フレデリック フレデリズムツアー リリリピート公演 ~みんなのTOGENKYO~ @新木場STUDIO COAST 1/14
- 2018/01/15
- 00:56
昨年末のZepp Tokyoでのこのツアーでの一応のファイナルとなるワンマンと、COUNTDOWN JAPAN 17/18のGALAXY STAGEでのライブを見て、特にこれからワンマンでも万単位のキャパでの会場でのライブを伺うようなバンドが揃ったその日のGALAXY STAGEの出演者の中でも、最もそのキャパに行きそうな可能性を感じたバンドは、フレデリックだった。
それは入場規制レベルの超満員という状況もそうだったが、それ以上にバンドのパフォーマンスがもはやそのレベルにまで達しているからという理由の方が大きい。
この日と前日の新木場STUDIO COASTでの追加公演は4月のバンドの地元である神戸での初のアリーナワンマンを見据えたものでもあるが、2017年も1月にこの会場でツアーファイナルワンマンを行っているだけに、その部分でも一年越しにリリリピートしている。
先月のZepp Tokyoのレポートも参照していただきたいが(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-457.html?sp)、結果的にではあるが、「TOGENKYO」をベースにしながらも、わずか1ヶ月足らずで内容はかなり変わるものになった。
18時を少し過ぎると、ステージ背面に設置された無数のバーが様々な色に光る中、打ち込みのSEが流れてメンバーが登場。健司、康司、赤頭の3人が楽器を構えるやいなや、その3人が前に出ながらお立ち台に乗って演奏を始め、いきなりの「オンリーワンダー」でスタートするというのはZeppの時と変わらないので、やはり追加公演というのは基本的に内容が変わらないというイメージを踏襲したものになるのかと思いきや、曲順はおろかセトリにもかなりの変化が現れている。
しかしながらやはり2daysの2日目という状況によるものか、健司の声はZeppの時よりも少しキツいように感じるし、特に「オンリーワンダー」のサビの裏声部分などにそれは顕著である。さらに水を口にしようとする場面も多いというのがより不安にも感じるのだが、しかしそんな絶好調とは言えない状態であっても、
「新木場、昨日を超えようぜー!」
とフロントマンとして頼もしい姿を見せ、何よりも他の3人のグルーヴがツアーを経てきたことによってさらに極まってきている。曲のアウトロと次の曲のイントロをつなげるようなライブアレンジも、このアレンジで聴くのが当たり前なんじゃないかとすら思えるくらいに自然なものになっているのもツアーを経てきた成果である。
またフレデリックの大きな会場でのワンマンではおなじみとなっているのが、様々な演出。この日も序盤からレーザーが飛び交い、ダンサブルな曲のイメージをさらにハイパーに加速させていき、打ち込みのインタールード的な音を挟んでの「ナイトステップ」からはステージ背面に光が飛び散るような映像が登場。「ディスコプール」でのステージ中央から360°回転しながら会場内の様子をリアルタイムで映し出す映像も、アッパーな高速BPMというよりはもっとじっくり踊らせるタイプのこのゾーンだからこそ。(序盤の曲で回転させたら速くなりすぎる)
「TOGENKYO」の収録曲の中では年末のフェスでもセットリストに名前を連ねるという、早くも数々のキラーチューンを押しのけるくらいになった、康司のゴリゴリのベースと健司のリフレインを多用した歌唱がリズミカルに絡み合う「パラレルロール」を終えると、何やらスタッフが数多くステージに現れ、慌ただしく転換を行っている。
「確かにセトリはちらほらと変わっているとはいえ、そんなに転換するほど変えることがあるだろうか?」
とも思っていると、椅子までも運び込まれてきただけにある程度察しはついたが、それにしてもこの大胆なセットチェンジにもかかわらず実にスムーズに済んだあたりはスタッフ全員が「MCすらほとんど挟まない、今のフレデリックのライブにおけるテンポの大事さ」を完全に熟知しているからこそ。
