アルカラ ア・ル・カ・ラ 15th. Anniversary GIG 「KAGEKI」 @新木場STUDIO COAST 7/30
- 2017/07/31
- 21:19
地元である神戸で開催している「ネコフェス」を始めとして、常にライブハウスに根ざした活動を続け、自分たちが育ってきたライブハウスという文化を守り続けていくという意志をとびっきりのユーモアを持って続けてきた、ロック界の奇行士、アルカラ。
今年めでたく活動15周年を迎え、所縁のあるアーティストを集めたイベント「KAGEKI」を開催。会場はもちろんライブハウスの新木場STUDIO COAST。ちなみに直前にはイベントと同タイトルのフルアルバムもリリースされている。
メインの「KUDAKENEKO STAGE」、隣接した「NYAN☆NYAN STAGE」、ロビーの端(ワンマンでは物販で使ってるエリア)の「KAGEKI STAGE」の3ステージという、COASTの場内をフルに使った構成は、アルカラが看板を背負っているフェス「MURO FES」の去年のステージ構成と同じ。(今年は出演しなかったが)
13時にKAGEKI STAGEにてオープニングアクトのインビシブルマンズデスベッドがスタートしたのだが、整理番号が遅すぎたせいで間に合わず。しかし会場内には「KAGEKI」のアルバムのジャケットを模した撮影ブースや、バンドのマスコットキャラである「くだけねこ」とハローキティがコラボしたグッズが販売されるなど、あくまでライブハウス規模でありながらフェスの様相。
13:30~ tricot [NYAN☆NYAN STAGE]
アルカラメンバーによる、「KAGEKI」のあいうえお作文(オチの田原の「キャメロン・ディアス」は意味不明)での開会宣言の後に、T.M.Revolution「HIGH PRESSURE」の「カゲキにさぁ行こう」のフレーズ部分のリミックスジングルで登場した、このステージのトップバッター、tricot。
完全に新作モードに突入していることがわかる、このバンドのイメージである変拍子を生かしたキメ連発というよりは隙間を生かしたバンドサウンド(でもやっぱり轟音)を轟かせながら、キダ(ギター)はオフマイク状態で
「アルカラ、15周年おめでとうー!」
と叫ぶと、観客とのコール&レスポンスやコーラスの合唱を経て、一気にサウンドはアグレッシブになっていき、得意の変拍子とキメも連発され、キダもヒロミ(ベース)もブンブン頭を振りまくりながら演奏。
「今日、楽屋のtricotの綴りがtoricotになってて間違ってたんですけど(笑)、稲村さんがすぐに直してくれました(笑)
アルカラはネコフェスもやってるし、ツアーではいろんなバンドが対バンに出ている。アルカラを好きなバンドが本当にたくさんいる中で、今日の出演者の中に入れて本当に嬉しいです」
とイッキュウ(ボーカル&ギター)がアルカラへの感謝を笑いも交えながら告げ、「節約家」でさらに轟音の中に包みながら、最後は「メロンソーダ」で爽やかにアルカラの15周年を祝った。
最新アルバム「3」で見せた新たなtricotらしさと、イッキュウのパーマをかけた髪型が新鮮さを感じさせてくれるトップバッターとしてのアクトだった。
1.DeDeDe
2.よそいき
3.アナメイン
4.トーキョーバンパイアホテル
5.節約家
6.メロンソーダ
トーキョーバンパイアホテル
https://youtu.be/nQd-Nj4eH48
14:10~ BIGMAMA [KUDAKENEKO STAGE]
メインステージである「KUDAKENEKO STAGE」のトップバッターはBIGMAMA。ネコフェスなどでも割とおなじみの存在であるが、そこにはこのバンドのヴァイオリンの東出とアルカラの稲村が昔からの知り合いというのもあるのだろう。
ベートーヴェン「第九」のSEで登場しただけに、てっきり「No.9」で始まるものかと思いきや、金井が
「ご案内しましょう、新世界へ!」
と言っていきなりの「荒狂曲”シンセカイ”」では早くもダイバーが続出。
しかしながらメデューサをモチーフにした最新アルバム収録の「BLINKSTONEの真実を」からは金井がギターを置いて歌唱に専念し、アルバムのタイトル曲である「ファビュラ・フィビュラ」ではこのバンドの持つ爽やかさを一切感じさせない、重くラウドなサウンドになるという新モードへ。
安井のゴリゴリのベースが否が応でも踊らせる「Swan Song」から、
「みなさんにとっての特別な存在になりたい!」
と言っての「SPECIALS」でコーラスの分厚さも含めてメンバーの一体感がさらに増すと、
「スペシャルゲストです!」
と言ってステージに招かれたのは、アルカラ・稲村。ボーカルとしてではなくヴァイオリンとしてのコラボで、東出との同門ツインヴァイオリンが実現し、EDMの要素を取り入れたこの曲の表情をさらに豊かにするのだが、間奏部分で稲村が柿沼と東出とともにリアドのドラムセットに集まって演奏する様は昨日今日の付き合いではなく、長い時間をともにしてきた両者だからこそという絆を感じさせる。
稲村が出番を終えてもなおステージ袖でバンドの演奏を見守るという愛の深さを見せる中、金井がアコギを手にし、東出がキーボードという編成で演奏されたのは、最新シングル「DOPELAND」収録の「CRYSTAL CLEAR」。
「僕らの愛に一点の曇りなし」
と歌われる、金井いわく「BIGMAMA最大かつ最高のラブソング」だが、この曲が作家・住野よるによるバンドへの掌編小説から生まれたという経緯を考えると、かつてのメロディックパンク路線からかなり距離のある音楽性にシフトしたのも実に納得がいく。自身の言葉や想いを最もしっかり伝えるべきサウンドをバンドが選んだ結果がこの曲のようなサウンドになっている。それは初期からのファンからしたら少し残念なことでもある(実際にファンはかなり入れ替わっている)が、10月の武道館ワンマンは今までこのバンドの音楽に触れてきた全ての人を満足させてくれるようなライブになるんだろうか。
1.荒狂曲”シンセカイ”
2.BLINKSTONEの真実を
3.ファビィラ・フィビュラ
4.Swan Song
5.SPECIALS
6.MUTOPIA w/アルカラ稲村
7.CRYSTAL CLEAR
CRYSTAL CLEAR
https://youtu.be/sursVprvwl0
15:05~ モーモールルギャバン [NYAN☆NYAN STAGE]
メンバー全員がサウンドチェックで音を出す中、
「俺が今日1番過激にKAGEKIって言ってやるから見てろー!」
と言ったゲイリー・ビッチェが完全にIKKOのような口調で「KAGEKI」と言ってから本番を迎えた、モーモールルギャバン。
グルーヴに特化しまくった「細胞9」からスタートすると、
「KAGEKIっていうタイトルのイベントの通りに過激な3人です!」
という通りにメンバーの出で立ちはパンツ一丁のゲイリーを筆頭に過激そのもの。
しかしながら初期から最新までを横断する楽曲に貫かれているテーマは、ゲイリーの心境そのものとでもいうような、「情けない男の悲哀」というもの。そのテーマが乗るサウンドは変拍子を多用したもので、そこには直前にこのステージに出たtricotとの相似性も感じられるし、ともに京都を拠点に活動してきたバンドならではの地域性も感じさせる。
ゲイリーがT・マルゲリータ(ベース)を「T.M.Revolution!」と紹介した「夢ならば覚めてくれ」ではゲイリーがサングラスを外して本気モードになり、ラストのユコ・カティ(キーボード)とのツインボーカルによる定番の「サイケな恋人」では
「BIGMAMAのファンも全員言えやコラー!」
