サンボマスター 今年は何かとはっちゃけたい! ~2017全国ツアー~ ゲスト:銀杏BOYZ @なんばHatch 11/11
- 2017/11/12
- 00:03
今年、アルバム「YES」を発売し、12月には初の日本武道館ワンマンを控えているサンボマスター。アルバム発売後のツアーはRoad to 武道館的な対バンツアーとなり、すでに各地で先輩から同世代、若手と様々なバンドと対バンを繰り広げているが、対バンツアーとしてはファイナルとなる大阪のなんばHatchの対バンは盟友である銀杏BOYZ。ということで、武道館ワンマン以来の銀杏BOYZのライブを目撃するべく、大阪まで行ってきたのである。
・銀杏BOYZ
先攻はゲストの銀杏BOYZ。18時ちょうどくらいに場内が暗転すると、最初にドラムの岡山健二が登場してドラムを叩き始め、ギターの加藤綾太、ベース藤原寛、ギター山本幹宗と順番に登場したメンバーが次々に演奏に加わっていき、最後に峯田和伸が登場するというオープニングは武道館の時と同様だが、峯田がギターを弾き始めると、3本のギターのフィードバックノイズの中から立ち上がってきたのは、銀杏BOYZトリビュートアルバムでサンボマスターがカバーしていた「NO FUTURE NO CRY」。ジャージというよりは黒装束のように見える服を着た峯田は早くもよだれでぐちゃぐちゃになりながら声を張り上げて歌い、間奏では客席に2回も飛び込むという完全ライブハウスモード。さすがに武道館でこのパフォーマンスはできなかったが、これはやはりかつて何度となく対バンし、互いに知り尽くした存在であるサンボマスターとの対バンだからこそのリミッターの振り切れ具合だったのだろうか。
「hello my friend そこにいるんだろ?」
と峯田がサビのフレーズを口にしてから歌い始めたのは、武道館では1曲目に演奏された「エンジェルベイビー」だが、直前の「NO FUTURE NO CRY」に引きづられてか、ロックとの出会いを歌った爽やかなロックというイメージのこの曲も完全にパンクと言っていいくらいのドシャメシャな演奏に。しかしその中でも演奏だけでなく、コーラスで峯田の歌を支える加藤と藤原の貢献度はライブを重ねるごとに増してきている。
するとアウトロから一転して峯田の
「ワンツー!」
というカウントからなだれ込んだのは「駆け抜けて性春」で客席はダイバーの応酬となり、峯田はCDではYUKIが歌っていたパートでは客席にマイクを向けたが、さすがに武道館ほどの大合唱にはならなかったのは今日がゲストという立ち位置だからだろうか。
早くも息が切れまくっている峯田が
「大阪のみなさん、お久しぶりです。今日は、大好きで大嫌いなバンドであるサンボマスターの33カ所を回るツアーのファイナルにお呼ばれして東京から来ました、銀杏BOYZです。
今年は音楽以外のこともたくさんやって、役名で呼んでくれる人もいますけど、正直複雑です(笑)
役の時の俺は普段の俺じゃないし、かと言ってこうしてライブをやってる時の俺が普段の俺かと言われるとなんとも言えない。でもこれが俺のやらなくちゃいけないことだから。本当は何にもしないで生きていたいけど(笑)
こういうライブハウスでは好きなように踊ったり騒いだりしてもいいし、じっと見ててもいいし。ここは北朝鮮じゃなくて民主国家の日本ですから。まぁ全員揃って振り付けをするのも楽しいかもしれないけど、俺はそういうことがやりたいわけじゃないから。
人を殺したりしなければなにやったっていいと思うしね」
とまくしたてながらアコギを手にし、ポップな「骨」では
「東京タワーのてっぺんから大阪までジャンプする」
とここが大阪であることを実感させてくれる。
「恋は永遠だって、知ってますか!?俺はつい最近知りました!」
という最新シングル「恋は永遠」では峯田がタンバリンを叩きながら歌うのだが、そのタンバリンを頭に乗せるも、歌っているとすぐに頭から落ちるというお茶目な一面も見せる。
「夏の終わりが君をさらっていく」
というサビのパートを歌ってから演奏に突入した「夢で逢えたら」は現在のメンバーになってからのテーマソングと言ってもいいくらいに毎回欠かさず演奏されているが、明らかにテンポが速くなっており、岡山は全身全霊の力を込めてそのテンポを牽引し、山本はその岡山のドラムセットに寄っていって向き合いながらギターを弾く。銀杏BOYZに参加するまでは絡みがなかったメンバーたちが、ライブを重ねて同じ時間を共有することによってその間には確かなグルーヴと信頼関係が芽生えている。
