ROCK IN JAPAN FES.2017 day1 @国営ひたち海浜公園 8/5
- 2017/08/07
- 12:39
今年も8月1週目と2週目に開催される、国内最大規模の夏フェス、ROCK IN JAPAN FES。今年は
GRASS STAGE
LAKE STAGE
PARK STAGE
SOUND OF FOREST
WING STAGE
BUZZ STAGE
HILLSIDE STAGE
とステージの数は変わらないが、PARK STAGEの拡大によるセカンドステージ化(LAKE STAGEと同規模にまで拡大)、WING TENTのテントを取り払ったWING STAGEへの変貌、全ステージにビジョン設置と、これまでの参加者第一目線をさらに進化させている。
開演前は霧雨が降りしきるという、例年の1週目の晴れ具合とは全く異なる天候。涼しいのはありがたいが、イマイチテンションが上がらないのは、やはりこのフェスのイメージが青空の下だからか。
10:30~ My Hair is Bad [PARK STAGE]
朝の霧雨はどこへやら、すっかり蝉の鳴き声と青空までもが出現するという、いつものひたちなかのような気候になり、巨大化したPARK STAGEのこけら落としを務めるのは、昨年のWING TENTからジャンプアップを果たした、My Hair is Bad。
1時間近く前にメンバーがステージに登場すると、
「リハから盛り上がっていこう!みたいなタイプじゃないんで(笑)」
と椎木が謙遜しながら3曲を演奏して、早くから集まってくれた観客への感謝を音で示す。
ROCK IN JAPAN編集長・小柳大輔による前説では、「入場規制がないフェスにしたかった」とPARK STAGEを拡大させた理由を語ると、いよいよ今年のこのフェスが幕を開ける。
SEの後にメンバー3人が登場すると、おなじみ「アフターアワー」でスタートし、ちょっと喉が枯れ気味ではある椎木が
「最高の40分にする!」
と宣言し、「元彼氏として」では
「去年は元カノが最前で見てました」
「まぁまぁデカいステージに出れるようになったし、何より給料がめちゃ増えた」
と赤裸々な実体験に歌詞を変えて歌う。ちなみにその元カノとは出番後に一緒にエレファントカシマシのライブを見に行ったらしいが、元カノはあまりエレカシが好きではなく、完全に椎木に合わせただけに、微妙な空気になったらしい。
「ロッキンで初めてやる曲を!」
と言っての「告白」、
「東京の曲!」
と言っての「真赤」と独特な歌詞の性急なギターロックを次々に繰り出し、
「キモいって言われようが、アイドルって言われようが関係ない!ここにいる俺が最新、最先端の俺だ!俺たちはこの3人で1つだ!俺だけを見てろ!
やるかやらないかどっちなんだ!今年の夏からやってみればいいじゃねぇか!25歳の男に説教されてるんだぞ!
なんの根拠もないけど、絶対大丈夫だ!」
と熱い言葉が次々に口から放たれる「from now on」は去年の元カノとのあれこれすらもエモーションに昇華していく。
そして
「今日は夏フェスですけど、俺たち、普段は一年の半分くらいはライブハウスにいます!また見たくなったら、地下の汚いライブハウスに来てください!ROCK IN JAPANに捧げます!」
と、自らの居場所がステージ、その中でもライブハウスであるという姿勢を示して、
「旅は続いていくんだ 未来が耳元を切って次の街へ」
とまた次のステージへ向かうことを曲にした「音楽家になりたくて」で終わり…かと思いきや、最後にトドメとばかりに演奏されたのは一瞬で終わる「クリサンセマム」。それはこのバンドで幕を開けた今年のこのフェスも、今年の夏も一瞬で終わってしまうのを示唆しているかのように。
去年、椎木はWING TENTに初出演した際、
「僕、すぐステージから降りたりしそうでしょ?でも今日はしません!降りたらこのフェス出れなくなっちゃうから!もっと大きいステージに出れるようになってからやります!」
と言った。もはや1万人規模になったこのステージも超満員。椎木が言っていたそのステージは間違いなくGRASS STAGE。来年以降、このバンドはそのステージに立っているだろうか。できることなら出れなくなることなく毎年出ていて欲しいバンドだし、椎木は巨大モニターに映る姿が実に映える男だということがわかっただけに、いつかは。
リハ1.優しさの行方
リハ2.グッバイ・マイマリー
リハ3.革命はいつも
1.アフターアワー
2.元彼氏として
3.告白
4.真赤
5.接吻とフレンド
6.ドラマみたいだ
7.from now on
8.音楽家になりたくて
9.クリサンセマム
接吻とフレンド
https://youtu.be/gI2pOruKoFo
11:40~ Czecho No Republic [LAKE STAGE]
去年、SOUND OF FORESTのトリという大事な位置を任されたCzecho No Republicは、ボーカル武井優心の声が全く出ないという試練のライブになってしまった。それから1年、去年より大きなLAKE STAGEがリベンジの舞台。
リハの時点で曲を連発していると、ステージには見慣れない男が1人。この男がこの日のライブを特別なものにする人物だが、チェコの曲をリハでやるぶんには特に何もやることがないという、リハにしては豪華すぎる感。
本番でメンバーたちがステージに現れると、初っ端から手拍子と合唱が起きる「Amazing Parade」からスタートし、
「雨が降りそうな ロッキンの空を」
と華やかなワンピースを着たタカハシマイが歌詞を変えて歌い、大きな歓声が起こる。
優心の声もなんの心配もないくらいによく出ており、時おりベースを弾きながら歌うくらいに躍動感に満ちている。
「ゴッホとジョン」で会場に涼しい風を吹かせると、「NO WAY」では砂川がタカハシマイに寄り掛かったりするというちょっかいを出しながら、「MUSIC」でも
「雨上がりのひたちなかに」
と歌い出しのフレーズをこの場だからこそのものに変えてみせる。前まではこういうことをやるようなバンドではなかったが、様々な場所でのライブを経験してきて、こういうことができるようになってきたのだろうか。
そしてこの日の目玉である、9月にリリースするシングルの共作者にして、リハにも出てきていたゲストのSKY-HIが登場。
優心「とんでもないイケメンが出てきますからね。俺たちなんかどうでもよくなるくらい」
砂川「俺は負けてないけどね(笑)」
というやり取りで笑わせ、コライト曲の「タイムトラベリング」を披露。サウンド自体はチェコらしい夏が似合う、つまりこのシチュエーションが絶好なポップな曲であるが、途中とラストに入るラップのヴァースではSKY-HIの持ち味である高速ラップが斬れ味鋭く放たれていく。確かにこれはSKY-HIとしかできなかった曲であろうことが一聴しただけでわかる。
「去年は声が出なくなっちゃって、みんなに歌ってもらったりしたんだけど、そういうのも全部今年に繋がってるから、無駄じゃなかったなって思ってます。
今年は初めてのLAKE STAGEへの挑戦でしたけど、これからも我々Czecho No Republicはいろんなことに挑戦していくんで、よろしくお願いします」
と優心が言うと、暖かい拍手が起き、最後に「Firework」のエレクトロサウンドで昼のひたちなかに花火を打ち上げ、見事に去年のリベンジを果たした。
埋まり具合自体はまぁまぁといったところだったが、SOUND OF FORESTが1番似合うと思っていたチェコは、何方かと言えばパンクなバンドが出るイメージが強いLAKE STAGEも実によく似合っていた。野外のステージなら全て自分たちのホームに変えてしまう力を持っているのかもしれない。
リハ1.ネバーランド
リハ2.Oh Yeah!!!!!!!
