝イチから一気に狂騒空間が生まれる。GENは普段の
「きっと間違えられないな」
というフレーズをこの日の会場やタイトルに変えることはこの日はせず。
「ガンガン行こうぜ、ツタロック!」
とすぐさま「Buster call」へなだれ込むのだが、GENが歌い上げる部分はなく、サビ始まりとなったため、さらにスピード感が増す。
「fiction」も含めて、緩急やペース配分など考えもせず、ひたすら豪速球を連発しながらもキレがさらに増しているような印象すら受ける。
「普段からT-POINT貯めまくってるし、そのポイントをTSUTAYAで使いまくってますからね。RYU-TAなんか俺たちのT-POINTカードを自分で使っている(笑)」(フォーリミのメンバーがデザインされているT-POINTカードが発行されている)
と、普段からプライベートな面でTSUTAYAにお世話になっていることをGENが語ると、ちょっと前まではライブのクライマックスで演奏されることも多かった「swim」がこの中盤のタイミングで演奏される。かつてインディーズ期にはライブの最後を担う曲だった「Buster call」すらも今や序盤に演奏されるようになってきている。それはその最後を担うような、最大のキラーチューンと言っていいような曲を次々にこのバンドが生み出しているから。
「みんなが知ってる曲をやります!」
と言って演奏されたのは立ち位置的にはカップリング曲である「happiness」だが、コンタクトレンズのCMソングとして大量オンエアされたこの曲すらもシングルのタイトル曲やアルバムのリード曲になっていないということが近年のフォーリミの絶好調っぷりを改めて示している。
「春は性欲も溜まる季節ですね。俺たちのライブでたくさん気持ちよくなって、T-POINTだけじゃなくて、思い出ポイントも貯めて帰ってください!」
と実にGENらしいMCから始まったのは後半から一気に加速していく「me?」。
そして「midnight cruising」から、
「春は別れの季節。卒業とか異動とか、別れが色々あると思いますけど、再会の歌を聴いてください!」
と「Terminal」で切なさを倍増させると、ラストは
「自分自身に強く生まれ変われ!」
というメッセージが力強いサウンドに乗って突き刺さる「Squall」。結果的にリリースされたばかりの最新シングル収録曲が披露されることはなかったが、それまでの最新曲であるこの曲が今のフォーリミのクライマックスを文句なしに務める曲になっている。それはこれからも新しい曲が出れば更新されていくはず。そこにこそフォーリミがこのポジションまで登りつめることができた理由があるし、ライブハウスを主戦場とするパンク・メロコアバンドとしての空気を持ったままで、フォーリミはこのクラスのキャパのステージにワンマンで立とうとしている。春には東名阪のアリーナツアーもあるが、その後にはすぐにここまで来れるはず。
1.monolith
2.Buster call
3.fiction
4.swim
5.Warp
6.happiness
7.me?
8.midnight cruising
9.Terminal
10.Squall
Squall
https://youtu.be/-kB2K_4odA0
11:15~ フレデリック [COSMIC STAGE]
セカンドステージという位置づけであるCOSMIC STAGEだが、今や武道館でワンマンをやるようになったバンドも次々に登場してくる。その皮切りになるのが、来月に神戸のアリーナで初ワンマンを行うフレデリックだが、やはりこのキャパは始まる前から超満員となっている。
「フレデリック、始めます」
というおなじみのSEでメンバーが登場すると、いきなり幕張メッセをダンス空間に変えてしまう「オンリーワンダー」でスタートし、
「今日は骨の髄まで踊らせて帰宅させます!」
と「KITAKU BEATS」から康司と高橋武によるリズム隊がシームレスに楽曲を繋いでいく「ナイトステップ」という流れではこの日ならではの単語も歌詞の中に盛り込みながら、狂騒的というよりもむしろじっくりと踊らせていくようなモードに。
健司がハンドマイクで歌う「まちがいさがしの国」は今の世の中や社会を見ているとますますそのメッセージが強く響いてくる曲だが、この曲をワンマンのみならずフェスでもやり続けているということは、バンドには明確に今の日本に対して言いたいことや思うことがあって、それをしっかり自分たちの音楽として発信しているということ。逆に、バンドがこの曲をやらなくていいような状況になれば、世の中が少しまともな方向に進んだと言えるのかもしれない。
「すごく良い曲を」
と紹介された「たりないeye」はツアーでも大事な場面で演奏された曲だったが、結果的には「オワラセナイト」も「かなしいうれしい」も演奏されないという、今までの、まさにフェスセトリ的な戦い方ではなく、このバンドは今も増え続けている、ひたすらに観客を踊らせまくる、いわゆる高速ダンスロックというバンドたちとは違う、自分たちだけの戦い方を見つけたような感すらある。
それが見つかったのは「TOGENKYO」が出たからというのは「TOGENKYO」のツアーに行ったからこそよくわかることであるが、だからと言ってひたすらにそっちに寄せるようなことはせず、最後にはダンサブルなライブならではのイントロが追加された「オドループ」で踊らせまくり、凄まじい大きさの手拍子の音を生み出してみせた。
年末にツアーファイナルを見て、年明けにツアーの追加公演を見に行って、その後にこうしてフェスで見ると、フレデリックはフェスで勝ってきたバンドであると見られがちだし、フェスで見れればいいと思っている人もたくさんいると思う。でもこのバンドの、このバンドだけの戦い方をフルに発揮できる場所はやはりワンマンなのだと思う。関東でも今年中に武道館クラスでワンマンをやってくれるだろうか。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.ナイトステップ
