KEEP ON ROCKIN' ~フェスのベストアクトであり続けた、THE BAWDIESの2017年~
- 2018/01/05
- 21:51
フェスに行くと、一日が終わった後に必ず頭に浮かんだり、一緒に行った人と最初に話したりするのは、「今日のベストアクトは誰だったのか?」ということである。
で、これは自論であるが、そのフェスにおけるベストアクトは普段からワンマンに行っていたり、しょっちゅうライブを見に行っているアーティストよりも、初めてライブを見たり、かなりのスパンをおいて見たりするアーティストになることが多い。
それはやはり普段からワンマンに行っているアーティストは、ワンマンの2時間に比べると30分~40分くらいというフェスでの持ち時間は物足りなく感じてしまうし、どうしても聴き慣れている代表曲の並んだセトリになってしまうので、
「あの曲聴きたかったな~」
「この曲とかライブで聴き過ぎて飽きたな」
という心境になってしまいがちである。
よって、自分が先日のCOUNTDOWN JAPAN 17/18では初めてライブを見たSKY-HIや、前年のこのフェスで見て以来にライブを見たヒトリエというあたりがなかなかに衝撃的であり、ベストアクトとしてすぐに名前が出てきた。
しかしそれよりも真っ先に名前が出てきたバンドがいる。それは初めてライブを見るでもなければ、久しぶりに見たわけでもない、むしろ年間何回ライブを見たかわからないくらいにライブを見ている、THE BAWDIESである。
THE BAWDIESのフェスでの戦い方は実にわかりやすい。初めてライブを見る人のために、フェスで演奏する曲がほとんど代表曲で決まっていて、新曲が出ればそこにそれが入る、というスタイル。エレファントカシマシやサンボマスターという先輩バンドと同じ戦い方と言っていいだろう。
なので、「THE BAWDIES セトリ」でツイッターなどで検索をかけると、ほとんどが同じような内容である。そのセトリの文字列だけを見ると、「いつものフェスセトリだな」と思う人もたくさんいるだろうし、ワンマンに行ってるような人には物足りないだろうな、と感じるかもしれない。
しかし自分は今の今まで、何回見たか数えきれない、THE BAWDIESのフェスでのライブに飽きたことがない。それはそもそもTHE BAWDIESがひたすらにライブの凄さでもってたくさんの人を巻き込み、THE BAWDIES登場時まで全く流行っていないどころか、他に似た存在すらシーンにいなかった、ガレージロックンロールで日本武道館や横浜アリーナまでも制覇し、巨大フェスでもメインステージに立つようになった、というくらいの生粋のライブバンドだからであるが、2017年、THE BAWDIESのフェスにおける状況はこれまでと少し違っていた。
そもそも来場者数が少なかった、チケットぴあのフェスのメインステージ出演が人が少なかったのは仕方ないが、最も2017年にターニングポイントになったフェスは、LAKE STAGEのトリを務めたROCK IN JAPAN FES.でのライブだろう。
その時間、メインステージのGRASS STAGEでライブを行なっていたのは、日本の音楽シーンの生きるレジェンド、桑田佳祐。その裏を任されたのは、このバンドなら大丈夫だ、というフェス側からの信頼があったからこそだが、いざライブが始まると、LAKE STAGEはこれまでのTHE BAWDIESのこのフェスにおいては最も隙間が目立つものとなった。
しかし、THE BAWDIESはそんなアウェーな状況で、自分たちの力を100%出すどころか、秘められていた力をさらに発揮するような素晴らしいライブをやってみせた。そこにはライブ前に、同じ時間に違うステージでライブをする桑田佳祐自ら、
「お互い最高のライブでこの日を締めくくろう」
とTHE BAWDIESに握手をしに来た、という激励にテンションが上がったというのもあるだろう。それに加え、そのアウェーな状況が、ブレイク前の自分たちの姿を思い出させたところもあったんじゃないだろうか。
