米津玄師 2018 LIVE Fogbound @日本武道館 1/9
- 2018/01/09
- 23:40
アーティストにとって、初の武道館ライブというのは得てしてそれまでの活動の集大成的な内容のものになりやすい。それはビートルズが初めてこの会場でライブをやって以降に刻み付けられてきた、様々な歴史がそうさせているのだろうし、実際にまだデビュー数年目の若手バンドであれ、20周年や30周年を迎えてのご褒美的なベテランバンドであれ、武道館ワンマンというものはそのアーティストの歴史全てをこの場所に刻み込むというものであった。
しかしながらこの男の場合はどうだろうか。徳島県出身という、武道館に憧憬が生まれにくい地方で生まれ育ち、ましてやボカロPというライブを行わない活動で世に登場した、米津玄師である。この日と翌日の日本武道館でのワンマンは、昨年11月にリリースされたアルバム「BOOTLEG」のツアーの追加公演ということで、その延長線上のものになるのか、それともこれまでの彼の音楽活動の集大成になるのか。
武道館でワンマンとなると、割と普段から激しいバンドでもアリーナは席指定というパターンも多いのだが、全席指定のホールツアーを行ってきたにもかかわらず、意外にもアリーナはオールスタンディング。
セット自体はそのホールツアーと変わらないが、両サイドに花道が伸びているのはやはり武道館ならではである。
19時を過ぎた頃、会場が真っ暗になると、アリーナスタンディングの観客たちが一斉に前に押し寄せる音が聞こえる中、ステージにはスモークが充満していき、米津玄師とメンバーがスモークの向こう側から姿を現わすとともに、ツアータイトルにもなっている「fogbound」の不穏なサウンドが鳴り始める。須藤はシンセベース、米津玄師がハンドマイクという編成は変わらないが、やはり武道館だからなのか、米津玄師の歌唱はやや緊張感を感じさせるものであり、YANKEE名義で渋谷のO-Crestで人生初めてライブを行った時のことを思い出させる。あの頃と違うのはギターを持たないだけにリズムに乗ってゆらゆらとたゆたうところや、メンバーの床にオイルアートなどの映像が映し出されるという、ホール以上のキャパだからこその演出。
「米津玄師です!よろしくお願いしまーす!」
とホールツアーに引き続いての、グイグイ前に出ようとする若手芸人のようなテンションの高さで米津玄師が挨拶すると、初音ミクのイベントのために書き下ろされた「砂の惑星」へ。最初のサビを歌い終わると米津玄師は
「武道館ー!」
とかつて数えきれないくらいたくさんの先人たちが叫んできたこの会場の名を叫ぶ。のだが、次の瞬間、「ゴトッ!」という音がはっきりと聞こえるくらいに盛大にマイクを落下させてしまい、2番の歌い出しが遅れるというとんでもないハプニングがあった。
武道館は聖地であると同時に魔物が棲んでいる場所でもある、とかつて誰かがこのステージで言っていたが、早くもこの序盤で米津玄師はその魔物から手招きされていたようだ。客席はかなり笑いが起こっていたけれど。
「ナンバーナイン」まではハンドマイクで歌っていた米津玄師がアコギを持って歌うギター&ボーカルになっての「飛燕」、米津玄師の新たなポップの形を描いた「春雷」ではメンバーの床に鮮やかな映像が映し出され、それがメンバーの背面に設置されている三角形の鏡状のオブジェに反射されて上から見ても正面から見ても楽しめる、米津玄師による米津玄師にしかできないライブを見せるという新たな演出も、ひと息入れる間も無く「BOOTLEG」の曲を連発していくというスタイルもホールツアーの時と変わらず、流れも全く同じ(12/15 パシフィコ横浜の時のレポ参照http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-455.html?sp)なのだが、序盤は緊張していたからか?と思っていた米津玄師の声が、明らかに先月の時よりも出ていない。特に高音部がやはりキツそうで、時折マイクを握りしめて叫んだりするというテンションの高さに肉体が追いついていないような感じがする。
それにつられてか、金髪の中島のギターも調子が悪いのか、機材がトラブっているのか、どこか外れているところが多いように感じたのは彼もまた武道館の魔物に手招きされていたのだろうか。