4.まちがいさがしの国
5.たりないeye
6.TOGENKYO
7.オドループ
TOGENKYO
https://youtu.be/OfBd8kxo4mQ
12:00~ Base Ball Bear [MASSIVE STAGE]
おなじみのXCTのSEが流れてステージに現れたメンバーたちから感じる違和感。いや、それだけじゃない、ステージ上のセットからして、これまで13年間見続けてきたBase Ball Bearのそれではない。
実際にメンバーがステージに上がると、「光源」ツアーの追加公演で小出が言っていたように、長らくサポートメンバーとして素晴らしいギタープレイを見せてくれていた、第5のメンバーこと弓木英梨乃にいったん別れを告げ、バンドは3人だけでライブをやっていこうとしていたことを思い出した。そう、この日は3人だけのベボベの始まりの日となったのである。
ライブ開始前の儀式である堀之内会議も3人だけで行われ、小出が下手、関根が上手(これまで下手だった関根がなぜ上手になったんだろうか)にそれぞれ分かれると、まさにこの日のバンドの新しい挑戦を歌ったかのような「changes」でスタートし、「PERFECT BLUE」へなだれ込んで行くが、やはりギターが一本だけ、同期の音すらも使わないというのは明らかに今までよりも音が足りない。しかしながら小出がメインギターを弾いたり、堀之内が手数を増やしたり、関根が音を動かしまくったりと、そもそもが4人で演奏される前提の曲を、スカスカになることなく3人で演奏するようなアレンジがなされている。つまり、今までに数えきれないくらいに演奏してきたこの曲たちも、また1からアレンジし直しているのである。そこにはどれほどの労力、努力があったのだろうか。少なくとも、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れたりというメンバー個々のスキルアップがここで活きてきていることは間違いない。
ギターサウンドというよりもリズムのグルーヴで、あの頃の空気を作り出していく「文化祭の夜」はこの編成にうってつけと言えるが、そのままアウトロからつながるような形でリズム隊のみが演奏する中で小出がラップを乗せていくというアレンジになった「The CUT」は鳥肌モノのカッコよさ。前日にビクターロック祭りに出演したRHYMESTERのゲスト出演もあるか?と思っていたが、3人での始まりであったこの日だからこそ、他のゲストを入れることなく3人だけでライブをやりきることが何よりも重要なことだった。(それこそこの日はKANDYTOWNに盟友の呂布もいたので、頼めば出てくれたはず)
「今回はちょっと珍しくて。年齢的に年上のバンドはいますが、芸歴的には我々が今日1番上なんじゃないかと。そんなおじさんならではの、中堅だからこその地肩の強さをとくと見せたいと思います」
と、2000年代中盤にデビューしたこの世代がついにフェスの中で最もベテランになってきたことに驚きつつ、来るべき夏に思いを馳せる「ドラマチック」でこのバンドよりもかなり年下の世代であろう人たちも沸かせると、「真夏の条件」では小出が
「ギター俺!」
と、かつては湯浅が、近年は弓木が担ってきたギターソロを自身の手で継承してみせる。
そしてラストはもはや「ダンス湯浅将平」も、弓木の凄まじいギターソロもなくなった「十字架 You and I」。3人になっても続けることを選んだメンタルの強さだけでなく、小出の言う通りに、中堅だからこそのフィジカルの強さもしっかりと見せつけた。
この文はすべてのアクトが終わってから書いているので、結論から言うと自分はこの日のベストアクトはこのバンドだと思っている。他の後輩バンドたちが、メンバーが1人減った時に、減った状態のままでライブができるだろうか?と考えると、それはできないはず。ベボベも若手の頃だったらできなかった。でも今ならできる。それはベボベが一度も辞めることも止まることもせずに、ひたすら自分たちの持つ武器を磨き続けてきたから。そしてそれはこれからもずっと続いていく。これからの3人のベボベにも、本当に期待している。
1.changes
2.PERFECT BLUE
3.文化祭の夜
4.The CUT
5.ドラマチック
6.真夏の条件
7.十字架 You and I
changes
https://youtu.be/Jo0oTzmwQPU
12:45~ yonige [COSMIC STAGE]
ツアーを終えたばかりという仕上がった状態での出演となった、yonige。この広い会場にThe SALOVERSの「ビオトープ -生物生育空間-」がSEとして流れると、牛丸ありさとごっきんに加え、サポートドラマーの堀江(DREADNOTE)という3人がステージに登場。
牛丸が思いっきり歪んだギターを鳴らすと、ごっきんも頭を振りまくりながらベースを弾く、スリーピース・ギターロックバンドのダイナミズムを感じさせる「ワンルーム」からスタート。非常にテンポ良く曲を連発していくのは楽器を取り替えたりする手間や時間がないからとも言えるが、ここまでテンポが良いと持ち時間の短さを感じさせない。
ライブならではの高速化しまくる「アボカド」を演奏すると、
ごっきん「yonigeは大阪の寝屋川出身なんですけど、実はTSUTAYAの創業者の方は寝屋川の隣の枚方出身なんですよ。だからうちらのすぐ近くにスタバと一緒になってる、めちゃデカくてキレイなTSUTAYAがあって。高校生の時からそこに入り浸ってました」
牛丸「みんな朝早いですけど、眠くないですか?まだまだ盛り上がっていけますか?
