SWEET LOVE SHOWER 2017 day3 @山中湖交流プラザきらら 8/27
- 2017/08/29
- 21:01
いよいよ山中湖にかかっていた音楽の魔法も最後の日を迎える。朝はやや涼しめだったが、ライブが始まる頃には前日までとほとんど変わらない暑さに。まさかここまで天気が良い日が続くなんて誰が予想していただろうか。
10:25~ My Hair is Bad [Mt.FUJI STAGE]
去年はFOREST STAGEに初出演し、椎木の声がガラガラになってしまい、のちにポリープの手術を受けることにもなった、My Hair is Bad。今年は順調にMt.FUJI STAGEに駒を進めた。
リハで3人が揃って音を出すと、そのまま捌けることなく60秒前からのカウントダウンが始まり、0になってバンド名が紹介された瞬間に、
「おはようございます!新潟県上越市、My Hair is Badです!朝早くからありがとう!」
と椎木が大きな声で挨拶し、椎木が
「ドキドキしようぜ!」
と叫ぶ「アフターアワー」からスタート。テンポが音源よりもさらに速くなった「元彼氏として」では
「幸せになってくれ!俺のためにも!」
と言葉を付け足す。
「今日で夏フェス納め!良いライブもあったしクソみたいなライブもあったけど、終わりよければ全て良しっていう言葉があるんでその精神でいきたいと思います!」
と、7月から毎週毎週どこかしらのフェスに出まくっていたこのバンドの夏がこの日で終わることを告げ、「告白」「接吻とフレンド」とアルバム「woman's」からの曲を続けるが、このバンドはもうすっかりこのくらいのキャパに出てもおかしくないようなバンドになってきている。
「ここからの7分を俺にくれ!」
と椎木が叫ぶと、
「椎木に抱かれたいっていう女はマジで虫酸が走る。ビッチのカバンは重いって言うけど、今すぐ帰ってくれ!」
など次々に様々な感情が溢れ出していくのを言葉に変換していく「フロムナウオン」へ。
「99%の必然を1%の偶然が食うところが見たい。俺はそれに賭けてるんだ!」
ともはや盛り上がることもなく、ただただ椎木の口から出てくる言葉を黙って聞いていることしかできない。それくらいにこの曲の時の椎木は他の曲とは違うゾーンに入っている。
そして最後は「真赤」で夏の匂いを感じさせたかと思ったところで、今年最後の「夏が過ぎてく」。今年もあっという間に過ぎていった夏の思い出の中にはやっぱりこのバンドの姿が残っている。
リハ.音楽家になりたくて
1.アフターアワー
2.元彼氏として
3.告白
4.接吻とフレンド
5.フロムナウオン
6.真赤
7.夏が過ぎてく
真赤
https://youtu.be/0M3HoC2uGhM
11:10~ SHISHAMO [LAKESIDE STAGE]
2年連続でこのLAKESIDE STAGEへの出演となったSHISHAMOだが、去年の土砂降りとは打って変わって天気に恵まれ、降らないバンドの面目躍如である。
3人がステージに登場すると、宮崎の
「ラブシャ!」「ラブシャ!」
という煽りの後に挨拶して、最近のフェスでのオープニング曲である「好き好き!」からスタート。「量産型彼氏」ではスクリーンに作り込まれた映像が映し出されるが、ワンマンでも映像とコラボしたライブをやっているだけに、このバンドは見た目やイメージよりもそこに対するこだわりがあって、さらなる可能性を追求しているのかもしれない。
「朝子ー!」という観客の歓声を「朝子ちゃん、な」と冷静に受け流しながら、おなじみの「男子!」「女子!」のコール&レスポンスに続いて、「今日みんな何時に起きた?」と問いかけていき、「寝ないで来た」という人たちを「…バカだ(笑)」と一蹴し、その中の1人の男性を「あんた帽子被った方がいいよ」といじりまくるのだが、その男性がスクリーンに映し出されると会場は「確かに被った方がいい!」というのがわかるくらいに額をガッツリ出していたため、爆笑が起こる。
最新シングル「BYE BYE」はフェス前のリリースであるがもはや盛り上がる曲でも夏の曲でもない別れの曲だが、恋人との別れの曲のように見えて、弱い自分に別れを告げる歌になっているあたりに可愛さの裏にある宮崎の高い作家性を感じさせる。
松岡が礼儀正しく曲中にタオルを振る部分の説明をする「タオル」ではスクリーンにおなじみのアニメーションが映され、やはりフェスでこのバンドのライブを見るからには聴きたい「君と夏フェス」から、ラストは音楽プロデューサーのいしわたり淳治氏が絶賛していた、打ち込みのホーンの音が鳴る「明日も」でここにいた人たち全員の背中を強く押すように音を鳴らした。
去年の土砂降りを経てからだと、やっぱりこのバンドは晴れた空の下が非常によく似合うのがわかる。それは宮崎が常にフェスTシャツを着ているというライブキッズのような出で立ちでステージに立っているというのもあるかもしれないが。
1.好き好き!
2.量産型彼氏
3.BYE BYE
4.タオル
5.君と夏フェス
6.明日も
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/9SCugY_GGh4
12:00~ GLIM SPANKY [Mt.FUJI STAGE]
3年連続出演のGLIM SPANKY。2年前にオープニングアクトを務めたMt.FUJI STAGEに帰還である。
おなじみのサポートメンバー3人を含めた5人編成で登場すると、赤とピンクの中間といった感じの鮮やかな髪の色をした松尾レミのハスキーな声を生かしたミドルテンポの「アイスタンドアローン」からスタートし、「褒めろよ」では亀本のギターソロが炸裂。こうしてライブを見ると、松尾のボーカルだけではなくこの亀本のギターがこのバンドをロックンロールたらしめている要素であることがわかる。
ダンサブルな「いざメキシコへ」、ONE PIECEの主題歌にもなったアッパーな「怒りをくれよ」という曲も演奏したが、「闇に目を凝らせば」や「美しい棘」というBPMの遅い曲をこれだけフェスで演奏する若手バンドというのは実に珍しい存在である。もちろんそこにはこのバンドのルーツであるブルースの要素があるからだが、そうした盛り上がりが一切ないような曲でも「カッコイイ」と思えるのは2人が形だけでなく意志の部分からロックンロールを継承しているからである。
2人が2年前にこのフェスのオープニングアクトとして出演した際に土砂降りになってほとんど客がいなかったところから今年同じこのステージに立ってこれだけたくさんの人の前でライブができるようになった感慨を語ると、おなじみの大人への違和感とその大人へも響くような音楽をやりたいという決意を曲にしたこのバンド最大の名曲「大人になったら」を最後に演奏。もはやバラードというくらいのテンポの曲だが、どんなにテンポが遅くても曲が良ければちゃんと聴いている人に刺さるというのがよくわかる。2年前にも演奏したこの曲がその時よりもはるかにたくさんの人の前で鳴っているのは、本人たちも語っていた通りに実に感慨深かった。
1.アイスタンドアローン
2.褒めろよ
3.闇に目を凝らせば
4.いざメキシコへ
5.怒りをくれよ
6.美しい棘
7.大人になったら
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/NW-LZzAkwYk
13:35~ Cocco [Mt.FUJI STAGE]
今年デビュー20周年を迎えた、Cocco。記念碑的な日本武道館2daysを経て、このフェスにも出演。
おなじみのサポートメンバーたちに囲まれた中でドレスを着たCoccoが花束を持ってステージに登場すると、藤田顕の嵐を彷彿とさせるようなギターサウンドで始まったのは「強く儚いものたち」。いきなりの大名曲からのスタートに客席はどよめきを隠せないが、Cocco自身の声も実によく出ている。
