ヤバイTシャツ屋さん ”Galaxy of the Tank-top” TOUR 2018 @Zepp Tokyo 2/24
- 2018/02/25
- 01:40
前日に続き、ヤバイTシャツ屋さんのZepp Tokyoでの2daysの2日目。前日の「ブーン兄やん」ことKANA-BOONに続き、この日のゲストはROTTENGRAFFTY。前日はKANA-BOONの存在がヤバTのライブに明らかな化学反応を起こしていたが、
「明日は今日と全く同じMCします(笑)」
とこやまが明らかに嘘でしかないことを言っていたように、内容もどのようなものに変わるのだろうか。
・ROTTENGRAFFTY
ヤバTとはなかなか接点がないような気がするバンドだが、こやまは京都在住であり、このバンドとは同郷で、ロットン主催のフェス、ポルノ超特急にもヤバTは毎年出演しているので、KANA-BOONとはまた違った意味でヤバTの先輩と言えるバンドである。
場内が暗転してSEが鳴ると、メンバー4人が登場。5人ではなく4人というのは、現在バンドのブレーンでありギターのKAZUOMIが病気療養中だからである。しかしながらギターアンプとマイクが5人の時と全く変わらないようにセッティングされているというあたりに、たとえ今はステージに立てなくても、このバンドは5人のバンドであるという揺るぎない意志を感じさせる。
「俺らがヤバイロックバンドやー!Zepp Tokyoを京都に変えたる!」
とNAOKIが叫ぶと、「響く都」からスタートし、まさにここは京都MUSEなのかという空気に。KAZUOMI不在によってギターは同期のサウンドが流れているが、その穴を埋めるかのようにというかバンド全体でその不在感が物足りなく感じないように、侑威地(ベース)とHIROSHI(ドラム)のリズム隊がさらに力強さを増している感すらある。
タイトル通りにダンサブルなサウンドの「D.A.N.C.E.」と、ラウドロックの枠に収まりきらないような幅の広さをこの日も存分に発揮してくれ、初めてこのバンドのライブを見る人が多いという状態にもかかわらず、ガンガンダイバーが転がっていき、アウェー感は一切感じさせない。
「バラードやります。初めて見る人もバラードなら聴いてくれるだけでいいから大丈夫やろ」
とボーカルの片翼であるNOBUYAが宣言したが、このバンドはフェスやイベントなどの持ち時間が短いライブにおいてはそこまでやる曲が変わることはないし、それこそバラードをそういう機会に演奏することはまずないため、「何の曲をやるんだ?」と思っていると、放たれたのはリフトしてからのダイバーが続出した「THIS WORLD」というバラードのかけらもないキラーチューンであり、
「バラードなんか俺らの曲にはない!」
ととんでもない不意打ちをかましてくる。
NAOKI「こやまは俺の家から1番近いところに住んでるミュージシャン。自転車で角を二つ曲がったら着くくらいに近い(笑)」
NOBUYA「俺がインスタで写真を上げると、ありぼぼちゃんが必ずイイね!をしてくれて。42歳のおっさんにあんな若い女の子が毎回イイね!してくれたら勘違いしてしまうやん?でも侑威地にそれを言ったら、メンバー全員にそうしてくれてた(笑)」
と、精神的だけでなく物理的なヤバTとのバンドとしての距離の近さを説明すると、ドラゴンボールのタイアップとしてこのバンドの存在をお茶の間にまで押し広げた「「70cm四方の窓辺」」からやはりダイバー続出となった「STAY REAL」と全く熱量の落ちない、さすがライブをやりまくって生きてきたバンドであると思わせる凄まじいパフォーマンスを展開し、大合唱が起きた「金色グラフィティー」で完璧な締め、かと思いきや、
「君たちが最高すぎるから、最後にもう1曲!京都の仲間を呼んで一緒にやりたいと思います!」
と言ってステージに現れたのは、なんと10-FEETのTAKUMA。2日前にこの会場でライブを行っているとはいえ、このためだけに出てくるとは。そのTAKUMAはKAZUOMIのポジションにギターを持って立ち、この日はギタリストとして「切り札」をともに演奏したが、KAZUOMIのポジションに立ってロットンの曲を弾けるという存在はTAKUMAだけなのかもしれない。だからこそバンドはサポートギターを入れるのではなくて同期の音を流してライブをしているのだろうし、ある意味ではこのバンドを今の位置まで引き上げた最大の功労者はずっと一緒に京都で活動してきた10-FEETである。演奏後にメンバーと抱き合ってからともにステージを去るTAKUMAの姿を見て、そんなことを考えていた。
しかし、自分たちのワンマンや主催イベントではなくて、後輩のライブのゲストという立ち位置でそれをやってしまうバンドはなかなかいない。でも、10-FEETもそうだ。フェスやイベントなど、自分たちがメインではないライブでもその日その場所そのライブでしかない特別な瞬間を作り上げてしまう。ただ同郷というだけではなく、そうした意志がロットンと10-FEETには共通している。そんな先輩たちの姿をしばたはステージ袖から、もりもとは2階席からずっと見ていた。
1.響く都
2.D.A.N.C.E.