転換が終わると、健司、康司、赤頭の3人が椅子に座り、健司はアコギに持ち替えるという、「FAB!! ~Frederic Acoustic Band~」と題されたアコースティック編成に。このアコースティック編成は「TOGENKYO」の初回盤DVDにスタジオライブの映像が収録されているので、確かに今回の「TOGENKYO」のツアーで披露するのは理にかなってはいるのだが、それにしても1ヶ月前のワンマンではやっていなかったことをこうしてやってしまうという変化のつけ方は素晴らしいし、今後もツアーファイナルと追加公演の両方を見に行かないと、と思わされる。
アコースティックではまずはアコースティック編成でしかライブで披露されていないという「USO」を演奏するのだが、アコースティック編成というのは踊るという要素が皆無であるために、グルーヴを生み出していくというよりも、丁寧に丁寧にフレーズを奏でていくというイメージで、なぜフレデリックがアコースティック編成に挑戦したのかがよくわかる。
それはつまるところこのバンド最大の持ち味はメロディの良さであるというのをわかりやすく示すためであり、「ハローグッバイ」をアコースティックアレンジにしたのもそういう理由である。(前日は「トウメイニンゲン」だったらしい)
またアコースティックの2曲の間には、追加公演以外ではアンコールで行われていた、メンバー紹介と一人一人のMCもこのタイミングで挟まれるのだが、先日メンバー4人だけでディズニーシーに行ったらしく(神戸出身の三原兄弟と赤頭は今まで行ったことがなかったらしい)、話題は完全にそれが中心となるのだが、
康司「ディズニーシーよりも、こうしてライブをしている方が楽しいし気持ちいい」
とどこまでも音楽に対して真面目な康司と、
赤頭「いやー、こうしてライブをしているとここが地球の中心、センター・オブ・ジ・アースやなぁって(笑)」
とやはり上手いことを言おうとしかしていない赤頭のコントラストが面白い。この日はかなりうけていたが。
3人とは違って関東で生きてきた高橋は何度かディズニーシーに行っているらしく、3人をアテンドするという使命を自らに課していたらしいが、スマホをいじりながら動き回っていたら怒られてしまったらしく、
「夢の国で怒られるなんて…」
と若干ショックを受けていた。
アコースティックが終わると再び実に手早い転換が行われるのだが、健司はギターを持たずにハンドマイク状態に。ということは「かなしいうれしい」のカップリング曲である「まちがいさがしの国」であるが、現在の日本の社会やムードに対しての自らの視線を綴ったこの曲、フレデリックが実は社会的なメッセージをしっかり持っている人間の集まりであるということを示すと同時に、
「涙の味を知ってるか 本当の幸せ知ってるか」
という最後のフレーズは、まちがいさがし的な生き方をしていても誰も幸せにはなれないということを訴えている。
健司の歌唱はこの辺りになるとだいぶ安定してきたが、それよりも眼を見張るくらいに進化しているのは、コーラスのみならずフレーズによってはボーカルも取るようになっている康司の歌唱力の向上っぷりである。ただでさえ独特なベースラインを構築しているだけに、弾きながら歌うのは本当に難しいと思うが、ベースだけでなく歌唱力も向上しているというのは康司のポテンシャルの底知れなさを感じさせるとともに、今後もしかしたら康司がメインボーカルを取る曲もできるんじゃ?とすら思わされる。
健司が「まちがいさがしの国」を歌い終わってもギターを持たないので、
「ハンドマイクで歌う曲ってもうなくない?」
と思っていたのだが、そのままハンドマイクで歌い始めたのは「TOGENKYO」の最後を飾る「RAINY CHINA GIRL」。Zeppではやっていなかった曲なので前日に来た人しか編成を知らないという曲であり、Aメロではギターの音が足りなく感じたので、健司もギター弾いた方が良くないか?とも思ったが、ライブで披露されないままお蔵入りになると思っていたこの曲をこうして聴けたのは実に嬉しいところだし、ここまでポップに振り切れた曲は今後のバンドのさらなる幅の広がりの始まりのような予感もしている。
「ここからはリピート地獄です!」
と健司が煽ると「リリリピート」からはクライマックスに。地獄から一転してダンス天国と化した「オドループ」では観客が手拍子をするイントロが追加されているのだが、もはや最後にこの曲を演奏しなくても充分に成り立つくらいにライブにおいてキラーチューンが溢れてきているくらいの状態である。もちろんこの曲をやらなくなることはないだろうが、仮にフェスでこの曲をやらなくても物足りない感じは全くしないと思う。
