MURO FES 2017 @お台場特設会場 7/23
- 2017/07/24
- 23:03
元TSUTAYA O-Crestの店長であるムロ氏が主催する野外フェス、MURO FES。かつては晴海埠頭に特設会場を作って開催されていたが、東京オリンピックの影響でその会場が使えなくなり、去年は新木場STUDIO COASTという屋内フェスになったが、今年はお台場の特設会場に移動し、2年ぶりの野外開催。
普段はO-Crestなどの小さいライブハウスを主戦場としているバンドのためのフェスだが、今年は前日にストレイテナーやandropというこのフェスの規模からしたら巨大な存在と言えるバンドも出演し、ラインアップに広がりが見えてきている中、この2日目は多方面で「濃い」ロックンロールバンドが居並んでいる。この辺りは狙ってのブッキングだと思われるが、なかなか他のフェスではここまでのメンツは揃わないという意味で実にMURO FESらしい。
去年までと同じ3ステージ構成で、メインの2つのステージである「RIGHT STAGE」と「LEFT STAGE」はトラックの荷台を使って隣り合わせに組まれたもので、これはかつての晴海埠頭で開催されていた時と同じ。そして敷地内の端っこ、入り口から1番遠いところにTENT STAGEが作られているが、これは思った以上に小さいステージ。
11:10~ KAKASHI [LEFT STAGE] (Opening Act)
この日のオープニングアクトは群馬からやってきた4人組バンド、KAKASHI。
実にMURO FESのオープニングに相応しい、エモーショナルなギターロックバンドで、サウンドも歌詞も真っ直ぐで熱いという点では、このフェスでの先輩であるircleやSUPER BEAVERに通じるところがある。
このフェスに出るのが夢だったということだが、
「ずっと一緒にやってきた仲間たちと同じステージに立てるっていう夢が今日叶いました!」
と熱いMCをすると、そのずっと一緒にやってきた仲間たちであろうHalo at 四畳半のメンバーらが自分のことのように嬉しそうな顔をしていた。これから、この叶えた夢はこのフェスの中でどこまで大きくなっていくだろうか。
1.違うんじゃないか
2.流星の中で
3.本当の事
4.ドラマチック
違うんじゃないか
https://youtu.be/jYFw2gBUWbE
11:35~ LUNKHEAD [RIGHT STAGE]
主催者であるムロ氏による挨拶のあと、早くも雨がパラつく中、トップバッターとして登場したのはLUNKHEAD。このフェスの出演者の中ではもはやベテランと言ってもいい存在である。
しかしながら「シンドローム」での斬れ味鋭いギターロックサウンドと、小高の歌声からはベテランらしさは一切感じさせず、むしろ未だにギラついている感すらある。ベースの合田は緑色の髪の毛にラメっぽい服という歳を経るごとに派手な出で立ちになっているが。
個人的にこのバンドの大名曲だと思っている、
「世界中の青を集めて」
というサビから始まる「インディゴ」という実に嬉しい選曲もありながらも、しっかりバンドとしての現在進行形も見せ、「うぇいうぇいうぇい」では夏の野外らしくタオルがグルグルと回る中、
「久しぶりのMURO FESです!若いバンドもたくさん出ていますが、LUNKHEADもまだまだ頑張っております!このフェスは横の繋がりが強いフェスですが、我々の次の対バンツアーにも昨日と今日このフェスに出ているバンドたちに出てもらうので、またライブハウスで会いましょう!」
と合田が告知をしてから最後のサビに突入し、「スモールワールド」までノンストップで走り抜けるという若々しさを見せた。
LUNKHEADは昔、お茶の間にも曲が流れまくった時期もあったし(カルビーのポテトチップスのCM曲に「夏の匂い」が使われていた)、もっとデカい場所に行ける予感もしていた。ただ、今だにそこへは至っていないが、このバンドにはまだまだ輝ける場所があるというのがライブを見るとわかる。それはメンバーや盟友との別れがあっても続けてきたからということも。その別れを経験したからこそ、もうバンドを辞めるという選択肢はないのかもしれない。
1.シンドローム
2.インディゴ
3.ユキシズク
4.うぇいうぇいうぇい
5.スモールワールド
インディゴ
https://youtu.be/fVPdBQHM8wk
12:05~ Brian the Sun [LEFT STAGE]
このフェス初出演となる、Brian the Sun。メンバーが登場すると、森良太が
「おい雨、今すぐ止め」
と言ってタイトル通りにスピード感溢れる「隼」からスタート。非常にわかりやすいというか、フェス仕様のセトリだったが、それは初出演のフェスであり、初めてライブを見る人が多いからというのもあったのかもしれない。実際、このバンドには美しいバラード曲も多数あるが、そうした曲は一切演奏されずに押しまくっていくが、アニメの主題歌になった「HEROES」ではやはりそれまで以上に無数の腕が客席から上がっていた。その光景からは、このバンドが本当に人気のあるアニメのテーマソングを担当し、そのハードルをしっかりと超えたということがわかる。
「あの建物、大阪にあるやつに似てるな。空中庭園があって、入るのに700円かかるやつ。大阪に来た際には是非とも」
というあまりにも緩すぎじゃない?というMCとは裏腹に、ラストの「ロックンロールポップギャング」では森が弾き語りのように最初のフレーズを歌ってからバンドの演奏に突入するというアレンジが施され、小川(ギター)も白山(ベース)も楽器を立てて、観客に見せつけるように演奏してみせた。
このバンドの持つ演奏力と、メロディの良さが短い時間でもしっかりと伝わるようなライブだった。
1.隼
2.パトスとエートス
3.HEROES
4.神曲
5.ロックンロールポップギャング
隼
https://youtu.be/5Ntsxpfq9hw
12:35~ go!go!vanillas [RIGHT STAGE]
サウンドチェックの段階でガンガン盛り上げまくっていた、go!go!vanillas。アルバムリリース直前というタイミングでこのフェス初出演である。
本番でメンバーが登場すると、
「あいにくの雨だけど、俺たちの幸運の星を聴いてくれ!」
と、打ち込みのピアノの音が流れる、アルバムのリード曲としてMVが公開されている(遊園地での一発撮り。必見)「ラッキースター」からスタートするのだが、かつてデビュー時からTHE BAWDIESの弟分的なバンドとしてロックンロールの看板を掲げてきたバンドとは思えないくらいの音楽性の広がりぶり。それはロックンロールバンドでありながらも様々な音楽を聴いて自身の音楽に昇華させているというこのバンドの音楽リスナーとしての幅の広さを感じさせる。
ゆとり世代と呼ばれてきた若者だからこその視点で書かれた歌詞が面白い「平成ペイン」ではファンがMVでメンバーがやっているポーズを真似するのが実に可愛らしいが、バンドの勢いはどんどん加速していく。
ジェットセイヤは時には立ち上がって観客を見渡しながらドラムを叩き、牧と進太郎は背中を寄せ合ってギターを弾く。その熱さがラストの「カウンターアクション」で頂点に達したところで終了したが、もうこのバンドはこの規模のフェスではトップクラスと言っていいくらいの人気を誇るバンドになったということを実感させられた。デビュー直後のスペシャ列伝ツアーではKANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOという強敵たちとともにライブを繰り広げ、そのバンドたちに比べたら出遅れていた感じもあったが、地道にライブとリリースを重ねてきた結果、そのバンドたちと比べても遜色ないと言っていいくらいのところまできている。アルバムでさらに飛躍した先には、今まで見たこともないような景色が待っているかもしれない。
SC.ヒンキーディンキーパーティークルー
SC.ニューゲーム
1.ラッキースター
2.エマ
3.平成ペイン
4.マジック
5.カウンターアクション
ラッキースター
https://youtu.be/VsLkAWO9AMY
13:05~ 四星球 [LEFT STAGE]
サウンドチェックの段階ですでに北島がパンツ一丁で客席に突入していたコミックバンド、四星球。大型フェスでもおなじみになっている、毎回伝説を生み出しているバンドである。
サウンドチェックの途中でギターの音が出なくなるというハプニングに見舞われるも、
「ギターの音が出ないっていうことだけはわかりました!これが本当のサウンドチェックです!」
と逆境を笑いに変えてしまうあたりはさすがである。
いざ本番になると北島は龍に乗って客席を練り歩き、
「これを25分の持ち時間のうち20分やろうと思います!」
とのっけから笑わせまくり、当然20分もこの演出に使うわけもなく、ステージに到達すると、「Mr.COSMO」でスタートし、北島は客席内に突入して全速力で飲食ブースのあたりまで走り回る。