まだメンバーがみんなビートルズよろしくなマッシュルームカットだった頃、地下の小さいライブハウスのガラガラのステージでひたすらに自分たちの信じるロックンロールを鳴らしていた時。そこからTHE BAWDIESはライブでそんな状況をひっくり返し続けてきた。今となってはそんな経験は日本ではなかなかできないくらいの立ち位置まで来ただけに、そんな感覚は久しぶりだったんじゃないだろうか。
そしてそんな状況でも、THE BAWDIESのメンバーはいっさいネガティヴなことなんかは口にしないし、自虐的なことも言わない。目の前にいてくれる人たちを心から楽しませるために、そんなことを言う必要はないのだ。
だからこそその日、TAXMANは自身のメインボーカル曲の間奏で
「お前ら、騒ぎたいんだろー!」
という言葉を他のメンバーが笑うくらいに叫び続け、ツアーで足を骨折して椅子に座ってライブをしていたJIMは最後には誰にも何にも支えられることなく、立ち上がってギターを弾こうとするほどの気合いをステージから発していた。
デビューから10年。ただ単に10年続けてきたわけじゃない、ロックをロールさせ続けてきた10年だ。その10年の中で得てきた経験によって、演奏技術は格段に向上して音に説得力が増すとともに、メンバーそれぞれが自分が演奏している姿をどう見せるべきか?という部分を意識し、そこをしっかり磨き続けてきたことが今のTHE BAWDIESのライブからははっきりとわかる。
しかし長く続けていると、経験を経ることによって忘れたり、失くしてしまうものがある。それはバンドを始めた時のような衝動である。それはロックバンドにおいては技術なんかよりもはるかに重要なものだが、THE BAWDIESは今年のフェスにおける逆境を経験したことで、もう一回その衝動をバンドに取り戻してみせたのだ。
経験と衝動。本来なら両立しようのない2つの要素が奇跡的なバランスで共存しているのが今のTHE BAWDIESなのである。
ロッキン以降のTHE BAWDIESのライブも圧巻そのものだった。最多出演を誇るSWEET LOVE SHOWERでも、若手の急上昇バンドであるTHE ORAL CIGARETTESの真裏という時間になったことによって、やはり逆境というような状況だったが、JIMがこの日から立ってギターを弾けるようになったという状況もあり、見事に逆境をはねのけてみせ、俺たちがこのフェスの代表だ、という意志を演奏によって示してみせた。
ベテランの存在感には敵わないし、若手バンドの話題性やきらめきにも敵わない。10年というのは難しい立ち位置だが(数年前までTHE BAWDIESも確かに話題性やきらめきに溢れていたが)、だからこそできることや見せられるものがある。
そして2017年最後のライブとなったCOUNTDOWN JAPAN 17/18 12月30日のGALAXY STAGE。先に同じステージに出演したBase Ball Bearの小出が、
「今年は同世代のバンドに解散や活動休止、脱退、体調不良というニュースがたくさんありましたが、今日はこのGALAXY STAGEには同世代のバンドばかりが出てきます。10年を超えた中堅の底力を存分に発揮されて欲しいです」
と言った。今の代表曲を更新するような新たなキラーチューンが欲しいという気持ちもあるが、THE BAWDIESは解散はもちろん、脱退もなければ、JIMが骨折しても休止もしなかった。それでも自分が2017年に最も底力を見せつけられ、出るフェス出るフェスでベストアクトをかっさらっていったTHE BAWDIESだった。
さらに進化した「JUST BE COOL」のライブを締めるにふさわしいアレンジ。2010年にこのステージで年越しを務めた時と同じように超満員となった客席は、THE BAWDIESの2017年のライブが素晴らしいものであったことを示すと同時に、2018年にデビュー10周年を迎えるバンドのこれからに光を照らしているようにも見えた。
なぜわざわざこういうことを書いたのかというと、今のTHE BAWDIESのライブをたくさんの人に見て欲しいのだ。それはまだ見たことない人もそうだが、かつてこのバンドのライブを見ていたが、今は見ることがめっきりなくなった人にこそ見て欲しい。その当時よりもはるかにとんでもないライブバンドになっているから。