とはいえ、やはりこの曲は特別な曲である。自分がフレデリックが「ひたすらにシュールかつサイケデリックなバンド」から「ロックシーン最強のアンセムを持つバンド」に変化する瞬間を見たのは、SWEET LOVE SHOWERに初出演した年に、まだリリースされていなかったこの曲を新曲として披露した時だった。特徴的なMVの効果もあり、やはりこの曲でバンドは大ブレイクを果たしたわけだが、そうした曲はいわゆる「枷」的な存在にもなりやすい。いつまでもその曲のイメージでしか見られない、というように。しかしもはやこのバンドはそこから完全に脱していると思えるのは、「オワラセナイト」しかり「オンリーワンダー」しかり「かなしいうれしい」しかり、その後にリリースした曲がどれも「オドループ」とは違ったタイプのアンセムたちだったからである。踊れるバンドというと音楽以外の部分で人気を集めるバンドもいるかもしれないが、フレデリックはひたすら音楽を磨き続けて進化を遂げてきたバンドである。
「そろそろ帰宅する時間ですよ!」
と健司が言って最後に演奏されたのはやはり「KITAKU BEATS」だが、途中で健司は
「2018年の音楽シーンはフレデリックにお任せください!」
と言った。もしかしたらすでにとんでもないアルバムが出来つつあるのかもしれない(間違いなく次のリリースはアルバムだろう)が、楽曲はもちろん、ライブにも絶対の自信を持てるようになったからこそ言えるであろう言葉。ビッグマウスに聞こえるかもしれないが、フレデリックは「オドループ」以降、口にしたことは必ず実行してきた。つまりこの言葉も大風呂敷を広げたわけではなく、メンバーにはもうその景色がちゃんとイメージできる状態にあるのだ。その姿勢が音にもしっかり乗っているから、このバンドのライブはただ踊って楽しいだけじゃなく、見ていて感動すら覚えるようになってきている。
ちょうど1年前のこの会場でのリリリピート公演を思い出させるような、最後のフレーズを歌った瞬間に紗幕が現れて終わるという演出も呆気にとられるくらいに鮮やかだった。
アンコールでは紗幕がかかった状態で薄明かりの中で演奏されるのが幻想的な雰囲気をさらに引き立てる「たりないeye」でやはり康司のボーカル力の向上っぷりを感じさせると、アコースティック時に話したからかMCは一切挟まず、紗幕が落ち、代わりにまさにここが桃源郷であると言わんばかりに桜吹雪が舞い散るような演出の中で演奏されたのは「TOGENKYO」。
Zeppの時は「たりないeye」で終わっていたが、収録曲を全て演奏し、最後の最後にこの曲を演奏することによって、「TOGENKYO」はついに完成形を見せたのである。
「2018年1月14日、新木場STUDIO COASTに「TOGENKYO」は確かにありました!」
と健司は最後に言ったが、たまたまこの場所にあったんじゃなくて、フレデリックがこの場所に自らの力で「TOGENKYO」を作り上げたのである。それは間違いなく「TOGENKYO」リリース後、最高の「TOGENKYO」であった。
演奏が終わると、恒例の客席を写す撮影タイムになったのだが、外に出ると、COASTの入り口にある広場の壁に「TOGENKYO」のビジュアルが映し出されていた。(入る時はなかった)
ライブハウスの中だけではなく、このライブハウス全てが「TOGENKYO」であるということを示すような演出。これは間違いなくCOASTだからこそできたこと。
一つ一つのライブに意味を持たせることができるバンドだからこそ、初めてのアリーナワンマンが神戸であるというのは、3人の地元だからという事実以上のものを孕んでくるはず。きっとその後には関東でもそのキャパでやってくれると信じているし、冒頭のCOUNTDOWN JAPAN 17/18でのライブのところでも触れたように、もはやそのキャパでやらない理由がないくらい(会場が空いてないとかではない限り)、このバンドはありとあらゆる理由でそこに立つために必要なものを全て兼ね備えている。
1.オンリーワンダー
2.オワラセナイト
3.愛の迷惑
4.かなしいうれしい
5.ミッドナイトグライダー
6.ナイトステップ
7.スローリーダンス
8.ディスコプール
9.パラレルロール
10.USO (アコースティック)
11.ハローグッバイ (アコースティック)
12.まちがいさがしの国
13.RAINY CHINA GIRL
14.リリリピート
15.オドループ
