ASIAN KUNG-FU GENERATION × FEEDER Tour2017 Supported by PIA @豊洲PIT 12/8
- 2017/12/09
- 05:18
近年は開催されていないが、アジカンはNANO-MUGEN FES.という今となっては当たり前の存在となったアーティスト主催フェスの先駆け的なフェスを行なっていた。
ライブハウスの自主企画的なライブから始まったNANO-MUGENはアジカンの規模が巨大になるにつれてフェス自体の規模も拡大し、最終的には横浜アリーナでの大規模なものとなったが、このフェスが他のアーティスト主催フェスと最も違っていたのは、海外のアーティストを招いたフェスであるという点である。
WeezerやManic Street Preachers、Suede、Ashなど、世界のフェスでもメインステージに立っているアーティストも多々出演していたのだが、そこに名を連ねたこともあるイギリスのロックバンド・FEEDERとアジカンが久しぶりに邂逅を果たし、スプリットツアーを開催。
タイトなスケジュールで各地を回ってきたツアーのファイナルがこの日の豊洲PIT。各地で迎えられているスペシャルゲストはこの日はART-SCHOOL。
・ART-SCHOOL
この日のゲストとして迎えられたART-SCHOOL。不穏なSEで中尾憲太郎(ベース)、櫻井雄一(ドラム)のサポートメンバーとともに帽子を被った木下理樹と戸高賢史の計4人が登場すると、静閑な空気に包まれる「シャーロット」でスタートするのだが、「エイジ オブ イノセンス」からは一気に戸高が轟音ギターを炸裂させ、熱狂ではないが会場は静かな、だが確かな熱気に包まれていく。中尾のダウンピッキングを多様するベースプレイはNUMBER GIRL時代から変わらずに力強い。
戸高「俺は1999年のフジロックにFEEDERを見に行ったりしてたんで、こうして呼んでもらえるのが本当に嬉しいです。木下さんは?」
木下「あ、僕も2組とも大好きなバンドなんで、本当に嬉しいです」
戸高「俺が言ったこととまるっきり同じじゃねーか(笑)」
と、戸高がかつてよりも明るく朗らかになったように感じるのは、やはりMONOEYESのメンバーとして、人間力に満ち溢れた細美武士と活動をともにするようになったからだろうか。昔は一言も話さないような時の方が多かっただけに。
しかしながらリズム隊の力強さとともに木下と戸高のギターのメロディも美しさを増していくのが「Promised land」「butterfly kiss」という中盤だが、それに比例して木下の声はどんどん出なくなっている。普通は徐々に声が出るようになっていくようなものだが、そんな常識が全く通用しないくらいに木下は何年経っても全く歌が上手くならない。むしろ下手になってる感すらある。
だからと言ってダメなのかというとそういうわけでもなく、ART-SCHOOLの音楽性それすなわち木下理樹の人間性であるために、歌が下手であることによってダークな歌詞の曲に説得力が生まれてくるというのが実にこのバンドの厄介なところである。
木下「アジカンは特に売れる前から一緒にやってましたから、こうしてやれるのが感慨深いですね。いろいろ思い出もあるんですけど、それは最後の方に言います(笑)」
戸高「もう最後の方だろ!(笑)言うタイミング今しかないだろ!(笑)」
木下「(笑)
えー、昔ゴッチが「FADE TO BLACK」っていう曲を好きだって言ってくれて。僕も好きな曲なんですけど、親族が死んだ時に作った曲なんで、ちょっと複雑だったんですけど、ゴッチがそう言ってくれたんならシングルで出せば良かったなって(笑)」
戸高「そんな話しながら次にやる曲それじゃないっていうね(笑)」
木下「愚か者ですからね(笑)」
というかつてのライブの雰囲気や空気からは想像できないくらいの2人の漫才のようなやり取りから、まさに愚か者という言葉がタイトルになっている「foolish」、そして最後にはゴッチのリクエストに応えるかのように、鮮やかなギターサウンドの光が降り注ぐような「FADE TO BLACK」。木下の声はより一層出なくなっていたけれど。
1.シャーロット
2.エイジ オブ イノセンス
3.real love/slow dawn
4.Promised land
