Base Ball Bear 日比谷ノンフィクションVI ~光源~ @日比谷野外大音楽堂 9/30
- 2017/09/30
- 23:36
Base Ball Bearにとって、もう6回目の野音ライブである。抽選制である野音において、ここまで短いスパンでライブができるアーティストもそうそういないだろう。
去年の日比谷ノンフィクションVは湯浅が脱退直後であり、様々なサポートギタリストをゲストに迎えた、バンドの危機を超えてさらに先へ進んでいくという意志を見せたものになったが、今回は3人編成になって初めてリリースしたアルバム「光源」のツアーファイナル的な立ち位置のタイミング。すでに開演前から陽が落ちた会場からは夏が過ぎ去ったことを感じさせるが、ステージに配置されたキーボードや譜面台からは明らかに4人編成ではないことを予感させる。
18時ぴったりになるとおなじみXTCのSEが流れ、堀之内と関根、近年おなじみのサポートギタリスト弓木英梨乃がステージに登場すると、その後に明らかにスタッフなどではない男性3人がステージに登場、そして最後に小出がステージに。その見慣れぬ3人はSANABAGUN.の谷本大河(サックス)、高橋鉱一(トランペット)に、様々なアーティストからリスペクトされるキーボードでありシンガーのRyu Matsuyama。SANABAGUN.のブラス隊は下手の関根側、Ryu Matsuyamaは上手の弓木側にそれぞれスタンバイし、4人が集まっての堀之内会議の後に「光源」のオープニングナンバーである「すべては君のせいで」を7人編成で演奏。「光源」は4人編成という枠から解放されたかのように、ギター、ベース、ドラム以外の様々なサウンドが入ったアルバムになっていたが、それをライブで生音で再現するためのこのサポートの布陣ということだろうが、なんの前置きもなくいきなりこの編成というのは、去年の日比谷ノンフィクションでのRHYMESTERとのコラボに続いての先制パンチである。
しかしながらこれは1曲だけのコラボではないわけで、続く「(LIKE A) TRANSFER GIRL」でも7人編成での演奏。メンバー紹介を経た、アーバンでゆったりしたサウンドがこの日比谷によく似合う「Low Way」でも7人編成で、このままこの日はこの編成で行くのかと思いきや、「抱きしめたい」ではシンプルなリズムの反復に弓木のみを加えた4人編成になったことで、「光源」の曲ではその曲に合わせてサポートメンバーが加わるという形式であることがわかるが、小出がべた褒めするギターの腕前を間奏で披露した弓木は他のサポートメンバーの特別な存在感に全く負けることはなく、むしろ最も目立つプレイヤーであると言える。
小出がマイクから少し離れると、その弓木がいきなり歌い始めたのは、原曲では声優の花澤香菜とのコラボ曲だった「恋する感覚」で、まさに花澤香菜のような可愛らしいボーカルを披露し、コーラスを務める関根とステージ中央で向かい合って間奏を演奏するという一幕も。しかし美味しい部分を持って行ったのは、最もハイトーンなコーラスのフレーズを歌った堀之内。会場中も「まさか!?」という感じで演奏中であるにもかかわらず、笑いが巻き起こっていたのは堀之内の人間性によるところも大きい。しかしながらこうして弓木の貢献度を見ていると、サポートメンバーとしてこのバンドに加わってちょうど1年くらいだが、もう完全にベボベにとってなくてはならない人物になっている。
「GIRLFRIEND」「LOVE MATHEMATICS」という代表曲の連発で一気に会場の温度も上昇すると、小出が今年の野音も晴れたことで、これまで行われた野音ライブで一度も雨が降っていないという晴れ男ぶりをアピールするが、例年は6月開催で、始まる前はまだ明るいのがだんだん暗くなっていき、カエルの鳴き声が聞こえていたのが、この日は始まる前からすでに暗く、鈴虫が鳴いていることによって、盛り上げようとしても鳴き声を聞くとついつい癒されてしまうという、秋ならではの野音の空気をメンバーも感じていた。さらに銀杏の匂いも秋っぽさを助長していたとも。
そしてSANABAGUN.の2人を再び招き入れると、さらにゲストとして今はKANDYTOWNのクルーとしても活躍している呂布がステージに登場し、
「人生ってまさに人間交差点ですね(夏に行われたRHYMESTERのイベントのタイトル。そこでも呂布とコラボした)」
