a flood of circle presents ”BATTLE ROYAL 2017” GUEST:グッドモーニングアメリカ @新宿LOFT 12/12
- 2017/12/12
- 23:57
先月に続き、a flood of circleの新宿LOFTでの2マンライブシリーズ。この日は5daysのうちの4日目で、前日と翌日に続く3daysの2日目。
この日のゲストはグッドモーニングアメリカ。バンドのイメージ的には少々意外な組み合わせではあるが、グッドモーニングアメリカの主催フェスにフラッドは何度も出演しているため、前日のTHE NOVEMBERSや翌日のNothing's Carved In Stoneよりはわかりやすい繋がりである。
・グッドモーニングアメリカ
登場前のアナウンスで「フラッドとは幾度となく熱い対バンとしょうもない打ち上げを繰り広げてきた盟友」と紹介された、グッドモーニングアメリカ。
アナウンスが終わるとたなしんの声が鳴り響き、客席の間に隅にあるロッカー横の出入り口から出現するのだが、いつもとは異なり、革ジャンと革パンツ着用というフラッドスタイル。そのまま客席を練り歩きながら、観客の飲み物をもらったりしてステージへ。するとすでにスタンバイしていたメンバーのうち、渡邉とペギも黒、金廣はベージュという、まさかの全員革ジャン着用のバンドぐるみでのフラッドスタイル。これはかつて2組で首都圏以外の都市を廻った(しかも平日に)「カントリーロードツアー」でもやっていたらしいが、のっけからグドモのフラッドに対する愛が溢れている。
たなしんがステージにたどり着いてベースを持つと、普段はラストに演奏されることが多い「未来へのスパイラル」でいきなりスタート。金廣はサビで合唱を煽るが、やはりゲスト側ということでアウェーというのもあってか、いつものような大合唱というまではいかない。
「コピペ」「だけど不安です」と代表曲に初期の曲を交えてながらではあるが、アッパーな曲で攻めていく序盤から、何かが今までとは違う。もちろん革ジャンを着ているという見た目もそうだが、バンドの演奏、特にペギのドラムの手数の多さと一打一打の力強さがこれまでとは全く違う。もう1人だけ曲を別次元に引き上げていると言ってもいいくらいだが、たなしんも直後のMCでペギのドラムの凄まじさに言及してしまうほど。
そのMCではたなしんが再びベースを置いて客席を練り歩きながら、
「革ジャンだけじゃなくて革パンも履いてますけど、フェイクレザーです!(笑)
俺らしいでしょ?(笑)」
「ライブハウスはこれくらいスペースがあった方が自由に動けるからいいよね~(笑)」
(「俺はこのアウェー感に逆に燃えている」と言った金廣に対して)
「ロックだね~(笑)」
と、練り歩けるスペースがあることを逆にネタにしながら笑わせ、客席の中でファイヤーを決めてから「イチ、ニッ、サンでジャンプ」へ。
初期のようなメロコア色が強くもなければ、「未来へのスパイラル」でブレイクした当時に周囲から言われまくった「4つ打ちダンスロック」でもない。(同時期にブレイクしたKANA-BOONやキュウソネコカミ、KEYTALKと同じようにそう言われていたが、なぜこのバンドがそう言われていたのか、今聴いても全く意味がわからない)
だからこそこのバンドの楽曲の幅の広さと、最も大事なメロディの良さを実感させる。それは続く「少年」、そしてリリースされたばかりの最新アルバムのリード曲「風と鳴いて融けてゆけ」もそう。タイミング的にはもうちょっと新作の曲が多くなるんじゃないかとも思っていたが、それはこれからスタートする自身のツアーまでのお楽しみなのだろうか。
渡邉による気合い入りまくりのMCから、金廣がフラッドとの想い出を語りつつ、
「クソみたいだなぁって思う毎日を過ごしていても、地震とかが来たらそのクソみたいな日々が何よりも大切なものだ、っていうことに気付く。俺たちの「餞の詩」っていう曲でもそういうことを歌ってるんだけど、次にやる曲が「餞の詩」と同じ誕生日だと知って、本当に嬉しかった」
と言って演奏されたのは、東北の震災のあとに作られたフラッドの「感光」のカバー。ほぼ完コピというくらいに完成度の高い演奏と、それまでの楽しい雰囲気を一変させるかのような、金廣のハイトーンボイスでの
「生きていて」