さらにアコギの調べによって始まった「Raining」「樹海の糸」と史上の名曲が続き、ワンコーラス歌い切るたびに客席から拍手が湧き上がるというフェスでは実に珍しい光景も見られたが、これもライブパフォーマンスと楽曲の素晴らしさが共存しているからこそ。さらに続く「愛うらら」も含めてこの会場の空気が楽曲のイメージに非常に良く似合っており、Cocco自身も
「こんなに風が気持ち良いのは最近で…というよりも20年で1番かもしれません」
とこのステージでの手応えを感じていた。
しかしながら歌詞の内容が全くこの自然の景色に合わない「Way Out」でサウンドが重いロックに転じると、かつて活動休止から復帰した際に復帰第一弾シングルとして世に放たれた「音速パンチ」を気持ち良い風の中で響かせ、メンバーと抱擁してステージから去って行った。
数えきれないくらいにいる女性ソロシンガーにおいて、歌が上手い人はたくさんいる。しかしながらその大半が数年もするとシーンから消えて行ってしまう。その中で20年間も最前線に立ち続けることができるのは、この人でしかないという個性を持ち、聴く人の心の奥にまで刺さるような曲を作り、歌を歌える人だけ。Coccoはその最たる存在である。風は気持ち良かったが、この日は、太陽、眩しかった。
1.強く儚い者たち
2.Raining
3.樹海の糸
4.愛うらら
5.Way Out
6.音速パンチ
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/JkvORLdaBJs
14:20~ レキシ [LAKESIDE STAGE]
LAKESIDE STAGEの客席の様子はこれまでとは全く違う。稲穂が多数掲げられているからである。去年は上原ひろみの助っ人として出演したこのフェスのレギュラー的な存在のレキシ、今年はLAKESIDE STAGEに登場である。
法螺貝の音が鳴り響く中でサポートメンバーたちとレキシこと池ちゃんがステージに登場すると、すぐさま演奏がスタートし、ステージから客席に次々にイルカの空気人形が投げ込まれ、蘇我入鹿の曲である「KMTR645」からスタート。前日にこの曲のコラボ相手であるキュウソネコカミもこの曲を演奏していたが、レキシではホーン隊が入っていることによって、サウンドがはっきりと違うのが面白い。キュウソネコカミとのコラボも見たかったところではあるが。
持ち時間が少なく、非常に時間が押しやすいアクトであるためか、序盤は最新シングル「KATOKU」、池ちゃんが暑い中で十二単を重ね着する「SHIKIBU」とテンポ良く曲を続けていくが、このテンポの良さには本人もビックリしていた。
そんなテンポの良さにもかかわらず
「あと2曲です!」
と言ってから、ビックリするくらいたくさんの人が手にしていた稲穂を持った中で演奏が始まったのは、おなじみの「狩りから稲作へ」。
「稲穂を持ってないのが恥ずかしいことじゃないですよ!持ってるほうが恥ずかしいですからね!」
といつもの稲穂いじり(ススキを持っている人は総じてさらにいじられていた)もありつつ、途中には
「この長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せて
稲穂をいっぱい握りしめてゆっくりゆっくり振ってる~」
と、この日の大トリであるゆずの「夏色」を稲穂バージョンに変えて歌い、
「これでもう干されるかもしれないから、今年が最後のラブシャかもしれません(笑)」
と自虐しながらおなじみのキャッツやクラシアンのネタもしっかりやりきり、さらに「きらきら武士」と、すっかり人気アクトになった期待に応えるようになぜか近年になって車のタイアップ曲になった「きらきら武士」を演奏して、ダラダラすることなく非常に引き締まった、音楽的なレキシのアクトを全うしてみせた。
1.KMTR645
2.KATOKU
3.SHIKIBU
4.狩りから稲作へ
5.きらきら武士
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/YEsJODZNc5A
15:55~ Dragon Ash [LAKESIDE STAGE]
この日は激しいロックバンドが少ないだけにある意味では浮いた存在になっている、Dragon Ash。このフェスでも何回も会場を晴れにしてきたし、ドラマー桜井によるスペシャキッチンのコラボメニューも含めて、もはやこのフェスでもおなじみの存在である。
ATSUSHIとDRI-Vのダンサー2人以外はミリタリー調の衣装で統一された中、ポップなアクトが多かったこの日のこのステージの景色を一変させるかのように重くラウドな「Mix It Up」からスタート。
さらに激しさを増したバンドサウンドの「Ambitious」で合唱を巻き起こすと、kenkenのベースと歌唱をフィーチャーした「The Live」では
「目の前の山中湖!」
とkenkenが叫ぶ。
タイミング的には最新アルバム「MAJESTIC」のリリース後ということもあり、そのアルバムのお披露目的な側面もあったが、
「こんなにバックステージに友達がいないフェスって最近なかなかない(笑)
しかも怖がられてるのか、楽屋も端っこにされてるし(笑)
でも今日とかこの3日間いろんなアーティストが出てるけど、あそこのゲートをくぐったら普段のいろんなことは全て忘れられるし、年齢も性別も宗教も思想も関係ない。だからみんなここに来てるんだろう!?」
とkjが熱い言葉を投げかけ、「Fantasista」でダイバーが大量に発生し、ラストは「MAJESTIC」の「A Hundred Emotions」で感情を放出させ、演奏を終えた桜井誠がドラムから降りて客席の写真を撮って笑顔でステージを去っていった。
出演日が初日だったらバックステージには友達や後輩のバンドがたくさんいたかもしれないが、この日のように同じような系統のバンドが全くいないからこそ、この日のライブからは「ラウドロック代表」としての誇りのようなものを感じさせた。そしてやはり今年もこのバンドのライブは晴れだった。
1.Mix It Up
2.Ambitious
3.The Live
4.Jump
5.Fantasista
6.A Hundred Emotions
Mix It Up
https://youtu.be/IiVWKNcTgKw
その後、スペシャブースにてこの日のクロージングDJである石毛&ノブ(lovefilm)のトークショーを観覧。
「DJっていうか人生のプロ」
を自認するノブは「サトヤスと近所でしょっちゅう会うから[Alexandros]のライブが楽しみ」と語り、
「先日、浜松でライブをやっているDragon Ashに呼び出されて新幹線に乗ってライブを観にいった」
という石毛はかつてRed Hot Foo Fightersという名前のコピーバンドを組んでおり、レッチリやフーファイではなくオアシスなどのコピーをやっていたことを語るが、サマソニでFoo Fightersが来日した際にスペシャの番組の企画でデイブ・グロールにインタビューできたことを今年の夏の最大の思い出として語っていた。
17:10~ クリープハイプ [Mt.FUJI STAGE]
尾崎世界観は現在「ヨルジュウ」の番組内でコーナーを持つなど、スペシャとの関わりがさらに深くなってきているが、このフェスでももはやおなじみの存在である。
SEもなしにメンバーがステージに登場すると、
「本当に自分にとって大事なフェスなので、気合いを入れて昨日散髪に行ったら、ワカメちゃんみたいな髪型になってしまいました(笑)
これが汗をかいて無造作ヘアになるくらいに汗をかかせてくださいよ!