リハ3.Firework
1.Amazing Parade
2.Festival
3.ゴッホとジョン
4.No Way
5.MUSIC
6.タイムトラベリング w/ SKY-HI
7.Firework
Firework
https://youtu.be/ZREIq7SpI_I
12:45~ 赤い公園 [BUZZ STAGE]
佐藤千明(ボーカル)の突然の脱退発表はファン以外をも驚かせた。あれだけ存在感のあるボーカルが脱退するということもそうだし、それでもバンドが続いていくということ。とりあえず今言えるのは、今年の夏が4人で過ごす最後の夏であり、このライブが今まで数々の名場面を作ってきたロッキンに4人で出る最後になるということである。
そんな身構えざるを得ない空気の中、なぜかステージからは「サライ」のBGMが流れ、佐藤が24時間テレビのマラソンランナーとしてゴールしようとするも、ゴールテープを持った津野と藤本がなかなかゴールさせてくれないという小芝居で意表を突き、佐藤がギターを抱えて「サイダー」からスタートするという爽やかな立ち上がり。
ショートチューンにしてキラーチューンの「絶対的な関係」、「闇夜に提灯」と津野のギターがオルタナさを増していくと同時にバンドのグルーヴもどんどん上昇していくと、ここで新曲を披露。オリエンタルな雰囲気を持ったロックチューンというのはこのバンド、というか津野の得意とするところだが、ドラムのリズムが実に面白い。一聴して良い曲、カッコいい曲であるということがわかる。
しかしながらメンバーはステージ両サイドにあるスクリーンに自分たちがどう映ってるかを気にしたりと、これが4人での最後のロッキンであるということを全く感じさせず、むしろその状況すらも楽しんでいるかのようにすら見える。
後半はポップなメロディに津野のノイジーなギターが鳴る「KOIKI」、佐藤のボーカリストとしての表現力と存在感を改めて感じさせてくれる「journey」と続き、最後に演奏されたバンド屈指の名曲である「NOW ON AIR」では藤本が歌川のドラムセットの周りを歩きながらベースを弾き、ラストサビの
「いつもありがとう」
のフレーズ部分では佐藤と津野がそれぞれ合わせたかのように頭を下げる。脱退についてのことは何にもメンバーたちは言わなかったが、この姿からは、これまで本当にありがとうございました。これからも赤い公園をよろしくお願いします。と言っているかのように見えた。
佐藤が脱退してもバンドは続けるというが、このライブを見て、改めて津野のギターは歌いながら弾けるようなものではないということがはっきりとわかった。かと言って、誰か他のボーカルを入れるという選択肢もないだろう。このメンバーたちはみんな学生時代に津野に選ばれてバンドを組み、ずっと同じ景色を見てきた存在だから。だからそこを共有していない人をおいそれと加入させるわけにはいかないのである。
でも、それでも「辞める」んじゃなくて「続ける」という、より厳しい道を選んだ。冒頭の小芝居でまだゴールできない状況を示したように、このバンドでまだやるべきことがある。それを誰よりもわかっているから、津野は辞めることを選ばなかった。
そして、シンガーとして見るたびに進化を遂げている佐藤も、できれば1人ででも音楽を続けていて欲しいと願わざるを得ないほど、このまま姿を消してしまうには勿体なさ過ぎる才能の持ち主である。できれば、どちらもまたこの会場で。
1.サイダー
2.絶対的な関係
3.闇夜に提灯
4.新曲
5.KOIKI
6.journey
7.NOW ON AIR
KOIKI
https://youtu.be/ZQuKiqq6sg8
13:30~ SAKANAMON [WING STAGE]
今回で4年連続出演。すっかり常連バンドとなった、SAKANAMON。かつて出演したWING TENTからテントがなくなったWING STAGEへ出演。
おなじみのSUPER BUTTER DOG「コミュニケーション・ブレイクダンス」のSEでメンバー3人が登場すると、最新作からの「クダラナインサイド」、コーラス部分で大合唱となった「幼気な少女」というギターロックチューンから、打ち込みも駆使しながら木村が軽快なダンスビートを打ち鳴らす「UTAGE」で心も体も躍らせる。
イニシャルを押し出したメンバー紹介では「M・M」の森野はドM、「G・F」の藤森はガーディアン・フォースというあってるんだかなんなのかよくわからない紹介の仕方をし、打ち込みの女性コーラスがタイトル通りにキャッチーな「CATCHY」では手拍子、ダンスなど思い思いの楽しみ方を観客がする中、間奏部分で聴き覚えのあるギターリフを藤森が鳴らし始めると、
「Suchmosを見たかった人のために!」
と言って、リズム隊も加わって、この時間にGRASS STAGEに出演しているSuchmos「STAY TUNE」のスリーピースアレンジでのカバーを披露。藤森はかなり歌詞のカンペを見ながら歌っていたが、こうして削ぎ落とされたギターロックアレンジで少年性の強い藤森の声で歌われると、従来の都会性よりも衝動を強く感じる。こうしてすんなり演奏できるメンバーの技術とサービス精神も凄い。
森野がかつてトリを務めたこともあるWING TENTがパワーアップしてこのWING STAGEになり、パワーアップした自分たちがこのステージに出れたことへの感謝を語ると、短い持ち時間の中でこうしたタイプの曲が演奏されるのは実に珍しいバラード曲「テヲフル」でさらにバンドの幅広さを見せるが、
「ラブソングを作ろう 彼方に歌う
ラブソングを作ろう 彼方に」
という、これまで捻くれた視点での歌詞や、文学的な言い回しが多かった藤森が初めてと言っていいくらいに心情をさらけ出した歌詞。SAKANAMONらしくない曲でもあるが、こういうことを歌えるようになったという点で、新作の中で最も重要な曲と言える。
そしてやはり最後は
「毎日楽しいですか!?楽しくないですよね!?ムカつく仕事とか上司とかに対する思いを全てこの曲に乗せて叫んでください!」
と言って
「つまんねーよ!つまんねーよ!」
の大合唱となった「TSUMANNE」で終了。
このフェスにおいてはもはや欠かせない存在になっているのは間違いないが、今回も満員とは言えない状態だったし、かつて出演したPARK STAGEが巨大化したこともあり、なかなか次のステップに進むのが厳しくなってきた感もある。かつてのLUNKHEADやつばきやthe ARROWSのように小さいステージに毎年出るという存在も必要ではあるが、バンドの持つポップさ、CATCHYさを考えると、せめてもう一つ上のところまで行って欲しいし、本人たちも絶対そこまで行きたいと思っているはず。
1.クダラナインサイド
2.幼気な少女
3.UTAGE
4.CATCHY
Suchmos「STAY TUNE」カバー
5.テヲフル
6.TSUMANNE
CATCHY
https://youtu.be/f5iSVJuNXL8
14:30~ MONOEYES [GRASS STAGE]
普段はフェスではリハからガンガン曲をやるのが細美武士のバンドの共通点だが、この日は時間前割とギリギリになってもなかなか曲をやろうとしない。どうやら機材が故障したらしく、万全の状態とは言えない様子。それでも「What I Left Today」を演奏するというサービスは見せてくれた。
おなじみスター・ウォーズのSEでメンバーが登場すると、機材トラブルもなんのその、いつものように笑顔で元気良く細美が挨拶すると、「When I Was A King」でパンクに始まり、スコットボーカルの「Borders & Walls」と熱い流れが続く。
「My Instant Song」で観客を飛び跳ねさせると、
「MONOEYESはGRASS STAGEは初めてになります。まぁきっとすぐLAKEに戻るだろうから、その時はまた好き放題にやろうや」
と自分たちがGRASSよりLAKEに向いたバンドであることを自覚しながら、リリースされたばかりの最新アルバム「Dim The Lights」から、アレンジ次第ではthe HIATUSでもできそうな「Free Throw」、スコットボーカルの「Roxette」を披露。1stアルバムに比べるとパンク要素は少なくなっているだけに、根っからのパンクスであるスコットの曲はMONOEYESが変わらずパンクバンドであることを強く感じさせてくれる。
最前エリアにいる観客に、
「どのバンドのファンかわからないけど、キツそうだね。もうちょっと続くから頑張れよ」
