フレデリック フレデリズムツアー2017 ~ぼくらのTOGENKYO~ @Zepp Tokyo 12/21
- 2017/12/21
- 23:30
もはやブームというか、バンドのフォーマットの一つとして完全に定着したダンスロック。
そんな中にあって、フレデリックはシーンに登場したタイミングこそ早くはなかったが、中毒性の高い楽曲と見入らずにはいられないミュージック・ビデオのインパクト、楽しくも力強いライブパフォーマンスによって、一気に頭角を現し、その勢いはアニメタイアップシングル「かなしいうれしい」、ミニアルバム「TOGENKYO」をリリースした今年にさらに加速。
年明けにも追加公演があるとはいえ、この日はその「TOGENKYO」ツアーのファイナル。平日のZeppクラスでももはや即完である。
すでに10月の東名阪のQUATTROを回るツアーの渋谷のライブを見ているが、そのツアーは「かなしいうれしい」のレコ発的な内容だったため、ようやく「TOGENKYO」に足を踏み入れることになる。
19時を過ぎたところで場内がゆっくり暗転すると、ステージ背面に設置された、タイミング的にスターウォーズのライトセーバーを彷彿とさせる無数の棒が鮮やかに明滅を繰り返し、SEが鳴る中でメンバーが登場。最後にステージに現れた健司が大きく手を広げると、
「フレデリック、始めます」
のフレーズが鳴るや否や、メンバーのキメが連発される「オンリーワンダー」でスタート。普段はクライマックスに演奏するような曲だし、QUATTROツアーではオープニングはもっとじっくりと始めていたが、最初にこの曲を持ってきたことによって、早くも客席は凄まじい盛り上がりとなるのだが、あまりに人が多すぎて密度が高いからか、MVでのダンスを踊るような人はいない。(というかそんなスペースがない)
QUATTROツアーからフレデリックは曲間を全く設けることなく、ひたすら曲を連発していく、しかもアウトロと次の曲のイントロをつなげるようなライブアレンジがなされているため、曲と曲の間という概念がほとんどない。ということは一瞬たりとも目を離せる時間がないということなのだが、この日もやはり「KITAKU BEATS」~「オワラセナイト」というキラーチューンを見事に繋いで見せ、健司は序盤から歌詞にガンガン「Zepp」「東京」というフレーズを差し込み、「今、この場所」にいることを強く感じさせてくれる。
康司のゴリゴリのベースを中心としたロックなセッション的イントロが追加された「愛の迷惑」では健司が後半のサビで
「迷惑なわけないやろ!愛してるで!」
と叫び、この会場に溢れる愛が一方通行なものではなく、お互いから発せられているものであるということを実感させてくれる。
飛ばしまくり、踊りまくりの序盤から、イントロでのステージのみならず、曲中では客席までが「ケムリ」に包まれた「うわさのケムリの女の子」からはひたすらに楽しく踊らせるのではなく、サイケデリックな空気に浸らせる、フレデリックのもう一つの側面を見せていく。
「TOGENKYO」から最初に披露された「ミッドナイトグライダー」は、暗めの照明も合間って、まさに深夜に浮遊しているかのような陶酔感に浸らせてくれる。
すると健司がギターを置き、
「Zepp!まだまだ行けるでしょ!今日は最高な1日にしましょう!」
とフロントマンとしての自覚を強く感じさせる宣誓をし、シュールな手触りの奥に潜む社会や世間への皮肉に満ちた「まちがいさがしの国」へ。そもそもブレイクのきっかけになった「オドループ」にしろ、
「踊ってるだけで退場 それをそっかそっかって言って」
と、歌い出しからして当時アーティストの間で広く話題になっていた風営法について触れていた。
「まちがいさがしをまた始める気ですか
責任探しが大好きな国ですね」