と言って「スクランブル」を披露。呂布が出てきた時はまさかの「ido」をやるのか!?と思ったけれど、やはりそんなことは全くなかった。
すると増えたり減ったりしていたメンバーたちが一旦小出を残してステージを去り(小出いわく、イタリアはミラノ生まれのRyu Matsuyamaの作るミラノ風ドリアを食べている時間らしい)、まさかの小出によるアコギの弾き語りに。サポートを加えての編成もそうだが、ライブでこうして弾き語りをやることもこれまでは全くなかった。だからこそものすごく貴重なものが見れている、という新鮮な気持ちで見れたし、アコギのみというシンプルなサウンドであることにより、
「喋れない君は紙とペンで僕と話す
書き終えるのを待ちながら うとうとして」 (「WHITE ROOM」)
「青空が冴え渡る都市の風が 君の髪 揺らした時
なぜか見とれてた その横顔に」 (「恋愛白書」)
という、その瞬間を頭の中にイメージさせるようなリアリティに溢れた小出の歌詞を噛み締めながら聞くことができ、改めて小出の作詞家としてのレベルの高さを実感させられる。
Ryu Matsuyamaを加えての5人編成での「寛解」はピアノのサウンドとこの野音の雰囲気、そして関根のコーラスが合わさってゴスペル的な神聖さを感じさせ、「リアリティーズ」では
「誰かでありたいなら 席につくことさ」
という歌い出しのフレーズからパンチラインだらけの歌詞がまさに人生の真理を突いてくるかのように響く。
すると小出が
「MCで何を喋ろうかなぁと思ってたんですけど、最近思ってることは、音楽って本当に楽しいな、っていうことで」
と話し始め、
「この前、中津川ソーラー武道館で、弓木さんのスケジュールが合わなくて初めて3人だけでライブやったんですよ。そしたら昔の曲を3人だけでやることで、隙間を敢えて楽しむというか、非常に充実した気持ちになったんだけど…。俺だけ?2人とも充実してた?そこをまずは擦り合わせておきたいんだけど(笑)」
と関根と堀之内に確認し、無事に同意を取り付けると、
「その帰りにあまりに充実してたからか、スタッフとか一切いない3人だけでローカル線の駅のホームのベンチで並んでルマンドアイスを食べたんだけど(笑)、そんなこと今までやったことなくて(笑)
でその後に弓木さんと4人で今日のためのリハーサルをやった時、その充実感が薄れるかと言ったら、全然薄れるどころか、より楽しい感覚があって。弓木さんもそうでしたか?(弓木頷く)
で、今日のサポートメンバーたちとで7人8人に増えても、ただ音を足してるっていうんじゃなくて、ちゃんと全ての音が混ざり合ってるように感じて。ただ切ったものを並べただけの海鮮丼じゃなくて、それらを煮詰めてできた濃厚なんだけど澄み切ったラーメンのスープみたいな(笑)
だから今まで「音楽をやる」「音楽をする」っていう感じで、なかなか恥ずかしくて「音を奏でる」「音と戯れる」っていう風に口にできなかったんだけど、ようやくその始まりにこうして全員一致できたな、って。っていうことでいいですよね?(笑)」
と再びメンバーに確認すると、堀之内に
「楽屋で確認しておけよ!(笑)」
とごもっともなツッコミを受けながら、
「今日が一致の始まり。これこそノンフィクション」
と締めてみせた。
インディーズ時代からずっとベボベを見てきたが、ギタープレイはもちろん、湯浅の人間性も好きだったし、ずっと同じ景色を見てきて、同じ空気を吸って成長してきた4人だからこその音楽をやっていたベボベが本当に好きだった。でもその4人だけでやるという自分たちが自分たちに課した見えない縛りが、いつの間にかメンバー自身が音楽を楽しむという最も大事なことを忘れさせてしまっていたのかもしれない。
実際、新たな仲間たちと音を奏でている小出をはじめとするメンバーたちの表情は今までで最も楽しそうなものだったし、4人でバンドを始めた時はこういう感じだったのかもしれない、と思わせてくれた。
その頃の気持ちを呼び起こすかのような爽やかなギターロックの「レモンスカッシュ感覚」からはさらに演奏は加速する一方で、「SHINE」「逆バタフライ・エフェクト」という曲では「C2」以降に獲得したブラックミュージックのエッセンスともともとバンドの持ち味だった青春性の強いギターロックを見事に融合させた、このバンドにしかできない曲を作り上げたことを感じさせてくれる。