のフレーズの絶唱。そこには、グドモとフラッドは確かに打ち上げでワイワイしたり悪ノリしたりもするのかもしれないけれど、こうした震災や、シリアスな日常のことさえも語り合ってきた関係なんじゃないだろうか、と思えるものがあった。
グドモは「未来へのスパイラル」でブレイクしてから、同じ高校の同級生であるTOTALFATや後輩であるBIGMAMAを抜き去るくらいの勢いで突き進んでいた。しかしそう簡単にはいかなかった。武道館ワンマンはソールドアウトせず、金廣は
「正直、大成功とは言えない」
とそのステージで語り、新作リリース前にはポリープの手術を受け、やや状況が落ち着いてきたようにも見える。しかしこの日のライブからはグドモは今よりももっともっと「輝く方へ」行ける。そう思わせてくれるような力があったし、この日のパフォーマンスはもちろん、鳴らす一音一音からフラッドへの愛が溢れていた。最後の「輝く方へ」の合唱はその思いが伝わったかのように、最初の「未来へのスパイラル」よりも大きかった。
1.未来へのスパイラル
2.コピペ
3.だけど不安です
4.イチ、ニッ、サンでジャンプ
5.少年
6.風と鳴いて融けてゆけ
7.感光 (フラッドのカバー)
8.輝く方へ
風と鳴いて融けてゆけ
https://youtu.be/cBiS8KfLh6k
・a flood of circle
そんなグドモの愛を受けまくったフラッド、いつものSEで登場すると、グドモとは対照的に革ジャンを着ているのは亮介のみだが、これは前日のライブで全員が革ジャンを着てライブをやったら、あまりに暑すぎてHISAYOと一丘が6曲目あたりですぐ脱いでしまったからとのこと。それを経験したことにより、一丘は
「ずっと革ジャンを着てライブをやってる亮介がマジですごいと思った」
と褒めちぎっていたが、「Summertime Blues II」を歌い出した時から、その亮介はいつもに比べたら声が思ったように出ておらず、喉がかなり厳しそうだった。
土曜日に西川口でランクヘッドと対バン、日曜日には仙台でスピッツのイベントに出演、昨日のこのLOFTでのTHE NOVEMBERSとの対バンを経てのこの日。やはり連戦に次ぐ連戦と休みなしの移動により、疲れが溜まっているのだろうか。
「何かをなくしながら それでもいかなくちゃ」
というフレーズが岡庭失踪時から今に至るまでフラッドの生き方そのもののように響く「ロシナンテ」を歌うと、亮介がギターを弾きながら、かつての「カントリーロードツアー」を
「誰の特にもならないツアー(笑)」
と称しながら、「カントリーロード」を口ずさみ、ファストなロックンロール「賭け (Bet! Bet! Bet!」へ。さらにオオカミの咆哮のような合唱が響いた「Wolf Gang La La La」に続く。2曲目の「Diver's High」もそうだが、前半は同じフレーズを合唱できるような曲で揃えてきたという印象。
しかしながら亮介の声をカバーするというか、連戦続きで逆にさらに鍛え上げられたかのようにバンドの演奏は一切の不安はなく、前回のLOFTからたった1ヶ月でさらに進化を果たしているように感じる。この日はペギに触発されたのか、一丘のドラムがいつにも増して激しく、さらにはテツのギターがさらに気持ちが乗っている。というか、ライブを重ね、このバンドで時間を過ごすごとにテツのギターは一層「このバンドのギターは俺しかいない」という凄みを感じさせるようなものになっている。その様は何があっても転がり続けていくという決意を持ったこのバンドにぴったりである。
亮介「あんまり一年を振り返るようなことはしないんですけど、見ちゃったんですよ。今年の漢字ってやつを。「北」だよ?「北」」
一丘「北でスピッツと対バンした一年だった、っていうことじゃないの?(笑)」
亮介「(笑)俺は怒ってるんだよ」
と社会や世界に対する自身の姿勢を表明してから「BLUE」、さらに「実家」と称するこのLOFTで演奏される率が非常に高い初期のエモーショナルなバラード「308」と幅広い曲が演奏されていくが、このLOFTでの5daysではほとんどの曲が被っていないというセトリを組んでいるあたり、この4人でのフラッドがこれまでのバンドの中で最も完全体に近づいていることを実感させられる。今まではこうして様々な曲を演奏できるようになる前にギタリストが変わってしまっていただけに。
