Base Ball Bear Tour 「光源」追加公演 @Zepp Tokyo 2/9
- 2018/02/10
- 00:22
3人になったことを活かすかのようにピアノやブラスセクションなど、4人時代は禁じ手にしていたともいえるような様々な楽器のサウンドを取り入れた楽曲によるアルバム「光源」を昨年リリースし、31本にも及ぶ長いツアーの追加公演となるのがこの日のZepp Tokyoでのワンマン。
昨年の日比谷野音ワンマンではアルバムの曲を再現するために様々なゲストミュージシャンを迎えた新たなバンドの姿を見せるという、恒例の野音ワンマンだが今までと全く違う形の内容になったが、果たしてツアーファイナルではどんな姿を見せてくれるのだろうか。
19時を少し過ぎると、おなじみのXTCのSEが流れて、3人+1人のメンバーがステージに。堀之内のドラムセットの周りに集まって全員が気合いを入れるというルーティンをこなすと、まだSEが鳴り止まないうちから堀之内がリズムを刻み始め、SEが聴こえなくなると同時にバンドの演奏にイン。オープニングナンバーは「光源」の中でも最もアッパーな「SHINE」なのだが、バッサリと髪を切ってどこぞの女子アナみたいなshort hairになり、早くもステージ最前に置かれたお立ち台に乗って、全身や顔すらも使って(もちろん比喩です)ギターを弾きまくるサポートの弓木英梨乃がこれまで以上にバケモノじみた凄まじいプレイを見せる。もうベボベのサポートギターとしてすっかり存在が定着してきているだけに、バンドに合わせて弓木自身も進化を果たしている。
また、
「青春は1,2,3 ジャンプアップ」
というサビのフレーズは、千葉の高校生だった頃にコピーしていた、SUPERCARの「スリーアウトチェンジ」と「JUMP UP」がこのバンドの青春であるということを歌っているとみて間違いないだろう。現に前回のツアーでは開演前のBGMに原点回帰を思わせるようにその頃のSUPERCARの曲だけが流れ続けていた。
「聖槍で檸檬を貫くように」
というこれまでに何度となく歌詞に登場してきた「檸檬」を使ったフレーズも含め、この曲はどこをどう切っても小出にしか書けない、このバンドにしか鳴らせない曲である。
続けざまに関根史織がお立ち台に登ってイントロのベースを弾いた「Stairway Generation」とアッパーな曲を続けるスタートダッシュを決めると、
「ツアーも31本ですよ。ここにきてこれだけライブやりまくる、マッチョなバンドになるとは思ってもみなかった」
と小出が挨拶したが、まさにその通りで、もうメジャーデビューから10年以上経ち、アラサーからアラフォーに差しかかろうとするバンドとは思えないくらいにさらに個々の演奏とバンドのグルーヴが強化されてきているのがこの冒頭2曲を聴いただけでわかる。ここにきてこれほどまでベボベがライブバンドとしての強さを手に入れることになるなんて、誰が想像しただろうか。
それは「光源」収録のブラックミュージックのグルーヴを巧みに取り入れた曲たちにおいても顕著だが、CDでは4人編成以上のサウンドになっていたこの曲たち、日比谷野音でのゲストミュージシャンを迎えた形とは異なり、全てをステージにいるメンバーだけで演奏するという、かつての4人組バンドだったベボベが貫いていたスタイルのアレンジになっている。そこでもウワモノのサウンドをギターで賄う弓木の貢献度は果てしなく高い。
「(LIKE A) TRANSFER GIRL」のアウトロからイントロが繋がるように演奏されたことにより、
「春風の中 君は花のようだ」
という少女の形容が「(LIKE A) TRANSFER GIRL」に向けられているように聴こえてくることによって新たな一面を見せてくれる「抱きしめたい」は曲順とアレンジの妙であろう。
ツアーの真っ只中ではあったが、多数のゲストを迎えた野音での「日比谷ノンフィクション」とはやはりセトリは変化を見せており、その時は演奏されなかった「「それって、for 誰?」part.1」が加わると、小出から弓木がサポートとしてバンドに参加するのはいったんこの日が最後であるというショッキングな事実が告げられる。弓木はそのためにバッサリと髪を切ったということだが、小出はそのことに全く気づいていなかった。