と、何かあるとよってたかって潰しにかかっていくこの国のメディア、ひいては人間性について切り込んでいく。きっと普段ニュースを見ていても言いたいことが本当にたくさんあるんだろうけれど、フレデリックはMCなどで直接そうした思想を語ることはない。そうするとどうしても押しつけがましさが出てしまうから。だからこうして曲の中に、一聴しただけでは気付かないようなシュールさに包んで、あくまで音楽として届ける。それはどちらのやり方が良いとか悪いとかではなく、フレデリックのスタイルがこれなのである。
「まちがいさがしの国」はカップリング曲とはいえ、夏フェスでも演奏していたところを見ると、このタームのライブでは定番曲になるのだろうが、続く「みつめるみつあみ」はカップリングらしいレア曲。この日最もドープかつサイケデリックなところに潜っていくようなサウンドであるが、この曲に関しては
「みつあみをほどいて湖を泳いで」
というサビのフレーズの奥にあるのかもしれないメッセージを何度聴いても自分には読み解くことができない。
QUATTROツアーでは、今のバンドの状況に比してかなり小さい会場なりの、大それた演出のないシンプルに曲を連発していく、というライブであったが、フレデリックのライブに映像やレーザーが似合うということは昨年末から今年初頭にかけての「フレデリズムツアー」で実証済みであり、この日も曲と曲の繋ぎ部分でレーザーが鮮やかにステージ背面のスクリーンに光を描いていく「ナイトステップ」からはそうした映像や演出が曲の持つ世界観をさらに増幅していく。
「せかされてもあせらないで 踊りたい時踊ればいい」
というフレーズが、やみくもに踊りまくるだけじゃなく、ゆったりと体を揺らすのもダンスだぞ、と伝えてくる「スローリーダンス」、ステージ真ん中に置かれていると思しきカメラが回転することによって、演奏しているメンバーと客席までもがスクリーンに映し出された「ディスコプール」、康司の重いベースと高橋武の軽やかかつ手数の多いドラムが溶け合ってバンドのグルーヴを形成していく「パラレルロール」と、「TOGENKYO」収録曲をふんだんに織り交ぜながら、この規模だからこそできる演出で、フレデリックのメンバーだけでなく、チームとしての強さもしっかりと見せていく。
するとここでこの日唯一のMCタイム。前回このZeppに立った時は3人だったのが、4人になってさらにパワーアップして帰ってきたということで、メンバー紹介も兼ねて1人ずつ順番に喋る。
気合いを入れて髪の毛の一部を再び緑色に染めた健司、曲だけでなくツアーグッズさえも作っている康司の三原兄弟は根の真面目さがわかりすぎる真摯な挨拶だったが、「他人からギタリスト」に昇格した赤頭は
「お台場って観覧車とかダイバーシティとかビーナスフォートとかあってカラフルで、本当に桃源郷みたいやなぁ」
と上手いこと言ってガッツポーズを決めるが、続く高橋が
「僕、子供の頃にYahoo!で「サンタクロース 免許」って検索するくらいにサンタクロースになりたくて(笑)
で、サンタクロースって本当に免許あるんですよ(笑)
でも免許取得の条件に「体重120kg以上」って書いてあって(笑)
これは無理だな、って諦めたんですけど、こうしてクリスマス近い時期にライブしてみんなが本当に喜んでくれてるのを見ると、まるでサンタクロースになれたような気がします!」
とさらに上手いことを言ってしまったので、完全にそっちに持っていかれてしまった感は否めない。
そんな朗らかなMCタイムのあとは、このシンセとしか思えないようなサウンドはこの男がギターで弾いているのか、というのがライブを見るとよくわかる赤頭が煽り、独特なリズムに合わせた手拍子が鳴るのが壮観な「かなしいうれしい」から後半戦に突入。
一転してダブやレゲエの要素を感じるサウンドが「まちがいさがしの国」とはまた違ったカップリングとしての意味を持つ「シンクロック」では
「2時間ちょっとのライブのために」
とライブバージョンに歌詞を変えて健司が歌う。
「フレデリズムツアーファイナル、リリリピートします」
と言っての「リリリピート」で思いっきり助走をつけてから演奏されたのは「オドループ」。