「もう本当にありがてぇ。ありがてぇしかないですよ、こうしてみなさんから力を貸していただいて。私なんかは普段からクソみたいな生活をしているんですが、こうして美しい瞬間をみんなで作り上げていこうじゃないですか!」
と言い回しこそ違えど、ホールツアーの時と同じニュアンスのことを語ると、米津玄師がリズムに乗って踊る「LOSER」では、ステージ脇から米津玄師のダンスの師匠である辻本知彦が登場し、あまりに独特かつ身体の構造が一般人とは遺伝子レベルから違うんじゃないか?と思うくらいのしなやかな動きで踊り、もはやその姿にばかり目がいくというくらい。
「ゴーゴー幽霊船」からはアッパーなバンドサウンドにギアチェンジしていくが、個人的に本調子ではなかったと見ているこの日において、飲み仲間ミュージシャンたちとともに作った「爱丽丝」は声が本調子ではないなりのエモーションを発揮していたが、それが映えるのはやはりこの曲が基本的にバンドサウンドで成り立っている曲だからであろう。またそのバンドのサウンド、とりわけ堀がドラムを強く一音叩くところなどはその音に同期したような床の映像であり、このあたりは音と映像、聴覚と視覚の両方で楽しめるだけに、こうして複数回ライブを見るたびに新たな発見がある。
米津玄師と中島に合わせて観客も二本指を武道館の天井、それすなわち日の丸に向かって掲げる「ピースサイン」から米津玄師の音楽の出発点であるギターロックへの憧憬を鳴らした「Nighthawks」では演出よりもバンドそのものの強さを押し出していくようだったが、ステージの前に紗幕が降りてから演奏された、ロッキンオンジャパンの連載「かいじゅうずかん」を単行本化する際に書き下ろされた「love」では壮大な映像が武道館を異世界に染め上げていく。
武道館ワンマン、というとついつい普段とは違う特別なことを求めてしまうのがファンの性、ということでこの日も「BOOTLEG」でコラボレートした人たちの登場と初の共演を期待していたところがあったのだが、冒頭の「fogbound」の池田エライザはもちろん、「打上花火」でのDAOKOも、ラスト「灰色と青」での菅田将暉もゲスト登場せず、米津玄師のボーカルのみというのは逆にライブならではとも言える。
しかしそんな中で「BOOTLEG」の中でも最も不穏かつダークな
「自分の頭今すぐ引っこ抜いて それであなたとバスケがしたい」
というおどろおどろしさすら感じるフレーズが出てくる「Moonlight」では米津玄師の友人であるダンサーの菅原小春が鹿のぬいぐるみを持って登場し、米津玄師の側でへたり込みながら、徐々に立ち上がって米津玄師に絡みつかんとするかのような、あまりにアバンギャルド過ぎない?と思うようなパフォーマンスを見せる。
そしてラストの「灰色と青」では米津玄師の幼少期からの成長と成熟を感じさせる、でも蒼さが確かに残っているかのような感情に浸っていると、最後に赤と青の鮮やかなテープが客席に照射されるという武道館ならではの演出も発揮すると、米津玄師はそそくさとステージから去っていった。
アンコールではやはりステージ前に紗幕が降ろされ、そこに曲の歌詞をそのまま可視化したかのような少女らの映像が映し出される向こう側で米津玄師が歌っている姿がうっすらと見える「ゆめくいしょうじょ」をまずは披露するのだが、元々はボカロP時代に「沙上の夢喰い少女」として世に発表された、この日演奏された曲の中でも最も古い曲。当時この曲をたった1人で家で作り、目の前の人ではなく画面の向こう側の人たちへ発信していた米津玄師はこうして武道館でこの曲がバンドメンバーたちとともに演奏されるようになることを想像していただろうか?
とも思うが、その後のMCでの、米津玄師と少年時代からの友人である中島の、客席を全くリアクション取れないくらいの空気に叩き込んだ妄想武道館の歴史トークを聞いていると、彼らには武道館だからこその感慨や、そこに至るまでのストーリーは全くと言っていいくらいにないのだろう。
ただ、
「武道館をやるって発表してからいろんな人から、おめでとう!って言ってもらった」
と言っていたように、周囲の人の祝福によって実感が湧いたところも多少はあったようだ。
「本当に私は1人では何もできなくて。こうしていろんな人に支えられながら音楽ができているんだな、って思うんだけど、言葉にするとなんか嘘くさくなってしまうというか…」.