8月にリリースされる、13曲収録のシングル(!)からの新曲「お告げ」では
「来年もMURO FESに出るために、このフェスのスポンサーに媚びを売りまくろうと思います!」
と言ってこのフェスのスポンサーでもあるauを
「auの携帯使いやすい
auの携帯電波良い
auのCMにWANIMAの次は四星球を使ってください」
と歌詞に入れて媚びを売りまくり、しかもauの携帯の人だけは撮影OKという究極の媚びの売り方を見せる。
そんなネタばかりではあるが、「クラーク博士と僕」ではダイバーが続出して北島も客席に突入する中、
「知らぬ間に始まった人生が知らぬ間に終わっていく」
と人生の真理とでも言うようなことも歌う。ただ単に笑えるだけではすぐに飽きられてしまうが、よく聴くとこのバンドの曲はなぜだか泣けてくるような要素がある。ある意味ではかつて青春パンクを聴いていた時のような。
「どうせバンドが売れたり人気出たりしたらすぐいなくなるような客層やろ!でも俺らは10年間ずっと、売れかけたままです!」
とさらに笑わせ、
「1日3回は笑いましょう。そうすれば楽しい人生になりますから!」
と最もらしいことを言うが、
「ってIKKOさんが本で言ってました!」
とネタバラしもしてしまう。
そして「妖怪泣き笑い」では観客を一斉に座らせ、一気にジャンプさせると、
「来年のこのフェスのポスターにこの瞬間の写真を使ってください!」
とアピールし、演奏が終わるとドラムのモリスがいきなり「うわー!」と奇声を発しながら走り出し、隣のステージにすでに待機していた、忘れらんねえよの柴田の目の前まで行くと、
「次、頑張ってね!」
とエールを送った。柴田はめちゃビビっていたけれど(笑)
しかし、笑わせるだけじゃなくて人生の真理を突いてくると前述したが、北島は
「来年もこのフェスに出たいけど、どうやったら出れるかな、って思って他の出演者を見たら、みんなライブをやりまくってるバンドばかりで。だから俺たちもライブやりまくるしかないな、って。だから次はまたライブハウスで会いましょう」
と言った。このフェスが素晴らしい理由はそれである。ひたすらにライブをやって生きているバンドだけが揃っている。それをこのバンドは本当に良く理解している。それはこのバンドもやり方や戦い方は違えど、そういうバンドだからである。
SC.HEY! HEY! HEY!に出たかった
1.Mr.COSMO
2.お告げ
3.クラーク博士と僕
4.妖怪泣き笑い
クラーク博士と僕
https://youtu.be/PVvhjAl00RQ
13:35~ 忘れらんねえよ [RIGHT STAGE]
そんな四星球の後だからこそ、少し不安でもあった。あれだけやりたい放題やられたら、忘れらんねえよのインパクトが薄れてしまうんじゃないかと。
しかしながら柴田は緑のモッズコートを着て客席に現れ、お台場だけに踊る大走査線のテーマが流れる中、
「こんにちは!織田裕二です!」
と言って観客の上を転がりながらステージに到達すると、梅津、マシータ、安田というおなじみのメンバーたちと合流してSEXYジャンプを決め、「バンドやろうぜ」からスタートするという、悪ふざけギリギリのネタをやった直後とは思えないエモい立ち上がり。
「MURO FES初出演です!初体験っていうのはあっという間に終わってしまうから、きっと今日のライブもあっという間に終わってしまうはず!」
とナチュラルに下ネタを交えた挨拶をすると、金髪になった安田がキーボードとギターを持ち替えながら楽曲に彩りを加える中、「ばかばっか」ではおなじみの観客の上を転がりながらビール売り場まで行き、ビールを一気飲みするというパフォーマンスを見せてから「この高鳴りをなんと呼ぶ」に続くという、面白くて楽しい部分と切なくてエモい部分という忘れらんねえよの持つ要素の両輪を短い中に詰め込んでくる。
「俺らはこのフェスに出るの初めてだから、ここで俺たちのライブを見るのは初めてなはず。でもこれが最後になるかもしれないって俺はいつも思ってる。ネガティヴシンキングだからな(笑)
でも負け続けても何度でも何度でも立ち上がって、諦めないでいるお前らみたいな奴らに俺はずっと歌っていきたい。最後にそういう曲をやります」
と言って演奏された最新曲の「いい人どまり」でさらにエモーションを加速させた。初出演なはずなのに、初出演感が全く感じなかったのは、このバンドと仲が良いバンドたちがこのフェスにはたくさん出ているからだろうか。自己紹介での「ボーカルは菅田将暉です」とサラッと言ったのは完全にスルーされていたけれど(笑)
SC.忘れらんねえよ
1.バンドやろうぜ
2.犬にしてくれ
3.ばかばっか
4.この高鳴りをなんと呼ぶ
5.いい人どまり
いい人どまり
https://youtu.be/WD7AahqdCEQ
14:05~ バズマザーズ [LEFT STAGE]
おなじみの黒のスーツに身を包んだ、間違いなくこのフェスの一角を担ってきたバンドであるバズマザーズの山田は、忘れらんねえよのライブを隣のステージにスタンバイしたままずっと見ていた。
そして忘れらんねえよのライブが終わると、すぐさま鳴らしたのはミッシェル・ガン・エレファント「バードメン」のカバー。あまりにも似合いすぎなカバーだが、あのアベフトシのカッティングを鳴らしながら山田は歌も歌うという、ミッシェルが4人でやっていたことを易々と3人だけでやってみせる。これだけでこのバンドがどれだけすごいバンドなのかというのが良く分かる。
「バズマザーズが、夏をお知らせにきました」
と言って本編は「ハゼイロノマチ」からスタートすると、ここまでの四星球→忘れらんねえよという笑いを多量に含んだ流れから一気にロックンロール濃度が高くなる。しかしながらどうやったらこんな曲になるのか、というくらい複雑な演奏なのにメロディはポップであるという山田マジックが存分に発揮されたライブは見ていて笑えてくる部分もあるのだが。
「サンダーボルト」では持ち前の昭和歌謡感も感じさせると、「スキャンティスティーラー」と、新作の曲を新しい髪型でやりまくっていた去年とは違い、フェス仕様な部分に照準を絞ってきた感じがある。
「英検2級バンド、バズマザーズです。
正気を保っていられないくらい、青山テルマのファンです。
今やりたいことを正直に言うならば、パルコに行きたい」
とMCは1%も理解することができないが、
「セックス、ドラッグ、ロックンロール。セックスの匂いもドラッグの匂いも全くしない健全なこのフェスに、頼まれてもいないのに一抹のエロさを持ち込みにきました、バズマザーズです」
とようやくまともなことを言うと山田はジャケットとネクタイを取り払い、シャツのボタンも全て開けるというエロさを発揮し、さらに「ワイセツミー」というエロさをたっぷり含んだ曲では間奏で自らのギターのネックを舌で舐め回すというエロさのパフォーマンス。
しかしながら最後に演奏された「傑作のジョーク」はこれまでの性急で詰め込みまくった歌と演奏のロックンロールではなく、ミドルテンポの歌をしっかりと聴かせるような曲だが、
「最後に傑作のジョークをひとつ
人生に行き詰まったある男が、精神科に救済を求めて云う
「何をしても笑えやしないのです」
「忙しない暮らしに疲れたんだね。評判の道化師を見に行くといい」
先生、お気遣いありがとう
でも、その道化師の正体は僕なんです」
という歌詞からは山田亮一という男のストーリーテリング能力の高さを感じさせるし、ライブを見ればその凄まじすぎる演奏力も、山田の才能の飛び抜け具合も一発でわかるのだが、それに見合う評価を受けているとは言い難い。そこにはこのバンドの前にやっていた、ハヌマーン時代からの自身の行動によるネガティヴなイメージや、マネージャーによるギャラの搾取と持ち逃げなど、音楽以外の話題に足を引っ張られてしまった部分も多々ある。バンドが売れるというのは、そうしたたくさんの要素が絡み合って起こるものなんだな、というのをこのバンドを見ていると良くも悪くも痛感してしまう。
SC.バードメン
1.ハゼイロノマチ
2.サンダーボルト
3.麻婆豆腐殺人事件
4.スキャンティスティーラー
5.ワイセツミー
6.傑作のジョーク
傑作のジョーク
https://youtu.be/7NVUPaqqGr4
14:35~ a flood of circle [RIGHT STAGE]
あまりO-Crestでライブをやる機会はないバンドだが、このフェスには近年毎年出演している、a flood of circle。この日は赤い革ジャンの佐々木亮介に合わせたかのように、全員が赤い衣装で統一されている。
だからか、1曲目も「Blood Red Shoes」という赤にまつわる曲なのだが、一音鳴っただけで、「あ、変わった」と思った。春にツアーに2公演行っているから、そんなに間隔が空いたわけではないのだが、明らかにその時とは違う。ツアーを完遂してバンドは確かに変わっている。
