COUNTDOWN JAPAN 17/18 day3 @幕張メッセ 12/30
- 2018/01/01
- 07:36
いよいよ3日目。この前の2日も実にあっという間だった。
12:00~ 9mm Parabellum Bullet [GALAXY STAGE]
このステージの前説担当である、メディア1の9mmファンことロッキンオンジャパン総編集長の山崎洋一郎が紹介でひたすらに9mmのことを「ヤバい」と評す、という音楽評論家としてその語彙力はどうなんだ、と心配になる中、いつものようにAtari Teenage RiotのSEで登場したメンバー。だが最近と違うのは、その中に負傷で休養していた滝がいることである。
なので、当然キャップを被った滝が登場すると大きな歓声が上がり、滝もギターを掲げてその声に応えながら、滝が離脱中にバンドを支えてきた最強のサポートギターの2人である武田と為川も加えた、ギター4本の6人編成で「Black Market Blues」からスタートし、
「COUNTDOWN JAPANにたどり着いたぜー!」
と卓郎が歌詞を変える頃には完全にここにいる人たち全員が9mmの仲間入りしている。
卓郎がハンドマイクになり、ギターを滝と武田、為川に任せて歌う「ハートに火をつけて」はサポートを加えた編成の中で会得したパフォーマンスであり、それが滝が復帰した状態でも続いているということは、卓郎がフロントマンとして、ボーカリストとしてライブを盛り上げようとしている意志の表れ。
「Discommunication」ではサビで大合唱を巻き起こすと、山崎洋一郎が「最高傑作」と評した2017年リリースのアルバム「BABEL」からタイトルトラック的な「バベルのこどもたち」を分厚いギターサウンドで演奏するのだが、サポート2人を加えて完成したと思っていた「BABEL」の曲が、滝がギターを弾くことによりさらに完成度が上がっている。あれだけ新たな9mmのライブとしての姿を見せてくれたツアーやライブに、まだまだ伸び代があった。ということは滝が入った状態でもう一度「BABEL」ツアーをやったらどうなるんだろうか。
さらに髪が伸び続けている和彦がベースでイントロのコードを弾くという、これもまた滝離脱時にメンバーとして滝の不在をカバーしようとしていた和彦の姿勢が、滝が復帰しても続いている。結果的に滝の不在期間はそれぞれのメンバー(ツアーではかみじょうもコーラスをやるようになっていた)の音楽家としてのスキルやレベルをさらに上げることになったし、バンドとしてできることが格段に増えた。ということは、滝の不在期間は決して無駄な時間でもなければ、9mmが本領発揮できなかった時間でもなかったということ。
卓郎の「行けるかー!」の後からはさらにバンドの演奏は加速し、滝が鬼のようにギターを弾きまくる「太陽が欲しいだけ」では卓郎が
「勘違いじゃなくて、滝はここでギターを弾いている!」
と叫んで大歓声が上がる。このメンバーでこうしてライブができている喜びが6人全員から溢れかえっている。
「新しい光」でさらに大合唱を起こすと、ツアーでは滝のイントロのタッピングをステージ上のメンバーが演奏しないという形が取られていた「ロング・グッドバイ」も滝がフルにタッピングを弾きまくるという形で再現される。山崎洋一郎な「BABEL」を最高傑作と評していたが、滝がいない状態の「BABEL」はやはりまだ完成形ではなかったのだ。こうして滝が音源通りに、いや音源以上のギターを弾くことによって、初めて(一応昭和女子大学でのワンマンでもこの曲を滝がステージで弾いたけど)「BABEL」は完成するのである。つまり、「BABEL」は今まで我々が聴いてきたのよりも今の方がさらにすごいアルバムだったのである。
そしてラストは滝が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくり、ギターを弾かずに暴れまくるおなじみの「Punishment」なのだが、間奏ではメンバーの後ろでギターを弾いていた武田と為川が前方にジャンプしてメンバーに並び、6人が全員横並びで演奏するというとんでもない状態に。これは4人の9mmでも見られなかったし、滝不在時も見れなかった、過去最強の「Punishment」だった。
だからこそ、終わった後には本当に清々しい気持ちになった。かつて、9mmのライブでは毎回のように感じていたこの爽快感も、忘れかけてしまっていた。
それは滝が離脱する前は、あの滝のギターや暴れっぷりまでもが、あって当然というふうに我々は慣れてしまっていたから。でもそれは当たり前のものでも当然のものでもなく、このメンバーが揃っているからこそ見れる、奇跡のようなものだったのだ。バンド側も、ファン側もそのことにちゃんと気づいている。ただただかっこいい9mmが戻ってきたんじゃなくて、今までで最強の9mmになって戻ってきたのである。
ただ、持ち時間が5分多いEARTHなら、9mmはあと2曲はできたし、実際に3年前までEARTHに出ていた時は平気で10曲以上やっていた。でもGALAXYでもトリではなくてトップバッターにしたのは、滝が帰ってきた愛する9mmを山崎洋一郎は自分が紹介して、自分がステージに招きたかったからなんじゃないかと思う。実際、最初は「ヤバい」しか言ってない語彙力が心配だったが、見終わった今は本当に「ヤバい」としか思えないくらいに山崎洋一郎の表現は的を得ていたし、山崎洋一郎がいる間は、ロッキンのフェスでは間違いなく毎年9mmのライブが見れる。
1.Black Market Blues
2.ハートに火をつけて
3.Discommunication
4.バベルのこどもたち
5.黒い森の旅人
6.太陽が欲しいだけ
7.新しい光
8.ロング・グッドバイ
9.Punishment
ハートに火をつけて
https://youtu.be/pWH11t2JKds
13:15~ NICO Touches the Walls [EARTH STAGE]
かつては古村が怪我をして出演キャンセルということもあったが、もはや完全にEARTH STAGEがおなじみになっている、NICO Touches the Walls。この幕張メッセでは先月にバンド主催フェスを行い、かつてはASTRO ARENAでもワンマンをやったりという、千葉県出身バンドならではの幕張メッセとの強い縁。
メンバーが出てきてのサウンドチェックで早くもキラーチューンを演奏していただけに、果たして本編は?と思っていると、いきなりの「天地ガエシ」でスタートし、もはやおなじみのサポートメンバーの浅野尚志がヴァイオリンで美しい旋律を奏でる。光村の声も本当にこの男にスランプというか、調子の悪い日があるのかと思うくらいに伸びやかだが、何よりもステージいっぱいに動きながらギターを弾く古村の笑顔がいい。
早くもここでMCを挟むのだが、
「11月にデビュー10周年を迎えまして。なので普段フェスではあんまりそういうことしないんですけど、これまでに出した6枚のアルバムから1曲ずつ演奏しようと思います。良い曲ばかりです!」