富士山に届くくらいに大きな声でお願いします!」
と尾崎が自身の新しい髪型を自虐的にいじって「HE IS MINE」で「セックスしよう!」の大合唱からスタート。
カオナシがメインボーカルの「火まつり」から、「ラブホテル」ではラストサビ前でいったん演奏を止め、
「つい先日、田舎の方の駅に行った時に、切符を精算しようと思って改札の駅員のところに行ったんですね。そしたらその駅員がめちゃくちゃ態度が悪かったもんだから、キレてここでは言えないようなことを言いまくって。その後にトイレに行ったりしたら、財布がないことに気付いて。そしたら、
「尾崎祐介さん、財布が届いております。駅員室までお越しください」
ってアナウンスがあって…。最悪でしたよ(笑)
…もうちょっと笑ってもいいんじゃないですか?(笑)なんかすごい可哀想、みたいな空気になってますけど(笑)
あの時の駅員の顔が忘れられないので、あの時の出来事をすべて夏のせいにしたいと思います!」
と言って最後のサビで思いっきり感情を込めて
「夏のせいにすればいい」
と歌うのだが、この日は尾崎の声が本当に良く出ていた。一時期は喉が壊れた説もあったりしたが、完全にボーカルに関しては安定感が増してきている。
ブラックミュージックの要素も取り入れた「鬼」から、
「最高か、最低か、そのどっちかを大きな声で教えてくださいよ」
と言って「最高です!」の大合唱を巻き起こした「社会の窓」、そして
「この曲をここで演奏できるのが本当に嬉しいです」
という最新の名曲「イト」で躍らせるまで一気に駆け抜けた35分。ロッキンのGRASS STAGEもそうだが、このバンドは今大切なステージが確実に増えてきている。それはバンドがこれまでの活動の中で掴んできたものではあるが、かつて以上にそれが素直に出るようになってきている。それだけにこうして毎年その大事なステージでのライブを見れることが実に嬉しい。
リハ.愛の標識
リハ.大丈夫
1.HE IS MINE
2.火まつり
3.ラブホテル
4.百八円の恋
5.鬼
6.社会の窓
7.イト
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
17:55~ [Alexandros] [LAKESIDE STAGE]
昨年は雨が降りしきる中でMt.FUJI STAGEのトリを務めた[Alexandros]。今年は2年ぶりにLAKESIDE STAGEに帰還。
ロッキン同様にブランドとコラボした衣装を着た4人とサポートキーボードのROSEが登場すると、川上は何やらステージに置かれたサンプラーのようなものを操作してサウンドを発しながらハンドマイクで歌い始めたのは新曲。ロッキンで最後にやっていた曲とも違う、浮遊感のあるサウンドに
「月明かりに導かれ」
というような歌詞が乗る、だんだん暗くなってきたこのシチュエーションにぴったりな曲である。
そんな予期せぬ先制攻撃の後にしっかりと「ワタリドリ」という代表曲で期待に応えながら、パワフルなヒップホップを搭載した「Kaiju」、川上がハンドマイクで煽りまくりながら飛び跳ねさせる「Kick&Spin」とバンドの幅の広さを短い時間の中で見せつけていく。
イントロの前に追加されたコーラスパートで大合唱を起こしながら川上がハンドマイクでステージを左右に動き回り(ステージ端っこの鉄パイプに手をかけたりしつつ)ながら「Adventure」を歌うと、最後に演奏されたのも新曲。こちらはロッキンでも披露されてそこで初披露にもかかわらず「Yeah Yeah Yeah」という合唱を起こした曲であるがゆえにこの日も即効性は抜群で、まだタイトルもわからない新曲とは思えない盛り上がりぶりを見せて終了した。
1曲だけならそこまで驚かないが、早くもさらなる新曲までもが披露され、しかもそのどちらもが間違いなく[Alexandros]の曲なんだけど、今までのどの曲にも似ていないというバンドの引き出しの多さと表現力の幅広さを実感させるために、もはや恐ろしさすら感じる。果たしてこの2曲はどんな形で世の中に放たれるのだろうか。
そして去年は雨というコンディションだからこその熱演をMt.FUJI STAGEで見せたが、やはりこのバンドに限ってはメインステージの方がよく似合うし、メンバーもその景色を楽しんでいるように見える。何よりももうバンドと曲のスケールがメインステージじゃないと収まりきらないのだ。
1.新曲
2.ワタリドリ
3.Kaiju
4.Kick&Spin
5.Adventure
6.新曲
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/5TTRq19CVZ0
18:30~ plenty [FOREST STAGE]
来月の日比谷野音ワンマンをもって解散することを発表している、plenty。つまり今年出ているフェスは最後の出演ということになる。何度も出演してきたこのフェスも。
荘厳なSEが鳴る中、至って普通にメンバーが登場。服も完全にいつも通り、特別な装飾も仕掛けもない、普段のplentyのライブと同じ状態である。しかしながら1曲目は「ひとつ、さよなら」であり、これは紛れもなくバンドサイドからの別れの挨拶のようでもあった。
江沼のボーカルはいつも通りの少年のようなハイトーンを保ちながらも、そこにはこれまでとは少し違う種類のエモーションを感じさせる。それが最も感じられたのは「待ち合わせの途中」で、曲が終わると江沼が
「ありがとうございます。ありがとう、ございます」
と口を開くまでのかなり長い間、客席から拍手が途切れることはなかった。それくらいこの日のこの曲は何か特別なものが宿っていた。
「枠」ではサウンドが一気に激しさを増し、そのまま「最近どうなの?」、「傾いた空」と駆け抜けるようにして6曲を演奏し、あまりにあっさりと、まるで感傷を与えないかのようにメンバーはステージを去っていく。まだ時間はあるとはいえ、初日も2日目もこのステージはアンコールがなかった。それだけに少し不安げに待っていたのだが、観客の手拍子に応えてメンバーはステージに戻ってきた。さすがにこれだけでは終われないだろう。
清冽なサウンドではあるが、中村一太のドラムはアンコールでさらに激しさを増していた。曲自体は決してそうしたタイプの曲ではない、むしろ歌を支えるようなリズムのタイプの曲なのだが、そのドラムを叩く姿はまさに全身全霊という言葉がぴったりで、一片たりとも悔いを残さないように叩いている。そこには自身が辞めたいと言ったことがバンドの解散に繋がってしまったというファンに対しての申し訳なさのようなものもあったのかもしれないが。
しかし前述したように、最後だからといって特別な演出もない、いつものようなplentyのライブだったのだが、最後の曲の前に江沼は
「SPACE SHOWER TV、SWEET LOVE SHOWER、本当にお世話になりました!ありがとうございました!さようなら!」
と言った。再会を約束する言葉ではなくて、別れの言葉だった。その瞬間、ああ、本当にこれで最後なんだな、という現実が押し寄せてきた。
そして最後に演奏されたのはラストツアーのタイトルにもなっている曲「蒼き日々」。アンコールの前に
「心を込めて歌います」
と言った通りに、上手いとか下手じゃなく、自分の感情を全て歌に乗せるように歌った江沼、前述のように全身全霊でドラムを叩いた一太、そして感傷を押し殺すようにいつも通りに飄々とベースを弾いていた新田。そんな三者三様に演奏していた3人が最後の一音を出す瞬間に向かい合って、笑った。その瞬間が全てだった。良いライブだったし、紛れもなくplentyは良いバンドだった。それも全ては蒼き日々だった。まだまだ聴きたい曲はたくさんあったけれど、自分がこのバンドのライブを見れるのはこの日が最後。最後だからこそ、あの最後の一音を出す時の3人の笑顔は、バンド最後の姿として自分の記憶にずっと残っていくはずだ。
plentyは出自こそロッキンオンのRO JACKで優勝してデビューというものだったが、その後からはスペシャもバンドのことを応援し続けてきた。特番を組んだことも何回もあったし、直前に出ていた[Alexandros]が[Champagne]だった時代に彼らとcinema staff、モーモールルギャバンとでスペシャ列伝ツアーを廻ったり。
そんなスペシャにバンドとしては別れを告げたからこそ、またこれからの各々の音楽活動でスペシャと関われる時が来るように。江沼と一太はきっとどこかで名前や活動を耳にする機会があるだろうけど、新田もまたステージでベースを弾く姿が見れますように。
1.ひとつ、さよなら
2.ETERNAL
3.待ち合わせの途中
4.枠
5.最近どうなの?