峯田も
「このメンバーになってからまだあんまりライブができてないんだけど、ようやくバンドとしての塊ができてきたような気がしている」
とその感触を確かに感じているようだ。
その峯田がギターを弾かずにマイクスタンドの前にリアム・ギャラガーのように仁王立ちして歌うのは、武道館で12年ぶりに演奏された「トラッシュ」。最初は普通に歌っていた峯田だったが、やはり間奏ではギターから解放されたからかステージを翻筋斗打ったりという奔放さを発揮。しかしながら最初の2枚のアルバムがリリースされた直後にしかライブで演奏されていなかったこの曲を今になってこうしてライブで演奏するようになったのにはどういう理由があるのだろうか。もちろん聴けるのは嬉しいことだけど。
そして「BABY BABY」ではやはり、このライブが対バンライブのゲストであるということを忘れさせるくらいの大合唱が起こる。それはサンボマスターというずっと近い場所で戦ってきたバンドのゲストだからということもあるだろうけれど、こうしてワンマン以外の対バンやフェスなど、完全ホームとは言えないような場所でこの曲の大合唱を聴くと、この曲の普遍性を改めて実感する。むしろ、GOING STEADYばかりを聴いていた頃よりも今の方がこの曲の力をよくわかっているかもしれない。それはやはりこうして銀杏BOYZを大好きな人たちみんなと一緒にこの曲を歌えるという経験をしてきたからだけど。
ラストに演奏されたのはやはり「ぽあだむ」で、夕日のようなオレンジ色の照明がメンバーを照らす中、
「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」
ととびきりのポップさで会場を幸福な空気に包み込んだ。
あの武道館ライブはやはりバンドにとっても、銀杏BOYZに人生を変えられて生きてきた我々にとっても1つの集大成だったのは間違いない。でもあの日は集大成ではあっても決して終わりではなかった。だからこそバンドはこれからも成長していくし、あれはこの姿の銀杏BOYZとしての新しい始まりだった。それは決して誰しもが望んだ姿ではないかもしれないけど、あの日、日の丸の下で見た銀杏BOYZのライブは、これからもこのバンドとともに生きていくしかないと思わせてくれるものだったし、その1ヶ月後に見たこの日のライブもそうだった。何より、銀杏BOYZのライブを見るためならどこまでだって行ける、って思えた。
1.NO FUTURE NO CRY
2.エンジェルベイビー
3.駆け抜けて性春
4.骨
5.恋は永遠
6.夢で逢えたら
7.トラッシュ
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
恋は永遠
https://youtu.be/xm6cm49PSW4
・サンボマスター
そしてその銀杏BOYZのライブをずっと見ていたサンボマスターが、長いツアーのファイナルのステージに登場。
いきなりの
「今年は何かとはっちゃけたい」
というツアータイトルが歌詞に入っている「世界を変えさせておくれよ」でスタートすると、
「あれ!?銀杏BOYZでツアーは終わりました協会のみなさんですか!?」
「「BABY BABY」聴けて満足してんじゃねぇぞ!」
と煽りまくり、客席からは銀杏BOYZの強い余韻がだんだんと消えていき、ひたすらに熱いサンボマスターのモードに変貌していく。
「相手が銀杏BOYZだからな!いきなり行きますよ!」
とこれまではクライマックスを飾ることが多かった、ライブを重ねることによってサンボマスター屈指の代表曲に成長してきた「できっこないを やらなくちゃ」をこの序盤で早くも演奏し、まだ始まったばかりとは思えないくらいの盛り上がりぶりを見せる。
木内がクラップするようにスティックを叩いて観客を煽ると、新作「YES」から最初に演奏されたのは実にサンボマスターらしい「このラブソングはパンクナンバー」で、サンボマスターにとってはパンクすらもラブソングになるというバンドの姿勢を提示する。
「お前たちの光見せてくれ。怪我だけすんなよ!男の子は女の子守れよ!」
と、序盤はやや声が涸れ気味だった山口がまくしたてての「光のロック」から、
「俺は今でもチンくん、アビちゃん、村井くんが大好きだ。でも同じくらいに今の銀杏BOYZも大好きだ。初めて一緒にライブをしてから10年以上。いろんなことがあったよ。みんなもそうだろ。でも俺たちこうしてここでロックンロールやってんだからよ、今日だけはお前たちをロックンロールって呼ばせてくれ!」