とゲイリーが叫んで、会場一体での「パンティー」コールが起こり、ゲイリーはパンツを脱ぐ。(いつものようにもう1枚くまモンのパンツを穿いている)
その後は明らかに曲のテンポが上がりまくり、ユコは銅羅を連打しながら、最後にはアウトロ部分でギターまでも弾き倒しまくるという、「見た目は1番まともなメンバーだけど、ライブを見たら全然まともじゃないのがわかる」女性メンバーの面目躍如というか、歳を重ねてさらにこの辺りはカオスになってきている。
それにしてもひたすらに「パンティー」と叫ぶのは完全にバカバカしい行為でしかないのに、なんでこんなにこのバンドのライブとなると泣けてくるんだろうか。それはこのバンドがデビュー時から持っている魔法のような力であるが。
1.細胞9
2.ガラスの三十代
3.Dr.PANTY
4.クレイジーベイビー
5.夢ならば覚めてくれ
6.サイケな恋人
ガラスの三十代
https://youtu.be/XxhUgdWqMC4
15:45~ THE BACK HORN [KUDAKENEKO STAGE]
BIGMAMA、モーモールルギャバンという流れは祝祭的な一体感を生み出していたが、このバンドのSEが流れるだけでその雰囲気は一変する。
それはメンバーが登場していきなり「ブラックホールバースデイ」を投下するというあたりにも現れているが、冒頭から栄純を始め、メンバー全員が凄まじいテンション。近年髪を短くしている光舟も演奏中に腕を高く掲げたりという観客をより盛り上がるためのようなアクションが目立つ。
もはや完全にベテランの域に入っているバンドだが、未だにMCが上手くならないことをTOSHI-LOWなどにイジられている松田は最低限ではあるが特にたどたどしさは感じない言葉でアルカラの15周年を祝い、山田の力強いボーカルがバンドの演奏を引っ張るカップリング曲「導火線」、そしてイントロでため息にも似た歓声が上がったのはバンド屈指の名バラード「美しい名前」。とかく激しい方向の曲にスポットライトが当たりがちだし、それはこのバンドの持つ最大の魅力でもあるが、それだけのバンドだったらこのバンドはこんなにも長い間、日本のロックシーンの最前線を走っていない。「未来」にしろこの曲にしろ「世界中に花束を」にしろ、バラード曲がどれも名曲であり、それをこうしてライブでやり続けてきたからこそ、ただ激しいだけのバンドではない存在でいることができたのだ。
山田が髪の一部分だけを金に染めた栄純のことを
「志茂田景樹を意識している(笑)」
とイジると、
「太佑…いや、稲Pとは…。俺たち稲P・山Pでやってるので(笑)」
という全くキャラに合わない衝撃のカミングアウトを果たし、最新シングル「孤独を繋いで」でメンバーの力強いコーラスを響かせると、最後は必殺の「コバルトブルー」から、場内大合唱となった「刃」という鉄板の締め。メンバーも実に満足そうだったが、見ているこちらも短い時間でも大満足のアクトだった。もはや貫禄すら感じるというか。山Pは「刃」でマイクを落として歌が飛ぶという可愛らしい一面も見せてくれたが。
1.ブラックホールバースデイ
2.戦う君よ
3.導火線
4.美しい名前
5.孤独を繋いで
6.コバルトブルー
7.刃
孤独を繋いで
https://youtu.be/5_oTpKahrRo
16:45~ 話をしよう [NYAN☆NYAN STAGE]
これは出演者の名前ではなく、アルカラの15周年を記念して出演者を招いてトークをしようというコーナーである。
「司会が一切向いていない」
と自認する稲村と、稲村とともにゲーム実況Youtubeをしている高木誠司(この日KAGEKI STAGEに出演)の2人による司会で、まずは9mm卓郎とBIGMAMA金井を招いてトークを行うも、マイクが3本しかないため、必然的に高木はマイクを取り上げられてしまい、いる意味が全くなくなってしまうという可哀想な状態に(笑)
それぞれの「KAGEKIな話」として、
稲村「酔っ払ったら、なぜかエレベーターの中で血塗れになっていた」
金井「新宿の全く知らないカラオケのエレベーターの中で倒れていた」
卓郎「井の頭線の各駅停車に乗っていたら、女子高生2人組が「神泉駅っていらなくね~?」って過激なことを言っていた」
というエピソードを明かすが、稲村は人前で言えないレベルのネタがたくさんあるらしい。トークが終わるとそれぞれから観客に渡すためのプレゼントをもらう。
続いてはtricotのイッキュウとcinema staffの辻。
イッキュウ「去年、下北沢で対バンした時に、稲村さんが女装したら、ちん毛が見えていた(笑)」
辻「前に稲村さんと一緒に沖縄の洞窟みたいな居酒屋に行ったら、大学生くらいの裸の男の集団がいて、なぜか尻にキスしまくった(笑)」
というKAGEKIトーク。
このあと、稲村と高木がファミコンの「魔界村」と「ドラえもん」のゲーム中のBGMを口ずさみまくるという時間の使い方をしてしまったため、時間が押しまくった上に、予定されていた尾形回帰(HERE。今日はインビシブルマンズデスベッドとして出演)が忘れ去られてしまい、この時間のためだけにHEREの派手な衣装を用意してきた尾形に
「袖でこんなに派手な衣装着てるのに忘れないでくださいよ!」
と言われ、ゲームBGMをやったせいでKAGEKIな話をする時間すらもなくなってしまうという散々な扱いに(笑)
さらにはシークレットゲストとして→SCHOOL←のヤノもプレゼントを持って登場するも、出演者でもない上に基本的に誰にも知られてないという、こちらも散々な扱いに。結局全員のプレゼントはじゃんけん大会の結果、勝者1名に全て渡されるという豪華だが雑な展開に終わった。
17:25~ ストレイテナー [KUDAKENEKO STAGE]
そんな実にやりにくい空気の中でもいつも通りに、ひなっちのゴリゴリのベースによる「The World Record」で自分たちの空気に塗り替えてみせた、ストレイテナー。
「Alternative Dancer」も含めて序盤は割とゆったりとした立ち上がりだったが、「From Noon Till Dawn」ではホリエが
「新木場まだまだ行けんのか!」
と曲中に叫び、弾き語り的なイントロを追加した4人バージョンでの「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」で一気にソリッドかつ疾走感溢れるバンドサウンドが全開に。かつてのファンの人気投票でも1位になった曲だけに、この曲が聴けて嬉しかった人も多かったはず。
「稲村君、酒を飲んでない時のステージ裏ではめっちゃ静かになりがち(笑)」
というホリエのアルカラあるあるも披露され、「DAY TO DAY」からは再びひなっちのベースがバンドのグルーヴ引っ張っていき、夏が始まったばかりだというのに、
「今年最後の海へ向かう 夕焼けが白いシャツを染める」
という歌詞がなんとも夏の終わりを感じさせてしまう「シーグラス」へ。今年は夏の野外で何回この曲を聴けるだろうか。
「ネコフェスに出たかったんですけど、今日はKAGEKIだから、来年ネコフェスに出れるように最後にこの曲を!」
と言って演奏されたのは「瞬きをしない猫」。アルカラのイメージに合わせた選曲というあたりは流石だが、短い持ち時間の最後にやる短い曲という意味合いでの選曲でもあったんじゃないだろうか。
しかし先週のMURO FESもそうだが、もはやベテランというキャリアや立場、さらには根強いファンベースを築いているというのを考えると、出る必要がないとすら思える(実際にこのキャリアの他のバンドは出てない)ようなイベントやフェスにも未だにガンガン出ていくストレイテナーの姿勢には本当に頭が下がる思いしかない。そこには、まだまだ自分たちの音楽が届いていない、でも届けたいという人たちがたくさんいるから、というのもあると思うが。
