ぴあ presents STAND ALONE Vol.7 @品川プリンスホテル クラブeX 3/4
- 2018/03/05
- 00:27
ぴあが定期的に行っている弾き語りイベント「STAND ALONE」。去年は銀杏BOYZの峯田和伸とYO-KINGの2人がやったりと、やたら豪華な面々がこれまでに出演しているのだが、今回は9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎とandropの内澤崇仁という組み合わせ。
このイベント以外で全くなじみのない会場であるクラブeXはプリンスホテルのすぐそばにあるホールで、客席のど真ん中にステージがあり、それを囲むように椅子が置かれていて、バルコニー席まである。そこまで広くないだけに、こうした弾き語り向きの会場であると言える。
・菅原卓郎 (9mm Parabellum Bullet)
TOKYO-FMの女性DJによる前説の後に登場した、菅原卓郎。軽く挨拶してから9mmの「黒い森の旅人」から弾き語りをスタートさせるのだが、バンドのライブで聴くよりもサウンドはスパニッシュに、卓郎のボーカルは艶やかになっており、アウトロではファルセットを実にキレイに聴かせる。なので9mmのライブとは根本的に歌い方そのものを変えている印象を受ける。
これまでも卓郎は弾き語りではバンドのライブからは想像もできないくらいによく喋るのだが、この日も1曲終わるごとに毎回長めのMCをしており、
「セトリを組む時に、今日はまだ寒いかな~と思ってこの曲を入れたのに、今日はすごい暖かいね(笑)」
と井上陽水の「氷の世界」と実に渋いカバー。
9mmの滝と新しく始動させたバンド、キツネツキの概要(滝がドラムで卓郎がボーカル&ギターという編成も含め)を説明をしてから、そのキツネツキが今月リリースするシングルの「ケダモノダモノ」を披露するのだが、
「リズム隊を入れないと」
と言うと、自らギターのボディを叩いてそれをルーパーで流し、さらに手拍子もルーパーに入れようとするのだが、手拍子を煽られていると思って観客が手拍子をしたために苦笑いして手拍子の録音はなく、ギターをパーカッション的に使ったリズムが流れる中で弾き語り。この辺りの新たな装置を使ったりするのは弾き語りを数多くやってきたことからくる経験と進化なのか、はたまたエド・シーランあたりからの影響なのか。
「今日はウッチー(内澤崇仁)に誘ってもらって。でも前にもこのイベントには誘われたことがあって。その時はMONGOL800のキヨサクさんとどうですか?って言われたんだけど、スケジュールが合わなくてできなくて。でもみんな今日の俺とウッチーのポスター見た?キヨサクさんと俺だと、組織のボスと鉄砲玉みたいになっちゃうよね(笑)
あー、なんか盛り上がる曲をやる流れになったっぽいから、しっとりした曲をやろうと思ったけど曲順変えよう!」
と9mmの「The Revolutionary」を確かに盛り上がる曲ではあるが、それでもバンドバージョンよりもしっとりとした形で弾き語りすると、
「6月にソロのアルバムを出すんですよ。ソロだから最初は自分で曲を作ろうと思ったんだけど、去年9mmでツアーやってたから無理で。そこでライブを休止していた、滝先生に作曲をお願いして、俺たちの師匠である、いしわたり淳治さんに作詞をお願いして。結局、ソロなのに全部他の人に作ってもらったんだけど(笑)、歌謡曲のアルバムになりました。その中からせっかくだから、初めて人前でやります!」