さっきリハで「バイ・マイ・サイ」っていう曲をやったら、ツーステしてる人がいた(笑)」
ごっきん「うちらの曲でツーステ無理やろ!(笑)」
とフェスでも大阪の姉ちゃん感丸出しなMCで和ませつつ、ごっきんはベースを抱えたまま明らかに慣れてないツーステを踏むと、それに動揺したのか、牛丸が歌い出しで出遅れた「センチメンタルシスター」へ。O-EASTでのワンマンの時も自身の直前の言動によって出遅れただけに、この曲前になんかしらの面白いMCをすると入りにくいんだろうか。
牛丸のポエトリーリーディングのような言葉がこの会場の空間に次々に浮かんできて、それをかき消すような轟音ギターの音が響く「しがないふたり」から「悲しみはいつもの中」、「さよならプリズナー」とポップさとオルタナさを両立させた、まさにyonige的な曲が続くと、最後に演奏されたのは「さよならアイデンティティー」でも「恋と退屈」でもなければ、CMで大量オンエアされた「笑おう」でもなく、ワンマンのラストでおなじみの轟音シューゲイザーナンバー「最愛の恋人たち」で、まさに白昼夢のごとき陶酔感を描いて余韻に浸らせた。ポップでオルタナなギターロックのyonigeもいいけれど、こちらのサイドのyonigeもたまらないし、ワンマン以外の場でこっちのサイドの曲を堪能できるとは思っていなかった。
しかしながら演奏はもちろん、去年の夏フェスあたりから何度も言っているように、牛丸は本当に歌が上手くなった。自分たちはフェス向きのバンドではないということを自認しているが、この牛丸のボーカリストとしての覚醒っぷりはこれからフェスでさらに大きなステージに立つ時に必ず大切な武器になる。現にこのバンドはそうした場所にもうすでに手をかけている。その時に牛丸のボーカルは今よりもしっかり評価されるようになるはずだ。
1.ワンルーム
2.our time city
3.あのこのゆくえ
4.アボカド
5.センチメンタルシスター
6.しがないふたり
7.悲しみはいつもの中
8.さよならプリズナー
9.最愛の恋人たち
ワンルーム
https://youtu.be/QlUVCG3YmCs
13:30~ KANA-BOON [MASSIVE STAGE]
SEもなくメンバーがステージに登場した、KANA-BOON。いきなりの「フルドライブ」で満員の観客を踊らせまくると、昨年リリースの最新アルバム「NAMiDA」収録のハードな音像の「ディストラクションビートミュージック」、タイアップアニメの内容に合わせるようにこちらもハードな「Fighter」と連発するが、リリース時は「鮪のハイトーンな声には似合わない」とすら言われていたこうしたタイプの曲が、今やバンドの筋力の強さを最も証明できるような曲になってきている。それはめしだの一件以降にメンバー全員がこのバンドで生きていくと改めて誓い、特にリズム隊の2人からそうした意識が伝わってくるような演奏になったからである。
最新アルバムのタイトル曲である「涙」で少ししんみりとした空気に持っていくも、
「TSUTAYAさんにはいつもお世話になっていまして。よく渋谷店に行くんですけど、この前プリキュアのDVDのコーナーを見ていたら、ファンの人に声をかけられまして(笑)
別に幼女趣味があるわけではないんですけど、めちゃくちゃ恥ずかしかったです(笑)」
と鮪のMCはやはり脱力するというか、かっこいいロックスターの日常とは真逆の、我々となんら変わらない生活を送っていることがうかがえる。
しかし
「春の歌を」
と続けて言った時には、「これは当然「さくらのうた」だろう」と思ったのだが、あのイントロでの名曲確定的なメンバー全員でのキメが入らず、あれ?と思っていたら、演奏されたのは「桜の詩」の方であった。確かにカップリング集がリリースされたばかりであることを考えると、こっちの方が演奏されてしかるべきだし、そのリリースによって、毎回シングルには必ずクオリティの高い、捨て曲感一切なしの2曲を入れ続けてきたKANA-BOONのカップリング曲がフェスでも毎回聴けるようになるのかもしれない。
「お腹空きましたね~。みんなを満腹にしたいと思います!」
とおなじみの「ないものねだり」から、「シルエット」で疾走し、ラストはバンドの決意表明的な「バトンロード」というあたりは近年のフェスにおける締めとしてすっかり定着してきた。
「今年でKANA-BOONはメジャーデビュー5周年を迎えました。今年はリリースもライブもたくさんやっていくんで、よろしくです!」
と鮪が今年の活動への意気込みを語ったが、売り上げもツアーの動員も今やKANA-BOONは右肩下がりになりつつある。なんならCOSMIC STAGEに出ていてKANA-BOONより売れているというバンドすらいるような状態である。
めしだの一件もあったとはいえ、バンドとしてはそれを乗り越えられたと思っている。では何が足りないのか。それはやはり決定的な曲である。「ディストラクションビートミュージック」も「涙」も悪くはない。でもやはり「ないものねだり」や「シルエット」を凌ぐほどの曲ではないことは確か。KANA-BOONの魅力はひたすらに楽曲の良さであり、それが初めからあったからこそ若手バンドの中で最も早くブレイクすることができた。その持っている素質は間違いなく世代の中でダントツであるだけに、有無を言わさずに年間ベストクラスのアルバムができた時に再びKANA-BOONはこのキャパでワンマンをやっても埋めることができるはずだし(以前ここでワンマンをやった時は全く埋まらなかったし、今やワンマンではZeppすら売り切れていない)、それができるバンドだと信じている。
1.フルドライブ
2.ディストラクションビートミュージック
3.Fighter
4.涙
5.桜の詩
6.ないものねだり
7.シルエット
8.バトンロード
桜の詩
https://youtu.be/LKYl6-HJ_vQ
14:15~ sumika [COSMIC STAGE]
エンターテイメント性溢れるSEが流れて元気にステージに現れたsumika。この日もサポートベーシストを迎えた5人編成で、それぞれが持ち場に着くと、黒田(ギター)、小川(キーボード)、そして片岡(ボーカル&ギター)の声が美しく重なり合っていくオープニングナンバー「Answer」からスタートし、小川のキャッチーなピアノのフレーズが流れると、もはや