と感情と言葉の堂々巡りが始まる中、
「宮沢賢治の「春と修羅」っていう詩集があって。その中に俺が凄い好きな一節があって」
と言って整理できない感情をその一節に託すと、サウンドのみならず照明までもが温かい空気を作り出す「Neighbourhood」で終了…と思いきや、中島と須藤がシンセに移行し、辻本と菅原のダンサー2人も再びステージに登場、そして米津玄師がハンドマイクで歌いながらフロアタムを打ち鳴らすという実に久しぶりな「アンビリーバーズ」の、
「だから手を取って僕らと行こうぜ ここではない遠くの方へ」
というフレーズがたった1人きりで生み出された米津玄師の音楽が、こんなにもたくさんの人と共有できるようになったという感慨を感じさせ、米津玄師はピックを客席に投げ入れ、初の武道館ワンマンを終えた。
武道館への思い入れというのは、その人のこれまでの人生によって変わる。関東に住んでいて、武道館に何度もライブを見に行ったことがある人はやはり武道館のステージに特別な思いを抱えているし、この日米津玄師が言ったように、地方出身の人は武道館にこれといって思い入れを持つ機会がないし、もはや武道館が聖地という考えそのものが古いロックファン特有の幻想なのかもしれない。
しかしそれでも我々ロックファンはこの武道館という場所で様々な集大成や挑戦、さらには最期までも目にしてきた。それは他の会場で見てきた景色とは全く違うものを生み出してきただけに、内容が直前のライブとほとんど同じだとよほどライブの質そのものが他の会場よりも大きく突出していないと、記憶に刻まれにくい。
で、この日のライブそのものがどうだったかというと、個人的にはパシフィコ横浜の時の方が良かったと感じている。果たして翌日にはそんな感情を吹き飛ばすくらいに、武道館に棲む魔物を自分の味方に引き寄せることができるだろうか。
そして、今週金曜日にドラマ主題歌としてオンエアされる新曲「Lemon」のお披露目はないのだろうか。
1.fogbound
2.砂の惑星
3.ナンバーナイン
4.飛燕
5.春雷
6.かいじゅうのマーチ
7.アイネクライネ
8.orion
9.LOSER
10.ゴーゴー幽霊船
11.爱丽丝
12.ドーナツホール
13.ピースサイン
14.Nighthawks
15.love
16.打上花火
17.Moonlight
18.灰色と青
encore
19.ゆめくいしょうじょ
20.Neighbourhood
21.アンビリーバーズ
灰色と青
https://youtu.be/gJX2iy6nhHc
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しかしながらこの男の場合はどうだろうか。徳島県出身という、武道館に憧憬が生まれにくい地方で生まれ育ち、ましてやボカロPというライブを行わない活動で世に登場した、米津玄師である。この日と翌日の日本武道館でのワンマンは、昨年11月にリリースされたアルバム「BOOTLEG」のツアーの追加公演ということで、その延長線上のものになるのか、それともこれまでの彼の音楽活動の集大成になるのか。
武道館でワンマンとなると、割と普段から激しいバンドでもアリーナは席指定というパターンも多いのだが、全席指定のホールツアーを行ってきたにもかかわらず、意外にもアリーナはオールスタンディング。
セット自体はそのホールツアーと変わらないが、両サイドに花道が伸びているのはやはり武道館ならではである。
19時を過ぎた頃、会場が真っ暗になると、アリーナスタンディングの観客たちが一斉に前に押し寄せる音が聞こえる中、ステージにはスモークが充満していき、米津玄師とメンバーがスモークの向こう側から姿を現わすとともに、ツアータイトルにもなっている「fogbound」の不穏なサウンドが鳴り始める。須藤はシンセベース、米津玄師がハンドマイクという編成は変わらないが、やはり武道館だからなのか、米津玄師の歌唱はやや緊張感を感じさせるものであり、YANKEE名義で渋谷のO-Crestで人生初めてライブを行った時のことを思い出させる。あの頃と違うのはギターを持たないだけにリズムに乗ってゆらゆらとたゆたうところや、メンバーの床にオイルアートなどの映像が映し出されるという、ホール以上のキャパだからこその演出。
「米津玄師です!よろしくお願いしまーす!」
とホールツアーに引き続いての、グイグイ前に出ようとする若手芸人のようなテンションの高さで米津玄師が挨拶すると、初音ミクのイベントのために書き下ろされた「砂の惑星」へ。最初のサビを歌い終わると米津玄師は
「武道館ー!」
とかつて数えきれないくらいたくさんの先人たちが叫んできたこの会場の名を叫ぶ。のだが、次の瞬間、「ゴトッ!」という音がはっきりと聞こえるくらいに盛大にマイクを落下させてしまい、2番の歌い出しが遅れるというとんでもないハプニングがあった。
武道館は聖地であると同時に魔物が棲んでいる場所でもある、とかつて誰かがこのステージで言っていたが、早くもこの序盤で米津玄師はその魔物から手招きされていたようだ。客席はかなり笑いが起こっていたけれど。
