ROCK IN JAPAN FES.2017 day3 @国営ひたち海浜公園 8/11
- 2017/08/13
- 14:01
完全にお盆シーズンで、RISING SUNと日程が被っているのは2週開催になってからは例年通りだが、今年は3日目は祝日の金曜日であり、初の金曜・土曜開催となる。
早朝は雨がかなり降っていたために不安が募っていたが、会場に着くとしっかり雨が上がっているのはさすが悪魔と契約した(byホリエアツシ)渋谷陽一社長のフェスである。
しかしながらやはり空は曇天模様で、暑さは一切なく、むしろ寒さすら感じるという珍しい気候。過ごしやすいが、テンションはあまり上がらない。
10:30~ the HIATUS [GRASS STAGE]
リハの段階で曲をほぼフルに連発し、もはやリハという概念を超えるくらいに普通にライブの一部と化している、the HIATUS。
前説でロッキンオン社長の渋谷陽一に
「今、世界陸上やってるでしょ。ロックの世界大会やってたら、このバンドは絶対メダル取れるくらいに筋肉質なバンド。音だけじゃなくて体も筋肉質になってるのは付き合ってる友達が悪いよなぁ(笑)TOSHI-LOWと長く付き合うから(笑)」
と渋谷陽一とも細美武士とも深い関係であるTOSHI-LOWの名前を出して紹介されてから登場すると、今年からGRASS STAGEのステージ背面に新設されたLEDにアニメーションの映像が映し出された(MONOEYESの時は一切使わなかったが、そこはやはりバンドの音楽性で変えているのか)「Clone」、「Geranium」と現状の最新作である「Hands Of Gravity」収録曲から始まる。
冒頭こそ穏やかだったが、「The Flare」からは渋谷陽一の言う筋肉質なバンドサウンドをフルに発揮し、出自も個性もバラバラなメンバーたちの音が一気にぶつかり合いながらも一つに調和していく。ちょっとかすれ気味な感じもしなくはない細美の声は2バンドで夏フェス期間を駆け抜けている疲れもあるのだろうが、それでもやはり広大なGRASS STAGEの端まで響き渡るかのよう。
「まだビール飲むには早い時間だけど、今日はお祭りだから」
と早くも缶ビールを開けると、祈りを捧げるかのように歌う「Thirst」からは細美がハンドマイクに。masasucksが冒頭では全然ギターを弾かないという削ぎ落とされたサウンドを柏倉隆史の複雑なドラムが支える「Bonfire」、細美が飛び跳ねながら歌う「Unhurt」とじわじわと熱量を上げていくと、「Lone Train Running」で再び爆発を迎える。新旧バラバラなセトリだからこその流れである。
細美の声に聴き入ってしまう「Radio」では細美が観客の思いを全て受け止めるかのように両手を広げながら歌うと、
「懐かしい曲を」
と言って細美がアコギに持ち替えて演奏されたのは言葉数の多い「Shimmer」。確かにフェスで演奏されるのはなかなか久しぶりである。
「あんまり言うことないや(笑)
お前らが死ぬ時に、「あの時のロッキン楽しかったな」って思うロッキンになればいいな。また会えるかわからないけど、またどこかで!」
と、近年は毎回フェスのルールに疑問を投げかけていた細美が実にストレートな心境を述べてから切実な思いが叫ばれる「Insomnia」、そしてラストは間奏でメンバー全員が笑顔で向かい合って演奏する姿が、この5人でバンドをやっている喜びを感じさせる「紺碧の夜に」。ただ単に曲が良いっていうだけじゃなくて、こういう姿にグッと来るし、本当に良いバンドなんだな~と思わせてくれる。
MONOEYESは今年GRASS STAGEに出たが、バンドの音楽性を考えると去年までのLAKEの方が合っている。しかしthe HIATUSは曲のスケールが完全にこのキャパでないと受け止めきれない。決して近年は満員と言えるような状態ではないが、このバンドはずっとこのステージで見たいたい。
リハ1.Let Me Fall
リハ2.Deerhounds
リハ3.Silver Birch
リハ4.Storm Racers
1.Clone
2.Geranium
3.The Flare
4.Thirst
5.Bonfire
6.Unhurt
7.Lone Train Running
8.Radio
9.Shimmer
10.Insomnia
11.紺碧の夜に
11:50~ NICO Touches the Walls [GRASS STAGE]
近年は毎年このGRASS STAGEに立っている、NICO Touches the Walls。得てして早い時間の出演が多いが、やはり今年も昼の時間に登場。例年と違うのは早い時間の割に暑くないという気候で、光村もリハの段階でそのことに触れていた。
この日は春のツアーと同じく、サポートにマルチプレイヤーの浅野尚志を迎えての5人編成で、その浅野氏がいきなりヴァイオリンを弾いてサウンドに厚みを与える「THE BUNGY」で飛び跳ねさせると、間奏ではワンマンの時ほど長くはないけれどセッション的な演奏が挟まれるのがこのバンドのスタイル。常に自分たちの曲をアップデートし続けているが、やはり演奏するメンバーが1人増えるとそのやり方も変わってくる。
メンバー全員でのコーラスが曲のメロディを引き立てる「エーキューライセンス」から光村の
「ベストアクトを狙います!」
という強気な発言も挟んでの「ニワカ雨ニモ負ケズ」ではおなじみのラストサビ前のタメがなかったため、すんなりと曲をやったイメージだが、これはやはりフェスでたくさんの曲をやりたいという思いからだろうか。
「手を叩け」では文字通り客席をハンドクラップが満たし、「夏の大三角形」では夏の野外でこの曲を聴けるというシチュエーションに浸るかのようにイントロから歓声が起きる。
すると浅野も含めた光村以外の4人が全員で対馬のドラムを叩きまくるというフランツ・フェルディナンドのようなイントロアレンジ(このパフォーマンス自体は何回もやったことがある)からの「マシ・マシ」は歌い出しが光村の歌と対馬のドラムだけということもあり、かなりブルース色を強く感じさせるものになった。
シングル曲連発の中で演奏されたカップリング曲「MOROHA IROHA」はそのやりたい放題な演奏っぷりも含めてファンには嬉しいところ。そのかわりというか、最近よくやっている大曲さすがに「GUERNICA」はこのステージではやらなかったが。
そしてポップに突き抜ける「バイシクル」で光村のボーカルはさらに伸びを増し、坂倉も笑顔で曲を口ずさみながら演奏する様子がモニターに映し出される。メンバー自身もこのステージに立って演奏していることを本当に楽しんでいる様子。
ラストの「天地ガエシ」ではイントロのメロディを浅野がヴァイオリンで奏でることで曲の真価をフルに発揮し、間奏で光村が膝をついて仰け反るようにしてギターを弾きまくるという煽りまくって突入した最後のサビでは高速化しまくったメロディがヴァイオリンの音色でさらにアイリッシュパンク色を強めていた。
MCほぼ全くなしで曲をひたすら演奏するというスタイルができるのは、自身の演奏技術に自信があるからこそだし、そうすることによって見るたびに曲が進化する様をしっかり見ることができる。そういう意味では実にこのバンドらしい戦い方を会得してきたのかもしれない。