「みんなの声で!」
と片岡が煽る必要がないくらいに大合唱が自然に発生するくらいにもはやロックシーンのみならず、国民的な曲になりそうな雰囲気すら感じる「Lovers」へ。黒田と小川が演奏中にいちいち挟むアクションも面白いが、
「参加賞になんて興味はない!一等賞を取りにきました!」
という片岡の言葉からは、ポップにコーティングされた内側にある、前身バンド時代から変わらぬパンクの精神性を強く感じることができる。
カラフルなサウンドと軽快なリズムでまさに「ダンスをする」「カルチャーショッカー」を終えると、今年はまだ成人式の中で少し演奏しただけなので、本格的なライブはこの日が初であることを告げ、「ソーダ」で再びメンバーの美しいハーモニーを聴かせ、
「フェスももう中盤ですけど、疲れてないですか?みなさんに回復の呪文をかけてあげましょう!」
と「ふっかつのじゅもん」のアッパーなサウンドには疲れを吹き飛ばして踊りまくる確かな力が備わっている。
片岡がギターを弾かずにゆらゆらとステージを歩き回りながら歌う「Summer Vacation」は一転してアッパーではなく気だるい夏の空気感を運んでくる。いわゆるインディーポップ的な要素が強いために、アルバムのリード曲として公開された時は驚きの声が大きかったが、今やすっかりフェスでも大事な位置を担う曲になっている。そういう意味ではこの曲をリードにしたメンバーの選択は間違っていなかったということだろう。
「最後に、ありったけの想いを「伝えたい」っていう5文字に込めて歌いたいと思います!でもこの曲は僕らだけでは完成させることができません!みなさんの力を貸してください!」
と片岡は観客の声によってこの曲が真価を発揮することを語って「「伝言歌」」を演奏して大合唱を巻き起こしたが、その中で
「あの日、渋谷クアトロに行かなければ荒井(ドラム)に出会わなかった。あの日、新宿Marbleに行かなければ隼ちゃん(黒田)に出会わなかった。あの日、横浜のライブハウスに行かなければおがりん(小川)に出会わなかった。
もしかしたら、今日このフェスで出会って仲良くなって、後に一緒にバンドを組んだり。あるいは、付き合ったり結婚したりするかもしれない。
24時間の中のたった40分じゃない、人生の中で今が忘れられない瞬間になるように!すべての自分の選択が、みんながここに来たという選択が意味のあることになるように!」
と片岡が数あるライブのうちの一つではなく、この日この場所でのこのライブは間違いなくこの瞬間にしかないものであると語った。
sumikaはフェスでは実はあんまりやる曲は変わらない。(特に「Familia」リリース以降は)
でも同じ選曲であっても、一回一回全く違うライブを作り上げてくれる。やり方やサウンドは全く違うが、それはサンボマスターに通じるところがある。そうしたライブができるからこそ、このバンドがこのキャパを満員にできて、武道館でワンマンができるのも必然的なことなのだ。それをとびきりポップな音楽でやることができると考えると、このバンドが日本を代表するようなバンドになっても全くおかしいことではない。
1.Answer
2.Lovers
3.カルチャーショッカー
4.ソーダ
5.ふっかつのじゅもん
6.Summer Vacation
7.「伝言歌」
Lovers
https://youtu.be/FFITBgsyVr4
15:00~ クリープハイプ [MASSIVE STAGE]
KANA-BOON同様にSEなしでフラッとメンバーがステージに登場した、クリープハイプ。白シャツ姿の尾崎世界観が
「今日はなんか緊張するなぁ。そりゃそうか、セックスの前はドキドキしますよね」
と発すると、長谷川カオナシがステージ下手前に出ていってイントロのベースを弾き始め、いきなりの「HE IS MINE」という先制攻撃。
「TSUTAYAのフェスなんだから、大きな声で返却してください!」
と尾崎が煽るといきなりの
「セックスしよう!」
の大合唱。観客も声が出ているが、それよりも尾崎の声が本当によく出ている。一時期の不安定さが嘘のようだし、ツアーを経たバンドの演奏の一枚岩感が、映画のジャケットを模した新アー写同様にここにきてさらに増している。
「君の故郷を代表するあの大きなTSUTAYAは」(「愛の標識」)
「幕張の六畳間」(「鬼」)
とライブ定番の人気曲のフレーズを次々に今日、この場所、このフェスでしかない単語に変えていく尾崎の反射神経が冴え渡る中、
「TSUTAYAでよくAVを借りていて。返却日に雨が降っていると返すのが面倒なので、次の日の朝11時までに返却ポストに入れればいいや、と思って次の日に目覚ましをかけて寝るんですけど、10時45分くらいに起きるとやっぱり返しに行くのがめんどくさくて(笑)」
と実に尾崎らしいというか、あまりにリアル過ぎるTSUTAYAエピソードを語ると、ほのぼのとした空気すら感じる「大丈夫」からバンドを代表する名曲「イノチミジカシコイセヨオトメ」ですべての観客の女性の心を震わせると、
「先へ。さらにその先へ行きたいと思います。あのAVの借りも返したいと思います(笑)」
と「オレンジ」で光の先の景色を描き、カオナシによるイントロのライブアレンジがさらにグルーヴィーな「イト」と新旧の代表曲を続けると、最後に演奏されたのは銀杏BOYZがカバーしてからは毎回ライブのセットリストに入るようになった「二十九、三十」。
「前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで」
と、素直に「頑張れ」とか「負けるな」とは言って背中を押すようなことはしない。尾崎はきっとそう言われるのが好きじゃないタイプだ。でもこの曲を聴いているとそうして背中を押されるよりも、また明日からも頑張ろうと思える。それは誰かの力で進むのではなくで、自分の意思で進もうと思えるから。それはもう二十九でもなければ三十でもなくなったからかもしれないけれど。
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.鬼
4.大丈夫
5.イノチミジカシコイセヨオトメ
6.オレンジ
7.イト
8.二十九、三十