それは何が変わったのかと言うと、サポートギターのテツである。ツアー序盤では曲を再現するという感じだった(それは決して悪いことではなく、むしろ当然のこと)のだが、今ではそこに自分の色を乗せるようになってきており、このバンドのギターはこの男でなければいけないというのが音から溢れ出まくっている。そしてそれが他のメンバーの音にも影響し、さらにバンド全体のグルーヴが飛躍的に向上している。見続けてきて10年くらい。未だにそう思える進化をこのバンドは遂げている。
「Black Eye Blues」では亮介が客席に突入して大合唱を巻き起こしながら歌い、ラストの「シーガル」ではダイバーが多発するという盛り上がりを見せた。それはいつも見ている光景のようだが、やはりこれまでとは違っていた。
なんでそんなに変わったのか。それは、奥村大以降、このバンドでギターを弾いてきたメンバーは、みんないずれいなくなるのが決定づけられた中でギターを弾いていた。しかしテツははっきりと「このバンドで骨を埋める」と宣言している。その意志がハッキリと音に出ているから、過去最高レベルのバンドの音になった。自分は個人的に歴代ギタリストの中で最強だと思っていたのはテツの一代前のサポートであった爆弾ジョニーのキョウスケだったが、それが更新される時がついに来た。
さらに盤石な体制で、これからもこのバンドはロックンロール道を突き進んでいくが、そのこのバンドの持つ凄さがなかなか思うように広がっていかない。完全なる自己満だが、それをもっともっと広げていきたいと思っているし、割とそこに人生を賭してもいいんじゃないだろうか、と思っている。そのために今出来ることは、やはりこうしてライブを見に行ってそれを文字や言葉にすることだと思っている。
SC.ロックンロールバンド
1.Blood Red Shoes
2.Dancing Zombiez
3.Flayer's Waltz
4.Black Eye Blues
5.シーガル
Dancing Zombiez
https://youtu.be/7Hu2E1_4FSo
15:35~ SIX LOUNGE [TENT STAGE]
注目度の高さを表すように、TENT STAGEからは溢れるくらいの人が集まった、大分出身のスリーピースロックンロールバンド、SIX LOUNGE。
ヤマグチユウモリの少年性を強く感じる声での熱唱から、本人も「直球勝負」というくらいにギターとベースとドラム以外の音はいらない、他のジャンルの要素もいらない、とばかりに本当にストレートしか投げれないんじゃないかというくらいの直球勝負っぷり。
「ムロさんが俺たちのことをカッコいいって言ってくれたから、俺たちはここに立ってます!」
と自分たちがこの場所にいる理由も熱く叫ぶと、とびっきりスイートなロックンロール「メリールー」から、最後は「僕を撃て」。
注目度の高さにしっかりと応えるようなライブをやってみせたが、これからが本当に重要。本物のロックンロールバンドであるということを自分たちが作る曲でもって示していけるか。そして見た目も曲も歌詞も歌も演奏も若さが溢れ出しているが、これから年齢を重ねてもこのままでいるのか、それとも変化していくのか。できればこの純粋さだけは失われて欲しくない。「大人になってしまうなよ」っていうことなのである。
1.プラマイゼロ
2.トラッシュ
3.俺のロックンロール
4.メリールー
5.僕を撃て
僕を撃て
https://youtu.be/ZLLwSWM8qQc
16:05~ BRADIO [LEFT STAGE]
どう見ても今回の出演者の中では異質の存在のバンドである。濃いバンドは他にもいるが、ファンクをここまで強く打ち出した濃さのバンドはこのフェスには他にいないという意味で。
先にメンバーが登場してファンキーな演奏を開始すると、アフロがさらに巨大化しているような気がするボーカルの真行寺が登場し、会場は一気にダンスフロアに。サビの歌詞がない「Revolution」では早くも観客の大合唱を誘うが、ただ単に懐古的なファンクをやるだけのバンドではないというのが「Flayers」を聴くと本当によくわかる。タイアップに応えるかのようにキャッチーな歌モノであり、この現代のフェスシーン・ロックシーンにも対応するダンサブルな曲でありながらもファンクという自分たちの枠からは決してはみ出していない。その辺り、技術があるのはもちろん、本当に頭が良いバンドだと思う。
「Back to the Funk」ではおなじみのステップを観客に教えてから曲を始めるのだが、持ち時間が少ないからというのもあってか、「なんやかんやあって…」とかなり省略気味。それでも満員の観客が一斉に踊っているのを見ると、すでにこの曲をライブで体験している人がたくさんいたのだと思う。
真行寺のソウルフルな声こそ最後には普段に比べるとキツいと感じる部分もあったが、音楽的にはどアウェーでもおかしくないこのバンドが他のバンドと変わらない、でもこのバンドでしかできないやり方で満員の観客を楽しませてみせた。
去年、埼玉県某所の割と有名な神社に行った時、「BRADIOのみんなと一緒に武道館まで行けますように」という、女性スタッフが書いたのかな?と思うような絵馬があった。まさかこんなところでBRADIOの名前を見るとは、と思うと同時に「武道館かぁ…」と遠いことのように思っていたが、それはきっと近い将来、必ず叶う。
「BRADIOの夏が始まったぜ!」
と真行寺は最後に叫んだ。ニューカマー的な立ち位置だった去年や一昨年の夏とは違う、確固たる存在感を築き上げた上での今年の夏。それはきっと今までのどの夏よりも、バンドにとって長いものになるはず。
1.Revolution
2.Flayers
3.Back to the Funk
4.スパイシーマドンナ
Revolution
https://youtu.be/tfikMP2nUB0
16:35~ 感覚ピエロ [RIGHT STAGE]
若手きっての戦略家バンド、感覚ピエロ。すでにワンマンではZeppクラスまで進んでるだけに、この日も客席は超満員。
EDMまでも取り入れるという流行のサウンドの巧みな融合の仕方と、ひたすらに踊れるバンドサウンド、さらには一回聴いたら忘れられないインパクト抜群のフレーズを多用しまくった歌詞と、フェスシーンで人気を得るための要素を全て備えているだけでなく、横山の声は艶があって素直に上手いと思えるボーカルだし、打ち込みも使いながらではあるが、メンバーの演奏も実に上手い。つまりただ単に踊らせるようなサウンドをやっているのではなく、聴いていると踊りだしたくなってしまうくらいの力を持っている。
四つ打ちダンスロックの皮肉とも言える歌詞で批評性の高さを感じさせつつも、やはり最大のインパクトは「O・P・P・A・I」であるが、この曲のイメージにバンドが引っ張られるかのように、MCでもやたらと下ネタが多い。
しかしそんな「音楽の上でネタ的なことをやっている」というギミックのみのバンドかと思いきや、最後にはまさかのドラマの主題歌となった「拝啓、いつかの君へ」でそもそものメロディの良さに感心させられる。つまり、すっかりこのバンドの術中にハマってしまうのだ。
拝啓、いつかの君へ
https://youtu.be/e4I9bjviQu8
17:05~ ビレッジマンズストア [TENT STAGE]
開演時間前のはずなのに、満員のTENT STAGEはすでに熱気で満ち溢れている。かなり時間が巻いていたのか、すでに本番に突入していたのは赤いスーツに身を包んだ名古屋の5人組ロックンロールバンド、ビレッジマンズストア。
自己紹介的な「ビレッジマンズ」、最新作のキラーチューン「WENDY」と最新曲を連発すると、早くも客席はモッシュに加えてダイバーまで発生するという凄まじい盛り上がりぶりで、男らしいボーカルを轟かせていた水野ギイは
「いつだってお前が今立っている場所が世界の中心。ここがMURO FESのメインステージだ!」
と宣言し、「夢の中ではない」ではギター2人が客席に突入し、観客に支えられながらしっかりとギターを弾きまくるという満員の客席だからこそのエンタメ感溢れるパフォーマンスを見せる。
「逃げてくあの娘にゃ聞こえない」と結果的に新旧のキラーチューンを連発した後、水野はふと口を開き、
「たまに、夜に1人でいると、俺は間違ってるんじゃないかって不安になってしまうことがある。今までやってきたことが間違ってたんじゃないかと。でも今目の前の景色を見たら、やっぱり俺は間違ってなかったって思える!」
と今いる場所と見てくれている人たちへの最大限の感謝を言葉と「PINK」の熱唱に閉じ込めた。
初めてこのバンドのライブを見たのは、2015年の2月に渋谷のO-EASTで行われたイベントの時だから、もう2年半前。それからたまにライブを見る機会があったが、今年の春に千葉LOOKで見た時とこの日のライブは、初めて見た時と全く違うものだった。