とこの日のライブのコンセプトを発表。「OYSTER EP」がリリースされたばかりだし、実際に各地のイベントやフェスではその収録曲が多く演奏されているみたいだが、こうしたバンドの歴史を感じさせるようなパフォーマンスができるのは、NICOがこのフェスに若手だった時代からずっと出演し続け、このフェスの歴史を自分たちが作り、自分たちの歴史もこのフェスでのライブによって作られてきたからだという思いもあるのだろう。自分たちが徐々に大きいステージに出演できるようになり、この最大規模にして持ち時間が長いEARTH STAGEに出れるようになったからこそできることでもあるが。
で、そうした過去曲、ましてやレア曲を含んだセトリをフェスでやるのはかなり攻めた姿勢であるし、時には再結成したバンドが昔のヒット曲を往年のアレンジのままに演奏するという懐古主義的なものになりがちなのだが、今のNICOにはそうなる要素が全くないというのは、近年のライブにおいて過去曲を大胆にアレンジして、過去曲なんだけれど最新形の今しかできない曲に昇華しているというバンドの姿勢にある。
なので光村がアコギを弾く「ロデオ」はより情熱的かつスパニッシュに、光村と古村が向かい合ってギターを弾き合う「ストロベリーガール」はより妖艶になり、このレア曲の中でも最も古い曲である「エトランジェ」は今のバンドの技術と光村の歌唱力だからこそ、曲のメロディの美しさという真価がより発揮されているように感じた。
個人的にはこの会場で聴く「N極とN極」がとりわけ感慨深いのは、初の武道館ワンマンを終え、バンドがGALAXY STAGEをようやく埋められるようになった年に、マキシマム ザ ホルモンの真裏というなかなか厳しい位置で出演したのだが、その時に聴いたこの曲が本当に素晴らしくて、ライブ後に光村と対馬が肩を組んでステージを去っていくというくらいにメンバーも手応えを感じたライブの時にやっていたからである。
しかし過去のアルバムから1曲ずつというコンセプトであっても、全てがアルバム曲、レア曲ではないようだ、というのはその後に演奏された2曲がシングル曲だったからであり、NICOファンの誰しもが「東京オリンピックやるんならこの曲をテーマソングに使ってくれ!」と思っているであろう「TOKYO Dreamer」、そしてバンドの代表曲と言える「手をたたけ」と、結果的にはレア曲ばかりに寄せるようなマニアックなものにならずに、しっかりとメインステージに出るバンドとしてのバランスを取るような内容になっていた。
そしてラストに演奏されたのは最新作からのご機嫌なロックンロール「Funny Side Up!」で、過去を振り返りながらも最後にはしっかり最新の自分たちを見せ、10年を超えたこれからのバンドの活動にさらなる期待を抱かせるものになった。それはこれまでもこのバンドがライブで見せ続けてきてくれたものである。
リハ1.THE BUNGY
リハ2.マシ・マシ
1.天地ガエシ
2.N極とN極
3.ロデオ
4.ストロベリーガール
5.エトランジェ
6.TOKYO Dreamer
7.手をたたけ
8.Funny Side Up!
Funny Side Up!
https://youtu.be/lAJWx1aMO40
14:10~ THE BACK HORN [GALAXY STAGE]
毎回GALAXY STAGEに出演しているようなバンドが多く並んだこの日のGALAXY STAGEの出演者の中でも、このフェスの創成期からずっとGALAXYに出演し続けているという、まさにGALAXYの番人と言っていい、THE BACK HORN。今年も当然のようにGALAXYに登場である。
おなじみの壮大なSEで登場すると、この日のオープニングはかつてのライブ定番曲である「サニー」。先日のACIDMANのフェスでは「光の結晶」をやっていたが、こうして幅広い時期の曲を常にライブでできる状態にあるというのはマニアックヘブンというレア曲を中心としたライブをやったり、常にライブをして生きているバンドだからであろう。
和の要素を感じせるという意味ではこのバンド特有の要素である「声」を経ると、来年でバンドが20周年を迎える記念イヤーに突入することを宣言するのだが、20周年になろうというのに松田のMCは全く上手くならないし、訛りが取れることもない。これはきっと一生変わらないものなんだろう。
そしてベストアルバムに収録された最新曲「グローリア」から、この日のバラード枠は「あなたが待ってる」。同じバラード枠の「美しい名前」とかとは全く違う、温もりや人の体温を感じさせる曲。THE BACK HORNがこうした曲を作るようになるとは、バンドのコンポーザーである栄純が今そうした人生を過ごしているということなのだろうか。
しかしながらそうした一面もありながらも、このバンドの最大の持ち味は野性や凶暴性、ということで将司が
「来年は戌年ということで、行き場のない野良犬みたいな奴らのために、ダックスフンドのような…いや、ブルドッグのような顔で叫び続けていくから!これからもよろしく!」
と戌年にかけた上手い言葉で宣言すると、「孤独を繋いで」からは「コバルトブルー」とバンドの持ち味が最大限に発揮される。そしてこの日それを最も牽引していたのは、ベースの光舟である。何度もベースを弾きながら観客を煽り、腕を高く突き上げる。そしてラストの「刃」では勇壮なコーラスを響かせたかと思いきや、マイクスタンドをぶっ倒すという暴れっぷり。普段から言葉で人を引っ張るような人ではないが、こうした姿勢で見ている人を熱くしてくれる。この4人だからこそ、THE BACK HORNなのであり、THE BACK HORNこそが最強の野良犬なのである。
1.サニー
2.声
3.グローリア
4.あなたが待ってる
5.孤独を繋いで
6.コバルトブルー
7.刃
孤独を繋いで
https://youtu.be/5_oTpKahrRo
15:15~ BIGMAMA [GALAXY STAGE]
バンド初の武道館ワンマンを見事に成功させ、メジャーへの引越しも決まるなど、そこまではBIGMAMAはここに来てさらに絶好調と言えるように見えた。
しかしながらその直後から、金井がやる気がないような、精神が不安定なようなライブを見せるようになり、さらにはブログが大炎上し、ネット上も騒然となった。
だからこそ、この日、ちゃんと満足するようなライブを見せてくれるのか。楽しみよりも不安な気持ちの方が強かった。
ベートーベン「第九」的なSEでメンバーが登場すると、金井が
「COUNTDOWN JAPAN、ご案内しましょう、シンセカイへ!」
と宣言し、「荒狂曲”シンセカイ”」からスタート。
ハードロックのように重いサウンドの「ファビュラ・フィビュラ」、安井のゴリゴリのベースが躍らせる「Swan Song」と幅広い曲が続くのだが、金井の顔には夏までのような笑顔はない。ただただ、こうしてファンが愛してくれる曲を全力で歌うのみ、という、ある意味では吹っ切れたかのような歌い方になっている。さらに今までよりもかなり痩せてしまったようにも見える。
金井がアコギに持ち替えた「春は風のように」という選曲はファンを喜ばせ、続く「CRYSTAL CLEAR」では
「限りなく透明な 僕らの愛に一点の曇りなし」