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
15:45~ D.A.N [COSMIC STAGE]
明らかに異色である。ここまでこのステージに登場してきたバンドは今まさにアリーナクラスに手をかけようとしている、エモーショナルさを強く持ったバンドたちだったが、薄暗い照明の中にD.A.Nのメンバー4人が登場すると、それだけで違うイベントに来たかのように空気が一変する。
基本的には市川仁也(ベース)と川上輝(ドラム)の反復するリズムを軸とした、ミニマルミュージックの要素が強いが、そこに櫻木大悟(ボーカル&ギター&シンセ)の色っぽくも神聖さを感じさせる歌が乗ることにより、どこか近年のアメリカのオルタナティブなR&Bのような歌モノとしての要素も感じさせる。さらにはサポートメンバーである小林うてな(シンセなど)のスティールパン(なかなかバンドのライブではお目にかかれない楽器)の音が「Zidane」に華を添えている。
ライブハウスというよりもクラブ、野外というよりも室内というようなイメージの音楽なだけに、照明が明るくなるような瞬間もほとんどなく、曲と曲の間を開けたり、MCをするようなこともない、ひたすらに自分たちの音を鳴らすのがステージに立っている意味であるというようなストイックさ。
しかし機械的になりがちな反復するビートもCDで聴くよりははるかに人間味を感じさせるし、櫻木のボーカルもCDではサウンドの中の一種、というイメージが強かったが、しっかり歌として機能している。この手のバンドはライブで見てもそこまでCDで聴く印象と変わらないバンドも多い中で、これはかなりイメージが変わった。
しかしながら観客は本当に少なかった。sumikaに至るまでのこのステージの満員っぷりとは違うフェスにワープしたかのようですらあった。客層が違うと言えばそれまでだが、他のバンドたちはこのバンドが持っていないものを持っている。逆に他のバンドが持っていないけれど、このバンドが持っているものも確かにある。その持っているものが多くの人に刺さるかどうかの違い。今の所はそれが他のバンドが持っているものであるということ。それはどちらがいいとか悪いとかではなく。
1.Zidane
2.SSWB
3.Native Dancer
4.Time Machine
5.Chance
Zidane
https://youtu.be/epsMJXoFzjs
16:30~ MAN WITH A MISSION [MASSIVE STAGE]
この日まで、ドラムのスペア・リブが体調不良でライブを休養していた、MAN WITH A MISSION。究極の生命体なのに体調不良とかあるのか、という気もしなくはないが、この日は久しぶりに完全体のバンドのパフォーマンスとなる。
しかしながらさすがにこのキャパでワンマンをやっているのが当たり前というクラスのバンドだけあって、凄まじい観客の数の前に狼たちが登場。DJサンタモニカのスクラッチによってサウンドが鳴らされると、トーキョー・タナカが軽やかに踊りまくる「FLY AGAIN」で早くも観客がフレーズに合わせて手を左右に振り、タナカとカミカゼ・ボーイはステージ左右の花道を走り回りながら隅から隅まで観客を煽るというあたりはさすがにアリーナクラス慣れしているバンドである。
ゲストとして登場こそしなかったが10-FEETのTAKUMAをフィーチャーしている「database」でこのバンドの持つミクスチャー感を発揮すると、壮大な「Hey Now」、重心を低めにした「My Hero」と海外でライブを行うことが当たり前になってきたからこそのスケールの大きな曲でバンドの持つ幅の広さをさらに実感させてくれる。
この日、ここまではどのバンドも派手な演出もなかったのだが、「Take What U Want」ではレーザー光線が飛び交うという演出もあり、ジャン・ケン・ジョニーはMCでスペア・リブが復帰したことを告知すると、
「我々が最初にツタロックに出させてもらった時は、渋谷のクアトロで行われた時でした。それからこんなに大きな場所でやるようになって、我々がそこに出ているというのが本当に感慨深いです」
とイベントの進化をしみじみと語っていたが、それもそこまで昔の話ではない。でも今やこのバンドがクアトロのキャパでやるなんて全く想像できないことだし、もしやるとなったら暴動が起きるくらいのレベルのことである。それくらいにイベントよりもこのバンドの進化のスピードの速さはおそるべきものがある。
その気持ちを音に込めたかのような「Emotions」から、東京スカパラダイスオーケストラとコラボした新曲「Freak It!」では
「大和魂」「握りこぶし」
という、このバンド単独ではまず出てこないであろう、和の要素を含んだフレーズが多数出てくるが、バンドだけでもこのサウンドの迫力となると、もしスカパラがステージに参加したら一体どうなってしまうのだろうか。
そしてラストはやはり「Raise your flag」。
「きっといつか いつかどこか 辿り着くと信じて」
という、一見すると薄く感じてしまうようなサビのフレーズ。だが前例のない、非人間として活動を続け、世界にまで進出したバンドだからこそ、このフレーズはこの先、このバンドがどこまで行くのかということをそのまま歌っているかのように感じる。
ぶっちゃけた話、設定としてはタナカとジャン・ケン以外は誰がステージに立っていてもわからないかもしれない。他の人が狼になってさえいれば。しかしライブを見ていると、紛れもなくこのバンドはこの5人じゃないと絶対に成り立たないバンドなんだな、ということがよくわかる。(それはサポートのE.D ヴェダーも含め)
設定から始まったようなバンドではあるけれど、おそらくというか間違いなく、この生命体は地球でこの5人しかいないはずだから。だからみんなスペア・リブが戻ってきたことを心から喜び、他のどのメンバーよりも名前を叫んでいた。話題を呼んだのは確かにその見た目と設定かもしれないが、その奥にあるものをこのバンドのたくさんのファンたちはしっかりと嗅ぎとっている。
1.FLY AGAIN
2.database
3.Hey Now
4.My Hero
5.Take What U Want
6.Emotions
7.Freak It!