と、銀杏BOYZを辞めていったメンバーたちへの今も変わらぬ愛情を伝え、近年はアンコールで演奏される定番曲になっていた「ロックンロール イズ ノットデッド」も早くも演奏される。銀杏BOYZから3人が脱退した直後、サンボマスターは年末のライブで、
「誠に勝手ながら、友達のバンドの銀杏BOYZに捧げます!」
と言ってこの曲を演奏していた。メンバーがいなくなっても銀杏BOYZは死なないというサンボマスターの溢れんばかりの銀杏BOYZへの愛情と、銀杏BOYZを続けて欲しいという思い。その思いを込めたこの曲が、銀杏BOYZの目の前で演奏されている。果たして峯田和伸はどんな思いでこの曲を聴いていたのだろうか。
ファン歓喜の「青春狂騒曲」で踊らせまくると、新作からの「Sad Town,Hot Love」ではグッと聴かせるモードに。この日もそうだったが、このツアーで訪れた様々な街にサンボマスターは温かい愛を与えてきたのだろう。
「この曲を歌っていいんだろうか、って思って最近は歌ってなかったんだけど、やっぱり歌えるうちは歌うべきだなって。だから歌うんだけど、みんな泣かないで、アイドルでも恋人でもいいから、好きな人のことを思い浮かべながら笑顔で聴いてくれよ」
と言って山口が歌い始めたのはやはり「ラブソング」だが、最後のサビの前に山口はかなり長い間を空けたし、なかなか歌詞を歌うのが厳しくなるようなところもあった。山口が思い浮かべながら歌っていたのはどんな人たちなんだろうか。きっともう会うことができなくなってしまった人たちもいるんだろうと思うけれど。
そんな静粛な空気が一変するくらいに、サンボマスターにとっては新しい、トライバルなリズムで踊らせまくったのは新作からの「Stand by me & you」。MCの時のように山口のまくしたてるようなボーカルも特徴的だが、この曲と次の「ミラクルをキミとおこしたいんです」はただ4つ打ちで踊らせるのではなく、サンボマスターのロックンロールとして踊らせるようなリズムで構成されている、近藤と木内の技術の高さと器用さを感じさせてくれるタイプの曲。初期の頃はこうした曲がなかっただけに。
「一歩外に出ればクソみたいな生活が待ってるんだろう。クソみたいな仕事、クソみたいな学校、クソみたいな家庭。でもここに来ている間は、そういうのを帳消しにしてやりたいんだ!」
と山口が叫んでの「帳消し!帳消し!」コールからなだれ込んだのは「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」。今年の野音ワンマン前にリリースされたシングルのタイトル曲だが、今のサンボマスターの姿勢を示しながらも、こうしてライブのクライマックスを担うような曲が新しく生まれているというのは、バンドが進化を続けている証である。
そして、
「「BABY BABY」みたいに、みんなで「愛と平和」を叫びませんか!」
と言っての「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」でこの日最大の爆発を起こして、伝説のツアーファイナルと呼べるぐらいの盛り上がりぶりを見せると、最後に演奏されたのは新作のタイトル曲である「YES」。
「YES! つかめ つかめ つかめ つかめ 届け 叫べ 踊れ
キミよ幸せになれ 誰にも邪魔させやしない」
と、全ての人の存在を肯定するかのように鳴らされるこの曲。それは紛れもなく近年のサンボマスターのモードそのものであるし、サンボマスターはしっかりとそれを自らの曲という形にしてみせた。
「YES」というアルバムは歌詞にはかなり社会に触れたような表現(それは山口が日々生きていて感じていること)が多いが、そういうことを含めても、こうして目の前にいる人たちや、曲を聴いてくれる人たちが生きていることを証明したい。だからこそ結局すべての曲がポジティブなエネルギーを感じさせてくれる。その想いの結晶のような作品だ。
アンコールでは珍しく近藤とのやり取り的なMCで山口がライブ中に酸欠になっていたことを明かし、
「1500人くらいのとこに2000人くらい入れてるんですよ。それならもうちょっと大きい会場でやればいいじゃないか!?」
とこの日はキャパを上回る観客が集まったことを告げ(確かに1番後ろまでほとんど隙間がなかった。サンボマスターのライブはいつも入る限界まで人を入れる傾向がある)、さらには来月の武道館ライブの告知も、