5.butterfliy kiss
6.foolish
7.BOY MEETS GIRL
8.FADE TO BLACK
FADE TO BLACK
https://youtu.be/jP1wSIra2JI
・FEEDER
SEが鳴ると野太い声に迎えられて登場した、FEEDER。グラント(ボーカル&ギター)、タカ・ヒロセ(ベース)、カール(ドラム)の3人に加え、ギタリストとキーボーディストを加えての5人編成。
しかしながらかつてNANO-MUGEN出演時には長髪で中分けという髪型がダンディさを醸し出していた日本人メンバーのタカが、メガネにモヒカンという別人みたいな出で立ちのワイルドさを醸し出しており、最初は同一人物だと信じられなかったほど。
最初はじっくりと始まるが、徐々にパワーポップ、パンク、さらには壮大なバラードまでと、様々なタイプの曲を演奏していくが、それもそのはずで、今年デビュー20周年の記念ベストがリリースされており、FEEDERを見に来たであろうファンは飛び跳ねまくるし、歌いまくる。
そのファンの想いに応えるようにバンドの演奏はパワフルになっていくのだが、やはり海外のバンドを見るとリズム隊の力強さは日本のバンドとは全く違うと言っていいくらい。(それはそれぞれの良さでもあるけれど)
タカが日本語でこのツアーに呼んでくれたアジカンへの感謝を語ってもいたが、基本的にMCをするのはボーカルのグラント。もう20年もやっていればすっかりベテランと言われてもいいものだが、歌っている姿からは全く褪せたりしたところがない。
しかしながらNANO-MUGENで見た時も感じたが、FEEDERの楽曲からはロックバンドとしてのパワフルさやストイックさが感じられると同時に、どこか土臭いというか、懐かしい気分にさせてくれる。それは同じイギリスの湿り気のあるOasisやArctic Monkeysともまた違う、このバンドならではの持ち味なんだろうか。
ラストの「JUST A DAY」ではアジカンのライブではまず100%いないダイバーまでもが出現するという凄まじい盛り上がりを見せ、メンバーたちは心からの笑顔で日本のファンに応えた。その笑顔はこのライブ、このツアーがどれだけ楽しかったかを物語っていたが、ファイナルだからか、メンバーはピックだけならずタオルなどもガンガン客席に投げ込むという大盤振る舞いを見せた。
また日本に来て欲しいな。
この日、客席にはFEEDERを見に来たであろう、日本に住んでいる海外出身(やはりイギリスだろうか?)の方々も数多く見られた。自分の生まれた国からはるかに離れた日本で暮らしながら、そこに自分たちの好きなバンドが来て、そのライブを見ることができる。
それは一体どんな気持ちなんだろうか。自分は海外に住むどころか、日本から出たことすらない。だけどもし海外に住むことになって、そこにアジカンがライブをしに来てくれて、そのライブを見ることができたら。それはやはり今のように当たり前にアジカンのライブを見るよりもはるかに嬉しいことなんだろうな。
1.UNIVERSE OF LIFE
2.INSOMNIA
3.RENEGADES
4.FEELING A MOMENT
5.PUSHING THE SENSES
6.LOST & FOUND
7.JUST THE WAY
8.COME BACK AROUND
9.ESKIMO or HIGH
10.FIGURE YOU OUT
11.BUCK ROGERS
12.JUST A DAY
JUST A DAY
https://youtu.be/asjkm-uzh80
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしていよいよアジカンがこのツアーを締めくくるべくステージに。SEもなしにシモリョー(キーボード)を加えた5人がステージに登場すると、ACIDMANの主催フェスで最初に演奏されて驚きを呼んだ「サイレン」からスタートし、リリース時よりも深みが増したアレンジとなった「無限グライダー」、もはやライブでこのアレンジではないバージョンを演奏するのを想像することすらできない「Re:Re:」と序盤は初期の曲を連発していくのだが、もうのっけからメンバーのテンションが本当に高い。というか気合いに満ち溢れている。