8.Raise your flag
Freak It!
https://youtu.be/TMSN3a2x98w
17:15~ OGRE YOU ASSHOLE [COSMIC STAGE]
かつては大型フェスでも常連的な存在であり、サカナクションやthe telephonesとともに21世紀の最初の10年の新しい音楽の形を模索していた、OGRE YOU ASSHOLE。こうしたいわゆるロックフェス的なところに出てくるのは実に久しぶりである。
自分もかつてはよくライブを見ていたが、近年は全くライブを見ていない(CDは毎作欠かさず聴いているが)のだが、メンバーが登場すると、出戸(ボーカル&ギター)、馬渕(ギター)、勝浦(ドラム)のかつてと全く変わらない出で立ちに一安心するが、かつてのサイケデリックなギターロックからは完全に一変、先ほどこのステージに出たD.A.Nのような、サイケデリックさが強くなりまくった、ドープなミニマルミュージックになっている。
というよりもD.A.Nがこのバンドから大きな影響を受けているということがよくわかるのだが、都会的な空気を感じるD.A.Nに対して、OGREは密室的。それはやはり音楽を作る環境がそのままその音楽に現れていて実に面白いが、長野の山奥で自分たちの好きなことだけを追い求めたらここまでフェス向きの音楽ではなくなるのか、とも思う。
「ロープ」はもともと「long ver.」というこうした音楽に通じるバージョンのものがあったが、最もバンドのサウンドの、もうかつてのようなサイケデリックだけどあくまでギターロック、みたいなところから変換したと感じたのは「フラッグ」「見えないルール」というかつてライブでよく聴いていた曲たちが、今のバンドのサウンドに合わせた形に完全に生まれ変わっていたこと。だから最初はなんの曲なのかわからなかったのだが、メロディと歌詞は確かにかつての面影を残している。つまりどれだけ深いところまで行っても、このバンドがもともと持っていたポップさはかすかに生きているのである。
かつて以上に全く喋ったりすることもなく、「ワイパー」の陶酔感たっぷりのサウンドに浸らせてライブを終えた4人。その姿からは流行りや求められているものには目もくれずに自分たちのやりたいことだけをやり続けていこうとするミュージシャンとしての気高き意志が見えたが、そうなると「コインランドリー」や「ピンホール」といった曲をライブで聴きたいと思ってしまうのはもう野暮なことなんだろうな…。
1.寝つけない
2.ロープ
3.フラッグ
4.見えないルール
5.ワイパー
ロープ
https://youtu.be/rV674UenG0s
18:00~ [ALEXANDROS] [MASSIVE STAGE]
このタイミングで[Alexandros]から大文字表記の[ALEXANDROS]に変更。ライブもCDJでの年越しアクト以来である。
大歓声に迎えられてメンバーが登場すると、白井のギターが奏で始めたのは「ワタリドリ」のギターのフレーズ。少し髪が爽やかになった白シャツ姿の川上洋平はいつも通りにステージ左右の花道まで使って全方位の観客に向かって歌声を届けるが、こうした大きなフェスにおけるカメラの使い方はやはり実に見事だし、一切不安定になることのないボーカルもやはり素晴らしい。それはバンドメンバーの演奏もそうだが、常に100%以上の状態のライブを見せるというのはフィジカルもメンタルも常に強くなくてはいけないし、それを維持するだけでなく常に向上させるために凄まじい努力を裏で重ねているのだろうというのは想像に難くない。
去年からダンサブルなアレンジに生まれ変わっている「Run Away」はオリジナルバージョンとダンサブルなバージョンのちょうど中間くらいと言っていいような2018年バージョンになっており、「明日、また」「I Don't Believe In You」とテレビで聴く機会も多かった、現状の最新シングル収録曲2曲もサウンドの感触は全然違うとはいえ、すっかりフェスにおいてもアンセムと言えるような曲になってきている。
すると川上のラップとサトヤスのドラムという削ぎ落とされまくっているがゆえになんの曲なのかすら若干わからなくなっているアレンジにAメロが変更されたのは「Kaiju」。削ぎ落とされながらも重さは失われてはいないのがさすがサトヤスだが、このアレンジだからこそサビでの爆発力がより一層強くなっている。
去年から披露され続けているが、曲調がハードロックであるということ以外はタイトルもリリースも何かもがもが未定である新曲を披露すると、すでに隣のステージではSUPER BEAVERがリハを始めており、曲間にはその音がこちらのステージまで聞こえてきていることで、