6.傾いた空
encore
7.よろこびの吟
8.手紙
9.蒼き日々
plenty
https://youtu.be/jUCzV8Gplxo
19:35~ ゆず [LAKESIDE STAGE]
そして三日間の大トリを務めるのは、今年でデビュー20周年になる、ゆず。初出演での大役である。
サポートメンバーたちが先にステージにスタンバイする中に北川と岩沢の2人が現れると、
「歌える人は一緒に歌ってください!」
と代表曲であることを予告して始まったのは「サヨナラバス」。1曲目からサヨナラか、とも思ったが、やはり自分が中学生の頃にみんなが聴いていた曲をライブで聴けるというのは嬉しいものである。
続く「少年」も代表曲の一つであるが、北川はハンドマイクで歌いながらステージの端から端まで歩いて歌い、歌詞に合わせたアクション(「回ってる」のフレーズに合わせてその場をぐるっと回ってみせたり)をするというエンターテイナーぶりを見せる。自分はゆずのライブを見るのは完全にこれが初めてなのだが、このエンターテイナーぶりにはちょっと驚かされた。だが普段ならドームでやるような人たちなだけに、路上からそこまで登りつめていく中で会得したものなんだろうな、ということもわかる。
しかし「虹」では一転して歌を真摯に届けるという曲に合わせたメリハリをつけ、照明がタイトルに合わせて7色にステージと客席を照らすのが美しい。
北川がゆずのライブを見るのが初めての人がどれくらいいるかを聞くと、9割方が初めてというどアウェーな状況であることが発覚するが、ライブからはそのアウェー感を全く感じないあたりがさすがに国民的ユニットである。
「ここまでは僕らの代表曲を聴いてもらいましたが、やっぱり最新の僕らを見てもらいたい!」
ということで、壮大な「愛こそ」、ダンサーが多数登場して観客にダンスのやり方をレクチャーする「タッタ」と最新曲2曲を披露。やはり初期の曲とは違うな、と思うのは「サヨナラバス」や「少年」はアコギで歌うのが主体でそこにバンドサウンドを肉付けしていくという形に聞こえたのだが、この最新曲は最初からこの大人数編成で演奏するのを想定して作られている。そしてそこには初期のイメージが強い自分のような人が驚くくらいに様々な音やジャンルの要素が取り入れられている。この音楽への貪欲な姿勢が20年経っても全く失われていないということは、これから先もゆずはさらに進化していくということを示している。
「みなさん、もう夏が終わっちゃいますけど、夏にやり残したことはありますか!?僕たちはあります!この曲をみんなと一緒に歌ってない!」
と北川が言ってから岩沢がアコギを弾き始めたのは「夏色」。北川はステージからゴムボールみたいなものを発射装置から大量に客席に放ち、観客の「もう一回!」コールに合わせてサビを何度も繰り返していた。
ちなみに「夏色」の曲振りが、
「SPACE SHOWER TV 1998年6月のPower Push!」
というものだった。覚えていたのか、スタッフから聞いたのかはわからないが、それをスペシャのフェスのステージから言うという姿勢は本当に律儀というか義理堅いというか。そこには間違いなくそのデビュー当時から自分たちの音楽を評価してくれたスペシャへの感謝があるはずだし、当時「夏色」があれだけ売れたのもスペシャの影響が少なからずあるはず。(Power Push!に選ばれてからブレイクしたアーティストは数え切れないほどいる)
そしてこの3日間を締めくくるべく鳴らされたのは「栄光の架橋」。スクリーンには演奏する2人の姿の下に曲の歌詞が映し出されたため、北川が煽るまでもなく客席から大合唱が起こり、この曲が国民的な曲ということだけでなく、フェスの最後を締めくくるアンセムとしても鳴る曲であるということを示した。
「やっぱり初出演なのにいきなり大トリは荷が重かった~!」
と北川は言っていたが、これまでの代表曲からは自分のような熱心なファンではない人でも口ずさめる普遍性を、最新の曲からは今なお衰えない音楽への探究心とゆずというユニットの進化を感じさせる、トリに相応しい見事なアクトだった。
こうした国民的アーティストがフェスに出演した際に難しいのは、求められていることと自分たちが見せたいことのバランスだが、この日のゆずは短い時間の中でその最適なバランスを見せてくれたと思う。今年は他のフェスにも参戦していたが、これは20周年だからなのか、それともこれからはこうしたフェスにも出ていくという姿勢の現れなのか。
1.サヨナラバス
2.少年
3.虹
4.愛こそ
5.タッタ
6.夏色
7.栄光の架橋
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/7_JYsTFMrGY
20:25~ 石毛&ノブ(lovefilm) [Closing DJ]
ゆずのライブが終わると、夜空に花火が上がり、ビートルズ「All You Need Is Love」が流れる中、LAKESIDE STAGEにはレーザーで「SEE YOU NEXT YEAR」の文字が。
しかしこれで全てのアクトの終わりではなく、この3日間の真の最後のアクトは、「ラブシャの守護神」こと、石毛とノブによるDJ。
なぜかサンタクロースの格好をした2人がダンスミュージックをかけて最後まで残った人たちを踊らせると、時折lovefilmの「Kiss」や、「夏だから」という理由で稲川淳二の怪談をサンプリングしたものをミックスしたりする。
ノブは途中で衣装を脱いで踊りまくると、スタッフから残り時間あと5分という報告を受け、
「普段DJをやるときには絶対かけない曲。簡単にかけちゃいけない曲だから。初日か2日目でもかけようとはしなかったと思うけど、この曲が今年のラブシャの最後に流れた曲になるから。最後まで残ってくれたみんなに、愛と!ディスコを!」
と石毛がこのフェスの締めに選んだのは、the telephonesの「Love&DISCO」。当然それまでとは全く空気が変わり、前の方に押し寄せる人、仲間たちと肩を組んで踊る人、泣きそうになっている人…。その全ての人が思い切り「Love&DISCO」を叫んでいた。そこには石毛とノブのスペシャとこのフェスに対する確かな愛があり、それが最後まで残った人の石毛とノブ、さらにはこのフェスへの愛と合わさって、三日間の中で最も幸福な瞬間となった。
去年はlovefilmで出演したが、今年はDJのみ。石毛は新バンド、Yap!!!も始動させたが、telephonesもまた、9mmやNICO同様にこのフェスからメインステージに出るようになり、間違いなくこのフェスに愛されたバンドだった。だから、今はまだそれぞれにやりたいことがたくさんあるだろうけど、いつでもこのフェスのステージに戻ってきてくれていいんだぜ。
だいぶ前にKen Yokoyamaがこのフェスに出た時「これから意志のないフェスは淘汰されていくようになると思う」というようなことを言っていた。それはかつてAIR JAMを作り、日本のフェスの礎を作った男だからこその説得力に溢れていたが、このフェスが今でも全日ソールドアウトするのはスペシャの意志とこの最高のロケーションがあるから。だからこうやって毎年ここで夏の終わりを迎えるようになった。
今年は全くと言っていいくらいに雨が降らないという、初めてなんじゃないかと思うくらいに天候に恵まれた。だから富士山が本当に美しく見えた。来年また、ここであの景色を見れますように。それが一年間を生きる大きなモチベーションになっている。自分にとって本当に大事な場所。
Next→ 9/9 ぴあ MUSIC COMPLEX @新木場若洲公園