そして「CRAZY FOR YOUの季節」では熱気を帯びたバンドの演奏が原曲よりもさらにスピードを増しまくり、本編最後に演奏されたのは、最初は小出がギターを弾かずにマイクスタンドに向かって歌い、2コーラス目からギター&ボーカルになるという、見た目的にも新鮮な形の「Darling」。こうした形で披露できるのも、弓木というギタリストへの信頼があるからこそギターを彼女だけに任せることができるのだろう。
アンコールでは先にメンバー3人が登場すると、関根は「光源」ツアーから発売された、ここまでバンド名に寄せたグッズは初めてじゃないか、と思ってしまうベースボールシャツに着替えて登場し、ツアーの過酷なスケジュールを嘆きながらもさらに追加公演までも発表してから呼び込んだサポートメンバーたちも弓木を筆頭にみんなツアーTシャツを着用するというベボベ愛。そして呂布とともにステージに招かれたのは、なんとチャットモンチーの福岡晃子。
「今日も可愛いね〜。マジでタイプだわ〜」
と小出はすっかりセクハラおじさんと化した中、
「お互いメンバーが増えたり減ったりしてますが、これからもよろしくお願いします!」
と言って、およそ5年半ぶりにアッコと呂布とのコラボ曲である「クチビル・ディテクティブ」を披露。曲中にも小出がアッコの肩に手を回したりするという、昔この曲をやっていた時は全くやっていなかった絡みを見せてくれたのだが、ベボベもチャットモンチーもこうやってバンドを助けてくれる仲間たちがいるし、頼めば加入してくれるような人だっているだろうに、2組とも正式メンバーを入れることなく活動しているのは、自らの意思で去って行ったとはいえ、湯浅と久美子が1%に満たない可能性であっても、いつか帰ってこれる場所を用意して待ってるんじゃないかという気も少しはする。本人たちに聞いたら絶対否定するだろうけど。
そしてラストは4人編成に戻って、堀之内が
「こうして僕たちが活動できているのはみなさんのおかげです!日比谷のみなさん、本当に愛してます!」
と叫んだ「十字架You & I」で、間奏ではダンス湯浅将平に変わって、弓木のそのギターの腕前を全く嫌味なく見せまくるソロパートで最後には弓木は膝をついて弾きまくるという熱演をみせ、メンバーは充実感を顔に漂わせながらステージを去っていった。
去年の日比谷ノンフィクションVで小出は
「4人ではいけなかったところへ行けるし、できなかったこともこれからできる」
と3人になったことをポジティブに捉えているような発言をしていた。この日、バンドはその発言をしっかりと現実のものにしてみせたわけだが、去年はまだ弓木も参加していなかったし、バンドがこれからも続いていくのはわかったけど、具体的にどうやって続いていくのかというところまでは見えていなかった。しかし今年の日比谷ノンフィクションVIではしっかりとこれからバンドがどうやって進んでいくのかということを示してみせた。
それは様々なサポートメンバーを加えてサウンドを増やすことができるようになったというのも大きいが、それ以上に残った3人がここにきて音楽に対して同じ楽しさと充実感を持てたということが本当に大きいと思う。
またあの4人でステージに立つ姿が見れるならそれに越したことはないが、今のベボベを見ていると、それよりもはるかにすごいものをこれから先の活動で見せてくれるような予感しかない。その時には「光源」すら過渡期の作品だったと言えるようになっているだろうし、「昔の方が良かった」なんて言う人もいなくなってるはず。いざ、「決められたパラレルワールドへ」。
1.すべては君のせいで
2.(LIKE A) TRANSFER GIRL
3.Low Way
4.抱きしめたい
5.恋する感覚
6.GIRLFRIEND
7.LOVE MATHEMATICS
8.スクランブル feat.呂布
9.WHITE ROOM (弾き語り)
10.恋愛白書 (弾き語り)
11.寛解
12.リアリティーズ
13.レモンスカッシュ感覚
14.SHINE
15.逆バタフライ・エフェクト
16.CRAZY FOR YOUの季節
17.Darling
encore
18.クチビル・ディテクティブ feat.呂布、福岡晃子
19.十字架You & I
すべては君のせいで
https://youtu.be/xZx05-3inL8
Next→ 10/1 サカナクション @幕張メッセ