3.So…Start
4.銀色スターリー
5.THIS WORLD
6.「70cm四方の窓辺」
7.STAY REAL
8.金色グラフィティー
9.切り札 w/ TAKUMA (10-FEET)
「70cm四方の窓辺」
https://youtu.be/z1K0XmvH8lk
・ヤバイTシャツ屋さん
そしてそんな先輩たちの姿を見てさらに気合いが入ったであろうヤバTがツアーを締めくくるべく、ファイナルのステージへ。(来月に追加公演のワンマンもあるが)
前日と同様のSEでメンバーがげんきいっぱいに登場したので、ライブの内容も前日と同じものになるものだと思っていたし、実際アルバムのリリースツアーだとセトリをほとんど変えないというバンドが大多数である。それはある意味では各会場での公平さにも繋がるが、やはりツアーに何本もとはいかなくても、2days行って2日とも全く同じ内容だとちょっと物足りなく感じてしまうのがファン心理である。
で、そんな中でヤバTはやはり普通のバンドではなかった。前日はアンコールの最後に演奏した、バンド最大のキラーチューンと言っていい「あつまれ!パーティーピーポー」からスタートするという、前日も来ていた人からしたら想像だにしないようなオープニングでのっけから2月とは思えない凄まじい熱気に会場が包まれる。
そして結論から言うと、ヤバTは2日間で「同じ位置で同じ曲をやる」ということを一切しなかった。つまり、曲自体を入れ替えたところもあったが、曲順に関しては完全にシャッフル。ツアーの2daysでこんなにガラッと変えてくるバンドはそうそういないし、だからこそ前日見ている身であっても、次になんの曲が演奏されるのか全く想像できないという、新鮮さを保ったままで2日目のライブを見ることができる。
しかしこの手法はバンド側からしたらかなりキツいだろう。曲順も毎ライブごとに覚え直さないといけないし、この日で言うならば「Universal Serial Bus」からの「DANCE on TANSU」へのアウトロとイントロが繋がるようなライブアレンジなど、曲順が変わったことによって前日とは全く違う演奏が要求される。だが今のヤバTはそれを軽々とできるくらいの技術をすでに獲得している、というのがライブを見ているとすぐにわかるし、なんならそのライブ自体の出来も前日よりもさらに良いとすら思えるくらいに、1日ごと、ライブ一本ごとに進化している。
だがヤバTはなぜわざわざそうした、めんどくさいと思えるようなことをするのか。それはメンバー3人が学生時代からずっとROTTENGRAFFTYのライブを見に行っていた、というMCでのエピソードにあったように、そしてもりもとがそのロットンのライブを二階席で見ている時に、声を出したり手を挙げたりするポイントを完全にわかっていたように、彼らは今でもライブを見に行く側の気持ちを忘れていない、というかライブを見に行く側の気持ちのままでいるのだ。
だから自分がもし2日間とも来るような観客だったらどういう内容の2日間だったら嬉しいか?というのを考えた上でこうしてわざわざ曲順を完全にシャッフルしているんだろうし、その配慮は2日間とも来た自分のようなファンには実にありがたいところである。
MCではメンバーそれぞれが好きな食べ物を挙げながら新たなキャラを演出する自己紹介をしながら、
こやま「あと700曲やります!」
もりもと「いやいや!そんなにやったらZepp TokyoとZepp DiverCityが合体してまう!」
というもりもとの返しにこやまとしばたが執拗に反応してもりもとを追い詰めるという、自己紹介以上にバンドのメンバーのキャラクターがよくわかるやり取りを展開していく。
前半では前日は演奏されなかった「気をつけなはれや」も演奏されたのだが、インタビューでもりもとが
「こやまさんの恋愛の話とか全く聞いたことがなかったから、この曲を聴いた時はすごく驚いた」
という旨のことを話していたが、確かにヤバTからこうした、別れた恋人へ向けた曲という普遍的なテーマの曲が出てくるとは全く思っていなかったが、だからこそこの曲がフィクションではなくて、こやまの胸の内から出てきた曲だということがよくわかるし、よくあるJ-POP的な別れの曲よりもこの曲の方が自分にははるかに響く。
前日はCDに収録されてすらいないくらいのレア曲である「I wanna go home」を演奏していたが、この日のレア曲枠は前作アルバム収録の「ZIKKA」。確かに前作のツアー以外でライブで演奏することはほとんどないような曲だが、かつて世間を騒がせたニュースでよく聞いた、
「引っ越し 引っ越し さっさと引っ越し」