そしてまた、もっと大きなところで、たくさんの人たちとこのバンドのロックンロールをSING YOUR SONGしたいのだ。
Next→ 1/9 米津玄師 @日本武道館
で、これは自論であるが、そのフェスにおけるベストアクトは普段からワンマンに行っていたり、しょっちゅうライブを見に行っているアーティストよりも、初めてライブを見たり、かなりのスパンをおいて見たりするアーティストになることが多い。
それはやはり普段からワンマンに行っているアーティストは、ワンマンの2時間に比べると30分~40分くらいというフェスでの持ち時間は物足りなく感じてしまうし、どうしても聴き慣れている代表曲の並んだセトリになってしまうので、
「あの曲聴きたかったな~」
「この曲とかライブで聴き過ぎて飽きたな」
という心境になってしまいがちである。
よって、自分が先日のCOUNTDOWN JAPAN 17/18では初めてライブを見たSKY-HIや、前年のこのフェスで見て以来にライブを見たヒトリエというあたりがなかなかに衝撃的であり、ベストアクトとしてすぐに名前が出てきた。
しかしそれよりも真っ先に名前が出てきたバンドがいる。それは初めてライブを見るでもなければ、久しぶりに見たわけでもない、むしろ年間何回ライブを見たかわからないくらいにライブを見ている、THE BAWDIESである。
THE BAWDIESのフェスでの戦い方は実にわかりやすい。初めてライブを見る人のために、フェスで演奏する曲がほとんど代表曲で決まっていて、新曲が出ればそこにそれが入る、というスタイル。エレファントカシマシやサンボマスターという先輩バンドと同じ戦い方と言っていいだろう。
なので、「THE BAWDIES セトリ」でツイッターなどで検索をかけると、ほとんどが同じような内容である。そのセトリの文字列だけを見ると、「いつものフェスセトリだな」と思う人もたくさんいるだろうし、ワンマンに行ってるような人には物足りないだろうな、と感じるかもしれない。
しかし自分は今の今まで、何回見たか数えきれない、THE BAWDIESのフェスでのライブに飽きたことがない。それはそもそもTHE BAWDIESがひたすらにライブの凄さでもってたくさんの人を巻き込み、THE BAWDIES登場時まで全く流行っていないどころか、他に似た存在すらシーンにいなかった、ガレージロックンロールで日本武道館や横浜アリーナまでも制覇し、巨大フェスでもメインステージに立つようになった、というくらいの生粋のライブバンドだからであるが、2017年、THE BAWDIESのフェスにおける状況はこれまでと少し違っていた。
そもそも来場者数が少なかった、チケットぴあのフェスのメインステージ出演が人が少なかったのは仕方ないが、最も2017年にターニングポイントになったフェスは、LAKE STAGEのトリを務めたROCK IN JAPAN FES.でのライブだろう。
その時間、メインステージのGRASS STAGEでライブを行なっていたのは、日本の音楽シーンの生きるレジェンド、桑田佳祐。その裏を任されたのは、このバンドなら大丈夫だ、というフェス側からの信頼があったからこそだが、いざライブが始まると、LAKE STAGEはこれまでのTHE BAWDIESのこのフェスにおいては最も隙間が目立つものとなった。
しかし、THE BAWDIESはそんなアウェーな状況で、自分たちの力を100%出すどころか、秘められていた力をさらに発揮するような素晴らしいライブをやってみせた。そこにはライブ前に、同じ時間に違うステージでライブをする桑田佳祐自ら、
「お互い最高のライブでこの日を締めくくろう」
とTHE BAWDIESに握手をしに来た、という激励にテンションが上がったというのもあるだろう。それに加え、そのアウェーな状況が、ブレイク前の自分たちの姿を思い出させたところもあったんじゃないだろうか。
まだメンバーがみんなビートルズよろしくなマッシュルームカットだった頃、地下の小さいライブハウスのガラガラのステージでひたすらに自分たちの信じるロックンロールを鳴らしていた時。そこからTHE BAWDIESはライブでそんな状況をひっくり返し続けてきた。今となってはそんな経験は日本ではなかなかできないくらいの立ち位置まで来ただけに、そんな感覚は久しぶりだったんじゃないだろうか。
