キュウソネコカミ 「ヒッサツマエバ ~とぎなおし~ '17-18 ツアー」 @TSUTAYA O-EAST 10/27
- 2017/10/27
- 23:47
シーン登場時の「いつまで持つか」という大方の予想に反し、消えるどころかますます勢いを増している、キュウソネコカミ。
久々にキュウソネコカミならではの世の中への噛みつきっぷりを打ち出したシングル「NO MORE 劣化実写化」をリリースし、アルバムの発売も決まる中、年をまたいでの長いツアーを敢行。年内は現在のバンドの状況を考えると小さめのキャパと言えるような会場が多いが、この日のO-EASTももはやこのバンドにとっては都内では狭い方の部類に入る。すでに各地の対バンでは特別なコラボなどが繰り広げられているが、この日はワンマン。
19時前になると、キュウソのライブではおなじみのライブプロデューサーである、AT-FIELDのP青木が登場し、諸注意を兼ねた前説をするのだが、相変わらず噛みまくりだし、そもそもライブのタイトルすらもちゃんと覚えていないというポンコツっぷりを今回も見せつけてしまう。そうした面で起こる苦笑が、最後の自分のセリフを思いっきりエコーをかけてちゃんとした笑いに変えるのはさすがなのか、なんなのか。
前説が終わると、ハロウィンだから何かしらやってくるかと思いきや、特にひねりもない、時代劇的なSEでメンバー5人がステージに登場。音合わせ的に楽器をそれぞれ思いっきり鳴らすと、ヨコタによるiPhoneのアラーム音が鳴り響き、おなじみの「ファントムバイブレーション」からスタートし、曲中の掛け合い的なコーラスもやはり完璧と言っていいくらいに客席から大きな声が響く。
「良いDJ」ではセイヤが曲終わりに
「ディスコー!!!」
と叫ぶ、先輩であるthe telephonesへのリスペクトを見せ、「邪邪邪 VS ジャスティス」では間奏でオカザワ(ギター)とタクロウ(ベース)がお立ち台に立って向き合いながら演奏するという場面もあったのだが、序盤から本当に暑いし、それ以上に熱い。キュウソはバンドのイメージ以上に実は非常に演奏が上手いバンドであるというのはライブを見ればすぐわかることであるが、メンバーそれぞれの上手さに加え、バンド全体のグルーヴがここにきてさらに進化をしている。ソゴウのドラムも安定感がありながらも他のメンバーに負けないくらいの熱さがあり、このツアーの前にも春から夏にかけてフェスやイベントなどでライブをやりまくっていたために、見た目からは想像できないくらいにバンドとしてのインナーマッスルが鍛え上げられている。
最新シングル「NO MORE 劣化実写化」では最初の転調部分で、最近結婚を発表したのがYahoo!ニュースにまで載るという話題になったヨコタが溜めに溜めまくってから、
「大人の事情~」
と歌ったため、その溜め部分で客席からは
「おめでとう~!」
という結婚を祝福する声がたくさん聞こえた。
「最近流行ってるから」
と言って演奏された「要するに飽きた」は
「離婚届けに判を押せ」
という、ヨコタの結婚を祝った後にやるか?という内容の曲。流行ってるというのは芸能界とかで離婚が流行っているのだろうか。
「MEGA SHAKE IT!!」で目を覚まさせ、「KMDT25」では間奏の盆踊りの太鼓の音を観客に歌わせるのだが、
セイヤ「お前ら以外の渋谷にいる奴らは全員童貞!」
ヨコタ「渋谷はもっと声出るでしょ!!」
と煽りまくることによって、どんどん声が大きくなっていくが、それによってバンドの演奏もさらに熱を帯びていくというのがこのバンドの特性を示している。
初期曲「困った」ではセイヤが社会のしがらみ段ボールを客席に投げ込み、その段ボール目がけてダイブして段ボールは見事にバラバラに粉砕。そのままCMでオンエアされまくったショートチューン「家」でも観客の上を歩き回りながら歌ったことにより、客席で将棋倒しが起きて倒れてしまったことにより、いったん全員が起き上がるまで休憩を兼ねて待つ。
ここで気付いたのだが、ここまでMCもしていないし、休憩らしい休憩が全くなかった。そのテンポの速さは圧巻だが、これだけの熱量の演奏を途切れることなく続けたメンバーのフィジカルは間違いなく進化している。