もはやフレデリックはこの曲だけのバンドではないのはこの曲以降の躍進が示しているが、やはり最大のキラーチューンというか、バンドにとってというよりも、バンドシーンにおいての最大のアンセムの一つと言っていいだろう。だからこそ健司が手拍子部分で赤頭と顔を見合わせるくらいに驚くような手拍子が鳴り、健司がマイクを預けると大合唱が響く。赤頭はギターソロではセンターに立って華麗なソロを決め、さらに康司の方まで歩みよってギターを弾くという、広い会場でのファイナルならではのハジけっぷりを見せた。
そして本編最後に演奏されたのはやはり最新作のタイトル曲である「TOGENKYO」でグルーヴィーでありながらもポップという、まさに桃源郷を体現させてくれるようなサウンドでしっかりと2017年に描けるようになった自分たちの世界を見せつけていた。
アンコールでは健司の声がここに来て最高の伸びを見せた、ストレートなロックサウンドの「FUTURE ICE CREAM」を演奏すると、来年4月に控える、バンド初のアリーナワンマンを地元の神戸で行いたかったこと、東京ではキャパ400人の渋谷WWWから着実に進歩してきたこと、さらにその歩みを止めずに突き進んでいく決意とともに披露されたのは「たりないeye」。
確かに「TOGENKYO」の中でここまで演奏されていない曲ではあったが(「RAINY CHINA GIRL」はなぜ演奏されなかったのか)、今までは最後はアゲまくりの踊りまくりで終わっていたのとは打って変わってじっくりとリズムやビートを浸透させていくタイプの曲。こうしたタイプの曲を選んだのが良くなかったかというと決してそんなことはなく、それは演奏中にスクリーンに映し出されていた、最前列にいた観客たちの笑顔が何よりも証明していた。
そして、「TOGENKYO」期の曲(シングルのカップリング含む)で手に入れたものはそうしたタイプの曲の力だけでなく、これまでは基本的に健司のボーカルに重ねるのが役目だった康司のコーラスが、単体でも曲を構成する要素になり、もはやボーカルとコーラスの双子ではなく、歌を分かち合う双子になったと言ってもいいはず。
演奏が終わると1人残った健司が客席を撮影。ワイドが弱いということで、ギュッと真ん中に寄ったのだが、その際の声のかけ方も本当に真面目さと優しさを感じさせた。
QUATTROツアーからこのツアーにかけてで、フレデリックは自分たちだけのライブのやり方をしっかり確立した。ただひたすらに音楽を真摯に届けるのはもちろん、「あのライブのあの曲のところを見たい」と思うのではなくて、「あの流れのままであのライブをもう1回見たい」と思わらせるようなライブの形を作り上げた。フレデリックみたいなタイプのバンドはついつい「フェス向きのバンド」というイメージを持たれがちだが、このバンドの真価はワンマンで見ることができる。そうした形を作れたのは本当に大きい。
最初に書いた通りに、ダンスロックがバンドのフォーマットの一つとして完全に定着した今、楽しいバンドや踊れるバンドはたくさんいる。でも楽しいだけだったり、踊れるだけではこの規模まではたどり着けない。フレデリックがそこをクリアできたのは、楽しくて踊れるのは当たり前、そこにさらに自分たちにしかできないものを見せることができるバンドだから。
そしてさらにその先の景色までもが見えているのは、それに加えてライブで感動をも与えることができるから。ダンスロックの要素が強いバンドでそこまで思えるバンドはなかなかいない。
そう思えたこの日のZepp Tokyoはまさに「TOGENKYO」そのものだった。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.オワラセナイト
4.愛の迷惑
5.うわさのケムリの女の子
6.ミッドナイトグライダー
7.まちがいさがしの国
8.みつめるみつあみ
9.ナイトステップ
10.スローリーダンス
11.ディスコプール
12.パラレルロール
13.かなしいうれしい
14.シンクロック
15.リリリピート
16.オドループ
17.TOGENKYO
encore
18.FUTURE ICE CREAM
19.たりないeye
たりないeye