このバンドは完全に変わった。何が変わったのか?「正しい夜明け」という素晴らしいアルバムを作ったことにより、曲も変わった。ライブも変わった。でもそれよりももっと本質的な部分が変わった。それはメンバー1人1人が、「このバンドで生きていく」という覚悟を持ったこと。それは他のバンドからしたら当たり前のことなのかもしれないが、メンバーがライブに全員揃わないことが何度もあったこのバンドはなかなかそう思えるようなバンドではなかった。でも今は違う。このメンバーでこのバンド、この音楽をやる意味と意志。それがライブからしっかりと伝わってくるようになった。
だから最初に見た時に感じた「こういう濃いロックンロールが好きな人が聴くバンド」というイメージはもうなくなった。もっと大きなところ、もっとたくさんの人の前でライブをするべきバンドになった。今までは活動ペースの遅さでファンをやきもきさせてきたが、これからは「今までは何だったんだ?」っていうくらいにぶっ飛ばした活動をしていきそうな予感に溢れている。
そしてバズマザーズ同様に、このバンドもサウンドチェック時にミッシェル・ガン・エレファントのカバーをやったらしい。いくらでもオシャレな音楽や爽やかな音楽、楽しそうな音楽に溢れた時代になぜ彼らはスーツを着てステージに立ち、こんなにも濃いロックンロールで生きていくことを選んだのか。それは彼らの音楽の根底に今もミッシェルが生きているからである。そしてこの時期はそれを思い出させてしまう季節。この日はアベフトシの命日の翌日だった。
SC.ジェニー
1.ビレッジマンズ
2.WENDY
3.夢の中ではない
4.逃げてくあの娘にゃ聞こえない
5.PINK
WENDY
https://youtu.be/qfiBVU2m71Y
18:05~ 打首獄門同好会 [LEFT STAGE]
この日は四星球や忘れらんねえよなどの飛び道具的なパフォーマンスを得意とするバンドがカオスな空気を作り出してきたが、この日唯一ステージに配置されたスクリーンにVJが歌詞などの映像を映し出し、のっけからステージからうまい棒やマグロの乗り物という曲の内容に即したものが次々に放り込まれるというこの日最大のカオスな空気を生み出していたのは、打首獄門同好会。
「俺の主治医」(by大澤)ことDr.COYASSを招いての「歯痛くて」では
「会いたい」「会いたくて」
に聴こえるラブソングかと思いきや、VJによる映像で
「歯痛い」「歯痛くて」
と歌っていることがわかる。実にシュール極まりない。
「私が個人的に体験したことを曲にしてみました」
と大澤が意味深に言って演奏されたのは「糖質制限ダイエット」。ちなみに大澤はこれで8kg痩せたという実績を持ち、MCだけならず曲を聴いているだけでも笑えてきてしまう。
「糖質制限ダイエットをしたからこそ気付きました。日本の米は世界一だと!」
と実に上手い曲繋ぎを経て最後に演奏されたのは、バンド最大の代表曲にして、日本のお米賛歌である「日本の米は世界一」。
並み居るバンド達が揃うフェスにおいても、インパクトは最大級。しかも来年3月には、本人いわく
「このフェスの出演者で最も無茶をしている」
というまさかの日本武道館ワンマンまで決定している。それは1つのスタイルを貫き通してきた結果。世代的にはやはりサウンドや歌詞からも筋肉少女帯を思い出してしまうけれど。
1.デリシャスティック
2.島国DNA
3.歯痛くて feat.Dr.COYASS
4.糖質制限ダイエットやってみた
5.日本の米は世界一
日本の米は世界一
https://youtu.be/BuU2bocSfDo
18:35~ HERE [TENT STAGE]
TENT STAGEの大トリを務めるのは、「日本一テンションの高いロックバンド」ことHERE。
真新しい衣装(やはり派手)に身を包んだメンバーがその異名に相応しく
「イェイイェイ ウォウウォウ」
と歌いまくるという、見方によれば非常に頭が悪い感じすらしてくるハイテンションぶりで、ボーカルの尾形回帰はステージから飛び降りてテントの外まで出て行って歌うというテンションの振り切りっぷり。
「ギラギラBODY&SOUL」では
「夏だからこの日のために考案した」
というサビでの振り付けを観客全員が1人残らず実践し、
「初めてやったのにあまりの定着率の高さにビックリしています(笑)」
と尾形もおののくほど。
そんなバカみたいな光景が繰り広げられているが、演奏自体はやはり凄まじい。特にギターの武田と三橋は9mm Parabellum Bulletのサポートメンバーでもあり、9mmでギターを弾いている姿を見た後にHEREとしてのライブを見ると、このバンドのハイテンションはあまりにも高い技術に裏打ちされたものであるということがよくわかるし、9mmファンは一度ライブを見たら好きになる可能性が非常に高いと思うくらいに9mmの音楽性に近いバンドである。
「私は早い時間からこの衣装を着たままで会場内を歩いていて、たまにバックステージに戻ろうとするとその度にスタッフに「パスを見せてください」と何度も言われました(笑)
MURO FESは本当にセキュリティのしっかりした、素晴らしいフェスです!」
と違う角度からMURO FESへの愛を語り、その愛が怨念のようにすら感じられる「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」でTENT STAGEの二日間を締めくくった。
しかしそれでもこのバンドのさらなるテンションを求める声は止まず、まさかのアンコールに。「ゾッコン ROCK ON」で尾形が再びテントの外にまで走り出すと、三橋もギターを置いて尾形のマイクで歌いまくり、戻ってきた尾形は三橋のギターを弾く(しかも普通に上手い)というスイッチプレイを見せられるのもこのバンドの演奏力があってこそ。
「9mmのサポートをやってくれてる人たちがやってるバンドだから観てみよう」と思って一回見ると、癖になって抜け出せなくなりそうな気さえする。ビジュアルのイメージからは怖い感じもするが、ライブを見るとそのイメージは1%足りともなくなる。最後にドラマーの宮野が帽子を取って深々と頭を下げていたのが本当に真摯に目に映った。
SC.くらいやがれ
1.はっきよい
2.己 STAND UP
3.ギラギラBODY&SOUL
4.LET'S GO CRAZY
5.死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
encore
6.ゾッコン ROCK ON
LET'S GO CRAZY
https://youtu.be/ZnZsAVfgLYE
19:35~ SUPER BEAVER [RIGHT STAGE]
そしてすっかり辺りは暗くなり、打首獄門同好会の時間には虹も出ていた空も夜空になった。今年の大トリはSUPER BEAVER。なぜこのバンドが今年トリを任されたのか。それはメンバーが登場して、演奏を始める前に渋谷が行ったこの言葉に集約されている。
「思い返せば第1回のこのフェスでトップバッターだったのが我々でした。今年トリだって聞いた時はなんで我々なんだ?と思ったけど、内心では俺たちしかいないだろうと思ってました。東京は渋谷のO-Crestから来ました、SUPER BEAVERです」
今や野音やZeppという大会場すらもソールドアウトさせるようになったこのバンドが、あくまで自分たちの居場所はO-Crestであり、このフェスの始まりの瞬間を生み出したことに何よりも誇りを持っている。だからこそ真っ正面からこの言葉を口に出せる。
「思っていることがあるなら、言わないと。言葉にしないと」
と言って演奏されたのは、このフェスに関わる全ての人への感謝の気持ちを込めて鳴らされた「ありがとう」。渋谷の歌とメンバーの音からは、潰れかけたバンドに居場所を与えてくれたこのフェスへの「ありがとう」が込められていた。この曲をライブで聴くたび、自分は感謝を伝えたい人にちゃんとこのバンドのように「ありがとう」と口に出せているだろうか。人間らしく生きていられているだろうか、と思わされる。
「最後は第一回のこのフェスで最初に演奏した曲で終わろうと思います」
と言って最後に演奏されたのは「歓びの明日に」。回帰的なセトリだったが、そこにもちゃんとこのバンドとしての意志があった。
「続けるのは難しい。いや、続けるだけなら簡単なのかもしれない。意志を持って続けるのが難しい」
とこのフェスを形容していたが、それはこのフェスだけでなく、このバンドもそうだ。
最前の観客たちが「秘密」のコーラス部分を合唱してメンバーを待つ。それがだんだんと広がっていくと、少し照れたような顔でメンバーがステージに戻り、
「最後は、貴方が締めなくては。ここにいてくれていること、当たり前とは思っておりません」
と言って、渋谷が客席に突入し、先ほどは観客だけで合唱していた「秘密」をメンバーも含めた全員で歌った。バンドだけじゃなく、観客だけでもなく、ここにいた全員がこのフェスを締めた。