というフレーズをこれだけたくさんの人が合唱しているというのはなかなか異様な光景である。
するとこやまがROTTENGRAFFTYとの思い出を語り始める。
「フェスでロットンと楽屋が同じになったことがあって。その時にNOBUYAさんが、
「あの肩幅の曲、すごい良い曲だね~」
って話しかけてきてくれて。そのあとに俺らがロットン主催のポルノ超特急に呼んでもらった時にNOBUYAさんが
「あの肩幅の曲、今日やらないの?」
って言ってきて。いやいや、フェスで肩幅の曲やらないでしょ(笑)シングルのカップリングの曲やし(笑)まぁ急遽セトリ変えてやりましたけど(笑)めちゃ盛り上がりましたけど(笑)
そしたらNOBUYAさんが今度は
「あの肩幅の曲、俺も歌ってみたいんだよね」
って言ってきて(笑)
というわけで、NOBUYAさん!」
と、スーツを着込んだNOBUYAがステージに登場し、歌詞のカンペを見ながらであるが、さすがに好きな曲ということで複雑な転調にもしっかり対応して「肩 have a good day」を歌い上げる。亀田誠治プロデュースによってoasis的な壮大さを手に入れるくらいに進化したこの曲にさらに新たな命が宿った瞬間。いつの間にかもはやカップリング曲という位置では収まらないような曲になったが、間奏のもりもとの口笛タイムでこやまとしばたに合わせてもりもとをガン見するNOBUYAに戸惑いながら口笛を完璧に吹いてみせたもりもとには殊勲の拍手が上がった。
そんな感動を打ち消すかのようなしばた作の「ベストジーニスト賞」ではしばたが間奏で即興のフレーズで手拍子をするのだが、「ROTTENGRAFFTY」というフレーズを何度となく噛んでしまい、こやまに
「これがツアー22本目の集大成です(笑)」
といじられてしまう。確かにこのリズムに合わせるのは非常に難しいフレーズであるが、こやが
「バラードをやります」
と言って全くバラード要素のない「Tank-top of the world」をやったのはロットンがそう言って「THIS WORLD」をやったことに感化されたのだろうか。
「ベストジーニスト賞」での噛みっぷりを取り戻すべく「ROTTEN」でのあいうえお作文をしばたが完璧に決めて大きな拍手が巻き起こると、
「今日来てるみんなはヤバTの古参ファンやで。新参とか古参とかはどうでもいいけど、俺らアルバム2枚目のツアーやん?10-FEETの2枚目の「REALIFE」からライブ来てる人とかめちゃ10-FEETの古参ファンやん?(笑)
それをみんなが誇れるためには、俺らが20年30年バンドを続けて、ずっと最前線を走り続けないとアカン。
それで武道館とかアリーナでやらないの?って言われることもあるんやけど、今はそういうところでやることを目標にしてなくて。そういうところで1日やるんやったら、Zepp Tokyoで5daysやりたい。やっぱりライブハウスが好きやし、今日ロットンのライブを見て改めてそう思った」
とバンドのスタンスについて一切の悪ふざけなく語る。自分は好きなバンドを大きな会場で見るのが好きだし、ヤバTもいつかそうした会場でワンマンをするのを見てみたいが、10-FEETやロットンがデカい会場ではなくて常にライブハウスでライブをしている姿をヤバTのメンバーはずっと見てきて、その背中を追ってきた。やろうと思えば今すぐにでもできる状況に今ヤバTはいる。だが、その見た目やパブリックイメージからは想像できないくらいに、メンバーには理想のバンド像がしっかりと描けていて、そうしたバンドになるために美学を貫きながら活動している。
だからこそ、
「いつだって自分のペースで やりたいことだけやりたいって
わがままなことを言ったって ダメやってわかってるけど
やっぱりまだやめられない 好きなように好きなだけ歌うだけ」
とバンドのスタンスをストレートに歌詞にした「サークルバンドに光を」が一切のギャグなしに感動的に響くし、この曲と「気をつけなはれや」の2曲が「Galaxy of the Tank-top」の中で最も重要な曲なのだが、その2曲を聴けば、ヤバTがどれだけ良い曲を書いているバンドなのかというのがしっかりと伝わる。そこにはヘラヘラした顔や軽薄な考えは一切ない。ただただカッコいいロックバンドになるための道を突き進む3人の姿があるだけ。このような曲が書けるということは、ただの面白いバンドとして消費されるのではなく、ひたすらにメロディの良さがありながらもこのバンドでしか歌えないことを歌うバンドとして長く生き残っていくバンドになるということ。
この日の本編の締めは「とりあえず噛む」からの「ヤバみ」という流れだったのだが、前日同様に、いや前日以上にテンポが速くなった「ヤバみ」はまるでバンドの勢いをそのまま曲に転化したかのようであった。