フェスの集客には様々な要素が絡んでくる。同じ時間に違うステージで演奏しているアーティストや、天候、時間など。これまでGRASSに出続けていたとはいえ、決して埋めることができたとは言い切れなかったNICOだが、この日は過去最高クラスに人がたくさんいたし、その人たちにちゃんと音が届いているという実感があった。これならまた来年もこの同じステージで1年間のバンドの進化を確認できるし、この結果は11月に控えている、バンド最大の勝負となる幕張メッセでの主催フェスに向けて大きな自信になるはず。主催フェス、本当にこれからのこのバンドにとって大事なものになると思う。
リハ.ストラト
1.THE BUNGY
2.エーキューライセンス
3.ニワカ雨ニモ負ケズ
4.手を叩け
5.夏の大三角形
6.マシ・マシ
7.MOROHA IROHA
8.バイシクル
9.天地ガエシ
13:10~ クリープハイプ [GRASS STAGE]
伸び切ったNICOの光村の後に見ると、尾崎世界観の髪型すらもさっぱりとしているように見える。もはやこのステージでもおなじみとなったクリープハイプである。
SE一切なしで登場するというのはこのバンドにとってはおなじみだが、
「いきなりセックスの曲を」
と言って「HE IS MINE」で始まるという飛ばしっぷりで、尾崎は
「夏だし余計なものなしで、生で思いっきりいきましょう」
と言うと「セックスしよう!」の大合唱が起こるのだが、序盤はイマイチで後半になるにつれて調子を上げてくるイメージの尾崎の声は冒頭から実によく出ている。これはなんらかのトレーニングなどを行ったりしているんだろうか。
「ひたちなかへと」
とこのフェスを帰る場所とした「愛の標識」、「イノチミジカシコイセヨオトメ」というメジャー1stアルバムに収録された曲を連発して集まった観客を喜ばせると、夏の曲こと「ラブホテル」へ。ラストサビ前のブレイク部分では尾崎が
「この曲を初めてやったのは、2013年のこのフェスでした。あれから4年経って29歳だったのが33歳になると、「夏のせい」じゃなくて「自分のせい」なのがわかる。自己責任。でも今日だけは、甘えさせてください!」
と言って結局「夏のせい」と連発。このあたりの繋ぎが絶好調なのもやはり喉の調子がいいことと関係あるのだろうか。
自身がメインボーカルを務める「かえるの唄」で
「茹だれ!ひたちなか!」
と叫んだり、曲中にポーズを取ったりするなど、やたらとテンションが高かったカオナシはさらに「火まつり」とメインボーカル曲を続けると、さらにベースからキーボードにパートチェンジして、尾崎がギターを置いてマイクスタンドで歌う「5%」へ。「ラブホテル」がこのフェスで初披露されてから代表曲になったように、まだ「世界観」発売前の去年新曲としてこのフェスで披露されたこの曲もこれからそうなっていくのかもしれない。
このバンドはほとんど曲と曲に間がないだけにいつも非常にテンポが良いのだが、「鬼」「社会の窓」とキラーチューンを立て続けに演奏すると、打ち込みのホーンの音を導入した最新のキラーチューン「イト」で小川がステージ前まで出てきて笑顔でギターを弾き、
「昨日の夜、ホテルで寝れなくて、GOING STEADYのライブDVDを見てたんですよ。そしたら、やっぱりバンドって良いなって思って。もうこうやってステージに立つ方の立場になったから、ライブを観にいくよりも、もっとたくさんステージに立ちたいなって思いました。なかなかこのステージを埋めるのは大変だな、っていつも思うけど、いつかこのステージを埋めたいと思ってます」
と今後もこのステージに立ち続けようとする意志を語り、
「前に進め 前に進め」
と観客とバンド自身をも鼓舞するように歌われたのは「二十九、三十」。この選曲は間違いなく、GOING STEADYの話のくだりを含めても、リスペクトを寄せる銀杏BOYZがこの曲をカバーしてくれたからこそだろう。もはや一方通行のリスペクトではなく、完全に相思相愛の関係になったバンドだからこそのアンサー。
そしてラストは
「あの先へ行きたいですね」
と来年以降を見据えた「オレンジ」という凄まじいボリュームのセトリとなった。
バンドの状態、メンバーの状態の良さが伺える、これからのさらなる飛躍が期待できる内容のライブだったが、それは尾崎らメンバーのこのステージへの愛が確かに感じられたから。そりゃあそうだ、こんなに大きなステージに立つ機会なんて本当に1年でこのフェスくらいしかないんだから。その喜びを噛み締めながら演奏したのは間違いない。
リハ.大丈夫
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.イノチミジカシコイセヨオトメ
4.ラブホテル
5.かえるの唄
6.火まつり
7.5%
8.鬼
9.社会の窓
10.イト
11.二十九、三十
12.オレンジ
14:00~ Bentham [HILLSIDE STAGE]
今年はHILLSIDE STAGEへの出演となった、Bentham。初のフルアルバム「Re:Wonder」をリリースした直後というアルバムの曲をツアーより前に聴くには絶好のタイミングである。
小関(ボーカル&ギター)が気合い充分に
「ひたちなかー!」
と叫ぶと「クレイジーガール」からスタート。金髪の辻はピョンピョン飛び跳ねたりその場でぐるっと周りながらベースを弾き、須田はハイトーンなコーラスも務めながらギターを弾く。
メジャーデビューシングル「激しい雨」では小関が汗を飛び散らせながら熱唱するのだが、CDを聴くとポップで踊れるバンドというイメージが付きやすいバンドだが(KEYTALKの後輩という立場もあって)、ライブを見るとそれ以上にひたすら熱いバンドだということがすぐにわかる。それは演奏している姿もそうだし、小関のこの時間にこの場所を選んでくれた観客に対する曲間の言葉一つ一つとってもそう。
しかしながらドラム鈴木のMCは
「ステージから見ると客席が膨らんでるから、おっぱいみたいに見える(笑)
俺の股間のHILLSIDEも絶好調です!(笑)」
とまさかの下ネタの連発。さすがに小関に
「やめなさい!(笑)」
と止められていたが。
おなじみの「HEY!」での須田の曲中のコール&レスポンスは変則的なリズムの難易度が高い「ロックインジャパン」というものだったが、それでも大きなレスポンスが返ってくるあたりはここにいた観客はみんなこのバンドが見たくてここに来たということの証明である。
小関が「Re:Wonder」の告知をすると、その中に収録されている「透明シミュレーション」、さらに
「バンドにとって大事な曲」
だという「Chicago」の2曲を披露したのだが、もうこれはこれまでのイメージを覆せるだろうというくらいにタフで力強いロックンロールになっている。
そしてラストはライブ用にアレンジされたイントロから手拍子が鳴り響き、軽快なリズムで踊らせまくった、バンドの代表曲「パブリック」という、最新曲を披露しながらもフェスで求められている曲もしっかりやるという、バンドの持つバランスの良さを見せてくれた。
このフェスでもしっかりと存在感を見せつけつつあるこのバンド。
「1歩ずつだけど、確実に」
という小関の言葉通りに歩みを進めているが、ツアーファイナルの赤坂BLITZワンマンはこれまでの中で最も大きな1歩になるはずだ。
1.クレイジーガール
2.激しい雨
3.僕から君へ
4.HEY!