「実家に友達を呼んだみたいだぜ~。でもグッドモーニングアメリカ、最初から友達だったわけじゃないんだぜ~。いろんなことを話し合ったりして、時間を共有して、友達になったんだぜ~。
新宿、八王子、ロンドン、メンフィス。いろんなところに行っていろんな人に会ったけど、地位や名誉なんか関係ないんだぜ。なぁ、人類は月に行ったことだってあるんだぜ」
と亮介がまるで即興のブルースを歌うかのように言葉を紡ぎながら演奏されたのは、月シリーズの最新作であり、佐々木亮介という男のロマンチックさに溢れた「Honey Moon Song」。不思議なことに、この辺りから亮介の声は序盤よりも明らかに出るようになっていた。普通なら喉を使うとより出なくなっていくはずであるのに。こうした姿を見ると、やはり亮介はロックンロールをやるために生まれてきた男なのだと思う。
「俺、去年の4月に東京に出てきたから、友達がこっちにあんまりいないんだけど、こうしてBATTLE ROYALで対バンしてたら友達が増えて本当に嬉しい(笑)」
と、演奏している時より明らかに幼さを感じさせるテツがタイトルコールをした「FUCK FOREVER」はなぜか「友達に捧げる曲」として演奏され、HISAYOのゴリゴリのベースのイントロから始まる「Blood Red Shoes」で瞬時に客席は沸騰し、やや大人しさすら感じた空気はどこへやら、ダイバーまでもが続出する盛り上がりとなる。
「俺たちとあんたらの明日に捧げる!」
と言って演奏されたのはおなじみの「シーガル」だが、亮介はやはり喉がキツかったのか、サビの途中で自身は歌うのをやめ、客席にマイクを向けた。それが大合唱を生み出していたが、次の「Boy」では至って苦しい部分を見せずに歌っていたあたり、本当にタフなボーカリストである。
「ありがとう、大好き!」
と亮介がこの日集まった観客に向かって叫ぶと、バンドの代表曲のタイトルやフレーズが歌詞に並ぶ、10周年を記念して生まれた「花」をクライマックスかのように鳴らすと、
「まだまだ行けそうな気がするよ!みんなもそうだろ!?まだまだ行けんだろ!」
とギターをかき鳴らしながら亮介が叫んだので、今日はまだやるのか!?と思ったら、やはりこの日はこれで本編終了だった。
どうやら「まだ行ける気がするよ!」というのはこれからのフラッドが、という意味だったようだ。そりゃあ、こんなに良いライブやってるんだからそうだよなぁ。
アンコールに再びメンバーが姿を現わすと、「スカイウォーカー」で再びアッパーに…と思いきや曲の途中でピタッと演奏をいったん停止し、亮介が
「希望と絶望が 循環ではなく未来へのスパイラル」
と、グドモの「未来へのスパイラル」を歌い始めると、ライブタイトルに合わせてかボクシンググローブを装着した金廣もステージに現れ、今回の対バンでは恒例のコラボ。POLYSICSの「Digital Dancing Zombiez」ほどにはガラッと雰囲気を変えるようなアレンジだったわけではないが、とにかく亮介が金廣の高いキーに合わせるのがキツそうで、これは普段では全く見れない光景であった。
「未来へのスパイラル」をまるまる1曲演奏すると「スカイウォーカー」に戻るのだが、金廣は「スカイウォーカー」もしっかり歌える。どうやら「308」も弾き語りできるらしく、亮介はそれをいつか録音したいと語っていたが、そんな凄まじいほどのフラッド愛に応えて、「プシケ」のメンバー紹介パートのみを演奏したかと思いきや、最後に
「ゲストボーカル!金廣真悟!」
とフラッドのメンバーと同じように金廣を紹介した。そこからは金廣のフラッドへの愛と同じように、フラッドからグドモへの愛に溢れていた。
そしてたなしんはそんな金廣とフラッドとのコラボを客席からずっと見ていた。果たして、いつもは隣で歌っている金廣がステージで歌っている姿を客席で見ているのはどんな気分なんだろうか。不思議な気分なのか、自分のバンドのボーカリストを誇らしく思うものなのか。
そしてラストはもはやBATTLE ROYALのテーマソング的なイメージもついてきた「見る前に跳べ」でやはりテツはぴょんぴょんとその場を飛び跳ねながらギターを弾いていた。観客の手拍子が幸せな空間を作り出していた。
本当にまだまだいけるし、まだまだ行かなくちゃダメなバンドだ、フラッドは。