1.The World Record
2.Alternative Dancer
3.From Noon Till Dawn
4.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
5.DAY TO DAY
6.シーグラス
7.瞬きをしない猫
シーグラス
https://youtu.be/7Gg1PvKYF4c
18:25~ cinema staff [NYAN☆NYAN STAGE]
リハの段階から曲をガンガン演奏していた、cinema staff。アルバムのリリースツアーを終えたばかりという絶好のタイミングでの出演である。
メンバーが登場すると、轟音サウンドを発する中、三島(ベース)が
「岐阜県から来ました、cinema staffというバンドです」
と言って「pulse」から飯田(ボーカル&ギター)は年数を経ても全く変わることのない瑞々しい声で曲を真っ直ぐに届け、髪型こそパーマがかかったが見た目は永遠に幼いままなんじゃないかとすら思えてくる辻(ギター)も「そんなところまで行くのか」と思ってしまうくらいにステージの端から端までを動き回りながら演奏するという躍動感溢れるパフォーマンスを見せてくれる。
新作のツアー直後なだけに新作の曲でまとめてきながらも、「great escape」などのわかりやすいヒット曲ではなく、「希望の残骸」も挟んでくるというあたりは流石に普段からライブをやりまくって生きているバンドである。
「辻君はいつも稲村さんの後ろをついている舎弟みたいな感じで可愛がってもらってるんですけど、九州全県とか北海道とか、台湾から沖縄まで、アルカラとは本当にいろんなところで一緒にライブをやってきたし、連れて行ってもらったんですけど、全然関東でのライブに呼んでくれないんで、地方の友達要員なのかと思ってました(笑)」
と飯田が自虐的にアルカラへの感謝を告げると、最新作のタイトル曲「熱源」を演奏し、三島が「あと1曲!」と言うが、尺的にはまだ2曲くらいできる時間あるんじゃないか?と思っていたら、最後に演奏されたのは新作の最後に収録されていた、壮大な「僕たち」。まるで一つの物語のエンディングシーンであるかのような曲だが、この曲でバンドは「熱源」に終止符を打ち、また新たな季節に突入していく。バンドのメインコンポーザーである三島は悩んでいることも多かったらしいが、このバンドはこれからも変わらないような気がしている。
リハ1.西南西の虹
リハ2.into the green
リハ3.sourvenir
1.pulse
2.エゴ
3.希望の残骸
4.熱源
5.僕たち
pulse
https://youtu.be/LjtLq1Qy3nc
19:05~ 9mm Parabellum Bullet [KUDAKENEKO STAGE]
残響レコードの後輩であるcinema staffからバトンを受け取ったのは、先輩の9mm。こちらも今月最新作「BABEL」のツアーを終えたばかりというタイミング。
この日は出演者に9mmのサポートメンバーとしてステージに立ったことのあるギタリストが集結した日でもあったが、この日はインビジブルマンズデスベッドとして出演したHERE・武田を加えての4人編成。なのでツアーの時のようにかみじょうのドラムセットが前に出ることはない通常通りのセッティング。
いきなりキメ連発の「ガラスの街のアリス」から最新シングル「サクリファイス」と「BABEL」期の曲が続くのだが、もうこの2曲を聴いただけで、9mmが滝を欠いてから陥っていた不安や物足りなさから完全に脱却したことがわかる。不完全な状態には変わりないが、その不完全な状態での究極進化系と言ってもいい状態にバンドが達している。それは間違いなく「BABEL」とそのツアーによってもたらされたものである。
「ハートに火をつけて」から間髪入れずに「Cold Edge」に突入するというツアーでもやっていたアレンジを4人編成でも完璧にやってみせると、
「「BABEL」を出した時にいろんな人がコメントをくれたんだけど、稲村さんが1番好きだってコメントをくれた曲をやります」
と言って演奏されたのは「バベルのこどもたち」。まさかこの持ち時間でこの曲が聴けるとは思っていなかっただけに、これはこの曲を好きだという渋い趣味を持った稲村に感謝である。
サポートの武田を卓郎が紹介すると、その武田がギターを立てるようにして弾きまくる「Black Market Blues」でこの会場にいる全員を仲間入りさせ、「Everyone~」では武田だけではなくかみじょうまでもコーラスを務めるという、滝がいないからこそ全員が一体となって、自分ができる最大限の力と技術を結集してバンドのサウンドを構築していく。
そして最後はやはり大合唱が響いた「新しい光」。演奏を終えると卓郎と和彦が丁寧に観客に手を振ったり礼をしたりしてからステージを去ったが、満足度が高くていつもより短くしたらしく、後に稲村にそこを突っ込まれていた。
去年の夏から今年の春にかけて、9mmはフェスやイベントではなかなか苦しい戦いを強いられてきた。やれる曲も限られていたし、そのやり方も不完全な状態というのがあからさまに出てしまっていた。しかしながら今年の夏は違う。不完全な状態である中での新しい形をバンドがしっかりと見つけ、それを構築してきたから。そう考えるとそのきっかけとなった「BABEL」は9mmにとって再生の作品のようだが、これは再生ではない。この形の、新しい9mmの始まりの作品なのだ。今年の夏はその新しい9mmをワンマンに来る人たち以外にも見せていく場所。去年まで以上にフェスで9mmを見るのが楽しみだし、これで滝が戻ってきたら本当にとんでもないことになる予感しかない。
リハ.Discommunication
1.ガラスの街のアリス
2.サクリファイス
3.ハートに火をつけて
4.Cold Edge
5.バベルのこどもたち
6.Black Market Blues
7.Everyone is fightning on this stage of lonely
8.新しい光
サクリファイス
https://youtu.be/CVNy1p3CrVM
20:05~ folca [NYAN☆NYAN STAGE]
NYAN☆NYAN STAGEのトリは、アルカラの地元である神戸の直属の後輩バンドである、folca。
「俺たちがfolcaという名前で初めてライブをやった時、東京で初めてライブをやった時…大事な時にはいつだって隣にアルカラがいた。アルカラがいたから俺たちはここに立ててます。アルカラの一番弟子、folcaという日本のロックバンドです!」
と山下(ボーカル&ギター)による、アルカラへの愛がダダ漏れしまくっている熱いMCで幕を開けると、サウンドも完全にそのアルカラへの想いが乗りまくった熱いものになっている。(そもそもが熱いストレートなギターロックバンドであるが)
しかしながらcinema staffやtricotというバンドがいながらも、なぜこのステージに出ている中で1番無名であると思われるこのバンドがこのステージのトリで、アルカラの直前という物凄く大事なスロットに置かれたのか。それはメンバーの
「俺たちがアルカラを1番大好きだー!」
と思わずステージから叫んでしまうくらいの熱い気持ちがあったから。それがしっかりと音と演奏に乗っかっていたから、この重要な位置でも全く違和感がなかった。奇しくもこの日、このバンドが初ライブを行ってから9周年にあたる日であったという。アルカラの下上は
「とりあえず10年を超えろ」