と声をかけ、「暑い」という理由で細美はTシャツを脱ぎ捨て、鍛えた上半身があらわに。当然客席からは歓声が起こるが、細美が脱ぐとみんな細美の方ばかり見てしまうということにスコットは嘆き気味。
親友というかもはや兄弟と言ってもいい存在のTOSHI-LOWが居酒屋で酔っ払って大暴れした時のエピソードを語り、
「完璧に覚えた歌詞で上手く英語を歌うんじゃなくて、1人で車を運転してる時に歌ってるみたいな感じで歌って欲しい」
と言って演奏されたのは、新作からの「Two Little Fishes」。しかし、やはりまだリリースから間もないからか、そこまで大きな合唱には至らなかったが。
スコットがベースを銃に見立てるアクションが面白い「明日公園で」ではそのスコットと戸高が位置を入れ替わり、
「いろいろデカいフェスでは決まりとかもあるけど、あんまり人の言うことばっかり聞いてるんじゃねーぞ。思い出して、子供の頃に嫌いなやつの前でどんな顔をしていたか。ちょっとくらいのゴミだったらロッキンが拾ってくれるよ。それでも拾うやつはいるだろうけど」
と賛否両論あるだろう(ゴミのことに関しては個人的には自分で出したゴミは自分でと思ってるので否)、自身のスタイルを語った。
そして最後は去年のLAKEのトリでの熱演が今も脳裏に焼き付いている「Remember Me」「グラニート」。
Dragon Ashに触発された去年に比べたらそこまで際どいというか、物議を醸しそうな発言はなかったが、ELLEGARDEN時代からを含めても、細美武士が作ったアルバムの中で最も夏の野外が似合うと思っていた「Dim The Lights」をこうして夏の野外で聴けて本当に良かったし、やっぱり思った通りに夏の野外が本当に似合う曲たちだった。
リハ.What I Left Today
1.When I Was A King
2.Borders & Walls
3.My Instant Song
4.Free Throw
5.Roxette
6.Get Up
7.Run Run
8.Like We've Never Lost
9.Two Little Fishes
10.明日公園で
11.Remember Me
12.グラニート
Free Throw
https://youtu.be/dQVl8urlE2o
15:45~ ZAZEN BOYS [SOUND OF FOREST]
リハの音出しが終わると、向井秀徳が
「それでは、また来週」
と、それリハやる意味ないだろ!と誰しもに突っ込まれるようなボケをかましてきたZAZEN BOYS、今年も1番暑い時間のSOUND OF FORESTに登場である。
もう1音出した瞬間から、メンバーそれぞれの音の重さと斬れ味に目が覚まされていくが、既存の曲もMATSURI STUDIOで練り上げられたことによって、最新の形にアップデートされまくっていて、さながら新曲のようにすら聞こえる。相変わらずそのアレンジはキメ連発とかなので、曲を知っているはずなのに全く乗れないものになっているが。
「耳をすませば、聞こえてくるのは、あのビート!」
と言って始まったのはおなじみの「COLD BEAT」だが、途中に「泥沼」のフレーズを挟んでくるために、もう自分がなんの曲を今聴いているのか全くわからなくなってくる中、
「ズブッとハマった泥沼から抜け出そうとしている時に、向こうの神社とかから聞こえてくるのは、やっぱりあのビート」
と全くわけわからない状況説明によって「COLD BEAT」に戻ってくる。曲終わりで向井はなぜかビートたけしが銃を連射するかのようなアクションを展開していたのだが、これはビートつながりということなんだろうか。
こちらもおなじみの「RIFF MAN」もさらに重く、さらにメタリックなアレンジが施され、もはや見ていて笑ってしまうくらいに難解になっている。
そして最後は「破裂音の朝」「自問自答」という向井語が並びまくる、不穏かつ幽玄なサウンドスケープが森の中に木霊し、演奏が終わると向井は
「MATSURI STUDIOから、ZAZEN BOYSでした。乾杯!」
と言ってステージを去った。
もう何年も新作が出てないし、出る気配も全然ないのに、毎回新鮮な気持ちで見れるバンドというのはなかなかない。それはやはりMATSURI STUDIOで曲を練り上げているバンドだから。毎年ここでやっている曲でも、毎年全然違う。そんなバンドは他にいないと思う。
1.Fender Telecaster
2.Fureai
3.COLD BEAT
4.RIFF MAN
5.破裂音の朝
6.自問自答
COLD BEAT
https://youtu.be/28_4MxwJTME
16:20~ ストレイテナー [PARK STAGE]
近年はLAKE STAGEに出演してきた、ストレイテナー。今年は規模が拡大したPARK STAGEに出演。
すでに満員の観客が待ち受ける中、ホリエが軽く挨拶すると、いきなりの「Melodic Storm」でスタート。しかし、ステージの袖(というか袖からはみ出しまくってて、5人目のメンバーみたいになっているけど)で酒を飲みながら踊りまくっていたDragon Ashのkjが最後にOJのマイクに駆け寄り、コーラスを務めるという超豪華な乱入を果たす。予定していたのかどうかはわからないが、その後もずっと袖でライブを見ていた様子から、kjは本当にテナーが大好きであるということが伝わってくる。
「山崎洋一郎に、LAKEよりこっちの方がいいよ、って唆されてこっちのステージに来たんだけど、めちゃくちゃ気持ちいいー!」
とシンペイが慣れ親しんだLAKEからPARKに移った経緯を明かすと、そこからはひなっちのゴリゴリのベースがグルーヴを先導する近年のシングル曲に加え、ホリエのキーボード弾き語りのイントロが加わった「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と新旧織り交ぜたフェスらしいセトリなのは先週のアルカラ主催イベントと変わらないが、やはり夏の野外で聴く「シーグラス」は格別。この曲に関してはやはりLAKEの方が似合う気がするが、まだ8月が始まったばかり。まだまだ「今年最後の海」にはしたくないのである。
「ユニコーンやB'zっていう子供の頃のアイドルがいて。Dragon AshやTHE BACK HORNやMONOEYESっていう同世代で凌ぎを削ってきたバンドもいて。この後に出るSUPER BEAVERやMy Hair is Badっていう若い世代のバンドたちもガンガン突き上げてきてる。
その中で俺たち、いつまでこのフェスに出れるんだろうって正直思う時もある。でもこのフェスに出れなくなっても、俺たちはずっとライブハウスで音を鳴らしてるから。この音が聴きたくなったらまたライブハウスに会いに来てください!」
とホリエが率直な胸の内を明かし(ベテランにとっては厳しくなってきているという状況もわかっているのだろうか)、ラストは「REMINDER」から「TRAIN」という、様々なタイプの曲を持つこのバンドの中でもストレートなギターロック2曲を叩きつけ、演奏が終わると4人はステージ前に並んで肩を組んで一礼し、今年も最高の時間を作り出してくれた。
ホリエは今後にとって不安なことを口にしていたが、山崎洋一郎がロッキンオンにいる間はこのバンドが呼ばれなくなることはないと自分は思っている。このバンドは長いこのフェスの歴史の中でも数少ない(他にはELLEGARDENとサカナクション、SEKAI NO OWARIくらいしかいない)、GRASS STAGEとLAKE STAGEの両方でトリを務めたことのあるバンドだから。
そして最近はツイッター上でファンを心配させることも多いひなっちがいつも通りに極まったベースを笑顔で鳴らしていた姿に一安心。
1.Melodic Storm w/ kj
2.DAY TO DAY
3.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
4.The World Record
5.From Noon Till Dawn
6.シーグラス
7.REMINDER
8.TRAIN
シーグラス
https://youtu.be/7Gg1PvKYF4c
17:30~ SUPER BEAVER [PARK STAGE]
規模が拡大したPARK STAGEの初日のトリを飾るのはSUPER BEAVER。常連バンドやオーバーグラウンドなシーンを騒がせている新星たちが居並んだこのステージでトリを任されたというのが今のこのバンドの勢いを物語っている。