おそらく自分が今年フラッドを見るのはこの日が最後。つまり2017年のフラッド納めである。今年もワンマンも対バンも何箇所も行ったし、いろんなフェスやイベントでもライブを見た。そんなフラッドに関しては今年も充実した1年だったようにも思うが、今年は本当に悔しい1年だった。
アルバム「NEW TRIBE」も内容の良さに反してそこまで売り上げもツアーファイナルのZeppの動員も良くなかったし、このLOFTでの5daysも売り切れたのは翌日の13日だけ。
自分は本当にフラッドが日本でも随一のカッコいいロックンロールバンドだと思っているし、メロディの良さという面でもアリーナクラスのバンドに全く負けていないと思っているので、この状況は実に歯がゆい。
かと言って「大々的なタイアップやテレビ出演を中心にしたプロモーションを!」っていうバンドでもない。つまりはやっぱりこうして一本でも多くライブをやって、少しでも多くの人に見てもらい、カッコ良さに気付いてもらうという地道な活動を続けていくしかない。
後ろからは後からデビューしたロックンロールバンドたちの足音も聞こえてきているが、フラッドがこうして転がり続けた先にもっと大きなステージが待っていたら、そうしたバンドたちも本当に心強いと思う。
そこまで思えるのは、フラッドのライブを見るといつも「また明日から頑張ろう」という前向きになれる力をもらえるから。「可愛さ」も「癒し」も「オシャレさ」も全くない。ただひたすら「カッコいい」と思えるバンドの姿だけをずっと求めている。
1.Summertime Blues II
2.Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)
3.ロシナンテ
4.賭け (Bet! Bet! Bet!)
5.Wolf Gang La La La
6.BLUE
7.308
8.Honey Moon Song
9.FUCK FOREVER
10.Blood Red Shoes
11.シーガル
12.Boy
13.花
encore
14.スカイウォーカー ~ 未来へのスパイラル w/ 金廣真悟
15.見る前に跳べ
BLUE
https://youtu.be/rxJdDUKrVmM
Next→ 12/14 米津玄師 @パシフィコ横浜
この日のゲストはグッドモーニングアメリカ。バンドのイメージ的には少々意外な組み合わせではあるが、グッドモーニングアメリカの主催フェスにフラッドは何度も出演しているため、前日のTHE NOVEMBERSや翌日のNothing's Carved In Stoneよりはわかりやすい繋がりである。
・グッドモーニングアメリカ
登場前のアナウンスで「フラッドとは幾度となく熱い対バンとしょうもない打ち上げを繰り広げてきた盟友」と紹介された、グッドモーニングアメリカ。
アナウンスが終わるとたなしんの声が鳴り響き、客席の間に隅にあるロッカー横の出入り口から出現するのだが、いつもとは異なり、革ジャンと革パンツ着用というフラッドスタイル。そのまま客席を練り歩きながら、観客の飲み物をもらったりしてステージへ。するとすでにスタンバイしていたメンバーのうち、渡邉とペギも黒、金廣はベージュという、まさかの全員革ジャン着用のバンドぐるみでのフラッドスタイル。これはかつて2組で首都圏以外の都市を廻った(しかも平日に)「カントリーロードツアー」でもやっていたらしいが、のっけからグドモのフラッドに対する愛が溢れている。
たなしんがステージにたどり着いてベースを持つと、普段はラストに演奏されることが多い「未来へのスパイラル」でいきなりスタート。金廣はサビで合唱を煽るが、やはりゲスト側ということでアウェーというのもあってか、いつものような大合唱というまではいかない。
「コピペ」「だけど不安です」と代表曲に初期の曲を交えてながらではあるが、アッパーな曲で攻めていく序盤から、何かが今までとは違う。もちろん革ジャンを着ているという見た目もそうだが、バンドの演奏、特にペギのドラムの手数の多さと一打一打の力強さがこれまでとは全く違う。もう1人だけ曲を別次元に引き上げていると言ってもいいくらいだが、たなしんも直後のMCでペギのドラムの凄まじさに言及してしまうほど。
そのMCではたなしんが再びベースを置いて客席を練り歩きながら、