演奏を終えると、メンバーと入れ替わるように主催のムロ氏がステージに現れ、最後の挨拶を行なった。感極まっていたのはわかるが、あまりにもその挨拶は長すぎた(笑)
「他に良い音楽もたくさんあるのに、ロックバンドばかり神聖視されるのはなんなんだ」
という類のコメントをよくネット上で見ることがある。それは知っている。わかっている。ロックバンドだけを聴いているわけではないし、いろんな形態のアーティストのライブも見ている。でもそれをわかった上で、他のどの音楽の形態よりもロックバンドが好きで、ロックバンドを信じている。それはロックバンドはその日、その瞬間の感情や想いを自分たちの音に込めることができるから。だから同じ曲であっても、場所や時間、時期によって聴こえ方が全く違う。そしてそれをこの日最も「感謝」という感情で体現していたのがSUPER BEAVERだった。
このフェスはこれまで、常にアルカラとグッドモーニングアメリカの2組がトリを務めてきた。それはその2組がこのフェスを作り、育て、背負ってきた存在であり、そうしてこのフェス以外のところに飛び出していくほどに大きくなったから。
しかし、今年SUPER BEAVERがトリをやったのは、アルカラがいなかったからという消極的な理由だけではない。このバンドがトリになってもおかしくない位置にまでこのフェスに出続けることで成長し、このフェスを背負うような存在にまでなったから。
単に動員力だけなら初日はストレイテナーやandropがトリをやってもおかしくないが、このフェスはそういうフェスではない。むしろそうしたバンドよりも、トリに近いのはircleやLACCO TOWERというバンドたち。SUPER BEAVERやグッドモーニングアメリカに並ぶような存在になれるかはわからないが、彼らもまた確かにこのフェスを背負っているし、きっと彼らもトリをやる日が来たら
「渋谷O-Crestから来ました」
と宣言するはず。そうしてこのフェスは続いていく。ムロ氏も「一生続けます!」と思い切って宣言してしまうほど(多分まだ来年以降の会場は決まっていない)、この日はロックバンドを信じ続けてきて良かったと思える1日だった。また、来年もここに来ればそう思えるはず。何たってこのフェスはひたすらにライブをやり続けることで生きているロックバンドしか出ていないフェスなのだから。
1.東京流星群
2.青い春
3.ありがとう
4.歓びの明日に
encore
5.秘密
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
Next→ 7/30 アルカラ presents 「KAGEKI」 @新木場STUDIO COAST

普段はO-Crestなどの小さいライブハウスを主戦場としているバンドのためのフェスだが、今年は前日にストレイテナーやandropというこのフェスの規模からしたら巨大な存在と言えるバンドも出演し、ラインアップに広がりが見えてきている中、この2日目は多方面で「濃い」ロックンロールバンドが居並んでいる。この辺りは狙ってのブッキングだと思われるが、なかなか他のフェスではここまでのメンツは揃わないという意味で実にMURO FESらしい。
去年までと同じ3ステージ構成で、メインの2つのステージである「RIGHT STAGE」と「LEFT STAGE」はトラックの荷台を使って隣り合わせに組まれたもので、これはかつての晴海埠頭で開催されていた時と同じ。そして敷地内の端っこ、入り口から1番遠いところにTENT STAGEが作られているが、これは思った以上に小さいステージ。
11:10~ KAKASHI [LEFT STAGE] (Opening Act)
この日のオープニングアクトは群馬からやってきた4人組バンド、KAKASHI。
実にMURO FESのオープニングに相応しい、エモーショナルなギターロックバンドで、サウンドも歌詞も真っ直ぐで熱いという点では、このフェスでの先輩であるircleやSUPER BEAVERに通じるところがある。
このフェスに出るのが夢だったということだが、
「ずっと一緒にやってきた仲間たちと同じステージに立てるっていう夢が今日叶いました!」
と熱いMCをすると、そのずっと一緒にやってきた仲間たちであろうHalo at 四畳半のメンバーらが自分のことのように嬉しそうな顔をしていた。これから、この叶えた夢はこのフェスの中でどこまで大きくなっていくだろうか。
1.違うんじゃないか
2.流星の中で
3.本当の事
4.ドラマチック
違うんじゃないか
https://youtu.be/jYFw2gBUWbE
11:35~ LUNKHEAD [RIGHT STAGE]
主催者であるムロ氏による挨拶のあと、早くも雨がパラつく中、トップバッターとして登場したのはLUNKHEAD。このフェスの出演者の中ではもはやベテランと言ってもいい存在である。
しかしながら「シンドローム」での斬れ味鋭いギターロックサウンドと、小高の歌声からはベテランらしさは一切感じさせず、むしろ未だにギラついている感すらある。ベースの合田は緑色の髪の毛にラメっぽい服という歳を経るごとに派手な出で立ちになっているが。
個人的にこのバンドの大名曲だと思っている、
「世界中の青を集めて」
というサビから始まる「インディゴ」という実に嬉しい選曲もありながらも、しっかりバンドとしての現在進行形も見せ、「うぇいうぇいうぇい」では夏の野外らしくタオルがグルグルと回る中、
「久しぶりのMURO FESです!若いバンドもたくさん出ていますが、LUNKHEADもまだまだ頑張っております!このフェスは横の繋がりが強いフェスですが、我々の次の対バンツアーにも昨日と今日このフェスに出ているバンドたちに出てもらうので、またライブハウスで会いましょう!」
と合田が告知をしてから最後のサビに突入し、「スモールワールド」までノンストップで走り抜けるという若々しさを見せた。
LUNKHEADは昔、お茶の間にも曲が流れまくった時期もあったし(カルビーのポテトチップスのCM曲に「夏の匂い」が使われていた)、もっとデカい場所に行ける予感もしていた。ただ、今だにそこへは至っていないが、このバンドにはまだまだ輝ける場所があるというのがライブを見るとわかる。それはメンバーや盟友との別れがあっても続けてきたからということも。その別れを経験したからこそ、もうバンドを辞めるという選択肢はないのかもしれない。
1.シンドローム
2.インディゴ
3.ユキシズク
4.うぇいうぇいうぇい
5.スモールワールド
インディゴ
https://youtu.be/fVPdBQHM8wk
12:05~ Brian the Sun [LEFT STAGE]
このフェス初出演となる、Brian the Sun。メンバーが登場すると、森良太が
「おい雨、今すぐ止め」
と言ってタイトル通りにスピード感溢れる「隼」からスタート。非常にわかりやすいというか、フェス仕様のセトリだったが、それは初出演のフェスであり、初めてライブを見る人が多いからというのもあったのかもしれない。実際、このバンドには美しいバラード曲も多数あるが、そうした曲は一切演奏されずに押しまくっていくが、アニメの主題歌になった「HEROES」ではやはりそれまで以上に無数の腕が客席から上がっていた。その光景からは、このバンドが本当に人気のあるアニメのテーマソングを担当し、そのハードルをしっかりと超えたということがわかる。
「あの建物、大阪にあるやつに似てるな。空中庭園があって、入るのに700円かかるやつ。大阪に来た際には是非とも」
というあまりにも緩すぎじゃない?というMCとは裏腹に、ラストの「ロックンロールポップギャング」では森が弾き語りのように最初のフレーズを歌ってからバンドの演奏に突入するというアレンジが施され、小川(ギター)も白山(ベース)も楽器を立てて、観客に見せつけるように演奏してみせた。
このバンドの持つ演奏力と、メロディの良さが短い時間でもしっかりと伝わるようなライブだった。
1.隼
2.パトスとエートス
3.HEROES
4.神曲
5.ロックンロールポップギャング
隼
https://youtu.be/5Ntsxpfq9hw
12:35~ go!go!vanillas [RIGHT STAGE]
サウンドチェックの段階でガンガン盛り上げまくっていた、go!go!vanillas。アルバムリリース直前というタイミングでこのフェス初出演である。
本番でメンバーが登場すると、
「あいにくの雨だけど、俺たちの幸運の星を聴いてくれ!」
と、打ち込みのピアノの音が流れる、アルバムのリード曲としてMVが公開されている(遊園地での一発撮り。必見)「ラッキースター」からスタートするのだが、かつてデビュー時からTHE BAWDIESの弟分的なバンドとしてロックンロールの看板を掲げてきたバンドとは思えないくらいの音楽性の広がりぶり。それはロックンロールバンドでありながらも様々な音楽を聴いて自身の音楽に昇華させているというこのバンドの音楽リスナーとしての幅の広さを感じさせる。