「ナンバーナイン」まではハンドマイクで歌っていた米津玄師がアコギを持って歌うギター&ボーカルになっての「飛燕」、米津玄師の新たなポップの形を描いた「春雷」ではメンバーの床に鮮やかな映像が映し出され、それがメンバーの背面に設置されている三角形の鏡状のオブジェに反射されて上から見ても正面から見ても楽しめる、米津玄師による米津玄師にしかできないライブを見せるという新たな演出も、ひと息入れる間も無く「BOOTLEG」の曲を連発していくというスタイルもホールツアーの時と変わらず、流れも全く同じ(12/15 パシフィコ横浜の時のレポ参照http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-455.html?sp)なのだが、序盤は緊張していたからか?と思っていた米津玄師の声が、明らかに先月の時よりも出ていない。特に高音部がやはりキツそうで、時折マイクを握りしめて叫んだりするというテンションの高さに肉体が追いついていないような感じがする。
それにつられてか、金髪の中島のギターも調子が悪いのか、機材がトラブっているのか、どこか外れているところが多いように感じたのは彼もまた武道館の魔物に手招きされていたのだろうか。
「もう本当にありがてぇ。ありがてぇしかないですよ、こうしてみなさんから力を貸していただいて。私なんかは普段からクソみたいな生活をしているんですが、こうして美しい瞬間をみんなで作り上げていこうじゃないですか!」
と言い回しこそ違えど、ホールツアーの時と同じニュアンスのことを語ると、米津玄師がリズムに乗って踊る「LOSER」では、ステージ脇から米津玄師のダンスの師匠である辻本知彦が登場し、あまりに独特かつ身体の構造が一般人とは遺伝子レベルから違うんじゃないか?と思うくらいのしなやかな動きで踊り、もはやその姿にばかり目がいくというくらい。
「ゴーゴー幽霊船」からはアッパーなバンドサウンドにギアチェンジしていくが、個人的に本調子ではなかったと見ているこの日において、飲み仲間ミュージシャンたちとともに作った「爱丽丝」は声が本調子ではないなりのエモーションを発揮していたが、それが映えるのはやはりこの曲が基本的にバンドサウンドで成り立っている曲だからであろう。またそのバンドのサウンド、とりわけ堀がドラムを強く一音叩くところなどはその音に同期したような床の映像であり、このあたりは音と映像、聴覚と視覚の両方で楽しめるだけに、こうして複数回ライブを見るたびに新たな発見がある。
米津玄師と中島に合わせて観客も二本指を武道館の天井、それすなわち日の丸に向かって掲げる「ピースサイン」から米津玄師の音楽の出発点であるギターロックへの憧憬を鳴らした「Nighthawks」では演出よりもバンドそのものの強さを押し出していくようだったが、ステージの前に紗幕が降りてから演奏された、ロッキンオンジャパンの連載「かいじゅうずかん」を単行本化する際に書き下ろされた「love」では壮大な映像が武道館を異世界に染め上げていく。
武道館ワンマン、というとついつい普段とは違う特別なことを求めてしまうのがファンの性、ということでこの日も「BOOTLEG」でコラボレートした人たちの登場と初の共演を期待していたところがあったのだが、冒頭の「fogbound」の池田エライザはもちろん、「打上花火」でのDAOKOも、ラスト「灰色と青」での菅田将暉もゲスト登場せず、米津玄師のボーカルのみというのは逆にライブならではとも言える。
しかしそんな中で「BOOTLEG」の中でも最も不穏かつダークな
「自分の頭今すぐ引っこ抜いて それであなたとバスケがしたい」
というおどろおどろしさすら感じるフレーズが出てくる「Moonlight」では米津玄師の友人であるダンサーの菅原小春が鹿のぬいぐるみを持って登場し、米津玄師の側でへたり込みながら、徐々に立ち上がって米津玄師に絡みつかんとするかのような、あまりにアバンギャルド過ぎない?と思うようなパフォーマンスを見せる。
そしてラストの「灰色と青」では米津玄師の幼少期からの成長と成熟を感じさせる、でも蒼さが確かに残っているかのような感情に浸っていると、最後に赤と青の鮮やかなテープが客席に照射されるという武道館ならではの演出も発揮すると、米津玄師はそそくさとステージから去っていった。
アンコールではやはりステージ前に紗幕が降ろされ、そこに曲の歌詞をそのまま可視化したかのような少女らの映像が映し出される向こう側で米津玄師が歌っている姿がうっすらと見える「ゆめくいしょうじょ」をまずは披露するのだが、元々はボカロP時代に「沙上の夢喰い少女」として世に発表された、この日演奏された曲の中でも最も古い曲。当時この曲をたった1人で家で作り、目の前の人ではなく画面の向こう側の人たちへ発信していた米津玄師はこうして武道館でこの曲がバンドメンバーたちとともに演奏されるようになることを想像していただろうか?