「革ジャンだけじゃなくて革パンも履いてますけど、フェイクレザーです!(笑)
俺らしいでしょ?(笑)」
「ライブハウスはこれくらいスペースがあった方が自由に動けるからいいよね~(笑)」
(「俺はこのアウェー感に逆に燃えている」と言った金廣に対して)
「ロックだね~(笑)」
と、練り歩けるスペースがあることを逆にネタにしながら笑わせ、客席の中でファイヤーを決めてから「イチ、ニッ、サンでジャンプ」へ。
初期のようなメロコア色が強くもなければ、「未来へのスパイラル」でブレイクした当時に周囲から言われまくった「4つ打ちダンスロック」でもない。(同時期にブレイクしたKANA-BOONやキュウソネコカミ、KEYTALKと同じようにそう言われていたが、なぜこのバンドがそう言われていたのか、今聴いても全く意味がわからない)
だからこそこのバンドの楽曲の幅の広さと、最も大事なメロディの良さを実感させる。それは続く「少年」、そしてリリースされたばかりの最新アルバムのリード曲「風と鳴いて融けてゆけ」もそう。タイミング的にはもうちょっと新作の曲が多くなるんじゃないかとも思っていたが、それはこれからスタートする自身のツアーまでのお楽しみなのだろうか。
渡邉による気合い入りまくりのMCから、金廣がフラッドとの想い出を語りつつ、
「クソみたいだなぁって思う毎日を過ごしていても、地震とかが来たらそのクソみたいな日々が何よりも大切なものだ、っていうことに気付く。俺たちの「餞の詩」っていう曲でもそういうことを歌ってるんだけど、次にやる曲が「餞の詩」と同じ誕生日だと知って、本当に嬉しかった」
と言って演奏されたのは、東北の震災のあとに作られたフラッドの「感光」のカバー。ほぼ完コピというくらいに完成度の高い演奏と、それまでの楽しい雰囲気を一変させるかのような、金廣のハイトーンボイスでの
「生きていて」
のフレーズの絶唱。そこには、グドモとフラッドは確かに打ち上げでワイワイしたり悪ノリしたりもするのかもしれないけれど、こうした震災や、シリアスな日常のことさえも語り合ってきた関係なんじゃないだろうか、と思えるものがあった。
グドモは「未来へのスパイラル」でブレイクしてから、同じ高校の同級生であるTOTALFATや後輩であるBIGMAMAを抜き去るくらいの勢いで突き進んでいた。しかしそう簡単にはいかなかった。武道館ワンマンはソールドアウトせず、金廣は
「正直、大成功とは言えない」
とそのステージで語り、新作リリース前にはポリープの手術を受け、やや状況が落ち着いてきたようにも見える。しかしこの日のライブからはグドモは今よりももっともっと「輝く方へ」行ける。そう思わせてくれるような力があったし、この日のパフォーマンスはもちろん、鳴らす一音一音からフラッドへの愛が溢れていた。最後の「輝く方へ」の合唱はその思いが伝わったかのように、最初の「未来へのスパイラル」よりも大きかった。
1.未来へのスパイラル
2.コピペ
3.だけど不安です
4.イチ、ニッ、サンでジャンプ
5.少年
6.風と鳴いて融けてゆけ
7.感光 (フラッドのカバー)
8.輝く方へ
風と鳴いて融けてゆけ
https://youtu.be/cBiS8KfLh6k
・a flood of circle
そんなグドモの愛を受けまくったフラッド、いつものSEで登場すると、グドモとは対照的に革ジャンを着ているのは亮介のみだが、これは前日のライブで全員が革ジャンを着てライブをやったら、あまりに暑すぎてHISAYOと一丘が6曲目あたりですぐ脱いでしまったからとのこと。それを経験したことにより、一丘は
「ずっと革ジャンを着てライブをやってる亮介がマジですごいと思った」
と褒めちぎっていたが、「Summertime Blues II」を歌い出した時から、その亮介はいつもに比べたら声が思ったように出ておらず、喉がかなり厳しそうだった。
土曜日に西川口でランクヘッドと対バン、日曜日には仙台でスピッツのイベントに出演、昨日のこのLOFTでのTHE NOVEMBERSとの対バンを経てのこの日。やはり連戦に次ぐ連戦と休みなしの移動により、疲れが溜まっているのだろうか。
「何かをなくしながら それでもいかなくちゃ」