その弓木がメインボーカルを務めるという、サポートという役割を飛び越えた存在感を見せるのは、CDでは花澤香菜がボーカルとして参加していた、小出のポップさが振切れまくった「恋する感覚」。関根との女性ツインボーカルに加え、堀之内すらも女声でコーラスするという、今のバンドの形だからこそできるこの曲も、弓木が参加しないことによって当分はこうしてライブで聴ける機会はなくなるのかもしれない。
小出の弾き語りのイントロが追加されるというライブならではのおなじみのアレンジが加わった「ドラマチック」で会場の温度はさらに上がっていくが、かつてまだ若手バンドだった頃のベボベは毎年夏の曲を世に送り出し、その曲たちを夏の野外フェスで鳴らすことで、「我々世代最強の夏バンド」として君臨していた。今はそこまで季節感を強く押し出すような曲はなくなってきたが、こうしてライブで夏の名曲を聴くと、真冬でも夏になったかのような気分になれる。それは会場の熱気も相まってそう感じるのだろうけれど。
するとここで小出1人を残して他のメンバーがいったんステージから掃け、野音でも披露していた弾き語りコーナーに。
「ツアー始まった時は梅雨だったのに、終わる時には冬になるくらいに季節をまたいでしまった(笑)
でもこの前の福岡の帰りが大雪で。一本遅い飛行機だったら帰ってこれなかった…(客席のリアクションの薄さを見て)え?死んだ?(笑)
これいつも東京でしか言ってないよ(笑)」
と笑わせながら、
「野音でやった時は緊張しまくってたけど、今はまるで家でiPhoneのボイスメモに吹き込むくらいに緊張してない。俺もこの境地まで達したかと(笑)」
と、全く弾き語りをやるイメージがなかった野音の時から回数(=ツアーの本数)を重ねたことにより、実に弾き語りする姿もどっしりと落ち着いて見える。そして前半からもそうだったが、小出のボーカルは近年本当に安定している。もともと歌唱力自体はこの年代の中では最初から非常に高かったが、かつてはなぜか歌詞が飛びまくる日もあっただけに、本当に安心して見ていられるようになった。
弾き語りの曲は「White Room」は野音の時と同じだが、「恋愛白書」が「Transfer Girl」に変更されている。これによって2曲とも「3.5th」と位置付けられ、初めてゲストを迎えてファンクやヒップホップの要素を取り入れた、実験性が強く感じさせられた時期の曲になったわけだが、こうして小出の歌とギターのみという究極にシンプルな形で演奏されることによって、その実験性の奥にはしっかりとベボベならでは、小出ならではのメロディの良さがある曲たちであったことに気づかされる。そうした曲の持つ一面を改めて実感できるというのは弾き語りというセクションを設けたからこそ。
弾き語りが終わるとすぐさま他のメンバーが合流し、小出はギターを置いてハンドマイク状態で歌い始めたのは「光源」からの「寛解」。ステージ背面には曲のイメージを増幅させるような、照明による美しい背景が現れる。途中からは小出もギターを弾くという形は弾き語り以上に新鮮に思えるが、「光源」でこれまでのタブーから解放されたことによって、こうした姿はこれから当たり前のように見ることになるのかもしれない。
「ツアーを廻って改めて思ったけど、バンドというのは旅であると。フルカワユタカさんが我々のバンドでギターを弾いてくれて、「新たな一歩を踏み出せた」と言ってくれて。最初にサポートしてくれた石毛君もthe telephonesを再開させて。うちでギター弾いたからバンドをまたやりたいって思ったんじゃないの~?とも思ってるんだけど(笑)
かと思えば、チャットモンチーが今年で解散すると。………本当に、出会いがあって別れがある。でも、きっと再会する時もくる」