10:25~ My Hair is Bad [Mt.FUJI STAGE]
去年はFOREST STAGEに初出演し、椎木の声がガラガラになってしまい、のちにポリープの手術を受けることにもなった、My Hair is Bad。今年は順調にMt.FUJI STAGEに駒を進めた。
リハで3人が揃って音を出すと、そのまま捌けることなく60秒前からのカウントダウンが始まり、0になってバンド名が紹介された瞬間に、
「おはようございます!新潟県上越市、My Hair is Badです!朝早くからありがとう!」
と椎木が大きな声で挨拶し、椎木が
「ドキドキしようぜ!」
と叫ぶ「アフターアワー」からスタート。テンポが音源よりもさらに速くなった「元彼氏として」では
「幸せになってくれ!俺のためにも!」
と言葉を付け足す。
「今日で夏フェス納め!良いライブもあったしクソみたいなライブもあったけど、終わりよければ全て良しっていう言葉があるんでその精神でいきたいと思います!」
と、7月から毎週毎週どこかしらのフェスに出まくっていたこのバンドの夏がこの日で終わることを告げ、「告白」「接吻とフレンド」とアルバム「woman's」からの曲を続けるが、このバンドはもうすっかりこのくらいのキャパに出てもおかしくないようなバンドになってきている。
「ここからの7分を俺にくれ!」
と椎木が叫ぶと、
「椎木に抱かれたいっていう女はマジで虫酸が走る。ビッチのカバンは重いって言うけど、今すぐ帰ってくれ!」
など次々に様々な感情が溢れ出していくのを言葉に変換していく「フロムナウオン」へ。
「99%の必然を1%の偶然が食うところが見たい。俺はそれに賭けてるんだ!」
ともはや盛り上がることもなく、ただただ椎木の口から出てくる言葉を黙って聞いていることしかできない。それくらいにこの曲の時の椎木は他の曲とは違うゾーンに入っている。
そして最後は「真赤」で夏の匂いを感じさせたかと思ったところで、今年最後の「夏が過ぎてく」。今年もあっという間に過ぎていった夏の思い出の中にはやっぱりこのバンドの姿が残っている。
リハ.音楽家になりたくて
1.アフターアワー
2.元彼氏として
3.告白
4.接吻とフレンド
5.フロムナウオン
6.真赤
7.夏が過ぎてく
真赤
https://youtu.be/0M3HoC2uGhM
11:10~ SHISHAMO [LAKESIDE STAGE]
2年連続でこのLAKESIDE STAGEへの出演となったSHISHAMOだが、去年の土砂降りとは打って変わって天気に恵まれ、降らないバンドの面目躍如である。
3人がステージに登場すると、宮崎の
「ラブシャ!」「ラブシャ!」
という煽りの後に挨拶して、最近のフェスでのオープニング曲である「好き好き!」からスタート。「量産型彼氏」ではスクリーンに作り込まれた映像が映し出されるが、ワンマンでも映像とコラボしたライブをやっているだけに、このバンドは見た目やイメージよりもそこに対するこだわりがあって、さらなる可能性を追求しているのかもしれない。
「朝子ー!」という観客の歓声を「朝子ちゃん、な」と冷静に受け流しながら、おなじみの「男子!」「女子!」のコール&レスポンスに続いて、「今日みんな何時に起きた?」と問いかけていき、「寝ないで来た」という人たちを「…バカだ(笑)」と一蹴し、その中の1人の男性を「あんた帽子被った方がいいよ」といじりまくるのだが、その男性がスクリーンに映し出されると会場は「確かに被った方がいい!」というのがわかるくらいに額をガッツリ出していたため、爆笑が起こる。
最新シングル「BYE BYE」はフェス前のリリースであるがもはや盛り上がる曲でも夏の曲でもない別れの曲だが、恋人との別れの曲のように見えて、弱い自分に別れを告げる歌になっているあたりに可愛さの裏にある宮崎の高い作家性を感じさせる。
松岡が礼儀正しく曲中にタオルを振る部分の説明をする「タオル」ではスクリーンにおなじみのアニメーションが映され、やはりフェスでこのバンドのライブを見るからには聴きたい「君と夏フェス」から、ラストは音楽プロデューサーのいしわたり淳治氏が絶賛していた、打ち込みのホーンの音が鳴る「明日も」でここにいた人たち全員の背中を強く押すように音を鳴らした。
去年の土砂降りを経てからだと、やっぱりこのバンドは晴れた空の下が非常によく似合うのがわかる。それは宮崎が常にフェスTシャツを着ているというライブキッズのような出で立ちでステージに立っているというのもあるかもしれないが。
1.好き好き!
2.量産型彼氏
3.BYE BYE
4.タオル
5.君と夏フェス
6.明日も
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/9SCugY_GGh4
12:00~ GLIM SPANKY [Mt.FUJI STAGE]
3年連続出演のGLIM SPANKY。2年前にオープニングアクトを務めたMt.FUJI STAGEに帰還である。
おなじみのサポートメンバー3人を含めた5人編成で登場すると、赤とピンクの中間といった感じの鮮やかな髪の色をした松尾レミのハスキーな声を生かしたミドルテンポの「アイスタンドアローン」からスタートし、「褒めろよ」では亀本のギターソロが炸裂。こうしてライブを見ると、松尾のボーカルだけではなくこの亀本のギターがこのバンドをロックンロールたらしめている要素であることがわかる。
ダンサブルな「いざメキシコへ」、ONE PIECEの主題歌にもなったアッパーな「怒りをくれよ」という曲も演奏したが、「闇に目を凝らせば」や「美しい棘」というBPMの遅い曲をこれだけフェスで演奏する若手バンドというのは実に珍しい存在である。もちろんそこにはこのバンドのルーツであるブルースの要素があるからだが、そうした盛り上がりが一切ないような曲でも「カッコイイ」と思えるのは2人が形だけでなく意志の部分からロックンロールを継承しているからである。
2人が2年前にこのフェスのオープニングアクトとして出演した際に土砂降りになってほとんど客がいなかったところから今年同じこのステージに立ってこれだけたくさんの人の前でライブができるようになった感慨を語ると、おなじみの大人への違和感とその大人へも響くような音楽をやりたいという決意を曲にしたこのバンド最大の名曲「大人になったら」を最後に演奏。もはやバラードというくらいのテンポの曲だが、どんなにテンポが遅くても曲が良ければちゃんと聴いている人に刺さるというのがよくわかる。2年前にも演奏したこの曲がその時よりもはるかにたくさんの人の前で鳴っているのは、本人たちも語っていた通りに実に感慨深かった。
1.アイスタンドアローン
2.褒めろよ
3.闇に目を凝らせば
4.いざメキシコへ
5.怒りをくれよ
6.美しい棘
7.大人になったら
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/NW-LZzAkwYk
13:35~ Cocco [Mt.FUJI STAGE]
今年デビュー20周年を迎えた、Cocco。記念碑的な日本武道館2daysを経て、このフェスにも出演。
おなじみのサポートメンバーたちに囲まれた中でドレスを着たCoccoが花束を持ってステージに登場すると、藤田顕の嵐を彷彿とさせるようなギターサウンドで始まったのは「強く儚いものたち」。いきなりの大名曲からのスタートに客席はどよめきを隠せないが、Cocco自身の声も実によく出ている。