とも思うが、その後のMCでの、米津玄師と少年時代からの友人である中島の、客席を全くリアクション取れないくらいの空気に叩き込んだ妄想武道館の歴史トークを聞いていると、彼らには武道館だからこその感慨や、そこに至るまでのストーリーは全くと言っていいくらいにないのだろう。
ただ、
「武道館をやるって発表してからいろんな人から、おめでとう!って言ってもらった」
と言っていたように、周囲の人の祝福によって実感が湧いたところも多少はあったようだ。
「本当に私は1人では何もできなくて。こうしていろんな人に支えられながら音楽ができているんだな、って思うんだけど、言葉にするとなんか嘘くさくなってしまうというか…」.
と感情と言葉の堂々巡りが始まる中、
「宮沢賢治の「春と修羅」っていう詩集があって。その中に俺が凄い好きな一節があって」
と言って整理できない感情をその一節に託すと、サウンドのみならず照明までもが温かい空気を作り出す「Neighbourhood」で終了…と思いきや、中島と須藤がシンセに移行し、辻本と菅原のダンサー2人も再びステージに登場、そして米津玄師がハンドマイクで歌いながらフロアタムを打ち鳴らすという実に久しぶりな「アンビリーバーズ」の、
「だから手を取って僕らと行こうぜ ここではない遠くの方へ」
というフレーズがたった1人きりで生み出された米津玄師の音楽が、こんなにもたくさんの人と共有できるようになったという感慨を感じさせ、米津玄師はピックを客席に投げ入れ、初の武道館ワンマンを終えた。
武道館への思い入れというのは、その人のこれまでの人生によって変わる。関東に住んでいて、武道館に何度もライブを見に行ったことがある人はやはり武道館のステージに特別な思いを抱えているし、この日米津玄師が言ったように、地方出身の人は武道館にこれといって思い入れを持つ機会がないし、もはや武道館が聖地という考えそのものが古いロックファン特有の幻想なのかもしれない。
しかしそれでも我々ロックファンはこの武道館という場所で様々な集大成や挑戦、さらには最期までも目にしてきた。それは他の会場で見てきた景色とは全く違うものを生み出してきただけに、内容が直前のライブとほとんど同じだとよほどライブの質そのものが他の会場よりも大きく突出していないと、記憶に刻まれにくい。
で、この日のライブそのものがどうだったかというと、個人的にはパシフィコ横浜の時の方が良かったと感じている。果たして翌日にはそんな感情を吹き飛ばすくらいに、武道館に棲む魔物を自分の味方に引き寄せることができるだろうか。
そして、今週金曜日にドラマ主題歌としてオンエアされる新曲「Lemon」のお披露目はないのだろうか。
1.fogbound
2.砂の惑星
3.ナンバーナイン
4.飛燕
5.春雷
6.かいじゅうのマーチ
7.アイネクライネ
8.orion
9.LOSER
10.ゴーゴー幽霊船
11.爱丽丝
12.ドーナツホール
13.ピースサイン
14.Nighthawks
15.love
16.打上花火
17.Moonlight
18.灰色と青
encore
19.ゆめくいしょうじょ
20.Neighbourhood
21.アンビリーバーズ
灰色と青
https://youtu.be/gJX2iy6nhHc
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