「本日のこのステージをしっかり締めに参りました、レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムトーキョージャパン、SUPER BEAVER始めさせていただきます!」
と登場するなり渋谷がいつもの流暢な言葉を並べると、
「ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる」
と数々のロックスターたちが亡くなった27歳という年齢を自分たち自身が超えたからこそ歌える「27」でスタート。
「僕らは大人になったんだ」
という最後のメンバー全員での力強いコーラスからは、このフェスに来続けることで大人になった自分に歌われているような感覚を覚えた。
タイトル部分のフレーズで大合唱を起こした「東京流星群」から、手拍子が鳴る「証明」へ。
「あなたの目に映る顔を見て 僕の知らない僕を知った」
というサビ終わりのフレーズ。似たような言い回しはJ-POPにもたくさんあるが、この曲のこのフレーズがそうした曲とは全く違う強度を持っているのは、このフレーズに至るまでの歌詞の連なりと、渋谷だけで歌う部分とメンバー全員(つまりそれはこの場所にいる全員のことでもある)で歌う部分の絶妙なバランスによるもの。なぜこの歌詞、このフレーズでなければいけないのか。このバンドの歌詞はその意志が宿ったものしかないし、柳沢が書いた歌詞を完全にメンバー全員が深く共有している。
「今日このステージに立てていること、選んでもらったこと。当たり前のこととは思っておりません」
とこの日の思いを語っての「美しい日」では手拍子が、同じく「青い春」でもワルツのリズムに乗せて発生するが、ただ盛り上げるだけ、リズムに合わせているだけではなくて、この両手から発せられる音がここにいる人たちのこのバンドへの意志となってメンバーに届いている。だからこそ渋谷は
「確かに伝わりました。受け取りました」
と観客の意志を受け取り、「今日この日しか歌えない歌」こと「秘密」でその意志が重なり合った大合唱を巻き起こす。
「伝えたいことがあるなら、すぐ言わないと。伝えたいと思った時に言わないと。後回しにするとどんどん他に伝えたいことがたくさん出てきて、それがどんどん先送りになってしまって、伝えたかったことを少しも伝えられないまま、伝えたい相手はいなくなってしまう」
と渋谷が独自の語り口でこの日この時間にこの場所に来てくれた人たちへの感謝を語ってから最後に演奏されたのは「ありがとう」。それはバンドから観客へ向けられたものであると同時に、観客からバンドへ向けられた感情でもあった。
この日に限ったことではないが、このバンドのライブはバンド側と観客側の意志が重なり合うことで、大きな力やエネルギーが生まれる。それは1人と1人が向き合い、それが×10000になるからこそ。最初から4対10000ではない。そこにはこの上ない人間らしさがある。感動的なトリだった。
そして今やフェスシーンでは最大規模クラスの動員力を誇るホルモンの真裏という試練でしかないような時間にこのステージを満員にできたのは本当にすごい。
1.27
2.東京流星群
3.証明
4.美しい日
5.青い春
6.秘密
7.ありがとう
証明
https://youtu.be/JaPGbJk4Tcc
18:10~ リーガルリリー [WING STAGE]
着いたらすでに中盤くらいであったが、初日WING STAGEのトリを初出演にして任されたのは、スリーピースガールズバンド、リーガルリリー。
中盤で圧倒的に代表曲というか、もはやそれすらも飛び越えているような状態になっている「リッケンバッカー」を演奏したのだが、3ヶ月前にMETROCKで見た時よりも、曲の表現力が圧倒的に増している。1曲の中での押し引きのバランスが本当に進化しており、曲後半ではどんどんBPMを増して行くリズム隊の力強さに驚かされる。たかはしほのかも最後にはもはやシャウトに近いような凄まじいボーカルを見せる。もうCDやMVとは完全に別物。なんなんだこのバンドは。恐るべき進化っぷり。それはラストの「はしるこども」でもそう感じさせたが、会場を歩いていても絶対にメンバーだと気付かないような、あまりに普通すぎる出で立ち。そんなごく普通の少女たちが楽器を持ってステージに立つと、そこにはロックバンドの魔法が宿る。
「10代のうちにこのフェスに出れて本当に嬉しい。いつか、お酒が飲めるようになったら、今日の日のことを思い出しながら話したいです。あ、でもこれで最後なのかな?」
とたかはしはなぜか不安がっていたが、これで最後なわけがない。このバンドはこれからこのフェスを代表する存在になっていく。同じように10年以上前に、初出演時にWING TENTのトリを務めたチャットモンチーのように。
1.ぶらんこ
2.トランジスタラジオ
3.the tokyo tower
4.リッケンバッカー
5.高速道路
6.はしるこども
リッケンバッカー
https://youtu.be/V-lYzz5BNo0
18:35~ 岡崎体育 [LAKE STAGE]
リーガルリリーもそうだが、この時間、GRASS STAGEにはロッキン初降臨となったB'zが出演している。他の出演者からしたらなんとしても避けたいような裏の位置にがっつりとぶつけられたのは、最新アルバムで1stを上回るバズを巻き起こしている、岡崎体育。
ステージに到着すると、すでに中盤。
「ウォールオブデスっていう文化を知ってますか!よくハードコアのライブとかである、1番盛り上がるところで体をぶつけ合うっていう楽しみ方です!今日はそれをやろうと思うんですけど、今日は危ないんで、一回広げたら僕の合図でゆっくり歩いて元の位置に戻ってください!」
と言い、客席中央に空間が生まれるも、本人の合図で本当に全員がゆっくり歩いて元の位置に戻るという爆笑のパフォーマンスを展開中。
しかし、ビックリするくらいに満員と言っていいような埋まり具合。これには本人も、
「これは完全にB'zの裏に岡崎体育を被せればうまく人が分散するだろう、っていうロッキンオンの読み勝ちですね」
と笑わせながらも、あらゆる話題や戦略を使ってこの位置まで来た男であることがよくわかる冷静な分析をステージ上で展開する。
真面目な歌を歌いつつ、心の声が
「真面目に歌ってどうすんねん!」
と本人をいじりまくって爆笑を呼ぶ「Voice Of Heart2」、カッコいいラウドロックサウンドなのにサビの歌詞が脱力必至というギャップで話題になった「感情のピクセル」ではエアバンドメンバーも登場し、
「このフェス、バンドばっかり出てるじゃないですか。バンドってバックステージでもみんなでプール入ったり美味しいもの食べたり、バンド同士で話したり写真撮ったりしてて。僕は今日一切なんも食べてないですからね(笑)
そんなバンドに対する思いを曲にしました」
という「FRIENDS」ではてっくんのぬいぐるみを使って一人二役で
「バンドざまぁみろ」
のフレーズが爆笑を巻き起こすのだが、最後にはてっくんが、
「バンドざまぁみろって言うけど、B'zはすごいバンド。そのバンドの裏を任されるのは本当に名誉なことなんだよ。このフェスを作ってくれた人たちや、出演してるバンドに感謝しないと。だからバンドざまぁみろなんて言っちゃいけないよ。それに、B'zを見ないで今日ここにいるみんなは、来年GRASS STAGEで岡崎体育を見たいって思ってるはずさ」
と、何故か感動してしまうような展開に持っていかれるのだが、最後に「AC」の音が流れるというオチつき。
岡崎体育はバンドが組みたくても組めなかった男である。(そういう意味ではアウトプットは丸っきり違うけど、米津玄師と通じるところもある)だから曲にするとこうした曲になるが、「感情のピクセル」がバンドサウンドであること、本職のバンドマンと一緒に作った曲であることも含め、バンドに対する憧れを持っているはず。だからこの日の「FRIENDS」は岡崎体育の偽らざる心境そのものだろう。
そして最後は童謡を合唱しているといきなりヘッドバンキングするようなアレンジになる「Q-DUB」で終え、アンコールで登場したかと思いきや、
「このフェスにはルールがあるんですよ。いろんな事情で。だから今日は申し訳ないけれど、アンコールはできないんです。でも僕はそのルールをちゃんと守って、来年GRASS STAGEに出ます!みなさん、この続きは来年GRASS STAGEで!」