という言葉を送ったらしいが、
「これからも、ジジイになってもずっと一緒にいよう!」
という言葉と、演奏を終えるとメインステージにいるアルカラのメンバーに全員が手を振る姿とアルカラのメンバーがそれに応える姿からは、このまま一緒にお互いの記念の年を迎えていくんだろうな、と思えた。
そして9mmのツアーにサポートメンバーとして参加していたギターの為川は本当に卓郎によく似ている。髪型以外は。
1.vision
2.シリアスミステリアス
3.3:04
4.キミのせい
5.クレイジーショータイム
6.Strain
Strain
https://youtu.be/PATSksmErGo
20:45~ アルカラ [KUDAKENEKO STAGE]
そしてすでにこの日随所で活躍してきたアルカラが自身の手で1日を締めるために登場。folcaのライブ中からステージにスタンバイしていたが、サウンドチェックで「アブノーマルが足りない」を演奏すると、まだ時間前にもかかわらず
「もうこっちは準備できたんで、行きましょう!」
とスタッフに告げ、だいぶ巻いた状態でリリースされたばかりのアルバム「KAGEKI」からの「3017」「さすらい」という新曲を連発するスタートとなったのだが、リリースされたばかりとは思えないくらいのライブでの練り上げられっぷり。そして一音出しただけでわかる音圧の違いからはこのバンドが間違いなくこの日のベストアクトをかっさらっていくのだろうなと思える。その音にはこの日の出演者やスタッフの想いが全て乗っかっているから。
「半径30cmの中を知らない」で凄まじい盛り上がりを生み出すと、ここで早くもスペシャルゲストである相川七瀬を
「俺たちの時代の歌姫にしてSweet Emotion、トラブルメイカー!」
と巧みに曲のタイトルを使った紹介でステージに招き入れ、彼女の代表曲である「BREAK OUT!」を演奏し、コーラスでは大合唱が起こる。若い人からしたら全然知らない存在かもしれないが、この日の客席のリアクションからはこの人の音楽がど真ん中の世代である人が多いことがよくわかる。それは自分もそうだが。
しかしながら今こうして改めて聴くと、相川七瀬の曲は実にハードロック色が強い。現在の音楽から比べると決してテンポが速いわけではないのだが、こういう自身の音楽にはないような要素の曲も軽々と演奏できてしまうアルカラのメンバーの技術の高さを改めて感じさせる。
稲村が相川七瀬を「七瀬たん」と呼び、バンドの楽曲「夢見る少女でいたい」が相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」が元ネタであることを改めて相川七瀬と観客に説明すると、一生のお願いを三回分も使い(稲村いわく「前前前世っていう曲があるんだから来来来世まで…」という言い訳)、「夢見る少女でいたい」と「夢見る少女じゃいられない」の合体バージョン曲「夢見る少女でいるのかい?いないのかい?」を一夜限りのコラボ。
「夢見る少女じゃいられない」で始まり、2コーラス終えると「夢見る少女でいたい」になり、最後に再び「夢見る少女じゃいられない」に戻るという組曲的な構成だが、まさかこの曲をライブで聴く日が来るなんて、リアルタイムで聴いていた小学生の頃には全く思ってもみなかった。近年はミュージカルなどで活躍している相川七瀬の声も当時の攻撃的なイメージよりは少し穏やかになった気もするが、未だにバリバリの現役感を感じさせた。
そんな一夜限りのコラボを終えると相川七瀬を送り出し、後半は15周年イベントならではの初期の曲が続く。
「だからそばにいて」
という近年のアルカラの曲と比べるとあまりにストレートな歌詞の「はてない」で稲村の声の伸びの良さを堪能させると、ラストはエモーションが炸裂する「メランコリア」で、最新と初期というこれまでの15年間の活動を一直線につないでみせた。
アンコールにすぐさまメンバーが登場すると、この後にやる曲がDAMというカラオケの機種の映像に使われることを発表し、だからというわけではないだろうが、稲村がマイクを客席に預けまくって大合唱となったのは「キャッチーを科学する」。すでにリリースからかなり年月が経っている曲ではあるが、こうしてみんなで歌うと曲の新たな面-それはこうしてたくさんの人で思いっきり歌えるタイトル通りにキャッチーさとアンセム性を持った曲-に気づく。
最後の曲をやる前に、稲村が最も15年間で感謝を告げたい人として挙げたのが、神戸ART HOUSE、稲毛K's DREAM、渋谷O-Crestというゆかりの深いライブハウスの店長たち。そこにこそ、このイベントがライブハウスで開催された理由と意味がある。アルカラの人脈を持ってすれば、ネコフェスもこのフェスももっと大きな会場でやることだってできるはず。(それこそ交流のある[Alexandros]くらいのバンドだって呼ばれたら出るはず)
でもアルカラがやるならライブハウスでなくてはいけなかった。それはアルカラが紛れもなくライブハウスから出てきたバンドであり、今もライブハウスで生きて、生活しているバンドだからである。
そしてラストの「交差点」ではバンドのマスコットキャラのくだけねこもステージに登場し、その間に稲村はこの日のトークコーナーでも話題になっていた女装姿に。もはや挟むのが当たり前になりつつあるLUNA SEA「ROSIER」も稲村は歌い上げると、曲終わりでメンバー全員がぴたりと静止し、
「このまま幕を閉じて終わらせてください」
とスタッフにお願いするも、そもそも幕が用意されていなかったので幕が閉じることなくメンバーがぞろぞろとステージから去っていくというなんとも最後にしては締まりの悪いエンディング。しかしこの方がアルカラらしいというか、なんというか。
これだけライブバンドが集った中でも、アルカラはやはりズバ抜けていた。それはアルカラがこうしたフェスのトリの時に、仲間たちの力を自分たちの力にできる、ひたすらに人間と向き合いながら15年続けてきたバンドだから。そこには普段から小さいライブハウスに客として足を運び、フェスでトリの時でも誰よりも早く会場入りして出演者のライブをずっと見て、CDリリース時には全国のCDショップをひたすら周りまくるという音楽と音楽を愛する人を愛し続けてきた、メンバーの人間性が本当によく出ている。
そして稲村は中盤、MCで
「気付いたら15年経ってた。でもまだまだドキドキすること、ワクワクすること、楽しいことがある。それをただ待ってるんじゃなくて、自分で捕まえに行きたい」
と実に真面目な顔で話していた。普段はおちゃらけたりするときも多いが、この言葉こそアルカラの活動理念だと思うし、こうした言葉が聞けるんなら、アルカラはまだまだ面白いことをたくさんやってくれるはず。ロック界の奇行士であり、もはや日本のライブハウスシーン最大の良心と言っていいバンドだ。
リハ.アブノーマルが足りない
1.3017
2.さすらい
3.半径30cmの中を知らない
4.BREAK OUT! w/相川七瀬
5.夢見る少女でいるのかい?いないのかい? w/相川七瀬
6.如月に彼女
7.はてない
8.メランコリア
encore
9.キャッチーを科学する
10.交差点
如月に彼女
https://youtu.be/n6M29scDZOc
こうしたフェス形式の場合、いかにこの後のライブハウスのワンマンに人を連れてこれるか、というのが重要だが、9mm以外はフェスでは見るけどワンマンはご無沙汰してるバンドが多い。でも今日見たらワンマン行きたくなった。テナーもtricotもバクホンも、もちろんアルカラも。そしてそれこそアルカラがこうしたフェスやイベントで最も目指しているところだし、仲間たちは渾身のパフォーマンスでその気持ちに応えてくれた。つまり、「KAGEKI」は音楽と愛に溢れた最高の1日だったということ。