と歌われる。自分はあの一連のブログの騒動は金井本人によるものだと思った上でこうして書いている(わざわざ全然違う人があんなことを書く意味なんかない)のだが、本当に今「一点の曇りなし」言い切れるような状態なのか。もしそうでないのならば、嘘になってしまう。しかし金井の表情は確かにこの曲の歌詞を歌えるような覚悟に満ちていた。もちろんそうなってしまったのは自分自身の行動のせいであるのだが、生み出した曲や音楽には一切の非はない。だが、そうした自分の子供のような、ファンが自分の人生を重ねてきたような大事な曲たちを、一度は自分の手で殺そうとしてしまった。この日の金井のシリアスでしかなかった表情は、その曲たちへの贖罪であるかのように見えた。
しかし「No.9」で途中でギターを置いてハンドマイクになった金井は、この日初めて少しの笑顔を見せた。ちゃんと自分の作った音楽を、こんなにたくさんの人が聴きにきてくれて、想いを共有することができている。その景色が金井に笑顔をもたらしてくれたんだろう。
そしてダンスミュージックの要素を強く含んだ「MUTOPIA」から、最後に披露されたのは新曲。疾走するようなメロコアサウンドに東出のヴァイオリンが絡んでいく。まるで昔、初めてBIGMAMAの曲を聴いた時のような清々しさを感じた。それは、このバンドが動き出した時のような原点に今一度立ち還らなければならないという意思によるものなのだろうか。
演奏が終わると、1人ずつステージを去る中、金井が笑顔をほとんど見せないのをカバーするかのように、自身のカメラに目線を向けて演奏したりしていたリアドが笑顔で観客の声に応えていた。自分が金井と一緒にバンドをやっていたとして、こういう状況になった時に今までと全く変わらないように接することができるかはわからないが、このバンドのメンバーはそんな金井をしっかり支え、バンドをさらに前進させていこうとしている。決してド派手だったり、主張が強いようなメンバーたちではないが、これまでで最もその存在を心強く感じている。
リハ.最後の一口
1.荒狂曲”シンセカイ”
2.#DIV/0!
3.ファビュラ・フィビュラ
4.Swan Song
5.春は風のように
6.CRYSTAL CLEAR
7.No.9
8.MUTOPIA
9.新曲
CRYSTAL CLEAR
https://youtu.be/sursVprvwl0
16:20~ Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
9mm同様に、数年前まではEARTHに出演していた、Base Ball Bear。近年はGALAXYがおなじみになりつつある。
サウンドチェックでメンバー全員が出てきて「GIRLFRIEND」を演奏するというサービス精神を見せてくれると、本番で弓木英梨乃を含めた4人が登場すると、全員が堀之内のドラムセット前に集まり、堀之内が一人一人にスティックを向けて入念な会議が行われると、「ドラマチック」からスタートし、もう完全に気分は夏フェスに。近年はファンクやブラックミュージックのグルーヴを取り入れたサウンドに取り組んだりしているが、やはりベボベのイメージは未だにこうした夏の曲である。同年代のバンドにここまで夏の名曲をたくさん作ってきたバンドもそうそういないし。
「LOVE MATHEMATICS」「short hair」と代表曲にして名曲が続くと、小出が
「今年は同年代の、30歳を過ぎたバンドたちが解散とか活動休止したり脱退したりっていうのが多かった年でしたが、今日のGALAXY STAGEは同年代のバンドばかり出てます。中堅の底力を見せつけられてください」
と2017年の音楽シーンを総括する。その中でも最も大きかったのはやはり、これまで盟友としてずっと一緒に歩んできたチャットモンチーが完結することが発表されたことだろう。先にメンバーが1人脱退してもバンドを続けてきたチャットモンチーの姿は、湯浅が突如としていなくなったベボベにとって本当に頼もしく写っていたはず。
関根のベースがよりグルーヴィになった「逆バタフライ・エフェクト」から、弓木の凄まじいギターが炸裂する青春性の強い「PERFECT BLUE」、フェスで演奏するのは久しぶりな感じがする「Stairway Generation」と、かつてのような決まりきったセトリではない柔軟さを見せ、最後に演奏されたのは「十字架 You and I」。間奏ではダンス湯浅将平をもう見ることはできない。だが今はその部分で小出と弓木の、このバンドの演奏技術の高さを改めて感じさせるギターソロを見ることができる。それは形が変わっても続けることを選んだバンドだからこそ。
日比谷野音ワンマンではゲストにホーンやキーボードなどを招き、今までの「4人で全ての音を出す」という縛りから解放されたかのような、この先のバンドの新たな展開をうかがわせたが、この日はやはりフェスということでこれまでの集大成的な内容だった。来年はもっと新たな形でのライブを見せてくれるはず。それは誰もが願った形ではないかもしれないけれど、こうして毎年このフェスでライブが見れるのが何よりも嬉しいのだ。
リハ.GIRLFRIEND
1.ドラマチック
2.LOVE MATHEMATICS
3.short hair
4.逆バタフライ・エフェクト
5.PERFECT BLUE
6.Stairway Generation
7.十字架 You and I
PERFECT BLUE
https://youtu.be/jgofbf8Q_-Y
17:25~ THE BAWDIES [GALAXY STAGE]
かつてはこのステージで年越しの大役を担ったこともある、THE BAWDIES。今年もGALAXYへの登場である。
おなじみウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEで合唱と手拍子に迎えられて鮮やかな白いスーツ姿の4人が登場すると、
「心のお掃除本舗、THE BAWDIESでーす!」
と微妙に力が抜けそうなフレーズを力いっぱいにROYが叫び、
「乗り遅れないでくださいよ!」
と「IT'S TOO LATE」からスタートし、曲終わりではROYのいつにも増して長い超ロングシャウトを轟かせると、ライブでのキラーチューンを次々に連発し、早くも客席は踊りまくりの飛び跳ねまくりであっという間に超満員に。
「来年でデビューから10周年を迎えます。来年は心のブラジャーを剥ぎ取ることに特化した1年にしたいと思います!」
とよくわからない決意をしてから、「LEMONADE」でじっくりとROYのソウルフルなボーカルを聴かせると、ここでおなじみの小芝居タイム。今回の内容はROYがMC中に笑うとソーセージとフランスパンでしばかれるという、年末だからこそのガキの使いの笑ってはいけないシリーズ。最後にホットドッグを渡されると、
「HOT DOG、召し上がれ!」
と当然凄まじい盛り上がりっぷりで「HOT DOG」に突入し、「SING YOUR SONG」ではおなじみの止まらない大合唱パートも入るのだが、超満員ということでやり直すこともない圧巻の声。本当に隅から隅までこのバンドのライブを楽しんでいる。
そしてラストは曲中に細かいライブアレンジが加えられた「JUST BE COOL」で飛び跳ねさせまくるのだが、最後のサビ前でピタリと演奏を止めると、ROYが