というフレーズが岡庭失踪時から今に至るまでフラッドの生き方そのもののように響く「ロシナンテ」を歌うと、亮介がギターを弾きながら、かつての「カントリーロードツアー」を
「誰の特にもならないツアー(笑)」
と称しながら、「カントリーロード」を口ずさみ、ファストなロックンロール「賭け (Bet! Bet! Bet!」へ。さらにオオカミの咆哮のような合唱が響いた「Wolf Gang La La La」に続く。2曲目の「Diver's High」もそうだが、前半は同じフレーズを合唱できるような曲で揃えてきたという印象。
しかしながら亮介の声をカバーするというか、連戦続きで逆にさらに鍛え上げられたかのようにバンドの演奏は一切の不安はなく、前回のLOFTからたった1ヶ月でさらに進化を果たしているように感じる。この日はペギに触発されたのか、一丘のドラムがいつにも増して激しく、さらにはテツのギターがさらに気持ちが乗っている。というか、ライブを重ね、このバンドで時間を過ごすごとにテツのギターは一層「このバンドのギターは俺しかいない」という凄みを感じさせるようなものになっている。その様は何があっても転がり続けていくという決意を持ったこのバンドにぴったりである。
亮介「あんまり一年を振り返るようなことはしないんですけど、見ちゃったんですよ。今年の漢字ってやつを。「北」だよ?「北」」
一丘「北でスピッツと対バンした一年だった、っていうことじゃないの?(笑)」
亮介「(笑)俺は怒ってるんだよ」
と社会や世界に対する自身の姿勢を表明してから「BLUE」、さらに「実家」と称するこのLOFTで演奏される率が非常に高い初期のエモーショナルなバラード「308」と幅広い曲が演奏されていくが、このLOFTでの5daysではほとんどの曲が被っていないというセトリを組んでいるあたり、この4人でのフラッドがこれまでのバンドの中で最も完全体に近づいていることを実感させられる。今まではこうして様々な曲を演奏できるようになる前にギタリストが変わってしまっていただけに。
「実家に友達を呼んだみたいだぜ~。でもグッドモーニングアメリカ、最初から友達だったわけじゃないんだぜ~。いろんなことを話し合ったりして、時間を共有して、友達になったんだぜ~。
新宿、八王子、ロンドン、メンフィス。いろんなところに行っていろんな人に会ったけど、地位や名誉なんか関係ないんだぜ。なぁ、人類は月に行ったことだってあるんだぜ」
と亮介がまるで即興のブルースを歌うかのように言葉を紡ぎながら演奏されたのは、月シリーズの最新作であり、佐々木亮介という男のロマンチックさに溢れた「Honey Moon Song」。不思議なことに、この辺りから亮介の声は序盤よりも明らかに出るようになっていた。普通なら喉を使うとより出なくなっていくはずであるのに。こうした姿を見ると、やはり亮介はロックンロールをやるために生まれてきた男なのだと思う。
「俺、去年の4月に東京に出てきたから、友達がこっちにあんまりいないんだけど、こうしてBATTLE ROYALで対バンしてたら友達が増えて本当に嬉しい(笑)」
と、演奏している時より明らかに幼さを感じさせるテツがタイトルコールをした「FUCK FOREVER」はなぜか「友達に捧げる曲」として演奏され、HISAYOのゴリゴリのベースのイントロから始まる「Blood Red Shoes」で瞬時に客席は沸騰し、やや大人しさすら感じた空気はどこへやら、ダイバーまでもが続出する盛り上がりとなる。
「俺たちとあんたらの明日に捧げる!」
と言って演奏されたのはおなじみの「シーガル」だが、亮介はやはり喉がキツかったのか、サビの途中で自身は歌うのをやめ、客席にマイクを向けた。それが大合唱を生み出していたが、次の「Boy」では至って苦しい部分を見せずに歌っていたあたり、本当にタフなボーカリストである。
「ありがとう、大好き!」
と亮介がこの日集まった観客に向かって叫ぶと、バンドの代表曲のタイトルやフレーズが歌詞に並ぶ、10周年を記念して生まれた「花」をクライマックスかのように鳴らすと、
「まだまだ行けそうな気がするよ!みんなもそうだろ!?まだまだ行けんだろ!」
とギターをかき鳴らしながら亮介が叫んだので、今日はまだやるのか!?と思ったら、やはりこの日はこれで本編終了だった。
どうやら「まだ行ける気がするよ!」というのはこれからのフラッドが、という意味だったようだ。そりゃあ、こんなに良いライブやってるんだからそうだよなぁ。