と語られた小出の言葉は、自らも別れを経験したにもかかわらず、全く止まることをせずに続けてきたからこそ説得力があった。最大の盟友バンドと言っていいチャットモンチーのことを話した時はどこか寂しそうな感じもしたが、小出が言ったように、いつか再会できる日が来るかもしれないし、野音の時のように福岡晃子がまたベボベのライブで一緒にステージに立つ日が来るかもしれない。ベボベが続けることを選んだからこそ、そうして希望が持てる。
そして1年3ヶ月という期間をともに過ごした弓木のことにも触れ、
「とりあえずはいったんは今日で、っていうことなんですけど。スケジュールとかでね。でもいつかまた一緒にできる日が来るかもしれない。いや、また一緒にやりましょう。君もBase Ball Bearだ!」
と弓木との再会も約束。
そのバンドが「このメンバーじゃなくなったら終わりだな」って思うようなバンドであればあるほど、メンバーが変わったり、形が変わった時に見切りをつけていく人も多い。ベボベも4人の時は間違いなくそうしたバンドであった。しかしながらベボベを聴かなくなったり、ライブを観に行かなくなったりということは自分は全くない。(もちろん少なからず離れた人もいるだろうけど)
それは弓木が、湯浅の残像をかき消してくれるくらいに素晴らしいギタリストであり、人間性やキャラという点でもこのバンドに違和感なく混ざれるような人物だったからである。そしてフルカワユタカや石毛輝という自身がメインの活動をしているギタリストと違い、弓木はこうして長いツアーに帯同できる立ち位置のギタリストだった。つまり、弓木の存在はすべての面でベボベのサポートギタリストとしてドンピシャだった。その弓木の存在こそがベボベを立ち止まることなく前へ進ませる力になってきた。そういう意味でも、間違いなくベボベにとって最大の救世主である。だから弓木には本当に感謝しかない。こうして今でも当たり前のようにベボベのライブが見れるのは彼女が参加してくれたからなのだから。
「バンドも今年で17年目。17歳、まだまだ青春の真っ只中。そんな我々が次に演奏するのは、この曲」
と小出が言ったので、自分は間違いなく「17才」を演奏すると思っていたのだが、実際に演奏されたのは「すべては君のせいで」だっただけに、「なんで17歳って言ったんだ!?」という思いでいっぱいになった。
堀之内がイントロのリズムを刻みながら、
「我々はこれからも進化し続けていくんで、みなさんこれからも付いてきてください!」
と尽きない活動意欲を宣言すると、「光源」の中で最も従来の、「ギターロックなBase Ball Bear」に近いながらも、やはりグルーヴには黒さを孕んでいる「逆バタフライ・エフェクト」の
「決められたパラレルワールドへ」
というフレーズが、決して望んだ形ではないが、それでも最高だと思える今のベボベの状況そのもののように響き、小出のボーカルに合わせて観客がカウントする「LOVE MATHEMATICS」でさらにヒートアップ。そのまま「CRAZY FOR YOUの季節」では「元の何倍なんだ?」というくらいにテンポが速くなっていたのだが、弓木という超絶テクニックを誇るギタリストを擁することにより、バンドの演奏技術はリズム隊のレベルアップも含めて格段に向上している。そうなると得てして技術を活かして丁寧に、よくない言い方をすれば無難に演奏するようになりそうなものだが、そのあまりにテンポアップした演奏からは、技術はもちろんあるのだが、それ以上に衝動が炸裂していた。このバンドでライブをやることの楽しさ、このメンバーで演奏することができる幸せを、4人全員が噛み締めていて、それを見ることができる幸せを我々観客がしっかりと感じ取ることができた。
ベボベのライブを身始めてからもう12年が経った。ともに10代から20代、そして30代と年齢を重ねていく中で、この「CRAZY FOR YOUの季節」だけは最初にライブを見た時からずっと演奏され続けてきている。しかしそれがずっと同じなのではなくて、しっかりと進化している姿を見せてくれる。もう若くはない年齢だし、そうなると年齢が諦めの理由として最も都合のいいものになってくる。でもまだまだいける。まだまだできる。この日の「CRAZY FOR YOUの季節」はそう思わせてくれたし、ベボベ自体がまだまだこれからもっと凄いバンドになると思わせてくれた。間違いなく今まで聴いた中で最も素晴らしい「CRAZY FOR YOUの季節」だった。だからこそ、見ていて感動のあまりに涙が流れてきてしまったのだ。