休憩時間はいつの間にか落し物を報告して持ち主の元に返そうコーナーとなり、靴やタオルを始め、なぜか手鏡やサコッシュまでもが落とし主の元に届けられる。
そこから派生したMCではセイヤが
「普段全く気付かれないから普通に電車でハチ公改札から会場に来たんだけど、ちゃんとチャージしてたのに、「もう一度タッチしてください」ってなって改札閉まって。しかも完全に出かかったタイミングで閉まりやがるから、めちゃ手を伸ばしてタッチしにいって(笑)
それでも開かなくて、俺に舌打ちしてた後ろの奴がタッチしたら開いた。お前やんけ!(笑)」
と社会に対しての怒りを表しながら、最後には
「JRのみなさん、僕たちをいつも運んでくれてありがとうございます」
と感謝し、
「鬼のように客席を歩き回る曲」
と言って演奏されたのは、夏フェスで披露されて話題を呼んだ、BRAHMANのTOSHI-LOWに
「お前ら、細美武士の曲あるのに俺の曲がねぇじゃねぇか」
と、脅されるようにして作ったという、完全なるTOSHI-LOW賛歌「TOSHI-LOWさん」。
「圧倒的なパワー 圧倒的な存在感」
とTOSHI-LOWのこと以外何も歌っていない曲なのだが、セイヤはまさにTOSHI-LOWのごとく、鬼のごとく観客の上を歩きながら熱唱する。
しかし、TOSHI-LOWとキュウソが絡むとは少々意外でもあった。だがTOSHI-LOWは「コミックバンド」を自称する四星球のバンドとしての凄さをMCで言葉にできるくらいに、人の本質を見抜くことにおいては誰よりも長けている男である。だからこそ、未だにあまりキュウソのことを知らない人にはネタバンドとして見られがちなこのバンドのライブを見て、バンドの持つ熱さやメンバーのストイックさを見抜いたからこそ、こうして自身の曲を作ってくれと言える存在になったのだろう。もしかしたらそのストイックさはキュウソのメンバーがTOSHI-LOWの背中を見て継承したものなのかもしれないが。
ワンマンでは何気に定番曲である初期の「キャベツ」から、ヨコタがラップ部分でキャップを被り、セイヤやオカザワを追い回すというレア曲「音楽やめたい」へ。なぜか前回のツアーでは帯広のみで披露されたというレア曲度だが、この日演奏してセイヤはこの曲への確かな手応えを掴んだようであるだけに、これからはもうちょっと聴ける機会が増えるかもしれない。
今の季節を歌った「秋エモい」からの「サブカル女子」では
「細美武士好きー!」
のフレーズの後を
「最近仲良くしてます!」に変えて歌うのだが、細美武士やTOSHI-LOWと急速に接近してきつつあるキュウソ。イメージ的には逆とは言わないまでもかなりかけ離れているように感じるが、こうしてライブを見ていると、根底に同じものがあるような気もしてくる。
最新シングルのカップリング曲である「イキがいいのだ」も賑々しいコーラスや掛け合いを観客が完全に覚えていることによってカップリング曲とは思えない盛り上がりぶりとなり、セイヤとヨコタのフリにソゴウですら不意を突かれた2回目の「家」を経て、
「昔付き合ってた彼女に、ディスるんじゃなくて、こうした方がいいんじゃないか?ここを直した方が長く一緒にいられるんじゃないか?という思いを込めて書いた曲です」
とセイヤが言って披露された新曲「メンヘラちゃん」は、これぞキュウソ!な人間観察力とそれを歌詞にしてみせる独自のスタイルを見せつけるような曲。サウンドもキュウソど真ん中と言ってもいい、狂騒的なダンスロック。
そして「DQNなりたい、40代で死にたい」からは怒涛の終盤へ。間奏でセイヤが再び客席に突入すると、フロアの最も後ろの一段高くなっている、いわゆる「大人見エリア」にまで到達し、しかも端から端まで歩くという大立ち回りをしてからステージに戻ったため、ヨコタに
「いつまでやるねん!」
と突っ込まれていたが、その間にも絶えない「ヤンキー怖い」の大合唱。そしてセイヤがステージに戻ってからソゴウが再びドラムを叩き始め、演奏が再開した瞬間の、どうあっても体が飛び跳ねてしまう圧倒的な一体感。この日、この辺りから、キュウソが確実に変わってきている、ということを自分は感じ始めていた。やっていること自体は昔と変わっていないが、その奥底に孕んでいて、ライブをやりまくってきたことによって育ってきたもの。