5.透明シミュレーション
6.Chicago
7.パブリック
14:40~ Shout it Out [WING STAGE]
10代限定のオーディション的なライブ「未確認フェスティバル」の初代グランプリ、Shout it Out。去年はHILLSIDE STAGEのトップバッターだったが今年はWING STAGEに登場。
この間にはギターとベースの脱退、そしてファーストフルアルバムのリリースと、まさに激動の1年を歩んできた。
サポートメンバー2人を加えての4人編成で、冒頭の「17歳」から若者の衝動を炸裂させまくった蒼いギターロックを次々に鳴らしていく。ともすれば青臭いという一言で片付けられても仕方がない歌詞だが、歌っている山内の目は大人には絶対に媚びたり服従したりしないという鋭さを放っており、その歌詞に説得力を持たせている。
歌詞にフラワーカンパニーズ「深夜高速」のフレーズが引用されている「青年の主張」を演奏すると、
「伝説のライブみたいなもんが見たいんなら別のステージに行ってくれ!」
とあくまで若者の等身大の姿のままでこのステージをやり切る決意を吠えると、持ち曲の中でひときわポップな「夜間飛行」で若さという枠には止まらない普遍性を感じさせ、後半は「逆光」からさらに加速し、30分に7曲を詰め込むというスピード感を見せつけ、最初はガラガラだった客席をしっかりと埋めてみせた。それはBLUE ENCOUNTが終わってから急いで駆けつけた人たちがいっぱいいたからかもしれないが。
しかし、このバンドのように「10代の代弁者」的な存在だったバンドたちは、みな年齢を重ねることによってその位置から離れていった。それはそうで、30代や40代になってまで10代の代弁者ではいられないからである。そうなると、このバンドにもいつかそういう年齢を重ねたからこその変化(それは歌詞にせよサウンドにせよ)を迎える時が必ず来るはず。その時にあの鋭い目つきの山内がどんな曲を歌うようになっているのか。このまま変わらないままだったら前例のない道を歩むことになるが、彼らが何年か経って30代が近づいてきて、たくさんの大人と関わるようになっても「大人になれない」ままでいられるだろうか?
1.17歳
2.道を行け
3.青年の主張
4.夜間飛行
5.逆光
6.光の唄
7.青春のすべて
15:50~ KICK THE CAN CREW [GRASS STAGE]
活動休止以降、2008年のKREVAのステージにLITTLEとMCUが登場、その後もこのフェスなどでのKREVAのステージで1,2曲披露したりしていたが、2014年のこのフェスでKICK THE CAN CREWとしてフルに出演、そしていよいよ本格的に活動を再開させ、アルバムのリリースも決定している中、3年ぶりに3人がこのステージに集結。
メンバーに先んじて、KREVAのソロでもおなじみのDJの熊井吾郎がステージに登場すると、中央のビジョンには新作アルバムからの先行トラックとして発表されている「千%」のMVが流れ、それに合わせてメンバー3人もステージに登場し、MV通りの掛け合いを見せてくれるが、過去の代表曲のフレーズが散りばめられた歌詞からは今再集結した理由を感じさせてくれる。
キャラ立ち3本マイクという異名の通りの映像が流れた「地球ブルース」では変則的な三三七拍子の手拍子が鳴り響く中、
「来年で30です」
というMCUのフレーズが
「来年で45」
になっており、リリースから15年もの月日が経ったことを実感させられる。
さらに「マルシェ」で見事なマイクリレーを見せると、明らかに次に出てくるPerfumeのメンバー紹介丸パクリ(KREVAはかしゆかのファンである)のメンバー紹介から、
「懐かしい曲もたくさんやるけど、俺たちがどれだけオリジナルか、いや、スーパーオリジナルかを見せてやろう」
と不敵な宣言して「スーパーオリジナル」から「カンケリ01」という初期の曲を続けるが、このグループのスタイルや3人の役割分担、バランスというのはこの時期からすでに確立されていた、ということがよくわかる。
MCUが普段全くこのグループではやらないというコール&レスポンスをKREVAとLITTLEが見守る中でやり切ると、2人はMCUを褒めるのではなく、熊井吾郎を
「お前ずっと2枚使いしてるのすげーな!」
とわざとらしく褒め称え、DJ賛歌と言っていい「GOOD TIME!」へという繋ぎもやはり見事。そしてメロウな曲だが毎回必ずライブでやっている「ユートピア」から、アルバム、9月の武道館やその後のツアーの告知をし、そこへ足を運ばせるために新曲「Summer Spot」を初披露。3人がプールの周りを歩くMVも実にこの季節にピッタリだが、インタビューでKREVAが
「ユートピアの次の曲を作りたかった」
と言っていた通り、サウンド的にはメロウなタイプ。ヴァースをほぼ1フレーズごとに交代するという過去最高難易度の掛け合いを見せる曲なため、3人はフック以外ではステージ真ん中に固まるという珍しいフォーメーションも披露された。
無事に初披露を終えると、まるで全てをやりきったかのように
「ドラクエやろう!」
とか言ってステージを去ろうとするKREVAとMCUに対してLITTLEが
「まだ何も終わっちゃいないぜ!」
と言う恒例の茶番から「イツナロウバ」、「sayonara sayonara」と連発し、最後は満員の観客が手を左右に振るという、一体ステージからはどんな景色に見えるんだろう、と思ってしまう「アンバランス」。曲の長いアウトロ部分を残して3人がステージを去ると、余韻に浸るかのように誰もいないステージにあの夏の終わりを感じさせる切ないサウンドが流れていた。
休止後も見る機会は何度もあった。しかし、それはあくまで過去のヒット曲をサービス的に見せる、というものであった。しかし今回は今までとは違う。これから先、当たり前のようにこのグループのライブが見れて、新曲が聴けるという、ついに休止前のさらに先を見れるようになったから。ソロなどでの活動でさらにスキルを研ぎ澄ませた3人はこれからどうやってシーンをかき回していくのか。昨今はフリースタイルブームとはいえ、ヒップホップとしての確かなスキルとポップさを兼ね備えたこのグループにしかできないことは間違いなくある。
1.千%
2.地球ブルース ~337~
3.マルシェ
4.スーパーオリジナル
5.カンケリ01
6.GOOD TIME!