さらにアコギの調べによって始まった「Raining」「樹海の糸」と史上の名曲が続き、ワンコーラス歌い切るたびに客席から拍手が湧き上がるというフェスでは実に珍しい光景も見られたが、これもライブパフォーマンスと楽曲の素晴らしさが共存しているからこそ。さらに続く「愛うらら」も含めてこの会場の空気が楽曲のイメージに非常に良く似合っており、Cocco自身も
「こんなに風が気持ち良いのは最近で…というよりも20年で1番かもしれません」
とこのステージでの手応えを感じていた。
しかしながら歌詞の内容が全くこの自然の景色に合わない「Way Out」でサウンドが重いロックに転じると、かつて活動休止から復帰した際に復帰第一弾シングルとして世に放たれた「音速パンチ」を気持ち良い風の中で響かせ、メンバーと抱擁してステージから去って行った。
数えきれないくらいにいる女性ソロシンガーにおいて、歌が上手い人はたくさんいる。しかしながらその大半が数年もするとシーンから消えて行ってしまう。その中で20年間も最前線に立ち続けることができるのは、この人でしかないという個性を持ち、聴く人の心の奥にまで刺さるような曲を作り、歌を歌える人だけ。Coccoはその最たる存在である。風は気持ち良かったが、この日は、太陽、眩しかった。
1.強く儚い者たち
2.Raining
3.樹海の糸
4.愛うらら
5.Way Out
6.音速パンチ
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/JkvORLdaBJs
14:20~ レキシ [LAKESIDE STAGE]
LAKESIDE STAGEの客席の様子はこれまでとは全く違う。稲穂が多数掲げられているからである。去年は上原ひろみの助っ人として出演したこのフェスのレギュラー的な存在のレキシ、今年はLAKESIDE STAGEに登場である。
法螺貝の音が鳴り響く中でサポートメンバーたちとレキシこと池ちゃんがステージに登場すると、すぐさま演奏がスタートし、ステージから客席に次々にイルカの空気人形が投げ込まれ、蘇我入鹿の曲である「KMTR645」からスタート。前日にこの曲のコラボ相手であるキュウソネコカミもこの曲を演奏していたが、レキシではホーン隊が入っていることによって、サウンドがはっきりと違うのが面白い。キュウソネコカミとのコラボも見たかったところではあるが。
持ち時間が少なく、非常に時間が押しやすいアクトであるためか、序盤は最新シングル「KATOKU」、池ちゃんが暑い中で十二単を重ね着する「SHIKIBU」とテンポ良く曲を続けていくが、このテンポの良さには本人もビックリしていた。
そんなテンポの良さにもかかわらず
「あと2曲です!」
と言ってから、ビックリするくらいたくさんの人が手にしていた稲穂を持った中で演奏が始まったのは、おなじみの「狩りから稲作へ」。
「稲穂を持ってないのが恥ずかしいことじゃないですよ!持ってるほうが恥ずかしいですからね!」
といつもの稲穂いじり(ススキを持っている人は総じてさらにいじられていた)もありつつ、途中には
「この長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せて
稲穂をいっぱい握りしめてゆっくりゆっくり振ってる~」
と、この日の大トリであるゆずの「夏色」を稲穂バージョンに変えて歌い、
「これでもう干されるかもしれないから、今年が最後のラブシャかもしれません(笑)」
と自虐しながらおなじみのキャッツやクラシアンのネタもしっかりやりきり、さらに「きらきら武士」と、すっかり人気アクトになった期待に応えるようになぜか近年になって車のタイアップ曲になった「きらきら武士」を演奏して、ダラダラすることなく非常に引き締まった、音楽的なレキシのアクトを全うしてみせた。
1.KMTR645
2.KATOKU
3.SHIKIBU
4.狩りから稲作へ
5.きらきら武士
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/YEsJODZNc5A
15:55~ Dragon Ash [LAKESIDE STAGE]
この日は激しいロックバンドが少ないだけにある意味では浮いた存在になっている、Dragon Ash。このフェスでも何回も会場を晴れにしてきたし、ドラマー桜井によるスペシャキッチンのコラボメニューも含めて、もはやこのフェスでもおなじみの存在である。
ATSUSHIとDRI-Vのダンサー2人以外はミリタリー調の衣装で統一された中、ポップなアクトが多かったこの日のこのステージの景色を一変させるかのように重くラウドな「Mix It Up」からスタート。
さらに激しさを増したバンドサウンドの「Ambitious」で合唱を巻き起こすと、kenkenのベースと歌唱をフィーチャーした「The Live」では
「目の前の山中湖!」
とkenkenが叫ぶ。
タイミング的には最新アルバム「MAJESTIC」のリリース後ということもあり、そのアルバムのお披露目的な側面もあったが、
「こんなにバックステージに友達がいないフェスって最近なかなかない(笑)
しかも怖がられてるのか、楽屋も端っこにされてるし(笑)
でも今日とかこの3日間いろんなアーティストが出てるけど、あそこのゲートをくぐったら普段のいろんなことは全て忘れられるし、年齢も性別も宗教も思想も関係ない。だからみんなここに来てるんだろう!?」
とkjが熱い言葉を投げかけ、「Fantasista」でダイバーが大量に発生し、ラストは「MAJESTIC」の「A Hundred Emotions」で感情を放出させ、演奏を終えた桜井誠がドラムから降りて客席の写真を撮って笑顔でステージを去っていった。
出演日が初日だったらバックステージには友達や後輩のバンドがたくさんいたかもしれないが、この日のように同じような系統のバンドが全くいないからこそ、この日のライブからは「ラウドロック代表」としての誇りのようなものを感じさせた。そしてやはり今年もこのバンドのライブは晴れだった。
1.Mix It Up
2.Ambitious
3.The Live
4.Jump
5.Fantasista
6.A Hundred Emotions
Mix It Up
https://youtu.be/IiVWKNcTgKw
その後、スペシャブースにてこの日のクロージングDJである石毛&ノブ(lovefilm)のトークショーを観覧。
「DJっていうか人生のプロ」
を自認するノブは「サトヤスと近所でしょっちゅう会うから[Alexandros]のライブが楽しみ」と語り、
「先日、浜松でライブをやっているDragon Ashに呼び出されて新幹線に乗ってライブを観にいった」
という石毛はかつてRed Hot Foo Fightersという名前のコピーバンドを組んでおり、レッチリやフーファイではなくオアシスなどのコピーをやっていたことを語るが、サマソニでFoo Fightersが来日した際にスペシャの番組の企画でデイブ・グロールにインタビューできたことを今年の夏の最大の思い出として語っていた。
17:10~ クリープハイプ [Mt.FUJI STAGE]
尾崎世界観は現在「ヨルジュウ」の番組内でコーナーを持つなど、スペシャとの関わりがさらに深くなってきているが、このフェスでももはやおなじみの存在である。
SEもなしにメンバーがステージに登場すると、
「本当に自分にとって大事なフェスなので、気合いを入れて昨日散髪に行ったら、ワカメちゃんみたいな髪型になってしまいました(笑)
これが汗をかいて無造作ヘアになるくらいに汗をかかせてくださいよ!