https://youtu.be/0m2mfFhUg8w
Next→ 12/28 COUNTDOWN JAPAN 17/18 @幕張メッセ
そんな中にあって、フレデリックはシーンに登場したタイミングこそ早くはなかったが、中毒性の高い楽曲と見入らずにはいられないミュージック・ビデオのインパクト、楽しくも力強いライブパフォーマンスによって、一気に頭角を現し、その勢いはアニメタイアップシングル「かなしいうれしい」、ミニアルバム「TOGENKYO」をリリースした今年にさらに加速。
年明けにも追加公演があるとはいえ、この日はその「TOGENKYO」ツアーのファイナル。平日のZeppクラスでももはや即完である。
すでに10月の東名阪のQUATTROを回るツアーの渋谷のライブを見ているが、そのツアーは「かなしいうれしい」のレコ発的な内容だったため、ようやく「TOGENKYO」に足を踏み入れることになる。
19時を過ぎたところで場内がゆっくり暗転すると、ステージ背面に設置された、タイミング的にスターウォーズのライトセーバーを彷彿とさせる無数の棒が鮮やかに明滅を繰り返し、SEが鳴る中でメンバーが登場。最後にステージに現れた健司が大きく手を広げると、
「フレデリック、始めます」
のフレーズが鳴るや否や、メンバーのキメが連発される「オンリーワンダー」でスタート。普段はクライマックスに演奏するような曲だし、QUATTROツアーではオープニングはもっとじっくりと始めていたが、最初にこの曲を持ってきたことによって、早くも客席は凄まじい盛り上がりとなるのだが、あまりに人が多すぎて密度が高いからか、MVでのダンスを踊るような人はいない。(というかそんなスペースがない)
QUATTROツアーからフレデリックは曲間を全く設けることなく、ひたすら曲を連発していく、しかもアウトロと次の曲のイントロをつなげるようなライブアレンジがなされているため、曲と曲の間という概念がほとんどない。ということは一瞬たりとも目を離せる時間がないということなのだが、この日もやはり「KITAKU BEATS」~「オワラセナイト」というキラーチューンを見事に繋いで見せ、健司は序盤から歌詞にガンガン「Zepp」「東京」というフレーズを差し込み、「今、この場所」にいることを強く感じさせてくれる。
康司のゴリゴリのベースを中心としたロックなセッション的イントロが追加された「愛の迷惑」では健司が後半のサビで
「迷惑なわけないやろ!愛してるで!」
と叫び、この会場に溢れる愛が一方通行なものではなく、お互いから発せられているものであるということを実感させてくれる。
飛ばしまくり、踊りまくりの序盤から、イントロでのステージのみならず、曲中では客席までが「ケムリ」に包まれた「うわさのケムリの女の子」からはひたすらに楽しく踊らせるのではなく、サイケデリックな空気に浸らせる、フレデリックのもう一つの側面を見せていく。
「TOGENKYO」から最初に披露された「ミッドナイトグライダー」は、暗めの照明も合間って、まさに深夜に浮遊しているかのような陶酔感に浸らせてくれる。
すると健司がギターを置き、
「Zepp!まだまだ行けるでしょ!今日は最高な1日にしましょう!」
とフロントマンとしての自覚を強く感じさせる宣誓をし、シュールな手触りの奥に潜む社会や世間への皮肉に満ちた「まちがいさがしの国」へ。そもそもブレイクのきっかけになった「オドループ」にしろ、
「踊ってるだけで退場 それをそっかそっかって言って」
と、歌い出しからして当時アーティストの間で広く話題になっていた風営法について触れていた。
「まちがいさがしをまた始める気ですか
責任探しが大好きな国ですね」
と、何かあるとよってたかって潰しにかかっていくこの国のメディア、ひいては人間性について切り込んでいく。きっと普段ニュースを見ていても言いたいことが本当にたくさんあるんだろうけれど、フレデリックはMCなどで直接そうした思想を語ることはない。そうするとどうしても押しつけがましさが出てしまうから。だからこうして曲の中に、一聴しただけでは気付かないようなシュールさに包んで、あくまで音楽として届ける。それはどちらのやり方が良いとか悪いとかではなく、フレデリックのスタイルがこれなのである。