ゴッチのボーカルは声が本当に良く出ているし、潔のドラムはいつもよりもアタック感が強く、建さんは早くも汗をかくほど動きながらギターを弾いている。
これは間違いなくFEEDERの素晴らしいライブに触発されてのことだろうが、このアジカンの姿からも、このツアーがどれだけ素晴らしいものだったのか、FEEDERからどれだけ刺激を貰えたのかを物語っている。
「FEEDERのタカさんとはツイッターで知り合ったんだ。そうして世界中の色んなミュージシャンと繋がることができる。そう考えるとSNSも悪くないよね。みんなは俺のツイートにうんざりしてるかもしれないけど(笑)
でも俺たちが若い頃は海外のバンドの来日公演の情報さえもなかった。雑誌の裏を見て、来日するのか!って思ってチケット会社に電話したらもう売り切れてるとか(笑)
だから本当にいい時代になったと思うよ」
とMCもやはりどこかいつもよりも流暢に聞こえるくらいのテンションの高さ。山ちゃんはゴッチのそのMCにひたすら横で笑っている。
建さんが潔の方を向くと、2人で顔を見合わせながら、「1,2,3,4」とカウントを取って始まったのはリリースとしては最新シングルである「荒野を歩け」。建さんのギターがこれまでにないくらいに唸りまくり、それがすでに長い歴史を持つアジカンをさらに進化させている。
おなじみの「リライト」では間奏部分のセッションで
「今日は時間押すなって言われてる」
と言いながらも、
「芽生えてた感情 切って泣いて」
のフレーズを何度もレスポンスさせると、ゴッチはギターをいったんおろし、徐々にレスポンスを小さくし、さらにはラップ調になったりと、とても時間押すなと言われたとは思えないフリーキーな展開に。なのでいつもよりもこの部分は長く感じたが、それがサビでの爆発力をさらに強くしていたようにも思える。
「Easter」「猿の惑星」と「Wonder Future」収録曲ではロックシーンのど真ん中で鳴らすことを意識したソリッドなギターロックを見せ、
「期せずしてクリスマスっぽいセーターを着てきてしまいましたが(笑)」
と言うように緑色のセーターを着たゴッチが
「本番前に山ちゃんが潔の骨盤なんちゃらとかいう健康器具を壊しちゃって。7000円くらいするやつだから、バンドの中がギクシャクしてたんだけど(笑)、クリスマスには山ちゃんサンタが潔に骨盤なんちゃらっていうクリスマスプレゼントを届けてくれるはずです(笑)」
と言うと山ちゃんと潔も向かい合って笑い合う中で演奏されたのは、実にクリスマスらしい雰囲気の新曲「生者のマーチ」。ミドルテンポの、イルミネーションが灯る夜の街を歩いている情景が浮かぶようなメロディはアジカンのこれまでの名曲たちを彷彿とさせるが、こうしたクリスマスらしさを感じさせるような曲は意外となかっただけに、ここにきて新たな境地に達したとも言える。
そしてゴッチの叫ぶようなボーカルと建さんの轟音ギターが切なさを加速させた「ソラニン」から、シモリョーに合わせて手拍子が鳴り響き、宴の最後を思わせる「今を生きて」で終了。
「無限グライダー」というレア曲こそあったが、新曲を除けば他の曲は近年のフェスやイベントにおいてはおなじみの曲たちと言える。それだけに年末フェスもこの曲たちが軸になるのは間違いないだろう。
アンコールではFEEDERのスタッフがセッティングに参加していたので薄々予感していたが、やはりアジカンメンバーに招かれてFEEDERのメンバーが全員ステージに登場し、すでに制作しているというアルバムに収録される、グラントが提供した新曲「SLEEP」を披露。いかにもFEEDERらしいパワーポップさと英語と日本語が混ざり合う歌詞は提供曲ならではだが、グラントはギターとコーラスで参加する一方、他のFEEDERメンバーは一つのマイクで全員でコーラスしたり、それぞれが踊りまくっている様子が実に微笑ましい。
これで温かく締めかと思いきや、ゴッチはさらに木下理樹すらもステージに招き、タカ・ヒロセにMCを振ると、
「これはもう愛しかないよ!俺たちも大好きな曲だけど、アジカンがこのバンドのカバーやるのは初めてなんでしょ?」
と言って演奏されたのは、まさかのNirvana「Breed」のカバー。しかも歌い出しを木下理樹がたどたどし過ぎる英語で歌う。アジカンならではのストレートなギターロックにグラントのギターが重なることでNirvanaの持つオルタナ・グランジな面が引き出されていく。