「こういうのもフェスだよね。昔、デビュー前は代々木公園でストリートライブをしてたんだけど、周りにはバンドもいたし、弾き語りの人もいたし、芸人さんもいたし、アイドルさんもいたし、大道芸の人もいたし。
でも今でも向こうのステージで騒いでるバンドをぶっ殺そうと思ってやってます!仲良いけど(笑)」
とSUPER BEAVERへのフォローをしながらバンドの持つ闘争心が今も失われていないことを語ると、コーラス部分では観客の大合唱が響いた「Adventure」から、ラストは川上が磯部や白井と向き合いながらハンドマイクで歌うおなじみの「Kick & Spin」で、最後のサビが終わるとステージ最前線から川上が下がり、その瞬間、ステージ前から大量の特効が炸裂した。それはこのバンドがロックシーンの絶対王者であることを証明してるかのようだった。
8月にはこのすぐ近くのZOZOマリンスタジアム(ロッテファンでもこの呼び方は慣れない)で始めてスタジアムワンマンを行う。どんな景色を見せてくれるのか実に楽しみだが、逆に言うとそれまであと5ヶ月もワンマンが見れないのは実に辛くもある。
1.ワタリドリ
2.Run Away
3.明日、また
4.I Don't Believe In You
5.Kaiju
6.新曲
7.Adventure
8.Kick & Spin
明日、また
https://youtu.be/qVDgV2JQydk
18:50~ SUPER BEAVER [COSMIC STAGE]
クロージングアクトもいるとはいえ、このステージのトリである。D.A.N→OGREの流れが嘘のような超満員の観客の前にメンバーが登場すると、
「昨今珍しい踊れないロックバンド、このステージのトリを仰せつかりました、SUPER BEAVERです」
と髪型がストレートになった渋谷が挨拶し、観客がメンバーに合わせて手拍子をする「美しい日」からスタート。
「証明」では観客の合唱も促したが、踊れないバンドであるこのバンドが、なぜ渋谷がホッとするくらいにこのステージを満員にさせ、来月の武道館ワンマンがチケットが手に入らないという状態になっているのか。それはメンバーが鳴らす一音一音、MCも含めた渋谷の発する一語一句、合唱や手拍子といった、ライブを構成する要素の全てに意志があるからである。それが音となって現れていく。だから見ていて感動してしまうのである。
とはいえこの日は、
「踊れないバンドと言いましたけども」
と「irony」では珍しく観客を踊らせるが、いわゆるダンスミュージック的なサウンドで踊らせるのではなく、ロカビリー的なロックンロールサウンドで踊らせるのが実に愚直なこのバンドらしい。
そうして狂騒的な空間を作ったかと思いきや、「人として」で自分たちがカッコいいと思える生き様について説き、
「青臭いだとか愚直だとかバカみたいなことだとか散々言われてきましたけども!」
と「青い春」でそう言われても曲げない変わらない自分たちの言いたいことを曲にしてみせる。
確かにこのバンドの歌詞は実に青臭い、ストレートそのもののような歌詞である。だが渋谷の放つ言葉を聞いていると、捻ろうと思えばいくらでも捻った、難解な表現の歌詞も作れるはずだ。でもバンドはあえてストレートなことしか言わない。それは一度はどん底まで落ちて、バンドをやめるところまでいった経験がそうしたストレートなことを言うべきだという理由になっているからである。そのストレートな言葉を最大限の熱量を持ってして放つ。そこにバンドの物語があるからこそ説得力が生まれる。
だからこのバンドが武道館まできたのも決して偶然ではなくて、今この時代に必要とされる熱さをこのバンドが持っているからである。そしてそれはたくさんの人の力でより大きなものになっていく。最後の「秘密」の大合唱がそれを確かに感じさせた。
1.美しい日
2.証明
3.正攻法
4.irony
5.人として
6.青い春
7.秘密
正攻法
https://youtu.be/ywgoqmpfRTY
19:40~ My Hair is Bad [MASSIVE STAGE]
この日、メインステージのトリに抜擢されたのは、My Hair is Bad。MAN WITH A MISSIONや[ALEXANDROS]を抑えてのトリという大役である。
出番の時間ギリギリまでリハで曲を演奏していたので、一度捌けることなくそのまま本番へ。
「ドキドキしようぜ!」
とおなじみの「アフターアワー」からスタートすると、昨年リリースの最新アルバムから「熱狂を終え」「復讐」というマイヘアらしいエモーショナルなギターロック曲も演奏される。
「高校生の頃、毎週地元のライブハウスにライブを見に行っていた。バンドのことも音楽の知識もなかったけど、一つわかったのは、トリに相応しいバンドがトリをやるべきだっていうこと。トリに相応しいライブをやります!