7.ユートピア
8.Summer Spot
9.イツナロウバ
10.sayonara sayonara
11.アンバランス
17:30~ 04 Limited Sazabys [PARK STAGE]
リハからアジカンのカバーを含めて曲をガンガン演奏していたフォーリミだが、その段階から、というか朝の物販で並み居るアーティストを抑えて最も長蛇の列を作っていた段階から、このステージでは収まりきらない予感がしていたが、やはりこのバンドは1万人キャパのステージももはや収まりきらないくらいの超満員っぷり。
RYU-TAがカメラに向かって変顔を作りながら登場すると、1曲目のいきなりの「swim」からスタートして、GENがその幼さを感じさせるハイトーンボイスを響かせながら、ツアー中ということもあって迫力とキレをさらに増しているバンドサウンドを見せつけると、
「もっといいところに連れて行ってあげましょう!」
と「Warp」「climb」と序盤から飛ばしまくり。
GENがこの時間にこの場所を選んでくれた観客に感謝を告げると、
「去年は朝イチのLAKEで、早起きするのが嫌だって言ったら今年はトリになりました(笑)
でもトリもトリで嫌だね(笑)バックステージに戻ったらみんないなくなってて寂しいから」
とトリになったことによる悩みを語り、「monolith」「fiction」と定番曲をさらに続けると、「escape」ではステージから火柱が吹き上がるという特効も使われたのだが、これはトリならではの演出なのだろうか。初日のこのステージのトリのSUPER BEAVERも、2日目のキュウソもなかったけれど。
「名古屋から、流星群を持ってきました!」
と「midnight cruising」、
「こうしてここに集まってくれた、大切な皆様への思いを、お手紙にしたためてきました~!」
と「Letter」というあたりはもはやフェスではおなじみだが、その後に今月末リリースのシングルからの新曲「Squall」を披露。エイトビートの、夏にリリースする曲にしてはアッパーなタイプではなく、むしろ夏の終わりの切なさを感じさせるようなタイプの曲で、このステージのトリ、つまりこの日のロッキンがもう終わってしまうという状況に実に良く合っていて、聴いていて少し切なくなってしまった。
そんなこれまでとは違う流れもありつつ、最後は「再会を願って」の「Terminal」で締め…かと思いきや、もうちょっと時間があるということで、「Remember」を追加して激しいサークルを発生させ、結果的にはベスト的なセトリ+新曲という、トリという役割を充分バンド側が理解しているかのような内容となった。
フォーリミはいろんなフェスに出まくっているし、自分たちでもフェスをやっている。今1番勢いのある若手バンドの一つとも言っていいバンドだが、意外にもロッキンは今回がまだ2回目。(去年ようやく初出演を果たした)
それでもやはりこのバンドはもうこの規模のステージで収まるようなバンドではなくなっている。GENもこの日GRASS STAGEに出演したアーティストのライブを見て、「あのステージに立ちたい」と決意を新たにしていた。来年、間違いなくあのステージに立つべきバンドだし、このフェスのあのステージにこのバンドが立ったら、いろんなことが変わるような予感がしている。
リハ1.medley
リハ2.nem…
リハ3.未来の破片
1.swim
2.Warp
3.climb
4.monolith
5.fiction
6.escape
7.midnight cruising
8.Letter
9.Squall
10.Terminal
11.Remember
18:35~ サンボマスター [LAKE STAGE]
近年はLAKEに出演するのがおなじみになっているとはいえ、トリを務めるのは2010年以来である。
いつも通りに「モンキーマジック」のSEで3人が登場すると(木内のドラムセットにかけられたタオルが千葉ロッテマリーンズから柏レイソルに変わっているのは今シーズンの結果を踏まえてのものか)、山口が
「LAKE STAGE準備できてんのかー!」
と叫び、
「バケモノみたいなロックンロールで、伝説のライブにしましょうねー!」
と完全にのっけからテンションMAXで「世界を変えさせておくれよ」、「光のロック」を演奏するのだが、いつも通りなようでいていつもとは明らかに何かが違う。やっている曲もいつも通りの曲だし、メンバーの演奏と山口の歌も爆発力を持ちながら安定感があるというこのバンドが長い時間をかけて会得してきたものだが、違うのはバンド側ではなくて客席である。もうめちゃくちゃテンションが高い。山口の言葉に対するリアクションの声が凄まじく大きくて、こんなにこのステージで観客の声が聞こえるというのは長い年月このステージでライブを見ていても全くなかったこと。しかもそれが最前ブロックだけではなくて、客席全体に起こっているという、この日は今まで何度もこのステージで見てきたサンボマスターのライブのベストを更新する予感が序盤から漂っていた。
かつてはクライマックスに演奏されていた「できっこないをやらなくちゃ」も序盤に演奏されると、ここでサンボマスターきってのソウルフルなバラード「ラブソング」が演奏されたのだが、もう歌おうとする山口が笑ってしまうくらいにこの曲の時ですら客席のテンションが高い。とはいえ山口の歌が進むにつれてみんなじっくりとこの曲に聴き入ってしまうのだが。
最新アルバムのタイトル曲である、こうして目の前にいる人を全肯定する「YES」もすっかりライブで大事な位置を担う曲になり、最後は「ミラクルをキミとおこしたいんです」でまさにミラクルを呼び起こすと、
「愛と平和!愛と平和!」
の大合唱がもはやLAKEを超えてFORESTやPARKまで届いてるんじゃないかというくらいの凄まじい熱気に包まれてメンバーはステージを後にした。
しかしながらすぐさまアンコールでステージに3人が戻ってくると、ひときわ大きな歓声が上がる中、
「お前らはブルーハーツでも銀杏BOYZでもOasisでもないけどよ。ロックンローラーたちよ、生きていてくれよな。生きてまたこうやって会おうぜ」
と観客に語りかけると、涙をすするような音も客席から聞こえる中で最後に放たれたのは、タイトル通りにロックは死なないことを歌った「ロックンロールイズノットデッド」。演奏が終わると最後にメンバーは客席を背に記念撮影をするというやり切りぶりで、山口が演奏中に「泣きそう」と言ったように、何度も立ってきたこのステージで新たな伝説を作り上げた。それはバンドと観客両者の力が合わさって作り出されたものである。
しかしサンボマスターが凄まじいのは、どんな大物の裏であっても客席を入場規制レベルにしてしまい、曲を知らない人や疲れ切っているような人たちでさえも踊りまくらざるを得ないような状態にしてしまうこと。本当のロックンロールのバケモノは間違いなくこのバンドだ。文句なしのこの日のベストアクト。
「死なないでまた会う」という、山口が近年ライブでよく口にしていること。それを聞くたびにこれからも生きていくという決意が生まれるのだが、自分にはこれから今年何回もサンボマスターに会える約束がある。その約束の舞台の1番楽しみなものは、12月の日本武道館ワンマン。その日はサンボマスターの長い活動の中でも最大の伝説になるのは間違いない。
1.世界を変えさせておくれよ
2.光のロック
3.できっこないをやらなくちゃ
4.ラブソング
5.YES
6.ミラクルをキミとおこしたいんです