そしてラストは「光源」の最後に収録されている「Darling」でZeppの天井からぶら下がったミラーボールが鮮やかに回転。その光景は、野音で聴いた時にはわからなかった、この曲のポップさだけではない、幸せな空気に包まれながら踊れる感覚を見事に描き出していた。
アンコールでは小出がこの日限定のラグランTシャツに、堀之内と関根がベースボールシャツ(ようやくバンド名に見合ったグッズを出した)に着替えて登場すると、早くも5月から新たなツアーが始まることを発表。しかもそのツアーは3人だけで演奏することを告げると、その予告編であるかのように「PERFECT BLUE」を3人だけで演奏。当たり前だが、ギターが1本足りないわけであって、サウンドには隙間が多く感じる。しかしそれが悪い事かというと、全くそんなことはない。関根は3人編成だからこそ、ステージを歩き回りながらベースを弾き、しかも本来は弓木のための上手のマイクスタンドまで移動してコーラスを務める。そうした姿が、まるでバンドを始めた頃のように楽しそうに見えた。
だがやはりこれでは終われない。なにせ弓木とともにステージに立つのは当分はこの日が最後なのだから。ということで弓木を再び招き入れると、ベースボールシャツを着た弓木がメンバー3人を1人ずつ後ろからハグしてからギターを肩にかけ、この4人で最後に演奏された「十字架You and I」で最後のギターソロを豪快に弾きまくった。その姿をこれからも忘れることはないだろうし、間奏でメンバーそれぞれと向き合いながらギターを弾く姿は、まさにBase Ball Bearのメンバーそのものだった。
あの4人の時のベボベは他に代わりの人が思い浮かばないくらいに最高だった。でも今のこのベボベも間違いなく最高である。そう思えるくらいのライブをこのバンドはやってみせていたし、そう思える最大のポイントである弓木は本当にベボベのファンみんなから愛されていた。もし弓木が正式メンバーになると発表されても、こうしてライブを観に来ている人たちの中には反対する人は絶対にいないはずだ。
湯浅が脱退したと発表があった時と、その直後のライブはやっぱり寂しかった。それはそうだ、10年くらい、ずっと一緒に歳を重ねてきたバンドのメンバーがいきなり、おそらくもう2度と会えなくなってしまったんだから。でもちょっとしてから、その寂しい気持ちは薄れていった。それは弓木がサポートとしてベボベでギターを弾いてくれたからである。ずっと同じメンバーで活動し続けるという、エレカシやスピッツのようは境地にはベボベは到達することができなかった。でも、それでも悪くないのかもしれない。そう思えるくらいに、この日までの弓木を加えた4人でのライブが観れて本当に幸せだったし、これからもベボベのライブをずっと見続けることができる。小出も関根も堀之内も、これからも40代、50代になるまで一緒に歳を重ねていきながら、これまでと同じようにCDを聴いて、ライブを観れていますように。まだバンドは17歳。青春の真っ只中にして、最も成長する歳。つまりこれからもベボベの進化は止まらない。
1.SHINE
2.Stairway Generation
3.Low Way
4.(LIKE A) TRANSFER GIRL
5.抱きしめたい
6.「それって、for 誰?」part.1
7.恋する感覚
8.ドラマチック
9.White Room (弾き語り)
10.Transfer Girl (弾き語り)
11.寛解
12.リアリティーズ
13.すべては君のせいで
14.逆バタフライ・エフェクト
15.LOVE MATHEMATICS
16.CRAZY FOR YOUの季節
17.Darling
encore
18.PERFECT BLUE