「よいお年をー!」
と叫んでからサビに突入するという、最後にこの曲を持ってくるのに相応しいアレンジがなされ、TAXMANもJIMもステージを転がるくらいの勢いでギターを弾きまくるという、メンバーの全力での超ハイテンションっぷりが客席全体にも伝わるような、素晴らしいライブだった。
最後には2017年最後のTAXMANによる「わっしょい」タイム。年末ということで「よいお年を」バージョンのわっしょいになるのだが、結局はとりあえず「わっしょーい!」と大声で叫ぶものになった。
先にこのステージに出演したBase Ball Bearの小出が
「中堅の底力を見て欲しい」
と言っていたが、今年、最も自分が底力を見せつけられた中堅バンドはこのバンドだったかもしれない。
夏フェスではかなり厳しい集客具合だった時もあったが、そんな時でもバンドはひたすら全力、というかそういう状況だからこそ吹っ切れるような、一切手を抜かないどころかより一層力を増幅させたようなライブを見せてくれた。その姿はこのバンドと出会った頃、まだ出るライブ出るライブが全てアウェーだが、それをひっくり返してきた時を思い出させてくれた。
1.IT'S TOO LATE
2.NO WAY
3.YOU GOTTA DANCE
4.LEMONADE
5.THE EDGE
6.HOT DOG
7.SING YOUR SONG
8.JUST BE COOL
THE EDGE
https://youtu.be/ez_0OtpiRYI
18:30~ DAOKO [ASTRO ARENA]
米津玄師とのコラボに続き、岡村靖幸とのコラボではミュージックステーションに出演するなど、着々と新世代の歌姫としての階段を登りつつある、DAOKO。去年に続いての出演だが、今年はイメージによく似合うASTRO ARENAへの出演。
薄暗いステージにロッキンの時の夏らしい格好とは違って落ち着いた雰囲気のDAOKOが登場すると、両サイドには2人のサポートメンバーがサンプルパッドを叩いたりする。(そのうちの1人は米津玄師のドラマーである堀正輝)
「すき キライ 好き きらい すき嫌い」
と独特のウィスパーボイスで歌い始める、TeddyLoidが手がけたエレクトロ色の強い「ダイスキ」からスタートすると、「FASHION」からのDAOKOによるフリースタイルラップで繋いでからの「水星」ではおなじみのダンサー2名が登場してDAOKOとともに踊るのだが、この「水星」がASTRO ARENAの雰囲気に非常によく似合っていた。
ライブでは椎名林檎の「歌舞伎町の女王」をエレクトロバージョンでカバーもしているが、やはりDAOKOのイメージは渋谷だよなぁと思わせてくれる「ShibuyaK」から、観客とともに手拍子をしながら歌う「BANG!」、そして岡村靖幸とコラボした「ステップアップLOVE」へ。もうどこからどう聴いても岡村ちゃん的なサウンドの曲だが、TeddyLoidの「ダイスキ」もそうだったように、DAOKOが歌うとDAOKOの色、青色に染まって、DAOKOの曲でしかなくなってしまう。これだけ曲の個性が強いのにそう思えるというのは本当にすごいことである。
そして最後は米津玄師とのコラボ曲にして、映画のタイアップとしてDAOKOの名前を広く世に知らしめた「打上花火」。岡村ちゃんもそうだが、やはりゲスト登場してのコラボとはならなかったものの、DAOKOが腕を左右に振りながら歌う様は、夏ではないし花火は見えなくても美しい光景だった。
1.ダイスキ
2.FASHION
3.水星
4.ShibuyaK
5.BANG!
6.ステップアップLOVE
7.打上花火
ステップアップLOVE
https://youtu.be/wsl8HS_lVHE
19:00~ 阿部真央 [COSMO STAGE]
実に久しぶりの出演である。前回の出演から今回までの間に阿部真央は結婚して母親になり、シングルマザーになるという、ミュージシャンとして、1人の女性として激動の年月を過ごしてきた。しかし前回出演時はEARTH STAGEだったくらいの人気は今も衰えておらず、トリであるCOSMOの客席は超満員。
デビュー作の1曲目であった、爽やかなロックナンバー「ふりぃ」でスタートするという、かつてフェスによく出ていた頃を彷彿とさせるオープニング。バンドメンバーの演奏の迫力と、阿部真央も含めた演奏の一枚岩感は全く衰えていないが、ヒット曲「モットー。」、最新アルバム収録の「逝きそうなヒーローと糠に釘男」と幅広いタイプの曲が続いても阿部真央の声は伸びやかに広がり、そこにはかつての尖った感じは減退し、母親になったからこその包容力を感じさせる。
「お帰り~!」
という声が客席からも上がり、ファンもかつてのこのフェスにおける勇姿をしっかり覚えていることを感じさせるが、「19歳の唄」ではもう19歳ではないからこその、歌詞にある「衝動」以外の感情を感じさせてくれる。
配信されたばかりの最新曲「KISSING」はそれまでのロックな曲と比べると実にポップな曲だが、こうした楽曲の幅の広さも阿部真央の魅力の一つであるし、どのタイプの曲でもキャッチーさは全く変わらない。が、曲をやる前には「COUNTDOWN JAPAN」と言わなければならないところを「RADIO CRAZY」と言ってしまうという痛恨のミスをしてしまい、MCをまるまる最初からやり直していた。
そして阿部真央の代表曲と言ってもいい「ロンリー」では大合唱が起き、年月を経ても変わらない曲の普遍性に改めて気付かされるし、こうしてこの曲を聴けて嬉しかった人も多かったはず。願わくば夏フェスのステージでもまたこの曲を聴きたいが。
するとバンドメンバーが先にステージを去り、アコギを持った阿部真央1人に。ライブの舞台監督がスマホを紛失した、という業務連絡をしてから弾き語り始めたのは、
「私の中じゃもう2人の家」
というフレーズも含め、歌詞やタイトルがリリース時に衝撃を与えた「ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~」。やはりこの人の最大の武器は、弾き語りという最小形態でもいい曲だとすぐにわかるようなメロディなのである。
かつて母親を想う娘からの曲を歌っていたのが、今では逆に娘を想う母親からの曲に視点は180°変わったが、そのメロディの力さえあれば、そうした変化さえも楽しみに変えられるはず。
1.ふりぃ
2.モットー。
3.逝きそうなヒーローと糠に釘男
4.19歳の唄
5.Believe in yourself
6.KISSING
7.ロンリー
8.ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~
ロンリー
https://youtu.be/E_GR8fI9xls
その後、昨年は悲惨な客入り具合だった、back numberの裏の出演者たちを視察。MOONのCrystal Lakeは7割ほど埋まり、GALAXYの夜の本気ダンスにいたっては満員だった。見事に音楽性がバラバラとはいえ、前年を見てるとこの動員っぷりは本当にすごいと思った。