7.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
encore
8.ロックンロールイズノットデッド
この日、実感したことはでも先週THE BAWDIESやこの日のサンボマスターを見て、広くなっても自分はPARKよりLAKEの方が好きだということ。それはステージの構造もそうだし、何よりずっとあるステージだから思い入れもある。銀杏BOYZもELLEGARDENもBEAT CRUSADERSも、初めてライブを見たのはLAKEだったから。
Next→ 8/12 ROCK IN JAPAN FES.2017 day4 @国営ひたち海浜公園
早朝は雨がかなり降っていたために不安が募っていたが、会場に着くとしっかり雨が上がっているのはさすが悪魔と契約した(byホリエアツシ)渋谷陽一社長のフェスである。
しかしながらやはり空は曇天模様で、暑さは一切なく、むしろ寒さすら感じるという珍しい気候。過ごしやすいが、テンションはあまり上がらない。
10:30~ the HIATUS [GRASS STAGE]
リハの段階で曲をほぼフルに連発し、もはやリハという概念を超えるくらいに普通にライブの一部と化している、the HIATUS。
前説でロッキンオン社長の渋谷陽一に
「今、世界陸上やってるでしょ。ロックの世界大会やってたら、このバンドは絶対メダル取れるくらいに筋肉質なバンド。音だけじゃなくて体も筋肉質になってるのは付き合ってる友達が悪いよなぁ(笑)TOSHI-LOWと長く付き合うから(笑)」
と渋谷陽一とも細美武士とも深い関係であるTOSHI-LOWの名前を出して紹介されてから登場すると、今年からGRASS STAGEのステージ背面に新設されたLEDにアニメーションの映像が映し出された(MONOEYESの時は一切使わなかったが、そこはやはりバンドの音楽性で変えているのか)「Clone」、「Geranium」と現状の最新作である「Hands Of Gravity」収録曲から始まる。
冒頭こそ穏やかだったが、「The Flare」からは渋谷陽一の言う筋肉質なバンドサウンドをフルに発揮し、出自も個性もバラバラなメンバーたちの音が一気にぶつかり合いながらも一つに調和していく。ちょっとかすれ気味な感じもしなくはない細美の声は2バンドで夏フェス期間を駆け抜けている疲れもあるのだろうが、それでもやはり広大なGRASS STAGEの端まで響き渡るかのよう。
「まだビール飲むには早い時間だけど、今日はお祭りだから」
と早くも缶ビールを開けると、祈りを捧げるかのように歌う「Thirst」からは細美がハンドマイクに。masasucksが冒頭では全然ギターを弾かないという削ぎ落とされたサウンドを柏倉隆史の複雑なドラムが支える「Bonfire」、細美が飛び跳ねながら歌う「Unhurt」とじわじわと熱量を上げていくと、「Lone Train Running」で再び爆発を迎える。新旧バラバラなセトリだからこその流れである。
細美の声に聴き入ってしまう「Radio」では細美が観客の思いを全て受け止めるかのように両手を広げながら歌うと、
「懐かしい曲を」
と言って細美がアコギに持ち替えて演奏されたのは言葉数の多い「Shimmer」。確かにフェスで演奏されるのはなかなか久しぶりである。
「あんまり言うことないや(笑)
お前らが死ぬ時に、「あの時のロッキン楽しかったな」って思うロッキンになればいいな。また会えるかわからないけど、またどこかで!」
と、近年は毎回フェスのルールに疑問を投げかけていた細美が実にストレートな心境を述べてから切実な思いが叫ばれる「Insomnia」、そしてラストは間奏でメンバー全員が笑顔で向かい合って演奏する姿が、この5人でバンドをやっている喜びを感じさせる「紺碧の夜に」。ただ単に曲が良いっていうだけじゃなくて、こういう姿にグッと来るし、本当に良いバンドなんだな~と思わせてくれる。
MONOEYESは今年GRASS STAGEに出たが、バンドの音楽性を考えると去年までのLAKEの方が合っている。しかしthe HIATUSは曲のスケールが完全にこのキャパでないと受け止めきれない。決して近年は満員と言えるような状態ではないが、このバンドはずっとこのステージで見たいたい。
リハ1.Let Me Fall
リハ2.Deerhounds
リハ3.Silver Birch
リハ4.Storm Racers
1.Clone
2.Geranium
3.The Flare
4.Thirst
5.Bonfire
6.Unhurt
7.Lone Train Running
8.Radio
9.Shimmer
10.Insomnia
11.紺碧の夜に
11:50~ NICO Touches the Walls [GRASS STAGE]
近年は毎年このGRASS STAGEに立っている、NICO Touches the Walls。得てして早い時間の出演が多いが、やはり今年も昼の時間に登場。例年と違うのは早い時間の割に暑くないという気候で、光村もリハの段階でそのことに触れていた。
この日は春のツアーと同じく、サポートにマルチプレイヤーの浅野尚志を迎えての5人編成で、その浅野氏がいきなりヴァイオリンを弾いてサウンドに厚みを与える「THE BUNGY」で飛び跳ねさせると、間奏ではワンマンの時ほど長くはないけれどセッション的な演奏が挟まれるのがこのバンドのスタイル。常に自分たちの曲をアップデートし続けているが、やはり演奏するメンバーが1人増えるとそのやり方も変わってくる。
メンバー全員でのコーラスが曲のメロディを引き立てる「エーキューライセンス」から光村の
「ベストアクトを狙います!」
という強気な発言も挟んでの「ニワカ雨ニモ負ケズ」ではおなじみのラストサビ前のタメがなかったため、すんなりと曲をやったイメージだが、これはやはりフェスでたくさんの曲をやりたいという思いからだろうか。
「手を叩け」では文字通り客席をハンドクラップが満たし、「夏の大三角形」では夏の野外でこの曲を聴けるというシチュエーションに浸るかのようにイントロから歓声が起きる。
すると浅野も含めた光村以外の4人が全員で対馬のドラムを叩きまくるというフランツ・フェルディナンドのようなイントロアレンジ(このパフォーマンス自体は何回もやったことがある)からの「マシ・マシ」は歌い出しが光村の歌と対馬のドラムだけということもあり、かなりブルース色を強く感じさせるものになった。
シングル曲連発の中で演奏されたカップリング曲「MOROHA IROHA」はそのやりたい放題な演奏っぷりも含めてファンには嬉しいところ。そのかわりというか、最近よくやっている大曲さすがに「GUERNICA」はこのステージではやらなかったが。
そしてポップに突き抜ける「バイシクル」で光村のボーカルはさらに伸びを増し、坂倉も笑顔で曲を口ずさみながら演奏する様子がモニターに映し出される。メンバー自身もこのステージに立って演奏していることを本当に楽しんでいる様子。
ラストの「天地ガエシ」ではイントロのメロディを浅野がヴァイオリンで奏でることで曲の真価をフルに発揮し、間奏で光村が膝をついて仰け反るようにしてギターを弾きまくるという煽りまくって突入した最後のサビでは高速化しまくったメロディがヴァイオリンの音色でさらにアイリッシュパンク色を強めていた。
MCほぼ全くなしで曲をひたすら演奏するというスタイルができるのは、自身の演奏技術に自信があるからこそだし、そうすることによって見るたびに曲が進化する様をしっかり見ることができる。そういう意味では実にこのバンドらしい戦い方を会得してきたのかもしれない。