ゆとり世代と呼ばれてきた若者だからこその視点で書かれた歌詞が面白い「平成ペイン」ではファンがMVでメンバーがやっているポーズを真似するのが実に可愛らしいが、バンドの勢いはどんどん加速していく。
ジェットセイヤは時には立ち上がって観客を見渡しながらドラムを叩き、牧と進太郎は背中を寄せ合ってギターを弾く。その熱さがラストの「カウンターアクション」で頂点に達したところで終了したが、もうこのバンドはこの規模のフェスではトップクラスと言っていいくらいの人気を誇るバンドになったということを実感させられた。デビュー直後のスペシャ列伝ツアーではKANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOという強敵たちとともにライブを繰り広げ、そのバンドたちに比べたら出遅れていた感じもあったが、地道にライブとリリースを重ねてきた結果、そのバンドたちと比べても遜色ないと言っていいくらいのところまできている。アルバムでさらに飛躍した先には、今まで見たこともないような景色が待っているかもしれない。
SC.ヒンキーディンキーパーティークルー
SC.ニューゲーム
1.ラッキースター
2.エマ
3.平成ペイン
4.マジック
5.カウンターアクション
ラッキースター
https://youtu.be/VsLkAWO9AMY
13:05~ 四星球 [LEFT STAGE]
サウンドチェックの段階ですでに北島がパンツ一丁で客席に突入していたコミックバンド、四星球。大型フェスでもおなじみになっている、毎回伝説を生み出しているバンドである。
サウンドチェックの途中でギターの音が出なくなるというハプニングに見舞われるも、
「ギターの音が出ないっていうことだけはわかりました!これが本当のサウンドチェックです!」
と逆境を笑いに変えてしまうあたりはさすがである。
いざ本番になると北島は龍に乗って客席を練り歩き、
「これを25分の持ち時間のうち20分やろうと思います!」
とのっけから笑わせまくり、当然20分もこの演出に使うわけもなく、ステージに到達すると、「Mr.COSMO」でスタートし、北島は客席内に突入して全速力で飲食ブースのあたりまで走り回る。
8月にリリースされる、13曲収録のシングル(!)からの新曲「お告げ」では
「来年もMURO FESに出るために、このフェスのスポンサーに媚びを売りまくろうと思います!」
と言ってこのフェスのスポンサーでもあるauを
「auの携帯使いやすい
auの携帯電波良い
auのCMにWANIMAの次は四星球を使ってください」
と歌詞に入れて媚びを売りまくり、しかもauの携帯の人だけは撮影OKという究極の媚びの売り方を見せる。
そんなネタばかりではあるが、「クラーク博士と僕」ではダイバーが続出して北島も客席に突入する中、
「知らぬ間に始まった人生が知らぬ間に終わっていく」
と人生の真理とでも言うようなことも歌う。ただ単に笑えるだけではすぐに飽きられてしまうが、よく聴くとこのバンドの曲はなぜだか泣けてくるような要素がある。ある意味ではかつて青春パンクを聴いていた時のような。
「どうせバンドが売れたり人気出たりしたらすぐいなくなるような客層やろ!でも俺らは10年間ずっと、売れかけたままです!」
とさらに笑わせ、
「1日3回は笑いましょう。そうすれば楽しい人生になりますから!」
と最もらしいことを言うが、
「ってIKKOさんが本で言ってました!」
とネタバラしもしてしまう。
そして「妖怪泣き笑い」では観客を一斉に座らせ、一気にジャンプさせると、
「来年のこのフェスのポスターにこの瞬間の写真を使ってください!」
とアピールし、演奏が終わるとドラムのモリスがいきなり「うわー!」と奇声を発しながら走り出し、隣のステージにすでに待機していた、忘れらんねえよの柴田の目の前まで行くと、
「次、頑張ってね!」
とエールを送った。柴田はめちゃビビっていたけれど(笑)
しかし、笑わせるだけじゃなくて人生の真理を突いてくると前述したが、北島は
「来年もこのフェスに出たいけど、どうやったら出れるかな、って思って他の出演者を見たら、みんなライブをやりまくってるバンドばかりで。だから俺たちもライブやりまくるしかないな、って。だから次はまたライブハウスで会いましょう」
と言った。このフェスが素晴らしい理由はそれである。ひたすらにライブをやって生きているバンドだけが揃っている。それをこのバンドは本当に良く理解している。それはこのバンドもやり方や戦い方は違えど、そういうバンドだからである。
SC.HEY! HEY! HEY!に出たかった
1.Mr.COSMO
2.お告げ
3.クラーク博士と僕
4.妖怪泣き笑い
クラーク博士と僕
https://youtu.be/PVvhjAl00RQ
13:35~ 忘れらんねえよ [RIGHT STAGE]
そんな四星球の後だからこそ、少し不安でもあった。あれだけやりたい放題やられたら、忘れらんねえよのインパクトが薄れてしまうんじゃないかと。
しかしながら柴田は緑のモッズコートを着て客席に現れ、お台場だけに踊る大走査線のテーマが流れる中、
「こんにちは!織田裕二です!」
と言って観客の上を転がりながらステージに到達すると、梅津、マシータ、安田というおなじみのメンバーたちと合流してSEXYジャンプを決め、「バンドやろうぜ」からスタートするという、悪ふざけギリギリのネタをやった直後とは思えないエモい立ち上がり。
「MURO FES初出演です!初体験っていうのはあっという間に終わってしまうから、きっと今日のライブもあっという間に終わってしまうはず!」
とナチュラルに下ネタを交えた挨拶をすると、金髪になった安田がキーボードとギターを持ち替えながら楽曲に彩りを加える中、「ばかばっか」ではおなじみの観客の上を転がりながらビール売り場まで行き、ビールを一気飲みするというパフォーマンスを見せてから「この高鳴りをなんと呼ぶ」に続くという、面白くて楽しい部分と切なくてエモい部分という忘れらんねえよの持つ要素の両輪を短い中に詰め込んでくる。
「俺らはこのフェスに出るの初めてだから、ここで俺たちのライブを見るのは初めてなはず。でもこれが最後になるかもしれないって俺はいつも思ってる。ネガティヴシンキングだからな(笑)
でも負け続けても何度でも何度でも立ち上がって、諦めないでいるお前らみたいな奴らに俺はずっと歌っていきたい。最後にそういう曲をやります」
と言って演奏された最新曲の「いい人どまり」でさらにエモーションを加速させた。初出演なはずなのに、初出演感が全く感じなかったのは、このバンドと仲が良いバンドたちがこのフェスにはたくさん出ているからだろうか。自己紹介での「ボーカルは菅田将暉です」とサラッと言ったのは完全にスルーされていたけれど(笑)
SC.忘れらんねえよ
1.バンドやろうぜ
2.犬にしてくれ
3.ばかばっか
4.この高鳴りをなんと呼ぶ
5.いい人どまり
いい人どまり
https://youtu.be/WD7AahqdCEQ
14:05~ バズマザーズ [LEFT STAGE]
おなじみの黒のスーツに身を包んだ、間違いなくこのフェスの一角を担ってきたバンドであるバズマザーズの山田は、忘れらんねえよのライブを隣のステージにスタンバイしたままずっと見ていた。
そして忘れらんねえよのライブが終わると、すぐさま鳴らしたのはミッシェル・ガン・エレファント「バードメン」のカバー。あまりにも似合いすぎなカバーだが、あのアベフトシのカッティングを鳴らしながら山田は歌も歌うという、ミッシェルが4人でやっていたことを易々と3人だけでやってみせる。これだけでこのバンドがどれだけすごいバンドなのかというのが良く分かる。
「バズマザーズが、夏をお知らせにきました」
と言って本編は「ハゼイロノマチ」からスタートすると、ここまでの四星球→忘れらんねえよという笑いを多量に含んだ流れから一気にロックンロール濃度が高くなる。しかしながらどうやったらこんな曲になるのか、というくらい複雑な演奏なのにメロディはポップであるという山田マジックが存分に発揮されたライブは見ていて笑えてくる部分もあるのだが。
「サンダーボルト」では持ち前の昭和歌謡感も感じさせると、「スキャンティスティーラー」と、新作の曲を新しい髪型でやりまくっていた去年とは違い、フェス仕様な部分に照準を絞ってきた感じがある。
「英検2級バンド、バズマザーズです。
正気を保っていられないくらい、青山テルマのファンです。
今やりたいことを正直に言うならば、パルコに行きたい」
とMCは1%も理解することができないが、
「セックス、ドラッグ、ロックンロール。セックスの匂いもドラッグの匂いも全くしない健全なこのフェスに、頼まれてもいないのに一抹のエロさを持ち込みにきました、バズマザーズです」
とようやくまともなことを言うと山田はジャケットとネクタイを取り払い、シャツのボタンも全て開けるというエロさを発揮し、さらに「ワイセツミー」というエロさをたっぷり含んだ曲では間奏で自らのギターのネックを舌で舐め回すというエロさのパフォーマンス。