去年の日比谷ノンフィクションVは湯浅が脱退直後であり、様々なサポートギタリストをゲストに迎えた、バンドの危機を超えてさらに先へ進んでいくという意志を見せたものになったが、今回は3人編成になって初めてリリースしたアルバム「光源」のツアーファイナル的な立ち位置のタイミング。すでに開演前から陽が落ちた会場からは夏が過ぎ去ったことを感じさせるが、ステージに配置されたキーボードや譜面台からは明らかに4人編成ではないことを予感させる。
18時ぴったりになるとおなじみXTCのSEが流れ、堀之内と関根、近年おなじみのサポートギタリスト弓木英梨乃がステージに登場すると、その後に明らかにスタッフなどではない男性3人がステージに登場、そして最後に小出がステージに。その見慣れぬ3人はSANABAGUN.の谷本大河(サックス)、高橋鉱一(トランペット)に、様々なアーティストからリスペクトされるキーボードでありシンガーのRyu Matsuyama。SANABAGUN.のブラス隊は下手の関根側、Ryu Matsuyamaは上手の弓木側にそれぞれスタンバイし、4人が集まっての堀之内会議の後に「光源」のオープニングナンバーである「すべては君のせいで」を7人編成で演奏。「光源」は4人編成という枠から解放されたかのように、ギター、ベース、ドラム以外の様々なサウンドが入ったアルバムになっていたが、それをライブで生音で再現するためのこのサポートの布陣ということだろうが、なんの前置きもなくいきなりこの編成というのは、去年の日比谷ノンフィクションでのRHYMESTERとのコラボに続いての先制パンチである。
しかしながらこれは1曲だけのコラボではないわけで、続く「(LIKE A) TRANSFER GIRL」でも7人編成での演奏。メンバー紹介を経た、アーバンでゆったりしたサウンドがこの日比谷によく似合う「Low Way」でも7人編成で、このままこの日はこの編成で行くのかと思いきや、「抱きしめたい」ではシンプルなリズムの反復に弓木のみを加えた4人編成になったことで、「光源」の曲ではその曲に合わせてサポートメンバーが加わるという形式であることがわかるが、小出がべた褒めするギターの腕前を間奏で披露した弓木は他のサポートメンバーの特別な存在感に全く負けることはなく、むしろ最も目立つプレイヤーであると言える。
小出がマイクから少し離れると、その弓木がいきなり歌い始めたのは、原曲では声優の花澤香菜とのコラボ曲だった「恋する感覚」で、まさに花澤香菜のような可愛らしいボーカルを披露し、コーラスを務める関根とステージ中央で向かい合って間奏を演奏するという一幕も。しかし美味しい部分を持って行ったのは、最もハイトーンなコーラスのフレーズを歌った堀之内。会場中も「まさか!?」という感じで演奏中であるにもかかわらず、笑いが巻き起こっていたのは堀之内の人間性によるところも大きい。しかしながらこうして弓木の貢献度を見ていると、サポートメンバーとしてこのバンドに加わってちょうど1年くらいだが、もう完全にベボベにとってなくてはならない人物になっている。
「GIRLFRIEND」「LOVE MATHEMATICS」という代表曲の連発で一気に会場の温度も上昇すると、小出が今年の野音も晴れたことで、これまで行われた野音ライブで一度も雨が降っていないという晴れ男ぶりをアピールするが、例年は6月開催で、始まる前はまだ明るいのがだんだん暗くなっていき、カエルの鳴き声が聞こえていたのが、この日は始まる前からすでに暗く、鈴虫が鳴いていることによって、盛り上げようとしても鳴き声を聞くとついつい癒されてしまうという、秋ならではの野音の空気をメンバーも感じていた。さらに銀杏の匂いも秋っぽさを助長していたとも。
そしてSANABAGUN.の2人を再び招き入れると、さらにゲストとして今はKANDYTOWNのクルーとしても活躍している呂布がステージに登場し、
「人生ってまさに人間交差点ですね(夏に行われたRHYMESTERのイベントのタイトル。そこでも呂布とコラボした)」
と言って「スクランブル」を披露。呂布が出てきた時はまさかの「ido」をやるのか!?と思ったけれど、やはりそんなことは全くなかった。