「まちがいさがしの国」はカップリング曲とはいえ、夏フェスでも演奏していたところを見ると、このタームのライブでは定番曲になるのだろうが、続く「みつめるみつあみ」はカップリングらしいレア曲。この日最もドープかつサイケデリックなところに潜っていくようなサウンドであるが、この曲に関しては
「みつあみをほどいて湖を泳いで」
というサビのフレーズの奥にあるのかもしれないメッセージを何度聴いても自分には読み解くことができない。
QUATTROツアーでは、今のバンドの状況に比してかなり小さい会場なりの、大それた演出のないシンプルに曲を連発していく、というライブであったが、フレデリックのライブに映像やレーザーが似合うということは昨年末から今年初頭にかけての「フレデリズムツアー」で実証済みであり、この日も曲と曲の繋ぎ部分でレーザーが鮮やかにステージ背面のスクリーンに光を描いていく「ナイトステップ」からはそうした映像や演出が曲の持つ世界観をさらに増幅していく。
「せかされてもあせらないで 踊りたい時踊ればいい」
というフレーズが、やみくもに踊りまくるだけじゃなく、ゆったりと体を揺らすのもダンスだぞ、と伝えてくる「スローリーダンス」、ステージ真ん中に置かれていると思しきカメラが回転することによって、演奏しているメンバーと客席までもがスクリーンに映し出された「ディスコプール」、康司の重いベースと高橋武の軽やかかつ手数の多いドラムが溶け合ってバンドのグルーヴを形成していく「パラレルロール」と、「TOGENKYO」収録曲をふんだんに織り交ぜながら、この規模だからこそできる演出で、フレデリックのメンバーだけでなく、チームとしての強さもしっかりと見せていく。
するとここでこの日唯一のMCタイム。前回このZeppに立った時は3人だったのが、4人になってさらにパワーアップして帰ってきたということで、メンバー紹介も兼ねて1人ずつ順番に喋る。
気合いを入れて髪の毛の一部を再び緑色に染めた健司、曲だけでなくツアーグッズさえも作っている康司の三原兄弟は根の真面目さがわかりすぎる真摯な挨拶だったが、「他人からギタリスト」に昇格した赤頭は
「お台場って観覧車とかダイバーシティとかビーナスフォートとかあってカラフルで、本当に桃源郷みたいやなぁ」
と上手いこと言ってガッツポーズを決めるが、続く高橋が
「僕、子供の頃にYahoo!で「サンタクロース 免許」って検索するくらいにサンタクロースになりたくて(笑)
で、サンタクロースって本当に免許あるんですよ(笑)
でも免許取得の条件に「体重120kg以上」って書いてあって(笑)
これは無理だな、って諦めたんですけど、こうしてクリスマス近い時期にライブしてみんなが本当に喜んでくれてるのを見ると、まるでサンタクロースになれたような気がします!」
とさらに上手いことを言ってしまったので、完全にそっちに持っていかれてしまった感は否めない。
そんな朗らかなMCタイムのあとは、このシンセとしか思えないようなサウンドはこの男がギターで弾いているのか、というのがライブを見るとよくわかる赤頭が煽り、独特なリズムに合わせた手拍子が鳴るのが壮観な「かなしいうれしい」から後半戦に突入。
一転してダブやレゲエの要素を感じるサウンドが「まちがいさがしの国」とはまた違ったカップリングとしての意味を持つ「シンクロック」では
「2時間ちょっとのライブのために」
とライブバージョンに歌詞を変えて健司が歌う。
「フレデリズムツアーファイナル、リリリピートします」
と言っての「リリリピート」で思いっきり助走をつけてから演奏されたのは「オドループ」。
もはやフレデリックはこの曲だけのバンドではないのはこの曲以降の躍進が示しているが、やはり最大のキラーチューンというか、バンドにとってというよりも、バンドシーンにおいての最大のアンセムの一つと言っていいだろう。だからこそ健司が手拍子部分で赤頭と顔を見合わせるくらいに驚くような手拍子が鳴り、健司がマイクを預けると大合唱が響く。赤頭はギターソロではセンターに立って華麗なソロを決め、さらに康司の方まで歩みよってギターを弾くという、広い会場でのファイナルならではのハジけっぷりを見せた。