アンコールではまずロットン兄やんを迎えて写真撮影すると、バンド結成時からの目標が紅白歌合戦出場であり、そこに到達するために作ったというNHKを讃えるための新曲(5月のシングルには収録されない新曲)「案外悪ないNHK」を完全初披露。
「意外とみんなの近くにずっといた」
など、普段はそこまで存在を意識しないからこその歌詞もふんだんに交えたメロコアナンバーなのだが、曲中にはなんとNHKのマスコットキャラクターである、どーもくんがフライングVのギターを装着してステージに乱入。演奏が終わると、どーもくんが
「2018年、ヤバイTシャツ屋さんが公共放送の公式キャラクターに決定」
というとんでもない発表をする。ちなみにバンドがNHKの公式キャラクターになるのは史上初ということだが、このバンドを公式キャラクターにするという選択がこやまの言った通りに「NHKが1番尖っている」し、果たしてこれからどんなコラボが果たされていくのか。これで本当に年末に紅白歌合戦にヤバTが出たら痛快この上ないのだけれど。
しかしながらそのNHKとのコラボの予兆はこんなところにもあったのである。NHK「おかあさんといっしょ」のテーマソングである「スプラッピ・スプラッパ」のカバーである。サークルやダイブが発生したりと、到底教育にはよろしくないような光景が広がっているが。
そしてラストは
「ヤバTが「あつまれ!パーティーピーポー」だけのバンドじゃないっていうことを証明したくて作った曲です!」
と狙い通りにバンド最大のヒット曲となった「ハッピーウェディング前ソング」でこの日も
「キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!」
の凄まじい大合唱を巻き起こし、ヤバTがもはや「あつまれ!パーティーピーポー」頼りのバンドではないことを自らの力で証明し、前日はやらなかったメンバー3人が手を繋いで一礼してからステージを去るという手応えの大きさを感じさせた。
自分はこやまたくやという男を、このバンドでしか歌えないような曲を最上級のグッドメロディで響かせることができる天才ソングライターだと評価してきたのだが、この二日間のライブを見ると、もはやこやまの天才っぷりはもちろん、バンドそのものがとんでもない速さでこやまの天才っぷりに追いつこうとしていることがよくわかる。ただの面白いバンドじゃなく、面白くてカッコいいロックバンドへ。なかなか聴かず嫌いをしている人には伝わりにくいと思うが、このツアーに来ていた人には間違いなくその部分は伝わっている。ヤバTはまさに「ヤバイロックバンド」になったのだ。
余談だが、自分は高校生くらいの頃、「最近の若いバンドはもうわけわかんない」と言う大人が大っ嫌いだった。それは自分が、そうした大人たちがわけわからないと言うバンドに青春を捧げていたからである。で、今最もそう言われそうな存在のバンドがヤバTだと思われる。しかし自分はもうあの頃自分が嫌いだった大人たちくらいの年齢になりつつあるが、こうしてヤバTの音楽を聴いて、ライブに行って、本当に良いバンドだと思えている。ヤバTのようなバンドがこうして出てきてくれているからこそ、自分はかつて嫌いだったような大人にならなくて済んでいるのかもしれない。
そういう意味でも、
「いつまで置いていかれちゃってんの?」
って言われることのないような音楽ファンであり続けたいのである。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Universal Serial Bus
3.DANCE on TANSU
4.Tank-top in your heart
5.L.O.V.E タオル
6.気をつけなはれや
7.ネコ飼いたい
8.ZIKKA
9.肩 have a good day feat.NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
10.ベストジーニスト賞
11.ウェイウェイ大学生
12.Tank-top of the world
13.無線LANばり便利
14.喜志駅周辺なんもない
15.サークルバンドに光を
16.とりあえず噛む
17.ヤバみ
encore
18.案外悪ないNHK (新曲)
19.スプラッピ・スプラッパ
20.ハッピーウェディング前ソング
ハッピーウェディング前ソング
https://youtu.be/lVIHyj9qVy0
Next→ 2/28 銀杏BOYZ × 大森靖子 @Zepp Tokyo