と観客に告げて、アンコールはせずにステージを去った。ライブ自体はお笑い芸人を見ているかのようだし、本人も「2ちゃんねるに死ねとか書かれまくってる」と言っていたが、その内面は実に音楽や人間に対して誠実な男だな、と思うし、この日このライブを見たからには、来年はGRASS STAGEでこの日の先の景色を見てみたい。
1.B'zの裏はキツい
2.Open
3.Explain
4.Walk Of Death
5.Voice Of Heart2
6.感情のピクセル
7.FRIENDS
8.Q-DUB
感情のピクセル
https://youtu.be/3yoJY0IqiV0
そのままB'zは見れずにこの日は終了。道が混むこともなく実にスムーズに宿へ行けた。やっぱりライブが始まったら本当にあっという間に1日が終わってしまう。
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GRASS STAGE
LAKE STAGE
PARK STAGE
SOUND OF FOREST
WING STAGE
BUZZ STAGE
HILLSIDE STAGE
とステージの数は変わらないが、PARK STAGEの拡大によるセカンドステージ化(LAKE STAGEと同規模にまで拡大)、WING TENTのテントを取り払ったWING STAGEへの変貌、全ステージにビジョン設置と、これまでの参加者第一目線をさらに進化させている。
開演前は霧雨が降りしきるという、例年の1週目の晴れ具合とは全く異なる天候。涼しいのはありがたいが、イマイチテンションが上がらないのは、やはりこのフェスのイメージが青空の下だからか。
10:30~ My Hair is Bad [PARK STAGE]
朝の霧雨はどこへやら、すっかり蝉の鳴き声と青空までもが出現するという、いつものひたちなかのような気候になり、巨大化したPARK STAGEのこけら落としを務めるのは、昨年のWING TENTからジャンプアップを果たした、My Hair is Bad。
1時間近く前にメンバーがステージに登場すると、
「リハから盛り上がっていこう!みたいなタイプじゃないんで(笑)」
と椎木が謙遜しながら3曲を演奏して、早くから集まってくれた観客への感謝を音で示す。
ROCK IN JAPAN編集長・小柳大輔による前説では、「入場規制がないフェスにしたかった」とPARK STAGEを拡大させた理由を語ると、いよいよ今年のこのフェスが幕を開ける。
SEの後にメンバー3人が登場すると、おなじみ「アフターアワー」でスタートし、ちょっと喉が枯れ気味ではある椎木が
「最高の40分にする!」
と宣言し、「元彼氏として」では
「去年は元カノが最前で見てました」
「まぁまぁデカいステージに出れるようになったし、何より給料がめちゃ増えた」
と赤裸々な実体験に歌詞を変えて歌う。ちなみにその元カノとは出番後に一緒にエレファントカシマシのライブを見に行ったらしいが、元カノはあまりエレカシが好きではなく、完全に椎木に合わせただけに、微妙な空気になったらしい。
「ロッキンで初めてやる曲を!」
と言っての「告白」、
「東京の曲!」
と言っての「真赤」と独特な歌詞の性急なギターロックを次々に繰り出し、
「キモいって言われようが、アイドルって言われようが関係ない!ここにいる俺が最新、最先端の俺だ!俺たちはこの3人で1つだ!俺だけを見てろ!
やるかやらないかどっちなんだ!今年の夏からやってみればいいじゃねぇか!25歳の男に説教されてるんだぞ!
なんの根拠もないけど、絶対大丈夫だ!」
と熱い言葉が次々に口から放たれる「from now on」は去年の元カノとのあれこれすらもエモーションに昇華していく。
そして
「今日は夏フェスですけど、俺たち、普段は一年の半分くらいはライブハウスにいます!また見たくなったら、地下の汚いライブハウスに来てください!ROCK IN JAPANに捧げます!」
と、自らの居場所がステージ、その中でもライブハウスであるという姿勢を示して、
「旅は続いていくんだ 未来が耳元を切って次の街へ」
とまた次のステージへ向かうことを曲にした「音楽家になりたくて」で終わり…かと思いきや、最後にトドメとばかりに演奏されたのは一瞬で終わる「クリサンセマム」。それはこのバンドで幕を開けた今年のこのフェスも、今年の夏も一瞬で終わってしまうのを示唆しているかのように。
去年、椎木はWING TENTに初出演した際、
「僕、すぐステージから降りたりしそうでしょ?でも今日はしません!降りたらこのフェス出れなくなっちゃうから!もっと大きいステージに出れるようになってからやります!」
と言った。もはや1万人規模になったこのステージも超満員。椎木が言っていたそのステージは間違いなくGRASS STAGE。来年以降、このバンドはそのステージに立っているだろうか。できることなら出れなくなることなく毎年出ていて欲しいバンドだし、椎木は巨大モニターに映る姿が実に映える男だということがわかっただけに、いつかは。
リハ1.優しさの行方
リハ2.グッバイ・マイマリー
リハ3.革命はいつも
1.アフターアワー
2.元彼氏として
3.告白
4.真赤
5.接吻とフレンド
6.ドラマみたいだ
7.from now on
8.音楽家になりたくて
9.クリサンセマム
接吻とフレンド
https://youtu.be/gI2pOruKoFo
11:40~ Czecho No Republic [LAKE STAGE]
去年、SOUND OF FORESTのトリという大事な位置を任されたCzecho No Republicは、ボーカル武井優心の声が全く出ないという試練のライブになってしまった。それから1年、去年より大きなLAKE STAGEがリベンジの舞台。
リハの時点で曲を連発していると、ステージには見慣れない男が1人。この男がこの日のライブを特別なものにする人物だが、チェコの曲をリハでやるぶんには特に何もやることがないという、リハにしては豪華すぎる感。
本番でメンバーたちがステージに現れると、初っ端から手拍子と合唱が起きる「Amazing Parade」からスタートし、
「雨が降りそうな ロッキンの空を」
と華やかなワンピースを着たタカハシマイが歌詞を変えて歌い、大きな歓声が起こる。
優心の声もなんの心配もないくらいによく出ており、時おりベースを弾きながら歌うくらいに躍動感に満ちている。
「ゴッホとジョン」で会場に涼しい風を吹かせると、「NO WAY」では砂川がタカハシマイに寄り掛かったりするというちょっかいを出しながら、「MUSIC」でも
「雨上がりのひたちなかに」
と歌い出しのフレーズをこの場だからこそのものに変えてみせる。前まではこういうことをやるようなバンドではなかったが、様々な場所でのライブを経験してきて、こういうことができるようになってきたのだろうか。
そしてこの日の目玉である、9月にリリースするシングルの共作者にして、リハにも出てきていたゲストのSKY-HIが登場。
優心「とんでもないイケメンが出てきますからね。俺たちなんかどうでもよくなるくらい」
砂川「俺は負けてないけどね(笑)」
というやり取りで笑わせ、コライト曲の「タイムトラベリング」を披露。サウンド自体はチェコらしい夏が似合う、つまりこのシチュエーションが絶好なポップな曲であるが、途中とラストに入るラップのヴァースではSKY-HIの持ち味である高速ラップが斬れ味鋭く放たれていく。確かにこれはSKY-HIとしかできなかった曲であろうことが一聴しただけでわかる。
「去年は声が出なくなっちゃって、みんなに歌ってもらったりしたんだけど、そういうのも全部今年に繋がってるから、無駄じゃなかったなって思ってます。
今年は初めてのLAKE STAGEへの挑戦でしたけど、これからも我々Czecho No Republicはいろんなことに挑戦していくんで、よろしくお願いします」
と優心が言うと、暖かい拍手が起き、最後に「Firework」のエレクトロサウンドで昼のひたちなかに花火を打ち上げ、見事に去年のリベンジを果たした。
埋まり具合自体はまぁまぁといったところだったが、SOUND OF FORESTが1番似合うと思っていたチェコは、何方かと言えばパンクなバンドが出るイメージが強いLAKE STAGEも実によく似合っていた。野外のステージなら全て自分たちのホームに変えてしまう力を持っているのかもしれない。
リハ1.ネバーランド
リハ2.Oh Yeah!!!!!!!