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12:00~ 9mm Parabellum Bullet [GALAXY STAGE]
このステージの前説担当である、メディア1の9mmファンことロッキンオンジャパン総編集長の山崎洋一郎が紹介でひたすらに9mmのことを「ヤバい」と評す、という音楽評論家としてその語彙力はどうなんだ、と心配になる中、いつものようにAtari Teenage RiotのSEで登場したメンバー。だが最近と違うのは、その中に負傷で休養していた滝がいることである。
なので、当然キャップを被った滝が登場すると大きな歓声が上がり、滝もギターを掲げてその声に応えながら、滝が離脱中にバンドを支えてきた最強のサポートギターの2人である武田と為川も加えた、ギター4本の6人編成で「Black Market Blues」からスタートし、
「COUNTDOWN JAPANにたどり着いたぜー!」
と卓郎が歌詞を変える頃には完全にここにいる人たち全員が9mmの仲間入りしている。
卓郎がハンドマイクになり、ギターを滝と武田、為川に任せて歌う「ハートに火をつけて」はサポートを加えた編成の中で会得したパフォーマンスであり、それが滝が復帰した状態でも続いているということは、卓郎がフロントマンとして、ボーカリストとしてライブを盛り上げようとしている意志の表れ。
「Discommunication」ではサビで大合唱を巻き起こすと、山崎洋一郎が「最高傑作」と評した2017年リリースのアルバム「BABEL」からタイトルトラック的な「バベルのこどもたち」を分厚いギターサウンドで演奏するのだが、サポート2人を加えて完成したと思っていた「BABEL」の曲が、滝がギターを弾くことによりさらに完成度が上がっている。あれだけ新たな9mmのライブとしての姿を見せてくれたツアーやライブに、まだまだ伸び代があった。ということは滝が入った状態でもう一度「BABEL」ツアーをやったらどうなるんだろうか。
さらに髪が伸び続けている和彦がベースでイントロのコードを弾くという、これもまた滝離脱時にメンバーとして滝の不在をカバーしようとしていた和彦の姿勢が、滝が復帰しても続いている。結果的に滝の不在期間はそれぞれのメンバー(ツアーではかみじょうもコーラスをやるようになっていた)の音楽家としてのスキルやレベルをさらに上げることになったし、バンドとしてできることが格段に増えた。ということは、滝の不在期間は決して無駄な時間でもなければ、9mmが本領発揮できなかった時間でもなかったということ。
卓郎の「行けるかー!」の後からはさらにバンドの演奏は加速し、滝が鬼のようにギターを弾きまくる「太陽が欲しいだけ」では卓郎が
「勘違いじゃなくて、滝はここでギターを弾いている!」
と叫んで大歓声が上がる。このメンバーでこうしてライブができている喜びが6人全員から溢れかえっている。
「新しい光」でさらに大合唱を起こすと、ツアーでは滝のイントロのタッピングをステージ上のメンバーが演奏しないという形が取られていた「ロング・グッドバイ」も滝がフルにタッピングを弾きまくるという形で再現される。山崎洋一郎な「BABEL」を最高傑作と評していたが、滝がいない状態の「BABEL」はやはりまだ完成形ではなかったのだ。こうして滝が音源通りに、いや音源以上のギターを弾くことによって、初めて(一応昭和女子大学でのワンマンでもこの曲を滝がステージで弾いたけど)「BABEL」は完成するのである。つまり、「BABEL」は今まで我々が聴いてきたのよりも今の方がさらにすごいアルバムだったのである。
そしてラストは滝が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくり、ギターを弾かずに暴れまくるおなじみの「Punishment」なのだが、間奏ではメンバーの後ろでギターを弾いていた武田と為川が前方にジャンプしてメンバーに並び、6人が全員横並びで演奏するというとんでもない状態に。これは4人の9mmでも見られなかったし、滝不在時も見れなかった、過去最強の「Punishment」だった。
だからこそ、終わった後には本当に清々しい気持ちになった。かつて、9mmのライブでは毎回のように感じていたこの爽快感も、忘れかけてしまっていた。
それは滝が離脱する前は、あの滝のギターや暴れっぷりまでもが、あって当然というふうに我々は慣れてしまっていたから。でもそれは当たり前のものでも当然のものでもなく、このメンバーが揃っているからこそ見れる、奇跡のようなものだったのだ。バンド側も、ファン側もそのことにちゃんと気づいている。ただただかっこいい9mmが戻ってきたんじゃなくて、今までで最強の9mmになって戻ってきたのである。
ただ、持ち時間が5分多いEARTHなら、9mmはあと2曲はできたし、実際に3年前までEARTHに出ていた時は平気で10曲以上やっていた。でもGALAXYでもトリではなくてトップバッターにしたのは、滝が帰ってきた愛する9mmを山崎洋一郎は自分が紹介して、自分がステージに招きたかったからなんじゃないかと思う。実際、最初は「ヤバい」しか言ってない語彙力が心配だったが、見終わった今は本当に「ヤバい」としか思えないくらいに山崎洋一郎の表現は的を得ていたし、山崎洋一郎がいる間は、ロッキンのフェスでは間違いなく毎年9mmのライブが見れる。
1.Black Market Blues
2.ハートに火をつけて
3.Discommunication
4.バベルのこどもたち
5.黒い森の旅人
6.太陽が欲しいだけ
7.新しい光
8.ロング・グッドバイ
9.Punishment
ハートに火をつけて
https://youtu.be/pWH11t2JKds
13:15~ NICO Touches the Walls [EARTH STAGE]
かつては古村が怪我をして出演キャンセルということもあったが、もはや完全にEARTH STAGEがおなじみになっている、NICO Touches the Walls。この幕張メッセでは先月にバンド主催フェスを行い、かつてはASTRO ARENAでもワンマンをやったりという、千葉県出身バンドならではの幕張メッセとの強い縁。
メンバーが出てきてのサウンドチェックで早くもキラーチューンを演奏していただけに、果たして本編は?と思っていると、いきなりの「天地ガエシ」でスタートし、もはやおなじみのサポートメンバーの浅野尚志がヴァイオリンで美しい旋律を奏でる。光村の声も本当にこの男にスランプというか、調子の悪い日があるのかと思うくらいに伸びやかだが、何よりもステージいっぱいに動きながらギターを弾く古村の笑顔がいい。
早くもここでMCを挟むのだが、
「11月にデビュー10周年を迎えまして。なので普段フェスではあんまりそういうことしないんですけど、これまでに出した6枚のアルバムから1曲ずつ演奏しようと思います。良い曲ばかりです!」