だからこそ「ペディグリー」のフレーズでなんなのかわけのわからないものを取り出した、全く感動する要素のない「KMTR645」ですら感動を覚えるし、MCこそしないが、様々なアクションを見せながらベースを弾くタクロウが、ファンの思いを受け止めるように両手をいっぱいに広げた「ビビった」は、いつものライブでの終盤に演奏される定番曲というだけには収まりきらず、その熱さは「わかってんだよ」でピークを迎える。
リリース時は「キュウソらしくない」と言われることも多かったが、今のキュウソの熱さはこの曲ができたことによって表出してきたものである。それまでの斜に構えた視線ではなく、自分の内面にある思いを素直に歌う。それは銀杏BOYZなどのキュウソのメンバーがかつて心を揺さぶられてきたバンドがやってきたことであるのだが、今やキュウソもそうして若いファンの心を揺さぶるようなバンドになってきている。
そしてラストは「キュウソネコカミ」。一切のネタも飛び道具的な要素もなく、
「俺らは別に芸人じゃない 俺の生き様見せつけろ」
と歌うこの歌詞が全て。初期の曲ではあるが、初期の時点でこう歌っていたということは、キュウソがこうして面白いだけじゃないバンドに進化するのは必然だったのかもしれない。
アンコールではメンバーが通販が始まったばかりのロンTなどに着替えて登場し、ツアーで根室だけソールドアウトしていないことを明かし、
「でもGoogleマップで根室の位置見てみ?俺たちの音楽があんな場所まで届いてるねんで!物販ももちろん買ってほしいけど、こうしてみんなが来てくれたのが1番嬉しいから!」
と実に素直な気持ちを語り、12月にリリースされるアルバム「にゅ~うぇいぶ」の1曲目に収録される「5RATS」を披露。タイトルからもわかるように、これは現在の状況に進化させた「キュウソネコカミ」そのものである。それだけに歌詞が非常に気になるし、「TOSHI-LOWさん」「メンヘラちゃん」と全くタイプの違う曲が披露されただけに、果たしてどんなアルバムになっているのだろうか。
そしてラストは、P青木やマネージャーのはいからさんなど、バンドの周りにいる人たちへの愛情を歌った「ハッピーポンコツ」。決して激しいタイプの曲ではないが、観客全員が本当に幸せそうにこの曲を聴いて、踊っていた。
この会場の様子を見て、自分は本当に感動していたし、演奏を聴いて体が震えていた。それはパンクやラウドバンドのライブを見て感じるような、「感動するような曲じゃないのに感動し過ぎて体が震える感覚」を確かにこの日のキュウソのライブからは感じられたから。細美武士やTOSHI-LOWがこのバンドと接近したのも、そうした部分を彼らがちゃんとわかっているから。
演奏が終わるとファンとともに記念撮影をし、メンバーが観客に手を振ったりする中、「5RATS」が終演SEとして流れていた。これが今の俺たちの最高傑作であり心情そのものだ、と言わんばかりに。
キュウソネコカミはメンバーそれぞれ本当に面白い人たちだが、そうした部分は最小限にとどめ、ひたすら自分たちの音楽をとぎなおしていた。だからこそ確かに楽しかったというのはいつも通りだが、それよりもあまりにもライブが良すぎて感動の方が大きかった。このバンドは世間のイメージ以上に凄いロックバンドである。フェスだけで見れればいいバンドなんかじゃない。
最近見たワンマンだと、My Hair is Badは元々そういうスタイルだが、フレデリックもキュウソもライブが本当にストイックに、強くなっている。彼ら若手バンドが揃ってそうしたスタイルになってるのは偶然ではないだろうし、そうしたライブを見ると彼らがなぜ勝ち上がってこれたのかが一発でわかる。
キュウソはネタでも飛び道具的なパフォーマンスでもなく、「音楽」という自分たちの最大の武器である「ヒッサツマエバ」をさらにとぎなおすことを選んだのだ。
1.ファントムバイブレーション
2.良いDJ
3.邪邪邪 VS ジャスティス
4.NO MORE 劣化実写化
5.要するに飽きた
6.MEGA SHAKE IT!!