Next→ 8/5,6 ROCK IN JAPAN FES.2017 @国営ひたち海浜公園
今年めでたく活動15周年を迎え、所縁のあるアーティストを集めたイベント「KAGEKI」を開催。会場はもちろんライブハウスの新木場STUDIO COAST。ちなみに直前にはイベントと同タイトルのフルアルバムもリリースされている。
メインの「KUDAKENEKO STAGE」、隣接した「NYAN☆NYAN STAGE」、ロビーの端(ワンマンでは物販で使ってるエリア)の「KAGEKI STAGE」の3ステージという、COASTの場内をフルに使った構成は、アルカラが看板を背負っているフェス「MURO FES」の去年のステージ構成と同じ。(今年は出演しなかったが)
13時にKAGEKI STAGEにてオープニングアクトのインビシブルマンズデスベッドがスタートしたのだが、整理番号が遅すぎたせいで間に合わず。しかし会場内には「KAGEKI」のアルバムのジャケットを模した撮影ブースや、バンドのマスコットキャラである「くだけねこ」とハローキティがコラボしたグッズが販売されるなど、あくまでライブハウス規模でありながらフェスの様相。
13:30~ tricot [NYAN☆NYAN STAGE]
アルカラメンバーによる、「KAGEKI」のあいうえお作文(オチの田原の「キャメロン・ディアス」は意味不明)での開会宣言の後に、T.M.Revolution「HIGH PRESSURE」の「カゲキにさぁ行こう」のフレーズ部分のリミックスジングルで登場した、このステージのトップバッター、tricot。
完全に新作モードに突入していることがわかる、このバンドのイメージである変拍子を生かしたキメ連発というよりは隙間を生かしたバンドサウンド(でもやっぱり轟音)を轟かせながら、キダ(ギター)はオフマイク状態で
「アルカラ、15周年おめでとうー!」
と叫ぶと、観客とのコール&レスポンスやコーラスの合唱を経て、一気にサウンドはアグレッシブになっていき、得意の変拍子とキメも連発され、キダもヒロミ(ベース)もブンブン頭を振りまくりながら演奏。
「今日、楽屋のtricotの綴りがtoricotになってて間違ってたんですけど(笑)、稲村さんがすぐに直してくれました(笑)
アルカラはネコフェスもやってるし、ツアーではいろんなバンドが対バンに出ている。アルカラを好きなバンドが本当にたくさんいる中で、今日の出演者の中に入れて本当に嬉しいです」
とイッキュウ(ボーカル&ギター)がアルカラへの感謝を笑いも交えながら告げ、「節約家」でさらに轟音の中に包みながら、最後は「メロンソーダ」で爽やかにアルカラの15周年を祝った。
最新アルバム「3」で見せた新たなtricotらしさと、イッキュウのパーマをかけた髪型が新鮮さを感じさせてくれるトップバッターとしてのアクトだった。
1.DeDeDe
2.よそいき
3.アナメイン
4.トーキョーバンパイアホテル
5.節約家
6.メロンソーダ
トーキョーバンパイアホテル
https://youtu.be/nQd-Nj4eH48
14:10~ BIGMAMA [KUDAKENEKO STAGE]
メインステージである「KUDAKENEKO STAGE」のトップバッターはBIGMAMA。ネコフェスなどでも割とおなじみの存在であるが、そこにはこのバンドのヴァイオリンの東出とアルカラの稲村が昔からの知り合いというのもあるのだろう。
ベートーヴェン「第九」のSEで登場しただけに、てっきり「No.9」で始まるものかと思いきや、金井が
「ご案内しましょう、新世界へ!」
と言っていきなりの「荒狂曲”シンセカイ”」では早くもダイバーが続出。
しかしながらメデューサをモチーフにした最新アルバム収録の「BLINKSTONEの真実を」からは金井がギターを置いて歌唱に専念し、アルバムのタイトル曲である「ファビュラ・フィビュラ」ではこのバンドの持つ爽やかさを一切感じさせない、重くラウドなサウンドになるという新モードへ。
安井のゴリゴリのベースが否が応でも踊らせる「Swan Song」から、
「みなさんにとっての特別な存在になりたい!」
と言っての「SPECIALS」でコーラスの分厚さも含めてメンバーの一体感がさらに増すと、
「スペシャルゲストです!」
と言ってステージに招かれたのは、アルカラ・稲村。ボーカルとしてではなくヴァイオリンとしてのコラボで、東出との同門ツインヴァイオリンが実現し、EDMの要素を取り入れたこの曲の表情をさらに豊かにするのだが、間奏部分で稲村が柿沼と東出とともにリアドのドラムセットに集まって演奏する様は昨日今日の付き合いではなく、長い時間をともにしてきた両者だからこそという絆を感じさせる。
稲村が出番を終えてもなおステージ袖でバンドの演奏を見守るという愛の深さを見せる中、金井がアコギを手にし、東出がキーボードという編成で演奏されたのは、最新シングル「DOPELAND」収録の「CRYSTAL CLEAR」。
「僕らの愛に一点の曇りなし」
と歌われる、金井いわく「BIGMAMA最大かつ最高のラブソング」だが、この曲が作家・住野よるによるバンドへの掌編小説から生まれたという経緯を考えると、かつてのメロディックパンク路線からかなり距離のある音楽性にシフトしたのも実に納得がいく。自身の言葉や想いを最もしっかり伝えるべきサウンドをバンドが選んだ結果がこの曲のようなサウンドになっている。それは初期からのファンからしたら少し残念なことでもある(実際にファンはかなり入れ替わっている)が、10月の武道館ワンマンは今までこのバンドの音楽に触れてきた全ての人を満足させてくれるようなライブになるんだろうか。
1.荒狂曲”シンセカイ”
2.BLINKSTONEの真実を
3.ファビィラ・フィビュラ
4.Swan Song
5.SPECIALS
6.MUTOPIA w/アルカラ稲村
7.CRYSTAL CLEAR
CRYSTAL CLEAR
https://youtu.be/sursVprvwl0
15:05~ モーモールルギャバン [NYAN☆NYAN STAGE]
メンバー全員がサウンドチェックで音を出す中、
「俺が今日1番過激にKAGEKIって言ってやるから見てろー!」
と言ったゲイリー・ビッチェが完全にIKKOのような口調で「KAGEKI」と言ってから本番を迎えた、モーモールルギャバン。
グルーヴに特化しまくった「細胞9」からスタートすると、
「KAGEKIっていうタイトルのイベントの通りに過激な3人です!」
という通りにメンバーの出で立ちはパンツ一丁のゲイリーを筆頭に過激そのもの。
しかしながら初期から最新までを横断する楽曲に貫かれているテーマは、ゲイリーの心境そのものとでもいうような、「情けない男の悲哀」というもの。そのテーマが乗るサウンドは変拍子を多用したもので、そこには直前にこのステージに出たtricotとの相似性も感じられるし、ともに京都を拠点に活動してきたバンドならではの地域性も感じさせる。
ゲイリーがT・マルゲリータ(ベース)を「T.M.Revolution!」と紹介した「夢ならば覚めてくれ」ではゲイリーがサングラスを外して本気モードになり、ラストのユコ・カティ(キーボード)とのツインボーカルによる定番の「サイケな恋人」では
「BIGMAMAのファンも全員言えやコラー!」
とゲイリーが叫んで、会場一体での「パンティー」コールが起こり、ゲイリーはパンツを脱ぐ。(いつものようにもう1枚くまモンのパンツを穿いている)