すると増えたり減ったりしていたメンバーたちが一旦小出を残してステージを去り(小出いわく、イタリアはミラノ生まれのRyu Matsuyamaの作るミラノ風ドリアを食べている時間らしい)、まさかの小出によるアコギの弾き語りに。サポートを加えての編成もそうだが、ライブでこうして弾き語りをやることもこれまでは全くなかった。だからこそものすごく貴重なものが見れている、という新鮮な気持ちで見れたし、アコギのみというシンプルなサウンドであることにより、
「喋れない君は紙とペンで僕と話す
書き終えるのを待ちながら うとうとして」 (「WHITE ROOM」)
「青空が冴え渡る都市の風が 君の髪 揺らした時
なぜか見とれてた その横顔に」 (「恋愛白書」)
という、その瞬間を頭の中にイメージさせるようなリアリティに溢れた小出の歌詞を噛み締めながら聞くことができ、改めて小出の作詞家としてのレベルの高さを実感させられる。
Ryu Matsuyamaを加えての5人編成での「寛解」はピアノのサウンドとこの野音の雰囲気、そして関根のコーラスが合わさってゴスペル的な神聖さを感じさせ、「リアリティーズ」では
「誰かでありたいなら 席につくことさ」
という歌い出しのフレーズからパンチラインだらけの歌詞がまさに人生の真理を突いてくるかのように響く。
すると小出が
「MCで何を喋ろうかなぁと思ってたんですけど、最近思ってることは、音楽って本当に楽しいな、っていうことで」
と話し始め、
「この前、中津川ソーラー武道館で、弓木さんのスケジュールが合わなくて初めて3人だけでライブやったんですよ。そしたら昔の曲を3人だけでやることで、隙間を敢えて楽しむというか、非常に充実した気持ちになったんだけど…。俺だけ?2人とも充実してた?そこをまずは擦り合わせておきたいんだけど(笑)」
と関根と堀之内に確認し、無事に同意を取り付けると、
「その帰りにあまりに充実してたからか、スタッフとか一切いない3人だけでローカル線の駅のホームのベンチで並んでルマンドアイスを食べたんだけど(笑)、そんなこと今までやったことなくて(笑)
でその後に弓木さんと4人で今日のためのリハーサルをやった時、その充実感が薄れるかと言ったら、全然薄れるどころか、より楽しい感覚があって。弓木さんもそうでしたか?(弓木頷く)
で、今日のサポートメンバーたちとで7人8人に増えても、ただ音を足してるっていうんじゃなくて、ちゃんと全ての音が混ざり合ってるように感じて。ただ切ったものを並べただけの海鮮丼じゃなくて、それらを煮詰めてできた濃厚なんだけど澄み切ったラーメンのスープみたいな(笑)
だから今まで「音楽をやる」「音楽をする」っていう感じで、なかなか恥ずかしくて「音を奏でる」「音と戯れる」っていう風に口にできなかったんだけど、ようやくその始まりにこうして全員一致できたな、って。っていうことでいいですよね?(笑)」
と再びメンバーに確認すると、堀之内に
「楽屋で確認しておけよ!(笑)」
とごもっともなツッコミを受けながら、
「今日が一致の始まり。これこそノンフィクション」
と締めてみせた。
インディーズ時代からずっとベボベを見てきたが、ギタープレイはもちろん、湯浅の人間性も好きだったし、ずっと同じ景色を見てきて、同じ空気を吸って成長してきた4人だからこその音楽をやっていたベボベが本当に好きだった。でもその4人だけでやるという自分たちが自分たちに課した見えない縛りが、いつの間にかメンバー自身が音楽を楽しむという最も大事なことを忘れさせてしまっていたのかもしれない。
実際、新たな仲間たちと音を奏でている小出をはじめとするメンバーたちの表情は今までで最も楽しそうなものだったし、4人でバンドを始めた時はこういう感じだったのかもしれない、と思わせてくれた。
その頃の気持ちを呼び起こすかのような爽やかなギターロックの「レモンスカッシュ感覚」からはさらに演奏は加速する一方で、「SHINE」「逆バタフライ・エフェクト」という曲では「C2」以降に獲得したブラックミュージックのエッセンスともともとバンドの持ち味だった青春性の強いギターロックを見事に融合させた、このバンドにしかできない曲を作り上げたことを感じさせてくれる。
そして「CRAZY FOR YOUの季節」では熱気を帯びたバンドの演奏が原曲よりもさらにスピードを増しまくり、本編最後に演奏されたのは、最初は小出がギターを弾かずにマイクスタンドに向かって歌い、2コーラス目からギター&ボーカルになるという、見た目的にも新鮮な形の「Darling」。こうした形で披露できるのも、弓木というギタリストへの信頼があるからこそギターを彼女だけに任せることができるのだろう。