7.KMDT25
8.困った
9.家
10.TOSHI-LOWさん
11.キャベツ
12.音楽やめたい
13.秋エモい
14.サブカル女子
15.イキがいいのだ
16.家
17.メンヘラちゃん
18.DQNなりたい、40代で死にたい
19.KMTR645
20.ビビった
21.わかってんだよ
22.キュウソネコカミ
encore
23.5RATS
24.ハッピーポンコツ
NO MORE 劣化実写化
https://youtu.be/SJwOnThUt9I
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久々にキュウソネコカミならではの世の中への噛みつきっぷりを打ち出したシングル「NO MORE 劣化実写化」をリリースし、アルバムの発売も決まる中、年をまたいでの長いツアーを敢行。年内は現在のバンドの状況を考えると小さめのキャパと言えるような会場が多いが、この日のO-EASTももはやこのバンドにとっては都内では狭い方の部類に入る。すでに各地の対バンでは特別なコラボなどが繰り広げられているが、この日はワンマン。
19時前になると、キュウソのライブではおなじみのライブプロデューサーである、AT-FIELDのP青木が登場し、諸注意を兼ねた前説をするのだが、相変わらず噛みまくりだし、そもそもライブのタイトルすらもちゃんと覚えていないというポンコツっぷりを今回も見せつけてしまう。そうした面で起こる苦笑が、最後の自分のセリフを思いっきりエコーをかけてちゃんとした笑いに変えるのはさすがなのか、なんなのか。
前説が終わると、ハロウィンだから何かしらやってくるかと思いきや、特にひねりもない、時代劇的なSEでメンバー5人がステージに登場。音合わせ的に楽器をそれぞれ思いっきり鳴らすと、ヨコタによるiPhoneのアラーム音が鳴り響き、おなじみの「ファントムバイブレーション」からスタートし、曲中の掛け合い的なコーラスもやはり完璧と言っていいくらいに客席から大きな声が響く。
「良いDJ」ではセイヤが曲終わりに
「ディスコー!!!」
と叫ぶ、先輩であるthe telephonesへのリスペクトを見せ、「邪邪邪 VS ジャスティス」では間奏でオカザワ(ギター)とタクロウ(ベース)がお立ち台に立って向き合いながら演奏するという場面もあったのだが、序盤から本当に暑いし、それ以上に熱い。キュウソはバンドのイメージ以上に実は非常に演奏が上手いバンドであるというのはライブを見ればすぐわかることであるが、メンバーそれぞれの上手さに加え、バンド全体のグルーヴがここにきてさらに進化をしている。ソゴウのドラムも安定感がありながらも他のメンバーに負けないくらいの熱さがあり、このツアーの前にも春から夏にかけてフェスやイベントなどでライブをやりまくっていたために、見た目からは想像できないくらいにバンドとしてのインナーマッスルが鍛え上げられている。
最新シングル「NO MORE 劣化実写化」では最初の転調部分で、最近結婚を発表したのがYahoo!ニュースにまで載るという話題になったヨコタが溜めに溜めまくってから、
「大人の事情~」
と歌ったため、その溜め部分で客席からは
「おめでとう~!」
という結婚を祝福する声がたくさん聞こえた。
「最近流行ってるから」
と言って演奏された「要するに飽きた」は
「離婚届けに判を押せ」
という、ヨコタの結婚を祝った後にやるか?という内容の曲。流行ってるというのは芸能界とかで離婚が流行っているのだろうか。
「MEGA SHAKE IT!!」で目を覚まさせ、「KMDT25」では間奏の盆踊りの太鼓の音を観客に歌わせるのだが、
セイヤ「お前ら以外の渋谷にいる奴らは全員童貞!」
ヨコタ「渋谷はもっと声出るでしょ!!」
と煽りまくることによって、どんどん声が大きくなっていくが、それによってバンドの演奏もさらに熱を帯びていくというのがこのバンドの特性を示している。
初期曲「困った」ではセイヤが社会のしがらみ段ボールを客席に投げ込み、その段ボール目がけてダイブして段ボールは見事にバラバラに粉砕。そのままCMでオンエアされまくったショートチューン「家」でも観客の上を歩き回りながら歌ったことにより、客席で将棋倒しが起きて倒れてしまったことにより、いったん全員が起き上がるまで休憩を兼ねて待つ。
ここで気付いたのだが、ここまでMCもしていないし、休憩らしい休憩が全くなかった。そのテンポの速さは圧巻だが、これだけの熱量の演奏を途切れることなく続けたメンバーのフィジカルは間違いなく進化している。