19.十字架You and I
CRAZY FOR YOUの季節
https://youtu.be/-Loii7VLh3k
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昨年の日比谷野音ワンマンではアルバムの曲を再現するために様々なゲストミュージシャンを迎えた新たなバンドの姿を見せるという、恒例の野音ワンマンだが今までと全く違う形の内容になったが、果たしてツアーファイナルではどんな姿を見せてくれるのだろうか。
19時を少し過ぎると、おなじみのXTCのSEが流れて、3人+1人のメンバーがステージに。堀之内のドラムセットの周りに集まって全員が気合いを入れるというルーティンをこなすと、まだSEが鳴り止まないうちから堀之内がリズムを刻み始め、SEが聴こえなくなると同時にバンドの演奏にイン。オープニングナンバーは「光源」の中でも最もアッパーな「SHINE」なのだが、バッサリと髪を切ってどこぞの女子アナみたいなshort hairになり、早くもステージ最前に置かれたお立ち台に乗って、全身や顔すらも使って(もちろん比喩です)ギターを弾きまくるサポートの弓木英梨乃がこれまで以上にバケモノじみた凄まじいプレイを見せる。もうベボベのサポートギターとしてすっかり存在が定着してきているだけに、バンドに合わせて弓木自身も進化を果たしている。
また、
「青春は1,2,3 ジャンプアップ」
というサビのフレーズは、千葉の高校生だった頃にコピーしていた、SUPERCARの「スリーアウトチェンジ」と「JUMP UP」がこのバンドの青春であるということを歌っているとみて間違いないだろう。現に前回のツアーでは開演前のBGMに原点回帰を思わせるようにその頃のSUPERCARの曲だけが流れ続けていた。
「聖槍で檸檬を貫くように」
というこれまでに何度となく歌詞に登場してきた「檸檬」を使ったフレーズも含め、この曲はどこをどう切っても小出にしか書けない、このバンドにしか鳴らせない曲である。
続けざまに関根史織がお立ち台に登ってイントロのベースを弾いた「Stairway Generation」とアッパーな曲を続けるスタートダッシュを決めると、
「ツアーも31本ですよ。ここにきてこれだけライブやりまくる、マッチョなバンドになるとは思ってもみなかった」
と小出が挨拶したが、まさにその通りで、もうメジャーデビューから10年以上経ち、アラサーからアラフォーに差しかかろうとするバンドとは思えないくらいにさらに個々の演奏とバンドのグルーヴが強化されてきているのがこの冒頭2曲を聴いただけでわかる。ここにきてこれほどまでベボベがライブバンドとしての強さを手に入れることになるなんて、誰が想像しただろうか。
それは「光源」収録のブラックミュージックのグルーヴを巧みに取り入れた曲たちにおいても顕著だが、CDでは4人編成以上のサウンドになっていたこの曲たち、日比谷野音でのゲストミュージシャンを迎えた形とは異なり、全てをステージにいるメンバーだけで演奏するという、かつての4人組バンドだったベボベが貫いていたスタイルのアレンジになっている。そこでもウワモノのサウンドをギターで賄う弓木の貢献度は果てしなく高い。
「(LIKE A) TRANSFER GIRL」のアウトロからイントロが繋がるように演奏されたことにより、
「春風の中 君は花のようだ」
という少女の形容が「(LIKE A) TRANSFER GIRL」に向けられているように聴こえてくることによって新たな一面を見せてくれる「抱きしめたい」は曲順とアレンジの妙であろう。
ツアーの真っ只中ではあったが、多数のゲストを迎えた野音での「日比谷ノンフィクション」とはやはりセトリは変化を見せており、その時は演奏されなかった「「それって、for 誰?」part.1」が加わると、小出から弓木がサポートとしてバンドに参加するのはいったんこの日が最後であるというショッキングな事実が告げられる。弓木はそのためにバッサリと髪を切ったということだが、小出はそのことに全く気づいていなかった。