そして本編最後に演奏されたのはやはり最新作のタイトル曲である「TOGENKYO」でグルーヴィーでありながらもポップという、まさに桃源郷を体現させてくれるようなサウンドでしっかりと2017年に描けるようになった自分たちの世界を見せつけていた。
アンコールでは健司の声がここに来て最高の伸びを見せた、ストレートなロックサウンドの「FUTURE ICE CREAM」を演奏すると、来年4月に控える、バンド初のアリーナワンマンを地元の神戸で行いたかったこと、東京ではキャパ400人の渋谷WWWから着実に進歩してきたこと、さらにその歩みを止めずに突き進んでいく決意とともに披露されたのは「たりないeye」。
確かに「TOGENKYO」の中でここまで演奏されていない曲ではあったが(「RAINY CHINA GIRL」はなぜ演奏されなかったのか)、今までは最後はアゲまくりの踊りまくりで終わっていたのとは打って変わってじっくりとリズムやビートを浸透させていくタイプの曲。こうしたタイプの曲を選んだのが良くなかったかというと決してそんなことはなく、それは演奏中にスクリーンに映し出されていた、最前列にいた観客たちの笑顔が何よりも証明していた。
そして、「TOGENKYO」期の曲(シングルのカップリング含む)で手に入れたものはそうしたタイプの曲の力だけでなく、これまでは基本的に健司のボーカルに重ねるのが役目だった康司のコーラスが、単体でも曲を構成する要素になり、もはやボーカルとコーラスの双子ではなく、歌を分かち合う双子になったと言ってもいいはず。
演奏が終わると1人残った健司が客席を撮影。ワイドが弱いということで、ギュッと真ん中に寄ったのだが、その際の声のかけ方も本当に真面目さと優しさを感じさせた。
QUATTROツアーからこのツアーにかけてで、フレデリックは自分たちだけのライブのやり方をしっかり確立した。ただひたすらに音楽を真摯に届けるのはもちろん、「あのライブのあの曲のところを見たい」と思うのではなくて、「あの流れのままであのライブをもう1回見たい」と思わらせるようなライブの形を作り上げた。フレデリックみたいなタイプのバンドはついつい「フェス向きのバンド」というイメージを持たれがちだが、このバンドの真価はワンマンで見ることができる。そうした形を作れたのは本当に大きい。
最初に書いた通りに、ダンスロックがバンドのフォーマットの一つとして完全に定着した今、楽しいバンドや踊れるバンドはたくさんいる。でも楽しいだけだったり、踊れるだけではこの規模まではたどり着けない。フレデリックがそこをクリアできたのは、楽しくて踊れるのは当たり前、そこにさらに自分たちにしかできないものを見せることができるバンドだから。
そしてさらにその先の景色までもが見えているのは、それに加えてライブで感動をも与えることができるから。ダンスロックの要素が強いバンドでそこまで思えるバンドはなかなかいない。
そう思えたこの日のZepp Tokyoはまさに「TOGENKYO」そのものだった。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.オワラセナイト
4.愛の迷惑
5.うわさのケムリの女の子
6.ミッドナイトグライダー
7.まちがいさがしの国
8.みつめるみつあみ
9.ナイトステップ
10.スローリーダンス
11.ディスコプール
12.パラレルロール
13.かなしいうれしい
14.シンクロック
15.リリリピート
16.オドループ
17.TOGENKYO
encore
18.FUTURE ICE CREAM
19.たりないeye
たりないeye
https://youtu.be/0m2mfFhUg8w
Next→ 12/28 COUNTDOWN JAPAN 17/18 @幕張メッセ