その後は明らかに曲のテンポが上がりまくり、ユコは銅羅を連打しながら、最後にはアウトロ部分でギターまでも弾き倒しまくるという、「見た目は1番まともなメンバーだけど、ライブを見たら全然まともじゃないのがわかる」女性メンバーの面目躍如というか、歳を重ねてさらにこの辺りはカオスになってきている。
それにしてもひたすらに「パンティー」と叫ぶのは完全にバカバカしい行為でしかないのに、なんでこんなにこのバンドのライブとなると泣けてくるんだろうか。それはこのバンドがデビュー時から持っている魔法のような力であるが。
1.細胞9
2.ガラスの三十代
3.Dr.PANTY
4.クレイジーベイビー
5.夢ならば覚めてくれ
6.サイケな恋人
ガラスの三十代
https://youtu.be/XxhUgdWqMC4
15:45~ THE BACK HORN [KUDAKENEKO STAGE]
BIGMAMA、モーモールルギャバンという流れは祝祭的な一体感を生み出していたが、このバンドのSEが流れるだけでその雰囲気は一変する。
それはメンバーが登場していきなり「ブラックホールバースデイ」を投下するというあたりにも現れているが、冒頭から栄純を始め、メンバー全員が凄まじいテンション。近年髪を短くしている光舟も演奏中に腕を高く掲げたりという観客をより盛り上がるためのようなアクションが目立つ。
もはや完全にベテランの域に入っているバンドだが、未だにMCが上手くならないことをTOSHI-LOWなどにイジられている松田は最低限ではあるが特にたどたどしさは感じない言葉でアルカラの15周年を祝い、山田の力強いボーカルがバンドの演奏を引っ張るカップリング曲「導火線」、そしてイントロでため息にも似た歓声が上がったのはバンド屈指の名バラード「美しい名前」。とかく激しい方向の曲にスポットライトが当たりがちだし、それはこのバンドの持つ最大の魅力でもあるが、それだけのバンドだったらこのバンドはこんなにも長い間、日本のロックシーンの最前線を走っていない。「未来」にしろこの曲にしろ「世界中に花束を」にしろ、バラード曲がどれも名曲であり、それをこうしてライブでやり続けてきたからこそ、ただ激しいだけのバンドではない存在でいることができたのだ。
山田が髪の一部分だけを金に染めた栄純のことを
「志茂田景樹を意識している(笑)」
とイジると、
「太佑…いや、稲Pとは…。俺たち稲P・山Pでやってるので(笑)」
という全くキャラに合わない衝撃のカミングアウトを果たし、最新シングル「孤独を繋いで」でメンバーの力強いコーラスを響かせると、最後は必殺の「コバルトブルー」から、場内大合唱となった「刃」という鉄板の締め。メンバーも実に満足そうだったが、見ているこちらも短い時間でも大満足のアクトだった。もはや貫禄すら感じるというか。山Pは「刃」でマイクを落として歌が飛ぶという可愛らしい一面も見せてくれたが。
1.ブラックホールバースデイ
2.戦う君よ
3.導火線
4.美しい名前
5.孤独を繋いで
6.コバルトブルー
7.刃
孤独を繋いで
https://youtu.be/5_oTpKahrRo
16:45~ 話をしよう [NYAN☆NYAN STAGE]
これは出演者の名前ではなく、アルカラの15周年を記念して出演者を招いてトークをしようというコーナーである。
「司会が一切向いていない」
と自認する稲村と、稲村とともにゲーム実況Youtubeをしている高木誠司(この日KAGEKI STAGEに出演)の2人による司会で、まずは9mm卓郎とBIGMAMA金井を招いてトークを行うも、マイクが3本しかないため、必然的に高木はマイクを取り上げられてしまい、いる意味が全くなくなってしまうという可哀想な状態に(笑)
それぞれの「KAGEKIな話」として、
稲村「酔っ払ったら、なぜかエレベーターの中で血塗れになっていた」
金井「新宿の全く知らないカラオケのエレベーターの中で倒れていた」
卓郎「井の頭線の各駅停車に乗っていたら、女子高生2人組が「神泉駅っていらなくね~?」って過激なことを言っていた」
というエピソードを明かすが、稲村は人前で言えないレベルのネタがたくさんあるらしい。トークが終わるとそれぞれから観客に渡すためのプレゼントをもらう。
続いてはtricotのイッキュウとcinema staffの辻。
イッキュウ「去年、下北沢で対バンした時に、稲村さんが女装したら、ちん毛が見えていた(笑)」
辻「前に稲村さんと一緒に沖縄の洞窟みたいな居酒屋に行ったら、大学生くらいの裸の男の集団がいて、なぜか尻にキスしまくった(笑)」
というKAGEKIトーク。
このあと、稲村と高木がファミコンの「魔界村」と「ドラえもん」のゲーム中のBGMを口ずさみまくるという時間の使い方をしてしまったため、時間が押しまくった上に、予定されていた尾形回帰(HERE。今日はインビシブルマンズデスベッドとして出演)が忘れ去られてしまい、この時間のためだけにHEREの派手な衣装を用意してきた尾形に
「袖でこんなに派手な衣装着てるのに忘れないでくださいよ!」
と言われ、ゲームBGMをやったせいでKAGEKIな話をする時間すらもなくなってしまうという散々な扱いに(笑)
さらにはシークレットゲストとして→SCHOOL←のヤノもプレゼントを持って登場するも、出演者でもない上に基本的に誰にも知られてないという、こちらも散々な扱いに。結局全員のプレゼントはじゃんけん大会の結果、勝者1名に全て渡されるという豪華だが雑な展開に終わった。
17:25~ ストレイテナー [KUDAKENEKO STAGE]
そんな実にやりにくい空気の中でもいつも通りに、ひなっちのゴリゴリのベースによる「The World Record」で自分たちの空気に塗り替えてみせた、ストレイテナー。
「Alternative Dancer」も含めて序盤は割とゆったりとした立ち上がりだったが、「From Noon Till Dawn」ではホリエが
「新木場まだまだ行けんのか!」
と曲中に叫び、弾き語り的なイントロを追加した4人バージョンでの「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」で一気にソリッドかつ疾走感溢れるバンドサウンドが全開に。かつてのファンの人気投票でも1位になった曲だけに、この曲が聴けて嬉しかった人も多かったはず。
「稲村君、酒を飲んでない時のステージ裏ではめっちゃ静かになりがち(笑)」
というホリエのアルカラあるあるも披露され、「DAY TO DAY」からは再びひなっちのベースがバンドのグルーヴ引っ張っていき、夏が始まったばかりだというのに、
「今年最後の海へ向かう 夕焼けが白いシャツを染める」
という歌詞がなんとも夏の終わりを感じさせてしまう「シーグラス」へ。今年は夏の野外で何回この曲を聴けるだろうか。
「ネコフェスに出たかったんですけど、今日はKAGEKIだから、来年ネコフェスに出れるように最後にこの曲を!」
と言って演奏されたのは「瞬きをしない猫」。アルカラのイメージに合わせた選曲というあたりは流石だが、短い持ち時間の最後にやる短い曲という意味合いでの選曲でもあったんじゃないだろうか。
しかし先週のMURO FESもそうだが、もはやベテランというキャリアや立場、さらには根強いファンベースを築いているというのを考えると、出る必要がないとすら思える(実際にこのキャリアの他のバンドは出てない)ようなイベントやフェスにも未だにガンガン出ていくストレイテナーの姿勢には本当に頭が下がる思いしかない。そこには、まだまだ自分たちの音楽が届いていない、でも届けたいという人たちがたくさんいるから、というのもあると思うが。
1.The World Record
2.Alternative Dancer