「だいぶチケット売れましたけどね、武道館は入れようと思えばいくらでも人が入りますからね(笑)
そして我々も京都大作戦でやっているような、顔認証システムを採用しました!でもこれは従来の顔認証システムとは違って、今日来てる人たちの顔を写真に撮って、その人のところにチケットを売りつけに行くっていうシステムになっております(笑)」
と入る限界まで人を入れようとしていることを明かす。とっくにソールドアウトしていてもおかしくないのにまだ一般販売で売られているのにはそういう理由もありそうだ。
そしてツアーを締めくくるべく「可能性」で最後に一騒ぎして終わり…と思いきや、
「ファイナルなんでね、大好きで大嫌いなあのバンドの人をせっかくだから呼びましょうかね!」
と言い、やはり峯田和伸がステージに招かれる。
年齢が上の山口に対してタメ口を使う峯田に山口が
「なんでお前タメ口なんだ!」
と咎めると、
「俺の方がキャリア的に先輩だ!」
と子供みたいな言い合いが始まり、
山口「アラフォーにもなってライブ中によだれを垂らすんじゃないよ!」
峯田「お前、昔はそんなに訛ってなかっただろ!確実に俺の影響受けてるだろ!これだから東北の人はな~」
山口「俺は福島だから若干関東に食い込んでるけど、お前は山形なんだからド東北じゃねぇか!」
峯田「サンボマスターを初めて見たのは2000年くらいかな?渋谷のLa.mamaで客が8人くらいしかいなかったんだけど、途中で帰ったの。なんか見てたらすごい悔しくて。で、道玄坂のホテルに彼女を呼び出して一緒に行ったんだけど、ライブのことが頭に残ってたからなんもできなかったっていう思い出があります(笑)」
近藤「それ俺たちじゃなくて彼女との思い出メインじゃないかよ!」
と、全員がこうして一緒に話していられるのが本当に嬉しそうだった。
そして
山口「次に銀杏BOYZと一緒にやるのは何年後になるかわかんねーぞ!悔い残すなよ!」
峯田「俺たちは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃないよね!」
と言って、峯田と山口がボーカルを分け合う編成で演奏されたのは、峯田が大好きだと語っているサンボマスターの「夜汽車でやってきたアイツ」。去年の新木場での対バンでもこの曲を一緒にやっていたが、やっぱりこうしてこのコラボを見れるのが本当に嬉しいし、ここまでライブを見に来て本当に良かったと思えた。
演奏が終わると峯田を加えて4人で観客を背景に写真撮影。撮り終わると峯田が木内のサイン入りドラムパッドを客席に投げ込み、近藤と山口もピックを投げ入れまくり、最後に残った山口はなぜかヒゲダンスを踊ってからステージを後にし、長い対バンツアーは幕を閉じた。そしてバンドは武道館へと向かう。
サンボマスターは自分がライブに行き始めた時から年上のファンが非常に多かった。それからフェスなどで知った若い人たちも増えてきたのだが、そうした若いファンが楽しんでいる様子を本当に嬉しそうに眺めている年上のファンの方達を見て、サンボは本当に良いファンに支えられ続けてると実感した。
こうして銀杏BOYZとサンボマスターが一緒にライブをすると、銀杏BOYZ結成直後、サンボマスターがメジャーデビューした直後に一緒によくライブをしていた頃のことを思い出すし、峯田がダイブしたのを見ると、その頃に戻ったかのように錯覚もする。
だけど銀杏BOYZはメンバーが変わり、サンボマスターも当時のヒリヒリしたライブからはだいぶ空気が変わった。それはこの2組をずっと見続け、一緒に歳を重ねることができたからこそ感じられること。これからもずっとそうでありたいし、この2組のライブを見れることが、何よりも生きて行くための力になっている。そんなバンドに出会えたことに心から感謝。
1.世界を変えさせておくれよ
2.できっこないを やらなくちゃ
3.このラブソングはパンクナンバー
4.光のロック
5.ロックンロール イズ ノットデッド
6.青春狂騒曲
7.Sad Town,Hot Love
8.ラブソング
9.Stand by me & you
10.ミラクルをキミとおこしたいんです
11.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
12.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