富士山に届くくらいに大きな声でお願いします!」
と尾崎が自身の新しい髪型を自虐的にいじって「HE IS MINE」で「セックスしよう!」の大合唱からスタート。
カオナシがメインボーカルの「火まつり」から、「ラブホテル」ではラストサビ前でいったん演奏を止め、
「つい先日、田舎の方の駅に行った時に、切符を精算しようと思って改札の駅員のところに行ったんですね。そしたらその駅員がめちゃくちゃ態度が悪かったもんだから、キレてここでは言えないようなことを言いまくって。その後にトイレに行ったりしたら、財布がないことに気付いて。そしたら、
「尾崎祐介さん、財布が届いております。駅員室までお越しください」
ってアナウンスがあって…。最悪でしたよ(笑)
…もうちょっと笑ってもいいんじゃないですか?(笑)なんかすごい可哀想、みたいな空気になってますけど(笑)
あの時の駅員の顔が忘れられないので、あの時の出来事をすべて夏のせいにしたいと思います!」
と言って最後のサビで思いっきり感情を込めて
「夏のせいにすればいい」
と歌うのだが、この日は尾崎の声が本当に良く出ていた。一時期は喉が壊れた説もあったりしたが、完全にボーカルに関しては安定感が増してきている。
ブラックミュージックの要素も取り入れた「鬼」から、
「最高か、最低か、そのどっちかを大きな声で教えてくださいよ」
と言って「最高です!」の大合唱を巻き起こした「社会の窓」、そして
「この曲をここで演奏できるのが本当に嬉しいです」
という最新の名曲「イト」で躍らせるまで一気に駆け抜けた35分。ロッキンのGRASS STAGEもそうだが、このバンドは今大切なステージが確実に増えてきている。それはバンドがこれまでの活動の中で掴んできたものではあるが、かつて以上にそれが素直に出るようになってきている。それだけにこうして毎年その大事なステージでのライブを見れることが実に嬉しい。
リハ.愛の標識
リハ.大丈夫
1.HE IS MINE
2.火まつり
3.ラブホテル
4.百八円の恋
5.鬼
6.社会の窓
7.イト
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
17:55~ [Alexandros] [LAKESIDE STAGE]
昨年は雨が降りしきる中でMt.FUJI STAGEのトリを務めた[Alexandros]。今年は2年ぶりにLAKESIDE STAGEに帰還。
ロッキン同様にブランドとコラボした衣装を着た4人とサポートキーボードのROSEが登場すると、川上は何やらステージに置かれたサンプラーのようなものを操作してサウンドを発しながらハンドマイクで歌い始めたのは新曲。ロッキンで最後にやっていた曲とも違う、浮遊感のあるサウンドに
「月明かりに導かれ」
というような歌詞が乗る、だんだん暗くなってきたこのシチュエーションにぴったりな曲である。
そんな予期せぬ先制攻撃の後にしっかりと「ワタリドリ」という代表曲で期待に応えながら、パワフルなヒップホップを搭載した「Kaiju」、川上がハンドマイクで煽りまくりながら飛び跳ねさせる「Kick&Spin」とバンドの幅の広さを短い時間の中で見せつけていく。
イントロの前に追加されたコーラスパートで大合唱を起こしながら川上がハンドマイクでステージを左右に動き回り(ステージ端っこの鉄パイプに手をかけたりしつつ)ながら「Adventure」を歌うと、最後に演奏されたのも新曲。こちらはロッキンでも披露されてそこで初披露にもかかわらず「Yeah Yeah Yeah」という合唱を起こした曲であるがゆえにこの日も即効性は抜群で、まだタイトルもわからない新曲とは思えない盛り上がりぶりを見せて終了した。
1曲だけならそこまで驚かないが、早くもさらなる新曲までもが披露され、しかもそのどちらもが間違いなく[Alexandros]の曲なんだけど、今までのどの曲にも似ていないというバンドの引き出しの多さと表現力の幅広さを実感させるために、もはや恐ろしさすら感じる。果たしてこの2曲はどんな形で世の中に放たれるのだろうか。
そして去年は雨というコンディションだからこその熱演をMt.FUJI STAGEで見せたが、やはりこのバンドに限ってはメインステージの方がよく似合うし、メンバーもその景色を楽しんでいるように見える。何よりももうバンドと曲のスケールがメインステージじゃないと収まりきらないのだ。
1.新曲
2.ワタリドリ
3.Kaiju
4.Kick&Spin
5.Adventure
6.新曲
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/5TTRq19CVZ0
18:30~ plenty [FOREST STAGE]
来月の日比谷野音ワンマンをもって解散することを発表している、plenty。つまり今年出ているフェスは最後の出演ということになる。何度も出演してきたこのフェスも。
荘厳なSEが鳴る中、至って普通にメンバーが登場。服も完全にいつも通り、特別な装飾も仕掛けもない、普段のplentyのライブと同じ状態である。しかしながら1曲目は「ひとつ、さよなら」であり、これは紛れもなくバンドサイドからの別れの挨拶のようでもあった。
江沼のボーカルはいつも通りの少年のようなハイトーンを保ちながらも、そこにはこれまでとは少し違う種類のエモーションを感じさせる。それが最も感じられたのは「待ち合わせの途中」で、曲が終わると江沼が
「ありがとうございます。ありがとう、ございます」
と口を開くまでのかなり長い間、客席から拍手が途切れることはなかった。それくらいこの日のこの曲は何か特別なものが宿っていた。
「枠」ではサウンドが一気に激しさを増し、そのまま「最近どうなの?」、「傾いた空」と駆け抜けるようにして6曲を演奏し、あまりにあっさりと、まるで感傷を与えないかのようにメンバーはステージを去っていく。まだ時間はあるとはいえ、初日も2日目もこのステージはアンコールがなかった。それだけに少し不安げに待っていたのだが、観客の手拍子に応えてメンバーはステージに戻ってきた。さすがにこれだけでは終われないだろう。
清冽なサウンドではあるが、中村一太のドラムはアンコールでさらに激しさを増していた。曲自体は決してそうしたタイプの曲ではない、むしろ歌を支えるようなリズムのタイプの曲なのだが、そのドラムを叩く姿はまさに全身全霊という言葉がぴったりで、一片たりとも悔いを残さないように叩いている。そこには自身が辞めたいと言ったことがバンドの解散に繋がってしまったというファンに対しての申し訳なさのようなものもあったのかもしれないが。
しかし前述したように、最後だからといって特別な演出もない、いつものようなplentyのライブだったのだが、最後の曲の前に江沼は
「SPACE SHOWER TV、SWEET LOVE SHOWER、本当にお世話になりました!ありがとうございました!さようなら!」
と言った。再会を約束する言葉ではなくて、別れの言葉だった。その瞬間、ああ、本当にこれで最後なんだな、という現実が押し寄せてきた。
そして最後に演奏されたのはラストツアーのタイトルにもなっている曲「蒼き日々」。アンコールの前に
「心を込めて歌います」
と言った通りに、上手いとか下手じゃなく、自分の感情を全て歌に乗せるように歌った江沼、前述のように全身全霊でドラムを叩いた一太、そして感傷を押し殺すようにいつも通りに飄々とベースを弾いていた新田。そんな三者三様に演奏していた3人が最後の一音を出す瞬間に向かい合って、笑った。その瞬間が全てだった。良いライブだったし、紛れもなくplentyは良いバンドだった。それも全ては蒼き日々だった。まだまだ聴きたい曲はたくさんあったけれど、自分がこのバンドのライブを見れるのはこの日が最後。最後だからこそ、あの最後の一音を出す時の3人の笑顔は、バンド最後の姿として自分の記憶にずっと残っていくはずだ。
plentyは出自こそロッキンオンのRO JACKで優勝してデビューというものだったが、その後からはスペシャもバンドのことを応援し続けてきた。特番を組んだことも何回もあったし、直前に出ていた[Alexandros]が[Champagne]だった時代に彼らとcinema staff、モーモールルギャバンとでスペシャ列伝ツアーを廻ったり。
そんなスペシャにバンドとしては別れを告げたからこそ、またこれからの各々の音楽活動でスペシャと関われる時が来るように。江沼と一太はきっとどこかで名前や活動を耳にする機会があるだろうけど、新田もまたステージでベースを弾く姿が見れますように。
1.ひとつ、さよなら
2.ETERNAL
3.待ち合わせの途中
4.枠
5.最近どうなの?