3.From Noon Till Dawn
4.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
5.DAY TO DAY
6.シーグラス
7.瞬きをしない猫
シーグラス
https://youtu.be/7Gg1PvKYF4c
18:25~ cinema staff [NYAN☆NYAN STAGE]
リハの段階から曲をガンガン演奏していた、cinema staff。アルバムのリリースツアーを終えたばかりという絶好のタイミングでの出演である。
メンバーが登場すると、轟音サウンドを発する中、三島(ベース)が
「岐阜県から来ました、cinema staffというバンドです」
と言って「pulse」から飯田(ボーカル&ギター)は年数を経ても全く変わることのない瑞々しい声で曲を真っ直ぐに届け、髪型こそパーマがかかったが見た目は永遠に幼いままなんじゃないかとすら思えてくる辻(ギター)も「そんなところまで行くのか」と思ってしまうくらいにステージの端から端までを動き回りながら演奏するという躍動感溢れるパフォーマンスを見せてくれる。
新作のツアー直後なだけに新作の曲でまとめてきながらも、「great escape」などのわかりやすいヒット曲ではなく、「希望の残骸」も挟んでくるというあたりは流石に普段からライブをやりまくって生きているバンドである。
「辻君はいつも稲村さんの後ろをついている舎弟みたいな感じで可愛がってもらってるんですけど、九州全県とか北海道とか、台湾から沖縄まで、アルカラとは本当にいろんなところで一緒にライブをやってきたし、連れて行ってもらったんですけど、全然関東でのライブに呼んでくれないんで、地方の友達要員なのかと思ってました(笑)」
と飯田が自虐的にアルカラへの感謝を告げると、最新作のタイトル曲「熱源」を演奏し、三島が「あと1曲!」と言うが、尺的にはまだ2曲くらいできる時間あるんじゃないか?と思っていたら、最後に演奏されたのは新作の最後に収録されていた、壮大な「僕たち」。まるで一つの物語のエンディングシーンであるかのような曲だが、この曲でバンドは「熱源」に終止符を打ち、また新たな季節に突入していく。バンドのメインコンポーザーである三島は悩んでいることも多かったらしいが、このバンドはこれからも変わらないような気がしている。
リハ1.西南西の虹
リハ2.into the green
リハ3.sourvenir
1.pulse
2.エゴ
3.希望の残骸
4.熱源
5.僕たち
pulse
https://youtu.be/LjtLq1Qy3nc
19:05~ 9mm Parabellum Bullet [KUDAKENEKO STAGE]
残響レコードの後輩であるcinema staffからバトンを受け取ったのは、先輩の9mm。こちらも今月最新作「BABEL」のツアーを終えたばかりというタイミング。
この日は出演者に9mmのサポートメンバーとしてステージに立ったことのあるギタリストが集結した日でもあったが、この日はインビジブルマンズデスベッドとして出演したHERE・武田を加えての4人編成。なのでツアーの時のようにかみじょうのドラムセットが前に出ることはない通常通りのセッティング。
いきなりキメ連発の「ガラスの街のアリス」から最新シングル「サクリファイス」と「BABEL」期の曲が続くのだが、もうこの2曲を聴いただけで、9mmが滝を欠いてから陥っていた不安や物足りなさから完全に脱却したことがわかる。不完全な状態には変わりないが、その不完全な状態での究極進化系と言ってもいい状態にバンドが達している。それは間違いなく「BABEL」とそのツアーによってもたらされたものである。
「ハートに火をつけて」から間髪入れずに「Cold Edge」に突入するというツアーでもやっていたアレンジを4人編成でも完璧にやってみせると、
「「BABEL」を出した時にいろんな人がコメントをくれたんだけど、稲村さんが1番好きだってコメントをくれた曲をやります」
と言って演奏されたのは「バベルのこどもたち」。まさかこの持ち時間でこの曲が聴けるとは思っていなかっただけに、これはこの曲を好きだという渋い趣味を持った稲村に感謝である。
サポートの武田を卓郎が紹介すると、その武田がギターを立てるようにして弾きまくる「Black Market Blues」でこの会場にいる全員を仲間入りさせ、「Everyone~」では武田だけではなくかみじょうまでもコーラスを務めるという、滝がいないからこそ全員が一体となって、自分ができる最大限の力と技術を結集してバンドのサウンドを構築していく。
そして最後はやはり大合唱が響いた「新しい光」。演奏を終えると卓郎と和彦が丁寧に観客に手を振ったり礼をしたりしてからステージを去ったが、満足度が高くていつもより短くしたらしく、後に稲村にそこを突っ込まれていた。
去年の夏から今年の春にかけて、9mmはフェスやイベントではなかなか苦しい戦いを強いられてきた。やれる曲も限られていたし、そのやり方も不完全な状態というのがあからさまに出てしまっていた。しかしながら今年の夏は違う。不完全な状態である中での新しい形をバンドがしっかりと見つけ、それを構築してきたから。そう考えるとそのきっかけとなった「BABEL」は9mmにとって再生の作品のようだが、これは再生ではない。この形の、新しい9mmの始まりの作品なのだ。今年の夏はその新しい9mmをワンマンに来る人たち以外にも見せていく場所。去年まで以上にフェスで9mmを見るのが楽しみだし、これで滝が戻ってきたら本当にとんでもないことになる予感しかない。
リハ.Discommunication
1.ガラスの街のアリス
2.サクリファイス
3.ハートに火をつけて
4.Cold Edge
5.バベルのこどもたち
6.Black Market Blues
7.Everyone is fightning on this stage of lonely
8.新しい光
サクリファイス
https://youtu.be/CVNy1p3CrVM
20:05~ folca [NYAN☆NYAN STAGE]
NYAN☆NYAN STAGEのトリは、アルカラの地元である神戸の直属の後輩バンドである、folca。
「俺たちがfolcaという名前で初めてライブをやった時、東京で初めてライブをやった時…大事な時にはいつだって隣にアルカラがいた。アルカラがいたから俺たちはここに立ててます。アルカラの一番弟子、folcaという日本のロックバンドです!」
と山下(ボーカル&ギター)による、アルカラへの愛がダダ漏れしまくっている熱いMCで幕を開けると、サウンドも完全にそのアルカラへの想いが乗りまくった熱いものになっている。(そもそもが熱いストレートなギターロックバンドであるが)
しかしながらcinema staffやtricotというバンドがいながらも、なぜこのステージに出ている中で1番無名であると思われるこのバンドがこのステージのトリで、アルカラの直前という物凄く大事なスロットに置かれたのか。それはメンバーの
「俺たちがアルカラを1番大好きだー!」
と思わずステージから叫んでしまうくらいの熱い気持ちがあったから。それがしっかりと音と演奏に乗っかっていたから、この重要な位置でも全く違和感がなかった。奇しくもこの日、このバンドが初ライブを行ってから9周年にあたる日であったという。アルカラの下上は
「とりあえず10年を超えろ」
という言葉を送ったらしいが、
「これからも、ジジイになってもずっと一緒にいよう!」
という言葉と、演奏を終えるとメインステージにいるアルカラのメンバーに全員が手を振る姿とアルカラのメンバーがそれに応える姿からは、このまま一緒にお互いの記念の年を迎えていくんだろうな、と思えた。