「明日は今日と全く同じMCします(笑)」
とこやまが明らかに嘘でしかないことを言っていたように、内容もどのようなものに変わるのだろうか。
・ROTTENGRAFFTY
ヤバTとはなかなか接点がないような気がするバンドだが、こやまは京都在住であり、このバンドとは同郷で、ロットン主催のフェス、ポルノ超特急にもヤバTは毎年出演しているので、KANA-BOONとはまた違った意味でヤバTの先輩と言えるバンドである。
場内が暗転してSEが鳴ると、メンバー4人が登場。5人ではなく4人というのは、現在バンドのブレーンでありギターのKAZUOMIが病気療養中だからである。しかしながらギターアンプとマイクが5人の時と全く変わらないようにセッティングされているというあたりに、たとえ今はステージに立てなくても、このバンドは5人のバンドであるという揺るぎない意志を感じさせる。
「俺らがヤバイロックバンドやー!Zepp Tokyoを京都に変えたる!」
とNAOKIが叫ぶと、「響く都」からスタートし、まさにここは京都MUSEなのかという空気に。KAZUOMI不在によってギターは同期のサウンドが流れているが、その穴を埋めるかのようにというかバンド全体でその不在感が物足りなく感じないように、侑威地(ベース)とHIROSHI(ドラム)のリズム隊がさらに力強さを増している感すらある。
タイトル通りにダンサブルなサウンドの「D.A.N.C.E.」と、ラウドロックの枠に収まりきらないような幅の広さをこの日も存分に発揮してくれ、初めてこのバンドのライブを見る人が多いという状態にもかかわらず、ガンガンダイバーが転がっていき、アウェー感は一切感じさせない。
「バラードやります。初めて見る人もバラードなら聴いてくれるだけでいいから大丈夫やろ」
とボーカルの片翼であるNOBUYAが宣言したが、このバンドはフェスやイベントなどの持ち時間が短いライブにおいてはそこまでやる曲が変わることはないし、それこそバラードをそういう機会に演奏することはまずないため、「何の曲をやるんだ?」と思っていると、放たれたのはリフトしてからのダイバーが続出した「THIS WORLD」というバラードのかけらもないキラーチューンであり、
「バラードなんか俺らの曲にはない!」
ととんでもない不意打ちをかましてくる。
NAOKI「こやまは俺の家から1番近いところに住んでるミュージシャン。自転車で角を二つ曲がったら着くくらいに近い(笑)」
NOBUYA「俺がインスタで写真を上げると、ありぼぼちゃんが必ずイイね!をしてくれて。42歳のおっさんにあんな若い女の子が毎回イイね!してくれたら勘違いしてしまうやん?でも侑威地にそれを言ったら、メンバー全員にそうしてくれてた(笑)」
と、精神的だけでなく物理的なヤバTとのバンドとしての距離の近さを説明すると、ドラゴンボールのタイアップとしてこのバンドの存在をお茶の間にまで押し広げた「「70cm四方の窓辺」」からやはりダイバー続出となった「STAY REAL」と全く熱量の落ちない、さすがライブをやりまくって生きてきたバンドであると思わせる凄まじいパフォーマンスを展開し、大合唱が起きた「金色グラフィティー」で完璧な締め、かと思いきや、
「君たちが最高すぎるから、最後にもう1曲!京都の仲間を呼んで一緒にやりたいと思います!」
と言ってステージに現れたのは、なんと10-FEETのTAKUMA。2日前にこの会場でライブを行っているとはいえ、このためだけに出てくるとは。そのTAKUMAはKAZUOMIのポジションにギターを持って立ち、この日はギタリストとして「切り札」をともに演奏したが、KAZUOMIのポジションに立ってロットンの曲を弾けるという存在はTAKUMAだけなのかもしれない。だからこそバンドはサポートギターを入れるのではなくて同期の音を流してライブをしているのだろうし、ある意味ではこのバンドを今の位置まで引き上げた最大の功労者はずっと一緒に京都で活動してきた10-FEETである。演奏後にメンバーと抱き合ってからともにステージを去るTAKUMAの姿を見て、そんなことを考えていた。
しかし、自分たちのワンマンや主催イベントではなくて、後輩のライブのゲストという立ち位置でそれをやってしまうバンドはなかなかいない。でも、10-FEETもそうだ。フェスやイベントなど、自分たちがメインではないライブでもその日その場所そのライブでしかない特別な瞬間を作り上げてしまう。ただ同郷というだけではなく、そうした意志がロットンと10-FEETには共通している。そんな先輩たちの姿をしばたはステージ袖から、もりもとは2階席からずっと見ていた。
1.響く都
2.D.A.N.C.E.