集まってくれたあんたらと、あの頃の自分自身のために!」
と気合いが入りまくっているからか、椎木は早くも少し声が枯れ気味ではあるが、バヤリースの体全体を使ったベースプレイと、まるでラウドバンドのドラムのように重さと手数を備えるようになったやまじゅんのリズム隊がそれをしっかり支え、椎木のバックバンド的な音になることなく、しっかりこの3人でMy Hair is Badの音楽になっている。
「世界一短いラブソング」
として「クリサンセマム」を一瞬で叩きつけると、ダンサブルなリズムがテンポが速くなりまくることで一層スピード感を増す「元彼氏として」とマイヘアでしかない視線のラブソングが続き、椎木は
「俺と別れてよかったな!こんなデカいステージでトリをやっている!」
と曲終わりで元彼氏として叫ぶ。
「コンビニでレジを打って金を貰う。音楽をやって金を貰う。同じ金は金だ。でもやりたいことをやる素晴らしさを俺は知ってる。俺はやる。お前はどうする?やるかやらねぇか」
と椎木が決死の形相で今の自分の思いを次々に口にする「クリサンセマム」もこうしてこの大きなステージでトリをやっているからこその言葉で溢れ、マシンガンのような言葉の連射を終えると、一転して
「優しい歌を」
と一気にテンポを落として吐き出すのではなく包み込むように歌ったのは「いつか結婚しても」。そして最後まで残ってくれた観客に何度も何度も感謝して、最後に「告白」を演奏してバンドはステージを去った。
しかしアンコールを求める声に応えて再び3人がステージに現れると、明日が誕生日であることを椎木が話し、25歳最後のステージとしての「真赤」をかつてないくらいにエモーショナルに鳴らして終わりかと思いきや、そのままトドメとばかりに、
「それから何年後 誰かが描写して
そのまま二人は
美しい噂になったんだ」
と、この日のライブがマイヘア初のフェスのメインステージのトリとしての美しい噂になることを示唆するかのように「噂」を一瞬で鳴らすと、これで終わりではなく、
「KANDYTOWNへ走れー!」
とあくまで1人の音楽ファンとして同じ音楽ファンたちに叫んでステージを去っていった。
これからこの先、きっとこうした規模のフェスのメインステージでマイヘアがトリをやるようになる時が何度も来る。その時にこの日、ここにいた人たちはこの日のライブのことをきっと思い出すはず。それくらい、トリをやることに自覚を持って、トリに相応しいライブをマイヘアは見事にやりきってみせた。さぁ、月末の武道館ワンマンはどんなその日にしかない言葉を紡ぐ?
リハ1.音楽家になりたくて
リハ2.グッバイ・マイマリー
1.アフターアワー
2.熱狂を終え
3.ドラマみたいだ
4.復讐
5.クリサンセマム
6.元彼氏として
7.フロムナウオン
8.いつか結婚しても
9.告白
encore
10.真赤
11.噂
いつか結婚しても
https://youtu.be/xXAJy4OtcZo
20:35~ KANDYTOWN (CLOSING ACT) [COSMIC STAGE]
クロージングアクトは世田谷の若手ヒップホップチーム、KANDYTOWN。昨年リリースのアルバムはヒップホップファンのみならず、音楽ファンからも幅広い評価を得たが、こうしたフェスの場ではなかなか見れないだけに貴重な機会。
DJがトラックを流し始めると、MC陣が次々にステージに登場してマイクリレーしていくが、曲ごとにラップするメンバーが異なり、MCが曲によって出たり入ったりしていく様は、世田谷の公園や空き地などで集まったメンバーが好きにラップしているというこのチームの原風景そのもののよう。
ロックファンとしてはこのチームの中で最も馴染みがある存在はBase Ball Bearの曲などにも参加している呂布だが、このチームの中では呂布はラップというよりもメロウなヴァースを担当しており、ラッパーというよりもシンガーというような立ち位置である。
アメリカではOFWGKTAという、タイラー・ザ・クリエイターやフランク・オーシャンが所属する大人数グループもあるが、日本ではRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWなど、少人数のグループが多いだけに、こうして曲ごとに出入りがあったり、曲によっては座っているだけというメンバーがいるというのは実に新鮮な光景である。
音楽的にも現行のアメリカのヒップホップ、R&Bの要素が強く、日本の歌モノヒップホップとは全く音楽性が違って内相的なトラックとリリックなだけにこうしたフェスではなかなかウケないかもしれないが、それこそOFWGKTAのように、この中から新たなスターが出てくる可能性も十分にある。
1.Few Colors
2.Round & Round
3.Twentyfive
4.The Man Who Knew Too Much
5.Chevy
6.Dallaz
7.Good Times (Remix)
8.All In One
9.Ain't No Holding Back
10.Get Light
11.R.T.N
12.Forever (Remix)
R.T.N
https://youtu.be/kIXrGAaSZNo
この日の出演者たちはみんな20代中盤から30代中盤あたりという世代。(MAN WITH A MISSIONは除く)
そこまでめちゃくちゃ若いというわけでもないだけに、彼らはみんなTSUTAYAでCDを買ったり借りたりした経験が確かにあって、それが今こうしてステージに立つ上で大事なものになっている。だからこそ、このツタロックというフェスは他のフェスとはまた違う独特な空気がある。
今は店舗が減ってきたりとなかなか厳しい状況になってきているのは間違いないが、ネットで音楽を聴いたり買ったりするだけでは得られないような経験がCD屋では得られる。それは自分自身もそうだし、この日の出演者たちも同じはず。だからこそこれからもこうしてライブイベントもやりながら、音楽と触れ合える場所をなくさないでほしいと心から思う。
Next→ 3/31 My Hair is Bad @日本武道館

グッドモーニングアメリカ 502号室のシリウスツアー ~ファイナル~ @TSUTAYA O-EAST 3/25 ホーム
ぴあ presents STAND ALONE Vol.7 @品川プリンスホテル クラブeX 3/4