とこの日のライブのコンセプトを発表。「OYSTER EP」がリリースされたばかりだし、実際に各地のイベントやフェスではその収録曲が多く演奏されているみたいだが、こうしたバンドの歴史を感じさせるようなパフォーマンスができるのは、NICOがこのフェスに若手だった時代からずっと出演し続け、このフェスの歴史を自分たちが作り、自分たちの歴史もこのフェスでのライブによって作られてきたからだという思いもあるのだろう。自分たちが徐々に大きいステージに出演できるようになり、この最大規模にして持ち時間が長いEARTH STAGEに出れるようになったからこそできることでもあるが。
で、そうした過去曲、ましてやレア曲を含んだセトリをフェスでやるのはかなり攻めた姿勢であるし、時には再結成したバンドが昔のヒット曲を往年のアレンジのままに演奏するという懐古主義的なものになりがちなのだが、今のNICOにはそうなる要素が全くないというのは、近年のライブにおいて過去曲を大胆にアレンジして、過去曲なんだけれど最新形の今しかできない曲に昇華しているというバンドの姿勢にある。
なので光村がアコギを弾く「ロデオ」はより情熱的かつスパニッシュに、光村と古村が向かい合ってギターを弾き合う「ストロベリーガール」はより妖艶になり、このレア曲の中でも最も古い曲である「エトランジェ」は今のバンドの技術と光村の歌唱力だからこそ、曲のメロディの美しさという真価がより発揮されているように感じた。
個人的にはこの会場で聴く「N極とN極」がとりわけ感慨深いのは、初の武道館ワンマンを終え、バンドがGALAXY STAGEをようやく埋められるようになった年に、マキシマム ザ ホルモンの真裏というなかなか厳しい位置で出演したのだが、その時に聴いたこの曲が本当に素晴らしくて、ライブ後に光村と対馬が肩を組んでステージを去っていくというくらいにメンバーも手応えを感じたライブの時にやっていたからである。
しかし過去のアルバムから1曲ずつというコンセプトであっても、全てがアルバム曲、レア曲ではないようだ、というのはその後に演奏された2曲がシングル曲だったからであり、NICOファンの誰しもが「東京オリンピックやるんならこの曲をテーマソングに使ってくれ!」と思っているであろう「TOKYO Dreamer」、そしてバンドの代表曲と言える「手をたたけ」と、結果的にはレア曲ばかりに寄せるようなマニアックなものにならずに、しっかりとメインステージに出るバンドとしてのバランスを取るような内容になっていた。
そしてラストに演奏されたのは最新作からのご機嫌なロックンロール「Funny Side Up!」で、過去を振り返りながらも最後にはしっかり最新の自分たちを見せ、10年を超えたこれからのバンドの活動にさらなる期待を抱かせるものになった。それはこれまでもこのバンドがライブで見せ続けてきてくれたものである。
リハ1.THE BUNGY
リハ2.マシ・マシ
1.天地ガエシ
2.N極とN極
3.ロデオ
4.ストロベリーガール
5.エトランジェ
6.TOKYO Dreamer
7.手をたたけ
8.Funny Side Up!
Funny Side Up!
https://youtu.be/lAJWx1aMO40
14:10~ THE BACK HORN [GALAXY STAGE]
毎回GALAXY STAGEに出演しているようなバンドが多く並んだこの日のGALAXY STAGEの出演者の中でも、このフェスの創成期からずっとGALAXYに出演し続けているという、まさにGALAXYの番人と言っていい、THE BACK HORN。今年も当然のようにGALAXYに登場である。
おなじみの壮大なSEで登場すると、この日のオープニングはかつてのライブ定番曲である「サニー」。先日のACIDMANのフェスでは「光の結晶」をやっていたが、こうして幅広い時期の曲を常にライブでできる状態にあるというのはマニアックヘブンというレア曲を中心としたライブをやったり、常にライブをして生きているバンドだからであろう。
和の要素を感じせるという意味ではこのバンド特有の要素である「声」を経ると、来年でバンドが20周年を迎える記念イヤーに突入することを宣言するのだが、20周年になろうというのに松田のMCは全く上手くならないし、訛りが取れることもない。これはきっと一生変わらないものなんだろう。
そしてベストアルバムに収録された最新曲「グローリア」から、この日のバラード枠は「あなたが待ってる」。同じバラード枠の「美しい名前」とかとは全く違う、温もりや人の体温を感じさせる曲。THE BACK HORNがこうした曲を作るようになるとは、バンドのコンポーザーである栄純が今そうした人生を過ごしているということなのだろうか。
しかしながらそうした一面もありながらも、このバンドの最大の持ち味は野性や凶暴性、ということで将司が
「来年は戌年ということで、行き場のない野良犬みたいな奴らのために、ダックスフンドのような…いや、ブルドッグのような顔で叫び続けていくから!これからもよろしく!」
と戌年にかけた上手い言葉で宣言すると、「孤独を繋いで」からは「コバルトブルー」とバンドの持ち味が最大限に発揮される。そしてこの日それを最も牽引していたのは、ベースの光舟である。何度もベースを弾きながら観客を煽り、腕を高く突き上げる。そしてラストの「刃」では勇壮なコーラスを響かせたかと思いきや、マイクスタンドをぶっ倒すという暴れっぷり。普段から言葉で人を引っ張るような人ではないが、こうした姿勢で見ている人を熱くしてくれる。この4人だからこそ、THE BACK HORNなのであり、THE BACK HORNこそが最強の野良犬なのである。
1.サニー
2.声
3.グローリア
4.あなたが待ってる
5.孤独を繋いで
6.コバルトブルー
7.刃
孤独を繋いで
https://youtu.be/5_oTpKahrRo
15:15~ BIGMAMA [GALAXY STAGE]
バンド初の武道館ワンマンを見事に成功させ、メジャーへの引越しも決まるなど、そこまではBIGMAMAはここに来てさらに絶好調と言えるように見えた。
しかしながらその直後から、金井がやる気がないような、精神が不安定なようなライブを見せるようになり、さらにはブログが大炎上し、ネット上も騒然となった。
だからこそ、この日、ちゃんと満足するようなライブを見せてくれるのか。楽しみよりも不安な気持ちの方が強かった。
ベートーベン「第九」的なSEでメンバーが登場すると、金井が
「COUNTDOWN JAPAN、ご案内しましょう、シンセカイへ!」
と宣言し、「荒狂曲”シンセカイ”」からスタート。
ハードロックのように重いサウンドの「ファビュラ・フィビュラ」、安井のゴリゴリのベースが躍らせる「Swan Song」と幅広い曲が続くのだが、金井の顔には夏までのような笑顔はない。ただただ、こうしてファンが愛してくれる曲を全力で歌うのみ、という、ある意味では吹っ切れたかのような歌い方になっている。さらに今までよりもかなり痩せてしまったようにも見える。
金井がアコギに持ち替えた「春は風のように」という選曲はファンを喜ばせ、続く「CRYSTAL CLEAR」では
「限りなく透明な 僕らの愛に一点の曇りなし」