フェスの集客には様々な要素が絡んでくる。同じ時間に違うステージで演奏しているアーティストや、天候、時間など。これまでGRASSに出続けていたとはいえ、決して埋めることができたとは言い切れなかったNICOだが、この日は過去最高クラスに人がたくさんいたし、その人たちにちゃんと音が届いているという実感があった。これならまた来年もこの同じステージで1年間のバンドの進化を確認できるし、この結果は11月に控えている、バンド最大の勝負となる幕張メッセでの主催フェスに向けて大きな自信になるはず。主催フェス、本当にこれからのこのバンドにとって大事なものになると思う。
リハ.ストラト
1.THE BUNGY
2.エーキューライセンス
3.ニワカ雨ニモ負ケズ
4.手を叩け
5.夏の大三角形
6.マシ・マシ
7.MOROHA IROHA
8.バイシクル
9.天地ガエシ
13:10~ クリープハイプ [GRASS STAGE]
伸び切ったNICOの光村の後に見ると、尾崎世界観の髪型すらもさっぱりとしているように見える。もはやこのステージでもおなじみとなったクリープハイプである。
SE一切なしで登場するというのはこのバンドにとってはおなじみだが、
「いきなりセックスの曲を」
と言って「HE IS MINE」で始まるという飛ばしっぷりで、尾崎は
「夏だし余計なものなしで、生で思いっきりいきましょう」
と言うと「セックスしよう!」の大合唱が起こるのだが、序盤はイマイチで後半になるにつれて調子を上げてくるイメージの尾崎の声は冒頭から実によく出ている。これはなんらかのトレーニングなどを行ったりしているんだろうか。
「ひたちなかへと」
とこのフェスを帰る場所とした「愛の標識」、「イノチミジカシコイセヨオトメ」というメジャー1stアルバムに収録された曲を連発して集まった観客を喜ばせると、夏の曲こと「ラブホテル」へ。ラストサビ前のブレイク部分では尾崎が
「この曲を初めてやったのは、2013年のこのフェスでした。あれから4年経って29歳だったのが33歳になると、「夏のせい」じゃなくて「自分のせい」なのがわかる。自己責任。でも今日だけは、甘えさせてください!」
と言って結局「夏のせい」と連発。このあたりの繋ぎが絶好調なのもやはり喉の調子がいいことと関係あるのだろうか。
自身がメインボーカルを務める「かえるの唄」で
「茹だれ!ひたちなか!」
と叫んだり、曲中にポーズを取ったりするなど、やたらとテンションが高かったカオナシはさらに「火まつり」とメインボーカル曲を続けると、さらにベースからキーボードにパートチェンジして、尾崎がギターを置いてマイクスタンドで歌う「5%」へ。「ラブホテル」がこのフェスで初披露されてから代表曲になったように、まだ「世界観」発売前の去年新曲としてこのフェスで披露されたこの曲もこれからそうなっていくのかもしれない。
このバンドはほとんど曲と曲に間がないだけにいつも非常にテンポが良いのだが、「鬼」「社会の窓」とキラーチューンを立て続けに演奏すると、打ち込みのホーンの音を導入した最新のキラーチューン「イト」で小川がステージ前まで出てきて笑顔でギターを弾き、
「昨日の夜、ホテルで寝れなくて、GOING STEADYのライブDVDを見てたんですよ。そしたら、やっぱりバンドって良いなって思って。もうこうやってステージに立つ方の立場になったから、ライブを観にいくよりも、もっとたくさんステージに立ちたいなって思いました。なかなかこのステージを埋めるのは大変だな、っていつも思うけど、いつかこのステージを埋めたいと思ってます」
と今後もこのステージに立ち続けようとする意志を語り、
「前に進め 前に進め」
と観客とバンド自身をも鼓舞するように歌われたのは「二十九、三十」。この選曲は間違いなく、GOING STEADYの話のくだりを含めても、リスペクトを寄せる銀杏BOYZがこの曲をカバーしてくれたからこそだろう。もはや一方通行のリスペクトではなく、完全に相思相愛の関係になったバンドだからこそのアンサー。
そしてラストは
「あの先へ行きたいですね」
と来年以降を見据えた「オレンジ」という凄まじいボリュームのセトリとなった。
バンドの状態、メンバーの状態の良さが伺える、これからのさらなる飛躍が期待できる内容のライブだったが、それは尾崎らメンバーのこのステージへの愛が確かに感じられたから。そりゃあそうだ、こんなに大きなステージに立つ機会なんて本当に1年でこのフェスくらいしかないんだから。その喜びを噛み締めながら演奏したのは間違いない。
リハ.大丈夫
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.イノチミジカシコイセヨオトメ
4.ラブホテル
5.かえるの唄
6.火まつり
7.5%
8.鬼
9.社会の窓
10.イト
11.二十九、三十
12.オレンジ
14:00~ Bentham [HILLSIDE STAGE]
今年はHILLSIDE STAGEへの出演となった、Bentham。初のフルアルバム「Re:Wonder」をリリースした直後というアルバムの曲をツアーより前に聴くには絶好のタイミングである。
小関(ボーカル&ギター)が気合い充分に
「ひたちなかー!」
と叫ぶと「クレイジーガール」からスタート。金髪の辻はピョンピョン飛び跳ねたりその場でぐるっと周りながらベースを弾き、須田はハイトーンなコーラスも務めながらギターを弾く。
メジャーデビューシングル「激しい雨」では小関が汗を飛び散らせながら熱唱するのだが、CDを聴くとポップで踊れるバンドというイメージが付きやすいバンドだが(KEYTALKの後輩という立場もあって)、ライブを見るとそれ以上にひたすら熱いバンドだということがすぐにわかる。それは演奏している姿もそうだし、小関のこの時間にこの場所を選んでくれた観客に対する曲間の言葉一つ一つとってもそう。
しかしながらドラム鈴木のMCは
「ステージから見ると客席が膨らんでるから、おっぱいみたいに見える(笑)
俺の股間のHILLSIDEも絶好調です!(笑)」
とまさかの下ネタの連発。さすがに小関に
「やめなさい!(笑)」
と止められていたが。
おなじみの「HEY!」での須田の曲中のコール&レスポンスは変則的なリズムの難易度が高い「ロックインジャパン」というものだったが、それでも大きなレスポンスが返ってくるあたりはここにいた観客はみんなこのバンドが見たくてここに来たということの証明である。
小関が「Re:Wonder」の告知をすると、その中に収録されている「透明シミュレーション」、さらに
「バンドにとって大事な曲」
だという「Chicago」の2曲を披露したのだが、もうこれはこれまでのイメージを覆せるだろうというくらいにタフで力強いロックンロールになっている。
そしてラストはライブ用にアレンジされたイントロから手拍子が鳴り響き、軽快なリズムで踊らせまくった、バンドの代表曲「パブリック」という、最新曲を披露しながらもフェスで求められている曲もしっかりやるという、バンドの持つバランスの良さを見せてくれた。
このフェスでもしっかりと存在感を見せつけつつあるこのバンド。
「1歩ずつだけど、確実に」
という小関の言葉通りに歩みを進めているが、ツアーファイナルの赤坂BLITZワンマンはこれまでの中で最も大きな1歩になるはずだ。
1.クレイジーガール
2.激しい雨
3.僕から君へ
4.HEY!