とやはり長々とMCをしてから披露されたのは「悪女」という新曲なのだが、これが本当にザ・歌謡曲。弾き語りだからその要素がさらに増しているのかもしれないが、9mmには元から「メタル×歌謡」という要素が強かったとはいえ、滝が作った曲がこんなに歌謡曲になるのかという驚き。そこには「歌謡曲は一人称の歌詞なんですよ」と歌詞から感じる歌謡性のメカニズムを卓郎が解説していた通り、メジャーデビュー時の9mmのプロデューサーであり、卓郎に歌詞の手ほどきをした(実際、卓郎はいしわたり淳治に添削されて、インディーズ時代の自分には言いたいことが何もなかった、と振り返っていた)いしわたり淳治の作詞のプロっぷりによるところが大きい。
スーパーカー時代から、いしわたり淳治を日本で最も優れた作詞家であると思っていた自分にとっては、いしわたり淳治が作詞をしてくれたのは本当に嬉しいことだが。
「この会場はステージが回るんですよ。どの曲で回そうかなぁと思ってたら、回ると言えば、中島みゆきの「時代」だろうと思ったら、すでにTAKUMAさん(10-FEET)と大木さん(ACIDMAN)が出た時に全く同じことをやったらしくて(笑)
だから中島みゆきの「時代」じゃない名曲を」
とステージを回転させることはここではせずにカバーしたのは、Mr.Childrenの桜井和寿らによるBank Bandや、最近ではAimerなど、様々な人がカバーしてきた名曲「糸」。この曲しかり、序盤の井上陽水のカバーしかり、卓郎には歌謡曲のDNAが確かに宿っている。だからこそソロをやる時に歌謡曲を選択したのは必然だったのだろう。
しかし卓郎はすっかりステージを回転させることを忘れていたらしく、最後になってステージを回転させることになり、普段の9mmのライブ時には滝が弾いているギターのリフを観客に口ずさませるという形で曲を再現した「Black Market Blues」でステージが回転しながら歌い、近年はかなり機会が増えている弾き語りでのライブに新たな要素と、1人で弾き語りをする意味をしっかりと持たせたライブを終えた。やはり喋りすぎて時間はかなり押したらしいが(笑)
1.黒い森の旅人
2.氷の世界 (井上陽水のカバー)
3.ケダモノダモノ
4.The Revolutionary
5.悪女 (ソロの新曲)
6.糸 (中島みゆきのカバー)
7.Black Market Blues
ケダモノダモノ
https://youtu.be/A_ccucbJmKM
・内澤崇仁 (androp)
後攻はandropの内澤。卓郎とは違ってたどたどしく挨拶すると、自身のバンドの曲である「Shout」「Joker」「Prism」といった、近年のバンドでのライブでもおなじみと言っていい曲たちを弾き語っていく。歌っている時以外は緊張している感じが非常に強く伝わってくるが、歌っている時は実に堂々とその凜として繊細な歌声を響かせている。
しかしながら、近年は精力的に弾き語りも行なっている卓郎と異なり、内澤にはこういう形で弾き語りをするイメージが全くない。実際、お金を取って1人で弾き語りをするのはこの日が初めてだったらしいのだが、だからこそandropの曲も全く違う感触を持って聞こえてくるというか、歌い始めた時はなんの曲なのかちゃんとわからない感じすらある。
「じゃあ、ステージを回転させますよ。初めてなんですよ、回転するステージで歌うの。だから回転ステージバージンを今日奪われたいと思います(笑)」
と言って歌い始めたのは、まさかの「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」。完全に
「地球は回る」
というフレーズ一発による選曲だと思われるが、「君をのせて」のフレーズを
「俺をのせて」
に変えて、自分で笑ってしまいながら歌う。こうしたお茶目な部分というのは普段のandropのライブではなかなか見れない一面である。
「みんなはどこから来たんですか?八戸!?八戸っていうと僕の出身地である青森県八戸市ですか!?すごい!