その弓木がメインボーカルを務めるという、サポートという役割を飛び越えた存在感を見せるのは、CDでは花澤香菜がボーカルとして参加していた、小出のポップさが振切れまくった「恋する感覚」。関根との女性ツインボーカルに加え、堀之内すらも女声でコーラスするという、今のバンドの形だからこそできるこの曲も、弓木が参加しないことによって当分はこうしてライブで聴ける機会はなくなるのかもしれない。
小出の弾き語りのイントロが追加されるというライブならではのおなじみのアレンジが加わった「ドラマチック」で会場の温度はさらに上がっていくが、かつてまだ若手バンドだった頃のベボベは毎年夏の曲を世に送り出し、その曲たちを夏の野外フェスで鳴らすことで、「我々世代最強の夏バンド」として君臨していた。今はそこまで季節感を強く押し出すような曲はなくなってきたが、こうしてライブで夏の名曲を聴くと、真冬でも夏になったかのような気分になれる。それは会場の熱気も相まってそう感じるのだろうけれど。
するとここで小出1人を残して他のメンバーがいったんステージから掃け、野音でも披露していた弾き語りコーナーに。
「ツアー始まった時は梅雨だったのに、終わる時には冬になるくらいに季節をまたいでしまった(笑)
でもこの前の福岡の帰りが大雪で。一本遅い飛行機だったら帰ってこれなかった…(客席のリアクションの薄さを見て)え?死んだ?(笑)
これいつも東京でしか言ってないよ(笑)」
と笑わせながら、
「野音でやった時は緊張しまくってたけど、今はまるで家でiPhoneのボイスメモに吹き込むくらいに緊張してない。俺もこの境地まで達したかと(笑)」
と、全く弾き語りをやるイメージがなかった野音の時から回数(=ツアーの本数)を重ねたことにより、実に弾き語りする姿もどっしりと落ち着いて見える。そして前半からもそうだったが、小出のボーカルは近年本当に安定している。もともと歌唱力自体はこの年代の中では最初から非常に高かったが、かつてはなぜか歌詞が飛びまくる日もあっただけに、本当に安心して見ていられるようになった。
弾き語りの曲は「White Room」は野音の時と同じだが、「恋愛白書」が「Transfer Girl」に変更されている。これによって2曲とも「3.5th」と位置付けられ、初めてゲストを迎えてファンクやヒップホップの要素を取り入れた、実験性が強く感じさせられた時期の曲になったわけだが、こうして小出の歌とギターのみという究極にシンプルな形で演奏されることによって、その実験性の奥にはしっかりとベボベならでは、小出ならではのメロディの良さがある曲たちであったことに気づかされる。そうした曲の持つ一面を改めて実感できるというのは弾き語りというセクションを設けたからこそ。
弾き語りが終わるとすぐさま他のメンバーが合流し、小出はギターを置いてハンドマイク状態で歌い始めたのは「光源」からの「寛解」。ステージ背面には曲のイメージを増幅させるような、照明による美しい背景が現れる。途中からは小出もギターを弾くという形は弾き語り以上に新鮮に思えるが、「光源」でこれまでのタブーから解放されたことによって、こうした姿はこれから当たり前のように見ることになるのかもしれない。
「ツアーを廻って改めて思ったけど、バンドというのは旅であると。フルカワユタカさんが我々のバンドでギターを弾いてくれて、「新たな一歩を踏み出せた」と言ってくれて。最初にサポートしてくれた石毛君もthe telephonesを再開させて。うちでギター弾いたからバンドをまたやりたいって思ったんじゃないの~?とも思ってるんだけど(笑)
かと思えば、チャットモンチーが今年で解散すると。………本当に、出会いがあって別れがある。でも、きっと再会する時もくる」
と語られた小出の言葉は、自らも別れを経験したにもかかわらず、全く止まることをせずに続けてきたからこそ説得力があった。最大の盟友バンドと言っていいチャットモンチーのことを話した時はどこか寂しそうな感じもしたが、小出が言ったように、いつか再会できる日が来るかもしれないし、野音の時のように福岡晃子がまたベボベのライブで一緒にステージに立つ日が来るかもしれない。ベボベが続けることを選んだからこそ、そうして希望が持てる。