3.So…Start
4.銀色スターリー
5.THIS WORLD
6.「70cm四方の窓辺」
7.STAY REAL
8.金色グラフィティー
9.切り札 w/ TAKUMA (10-FEET)
「70cm四方の窓辺」
https://youtu.be/z1K0XmvH8lk
・ヤバイTシャツ屋さん
そしてそんな先輩たちの姿を見てさらに気合いが入ったであろうヤバTがツアーを締めくくるべく、ファイナルのステージへ。(来月に追加公演のワンマンもあるが)
前日と同様のSEでメンバーがげんきいっぱいに登場したので、ライブの内容も前日と同じものになるものだと思っていたし、実際アルバムのリリースツアーだとセトリをほとんど変えないというバンドが大多数である。それはある意味では各会場での公平さにも繋がるが、やはりツアーに何本もとはいかなくても、2days行って2日とも全く同じ内容だとちょっと物足りなく感じてしまうのがファン心理である。
で、そんな中でヤバTはやはり普通のバンドではなかった。前日はアンコールの最後に演奏した、バンド最大のキラーチューンと言っていい「あつまれ!パーティーピーポー」からスタートするという、前日も来ていた人からしたら想像だにしないようなオープニングでのっけから2月とは思えない凄まじい熱気に会場が包まれる。
そして結論から言うと、ヤバTは2日間で「同じ位置で同じ曲をやる」ということを一切しなかった。つまり、曲自体を入れ替えたところもあったが、曲順に関しては完全にシャッフル。ツアーの2daysでこんなにガラッと変えてくるバンドはそうそういないし、だからこそ前日見ている身であっても、次になんの曲が演奏されるのか全く想像できないという、新鮮さを保ったままで2日目のライブを見ることができる。
しかしこの手法はバンド側からしたらかなりキツいだろう。曲順も毎ライブごとに覚え直さないといけないし、この日で言うならば「Universal Serial Bus」からの「DANCE on TANSU」へのアウトロとイントロが繋がるようなライブアレンジなど、曲順が変わったことによって前日とは全く違う演奏が要求される。だが今のヤバTはそれを軽々とできるくらいの技術をすでに獲得している、というのがライブを見ているとすぐにわかるし、なんならそのライブ自体の出来も前日よりもさらに良いとすら思えるくらいに、1日ごと、ライブ一本ごとに進化している。
だがヤバTはなぜわざわざそうした、めんどくさいと思えるようなことをするのか。それはメンバー3人が学生時代からずっとROTTENGRAFFTYのライブを見に行っていた、というMCでのエピソードにあったように、そしてもりもとがそのロットンのライブを二階席で見ている時に、声を出したり手を挙げたりするポイントを完全にわかっていたように、彼らは今でもライブを見に行く側の気持ちを忘れていない、というかライブを見に行く側の気持ちのままでいるのだ。
だから自分がもし2日間とも来るような観客だったらどういう内容の2日間だったら嬉しいか?というのを考えた上でこうしてわざわざ曲順を完全にシャッフルしているんだろうし、その配慮は2日間とも来た自分のようなファンには実にありがたいところである。
MCではメンバーそれぞれが好きな食べ物を挙げながら新たなキャラを演出する自己紹介をしながら、
こやま「あと700曲やります!」
もりもと「いやいや!そんなにやったらZepp TokyoとZepp DiverCityが合体してまう!」
というもりもとの返しにこやまとしばたが執拗に反応してもりもとを追い詰めるという、自己紹介以上にバンドのメンバーのキャラクターがよくわかるやり取りを展開していく。
前半では前日は演奏されなかった「気をつけなはれや」も演奏されたのだが、インタビューでもりもとが
「こやまさんの恋愛の話とか全く聞いたことがなかったから、この曲を聴いた時はすごく驚いた」
という旨のことを話していたが、確かにヤバTからこうした、別れた恋人へ向けた曲という普遍的なテーマの曲が出てくるとは全く思っていなかったが、だからこそこの曲がフィクションではなくて、こやまの胸の内から出てきた曲だということがよくわかるし、よくあるJ-POP的な別れの曲よりもこの曲の方が自分にははるかに響く。
前日はCDに収録されてすらいないくらいのレア曲である「I wanna go home」を演奏していたが、この日のレア曲枠は前作アルバム収録の「ZIKKA」。確かに前作のツアー以外でライブで演奏することはほとんどないような曲だが、かつて世間を騒がせたニュースでよく聞いた、
「引っ越し 引っ越し さっさと引っ越し」