FEEDERのメンバーはやはり踊りまくっているが、ドラムのカールはスティックを持って潔のドラムを一緒に叩きながらスマホで動画を撮影するというやりたい放題のお祭り騒ぎ。その姿はアジカンとFEEDERの間にはもはや国境や人種の壁なんてものは1ミリもない、ただただお互いをリスペクトするバンド同士に芽生えた友情を感じさせたし、それは演奏後に全員が笑顔で肩を組んだ姿からも明らかだった。
ライブそのものも本当に素晴らしかった(個人的には今年のZeppワンマンより良かったと思っている)と思っているが、何よりも嬉しかったのは、MCでのゴッチと山ちゃんのやり取りや、「荒野を歩け」の前での建さんと潔の向かい合ってのカウントなど、メンバー全員が本当に楽しそうにライブをしていたこと。
100%ファンが望んでいることだけをやるバンドなんて退屈だし、それをしないと続かないようならもう辞めて新しいことをした方がいい。でも今日のアジカンは、ファンが望むものもしっかりと見せながら、何よりも自分たちがバンドをやることを本当に楽しんでいた。一時期はライブでなかなかピリピリしたムードも見えていただけに、こんなアジカンの姿をずっと見ていたい。そしてそれが続いていってほしい。
この日、明らかにアジカンはFEEDERのライブから刺激を受けまくり、それが自分たちの力になっていた。アジカンはワンマンもいいが、こうして自分たちの好きなアーティストからの刺激がバンドに良い影響をもたらすバンドだ。そしてそれが1番現れていたのが、過去のNANO-MUGEN FES.でのライブだった。だからこそ、また横浜アリーナでNANO-MUGENが見たいんだよなぁ。
1.サイレン
2.無限グライダー
3.Re:Re:
4.荒野を歩け
5.リライト
6.Easter
7.猿の惑星
8.生者のマーチ
9.ソラニン
10.今を生きて
encore
11.SLEEP feat.FEEDER
12.Breed (Nirvanaのカバー) feat.FEEDER、木下理樹
荒野を歩け
https://youtu.be/AbaGY7TWq8A
Next→ 12/12 a flood of circle × グッドモーニングアメリカ @新宿LOFT
ライブハウスの自主企画的なライブから始まったNANO-MUGENはアジカンの規模が巨大になるにつれてフェス自体の規模も拡大し、最終的には横浜アリーナでの大規模なものとなったが、このフェスが他のアーティスト主催フェスと最も違っていたのは、海外のアーティストを招いたフェスであるという点である。
WeezerやManic Street Preachers、Suede、Ashなど、世界のフェスでもメインステージに立っているアーティストも多々出演していたのだが、そこに名を連ねたこともあるイギリスのロックバンド・FEEDERとアジカンが久しぶりに邂逅を果たし、スプリットツアーを開催。
タイトなスケジュールで各地を回ってきたツアーのファイナルがこの日の豊洲PIT。各地で迎えられているスペシャルゲストはこの日はART-SCHOOL。
・ART-SCHOOL
この日のゲストとして迎えられたART-SCHOOL。不穏なSEで中尾憲太郎(ベース)、櫻井雄一(ドラム)のサポートメンバーとともに帽子を被った木下理樹と戸高賢史の計4人が登場すると、静閑な空気に包まれる「シャーロット」でスタートするのだが、「エイジ オブ イノセンス」からは一気に戸高が轟音ギターを炸裂させ、熱狂ではないが会場は静かな、だが確かな熱気に包まれていく。中尾のダウンピッキングを多様するベースプレイはNUMBER GIRL時代から変わらずに力強い。
戸高「俺は1999年のフジロックにFEEDERを見に行ったりしてたんで、こうして呼んでもらえるのが本当に嬉しいです。木下さんは?」
木下「あ、僕も2組とも大好きなバンドなんで、本当に嬉しいです」
戸高「俺が言ったこととまるっきり同じじゃねーか(笑)」
と、戸高がかつてよりも明るく朗らかになったように感じるのは、やはりMONOEYESのメンバーとして、人間力に満ち溢れた細美武士と活動をともにするようになったからだろうか。昔は一言も話さないような時の方が多かっただけに。