13.YES
encore
14.可能性
15.夜汽車でやってきたアイツ w/峯田和伸
YES
https://youtu.be/K9pgoFieO6s
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・銀杏BOYZ
先攻はゲストの銀杏BOYZ。18時ちょうどくらいに場内が暗転すると、最初にドラムの岡山健二が登場してドラムを叩き始め、ギターの加藤綾太、ベース藤原寛、ギター山本幹宗と順番に登場したメンバーが次々に演奏に加わっていき、最後に峯田和伸が登場するというオープニングは武道館の時と同様だが、峯田がギターを弾き始めると、3本のギターのフィードバックノイズの中から立ち上がってきたのは、銀杏BOYZトリビュートアルバムでサンボマスターがカバーしていた「NO FUTURE NO CRY」。ジャージというよりは黒装束のように見える服を着た峯田は早くもよだれでぐちゃぐちゃになりながら声を張り上げて歌い、間奏では客席に2回も飛び込むという完全ライブハウスモード。さすがに武道館でこのパフォーマンスはできなかったが、これはやはりかつて何度となく対バンし、互いに知り尽くした存在であるサンボマスターとの対バンだからこそのリミッターの振り切れ具合だったのだろうか。
「hello my friend そこにいるんだろ?」
と峯田がサビのフレーズを口にしてから歌い始めたのは、武道館では1曲目に演奏された「エンジェルベイビー」だが、直前の「NO FUTURE NO CRY」に引きづられてか、ロックとの出会いを歌った爽やかなロックというイメージのこの曲も完全にパンクと言っていいくらいのドシャメシャな演奏に。しかしその中でも演奏だけでなく、コーラスで峯田の歌を支える加藤と藤原の貢献度はライブを重ねるごとに増してきている。
するとアウトロから一転して峯田の
「ワンツー!」
というカウントからなだれ込んだのは「駆け抜けて性春」で客席はダイバーの応酬となり、峯田はCDではYUKIが歌っていたパートでは客席にマイクを向けたが、さすがに武道館ほどの大合唱にはならなかったのは今日がゲストという立ち位置だからだろうか。
早くも息が切れまくっている峯田が
「大阪のみなさん、お久しぶりです。今日は、大好きで大嫌いなバンドであるサンボマスターの33カ所を回るツアーのファイナルにお呼ばれして東京から来ました、銀杏BOYZです。
今年は音楽以外のこともたくさんやって、役名で呼んでくれる人もいますけど、正直複雑です(笑)
役の時の俺は普段の俺じゃないし、かと言ってこうしてライブをやってる時の俺が普段の俺かと言われるとなんとも言えない。でもこれが俺のやらなくちゃいけないことだから。本当は何にもしないで生きていたいけど(笑)
こういうライブハウスでは好きなように踊ったり騒いだりしてもいいし、じっと見ててもいいし。ここは北朝鮮じゃなくて民主国家の日本ですから。まぁ全員揃って振り付けをするのも楽しいかもしれないけど、俺はそういうことがやりたいわけじゃないから。
人を殺したりしなければなにやったっていいと思うしね」
とまくしたてながらアコギを手にし、ポップな「骨」では
「東京タワーのてっぺんから大阪までジャンプする」
とここが大阪であることを実感させてくれる。
「恋は永遠だって、知ってますか!?俺はつい最近知りました!」
という最新シングル「恋は永遠」では峯田がタンバリンを叩きながら歌うのだが、そのタンバリンを頭に乗せるも、歌っているとすぐに頭から落ちるというお茶目な一面も見せる。
「夏の終わりが君をさらっていく」
というサビのパートを歌ってから演奏に突入した「夢で逢えたら」は現在のメンバーになってからのテーマソングと言ってもいいくらいに毎回欠かさず演奏されているが、明らかにテンポが速くなっており、岡山は全身全霊の力を込めてそのテンポを牽引し、山本はその岡山のドラムセットに寄っていって向き合いながらギターを弾く。銀杏BOYZに参加するまでは絡みがなかったメンバーたちが、ライブを重ねて同じ時間を共有することによってその間には確かなグルーヴと信頼関係が芽生えている。
峯田も
「このメンバーになってからまだあんまりライブができてないんだけど、ようやくバンドとしての塊ができてきたような気がしている」
とその感触を確かに感じているようだ。