というフレーズをこれだけたくさんの人が合唱しているというのはなかなか異様な光景である。
するとこやまがROTTENGRAFFTYとの思い出を語り始める。
「フェスでロットンと楽屋が同じになったことがあって。その時にNOBUYAさんが、
「あの肩幅の曲、すごい良い曲だね~」
って話しかけてきてくれて。そのあとに俺らがロットン主催のポルノ超特急に呼んでもらった時にNOBUYAさんが
「あの肩幅の曲、今日やらないの?」
って言ってきて。いやいや、フェスで肩幅の曲やらないでしょ(笑)シングルのカップリングの曲やし(笑)まぁ急遽セトリ変えてやりましたけど(笑)めちゃ盛り上がりましたけど(笑)
そしたらNOBUYAさんが今度は
「あの肩幅の曲、俺も歌ってみたいんだよね」
って言ってきて(笑)
というわけで、NOBUYAさん!」
と、スーツを着込んだNOBUYAがステージに登場し、歌詞のカンペを見ながらであるが、さすがに好きな曲ということで複雑な転調にもしっかり対応して「肩 have a good day」を歌い上げる。亀田誠治プロデュースによってoasis的な壮大さを手に入れるくらいに進化したこの曲にさらに新たな命が宿った瞬間。いつの間にかもはやカップリング曲という位置では収まらないような曲になったが、間奏のもりもとの口笛タイムでこやまとしばたに合わせてもりもとをガン見するNOBUYAに戸惑いながら口笛を完璧に吹いてみせたもりもとには殊勲の拍手が上がった。
そんな感動を打ち消すかのようなしばた作の「ベストジーニスト賞」ではしばたが間奏で即興のフレーズで手拍子をするのだが、「ROTTENGRAFFTY」というフレーズを何度となく噛んでしまい、こやまに
「これがツアー22本目の集大成です(笑)」
といじられてしまう。確かにこのリズムに合わせるのは非常に難しいフレーズであるが、こやが
「バラードをやります」
と言って全くバラード要素のない「Tank-top of the world」をやったのはロットンがそう言って「THIS WORLD」をやったことに感化されたのだろうか。
「ベストジーニスト賞」での噛みっぷりを取り戻すべく「ROTTEN」でのあいうえお作文をしばたが完璧に決めて大きな拍手が巻き起こると、
「今日来てるみんなはヤバTの古参ファンやで。新参とか古参とかはどうでもいいけど、俺らアルバム2枚目のツアーやん?10-FEETの2枚目の「REALIFE」からライブ来てる人とかめちゃ10-FEETの古参ファンやん?(笑)
それをみんなが誇れるためには、俺らが20年30年バンドを続けて、ずっと最前線を走り続けないとアカン。
それで武道館とかアリーナでやらないの?って言われることもあるんやけど、今はそういうところでやることを目標にしてなくて。そういうところで1日やるんやったら、Zepp Tokyoで5daysやりたい。やっぱりライブハウスが好きやし、今日ロットンのライブを見て改めてそう思った」
とバンドのスタンスについて一切の悪ふざけなく語る。自分は好きなバンドを大きな会場で見るのが好きだし、ヤバTもいつかそうした会場でワンマンをするのを見てみたいが、10-FEETやロットンがデカい会場ではなくて常にライブハウスでライブをしている姿をヤバTのメンバーはずっと見てきて、その背中を追ってきた。やろうと思えば今すぐにでもできる状況に今ヤバTはいる。だが、その見た目やパブリックイメージからは想像できないくらいに、メンバーには理想のバンド像がしっかりと描けていて、そうしたバンドになるために美学を貫きながら活動している。
だからこそ、
「いつだって自分のペースで やりたいことだけやりたいって
わがままなことを言ったって ダメやってわかってるけど
やっぱりまだやめられない 好きなように好きなだけ歌うだけ」
とバンドのスタンスをストレートに歌詞にした「サークルバンドに光を」が一切のギャグなしに感動的に響くし、この曲と「気をつけなはれや」の2曲が「Galaxy of the Tank-top」の中で最も重要な曲なのだが、その2曲を聴けば、ヤバTがどれだけ良い曲を書いているバンドなのかというのがしっかりと伝わる。そこにはヘラヘラした顔や軽薄な考えは一切ない。ただただカッコいいロックバンドになるための道を突き進む3人の姿があるだけ。このような曲が書けるということは、ただの面白いバンドとして消費されるのではなく、ひたすらにメロディの良さがありながらもこのバンドでしか歌えないことを歌うバンドとして長く生き残っていくバンドになるということ。
この日の本編の締めは「とりあえず噛む」からの「ヤバみ」という流れだったのだが、前日同様に、いや前日以上にテンポが速くなった「ヤバみ」はまるでバンドの勢いをそのまま曲に転化したかのようであった。