今日、ここの入り口がわからなくてウロウロしてたら、見に来てくれた人に声をかけてもらって。九州から来てくれたみたいで。みんな今日のために遠くから来てくれたりして本当にありがとう」
と観客への感謝を告げながら、いよいよ来週に発売が迫った久しぶりのニューアルバム「cocoon」の告知を、
「良かったら、じゃなくて、絶対聴いてください!」
と珍しく力強く行なったが、これはそれだけ今回のアルバムに自信を持っているからだろうし、その中から披露された「Hanabi」はその自信も納得というくらいの、これからバンドにとって大事な曲になっていきそうだし、夏の野外フェスの夜に聴いてみたい曲。
「みんなはどうなんですかね?(笑)
えーっと、まぁなんていうか、今3月じゃないですか?4月から新しい生活が始まる人もいるのかな、って。そういう新しい旅が始まるみんなに捧げます」
と言って
「スタートが僕らを見送るよ
次のゴールを目指して」
という歌詞がまさに新しい生活に足を踏み出して行く人たちの背中を強く押す「Traveler」から、
「さっきは反時計回りにステージが回転したんで、この曲で時計回りに」
と言ってしっとりとした空気で包み込んだ「Tokei」でステージが回転しながら歌い、やはりややたどたどしくステージから去っていった。
andropはメンバー全員が凄腕テクニックを持つバンドであり、ライブではそれをしっかりと見せてくれるが、弾き語りという極限まで削ぎ落とされた形で曲を聴くと、andropの核は内澤の歌とメロディであるということがよくわかる。それはまだ内澤以外のメンバーの名前や顔が一切公開されておらず、ライブもほとんど行われていなかった、このバンドのシーン登場時の原点である。
1.Shout
2.Joker
3.Prism
4.君をのせて
5.Hanabi
6.Traveler
7.Tokei
Hanabi
https://youtu.be/QRPSID2jNc8
・encore
アンコールでは2人が揃ってステージに現れ、卓郎が譜面台の位置をスタッフに協力してもらって移動させながら、アンコールではステージを全て回転させることにし、お互いの持ち曲で「回転」というテーマに合った曲をセレクト。卓郎が選んだandropの曲は
「まわるまわる」
というフレーズがサビにある「MirrorDance」で、卓郎と内澤が分け合いながら歌う。ちなみに通常のバンドバージョンではハンドクラップや打ち込みのビートがあるため、卓郎はアレンジを考える時にルーパーに手拍子とギターを叩くリズムを入れようとしたのだが、Aメロでしかそれが使われないために断念し、普通の弾き語りでのアレンジになったとのこと。
対して2人で歌う9mmの曲は「回転する」ということで観覧車の曲こと「Termination」。卓郎が普段は滝が弾いているギターを弾くという、ボーカリストとしてだけではなく、ギタリストとしての資質の高さを見せつけながら、サビでは2人が交代交代でメインボーカルとコーラスを変えていく。2人で歌っているということもあるし、弾き語りだとまた曲の違う面を見れるが、こうして聴くと早く9mmのライブを見たくなるし、久しぶりに9mmのライブでこの曲を聴きたくなる。
そして今回2人で「回る」にまつわる曲を出し合い、久保田利伸「LA・LA・LA LOVESONG」などの曲が挙がったが、この日が3月という紛れもなく春であり、また今年がhideの没後20年にあたる年ということで、最後に2人で歌ったのは、hideの名曲「HURRY GO ROUND」。この曲を聴いた、るろうに剣心の作者の和月伸宏があまりの名曲ぶりに最も感動的な、主人公たちが京都から帰還したシーンにこの曲のタイトルを当てたというエピソードもあるが、自分が中学生の時に初めてこの曲を聴いた時、良い曲だけど変な曲だな、と思った。その変な曲だと思った理由は、この日2人が歌う姿からもわかったのだが、リズムが明らかに普通ではない。というかフレーズごとにリズムが変わる。だから素直に良い曲ではなく、変な曲に聴こえたのだ。この2人(特に内澤)がhideの曲を歌うというのは意外だし違和感があるように感じるが、全くそんなことはなかった。それこそがこの曲の持つ普遍性であり、今なおhideがファンをはじめとしたたくさんの人の中で生きていることの証明である。
この日この曲を歌った2人は青森(内澤)と山形(卓郎)という東北出身者。卒業式の時に桜が咲いていることはなく、ゴールデンウィークくらいにならないと桜は見れないという。でも2人は今、3月になれば桜が見れる東京でこの曲を歌っている。もう会うことができない人にも、春になれば会えるような気がする。だから、「また 春に会いましょう」。