リハ3.Firework
1.Amazing Parade
2.Festival
3.ゴッホとジョン
4.No Way
5.MUSIC
6.タイムトラベリング w/ SKY-HI
7.Firework
Firework
https://youtu.be/ZREIq7SpI_I
12:45~ 赤い公園 [BUZZ STAGE]
佐藤千明(ボーカル)の突然の脱退発表はファン以外をも驚かせた。あれだけ存在感のあるボーカルが脱退するということもそうだし、それでもバンドが続いていくということ。とりあえず今言えるのは、今年の夏が4人で過ごす最後の夏であり、このライブが今まで数々の名場面を作ってきたロッキンに4人で出る最後になるということである。
そんな身構えざるを得ない空気の中、なぜかステージからは「サライ」のBGMが流れ、佐藤が24時間テレビのマラソンランナーとしてゴールしようとするも、ゴールテープを持った津野と藤本がなかなかゴールさせてくれないという小芝居で意表を突き、佐藤がギターを抱えて「サイダー」からスタートするという爽やかな立ち上がり。
ショートチューンにしてキラーチューンの「絶対的な関係」、「闇夜に提灯」と津野のギターがオルタナさを増していくと同時にバンドのグルーヴもどんどん上昇していくと、ここで新曲を披露。オリエンタルな雰囲気を持ったロックチューンというのはこのバンド、というか津野の得意とするところだが、ドラムのリズムが実に面白い。一聴して良い曲、カッコいい曲であるということがわかる。
しかしながらメンバーはステージ両サイドにあるスクリーンに自分たちがどう映ってるかを気にしたりと、これが4人での最後のロッキンであるということを全く感じさせず、むしろその状況すらも楽しんでいるかのようにすら見える。
後半はポップなメロディに津野のノイジーなギターが鳴る「KOIKI」、佐藤のボーカリストとしての表現力と存在感を改めて感じさせてくれる「journey」と続き、最後に演奏されたバンド屈指の名曲である「NOW ON AIR」では藤本が歌川のドラムセットの周りを歩きながらベースを弾き、ラストサビの
「いつもありがとう」
のフレーズ部分では佐藤と津野がそれぞれ合わせたかのように頭を下げる。脱退についてのことは何にもメンバーたちは言わなかったが、この姿からは、これまで本当にありがとうございました。これからも赤い公園をよろしくお願いします。と言っているかのように見えた。
佐藤が脱退してもバンドは続けるというが、このライブを見て、改めて津野のギターは歌いながら弾けるようなものではないということがはっきりとわかった。かと言って、誰か他のボーカルを入れるという選択肢もないだろう。このメンバーたちはみんな学生時代に津野に選ばれてバンドを組み、ずっと同じ景色を見てきた存在だから。だからそこを共有していない人をおいそれと加入させるわけにはいかないのである。
でも、それでも「辞める」んじゃなくて「続ける」という、より厳しい道を選んだ。冒頭の小芝居でまだゴールできない状況を示したように、このバンドでまだやるべきことがある。それを誰よりもわかっているから、津野は辞めることを選ばなかった。
そして、シンガーとして見るたびに進化を遂げている佐藤も、できれば1人ででも音楽を続けていて欲しいと願わざるを得ないほど、このまま姿を消してしまうには勿体なさ過ぎる才能の持ち主である。できれば、どちらもまたこの会場で。
1.サイダー
2.絶対的な関係
3.闇夜に提灯
4.新曲
5.KOIKI
6.journey
7.NOW ON AIR
KOIKI
https://youtu.be/ZQuKiqq6sg8
13:30~ SAKANAMON [WING STAGE]
今回で4年連続出演。すっかり常連バンドとなった、SAKANAMON。かつて出演したWING TENTからテントがなくなったWING STAGEへ出演。
おなじみのSUPER BUTTER DOG「コミュニケーション・ブレイクダンス」のSEでメンバー3人が登場すると、最新作からの「クダラナインサイド」、コーラス部分で大合唱となった「幼気な少女」というギターロックチューンから、打ち込みも駆使しながら木村が軽快なダンスビートを打ち鳴らす「UTAGE」で心も体も躍らせる。
イニシャルを押し出したメンバー紹介では「M・M」の森野はドM、「G・F」の藤森はガーディアン・フォースというあってるんだかなんなのかよくわからない紹介の仕方をし、打ち込みの女性コーラスがタイトル通りにキャッチーな「CATCHY」では手拍子、ダンスなど思い思いの楽しみ方を観客がする中、間奏部分で聴き覚えのあるギターリフを藤森が鳴らし始めると、
「Suchmosを見たかった人のために!」
と言って、リズム隊も加わって、この時間にGRASS STAGEに出演しているSuchmos「STAY TUNE」のスリーピースアレンジでのカバーを披露。藤森はかなり歌詞のカンペを見ながら歌っていたが、こうして削ぎ落とされたギターロックアレンジで少年性の強い藤森の声で歌われると、従来の都会性よりも衝動を強く感じる。こうしてすんなり演奏できるメンバーの技術とサービス精神も凄い。
森野がかつてトリを務めたこともあるWING TENTがパワーアップしてこのWING STAGEになり、パワーアップした自分たちがこのステージに出れたことへの感謝を語ると、短い持ち時間の中でこうしたタイプの曲が演奏されるのは実に珍しいバラード曲「テヲフル」でさらにバンドの幅広さを見せるが、
「ラブソングを作ろう 彼方に歌う
ラブソングを作ろう 彼方に」
という、これまで捻くれた視点での歌詞や、文学的な言い回しが多かった藤森が初めてと言っていいくらいに心情をさらけ出した歌詞。SAKANAMONらしくない曲でもあるが、こういうことを歌えるようになったという点で、新作の中で最も重要な曲と言える。
そしてやはり最後は
「毎日楽しいですか!?楽しくないですよね!?ムカつく仕事とか上司とかに対する思いを全てこの曲に乗せて叫んでください!」
と言って
「つまんねーよ!つまんねーよ!」
の大合唱となった「TSUMANNE」で終了。
このフェスにおいてはもはや欠かせない存在になっているのは間違いないが、今回も満員とは言えない状態だったし、かつて出演したPARK STAGEが巨大化したこともあり、なかなか次のステップに進むのが厳しくなってきた感もある。かつてのLUNKHEADやつばきやthe ARROWSのように小さいステージに毎年出るという存在も必要ではあるが、バンドの持つポップさ、CATCHYさを考えると、せめてもう一つ上のところまで行って欲しいし、本人たちも絶対そこまで行きたいと思っているはず。
1.クダラナインサイド
2.幼気な少女
3.UTAGE
4.CATCHY
Suchmos「STAY TUNE」カバー
5.テヲフル
6.TSUMANNE
CATCHY
https://youtu.be/f5iSVJuNXL8
14:30~ MONOEYES [GRASS STAGE]
普段はフェスではリハからガンガン曲をやるのが細美武士のバンドの共通点だが、この日は時間前割とギリギリになってもなかなか曲をやろうとしない。どうやら機材が故障したらしく、万全の状態とは言えない様子。それでも「What I Left Today」を演奏するというサービスは見せてくれた。
おなじみスター・ウォーズのSEでメンバーが登場すると、機材トラブルもなんのその、いつものように笑顔で元気良く細美が挨拶すると、「When I Was A King」でパンクに始まり、スコットボーカルの「Borders & Walls」と熱い流れが続く。
「My Instant Song」で観客を飛び跳ねさせると、
「MONOEYESはGRASS STAGEは初めてになります。まぁきっとすぐLAKEに戻るだろうから、その時はまた好き放題にやろうや」
と自分たちがGRASSよりLAKEに向いたバンドであることを自覚しながら、リリースされたばかりの最新アルバム「Dim The Lights」から、アレンジ次第ではthe HIATUSでもできそうな「Free Throw」、スコットボーカルの「Roxette」を披露。1stアルバムに比べるとパンク要素は少なくなっているだけに、根っからのパンクスであるスコットの曲はMONOEYESが変わらずパンクバンドであることを強く感じさせてくれる。
最前エリアにいる観客に、
「どのバンドのファンかわからないけど、キツそうだね。もうちょっと続くから頑張れよ」
と声をかけ、「暑い」という理由で細美はTシャツを脱ぎ捨て、鍛えた上半身があらわに。当然客席からは歓声が起こるが、細美が脱ぐとみんな細美の方ばかり見てしまうということにスコットは嘆き気味。
親友というかもはや兄弟と言ってもいい存在のTOSHI-LOWが居酒屋で酔っ払って大暴れした時のエピソードを語り、