しかしながらリズム隊の力強さとともに木下と戸高のギターのメロディも美しさを増していくのが「Promised land」「butterfly kiss」という中盤だが、それに比例して木下の声はどんどん出なくなっている。普通は徐々に声が出るようになっていくようなものだが、そんな常識が全く通用しないくらいに木下は何年経っても全く歌が上手くならない。むしろ下手になってる感すらある。
だからと言ってダメなのかというとそういうわけでもなく、ART-SCHOOLの音楽性それすなわち木下理樹の人間性であるために、歌が下手であることによってダークな歌詞の曲に説得力が生まれてくるというのが実にこのバンドの厄介なところである。
木下「アジカンは特に売れる前から一緒にやってましたから、こうしてやれるのが感慨深いですね。いろいろ思い出もあるんですけど、それは最後の方に言います(笑)」
戸高「もう最後の方だろ!(笑)言うタイミング今しかないだろ!(笑)」
木下「(笑)
えー、昔ゴッチが「FADE TO BLACK」っていう曲を好きだって言ってくれて。僕も好きな曲なんですけど、親族が死んだ時に作った曲なんで、ちょっと複雑だったんですけど、ゴッチがそう言ってくれたんならシングルで出せば良かったなって(笑)」
戸高「そんな話しながら次にやる曲それじゃないっていうね(笑)」
木下「愚か者ですからね(笑)」
というかつてのライブの雰囲気や空気からは想像できないくらいの2人の漫才のようなやり取りから、まさに愚か者という言葉がタイトルになっている「foolish」、そして最後にはゴッチのリクエストに応えるかのように、鮮やかなギターサウンドの光が降り注ぐような「FADE TO BLACK」。木下の声はより一層出なくなっていたけれど。
1.シャーロット
2.エイジ オブ イノセンス
3.real love/slow dawn
4.Promised land
5.butterfliy kiss
6.foolish
7.BOY MEETS GIRL
8.FADE TO BLACK
FADE TO BLACK
https://youtu.be/jP1wSIra2JI
・FEEDER
SEが鳴ると野太い声に迎えられて登場した、FEEDER。グラント(ボーカル&ギター)、タカ・ヒロセ(ベース)、カール(ドラム)の3人に加え、ギタリストとキーボーディストを加えての5人編成。
しかしながらかつてNANO-MUGEN出演時には長髪で中分けという髪型がダンディさを醸し出していた日本人メンバーのタカが、メガネにモヒカンという別人みたいな出で立ちのワイルドさを醸し出しており、最初は同一人物だと信じられなかったほど。
最初はじっくりと始まるが、徐々にパワーポップ、パンク、さらには壮大なバラードまでと、様々なタイプの曲を演奏していくが、それもそのはずで、今年デビュー20周年の記念ベストがリリースされており、FEEDERを見に来たであろうファンは飛び跳ねまくるし、歌いまくる。
そのファンの想いに応えるようにバンドの演奏はパワフルになっていくのだが、やはり海外のバンドを見るとリズム隊の力強さは日本のバンドとは全く違うと言っていいくらい。(それはそれぞれの良さでもあるけれど)
タカが日本語でこのツアーに呼んでくれたアジカンへの感謝を語ってもいたが、基本的にMCをするのはボーカルのグラント。もう20年もやっていればすっかりベテランと言われてもいいものだが、歌っている姿からは全く褪せたりしたところがない。
しかしながらNANO-MUGENで見た時も感じたが、FEEDERの楽曲からはロックバンドとしてのパワフルさやストイックさが感じられると同時に、どこか土臭いというか、懐かしい気分にさせてくれる。それは同じイギリスの湿り気のあるOasisやArctic Monkeysともまた違う、このバンドならではの持ち味なんだろうか。
ラストの「JUST A DAY」ではアジカンのライブではまず100%いないダイバーまでもが出現するという凄まじい盛り上がりを見せ、メンバーたちは心からの笑顔で日本のファンに応えた。その笑顔はこのライブ、このツアーがどれだけ楽しかったかを物語っていたが、ファイナルだからか、メンバーはピックだけならずタオルなどもガンガン客席に投げ込むという大盤振る舞いを見せた。