その峯田がギターを弾かずにマイクスタンドの前にリアム・ギャラガーのように仁王立ちして歌うのは、武道館で12年ぶりに演奏された「トラッシュ」。最初は普通に歌っていた峯田だったが、やはり間奏ではギターから解放されたからかステージを翻筋斗打ったりという奔放さを発揮。しかしながら最初の2枚のアルバムがリリースされた直後にしかライブで演奏されていなかったこの曲を今になってこうしてライブで演奏するようになったのにはどういう理由があるのだろうか。もちろん聴けるのは嬉しいことだけど。
そして「BABY BABY」ではやはり、このライブが対バンライブのゲストであるということを忘れさせるくらいの大合唱が起こる。それはサンボマスターというずっと近い場所で戦ってきたバンドのゲストだからということもあるだろうけれど、こうしてワンマン以外の対バンやフェスなど、完全ホームとは言えないような場所でこの曲の大合唱を聴くと、この曲の普遍性を改めて実感する。むしろ、GOING STEADYばかりを聴いていた頃よりも今の方がこの曲の力をよくわかっているかもしれない。それはやはりこうして銀杏BOYZを大好きな人たちみんなと一緒にこの曲を歌えるという経験をしてきたからだけど。
ラストに演奏されたのはやはり「ぽあだむ」で、夕日のようなオレンジ色の照明がメンバーを照らす中、
「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」
ととびきりのポップさで会場を幸福な空気に包み込んだ。
あの武道館ライブはやはりバンドにとっても、銀杏BOYZに人生を変えられて生きてきた我々にとっても1つの集大成だったのは間違いない。でもあの日は集大成ではあっても決して終わりではなかった。だからこそバンドはこれからも成長していくし、あれはこの姿の銀杏BOYZとしての新しい始まりだった。それは決して誰しもが望んだ姿ではないかもしれないけど、あの日、日の丸の下で見た銀杏BOYZのライブは、これからもこのバンドとともに生きていくしかないと思わせてくれるものだったし、その1ヶ月後に見たこの日のライブもそうだった。何より、銀杏BOYZのライブを見るためならどこまでだって行ける、って思えた。
1.NO FUTURE NO CRY
2.エンジェルベイビー
3.駆け抜けて性春
4.骨
5.恋は永遠
6.夢で逢えたら
7.トラッシュ
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
恋は永遠
https://youtu.be/xm6cm49PSW4
・サンボマスター
そしてその銀杏BOYZのライブをずっと見ていたサンボマスターが、長いツアーのファイナルのステージに登場。
いきなりの
「今年は何かとはっちゃけたい」
というツアータイトルが歌詞に入っている「世界を変えさせておくれよ」でスタートすると、
「あれ!?銀杏BOYZでツアーは終わりました協会のみなさんですか!?」
「「BABY BABY」聴けて満足してんじゃねぇぞ!」
と煽りまくり、客席からは銀杏BOYZの強い余韻がだんだんと消えていき、ひたすらに熱いサンボマスターのモードに変貌していく。
「相手が銀杏BOYZだからな!いきなり行きますよ!」
とこれまではクライマックスを飾ることが多かった、ライブを重ねることによってサンボマスター屈指の代表曲に成長してきた「できっこないを やらなくちゃ」をこの序盤で早くも演奏し、まだ始まったばかりとは思えないくらいの盛り上がりぶりを見せる。
木内がクラップするようにスティックを叩いて観客を煽ると、新作「YES」から最初に演奏されたのは実にサンボマスターらしい「このラブソングはパンクナンバー」で、サンボマスターにとってはパンクすらもラブソングになるというバンドの姿勢を提示する。
「お前たちの光見せてくれ。怪我だけすんなよ!男の子は女の子守れよ!」
と、序盤はやや声が涸れ気味だった山口がまくしたてての「光のロック」から、
「俺は今でもチンくん、アビちゃん、村井くんが大好きだ。でも同じくらいに今の銀杏BOYZも大好きだ。初めて一緒にライブをしてから10年以上。いろんなことがあったよ。みんなもそうだろ。でも俺たちこうしてここでロックンロールやってんだからよ、今日だけはお前たちをロックンロールって呼ばせてくれ!」
と、銀杏BOYZを辞めていったメンバーたちへの今も変わらぬ愛情を伝え、近年はアンコールで演奏される定番曲になっていた「ロックンロール イズ ノットデッド」も早くも演奏される。銀杏BOYZから3人が脱退した直後、サンボマスターは年末のライブで、