「完璧に覚えた歌詞で上手く英語を歌うんじゃなくて、1人で車を運転してる時に歌ってるみたいな感じで歌って欲しい」
と言って演奏されたのは、新作からの「Two Little Fishes」。しかし、やはりまだリリースから間もないからか、そこまで大きな合唱には至らなかったが。
スコットがベースを銃に見立てるアクションが面白い「明日公園で」ではそのスコットと戸高が位置を入れ替わり、
「いろいろデカいフェスでは決まりとかもあるけど、あんまり人の言うことばっかり聞いてるんじゃねーぞ。思い出して、子供の頃に嫌いなやつの前でどんな顔をしていたか。ちょっとくらいのゴミだったらロッキンが拾ってくれるよ。それでも拾うやつはいるだろうけど」
と賛否両論あるだろう(ゴミのことに関しては個人的には自分で出したゴミは自分でと思ってるので否)、自身のスタイルを語った。
そして最後は去年のLAKEのトリでの熱演が今も脳裏に焼き付いている「Remember Me」「グラニート」。
Dragon Ashに触発された去年に比べたらそこまで際どいというか、物議を醸しそうな発言はなかったが、ELLEGARDEN時代からを含めても、細美武士が作ったアルバムの中で最も夏の野外が似合うと思っていた「Dim The Lights」をこうして夏の野外で聴けて本当に良かったし、やっぱり思った通りに夏の野外が本当に似合う曲たちだった。
リハ.What I Left Today
1.When I Was A King
2.Borders & Walls
3.My Instant Song
4.Free Throw
5.Roxette
6.Get Up
7.Run Run
8.Like We've Never Lost
9.Two Little Fishes
10.明日公園で
11.Remember Me
12.グラニート
Free Throw
https://youtu.be/dQVl8urlE2o
15:45~ ZAZEN BOYS [SOUND OF FOREST]
リハの音出しが終わると、向井秀徳が
「それでは、また来週」
と、それリハやる意味ないだろ!と誰しもに突っ込まれるようなボケをかましてきたZAZEN BOYS、今年も1番暑い時間のSOUND OF FORESTに登場である。
もう1音出した瞬間から、メンバーそれぞれの音の重さと斬れ味に目が覚まされていくが、既存の曲もMATSURI STUDIOで練り上げられたことによって、最新の形にアップデートされまくっていて、さながら新曲のようにすら聞こえる。相変わらずそのアレンジはキメ連発とかなので、曲を知っているはずなのに全く乗れないものになっているが。
「耳をすませば、聞こえてくるのは、あのビート!」
と言って始まったのはおなじみの「COLD BEAT」だが、途中に「泥沼」のフレーズを挟んでくるために、もう自分がなんの曲を今聴いているのか全くわからなくなってくる中、
「ズブッとハマった泥沼から抜け出そうとしている時に、向こうの神社とかから聞こえてくるのは、やっぱりあのビート」
と全くわけわからない状況説明によって「COLD BEAT」に戻ってくる。曲終わりで向井はなぜかビートたけしが銃を連射するかのようなアクションを展開していたのだが、これはビートつながりということなんだろうか。
こちらもおなじみの「RIFF MAN」もさらに重く、さらにメタリックなアレンジが施され、もはや見ていて笑ってしまうくらいに難解になっている。
そして最後は「破裂音の朝」「自問自答」という向井語が並びまくる、不穏かつ幽玄なサウンドスケープが森の中に木霊し、演奏が終わると向井は
「MATSURI STUDIOから、ZAZEN BOYSでした。乾杯!」
と言ってステージを去った。
もう何年も新作が出てないし、出る気配も全然ないのに、毎回新鮮な気持ちで見れるバンドというのはなかなかない。それはやはりMATSURI STUDIOで曲を練り上げているバンドだから。毎年ここでやっている曲でも、毎年全然違う。そんなバンドは他にいないと思う。
1.Fender Telecaster
2.Fureai
3.COLD BEAT
4.RIFF MAN
5.破裂音の朝
6.自問自答
COLD BEAT
https://youtu.be/28_4MxwJTME
16:20~ ストレイテナー [PARK STAGE]
近年はLAKE STAGEに出演してきた、ストレイテナー。今年は規模が拡大したPARK STAGEに出演。
すでに満員の観客が待ち受ける中、ホリエが軽く挨拶すると、いきなりの「Melodic Storm」でスタート。しかし、ステージの袖(というか袖からはみ出しまくってて、5人目のメンバーみたいになっているけど)で酒を飲みながら踊りまくっていたDragon Ashのkjが最後にOJのマイクに駆け寄り、コーラスを務めるという超豪華な乱入を果たす。予定していたのかどうかはわからないが、その後もずっと袖でライブを見ていた様子から、kjは本当にテナーが大好きであるということが伝わってくる。
「山崎洋一郎に、LAKEよりこっちの方がいいよ、って唆されてこっちのステージに来たんだけど、めちゃくちゃ気持ちいいー!」
とシンペイが慣れ親しんだLAKEからPARKに移った経緯を明かすと、そこからはひなっちのゴリゴリのベースがグルーヴを先導する近年のシングル曲に加え、ホリエのキーボード弾き語りのイントロが加わった「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と新旧織り交ぜたフェスらしいセトリなのは先週のアルカラ主催イベントと変わらないが、やはり夏の野外で聴く「シーグラス」は格別。この曲に関してはやはりLAKEの方が似合う気がするが、まだ8月が始まったばかり。まだまだ「今年最後の海」にはしたくないのである。
「ユニコーンやB'zっていう子供の頃のアイドルがいて。Dragon AshやTHE BACK HORNやMONOEYESっていう同世代で凌ぎを削ってきたバンドもいて。この後に出るSUPER BEAVERやMy Hair is Badっていう若い世代のバンドたちもガンガン突き上げてきてる。
その中で俺たち、いつまでこのフェスに出れるんだろうって正直思う時もある。でもこのフェスに出れなくなっても、俺たちはずっとライブハウスで音を鳴らしてるから。この音が聴きたくなったらまたライブハウスに会いに来てください!」
とホリエが率直な胸の内を明かし(ベテランにとっては厳しくなってきているという状況もわかっているのだろうか)、ラストは「REMINDER」から「TRAIN」という、様々なタイプの曲を持つこのバンドの中でもストレートなギターロック2曲を叩きつけ、演奏が終わると4人はステージ前に並んで肩を組んで一礼し、今年も最高の時間を作り出してくれた。
ホリエは今後にとって不安なことを口にしていたが、山崎洋一郎がロッキンオンにいる間はこのバンドが呼ばれなくなることはないと自分は思っている。このバンドは長いこのフェスの歴史の中でも数少ない(他にはELLEGARDENとサカナクション、SEKAI NO OWARIくらいしかいない)、GRASS STAGEとLAKE STAGEの両方でトリを務めたことのあるバンドだから。
そして最近はツイッター上でファンを心配させることも多いひなっちがいつも通りに極まったベースを笑顔で鳴らしていた姿に一安心。
1.Melodic Storm w/ kj
2.DAY TO DAY
3.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
4.The World Record
5.From Noon Till Dawn
6.シーグラス
7.REMINDER
8.TRAIN
シーグラス
https://youtu.be/7Gg1PvKYF4c
17:30~ SUPER BEAVER [PARK STAGE]
規模が拡大したPARK STAGEの初日のトリを飾るのはSUPER BEAVER。常連バンドやオーバーグラウンドなシーンを騒がせている新星たちが居並んだこのステージでトリを任されたというのが今のこのバンドの勢いを物語っている。
「本日のこのステージをしっかり締めに参りました、レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムトーキョージャパン、SUPER BEAVER始めさせていただきます!」
と登場するなり渋谷がいつもの流暢な言葉を並べると、
「ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる」
と数々のロックスターたちが亡くなった27歳という年齢を自分たち自身が超えたからこそ歌える「27」でスタート。