演奏を終えると、2人が円形のステージをぐるっと回りながら観客に手を振る。卓郎のそれは9mmのライブが終わった時と何も変わらなかったが、最後に2人が揃って一礼してから去っていくというのは、普段のライブでは見れない光景だった。
ただバンドの曲を1人で弾き語りするというのは時には退屈に感じる時もある。だが弾き語りをすることによって、バンドの演奏時には見えなかった新たな曲の持ち味が見えたりするし、こうしたコラボの敷居の低さは弾き語りならではと言える。やっぱり自分はバンドでのライブが1番好きだけど、この日は本当に見れてよかったライブだと思えたし、これまでの出演者たちを見ても、このイベントはこれからも注目していかなければならない、と思った。
1.MirrorDance
2.Termination
3.HURRY GO ROUND (hideのカバー)
HURRY GO ROUND
https://youtu.be/JkKSPhq-u-I
Next→ 3/18 ツタロック @幕張メッセ


このイベント以外で全くなじみのない会場であるクラブeXはプリンスホテルのすぐそばにあるホールで、客席のど真ん中にステージがあり、それを囲むように椅子が置かれていて、バルコニー席まである。そこまで広くないだけに、こうした弾き語り向きの会場であると言える。
・菅原卓郎 (9mm Parabellum Bullet)
TOKYO-FMの女性DJによる前説の後に登場した、菅原卓郎。軽く挨拶してから9mmの「黒い森の旅人」から弾き語りをスタートさせるのだが、バンドのライブで聴くよりもサウンドはスパニッシュに、卓郎のボーカルは艶やかになっており、アウトロではファルセットを実にキレイに聴かせる。なので9mmのライブとは根本的に歌い方そのものを変えている印象を受ける。
これまでも卓郎は弾き語りではバンドのライブからは想像もできないくらいによく喋るのだが、この日も1曲終わるごとに毎回長めのMCをしており、
「セトリを組む時に、今日はまだ寒いかな~と思ってこの曲を入れたのに、今日はすごい暖かいね(笑)」
と井上陽水の「氷の世界」と実に渋いカバー。
9mmの滝と新しく始動させたバンド、キツネツキの概要(滝がドラムで卓郎がボーカル&ギターという編成も含め)を説明をしてから、そのキツネツキが今月リリースするシングルの「ケダモノダモノ」を披露するのだが、
「リズム隊を入れないと」
と言うと、自らギターのボディを叩いてそれをルーパーで流し、さらに手拍子もルーパーに入れようとするのだが、手拍子を煽られていると思って観客が手拍子をしたために苦笑いして手拍子の録音はなく、ギターをパーカッション的に使ったリズムが流れる中で弾き語り。この辺りの新たな装置を使ったりするのは弾き語りを数多くやってきたことからくる経験と進化なのか、はたまたエド・シーランあたりからの影響なのか。
「今日はウッチー(内澤崇仁)に誘ってもらって。でも前にもこのイベントには誘われたことがあって。その時はMONGOL800のキヨサクさんとどうですか?って言われたんだけど、スケジュールが合わなくてできなくて。でもみんな今日の俺とウッチーのポスター見た?キヨサクさんと俺だと、組織のボスと鉄砲玉みたいになっちゃうよね(笑)
あー、なんか盛り上がる曲をやる流れになったっぽいから、しっとりした曲をやろうと思ったけど曲順変えよう!」
と9mmの「The Revolutionary」を確かに盛り上がる曲ではあるが、それでもバンドバージョンよりもしっとりとした形で弾き語りすると、
「6月にソロのアルバムを出すんですよ。ソロだから最初は自分で曲を作ろうと思ったんだけど、去年9mmでツアーやってたから無理で。そこでライブを休止していた、滝先生に作曲をお願いして、俺たちの師匠である、いしわたり淳治さんに作詞をお願いして。結局、ソロなのに全部他の人に作ってもらったんだけど(笑)、歌謡曲のアルバムになりました。その中からせっかくだから、初めて人前でやります!」
とやはり長々とMCをしてから披露されたのは「悪女」という新曲なのだが、これが本当にザ・歌謡曲。弾き語りだからその要素がさらに増しているのかもしれないが、9mmには元から「メタル×歌謡」という要素が強かったとはいえ、滝が作った曲がこんなに歌謡曲になるのかという驚き。そこには「歌謡曲は一人称の歌詞なんですよ」と歌詞から感じる歌謡性のメカニズムを卓郎が解説していた通り、メジャーデビュー時の9mmのプロデューサーであり、卓郎に歌詞の手ほどきをした(実際、卓郎はいしわたり淳治に添削されて、インディーズ時代の自分には言いたいことが何もなかった、と振り返っていた)いしわたり淳治の作詞のプロっぷりによるところが大きい。