アンコールに再びメンバーが姿を現わすと、「スカイウォーカー」で再びアッパーに…と思いきや曲の途中でピタッと演奏をいったん停止し、亮介が
「希望と絶望が 循環ではなく未来へのスパイラル」
と、グドモの「未来へのスパイラル」を歌い始めると、ライブタイトルに合わせてかボクシンググローブを装着した金廣もステージに現れ、今回の対バンでは恒例のコラボ。POLYSICSの「Digital Dancing Zombiez」ほどにはガラッと雰囲気を変えるようなアレンジだったわけではないが、とにかく亮介が金廣の高いキーに合わせるのがキツそうで、これは普段では全く見れない光景であった。
「未来へのスパイラル」をまるまる1曲演奏すると「スカイウォーカー」に戻るのだが、金廣は「スカイウォーカー」もしっかり歌える。どうやら「308」も弾き語りできるらしく、亮介はそれをいつか録音したいと語っていたが、そんな凄まじいほどのフラッド愛に応えて、「プシケ」のメンバー紹介パートのみを演奏したかと思いきや、最後に
「ゲストボーカル!金廣真悟!」
とフラッドのメンバーと同じように金廣を紹介した。そこからは金廣のフラッドへの愛と同じように、フラッドからグドモへの愛に溢れていた。
そしてたなしんはそんな金廣とフラッドとのコラボを客席からずっと見ていた。果たして、いつもは隣で歌っている金廣がステージで歌っている姿を客席で見ているのはどんな気分なんだろうか。不思議な気分なのか、自分のバンドのボーカリストを誇らしく思うものなのか。
そしてラストはもはやBATTLE ROYALのテーマソング的なイメージもついてきた「見る前に跳べ」でやはりテツはぴょんぴょんとその場を飛び跳ねながらギターを弾いていた。観客の手拍子が幸せな空間を作り出していた。
本当にまだまだいけるし、まだまだ行かなくちゃダメなバンドだ、フラッドは。
おそらく自分が今年フラッドを見るのはこの日が最後。つまり2017年のフラッド納めである。今年もワンマンも対バンも何箇所も行ったし、いろんなフェスやイベントでもライブを見た。そんなフラッドに関しては今年も充実した1年だったようにも思うが、今年は本当に悔しい1年だった。
アルバム「NEW TRIBE」も内容の良さに反してそこまで売り上げもツアーファイナルのZeppの動員も良くなかったし、このLOFTでの5daysも売り切れたのは翌日の13日だけ。
自分は本当にフラッドが日本でも随一のカッコいいロックンロールバンドだと思っているし、メロディの良さという面でもアリーナクラスのバンドに全く負けていないと思っているので、この状況は実に歯がゆい。
かと言って「大々的なタイアップやテレビ出演を中心にしたプロモーションを!」っていうバンドでもない。つまりはやっぱりこうして一本でも多くライブをやって、少しでも多くの人に見てもらい、カッコ良さに気付いてもらうという地道な活動を続けていくしかない。
後ろからは後からデビューしたロックンロールバンドたちの足音も聞こえてきているが、フラッドがこうして転がり続けた先にもっと大きなステージが待っていたら、そうしたバンドたちも本当に心強いと思う。
そこまで思えるのは、フラッドのライブを見るといつも「また明日から頑張ろう」という前向きになれる力をもらえるから。「可愛さ」も「癒し」も「オシャレさ」も全くない。ただひたすら「カッコいい」と思えるバンドの姿だけをずっと求めている。
1.Summertime Blues II
2.Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)
3.ロシナンテ
4.賭け (Bet! Bet! Bet!)
5.Wolf Gang La La La
6.BLUE
7.308
8.Honey Moon Song
9.FUCK FOREVER
10.Blood Red Shoes
11.シーガル
12.Boy
13.花
encore
14.スカイウォーカー ~ 未来へのスパイラル w/ 金廣真悟
15.見る前に跳べ
BLUE
https://youtu.be/rxJdDUKrVmM
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