また日本に来て欲しいな。
この日、客席にはFEEDERを見に来たであろう、日本に住んでいる海外出身(やはりイギリスだろうか?)の方々も数多く見られた。自分の生まれた国からはるかに離れた日本で暮らしながら、そこに自分たちの好きなバンドが来て、そのライブを見ることができる。
それは一体どんな気持ちなんだろうか。自分は海外に住むどころか、日本から出たことすらない。だけどもし海外に住むことになって、そこにアジカンがライブをしに来てくれて、そのライブを見ることができたら。それはやはり今のように当たり前にアジカンのライブを見るよりもはるかに嬉しいことなんだろうな。
1.UNIVERSE OF LIFE
2.INSOMNIA
3.RENEGADES
4.FEELING A MOMENT
5.PUSHING THE SENSES
6.LOST & FOUND
7.JUST THE WAY
8.COME BACK AROUND
9.ESKIMO or HIGH
10.FIGURE YOU OUT
11.BUCK ROGERS
12.JUST A DAY
JUST A DAY
https://youtu.be/asjkm-uzh80
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしていよいよアジカンがこのツアーを締めくくるべくステージに。SEもなしにシモリョー(キーボード)を加えた5人がステージに登場すると、ACIDMANの主催フェスで最初に演奏されて驚きを呼んだ「サイレン」からスタートし、リリース時よりも深みが増したアレンジとなった「無限グライダー」、もはやライブでこのアレンジではないバージョンを演奏するのを想像することすらできない「Re:Re:」と序盤は初期の曲を連発していくのだが、もうのっけからメンバーのテンションが本当に高い。というか気合いに満ち溢れている。
ゴッチのボーカルは声が本当に良く出ているし、潔のドラムはいつもよりもアタック感が強く、建さんは早くも汗をかくほど動きながらギターを弾いている。
これは間違いなくFEEDERの素晴らしいライブに触発されてのことだろうが、このアジカンの姿からも、このツアーがどれだけ素晴らしいものだったのか、FEEDERからどれだけ刺激を貰えたのかを物語っている。
「FEEDERのタカさんとはツイッターで知り合ったんだ。そうして世界中の色んなミュージシャンと繋がることができる。そう考えるとSNSも悪くないよね。みんなは俺のツイートにうんざりしてるかもしれないけど(笑)
でも俺たちが若い頃は海外のバンドの来日公演の情報さえもなかった。雑誌の裏を見て、来日するのか!って思ってチケット会社に電話したらもう売り切れてるとか(笑)
だから本当にいい時代になったと思うよ」
とMCもやはりどこかいつもよりも流暢に聞こえるくらいのテンションの高さ。山ちゃんはゴッチのそのMCにひたすら横で笑っている。
建さんが潔の方を向くと、2人で顔を見合わせながら、「1,2,3,4」とカウントを取って始まったのはリリースとしては最新シングルである「荒野を歩け」。建さんのギターがこれまでにないくらいに唸りまくり、それがすでに長い歴史を持つアジカンをさらに進化させている。
おなじみの「リライト」では間奏部分のセッションで
「今日は時間押すなって言われてる」
と言いながらも、
「芽生えてた感情 切って泣いて」
のフレーズを何度もレスポンスさせると、ゴッチはギターをいったんおろし、徐々にレスポンスを小さくし、さらにはラップ調になったりと、とても時間押すなと言われたとは思えないフリーキーな展開に。なのでいつもよりもこの部分は長く感じたが、それがサビでの爆発力をさらに強くしていたようにも思える。
「Easter」「猿の惑星」と「Wonder Future」収録曲ではロックシーンのど真ん中で鳴らすことを意識したソリッドなギターロックを見せ、
「期せずしてクリスマスっぽいセーターを着てきてしまいましたが(笑)」
と言うように緑色のセーターを着たゴッチが
「本番前に山ちゃんが潔の骨盤なんちゃらとかいう健康器具を壊しちゃって。7000円くらいするやつだから、バンドの中がギクシャクしてたんだけど(笑)、クリスマスには山ちゃんサンタが潔に骨盤なんちゃらっていうクリスマスプレゼントを届けてくれるはずです(笑)」