「誠に勝手ながら、友達のバンドの銀杏BOYZに捧げます!」
と言ってこの曲を演奏していた。メンバーがいなくなっても銀杏BOYZは死なないというサンボマスターの溢れんばかりの銀杏BOYZへの愛情と、銀杏BOYZを続けて欲しいという思い。その思いを込めたこの曲が、銀杏BOYZの目の前で演奏されている。果たして峯田和伸はどんな思いでこの曲を聴いていたのだろうか。
ファン歓喜の「青春狂騒曲」で踊らせまくると、新作からの「Sad Town,Hot Love」ではグッと聴かせるモードに。この日もそうだったが、このツアーで訪れた様々な街にサンボマスターは温かい愛を与えてきたのだろう。
「この曲を歌っていいんだろうか、って思って最近は歌ってなかったんだけど、やっぱり歌えるうちは歌うべきだなって。だから歌うんだけど、みんな泣かないで、アイドルでも恋人でもいいから、好きな人のことを思い浮かべながら笑顔で聴いてくれよ」
と言って山口が歌い始めたのはやはり「ラブソング」だが、最後のサビの前に山口はかなり長い間を空けたし、なかなか歌詞を歌うのが厳しくなるようなところもあった。山口が思い浮かべながら歌っていたのはどんな人たちなんだろうか。きっともう会うことができなくなってしまった人たちもいるんだろうと思うけれど。
そんな静粛な空気が一変するくらいに、サンボマスターにとっては新しい、トライバルなリズムで踊らせまくったのは新作からの「Stand by me & you」。MCの時のように山口のまくしたてるようなボーカルも特徴的だが、この曲と次の「ミラクルをキミとおこしたいんです」はただ4つ打ちで踊らせるのではなく、サンボマスターのロックンロールとして踊らせるようなリズムで構成されている、近藤と木内の技術の高さと器用さを感じさせてくれるタイプの曲。初期の頃はこうした曲がなかっただけに。
「一歩外に出ればクソみたいな生活が待ってるんだろう。クソみたいな仕事、クソみたいな学校、クソみたいな家庭。でもここに来ている間は、そういうのを帳消しにしてやりたいんだ!」
と山口が叫んでの「帳消し!帳消し!」コールからなだれ込んだのは「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」。今年の野音ワンマン前にリリースされたシングルのタイトル曲だが、今のサンボマスターの姿勢を示しながらも、こうしてライブのクライマックスを担うような曲が新しく生まれているというのは、バンドが進化を続けている証である。
そして、
「「BABY BABY」みたいに、みんなで「愛と平和」を叫びませんか!」
と言っての「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」でこの日最大の爆発を起こして、伝説のツアーファイナルと呼べるぐらいの盛り上がりぶりを見せると、最後に演奏されたのは新作のタイトル曲である「YES」。
「YES! つかめ つかめ つかめ つかめ 届け 叫べ 踊れ
キミよ幸せになれ 誰にも邪魔させやしない」
と、全ての人の存在を肯定するかのように鳴らされるこの曲。それは紛れもなく近年のサンボマスターのモードそのものであるし、サンボマスターはしっかりとそれを自らの曲という形にしてみせた。
「YES」というアルバムは歌詞にはかなり社会に触れたような表現(それは山口が日々生きていて感じていること)が多いが、そういうことを含めても、こうして目の前にいる人たちや、曲を聴いてくれる人たちが生きていることを証明したい。だからこそ結局すべての曲がポジティブなエネルギーを感じさせてくれる。その想いの結晶のような作品だ。
アンコールでは珍しく近藤とのやり取り的なMCで山口がライブ中に酸欠になっていたことを明かし、
「1500人くらいのとこに2000人くらい入れてるんですよ。それならもうちょっと大きい会場でやればいいじゃないか!?」
とこの日はキャパを上回る観客が集まったことを告げ(確かに1番後ろまでほとんど隙間がなかった。サンボマスターのライブはいつも入る限界まで人を入れる傾向がある)、さらには来月の武道館ライブの告知も、
「だいぶチケット売れましたけどね、武道館は入れようと思えばいくらでも人が入りますからね(笑)