しかしながら最後に演奏された「傑作のジョーク」はこれまでの性急で詰め込みまくった歌と演奏のロックンロールではなく、ミドルテンポの歌をしっかりと聴かせるような曲だが、
「最後に傑作のジョークをひとつ
人生に行き詰まったある男が、精神科に救済を求めて云う
「何をしても笑えやしないのです」
「忙しない暮らしに疲れたんだね。評判の道化師を見に行くといい」
先生、お気遣いありがとう
でも、その道化師の正体は僕なんです」
という歌詞からは山田亮一という男のストーリーテリング能力の高さを感じさせるし、ライブを見ればその凄まじすぎる演奏力も、山田の才能の飛び抜け具合も一発でわかるのだが、それに見合う評価を受けているとは言い難い。そこにはこのバンドの前にやっていた、ハヌマーン時代からの自身の行動によるネガティヴなイメージや、マネージャーによるギャラの搾取と持ち逃げなど、音楽以外の話題に足を引っ張られてしまった部分も多々ある。バンドが売れるというのは、そうしたたくさんの要素が絡み合って起こるものなんだな、というのをこのバンドを見ていると良くも悪くも痛感してしまう。
SC.バードメン
1.ハゼイロノマチ
2.サンダーボルト
3.麻婆豆腐殺人事件
4.スキャンティスティーラー
5.ワイセツミー
6.傑作のジョーク
傑作のジョーク
https://youtu.be/7NVUPaqqGr4
14:35~ a flood of circle [RIGHT STAGE]
あまりO-Crestでライブをやる機会はないバンドだが、このフェスには近年毎年出演している、a flood of circle。この日は赤い革ジャンの佐々木亮介に合わせたかのように、全員が赤い衣装で統一されている。
だからか、1曲目も「Blood Red Shoes」という赤にまつわる曲なのだが、一音鳴っただけで、「あ、変わった」と思った。春にツアーに2公演行っているから、そんなに間隔が空いたわけではないのだが、明らかにその時とは違う。ツアーを完遂してバンドは確かに変わっている。
それは何が変わったのかと言うと、サポートギターのテツである。ツアー序盤では曲を再現するという感じだった(それは決して悪いことではなく、むしろ当然のこと)のだが、今ではそこに自分の色を乗せるようになってきており、このバンドのギターはこの男でなければいけないというのが音から溢れ出まくっている。そしてそれが他のメンバーの音にも影響し、さらにバンド全体のグルーヴが飛躍的に向上している。見続けてきて10年くらい。未だにそう思える進化をこのバンドは遂げている。
「Black Eye Blues」では亮介が客席に突入して大合唱を巻き起こしながら歌い、ラストの「シーガル」ではダイバーが多発するという盛り上がりを見せた。それはいつも見ている光景のようだが、やはりこれまでとは違っていた。
なんでそんなに変わったのか。それは、奥村大以降、このバンドでギターを弾いてきたメンバーは、みんないずれいなくなるのが決定づけられた中でギターを弾いていた。しかしテツははっきりと「このバンドで骨を埋める」と宣言している。その意志がハッキリと音に出ているから、過去最高レベルのバンドの音になった。自分は個人的に歴代ギタリストの中で最強だと思っていたのはテツの一代前のサポートであった爆弾ジョニーのキョウスケだったが、それが更新される時がついに来た。
さらに盤石な体制で、これからもこのバンドはロックンロール道を突き進んでいくが、そのこのバンドの持つ凄さがなかなか思うように広がっていかない。完全なる自己満だが、それをもっともっと広げていきたいと思っているし、割とそこに人生を賭してもいいんじゃないだろうか、と思っている。そのために今出来ることは、やはりこうしてライブを見に行ってそれを文字や言葉にすることだと思っている。
SC.ロックンロールバンド
1.Blood Red Shoes
2.Dancing Zombiez
3.Flayer's Waltz
4.Black Eye Blues
5.シーガル
Dancing Zombiez
https://youtu.be/7Hu2E1_4FSo
15:35~ SIX LOUNGE [TENT STAGE]
注目度の高さを表すように、TENT STAGEからは溢れるくらいの人が集まった、大分出身のスリーピースロックンロールバンド、SIX LOUNGE。
ヤマグチユウモリの少年性を強く感じる声での熱唱から、本人も「直球勝負」というくらいにギターとベースとドラム以外の音はいらない、他のジャンルの要素もいらない、とばかりに本当にストレートしか投げれないんじゃないかというくらいの直球勝負っぷり。
「ムロさんが俺たちのことをカッコいいって言ってくれたから、俺たちはここに立ってます!」
と自分たちがこの場所にいる理由も熱く叫ぶと、とびっきりスイートなロックンロール「メリールー」から、最後は「僕を撃て」。
注目度の高さにしっかりと応えるようなライブをやってみせたが、これからが本当に重要。本物のロックンロールバンドであるということを自分たちが作る曲でもって示していけるか。そして見た目も曲も歌詞も歌も演奏も若さが溢れ出しているが、これから年齢を重ねてもこのままでいるのか、それとも変化していくのか。できればこの純粋さだけは失われて欲しくない。「大人になってしまうなよ」っていうことなのである。
1.プラマイゼロ
2.トラッシュ
3.俺のロックンロール
4.メリールー
5.僕を撃て
僕を撃て
https://youtu.be/ZLLwSWM8qQc
16:05~ BRADIO [LEFT STAGE]
どう見ても今回の出演者の中では異質の存在のバンドである。濃いバンドは他にもいるが、ファンクをここまで強く打ち出した濃さのバンドはこのフェスには他にいないという意味で。
先にメンバーが登場してファンキーな演奏を開始すると、アフロがさらに巨大化しているような気がするボーカルの真行寺が登場し、会場は一気にダンスフロアに。サビの歌詞がない「Revolution」では早くも観客の大合唱を誘うが、ただ単に懐古的なファンクをやるだけのバンドではないというのが「Flayers」を聴くと本当によくわかる。タイアップに応えるかのようにキャッチーな歌モノであり、この現代のフェスシーン・ロックシーンにも対応するダンサブルな曲でありながらもファンクという自分たちの枠からは決してはみ出していない。その辺り、技術があるのはもちろん、本当に頭が良いバンドだと思う。
「Back to the Funk」ではおなじみのステップを観客に教えてから曲を始めるのだが、持ち時間が少ないからというのもあってか、「なんやかんやあって…」とかなり省略気味。それでも満員の観客が一斉に踊っているのを見ると、すでにこの曲をライブで体験している人がたくさんいたのだと思う。
真行寺のソウルフルな声こそ最後には普段に比べるとキツいと感じる部分もあったが、音楽的にはどアウェーでもおかしくないこのバンドが他のバンドと変わらない、でもこのバンドでしかできないやり方で満員の観客を楽しませてみせた。
去年、埼玉県某所の割と有名な神社に行った時、「BRADIOのみんなと一緒に武道館まで行けますように」という、女性スタッフが書いたのかな?と思うような絵馬があった。まさかこんなところでBRADIOの名前を見るとは、と思うと同時に「武道館かぁ…」と遠いことのように思っていたが、それはきっと近い将来、必ず叶う。
「BRADIOの夏が始まったぜ!」
と真行寺は最後に叫んだ。ニューカマー的な立ち位置だった去年や一昨年の夏とは違う、確固たる存在感を築き上げた上での今年の夏。それはきっと今までのどの夏よりも、バンドにとって長いものになるはず。
1.Revolution
2.Flayers
3.Back to the Funk
4.スパイシーマドンナ
Revolution
https://youtu.be/tfikMP2nUB0
16:35~ 感覚ピエロ [RIGHT STAGE]
若手きっての戦略家バンド、感覚ピエロ。すでにワンマンではZeppクラスまで進んでるだけに、この日も客席は超満員。
EDMまでも取り入れるという流行のサウンドの巧みな融合の仕方と、ひたすらに踊れるバンドサウンド、さらには一回聴いたら忘れられないインパクト抜群のフレーズを多用しまくった歌詞と、フェスシーンで人気を得るための要素を全て備えているだけでなく、横山の声は艶があって素直に上手いと思えるボーカルだし、打ち込みも使いながらではあるが、メンバーの演奏も実に上手い。つまりただ単に踊らせるようなサウンドをやっているのではなく、聴いていると踊りだしたくなってしまうくらいの力を持っている。
四つ打ちダンスロックの皮肉とも言える歌詞で批評性の高さを感じさせつつも、やはり最大のインパクトは「O・P・P・A・I」であるが、この曲のイメージにバンドが引っ張られるかのように、MCでもやたらと下ネタが多い。