「僕らは大人になったんだ」
という最後のメンバー全員での力強いコーラスからは、このフェスに来続けることで大人になった自分に歌われているような感覚を覚えた。
タイトル部分のフレーズで大合唱を起こした「東京流星群」から、手拍子が鳴る「証明」へ。
「あなたの目に映る顔を見て 僕の知らない僕を知った」
というサビ終わりのフレーズ。似たような言い回しはJ-POPにもたくさんあるが、この曲のこのフレーズがそうした曲とは全く違う強度を持っているのは、このフレーズに至るまでの歌詞の連なりと、渋谷だけで歌う部分とメンバー全員(つまりそれはこの場所にいる全員のことでもある)で歌う部分の絶妙なバランスによるもの。なぜこの歌詞、このフレーズでなければいけないのか。このバンドの歌詞はその意志が宿ったものしかないし、柳沢が書いた歌詞を完全にメンバー全員が深く共有している。
「今日このステージに立てていること、選んでもらったこと。当たり前のこととは思っておりません」
とこの日の思いを語っての「美しい日」では手拍子が、同じく「青い春」でもワルツのリズムに乗せて発生するが、ただ盛り上げるだけ、リズムに合わせているだけではなくて、この両手から発せられる音がここにいる人たちのこのバンドへの意志となってメンバーに届いている。だからこそ渋谷は
「確かに伝わりました。受け取りました」
と観客の意志を受け取り、「今日この日しか歌えない歌」こと「秘密」でその意志が重なり合った大合唱を巻き起こす。
「伝えたいことがあるなら、すぐ言わないと。伝えたいと思った時に言わないと。後回しにするとどんどん他に伝えたいことがたくさん出てきて、それがどんどん先送りになってしまって、伝えたかったことを少しも伝えられないまま、伝えたい相手はいなくなってしまう」
と渋谷が独自の語り口でこの日この時間にこの場所に来てくれた人たちへの感謝を語ってから最後に演奏されたのは「ありがとう」。それはバンドから観客へ向けられたものであると同時に、観客からバンドへ向けられた感情でもあった。
この日に限ったことではないが、このバンドのライブはバンド側と観客側の意志が重なり合うことで、大きな力やエネルギーが生まれる。それは1人と1人が向き合い、それが×10000になるからこそ。最初から4対10000ではない。そこにはこの上ない人間らしさがある。感動的なトリだった。
そして今やフェスシーンでは最大規模クラスの動員力を誇るホルモンの真裏という試練でしかないような時間にこのステージを満員にできたのは本当にすごい。
1.27
2.東京流星群
3.証明
4.美しい日
5.青い春
6.秘密
7.ありがとう
証明
https://youtu.be/JaPGbJk4Tcc
18:10~ リーガルリリー [WING STAGE]
着いたらすでに中盤くらいであったが、初日WING STAGEのトリを初出演にして任されたのは、スリーピースガールズバンド、リーガルリリー。
中盤で圧倒的に代表曲というか、もはやそれすらも飛び越えているような状態になっている「リッケンバッカー」を演奏したのだが、3ヶ月前にMETROCKで見た時よりも、曲の表現力が圧倒的に増している。1曲の中での押し引きのバランスが本当に進化しており、曲後半ではどんどんBPMを増して行くリズム隊の力強さに驚かされる。たかはしほのかも最後にはもはやシャウトに近いような凄まじいボーカルを見せる。もうCDやMVとは完全に別物。なんなんだこのバンドは。恐るべき進化っぷり。それはラストの「はしるこども」でもそう感じさせたが、会場を歩いていても絶対にメンバーだと気付かないような、あまりに普通すぎる出で立ち。そんなごく普通の少女たちが楽器を持ってステージに立つと、そこにはロックバンドの魔法が宿る。
「10代のうちにこのフェスに出れて本当に嬉しい。いつか、お酒が飲めるようになったら、今日の日のことを思い出しながら話したいです。あ、でもこれで最後なのかな?」
とたかはしはなぜか不安がっていたが、これで最後なわけがない。このバンドはこれからこのフェスを代表する存在になっていく。同じように10年以上前に、初出演時にWING TENTのトリを務めたチャットモンチーのように。
1.ぶらんこ
2.トランジスタラジオ
3.the tokyo tower
4.リッケンバッカー
5.高速道路
6.はしるこども
リッケンバッカー
https://youtu.be/V-lYzz5BNo0
18:35~ 岡崎体育 [LAKE STAGE]
リーガルリリーもそうだが、この時間、GRASS STAGEにはロッキン初降臨となったB'zが出演している。他の出演者からしたらなんとしても避けたいような裏の位置にがっつりとぶつけられたのは、最新アルバムで1stを上回るバズを巻き起こしている、岡崎体育。
ステージに到着すると、すでに中盤。
「ウォールオブデスっていう文化を知ってますか!よくハードコアのライブとかである、1番盛り上がるところで体をぶつけ合うっていう楽しみ方です!今日はそれをやろうと思うんですけど、今日は危ないんで、一回広げたら僕の合図でゆっくり歩いて元の位置に戻ってください!」
と言い、客席中央に空間が生まれるも、本人の合図で本当に全員がゆっくり歩いて元の位置に戻るという爆笑のパフォーマンスを展開中。
しかし、ビックリするくらいに満員と言っていいような埋まり具合。これには本人も、
「これは完全にB'zの裏に岡崎体育を被せればうまく人が分散するだろう、っていうロッキンオンの読み勝ちですね」
と笑わせながらも、あらゆる話題や戦略を使ってこの位置まで来た男であることがよくわかる冷静な分析をステージ上で展開する。
真面目な歌を歌いつつ、心の声が
「真面目に歌ってどうすんねん!」
と本人をいじりまくって爆笑を呼ぶ「Voice Of Heart2」、カッコいいラウドロックサウンドなのにサビの歌詞が脱力必至というギャップで話題になった「感情のピクセル」ではエアバンドメンバーも登場し、
「このフェス、バンドばっかり出てるじゃないですか。バンドってバックステージでもみんなでプール入ったり美味しいもの食べたり、バンド同士で話したり写真撮ったりしてて。僕は今日一切なんも食べてないですからね(笑)
そんなバンドに対する思いを曲にしました」
という「FRIENDS」ではてっくんのぬいぐるみを使って一人二役で
「バンドざまぁみろ」
のフレーズが爆笑を巻き起こすのだが、最後にはてっくんが、
「バンドざまぁみろって言うけど、B'zはすごいバンド。そのバンドの裏を任されるのは本当に名誉なことなんだよ。このフェスを作ってくれた人たちや、出演してるバンドに感謝しないと。だからバンドざまぁみろなんて言っちゃいけないよ。それに、B'zを見ないで今日ここにいるみんなは、来年GRASS STAGEで岡崎体育を見たいって思ってるはずさ」
と、何故か感動してしまうような展開に持っていかれるのだが、最後に「AC」の音が流れるというオチつき。
岡崎体育はバンドが組みたくても組めなかった男である。(そういう意味ではアウトプットは丸っきり違うけど、米津玄師と通じるところもある)だから曲にするとこうした曲になるが、「感情のピクセル」がバンドサウンドであること、本職のバンドマンと一緒に作った曲であることも含め、バンドに対する憧れを持っているはず。だからこの日の「FRIENDS」は岡崎体育の偽らざる心境そのものだろう。
そして最後は童謡を合唱しているといきなりヘッドバンキングするようなアレンジになる「Q-DUB」で終え、アンコールで登場したかと思いきや、
「このフェスにはルールがあるんですよ。いろんな事情で。だから今日は申し訳ないけれど、アンコールはできないんです。でも僕はそのルールをちゃんと守って、来年GRASS STAGEに出ます!みなさん、この続きは来年GRASS STAGEで!」
と観客に告げて、アンコールはせずにステージを去った。ライブ自体はお笑い芸人を見ているかのようだし、本人も「2ちゃんねるに死ねとか書かれまくってる」と言っていたが、その内面は実に音楽や人間に対して誠実な男だな、と思うし、この日このライブを見たからには、来年はGRASS STAGEでこの日の先の景色を見てみたい。
1.B'zの裏はキツい
2.Open
3.Explain
4.Walk Of Death
5.Voice Of Heart2
6.感情のピクセル
7.FRIENDS
8.Q-DUB
感情のピクセル
https://youtu.be/3yoJY0IqiV0
そのままB'zは見れずにこの日は終了。道が混むこともなく実にスムーズに宿へ行けた。やっぱりライブが始まったら本当にあっという間に1日が終わってしまう。
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