スーパーカー時代から、いしわたり淳治を日本で最も優れた作詞家であると思っていた自分にとっては、いしわたり淳治が作詞をしてくれたのは本当に嬉しいことだが。
「この会場はステージが回るんですよ。どの曲で回そうかなぁと思ってたら、回ると言えば、中島みゆきの「時代」だろうと思ったら、すでにTAKUMAさん(10-FEET)と大木さん(ACIDMAN)が出た時に全く同じことをやったらしくて(笑)
だから中島みゆきの「時代」じゃない名曲を」
とステージを回転させることはここではせずにカバーしたのは、Mr.Childrenの桜井和寿らによるBank Bandや、最近ではAimerなど、様々な人がカバーしてきた名曲「糸」。この曲しかり、序盤の井上陽水のカバーしかり、卓郎には歌謡曲のDNAが確かに宿っている。だからこそソロをやる時に歌謡曲を選択したのは必然だったのだろう。
しかし卓郎はすっかりステージを回転させることを忘れていたらしく、最後になってステージを回転させることになり、普段の9mmのライブ時には滝が弾いているギターのリフを観客に口ずさませるという形で曲を再現した「Black Market Blues」でステージが回転しながら歌い、近年はかなり機会が増えている弾き語りでのライブに新たな要素と、1人で弾き語りをする意味をしっかりと持たせたライブを終えた。やはり喋りすぎて時間はかなり押したらしいが(笑)
1.黒い森の旅人
2.氷の世界 (井上陽水のカバー)
3.ケダモノダモノ
4.The Revolutionary
5.悪女 (ソロの新曲)
6.糸 (中島みゆきのカバー)
7.Black Market Blues
ケダモノダモノ
https://youtu.be/A_ccucbJmKM
・内澤崇仁 (androp)
後攻はandropの内澤。卓郎とは違ってたどたどしく挨拶すると、自身のバンドの曲である「Shout」「Joker」「Prism」といった、近年のバンドでのライブでもおなじみと言っていい曲たちを弾き語っていく。歌っている時以外は緊張している感じが非常に強く伝わってくるが、歌っている時は実に堂々とその凜として繊細な歌声を響かせている。
しかしながら、近年は精力的に弾き語りも行なっている卓郎と異なり、内澤にはこういう形で弾き語りをするイメージが全くない。実際、お金を取って1人で弾き語りをするのはこの日が初めてだったらしいのだが、だからこそandropの曲も全く違う感触を持って聞こえてくるというか、歌い始めた時はなんの曲なのかちゃんとわからない感じすらある。
「じゃあ、ステージを回転させますよ。初めてなんですよ、回転するステージで歌うの。だから回転ステージバージンを今日奪われたいと思います(笑)」
と言って歌い始めたのは、まさかの「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」。完全に
「地球は回る」
というフレーズ一発による選曲だと思われるが、「君をのせて」のフレーズを
「俺をのせて」
に変えて、自分で笑ってしまいながら歌う。こうしたお茶目な部分というのは普段のandropのライブではなかなか見れない一面である。
「みんなはどこから来たんですか?八戸!?八戸っていうと僕の出身地である青森県八戸市ですか!?すごい!
今日、ここの入り口がわからなくてウロウロしてたら、見に来てくれた人に声をかけてもらって。九州から来てくれたみたいで。みんな今日のために遠くから来てくれたりして本当にありがとう」
と観客への感謝を告げながら、いよいよ来週に発売が迫った久しぶりのニューアルバム「cocoon」の告知を、
「良かったら、じゃなくて、絶対聴いてください!」
と珍しく力強く行なったが、これはそれだけ今回のアルバムに自信を持っているからだろうし、その中から披露された「Hanabi」はその自信も納得というくらいの、これからバンドにとって大事な曲になっていきそうだし、夏の野外フェスの夜に聴いてみたい曲。
「みんなはどうなんですかね?(笑)
えーっと、まぁなんていうか、今3月じゃないですか?4月から新しい生活が始まる人もいるのかな、って。そういう新しい旅が始まるみんなに捧げます」
と言って
「スタートが僕らを見送るよ
次のゴールを目指して」
という歌詞がまさに新しい生活に足を踏み出して行く人たちの背中を強く押す「Traveler」から、
「さっきは反時計回りにステージが回転したんで、この曲で時計回りに」