5.透明シミュレーション
6.Chicago
7.パブリック
14:40~ Shout it Out [WING STAGE]
10代限定のオーディション的なライブ「未確認フェスティバル」の初代グランプリ、Shout it Out。去年はHILLSIDE STAGEのトップバッターだったが今年はWING STAGEに登場。
この間にはギターとベースの脱退、そしてファーストフルアルバムのリリースと、まさに激動の1年を歩んできた。
サポートメンバー2人を加えての4人編成で、冒頭の「17歳」から若者の衝動を炸裂させまくった蒼いギターロックを次々に鳴らしていく。ともすれば青臭いという一言で片付けられても仕方がない歌詞だが、歌っている山内の目は大人には絶対に媚びたり服従したりしないという鋭さを放っており、その歌詞に説得力を持たせている。
歌詞にフラワーカンパニーズ「深夜高速」のフレーズが引用されている「青年の主張」を演奏すると、
「伝説のライブみたいなもんが見たいんなら別のステージに行ってくれ!」
とあくまで若者の等身大の姿のままでこのステージをやり切る決意を吠えると、持ち曲の中でひときわポップな「夜間飛行」で若さという枠には止まらない普遍性を感じさせ、後半は「逆光」からさらに加速し、30分に7曲を詰め込むというスピード感を見せつけ、最初はガラガラだった客席をしっかりと埋めてみせた。それはBLUE ENCOUNTが終わってから急いで駆けつけた人たちがいっぱいいたからかもしれないが。
しかし、このバンドのように「10代の代弁者」的な存在だったバンドたちは、みな年齢を重ねることによってその位置から離れていった。それはそうで、30代や40代になってまで10代の代弁者ではいられないからである。そうなると、このバンドにもいつかそういう年齢を重ねたからこその変化(それは歌詞にせよサウンドにせよ)を迎える時が必ず来るはず。その時にあの鋭い目つきの山内がどんな曲を歌うようになっているのか。このまま変わらないままだったら前例のない道を歩むことになるが、彼らが何年か経って30代が近づいてきて、たくさんの大人と関わるようになっても「大人になれない」ままでいられるだろうか?
1.17歳
2.道を行け
3.青年の主張
4.夜間飛行
5.逆光
6.光の唄
7.青春のすべて
15:50~ KICK THE CAN CREW [GRASS STAGE]
活動休止以降、2008年のKREVAのステージにLITTLEとMCUが登場、その後もこのフェスなどでのKREVAのステージで1,2曲披露したりしていたが、2014年のこのフェスでKICK THE CAN CREWとしてフルに出演、そしていよいよ本格的に活動を再開させ、アルバムのリリースも決定している中、3年ぶりに3人がこのステージに集結。
メンバーに先んじて、KREVAのソロでもおなじみのDJの熊井吾郎がステージに登場すると、中央のビジョンには新作アルバムからの先行トラックとして発表されている「千%」のMVが流れ、それに合わせてメンバー3人もステージに登場し、MV通りの掛け合いを見せてくれるが、過去の代表曲のフレーズが散りばめられた歌詞からは今再集結した理由を感じさせてくれる。
キャラ立ち3本マイクという異名の通りの映像が流れた「地球ブルース」では変則的な三三七拍子の手拍子が鳴り響く中、
「来年で30です」
というMCUのフレーズが
「来年で45」
になっており、リリースから15年もの月日が経ったことを実感させられる。
さらに「マルシェ」で見事なマイクリレーを見せると、明らかに次に出てくるPerfumeのメンバー紹介丸パクリ(KREVAはかしゆかのファンである)のメンバー紹介から、
「懐かしい曲もたくさんやるけど、俺たちがどれだけオリジナルか、いや、スーパーオリジナルかを見せてやろう」
と不敵な宣言して「スーパーオリジナル」から「カンケリ01」という初期の曲を続けるが、このグループのスタイルや3人の役割分担、バランスというのはこの時期からすでに確立されていた、ということがよくわかる。
MCUが普段全くこのグループではやらないというコール&レスポンスをKREVAとLITTLEが見守る中でやり切ると、2人はMCUを褒めるのではなく、熊井吾郎を
「お前ずっと2枚使いしてるのすげーな!」
とわざとらしく褒め称え、DJ賛歌と言っていい「GOOD TIME!」へという繋ぎもやはり見事。そしてメロウな曲だが毎回必ずライブでやっている「ユートピア」から、アルバム、9月の武道館やその後のツアーの告知をし、そこへ足を運ばせるために新曲「Summer Spot」を初披露。3人がプールの周りを歩くMVも実にこの季節にピッタリだが、インタビューでKREVAが
「ユートピアの次の曲を作りたかった」
と言っていた通り、サウンド的にはメロウなタイプ。ヴァースをほぼ1フレーズごとに交代するという過去最高難易度の掛け合いを見せる曲なため、3人はフック以外ではステージ真ん中に固まるという珍しいフォーメーションも披露された。
無事に初披露を終えると、まるで全てをやりきったかのように
「ドラクエやろう!」
とか言ってステージを去ろうとするKREVAとMCUに対してLITTLEが
「まだ何も終わっちゃいないぜ!」
と言う恒例の茶番から「イツナロウバ」、「sayonara sayonara」と連発し、最後は満員の観客が手を左右に振るという、一体ステージからはどんな景色に見えるんだろう、と思ってしまう「アンバランス」。曲の長いアウトロ部分を残して3人がステージを去ると、余韻に浸るかのように誰もいないステージにあの夏の終わりを感じさせる切ないサウンドが流れていた。
休止後も見る機会は何度もあった。しかし、それはあくまで過去のヒット曲をサービス的に見せる、というものであった。しかし今回は今までとは違う。これから先、当たり前のようにこのグループのライブが見れて、新曲が聴けるという、ついに休止前のさらに先を見れるようになったから。ソロなどでの活動でさらにスキルを研ぎ澄ませた3人はこれからどうやってシーンをかき回していくのか。昨今はフリースタイルブームとはいえ、ヒップホップとしての確かなスキルとポップさを兼ね備えたこのグループにしかできないことは間違いなくある。
1.千%
2.地球ブルース ~337~
3.マルシェ
4.スーパーオリジナル
5.カンケリ01
6.GOOD TIME!