そして我々も京都大作戦でやっているような、顔認証システムを採用しました!でもこれは従来の顔認証システムとは違って、今日来てる人たちの顔を写真に撮って、その人のところにチケットを売りつけに行くっていうシステムになっております(笑)」
と入る限界まで人を入れようとしていることを明かす。とっくにソールドアウトしていてもおかしくないのにまだ一般販売で売られているのにはそういう理由もありそうだ。
そしてツアーを締めくくるべく「可能性」で最後に一騒ぎして終わり…と思いきや、
「ファイナルなんでね、大好きで大嫌いなあのバンドの人をせっかくだから呼びましょうかね!」
と言い、やはり峯田和伸がステージに招かれる。
年齢が上の山口に対してタメ口を使う峯田に山口が
「なんでお前タメ口なんだ!」
と咎めると、
「俺の方がキャリア的に先輩だ!」
と子供みたいな言い合いが始まり、
山口「アラフォーにもなってライブ中によだれを垂らすんじゃないよ!」
峯田「お前、昔はそんなに訛ってなかっただろ!確実に俺の影響受けてるだろ!これだから東北の人はな~」
山口「俺は福島だから若干関東に食い込んでるけど、お前は山形なんだからド東北じゃねぇか!」
峯田「サンボマスターを初めて見たのは2000年くらいかな?渋谷のLa.mamaで客が8人くらいしかいなかったんだけど、途中で帰ったの。なんか見てたらすごい悔しくて。で、道玄坂のホテルに彼女を呼び出して一緒に行ったんだけど、ライブのことが頭に残ってたからなんもできなかったっていう思い出があります(笑)」
近藤「それ俺たちじゃなくて彼女との思い出メインじゃないかよ!」
と、全員がこうして一緒に話していられるのが本当に嬉しそうだった。
そして
山口「次に銀杏BOYZと一緒にやるのは何年後になるかわかんねーぞ!悔い残すなよ!」
峯田「俺たちは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃないよね!」
と言って、峯田と山口がボーカルを分け合う編成で演奏されたのは、峯田が大好きだと語っているサンボマスターの「夜汽車でやってきたアイツ」。去年の新木場での対バンでもこの曲を一緒にやっていたが、やっぱりこうしてこのコラボを見れるのが本当に嬉しいし、ここまでライブを見に来て本当に良かったと思えた。
演奏が終わると峯田を加えて4人で観客を背景に写真撮影。撮り終わると峯田が木内のサイン入りドラムパッドを客席に投げ込み、近藤と山口もピックを投げ入れまくり、最後に残った山口はなぜかヒゲダンスを踊ってからステージを後にし、長い対バンツアーは幕を閉じた。そしてバンドは武道館へと向かう。
サンボマスターは自分がライブに行き始めた時から年上のファンが非常に多かった。それからフェスなどで知った若い人たちも増えてきたのだが、そうした若いファンが楽しんでいる様子を本当に嬉しそうに眺めている年上のファンの方達を見て、サンボは本当に良いファンに支えられ続けてると実感した。
こうして銀杏BOYZとサンボマスターが一緒にライブをすると、銀杏BOYZ結成直後、サンボマスターがメジャーデビューした直後に一緒によくライブをしていた頃のことを思い出すし、峯田がダイブしたのを見ると、その頃に戻ったかのように錯覚もする。
だけど銀杏BOYZはメンバーが変わり、サンボマスターも当時のヒリヒリしたライブからはだいぶ空気が変わった。それはこの2組をずっと見続け、一緒に歳を重ねることができたからこそ感じられること。これからもずっとそうでありたいし、この2組のライブを見れることが、何よりも生きて行くための力になっている。そんなバンドに出会えたことに心から感謝。
1.世界を変えさせておくれよ
2.できっこないを やらなくちゃ
3.このラブソングはパンクナンバー
4.光のロック
5.ロックンロール イズ ノットデッド
6.青春狂騒曲
7.Sad Town,Hot Love
8.ラブソング
9.Stand by me & you
10.ミラクルをキミとおこしたいんです
11.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
12.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
13.YES
encore
14.可能性
15.夜汽車でやってきたアイツ w/峯田和伸
YES
https://youtu.be/K9pgoFieO6s
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