休憩時間はいつの間にか落し物を報告して持ち主の元に返そうコーナーとなり、靴やタオルを始め、なぜか手鏡やサコッシュまでもが落とし主の元に届けられる。
そこから派生したMCではセイヤが
「普段全く気付かれないから普通に電車でハチ公改札から会場に来たんだけど、ちゃんとチャージしてたのに、「もう一度タッチしてください」ってなって改札閉まって。しかも完全に出かかったタイミングで閉まりやがるから、めちゃ手を伸ばしてタッチしにいって(笑)
それでも開かなくて、俺に舌打ちしてた後ろの奴がタッチしたら開いた。お前やんけ!(笑)」
と社会に対しての怒りを表しながら、最後には
「JRのみなさん、僕たちをいつも運んでくれてありがとうございます」
と感謝し、
「鬼のように客席を歩き回る曲」
と言って演奏されたのは、夏フェスで披露されて話題を呼んだ、BRAHMANのTOSHI-LOWに
「お前ら、細美武士の曲あるのに俺の曲がねぇじゃねぇか」
と、脅されるようにして作ったという、完全なるTOSHI-LOW賛歌「TOSHI-LOWさん」。
「圧倒的なパワー 圧倒的な存在感」
とTOSHI-LOWのこと以外何も歌っていない曲なのだが、セイヤはまさにTOSHI-LOWのごとく、鬼のごとく観客の上を歩きながら熱唱する。
しかし、TOSHI-LOWとキュウソが絡むとは少々意外でもあった。だがTOSHI-LOWは「コミックバンド」を自称する四星球のバンドとしての凄さをMCで言葉にできるくらいに、人の本質を見抜くことにおいては誰よりも長けている男である。だからこそ、未だにあまりキュウソのことを知らない人にはネタバンドとして見られがちなこのバンドのライブを見て、バンドの持つ熱さやメンバーのストイックさを見抜いたからこそ、こうして自身の曲を作ってくれと言える存在になったのだろう。もしかしたらそのストイックさはキュウソのメンバーがTOSHI-LOWの背中を見て継承したものなのかもしれないが。
ワンマンでは何気に定番曲である初期の「キャベツ」から、ヨコタがラップ部分でキャップを被り、セイヤやオカザワを追い回すというレア曲「音楽やめたい」へ。なぜか前回のツアーでは帯広のみで披露されたというレア曲度だが、この日演奏してセイヤはこの曲への確かな手応えを掴んだようであるだけに、これからはもうちょっと聴ける機会が増えるかもしれない。
今の季節を歌った「秋エモい」からの「サブカル女子」では
「細美武士好きー!」
のフレーズの後を
「最近仲良くしてます!」に変えて歌うのだが、細美武士やTOSHI-LOWと急速に接近してきつつあるキュウソ。イメージ的には逆とは言わないまでもかなりかけ離れているように感じるが、こうしてライブを見ていると、根底に同じものがあるような気もしてくる。
最新シングルのカップリング曲である「イキがいいのだ」も賑々しいコーラスや掛け合いを観客が完全に覚えていることによってカップリング曲とは思えない盛り上がりぶりとなり、セイヤとヨコタのフリにソゴウですら不意を突かれた2回目の「家」を経て、
「昔付き合ってた彼女に、ディスるんじゃなくて、こうした方がいいんじゃないか?ここを直した方が長く一緒にいられるんじゃないか?という思いを込めて書いた曲です」
とセイヤが言って披露された新曲「メンヘラちゃん」は、これぞキュウソ!な人間観察力とそれを歌詞にしてみせる独自のスタイルを見せつけるような曲。サウンドもキュウソど真ん中と言ってもいい、狂騒的なダンスロック。
そして「DQNなりたい、40代で死にたい」からは怒涛の終盤へ。間奏でセイヤが再び客席に突入すると、フロアの最も後ろの一段高くなっている、いわゆる「大人見エリア」にまで到達し、しかも端から端まで歩くという大立ち回りをしてからステージに戻ったため、ヨコタに
「いつまでやるねん!」
と突っ込まれていたが、その間にも絶えない「ヤンキー怖い」の大合唱。そしてセイヤがステージに戻ってからソゴウが再びドラムを叩き始め、演奏が再開した瞬間の、どうあっても体が飛び跳ねてしまう圧倒的な一体感。この日、この辺りから、キュウソが確実に変わってきている、ということを自分は感じ始めていた。やっていること自体は昔と変わっていないが、その奥底に孕んでいて、ライブをやりまくってきたことによって育ってきたもの。