7.ユートピア
8.Summer Spot
9.イツナロウバ
10.sayonara sayonara
11.アンバランス
17:30~ 04 Limited Sazabys [PARK STAGE]
リハからアジカンのカバーを含めて曲をガンガン演奏していたフォーリミだが、その段階から、というか朝の物販で並み居るアーティストを抑えて最も長蛇の列を作っていた段階から、このステージでは収まりきらない予感がしていたが、やはりこのバンドは1万人キャパのステージももはや収まりきらないくらいの超満員っぷり。
RYU-TAがカメラに向かって変顔を作りながら登場すると、1曲目のいきなりの「swim」からスタートして、GENがその幼さを感じさせるハイトーンボイスを響かせながら、ツアー中ということもあって迫力とキレをさらに増しているバンドサウンドを見せつけると、
「もっといいところに連れて行ってあげましょう!」
と「Warp」「climb」と序盤から飛ばしまくり。
GENがこの時間にこの場所を選んでくれた観客に感謝を告げると、
「去年は朝イチのLAKEで、早起きするのが嫌だって言ったら今年はトリになりました(笑)
でもトリもトリで嫌だね(笑)バックステージに戻ったらみんないなくなってて寂しいから」
とトリになったことによる悩みを語り、「monolith」「fiction」と定番曲をさらに続けると、「escape」ではステージから火柱が吹き上がるという特効も使われたのだが、これはトリならではの演出なのだろうか。初日のこのステージのトリのSUPER BEAVERも、2日目のキュウソもなかったけれど。
「名古屋から、流星群を持ってきました!」
と「midnight cruising」、
「こうしてここに集まってくれた、大切な皆様への思いを、お手紙にしたためてきました~!」
と「Letter」というあたりはもはやフェスではおなじみだが、その後に今月末リリースのシングルからの新曲「Squall」を披露。エイトビートの、夏にリリースする曲にしてはアッパーなタイプではなく、むしろ夏の終わりの切なさを感じさせるようなタイプの曲で、このステージのトリ、つまりこの日のロッキンがもう終わってしまうという状況に実に良く合っていて、聴いていて少し切なくなってしまった。
そんなこれまでとは違う流れもありつつ、最後は「再会を願って」の「Terminal」で締め…かと思いきや、もうちょっと時間があるということで、「Remember」を追加して激しいサークルを発生させ、結果的にはベスト的なセトリ+新曲という、トリという役割を充分バンド側が理解しているかのような内容となった。
フォーリミはいろんなフェスに出まくっているし、自分たちでもフェスをやっている。今1番勢いのある若手バンドの一つとも言っていいバンドだが、意外にもロッキンは今回がまだ2回目。(去年ようやく初出演を果たした)
それでもやはりこのバンドはもうこの規模のステージで収まるようなバンドではなくなっている。GENもこの日GRASS STAGEに出演したアーティストのライブを見て、「あのステージに立ちたい」と決意を新たにしていた。来年、間違いなくあのステージに立つべきバンドだし、このフェスのあのステージにこのバンドが立ったら、いろんなことが変わるような予感がしている。
リハ1.medley
リハ2.nem…
リハ3.未来の破片
1.swim
2.Warp
3.climb
4.monolith
5.fiction
6.escape
7.midnight cruising
8.Letter
9.Squall
10.Terminal
11.Remember
18:35~ サンボマスター [LAKE STAGE]
近年はLAKEに出演するのがおなじみになっているとはいえ、トリを務めるのは2010年以来である。
いつも通りに「モンキーマジック」のSEで3人が登場すると(木内のドラムセットにかけられたタオルが千葉ロッテマリーンズから柏レイソルに変わっているのは今シーズンの結果を踏まえてのものか)、山口が
「LAKE STAGE準備できてんのかー!」
と叫び、
「バケモノみたいなロックンロールで、伝説のライブにしましょうねー!」
と完全にのっけからテンションMAXで「世界を変えさせておくれよ」、「光のロック」を演奏するのだが、いつも通りなようでいていつもとは明らかに何かが違う。やっている曲もいつも通りの曲だし、メンバーの演奏と山口の歌も爆発力を持ちながら安定感があるというこのバンドが長い時間をかけて会得してきたものだが、違うのはバンド側ではなくて客席である。もうめちゃくちゃテンションが高い。山口の言葉に対するリアクションの声が凄まじく大きくて、こんなにこのステージで観客の声が聞こえるというのは長い年月このステージでライブを見ていても全くなかったこと。しかもそれが最前ブロックだけではなくて、客席全体に起こっているという、この日は今まで何度もこのステージで見てきたサンボマスターのライブのベストを更新する予感が序盤から漂っていた。
かつてはクライマックスに演奏されていた「できっこないをやらなくちゃ」も序盤に演奏されると、ここでサンボマスターきってのソウルフルなバラード「ラブソング」が演奏されたのだが、もう歌おうとする山口が笑ってしまうくらいにこの曲の時ですら客席のテンションが高い。とはいえ山口の歌が進むにつれてみんなじっくりとこの曲に聴き入ってしまうのだが。
最新アルバムのタイトル曲である、こうして目の前にいる人を全肯定する「YES」もすっかりライブで大事な位置を担う曲になり、最後は「ミラクルをキミとおこしたいんです」でまさにミラクルを呼び起こすと、
「愛と平和!愛と平和!」
の大合唱がもはやLAKEを超えてFORESTやPARKまで届いてるんじゃないかというくらいの凄まじい熱気に包まれてメンバーはステージを後にした。
しかしながらすぐさまアンコールでステージに3人が戻ってくると、ひときわ大きな歓声が上がる中、
「お前らはブルーハーツでも銀杏BOYZでもOasisでもないけどよ。ロックンローラーたちよ、生きていてくれよな。生きてまたこうやって会おうぜ」
と観客に語りかけると、涙をすするような音も客席から聞こえる中で最後に放たれたのは、タイトル通りにロックは死なないことを歌った「ロックンロールイズノットデッド」。演奏が終わると最後にメンバーは客席を背に記念撮影をするというやり切りぶりで、山口が演奏中に「泣きそう」と言ったように、何度も立ってきたこのステージで新たな伝説を作り上げた。それはバンドと観客両者の力が合わさって作り出されたものである。
しかしサンボマスターが凄まじいのは、どんな大物の裏であっても客席を入場規制レベルにしてしまい、曲を知らない人や疲れ切っているような人たちでさえも踊りまくらざるを得ないような状態にしてしまうこと。本当のロックンロールのバケモノは間違いなくこのバンドだ。文句なしのこの日のベストアクト。
「死なないでまた会う」という、山口が近年ライブでよく口にしていること。それを聞くたびにこれからも生きていくという決意が生まれるのだが、自分にはこれから今年何回もサンボマスターに会える約束がある。その約束の舞台の1番楽しみなものは、12月の日本武道館ワンマン。その日はサンボマスターの長い活動の中でも最大の伝説になるのは間違いない。
1.世界を変えさせておくれよ
2.光のロック
3.できっこないをやらなくちゃ
4.ラブソング
5.YES
6.ミラクルをキミとおこしたいんです
7.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
encore
8.ロックンロールイズノットデッド
この日、実感したことはでも先週THE BAWDIESやこの日のサンボマスターを見て、広くなっても自分はPARKよりLAKEの方が好きだということ。それはステージの構造もそうだし、何よりずっとあるステージだから思い入れもある。銀杏BOYZもELLEGARDENもBEAT CRUSADERSも、初めてライブを見たのはLAKEだったから。
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