16.KITAKU BEATS
encore
17.たりないeye
18.TOGENKYO
TOGENKYO
https://youtu.be/OfBd8kxo4mQ
Next→ 1/19 04 Limited Sazabys @Zepp Tokyo
それは入場規制レベルの超満員という状況もそうだったが、それ以上にバンドのパフォーマンスがもはやそのレベルにまで達しているからという理由の方が大きい。
この日と前日の新木場STUDIO COASTでの追加公演は4月のバンドの地元である神戸での初のアリーナワンマンを見据えたものでもあるが、2017年も1月にこの会場でツアーファイナルワンマンを行っているだけに、その部分でも一年越しにリリリピートしている。
先月のZepp Tokyoのレポートも参照していただきたいが(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-457.html?sp)、結果的にではあるが、「TOGENKYO」をベースにしながらも、わずか1ヶ月足らずで内容はかなり変わるものになった。
18時を少し過ぎると、ステージ背面に設置された無数のバーが様々な色に光る中、打ち込みのSEが流れてメンバーが登場。健司、康司、赤頭の3人が楽器を構えるやいなや、その3人が前に出ながらお立ち台に乗って演奏を始め、いきなりの「オンリーワンダー」でスタートするというのはZeppの時と変わらないので、やはり追加公演というのは基本的に内容が変わらないというイメージを踏襲したものになるのかと思いきや、曲順はおろかセトリにもかなりの変化が現れている。
しかしながらやはり2daysの2日目という状況によるものか、健司の声はZeppの時よりも少しキツいように感じるし、特に「オンリーワンダー」のサビの裏声部分などにそれは顕著である。さらに水を口にしようとする場面も多いというのがより不安にも感じるのだが、しかしそんな絶好調とは言えない状態であっても、
「新木場、昨日を超えようぜー!」
とフロントマンとして頼もしい姿を見せ、何よりも他の3人のグルーヴがツアーを経てきたことによってさらに極まってきている。曲のアウトロと次の曲のイントロをつなげるようなライブアレンジも、このアレンジで聴くのが当たり前なんじゃないかとすら思えるくらいに自然なものになっているのもツアーを経てきた成果である。
またフレデリックの大きな会場でのワンマンではおなじみとなっているのが、様々な演出。この日も序盤からレーザーが飛び交い、ダンサブルな曲のイメージをさらにハイパーに加速させていき、打ち込みのインタールード的な音を挟んでの「ナイトステップ」からはステージ背面に光が飛び散るような映像が登場。「ディスコプール」でのステージ中央から360°回転しながら会場内の様子をリアルタイムで映し出す映像も、アッパーな高速BPMというよりはもっとじっくり踊らせるタイプのこのゾーンだからこそ。(序盤の曲で回転させたら速くなりすぎる)
「TOGENKYO」の収録曲の中では年末のフェスでもセットリストに名前を連ねるという、早くも数々のキラーチューンを押しのけるくらいになった、康司のゴリゴリのベースと健司のリフレインを多用した歌唱がリズミカルに絡み合う「パラレルロール」を終えると、何やらスタッフが数多くステージに現れ、慌ただしく転換を行っている。
「確かにセトリはちらほらと変わっているとはいえ、そんなに転換するほど変えることがあるだろうか?」
とも思っていると、椅子までも運び込まれてきただけにある程度察しはついたが、それにしてもこの大胆なセットチェンジにもかかわらず実にスムーズに済んだあたりはスタッフ全員が「MCすらほとんど挟まない、今のフレデリックのライブにおけるテンポの大事さ」を完全に熟知しているからこそ。
転換が終わると、健司、康司、赤頭の3人が椅子に座り、健司はアコギに持ち替えるという、「FAB!! ~Frederic Acoustic Band~」と題されたアコースティック編成に。このアコースティック編成は「TOGENKYO」の初回盤DVDにスタジオライブの映像が収録されているので、確かに今回の「TOGENKYO」のツアーで披露するのは理にかなってはいるのだが、それにしても1ヶ月前のワンマンではやっていなかったことをこうしてやってしまうという変化のつけ方は素晴らしいし、今後もツアーファイナルと追加公演の両方を見に行かないと、と思わされる。