アンコールでは先にメンバー3人が登場すると、関根は「光源」ツアーから発売された、ここまでバンド名に寄せたグッズは初めてじゃないか、と思ってしまうベースボールシャツに着替えて登場し、ツアーの過酷なスケジュールを嘆きながらもさらに追加公演までも発表してから呼び込んだサポートメンバーたちも弓木を筆頭にみんなツアーTシャツを着用するというベボベ愛。そして呂布とともにステージに招かれたのは、なんとチャットモンチーの福岡晃子。
「今日も可愛いね〜。マジでタイプだわ〜」
と小出はすっかりセクハラおじさんと化した中、
「お互いメンバーが増えたり減ったりしてますが、これからもよろしくお願いします!」
と言って、およそ5年半ぶりにアッコと呂布とのコラボ曲である「クチビル・ディテクティブ」を披露。曲中にも小出がアッコの肩に手を回したりするという、昔この曲をやっていた時は全くやっていなかった絡みを見せてくれたのだが、ベボベもチャットモンチーもこうやってバンドを助けてくれる仲間たちがいるし、頼めば加入してくれるような人だっているだろうに、2組とも正式メンバーを入れることなく活動しているのは、自らの意思で去って行ったとはいえ、湯浅と久美子が1%に満たない可能性であっても、いつか帰ってこれる場所を用意して待ってるんじゃないかという気も少しはする。本人たちに聞いたら絶対否定するだろうけど。
そしてラストは4人編成に戻って、堀之内が
「こうして僕たちが活動できているのはみなさんのおかげです!日比谷のみなさん、本当に愛してます!」
と叫んだ「十字架You & I」で、間奏ではダンス湯浅将平に変わって、弓木のそのギターの腕前を全く嫌味なく見せまくるソロパートで最後には弓木は膝をついて弾きまくるという熱演をみせ、メンバーは充実感を顔に漂わせながらステージを去っていった。
去年の日比谷ノンフィクションVで小出は
「4人ではいけなかったところへ行けるし、できなかったこともこれからできる」
と3人になったことをポジティブに捉えているような発言をしていた。この日、バンドはその発言をしっかりと現実のものにしてみせたわけだが、去年はまだ弓木も参加していなかったし、バンドがこれからも続いていくのはわかったけど、具体的にどうやって続いていくのかというところまでは見えていなかった。しかし今年の日比谷ノンフィクションVIではしっかりとこれからバンドがどうやって進んでいくのかということを示してみせた。
それは様々なサポートメンバーを加えてサウンドを増やすことができるようになったというのも大きいが、それ以上に残った3人がここにきて音楽に対して同じ楽しさと充実感を持てたということが本当に大きいと思う。
またあの4人でステージに立つ姿が見れるならそれに越したことはないが、今のベボベを見ていると、それよりもはるかにすごいものをこれから先の活動で見せてくれるような予感しかない。その時には「光源」すら過渡期の作品だったと言えるようになっているだろうし、「昔の方が良かった」なんて言う人もいなくなってるはず。いざ、「決められたパラレルワールドへ」。
1.すべては君のせいで
2.(LIKE A) TRANSFER GIRL
3.Low Way
4.抱きしめたい
5.恋する感覚
6.GIRLFRIEND
7.LOVE MATHEMATICS
8.スクランブル feat.呂布
9.WHITE ROOM (弾き語り)
10.恋愛白書 (弾き語り)
11.寛解
12.リアリティーズ
13.レモンスカッシュ感覚
14.SHINE
15.逆バタフライ・エフェクト
16.CRAZY FOR YOUの季節
17.Darling
encore
18.クチビル・ディテクティブ feat.呂布、福岡晃子
19.十字架You & I
すべては君のせいで
https://youtu.be/xZx05-3inL8
Next→ 10/1 サカナクション @幕張メッセ
サカナクション SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around @幕張メッセ9~11ホール 10/1 ホーム
氣志團万博2017 ~房総与太郎爆音マシマシ、ロックンロールチョモランマ~ day2 @袖ヶ浦海浜公園 9/17