と言うと山ちゃんと潔も向かい合って笑い合う中で演奏されたのは、実にクリスマスらしい雰囲気の新曲「生者のマーチ」。ミドルテンポの、イルミネーションが灯る夜の街を歩いている情景が浮かぶようなメロディはアジカンのこれまでの名曲たちを彷彿とさせるが、こうしたクリスマスらしさを感じさせるような曲は意外となかっただけに、ここにきて新たな境地に達したとも言える。
そしてゴッチの叫ぶようなボーカルと建さんの轟音ギターが切なさを加速させた「ソラニン」から、シモリョーに合わせて手拍子が鳴り響き、宴の最後を思わせる「今を生きて」で終了。
「無限グライダー」というレア曲こそあったが、新曲を除けば他の曲は近年のフェスやイベントにおいてはおなじみの曲たちと言える。それだけに年末フェスもこの曲たちが軸になるのは間違いないだろう。
アンコールではFEEDERのスタッフがセッティングに参加していたので薄々予感していたが、やはりアジカンメンバーに招かれてFEEDERのメンバーが全員ステージに登場し、すでに制作しているというアルバムに収録される、グラントが提供した新曲「SLEEP」を披露。いかにもFEEDERらしいパワーポップさと英語と日本語が混ざり合う歌詞は提供曲ならではだが、グラントはギターとコーラスで参加する一方、他のFEEDERメンバーは一つのマイクで全員でコーラスしたり、それぞれが踊りまくっている様子が実に微笑ましい。
これで温かく締めかと思いきや、ゴッチはさらに木下理樹すらもステージに招き、タカ・ヒロセにMCを振ると、
「これはもう愛しかないよ!俺たちも大好きな曲だけど、アジカンがこのバンドのカバーやるのは初めてなんでしょ?」
と言って演奏されたのは、まさかのNirvana「Breed」のカバー。しかも歌い出しを木下理樹がたどたどし過ぎる英語で歌う。アジカンならではのストレートなギターロックにグラントのギターが重なることでNirvanaの持つオルタナ・グランジな面が引き出されていく。
FEEDERのメンバーはやはり踊りまくっているが、ドラムのカールはスティックを持って潔のドラムを一緒に叩きながらスマホで動画を撮影するというやりたい放題のお祭り騒ぎ。その姿はアジカンとFEEDERの間にはもはや国境や人種の壁なんてものは1ミリもない、ただただお互いをリスペクトするバンド同士に芽生えた友情を感じさせたし、それは演奏後に全員が笑顔で肩を組んだ姿からも明らかだった。
ライブそのものも本当に素晴らしかった(個人的には今年のZeppワンマンより良かったと思っている)と思っているが、何よりも嬉しかったのは、MCでのゴッチと山ちゃんのやり取りや、「荒野を歩け」の前での建さんと潔の向かい合ってのカウントなど、メンバー全員が本当に楽しそうにライブをしていたこと。
100%ファンが望んでいることだけをやるバンドなんて退屈だし、それをしないと続かないようならもう辞めて新しいことをした方がいい。でも今日のアジカンは、ファンが望むものもしっかりと見せながら、何よりも自分たちがバンドをやることを本当に楽しんでいた。一時期はライブでなかなかピリピリしたムードも見えていただけに、こんなアジカンの姿をずっと見ていたい。そしてそれが続いていってほしい。
この日、明らかにアジカンはFEEDERのライブから刺激を受けまくり、それが自分たちの力になっていた。アジカンはワンマンもいいが、こうして自分たちの好きなアーティストからの刺激がバンドに良い影響をもたらすバンドだ。そしてそれが1番現れていたのが、過去のNANO-MUGEN FES.でのライブだった。だからこそ、また横浜アリーナでNANO-MUGENが見たいんだよなぁ。
1.サイレン
2.無限グライダー
3.Re:Re:
4.荒野を歩け
5.リライト
6.Easter
7.猿の惑星
8.生者のマーチ
9.ソラニン
10.今を生きて
encore
11.SLEEP feat.FEEDER
12.Breed (Nirvanaのカバー) feat.FEEDER、木下理樹
荒野を歩け
https://youtu.be/AbaGY7TWq8A
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