アコースティックではまずはアコースティック編成でしかライブで披露されていないという「USO」を演奏するのだが、アコースティック編成というのは踊るという要素が皆無であるために、グルーヴを生み出していくというよりも、丁寧に丁寧にフレーズを奏でていくというイメージで、なぜフレデリックがアコースティック編成に挑戦したのかがよくわかる。
それはつまるところこのバンド最大の持ち味はメロディの良さであるというのをわかりやすく示すためであり、「ハローグッバイ」をアコースティックアレンジにしたのもそういう理由である。(前日は「トウメイニンゲン」だったらしい)
またアコースティックの2曲の間には、追加公演以外ではアンコールで行われていた、メンバー紹介と一人一人のMCもこのタイミングで挟まれるのだが、先日メンバー4人だけでディズニーシーに行ったらしく(神戸出身の三原兄弟と赤頭は今まで行ったことがなかったらしい)、話題は完全にそれが中心となるのだが、
康司「ディズニーシーよりも、こうしてライブをしている方が楽しいし気持ちいい」
とどこまでも音楽に対して真面目な康司と、
赤頭「いやー、こうしてライブをしているとここが地球の中心、センター・オブ・ジ・アースやなぁって(笑)」
とやはり上手いことを言おうとしかしていない赤頭のコントラストが面白い。この日はかなりうけていたが。
3人とは違って関東で生きてきた高橋は何度かディズニーシーに行っているらしく、3人をアテンドするという使命を自らに課していたらしいが、スマホをいじりながら動き回っていたら怒られてしまったらしく、
「夢の国で怒られるなんて…」
と若干ショックを受けていた。
アコースティックが終わると再び実に手早い転換が行われるのだが、健司はギターを持たずにハンドマイク状態に。ということは「かなしいうれしい」のカップリング曲である「まちがいさがしの国」であるが、現在の日本の社会やムードに対しての自らの視線を綴ったこの曲、フレデリックが実は社会的なメッセージをしっかり持っている人間の集まりであるということを示すと同時に、
「涙の味を知ってるか 本当の幸せ知ってるか」
という最後のフレーズは、まちがいさがし的な生き方をしていても誰も幸せにはなれないということを訴えている。
健司の歌唱はこの辺りになるとだいぶ安定してきたが、それよりも眼を見張るくらいに進化しているのは、コーラスのみならずフレーズによってはボーカルも取るようになっている康司の歌唱力の向上っぷりである。ただでさえ独特なベースラインを構築しているだけに、弾きながら歌うのは本当に難しいと思うが、ベースだけでなく歌唱力も向上しているというのは康司のポテンシャルの底知れなさを感じさせるとともに、今後もしかしたら康司がメインボーカルを取る曲もできるんじゃ?とすら思わされる。
健司が「まちがいさがしの国」を歌い終わってもギターを持たないので、
「ハンドマイクで歌う曲ってもうなくない?」
と思っていたのだが、そのままハンドマイクで歌い始めたのは「TOGENKYO」の最後を飾る「RAINY CHINA GIRL」。Zeppではやっていなかった曲なので前日に来た人しか編成を知らないという曲であり、Aメロではギターの音が足りなく感じたので、健司もギター弾いた方が良くないか?とも思ったが、ライブで披露されないままお蔵入りになると思っていたこの曲をこうして聴けたのは実に嬉しいところだし、ここまでポップに振り切れた曲は今後のバンドのさらなる幅の広がりの始まりのような予感もしている。
「ここからはリピート地獄です!」
と健司が煽ると「リリリピート」からはクライマックスに。地獄から一転してダンス天国と化した「オドループ」では観客が手拍子をするイントロが追加されているのだが、もはや最後にこの曲を演奏しなくても充分に成り立つくらいにライブにおいてキラーチューンが溢れてきているくらいの状態である。もちろんこの曲をやらなくなることはないだろうが、仮にフェスでこの曲をやらなくても物足りない感じは全くしないと思う。