6.傾いた空
encore
7.よろこびの吟
8.手紙
9.蒼き日々
plenty
https://youtu.be/jUCzV8Gplxo
19:35~ ゆず [LAKESIDE STAGE]
そして三日間の大トリを務めるのは、今年でデビュー20周年になる、ゆず。初出演での大役である。
サポートメンバーたちが先にステージにスタンバイする中に北川と岩沢の2人が現れると、
「歌える人は一緒に歌ってください!」
と代表曲であることを予告して始まったのは「サヨナラバス」。1曲目からサヨナラか、とも思ったが、やはり自分が中学生の頃にみんなが聴いていた曲をライブで聴けるというのは嬉しいものである。
続く「少年」も代表曲の一つであるが、北川はハンドマイクで歌いながらステージの端から端まで歩いて歌い、歌詞に合わせたアクション(「回ってる」のフレーズに合わせてその場をぐるっと回ってみせたり)をするというエンターテイナーぶりを見せる。自分はゆずのライブを見るのは完全にこれが初めてなのだが、このエンターテイナーぶりにはちょっと驚かされた。だが普段ならドームでやるような人たちなだけに、路上からそこまで登りつめていく中で会得したものなんだろうな、ということもわかる。
しかし「虹」では一転して歌を真摯に届けるという曲に合わせたメリハリをつけ、照明がタイトルに合わせて7色にステージと客席を照らすのが美しい。
北川がゆずのライブを見るのが初めての人がどれくらいいるかを聞くと、9割方が初めてというどアウェーな状況であることが発覚するが、ライブからはそのアウェー感を全く感じないあたりがさすがに国民的ユニットである。
「ここまでは僕らの代表曲を聴いてもらいましたが、やっぱり最新の僕らを見てもらいたい!」
ということで、壮大な「愛こそ」、ダンサーが多数登場して観客にダンスのやり方をレクチャーする「タッタ」と最新曲2曲を披露。やはり初期の曲とは違うな、と思うのは「サヨナラバス」や「少年」はアコギで歌うのが主体でそこにバンドサウンドを肉付けしていくという形に聞こえたのだが、この最新曲は最初からこの大人数編成で演奏するのを想定して作られている。そしてそこには初期のイメージが強い自分のような人が驚くくらいに様々な音やジャンルの要素が取り入れられている。この音楽への貪欲な姿勢が20年経っても全く失われていないということは、これから先もゆずはさらに進化していくということを示している。
「みなさん、もう夏が終わっちゃいますけど、夏にやり残したことはありますか!?僕たちはあります!この曲をみんなと一緒に歌ってない!」
と北川が言ってから岩沢がアコギを弾き始めたのは「夏色」。北川はステージからゴムボールみたいなものを発射装置から大量に客席に放ち、観客の「もう一回!」コールに合わせてサビを何度も繰り返していた。
ちなみに「夏色」の曲振りが、
「SPACE SHOWER TV 1998年6月のPower Push!」
というものだった。覚えていたのか、スタッフから聞いたのかはわからないが、それをスペシャのフェスのステージから言うという姿勢は本当に律儀というか義理堅いというか。そこには間違いなくそのデビュー当時から自分たちの音楽を評価してくれたスペシャへの感謝があるはずだし、当時「夏色」があれだけ売れたのもスペシャの影響が少なからずあるはず。(Power Push!に選ばれてからブレイクしたアーティストは数え切れないほどいる)
そしてこの3日間を締めくくるべく鳴らされたのは「栄光の架橋」。スクリーンには演奏する2人の姿の下に曲の歌詞が映し出されたため、北川が煽るまでもなく客席から大合唱が起こり、この曲が国民的な曲ということだけでなく、フェスの最後を締めくくるアンセムとしても鳴る曲であるということを示した。
「やっぱり初出演なのにいきなり大トリは荷が重かった~!」
と北川は言っていたが、これまでの代表曲からは自分のような熱心なファンではない人でも口ずさめる普遍性を、最新の曲からは今なお衰えない音楽への探究心とゆずというユニットの進化を感じさせる、トリに相応しい見事なアクトだった。
こうした国民的アーティストがフェスに出演した際に難しいのは、求められていることと自分たちが見せたいことのバランスだが、この日のゆずは短い時間の中でその最適なバランスを見せてくれたと思う。今年は他のフェスにも参戦していたが、これは20周年だからなのか、それともこれからはこうしたフェスにも出ていくという姿勢の現れなのか。
1.サヨナラバス
2.少年
3.虹
4.愛こそ
5.タッタ
6.夏色
7.栄光の架橋
Live SWEET LOVE SHOWER 2017
https://youtu.be/7_JYsTFMrGY
20:25~ 石毛&ノブ(lovefilm) [Closing DJ]
ゆずのライブが終わると、夜空に花火が上がり、ビートルズ「All You Need Is Love」が流れる中、LAKESIDE STAGEにはレーザーで「SEE YOU NEXT YEAR」の文字が。
しかしこれで全てのアクトの終わりではなく、この3日間の真の最後のアクトは、「ラブシャの守護神」こと、石毛とノブによるDJ。
なぜかサンタクロースの格好をした2人がダンスミュージックをかけて最後まで残った人たちを踊らせると、時折lovefilmの「Kiss」や、「夏だから」という理由で稲川淳二の怪談をサンプリングしたものをミックスしたりする。
ノブは途中で衣装を脱いで踊りまくると、スタッフから残り時間あと5分という報告を受け、
「普段DJをやるときには絶対かけない曲。簡単にかけちゃいけない曲だから。初日か2日目でもかけようとはしなかったと思うけど、この曲が今年のラブシャの最後に流れた曲になるから。最後まで残ってくれたみんなに、愛と!ディスコを!」
と石毛がこのフェスの締めに選んだのは、the telephonesの「Love&DISCO」。当然それまでとは全く空気が変わり、前の方に押し寄せる人、仲間たちと肩を組んで踊る人、泣きそうになっている人…。その全ての人が思い切り「Love&DISCO」を叫んでいた。そこには石毛とノブのスペシャとこのフェスに対する確かな愛があり、それが最後まで残った人の石毛とノブ、さらにはこのフェスへの愛と合わさって、三日間の中で最も幸福な瞬間となった。
去年はlovefilmで出演したが、今年はDJのみ。石毛は新バンド、Yap!!!も始動させたが、telephonesもまた、9mmやNICO同様にこのフェスからメインステージに出るようになり、間違いなくこのフェスに愛されたバンドだった。だから、今はまだそれぞれにやりたいことがたくさんあるだろうけど、いつでもこのフェスのステージに戻ってきてくれていいんだぜ。
だいぶ前にKen Yokoyamaがこのフェスに出た時「これから意志のないフェスは淘汰されていくようになると思う」というようなことを言っていた。それはかつてAIR JAMを作り、日本のフェスの礎を作った男だからこその説得力に溢れていたが、このフェスが今でも全日ソールドアウトするのはスペシャの意志とこの最高のロケーションがあるから。だからこうやって毎年ここで夏の終わりを迎えるようになった。
今年は全くと言っていいくらいに雨が降らないという、初めてなんじゃないかと思うくらいに天候に恵まれた。だから富士山が本当に美しく見えた。来年また、ここであの景色を見れますように。それが一年間を生きる大きなモチベーションになっている。自分にとって本当に大事な場所。
Next→ 9/9 ぴあ MUSIC COMPLEX @新木場若洲公園



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SWEET LOVE SHOWER 2017 day2 @山中湖交流プラザきらら 8/26