と歌われる。自分はあの一連のブログの騒動は金井本人によるものだと思った上でこうして書いている(わざわざ全然違う人があんなことを書く意味なんかない)のだが、本当に今「一点の曇りなし」言い切れるような状態なのか。もしそうでないのならば、嘘になってしまう。しかし金井の表情は確かにこの曲の歌詞を歌えるような覚悟に満ちていた。もちろんそうなってしまったのは自分自身の行動のせいであるのだが、生み出した曲や音楽には一切の非はない。だが、そうした自分の子供のような、ファンが自分の人生を重ねてきたような大事な曲たちを、一度は自分の手で殺そうとしてしまった。この日の金井のシリアスでしかなかった表情は、その曲たちへの贖罪であるかのように見えた。
しかし「No.9」で途中でギターを置いてハンドマイクになった金井は、この日初めて少しの笑顔を見せた。ちゃんと自分の作った音楽を、こんなにたくさんの人が聴きにきてくれて、想いを共有することができている。その景色が金井に笑顔をもたらしてくれたんだろう。
そしてダンスミュージックの要素を強く含んだ「MUTOPIA」から、最後に披露されたのは新曲。疾走するようなメロコアサウンドに東出のヴァイオリンが絡んでいく。まるで昔、初めてBIGMAMAの曲を聴いた時のような清々しさを感じた。それは、このバンドが動き出した時のような原点に今一度立ち還らなければならないという意思によるものなのだろうか。
演奏が終わると、1人ずつステージを去る中、金井が笑顔をほとんど見せないのをカバーするかのように、自身のカメラに目線を向けて演奏したりしていたリアドが笑顔で観客の声に応えていた。自分が金井と一緒にバンドをやっていたとして、こういう状況になった時に今までと全く変わらないように接することができるかはわからないが、このバンドのメンバーはそんな金井をしっかり支え、バンドをさらに前進させていこうとしている。決してド派手だったり、主張が強いようなメンバーたちではないが、これまでで最もその存在を心強く感じている。
リハ.最後の一口
1.荒狂曲”シンセカイ”
2.#DIV/0!
3.ファビュラ・フィビュラ
4.Swan Song
5.春は風のように
6.CRYSTAL CLEAR
7.No.9
8.MUTOPIA
9.新曲
CRYSTAL CLEAR
https://youtu.be/sursVprvwl0
16:20~ Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
9mm同様に、数年前まではEARTHに出演していた、Base Ball Bear。近年はGALAXYがおなじみになりつつある。
サウンドチェックでメンバー全員が出てきて「GIRLFRIEND」を演奏するというサービス精神を見せてくれると、本番で弓木英梨乃を含めた4人が登場すると、全員が堀之内のドラムセット前に集まり、堀之内が一人一人にスティックを向けて入念な会議が行われると、「ドラマチック」からスタートし、もう完全に気分は夏フェスに。近年はファンクやブラックミュージックのグルーヴを取り入れたサウンドに取り組んだりしているが、やはりベボベのイメージは未だにこうした夏の曲である。同年代のバンドにここまで夏の名曲をたくさん作ってきたバンドもそうそういないし。
「LOVE MATHEMATICS」「short hair」と代表曲にして名曲が続くと、小出が
「今年は同年代の、30歳を過ぎたバンドたちが解散とか活動休止したり脱退したりっていうのが多かった年でしたが、今日のGALAXY STAGEは同年代のバンドばかり出てます。中堅の底力を見せつけられてください」
と2017年の音楽シーンを総括する。その中でも最も大きかったのはやはり、これまで盟友としてずっと一緒に歩んできたチャットモンチーが完結することが発表されたことだろう。先にメンバーが1人脱退してもバンドを続けてきたチャットモンチーの姿は、湯浅が突如としていなくなったベボベにとって本当に頼もしく写っていたはず。
関根のベースがよりグルーヴィになった「逆バタフライ・エフェクト」から、弓木の凄まじいギターが炸裂する青春性の強い「PERFECT BLUE」、フェスで演奏するのは久しぶりな感じがする「Stairway Generation」と、かつてのような決まりきったセトリではない柔軟さを見せ、最後に演奏されたのは「十字架 You and I」。間奏ではダンス湯浅将平をもう見ることはできない。だが今はその部分で小出と弓木の、このバンドの演奏技術の高さを改めて感じさせるギターソロを見ることができる。それは形が変わっても続けることを選んだバンドだからこそ。
日比谷野音ワンマンではゲストにホーンやキーボードなどを招き、今までの「4人で全ての音を出す」という縛りから解放されたかのような、この先のバンドの新たな展開をうかがわせたが、この日はやはりフェスということでこれまでの集大成的な内容だった。来年はもっと新たな形でのライブを見せてくれるはず。それは誰もが願った形ではないかもしれないけれど、こうして毎年このフェスでライブが見れるのが何よりも嬉しいのだ。
リハ.GIRLFRIEND
1.ドラマチック
2.LOVE MATHEMATICS
3.short hair
4.逆バタフライ・エフェクト
5.PERFECT BLUE
6.Stairway Generation
7.十字架 You and I
PERFECT BLUE
https://youtu.be/jgofbf8Q_-Y
17:25~ THE BAWDIES [GALAXY STAGE]
かつてはこのステージで年越しの大役を担ったこともある、THE BAWDIES。今年もGALAXYへの登場である。
おなじみウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEで合唱と手拍子に迎えられて鮮やかな白いスーツ姿の4人が登場すると、
「心のお掃除本舗、THE BAWDIESでーす!」
と微妙に力が抜けそうなフレーズを力いっぱいにROYが叫び、
「乗り遅れないでくださいよ!」
と「IT'S TOO LATE」からスタートし、曲終わりではROYのいつにも増して長い超ロングシャウトを轟かせると、ライブでのキラーチューンを次々に連発し、早くも客席は踊りまくりの飛び跳ねまくりであっという間に超満員に。
「来年でデビューから10周年を迎えます。来年は心のブラジャーを剥ぎ取ることに特化した1年にしたいと思います!」
とよくわからない決意をしてから、「LEMONADE」でじっくりとROYのソウルフルなボーカルを聴かせると、ここでおなじみの小芝居タイム。今回の内容はROYがMC中に笑うとソーセージとフランスパンでしばかれるという、年末だからこそのガキの使いの笑ってはいけないシリーズ。最後にホットドッグを渡されると、
「HOT DOG、召し上がれ!」
と当然凄まじい盛り上がりっぷりで「HOT DOG」に突入し、「SING YOUR SONG」ではおなじみの止まらない大合唱パートも入るのだが、超満員ということでやり直すこともない圧巻の声。本当に隅から隅までこのバンドのライブを楽しんでいる。
そしてラストは曲中に細かいライブアレンジが加えられた「JUST BE COOL」で飛び跳ねさせまくるのだが、最後のサビ前でピタリと演奏を止めると、ROYが
「よいお年をー!」