アンコールではまずロットン兄やんを迎えて写真撮影すると、バンド結成時からの目標が紅白歌合戦出場であり、そこに到達するために作ったというNHKを讃えるための新曲(5月のシングルには収録されない新曲)「案外悪ないNHK」を完全初披露。
「意外とみんなの近くにずっといた」
など、普段はそこまで存在を意識しないからこその歌詞もふんだんに交えたメロコアナンバーなのだが、曲中にはなんとNHKのマスコットキャラクターである、どーもくんがフライングVのギターを装着してステージに乱入。演奏が終わると、どーもくんが
「2018年、ヤバイTシャツ屋さんが公共放送の公式キャラクターに決定」
というとんでもない発表をする。ちなみにバンドがNHKの公式キャラクターになるのは史上初ということだが、このバンドを公式キャラクターにするという選択がこやまの言った通りに「NHKが1番尖っている」し、果たしてこれからどんなコラボが果たされていくのか。これで本当に年末に紅白歌合戦にヤバTが出たら痛快この上ないのだけれど。
しかしながらそのNHKとのコラボの予兆はこんなところにもあったのである。NHK「おかあさんといっしょ」のテーマソングである「スプラッピ・スプラッパ」のカバーである。サークルやダイブが発生したりと、到底教育にはよろしくないような光景が広がっているが。
そしてラストは
「ヤバTが「あつまれ!パーティーピーポー」だけのバンドじゃないっていうことを証明したくて作った曲です!」
と狙い通りにバンド最大のヒット曲となった「ハッピーウェディング前ソング」でこの日も
「キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!」
の凄まじい大合唱を巻き起こし、ヤバTがもはや「あつまれ!パーティーピーポー」頼りのバンドではないことを自らの力で証明し、前日はやらなかったメンバー3人が手を繋いで一礼してからステージを去るという手応えの大きさを感じさせた。
自分はこやまたくやという男を、このバンドでしか歌えないような曲を最上級のグッドメロディで響かせることができる天才ソングライターだと評価してきたのだが、この二日間のライブを見ると、もはやこやまの天才っぷりはもちろん、バンドそのものがとんでもない速さでこやまの天才っぷりに追いつこうとしていることがよくわかる。ただの面白いバンドじゃなく、面白くてカッコいいロックバンドへ。なかなか聴かず嫌いをしている人には伝わりにくいと思うが、このツアーに来ていた人には間違いなくその部分は伝わっている。ヤバTはまさに「ヤバイロックバンド」になったのだ。
余談だが、自分は高校生くらいの頃、「最近の若いバンドはもうわけわかんない」と言う大人が大っ嫌いだった。それは自分が、そうした大人たちがわけわからないと言うバンドに青春を捧げていたからである。で、今最もそう言われそうな存在のバンドがヤバTだと思われる。しかし自分はもうあの頃自分が嫌いだった大人たちくらいの年齢になりつつあるが、こうしてヤバTの音楽を聴いて、ライブに行って、本当に良いバンドだと思えている。ヤバTのようなバンドがこうして出てきてくれているからこそ、自分はかつて嫌いだったような大人にならなくて済んでいるのかもしれない。
そういう意味でも、
「いつまで置いていかれちゃってんの?」
って言われることのないような音楽ファンであり続けたいのである。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Universal Serial Bus
3.DANCE on TANSU
4.Tank-top in your heart
5.L.O.V.E タオル
6.気をつけなはれや
7.ネコ飼いたい
8.ZIKKA
9.肩 have a good day feat.NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
10.ベストジーニスト賞
11.ウェイウェイ大学生
12.Tank-top of the world
13.無線LANばり便利
14.喜志駅周辺なんもない
15.サークルバンドに光を
16.とりあえず噛む
17.ヤバみ
encore
18.案外悪ないNHK (新曲)
19.スプラッピ・スプラッパ
20.ハッピーウェディング前ソング
ハッピーウェディング前ソング
https://youtu.be/lVIHyj9qVy0
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