そして9mmのツアーにサポートメンバーとして参加していたギターの為川は本当に卓郎によく似ている。髪型以外は。
1.vision
2.シリアスミステリアス
3.3:04
4.キミのせい
5.クレイジーショータイム
6.Strain
Strain
https://youtu.be/PATSksmErGo
20:45~ アルカラ [KUDAKENEKO STAGE]
そしてすでにこの日随所で活躍してきたアルカラが自身の手で1日を締めるために登場。folcaのライブ中からステージにスタンバイしていたが、サウンドチェックで「アブノーマルが足りない」を演奏すると、まだ時間前にもかかわらず
「もうこっちは準備できたんで、行きましょう!」
とスタッフに告げ、だいぶ巻いた状態でリリースされたばかりのアルバム「KAGEKI」からの「3017」「さすらい」という新曲を連発するスタートとなったのだが、リリースされたばかりとは思えないくらいのライブでの練り上げられっぷり。そして一音出しただけでわかる音圧の違いからはこのバンドが間違いなくこの日のベストアクトをかっさらっていくのだろうなと思える。その音にはこの日の出演者やスタッフの想いが全て乗っかっているから。
「半径30cmの中を知らない」で凄まじい盛り上がりを生み出すと、ここで早くもスペシャルゲストである相川七瀬を
「俺たちの時代の歌姫にしてSweet Emotion、トラブルメイカー!」
と巧みに曲のタイトルを使った紹介でステージに招き入れ、彼女の代表曲である「BREAK OUT!」を演奏し、コーラスでは大合唱が起こる。若い人からしたら全然知らない存在かもしれないが、この日の客席のリアクションからはこの人の音楽がど真ん中の世代である人が多いことがよくわかる。それは自分もそうだが。
しかしながら今こうして改めて聴くと、相川七瀬の曲は実にハードロック色が強い。現在の音楽から比べると決してテンポが速いわけではないのだが、こういう自身の音楽にはないような要素の曲も軽々と演奏できてしまうアルカラのメンバーの技術の高さを改めて感じさせる。
稲村が相川七瀬を「七瀬たん」と呼び、バンドの楽曲「夢見る少女でいたい」が相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」が元ネタであることを改めて相川七瀬と観客に説明すると、一生のお願いを三回分も使い(稲村いわく「前前前世っていう曲があるんだから来来来世まで…」という言い訳)、「夢見る少女でいたい」と「夢見る少女じゃいられない」の合体バージョン曲「夢見る少女でいるのかい?いないのかい?」を一夜限りのコラボ。
「夢見る少女じゃいられない」で始まり、2コーラス終えると「夢見る少女でいたい」になり、最後に再び「夢見る少女じゃいられない」に戻るという組曲的な構成だが、まさかこの曲をライブで聴く日が来るなんて、リアルタイムで聴いていた小学生の頃には全く思ってもみなかった。近年はミュージカルなどで活躍している相川七瀬の声も当時の攻撃的なイメージよりは少し穏やかになった気もするが、未だにバリバリの現役感を感じさせた。
そんな一夜限りのコラボを終えると相川七瀬を送り出し、後半は15周年イベントならではの初期の曲が続く。
「だからそばにいて」
という近年のアルカラの曲と比べるとあまりにストレートな歌詞の「はてない」で稲村の声の伸びの良さを堪能させると、ラストはエモーションが炸裂する「メランコリア」で、最新と初期というこれまでの15年間の活動を一直線につないでみせた。
アンコールにすぐさまメンバーが登場すると、この後にやる曲がDAMというカラオケの機種の映像に使われることを発表し、だからというわけではないだろうが、稲村がマイクを客席に預けまくって大合唱となったのは「キャッチーを科学する」。すでにリリースからかなり年月が経っている曲ではあるが、こうしてみんなで歌うと曲の新たな面-それはこうしてたくさんの人で思いっきり歌えるタイトル通りにキャッチーさとアンセム性を持った曲-に気づく。
最後の曲をやる前に、稲村が最も15年間で感謝を告げたい人として挙げたのが、神戸ART HOUSE、稲毛K's DREAM、渋谷O-Crestというゆかりの深いライブハウスの店長たち。そこにこそ、このイベントがライブハウスで開催された理由と意味がある。アルカラの人脈を持ってすれば、ネコフェスもこのフェスももっと大きな会場でやることだってできるはず。(それこそ交流のある[Alexandros]くらいのバンドだって呼ばれたら出るはず)
でもアルカラがやるならライブハウスでなくてはいけなかった。それはアルカラが紛れもなくライブハウスから出てきたバンドであり、今もライブハウスで生きて、生活しているバンドだからである。
そしてラストの「交差点」ではバンドのマスコットキャラのくだけねこもステージに登場し、その間に稲村はこの日のトークコーナーでも話題になっていた女装姿に。もはや挟むのが当たり前になりつつあるLUNA SEA「ROSIER」も稲村は歌い上げると、曲終わりでメンバー全員がぴたりと静止し、
「このまま幕を閉じて終わらせてください」
とスタッフにお願いするも、そもそも幕が用意されていなかったので幕が閉じることなくメンバーがぞろぞろとステージから去っていくというなんとも最後にしては締まりの悪いエンディング。しかしこの方がアルカラらしいというか、なんというか。
これだけライブバンドが集った中でも、アルカラはやはりズバ抜けていた。それはアルカラがこうしたフェスのトリの時に、仲間たちの力を自分たちの力にできる、ひたすらに人間と向き合いながら15年続けてきたバンドだから。そこには普段から小さいライブハウスに客として足を運び、フェスでトリの時でも誰よりも早く会場入りして出演者のライブをずっと見て、CDリリース時には全国のCDショップをひたすら周りまくるという音楽と音楽を愛する人を愛し続けてきた、メンバーの人間性が本当によく出ている。
そして稲村は中盤、MCで
「気付いたら15年経ってた。でもまだまだドキドキすること、ワクワクすること、楽しいことがある。それをただ待ってるんじゃなくて、自分で捕まえに行きたい」
と実に真面目な顔で話していた。普段はおちゃらけたりするときも多いが、この言葉こそアルカラの活動理念だと思うし、こうした言葉が聞けるんなら、アルカラはまだまだ面白いことをたくさんやってくれるはず。ロック界の奇行士であり、もはや日本のライブハウスシーン最大の良心と言っていいバンドだ。
リハ.アブノーマルが足りない
1.3017
2.さすらい
3.半径30cmの中を知らない
4.BREAK OUT! w/相川七瀬
5.夢見る少女でいるのかい?いないのかい? w/相川七瀬
6.如月に彼女
7.はてない
8.メランコリア
encore
9.キャッチーを科学する
10.交差点
如月に彼女
https://youtu.be/n6M29scDZOc
こうしたフェス形式の場合、いかにこの後のライブハウスのワンマンに人を連れてこれるか、というのが重要だが、9mm以外はフェスでは見るけどワンマンはご無沙汰してるバンドが多い。でも今日見たらワンマン行きたくなった。テナーもtricotもバクホンも、もちろんアルカラも。そしてそれこそアルカラがこうしたフェスやイベントで最も目指しているところだし、仲間たちは渾身のパフォーマンスでその気持ちに応えてくれた。つまり、「KAGEKI」は音楽と愛に溢れた最高の1日だったということ。
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