そして1年3ヶ月という期間をともに過ごした弓木のことにも触れ、
「とりあえずはいったんは今日で、っていうことなんですけど。スケジュールとかでね。でもいつかまた一緒にできる日が来るかもしれない。いや、また一緒にやりましょう。君もBase Ball Bearだ!」
と弓木との再会も約束。
そのバンドが「このメンバーじゃなくなったら終わりだな」って思うようなバンドであればあるほど、メンバーが変わったり、形が変わった時に見切りをつけていく人も多い。ベボベも4人の時は間違いなくそうしたバンドであった。しかしながらベボベを聴かなくなったり、ライブを観に行かなくなったりということは自分は全くない。(もちろん少なからず離れた人もいるだろうけど)
それは弓木が、湯浅の残像をかき消してくれるくらいに素晴らしいギタリストであり、人間性やキャラという点でもこのバンドに違和感なく混ざれるような人物だったからである。そしてフルカワユタカや石毛輝という自身がメインの活動をしているギタリストと違い、弓木はこうして長いツアーに帯同できる立ち位置のギタリストだった。つまり、弓木の存在はすべての面でベボベのサポートギタリストとしてドンピシャだった。その弓木の存在こそがベボベを立ち止まることなく前へ進ませる力になってきた。そういう意味でも、間違いなくベボベにとって最大の救世主である。だから弓木には本当に感謝しかない。こうして今でも当たり前のようにベボベのライブが見れるのは彼女が参加してくれたからなのだから。
「バンドも今年で17年目。17歳、まだまだ青春の真っ只中。そんな我々が次に演奏するのは、この曲」
と小出が言ったので、自分は間違いなく「17才」を演奏すると思っていたのだが、実際に演奏されたのは「すべては君のせいで」だっただけに、「なんで17歳って言ったんだ!?」という思いでいっぱいになった。
堀之内がイントロのリズムを刻みながら、
「我々はこれからも進化し続けていくんで、みなさんこれからも付いてきてください!」
と尽きない活動意欲を宣言すると、「光源」の中で最も従来の、「ギターロックなBase Ball Bear」に近いながらも、やはりグルーヴには黒さを孕んでいる「逆バタフライ・エフェクト」の
「決められたパラレルワールドへ」
というフレーズが、決して望んだ形ではないが、それでも最高だと思える今のベボベの状況そのもののように響き、小出のボーカルに合わせて観客がカウントする「LOVE MATHEMATICS」でさらにヒートアップ。そのまま「CRAZY FOR YOUの季節」では「元の何倍なんだ?」というくらいにテンポが速くなっていたのだが、弓木という超絶テクニックを誇るギタリストを擁することにより、バンドの演奏技術はリズム隊のレベルアップも含めて格段に向上している。そうなると得てして技術を活かして丁寧に、よくない言い方をすれば無難に演奏するようになりそうなものだが、そのあまりにテンポアップした演奏からは、技術はもちろんあるのだが、それ以上に衝動が炸裂していた。このバンドでライブをやることの楽しさ、このメンバーで演奏することができる幸せを、4人全員が噛み締めていて、それを見ることができる幸せを我々観客がしっかりと感じ取ることができた。
ベボベのライブを身始めてからもう12年が経った。ともに10代から20代、そして30代と年齢を重ねていく中で、この「CRAZY FOR YOUの季節」だけは最初にライブを見た時からずっと演奏され続けてきている。しかしそれがずっと同じなのではなくて、しっかりと進化している姿を見せてくれる。もう若くはない年齢だし、そうなると年齢が諦めの理由として最も都合のいいものになってくる。でもまだまだいける。まだまだできる。この日の「CRAZY FOR YOUの季節」はそう思わせてくれたし、ベボベ自体がまだまだこれからもっと凄いバンドになると思わせてくれた。間違いなく今まで聴いた中で最も素晴らしい「CRAZY FOR YOUの季節」だった。だからこそ、見ていて感動のあまりに涙が流れてきてしまったのだ。