と叫んでからサビに突入するという、最後にこの曲を持ってくるのに相応しいアレンジがなされ、TAXMANもJIMもステージを転がるくらいの勢いでギターを弾きまくるという、メンバーの全力での超ハイテンションっぷりが客席全体にも伝わるような、素晴らしいライブだった。
最後には2017年最後のTAXMANによる「わっしょい」タイム。年末ということで「よいお年を」バージョンのわっしょいになるのだが、結局はとりあえず「わっしょーい!」と大声で叫ぶものになった。
先にこのステージに出演したBase Ball Bearの小出が
「中堅の底力を見て欲しい」
と言っていたが、今年、最も自分が底力を見せつけられた中堅バンドはこのバンドだったかもしれない。
夏フェスではかなり厳しい集客具合だった時もあったが、そんな時でもバンドはひたすら全力、というかそういう状況だからこそ吹っ切れるような、一切手を抜かないどころかより一層力を増幅させたようなライブを見せてくれた。その姿はこのバンドと出会った頃、まだ出るライブ出るライブが全てアウェーだが、それをひっくり返してきた時を思い出させてくれた。
1.IT'S TOO LATE
2.NO WAY
3.YOU GOTTA DANCE
4.LEMONADE
5.THE EDGE
6.HOT DOG
7.SING YOUR SONG
8.JUST BE COOL
THE EDGE
https://youtu.be/ez_0OtpiRYI
18:30~ DAOKO [ASTRO ARENA]
米津玄師とのコラボに続き、岡村靖幸とのコラボではミュージックステーションに出演するなど、着々と新世代の歌姫としての階段を登りつつある、DAOKO。去年に続いての出演だが、今年はイメージによく似合うASTRO ARENAへの出演。
薄暗いステージにロッキンの時の夏らしい格好とは違って落ち着いた雰囲気のDAOKOが登場すると、両サイドには2人のサポートメンバーがサンプルパッドを叩いたりする。(そのうちの1人は米津玄師のドラマーである堀正輝)
「すき キライ 好き きらい すき嫌い」
と独特のウィスパーボイスで歌い始める、TeddyLoidが手がけたエレクトロ色の強い「ダイスキ」からスタートすると、「FASHION」からのDAOKOによるフリースタイルラップで繋いでからの「水星」ではおなじみのダンサー2名が登場してDAOKOとともに踊るのだが、この「水星」がASTRO ARENAの雰囲気に非常によく似合っていた。
ライブでは椎名林檎の「歌舞伎町の女王」をエレクトロバージョンでカバーもしているが、やはりDAOKOのイメージは渋谷だよなぁと思わせてくれる「ShibuyaK」から、観客とともに手拍子をしながら歌う「BANG!」、そして岡村靖幸とコラボした「ステップアップLOVE」へ。もうどこからどう聴いても岡村ちゃん的なサウンドの曲だが、TeddyLoidの「ダイスキ」もそうだったように、DAOKOが歌うとDAOKOの色、青色に染まって、DAOKOの曲でしかなくなってしまう。これだけ曲の個性が強いのにそう思えるというのは本当にすごいことである。
そして最後は米津玄師とのコラボ曲にして、映画のタイアップとしてDAOKOの名前を広く世に知らしめた「打上花火」。岡村ちゃんもそうだが、やはりゲスト登場してのコラボとはならなかったものの、DAOKOが腕を左右に振りながら歌う様は、夏ではないし花火は見えなくても美しい光景だった。
1.ダイスキ
2.FASHION
3.水星
4.ShibuyaK
5.BANG!
6.ステップアップLOVE
7.打上花火
ステップアップLOVE
https://youtu.be/wsl8HS_lVHE
19:00~ 阿部真央 [COSMO STAGE]
実に久しぶりの出演である。前回の出演から今回までの間に阿部真央は結婚して母親になり、シングルマザーになるという、ミュージシャンとして、1人の女性として激動の年月を過ごしてきた。しかし前回出演時はEARTH STAGEだったくらいの人気は今も衰えておらず、トリであるCOSMOの客席は超満員。
デビュー作の1曲目であった、爽やかなロックナンバー「ふりぃ」でスタートするという、かつてフェスによく出ていた頃を彷彿とさせるオープニング。バンドメンバーの演奏の迫力と、阿部真央も含めた演奏の一枚岩感は全く衰えていないが、ヒット曲「モットー。」、最新アルバム収録の「逝きそうなヒーローと糠に釘男」と幅広いタイプの曲が続いても阿部真央の声は伸びやかに広がり、そこにはかつての尖った感じは減退し、母親になったからこその包容力を感じさせる。
「お帰り~!」
という声が客席からも上がり、ファンもかつてのこのフェスにおける勇姿をしっかり覚えていることを感じさせるが、「19歳の唄」ではもう19歳ではないからこその、歌詞にある「衝動」以外の感情を感じさせてくれる。
配信されたばかりの最新曲「KISSING」はそれまでのロックな曲と比べると実にポップな曲だが、こうした楽曲の幅の広さも阿部真央の魅力の一つであるし、どのタイプの曲でもキャッチーさは全く変わらない。が、曲をやる前には「COUNTDOWN JAPAN」と言わなければならないところを「RADIO CRAZY」と言ってしまうという痛恨のミスをしてしまい、MCをまるまる最初からやり直していた。
そして阿部真央の代表曲と言ってもいい「ロンリー」では大合唱が起き、年月を経ても変わらない曲の普遍性に改めて気付かされるし、こうしてこの曲を聴けて嬉しかった人も多かったはず。願わくば夏フェスのステージでもまたこの曲を聴きたいが。
するとバンドメンバーが先にステージを去り、アコギを持った阿部真央1人に。ライブの舞台監督がスマホを紛失した、という業務連絡をしてから弾き語り始めたのは、
「私の中じゃもう2人の家」
というフレーズも含め、歌詞やタイトルがリリース時に衝撃を与えた「ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~」。やはりこの人の最大の武器は、弾き語りという最小形態でもいい曲だとすぐにわかるようなメロディなのである。
かつて母親を想う娘からの曲を歌っていたのが、今では逆に娘を想う母親からの曲に視点は180°変わったが、そのメロディの力さえあれば、そうした変化さえも楽しみに変えられるはず。
1.ふりぃ
2.モットー。
3.逝きそうなヒーローと糠に釘男
4.19歳の唄
5.Believe in yourself
6.KISSING
7.ロンリー
8.ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~
ロンリー
https://youtu.be/E_GR8fI9xls
その後、昨年は悲惨な客入り具合だった、back numberの裏の出演者たちを視察。MOONのCrystal Lakeは7割ほど埋まり、GALAXYの夜の本気ダンスにいたっては満員だった。見事に音楽性がバラバラとはいえ、前年を見てるとこの動員っぷりは本当にすごいと思った。
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