と言ってしっとりとした空気で包み込んだ「Tokei」でステージが回転しながら歌い、やはりややたどたどしくステージから去っていった。
andropはメンバー全員が凄腕テクニックを持つバンドであり、ライブではそれをしっかりと見せてくれるが、弾き語りという極限まで削ぎ落とされた形で曲を聴くと、andropの核は内澤の歌とメロディであるということがよくわかる。それはまだ内澤以外のメンバーの名前や顔が一切公開されておらず、ライブもほとんど行われていなかった、このバンドのシーン登場時の原点である。
1.Shout
2.Joker
3.Prism
4.君をのせて
5.Hanabi
6.Traveler
7.Tokei
Hanabi
https://youtu.be/QRPSID2jNc8
・encore
アンコールでは2人が揃ってステージに現れ、卓郎が譜面台の位置をスタッフに協力してもらって移動させながら、アンコールではステージを全て回転させることにし、お互いの持ち曲で「回転」というテーマに合った曲をセレクト。卓郎が選んだandropの曲は
「まわるまわる」
というフレーズがサビにある「MirrorDance」で、卓郎と内澤が分け合いながら歌う。ちなみに通常のバンドバージョンではハンドクラップや打ち込みのビートがあるため、卓郎はアレンジを考える時にルーパーに手拍子とギターを叩くリズムを入れようとしたのだが、Aメロでしかそれが使われないために断念し、普通の弾き語りでのアレンジになったとのこと。
対して2人で歌う9mmの曲は「回転する」ということで観覧車の曲こと「Termination」。卓郎が普段は滝が弾いているギターを弾くという、ボーカリストとしてだけではなく、ギタリストとしての資質の高さを見せつけながら、サビでは2人が交代交代でメインボーカルとコーラスを変えていく。2人で歌っているということもあるし、弾き語りだとまた曲の違う面を見れるが、こうして聴くと早く9mmのライブを見たくなるし、久しぶりに9mmのライブでこの曲を聴きたくなる。
そして今回2人で「回る」にまつわる曲を出し合い、久保田利伸「LA・LA・LA LOVESONG」などの曲が挙がったが、この日が3月という紛れもなく春であり、また今年がhideの没後20年にあたる年ということで、最後に2人で歌ったのは、hideの名曲「HURRY GO ROUND」。この曲を聴いた、るろうに剣心の作者の和月伸宏があまりの名曲ぶりに最も感動的な、主人公たちが京都から帰還したシーンにこの曲のタイトルを当てたというエピソードもあるが、自分が中学生の時に初めてこの曲を聴いた時、良い曲だけど変な曲だな、と思った。その変な曲だと思った理由は、この日2人が歌う姿からもわかったのだが、リズムが明らかに普通ではない。というかフレーズごとにリズムが変わる。だから素直に良い曲ではなく、変な曲に聴こえたのだ。この2人(特に内澤)がhideの曲を歌うというのは意外だし違和感があるように感じるが、全くそんなことはなかった。それこそがこの曲の持つ普遍性であり、今なおhideがファンをはじめとしたたくさんの人の中で生きていることの証明である。
この日この曲を歌った2人は青森(内澤)と山形(卓郎)という東北出身者。卒業式の時に桜が咲いていることはなく、ゴールデンウィークくらいにならないと桜は見れないという。でも2人は今、3月になれば桜が見れる東京でこの曲を歌っている。もう会うことができない人にも、春になれば会えるような気がする。だから、「また 春に会いましょう」。
演奏を終えると、2人が円形のステージをぐるっと回りながら観客に手を振る。卓郎のそれは9mmのライブが終わった時と何も変わらなかったが、最後に2人が揃って一礼してから去っていくというのは、普段のライブでは見れない光景だった。
ただバンドの曲を1人で弾き語りするというのは時には退屈に感じる時もある。だが弾き語りをすることによって、バンドの演奏時には見えなかった新たな曲の持ち味が見えたりするし、こうしたコラボの敷居の低さは弾き語りならではと言える。やっぱり自分はバンドでのライブが1番好きだけど、この日は本当に見れてよかったライブだと思えたし、これまでの出演者たちを見ても、このイベントはこれからも注目していかなければならない、と思った。
1.MirrorDance
2.Termination
3.HURRY GO ROUND (hideのカバー)
HURRY GO ROUND
https://youtu.be/JkKSPhq-u-I
Next→ 3/18 ツタロック @幕張メッセ