だからこそ「ペディグリー」のフレーズでなんなのかわけのわからないものを取り出した、全く感動する要素のない「KMTR645」ですら感動を覚えるし、MCこそしないが、様々なアクションを見せながらベースを弾くタクロウが、ファンの思いを受け止めるように両手をいっぱいに広げた「ビビった」は、いつものライブでの終盤に演奏される定番曲というだけには収まりきらず、その熱さは「わかってんだよ」でピークを迎える。
リリース時は「キュウソらしくない」と言われることも多かったが、今のキュウソの熱さはこの曲ができたことによって表出してきたものである。それまでの斜に構えた視線ではなく、自分の内面にある思いを素直に歌う。それは銀杏BOYZなどのキュウソのメンバーがかつて心を揺さぶられてきたバンドがやってきたことであるのだが、今やキュウソもそうして若いファンの心を揺さぶるようなバンドになってきている。
そしてラストは「キュウソネコカミ」。一切のネタも飛び道具的な要素もなく、
「俺らは別に芸人じゃない 俺の生き様見せつけろ」
と歌うこの歌詞が全て。初期の曲ではあるが、初期の時点でこう歌っていたということは、キュウソがこうして面白いだけじゃないバンドに進化するのは必然だったのかもしれない。
アンコールではメンバーが通販が始まったばかりのロンTなどに着替えて登場し、ツアーで根室だけソールドアウトしていないことを明かし、
「でもGoogleマップで根室の位置見てみ?俺たちの音楽があんな場所まで届いてるねんで!物販ももちろん買ってほしいけど、こうしてみんなが来てくれたのが1番嬉しいから!」
と実に素直な気持ちを語り、12月にリリースされるアルバム「にゅ~うぇいぶ」の1曲目に収録される「5RATS」を披露。タイトルからもわかるように、これは現在の状況に進化させた「キュウソネコカミ」そのものである。それだけに歌詞が非常に気になるし、「TOSHI-LOWさん」「メンヘラちゃん」と全くタイプの違う曲が披露されただけに、果たしてどんなアルバムになっているのだろうか。
そしてラストは、P青木やマネージャーのはいからさんなど、バンドの周りにいる人たちへの愛情を歌った「ハッピーポンコツ」。決して激しいタイプの曲ではないが、観客全員が本当に幸せそうにこの曲を聴いて、踊っていた。
この会場の様子を見て、自分は本当に感動していたし、演奏を聴いて体が震えていた。それはパンクやラウドバンドのライブを見て感じるような、「感動するような曲じゃないのに感動し過ぎて体が震える感覚」を確かにこの日のキュウソのライブからは感じられたから。細美武士やTOSHI-LOWがこのバンドと接近したのも、そうした部分を彼らがちゃんとわかっているから。
演奏が終わるとファンとともに記念撮影をし、メンバーが観客に手を振ったりする中、「5RATS」が終演SEとして流れていた。これが今の俺たちの最高傑作であり心情そのものだ、と言わんばかりに。
キュウソネコカミはメンバーそれぞれ本当に面白い人たちだが、そうした部分は最小限にとどめ、ひたすら自分たちの音楽をとぎなおしていた。だからこそ確かに楽しかったというのはいつも通りだが、それよりもあまりにもライブが良すぎて感動の方が大きかった。このバンドは世間のイメージ以上に凄いロックバンドである。フェスだけで見れればいいバンドなんかじゃない。
最近見たワンマンだと、My Hair is Badは元々そういうスタイルだが、フレデリックもキュウソもライブが本当にストイックに、強くなっている。彼ら若手バンドが揃ってそうしたスタイルになってるのは偶然ではないだろうし、そうしたライブを見ると彼らがなぜ勝ち上がってこれたのかが一発でわかる。
キュウソはネタでも飛び道具的なパフォーマンスでもなく、「音楽」という自分たちの最大の武器である「ヒッサツマエバ」をさらにとぎなおすことを選んだのだ。
1.ファントムバイブレーション
2.良いDJ
3.邪邪邪 VS ジャスティス
4.NO MORE 劣化実写化
5.要するに飽きた
6.MEGA SHAKE IT!!
7.KMDT25
8.困った
9.家
10.TOSHI-LOWさん
11.キャベツ
12.音楽やめたい
13.秋エモい
14.サブカル女子
15.イキがいいのだ
16.家
17.メンヘラちゃん
18.DQNなりたい、40代で死にたい
19.KMTR645
20.ビビった
21.わかってんだよ
22.キュウソネコカミ
encore
23.5RATS
24.ハッピーポンコツ
NO MORE 劣化実写化
https://youtu.be/SJwOnThUt9I
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