とはいえ、やはりこの曲は特別な曲である。自分がフレデリックが「ひたすらにシュールかつサイケデリックなバンド」から「ロックシーン最強のアンセムを持つバンド」に変化する瞬間を見たのは、SWEET LOVE SHOWERに初出演した年に、まだリリースされていなかったこの曲を新曲として披露した時だった。特徴的なMVの効果もあり、やはりこの曲でバンドは大ブレイクを果たしたわけだが、そうした曲はいわゆる「枷」的な存在にもなりやすい。いつまでもその曲のイメージでしか見られない、というように。しかしもはやこのバンドはそこから完全に脱していると思えるのは、「オワラセナイト」しかり「オンリーワンダー」しかり「かなしいうれしい」しかり、その後にリリースした曲がどれも「オドループ」とは違ったタイプのアンセムたちだったからである。踊れるバンドというと音楽以外の部分で人気を集めるバンドもいるかもしれないが、フレデリックはひたすら音楽を磨き続けて進化を遂げてきたバンドである。
「そろそろ帰宅する時間ですよ!」
と健司が言って最後に演奏されたのはやはり「KITAKU BEATS」だが、途中で健司は
「2018年の音楽シーンはフレデリックにお任せください!」
と言った。もしかしたらすでにとんでもないアルバムが出来つつあるのかもしれない(間違いなく次のリリースはアルバムだろう)が、楽曲はもちろん、ライブにも絶対の自信を持てるようになったからこそ言えるであろう言葉。ビッグマウスに聞こえるかもしれないが、フレデリックは「オドループ」以降、口にしたことは必ず実行してきた。つまりこの言葉も大風呂敷を広げたわけではなく、メンバーにはもうその景色がちゃんとイメージできる状態にあるのだ。その姿勢が音にもしっかり乗っているから、このバンドのライブはただ踊って楽しいだけじゃなく、見ていて感動すら覚えるようになってきている。
ちょうど1年前のこの会場でのリリリピート公演を思い出させるような、最後のフレーズを歌った瞬間に紗幕が現れて終わるという演出も呆気にとられるくらいに鮮やかだった。
アンコールでは紗幕がかかった状態で薄明かりの中で演奏されるのが幻想的な雰囲気をさらに引き立てる「たりないeye」でやはり康司のボーカル力の向上っぷりを感じさせると、アコースティック時に話したからかMCは一切挟まず、紗幕が落ち、代わりにまさにここが桃源郷であると言わんばかりに桜吹雪が舞い散るような演出の中で演奏されたのは「TOGENKYO」。
Zeppの時は「たりないeye」で終わっていたが、収録曲を全て演奏し、最後の最後にこの曲を演奏することによって、「TOGENKYO」はついに完成形を見せたのである。
「2018年1月14日、新木場STUDIO COASTに「TOGENKYO」は確かにありました!」
と健司は最後に言ったが、たまたまこの場所にあったんじゃなくて、フレデリックがこの場所に自らの力で「TOGENKYO」を作り上げたのである。それは間違いなく「TOGENKYO」リリース後、最高の「TOGENKYO」であった。
演奏が終わると、恒例の客席を写す撮影タイムになったのだが、外に出ると、COASTの入り口にある広場の壁に「TOGENKYO」のビジュアルが映し出されていた。(入る時はなかった)
ライブハウスの中だけではなく、このライブハウス全てが「TOGENKYO」であるということを示すような演出。これは間違いなくCOASTだからこそできたこと。
一つ一つのライブに意味を持たせることができるバンドだからこそ、初めてのアリーナワンマンが神戸であるというのは、3人の地元だからという事実以上のものを孕んでくるはず。きっとその後には関東でもそのキャパでやってくれると信じているし、冒頭のCOUNTDOWN JAPAN 17/18でのライブのところでも触れたように、もはやそのキャパでやらない理由がないくらい(会場が空いてないとかではない限り)、このバンドはありとあらゆる理由でそこに立つために必要なものを全て兼ね備えている。
1.オンリーワンダー
2.オワラセナイト
3.愛の迷惑
4.かなしいうれしい
5.ミッドナイトグライダー
6.ナイトステップ
7.スローリーダンス
8.ディスコプール
9.パラレルロール
10.USO (アコースティック)
11.ハローグッバイ (アコースティック)
12.まちがいさがしの国
13.RAINY CHINA GIRL
14.リリリピート
15.オドループ
16.KITAKU BEATS
encore
17.たりないeye
18.TOGENKYO
TOGENKYO
https://youtu.be/OfBd8kxo4mQ
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