そしてそんな状況でも、THE BAWDIESのメンバーはいっさいネガティヴなことなんかは口にしないし、自虐的なことも言わない。目の前にいてくれる人たちを心から楽しませるために、そんなことを言う必要はないのだ。
だからこそその日、TAXMANは自身のメインボーカル曲の間奏で
「お前ら、騒ぎたいんだろー!」
という言葉を他のメンバーが笑うくらいに叫び続け、ツアーで足を骨折して椅子に座ってライブをしていたJIMは最後には誰にも何にも支えられることなく、立ち上がってギターを弾こうとするほどの気合いをステージから発していた。
デビューから10年。ただ単に10年続けてきたわけじゃない、ロックをロールさせ続けてきた10年だ。その10年の中で得てきた経験によって、演奏技術は格段に向上して音に説得力が増すとともに、メンバーそれぞれが自分が演奏している姿をどう見せるべきか?という部分を意識し、そこをしっかり磨き続けてきたことが今のTHE BAWDIESのライブからははっきりとわかる。
しかし長く続けていると、経験を経ることによって忘れたり、失くしてしまうものがある。それはバンドを始めた時のような衝動である。それはロックバンドにおいては技術なんかよりもはるかに重要なものだが、THE BAWDIESは今年のフェスにおける逆境を経験したことで、もう一回その衝動をバンドに取り戻してみせたのだ。
経験と衝動。本来なら両立しようのない2つの要素が奇跡的なバランスで共存しているのが今のTHE BAWDIESなのである。
ロッキン以降のTHE BAWDIESのライブも圧巻そのものだった。最多出演を誇るSWEET LOVE SHOWERでも、若手の急上昇バンドであるTHE ORAL CIGARETTESの真裏という時間になったことによって、やはり逆境というような状況だったが、JIMがこの日から立ってギターを弾けるようになったという状況もあり、見事に逆境をはねのけてみせ、俺たちがこのフェスの代表だ、という意志を演奏によって示してみせた。
ベテランの存在感には敵わないし、若手バンドの話題性やきらめきにも敵わない。10年というのは難しい立ち位置だが(数年前までTHE BAWDIESも確かに話題性やきらめきに溢れていたが)、だからこそできることや見せられるものがある。
そして2017年最後のライブとなったCOUNTDOWN JAPAN 17/18 12月30日のGALAXY STAGE。先に同じステージに出演したBase Ball Bearの小出が、
「今年は同世代のバンドに解散や活動休止、脱退、体調不良というニュースがたくさんありましたが、今日はこのGALAXY STAGEには同世代のバンドばかりが出てきます。10年を超えた中堅の底力を存分に発揮されて欲しいです」
と言った。今の代表曲を更新するような新たなキラーチューンが欲しいという気持ちもあるが、THE BAWDIESは解散はもちろん、脱退もなければ、JIMが骨折しても休止もしなかった。それでも自分が2017年に最も底力を見せつけられ、出るフェス出るフェスでベストアクトをかっさらっていったTHE BAWDIESだった。
さらに進化した「JUST BE COOL」のライブを締めるにふさわしいアレンジ。2010年にこのステージで年越しを務めた時と同じように超満員となった客席は、THE BAWDIESの2017年のライブが素晴らしいものであったことを示すと同時に、2018年にデビュー10周年を迎えるバンドのこれからに光を照らしているようにも見えた。
なぜわざわざこういうことを書いたのかというと、今のTHE BAWDIESのライブをたくさんの人に見て欲しいのだ。それはまだ見たことない人もそうだが、かつてこのバンドのライブを見ていたが、今は見ることがめっきりなくなった人にこそ見て欲しい。その当時よりもはるかにとんでもないライブバンドになっているから。
そしてまた、もっと大きなところで、たくさんの人たちとこのバンドのロックンロールをSING YOUR SONGしたいのだ。
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