そしてラストは「光源」の最後に収録されている「Darling」でZeppの天井からぶら下がったミラーボールが鮮やかに回転。その光景は、野音で聴いた時にはわからなかった、この曲のポップさだけではない、幸せな空気に包まれながら踊れる感覚を見事に描き出していた。
アンコールでは小出がこの日限定のラグランTシャツに、堀之内と関根がベースボールシャツ(ようやくバンド名に見合ったグッズを出した)に着替えて登場すると、早くも5月から新たなツアーが始まることを発表。しかもそのツアーは3人だけで演奏することを告げると、その予告編であるかのように「PERFECT BLUE」を3人だけで演奏。当たり前だが、ギターが1本足りないわけであって、サウンドには隙間が多く感じる。しかしそれが悪い事かというと、全くそんなことはない。関根は3人編成だからこそ、ステージを歩き回りながらベースを弾き、しかも本来は弓木のための上手のマイクスタンドまで移動してコーラスを務める。そうした姿が、まるでバンドを始めた頃のように楽しそうに見えた。
だがやはりこれでは終われない。なにせ弓木とともにステージに立つのは当分はこの日が最後なのだから。ということで弓木を再び招き入れると、ベースボールシャツを着た弓木がメンバー3人を1人ずつ後ろからハグしてからギターを肩にかけ、この4人で最後に演奏された「十字架You and I」で最後のギターソロを豪快に弾きまくった。その姿をこれからも忘れることはないだろうし、間奏でメンバーそれぞれと向き合いながらギターを弾く姿は、まさにBase Ball Bearのメンバーそのものだった。
あの4人の時のベボベは他に代わりの人が思い浮かばないくらいに最高だった。でも今のこのベボベも間違いなく最高である。そう思えるくらいのライブをこのバンドはやってみせていたし、そう思える最大のポイントである弓木は本当にベボベのファンみんなから愛されていた。もし弓木が正式メンバーになると発表されても、こうしてライブを観に来ている人たちの中には反対する人は絶対にいないはずだ。
湯浅が脱退したと発表があった時と、その直後のライブはやっぱり寂しかった。それはそうだ、10年くらい、ずっと一緒に歳を重ねてきたバンドのメンバーがいきなり、おそらくもう2度と会えなくなってしまったんだから。でもちょっとしてから、その寂しい気持ちは薄れていった。それは弓木がサポートとしてベボベでギターを弾いてくれたからである。ずっと同じメンバーで活動し続けるという、エレカシやスピッツのようは境地にはベボベは到達することができなかった。でも、それでも悪くないのかもしれない。そう思えるくらいに、この日までの弓木を加えた4人でのライブが観れて本当に幸せだったし、これからもベボベのライブをずっと見続けることができる。小出も関根も堀之内も、これからも40代、50代になるまで一緒に歳を重ねていきながら、これまでと同じようにCDを聴いて、ライブを観れていますように。まだバンドは17歳。青春の真っ只中にして、最も成長する歳。つまりこれからもベボベの進化は止まらない。
1.SHINE
2.Stairway Generation
3.Low Way
4.(LIKE A) TRANSFER GIRL
5.抱きしめたい
6.「それって、for 誰?」part.1
7.恋する感覚
8.ドラマチック
9.White Room (弾き語り)
10.Transfer Girl (弾き語り)
11.寛解
12.リアリティーズ
13.すべては君のせいで
14.逆バタフライ・エフェクト
15.LOVE MATHEMATICS
16.CRAZY FOR YOUの季節
17.Darling
encore
18.PERFECT BLUE
19.十字架You and I
CRAZY FOR YOUの季節
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