しかしそんな「音楽の上でネタ的なことをやっている」というギミックのみのバンドかと思いきや、最後にはまさかのドラマの主題歌となった「拝啓、いつかの君へ」でそもそものメロディの良さに感心させられる。つまり、すっかりこのバンドの術中にハマってしまうのだ。
拝啓、いつかの君へ
https://youtu.be/e4I9bjviQu8
17:05~ ビレッジマンズストア [TENT STAGE]
開演時間前のはずなのに、満員のTENT STAGEはすでに熱気で満ち溢れている。かなり時間が巻いていたのか、すでに本番に突入していたのは赤いスーツに身を包んだ名古屋の5人組ロックンロールバンド、ビレッジマンズストア。
自己紹介的な「ビレッジマンズ」、最新作のキラーチューン「WENDY」と最新曲を連発すると、早くも客席はモッシュに加えてダイバーまで発生するという凄まじい盛り上がりぶりで、男らしいボーカルを轟かせていた水野ギイは
「いつだってお前が今立っている場所が世界の中心。ここがMURO FESのメインステージだ!」
と宣言し、「夢の中ではない」ではギター2人が客席に突入し、観客に支えられながらしっかりとギターを弾きまくるという満員の客席だからこそのエンタメ感溢れるパフォーマンスを見せる。
「逃げてくあの娘にゃ聞こえない」と結果的に新旧のキラーチューンを連発した後、水野はふと口を開き、
「たまに、夜に1人でいると、俺は間違ってるんじゃないかって不安になってしまうことがある。今までやってきたことが間違ってたんじゃないかと。でも今目の前の景色を見たら、やっぱり俺は間違ってなかったって思える!」
と今いる場所と見てくれている人たちへの最大限の感謝を言葉と「PINK」の熱唱に閉じ込めた。
初めてこのバンドのライブを見たのは、2015年の2月に渋谷のO-EASTで行われたイベントの時だから、もう2年半前。それからたまにライブを見る機会があったが、今年の春に千葉LOOKで見た時とこの日のライブは、初めて見た時と全く違うものだった。
このバンドは完全に変わった。何が変わったのか?「正しい夜明け」という素晴らしいアルバムを作ったことにより、曲も変わった。ライブも変わった。でもそれよりももっと本質的な部分が変わった。それはメンバー1人1人が、「このバンドで生きていく」という覚悟を持ったこと。それは他のバンドからしたら当たり前のことなのかもしれないが、メンバーがライブに全員揃わないことが何度もあったこのバンドはなかなかそう思えるようなバンドではなかった。でも今は違う。このメンバーでこのバンド、この音楽をやる意味と意志。それがライブからしっかりと伝わってくるようになった。
だから最初に見た時に感じた「こういう濃いロックンロールが好きな人が聴くバンド」というイメージはもうなくなった。もっと大きなところ、もっとたくさんの人の前でライブをするべきバンドになった。今までは活動ペースの遅さでファンをやきもきさせてきたが、これからは「今までは何だったんだ?」っていうくらいにぶっ飛ばした活動をしていきそうな予感に溢れている。
そしてバズマザーズ同様に、このバンドもサウンドチェック時にミッシェル・ガン・エレファントのカバーをやったらしい。いくらでもオシャレな音楽や爽やかな音楽、楽しそうな音楽に溢れた時代になぜ彼らはスーツを着てステージに立ち、こんなにも濃いロックンロールで生きていくことを選んだのか。それは彼らの音楽の根底に今もミッシェルが生きているからである。そしてこの時期はそれを思い出させてしまう季節。この日はアベフトシの命日の翌日だった。
SC.ジェニー
1.ビレッジマンズ
2.WENDY
3.夢の中ではない
4.逃げてくあの娘にゃ聞こえない
5.PINK
WENDY
https://youtu.be/qfiBVU2m71Y
18:05~ 打首獄門同好会 [LEFT STAGE]
この日は四星球や忘れらんねえよなどの飛び道具的なパフォーマンスを得意とするバンドがカオスな空気を作り出してきたが、この日唯一ステージに配置されたスクリーンにVJが歌詞などの映像を映し出し、のっけからステージからうまい棒やマグロの乗り物という曲の内容に即したものが次々に放り込まれるというこの日最大のカオスな空気を生み出していたのは、打首獄門同好会。
「俺の主治医」(by大澤)ことDr.COYASSを招いての「歯痛くて」では
「会いたい」「会いたくて」
に聴こえるラブソングかと思いきや、VJによる映像で
「歯痛い」「歯痛くて」
と歌っていることがわかる。実にシュール極まりない。
「私が個人的に体験したことを曲にしてみました」
と大澤が意味深に言って演奏されたのは「糖質制限ダイエット」。ちなみに大澤はこれで8kg痩せたという実績を持ち、MCだけならず曲を聴いているだけでも笑えてきてしまう。
「糖質制限ダイエットをしたからこそ気付きました。日本の米は世界一だと!」
と実に上手い曲繋ぎを経て最後に演奏されたのは、バンド最大の代表曲にして、日本のお米賛歌である「日本の米は世界一」。
並み居るバンド達が揃うフェスにおいても、インパクトは最大級。しかも来年3月には、本人いわく
「このフェスの出演者で最も無茶をしている」
というまさかの日本武道館ワンマンまで決定している。それは1つのスタイルを貫き通してきた結果。世代的にはやはりサウンドや歌詞からも筋肉少女帯を思い出してしまうけれど。
1.デリシャスティック
2.島国DNA
3.歯痛くて feat.Dr.COYASS
4.糖質制限ダイエットやってみた
5.日本の米は世界一
日本の米は世界一
https://youtu.be/BuU2bocSfDo
18:35~ HERE [TENT STAGE]
TENT STAGEの大トリを務めるのは、「日本一テンションの高いロックバンド」ことHERE。
真新しい衣装(やはり派手)に身を包んだメンバーがその異名に相応しく
「イェイイェイ ウォウウォウ」
と歌いまくるという、見方によれば非常に頭が悪い感じすらしてくるハイテンションぶりで、ボーカルの尾形回帰はステージから飛び降りてテントの外まで出て行って歌うというテンションの振り切りっぷり。
「ギラギラBODY&SOUL」では
「夏だからこの日のために考案した」
というサビでの振り付けを観客全員が1人残らず実践し、
「初めてやったのにあまりの定着率の高さにビックリしています(笑)」
と尾形もおののくほど。
そんなバカみたいな光景が繰り広げられているが、演奏自体はやはり凄まじい。特にギターの武田と三橋は9mm Parabellum Bulletのサポートメンバーでもあり、9mmでギターを弾いている姿を見た後にHEREとしてのライブを見ると、このバンドのハイテンションはあまりにも高い技術に裏打ちされたものであるということがよくわかるし、9mmファンは一度ライブを見たら好きになる可能性が非常に高いと思うくらいに9mmの音楽性に近いバンドである。
「私は早い時間からこの衣装を着たままで会場内を歩いていて、たまにバックステージに戻ろうとするとその度にスタッフに「パスを見せてください」と何度も言われました(笑)
MURO FESは本当にセキュリティのしっかりした、素晴らしいフェスです!」
と違う角度からMURO FESへの愛を語り、その愛が怨念のようにすら感じられる「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」でTENT STAGEの二日間を締めくくった。
しかしそれでもこのバンドのさらなるテンションを求める声は止まず、まさかのアンコールに。「ゾッコン ROCK ON」で尾形が再びテントの外にまで走り出すと、三橋もギターを置いて尾形のマイクで歌いまくり、戻ってきた尾形は三橋のギターを弾く(しかも普通に上手い)というスイッチプレイを見せられるのもこのバンドの演奏力があってこそ。
「9mmのサポートをやってくれてる人たちがやってるバンドだから観てみよう」と思って一回見ると、癖になって抜け出せなくなりそうな気さえする。ビジュアルのイメージからは怖い感じもするが、ライブを見るとそのイメージは1%足りともなくなる。最後にドラマーの宮野が帽子を取って深々と頭を下げていたのが本当に真摯に目に映った。
SC.くらいやがれ
1.はっきよい
2.己 STAND UP
3.ギラギラBODY&SOUL
4.LET'S GO CRAZY
5.死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
encore
6.ゾッコン ROCK ON
LET'S GO CRAZY
https://youtu.be/ZnZsAVfgLYE
19:35~ SUPER BEAVER [RIGHT STAGE]
そしてすっかり辺りは暗くなり、打首獄門同好会の時間には虹も出ていた空も夜空になった。今年の大トリはSUPER BEAVER。なぜこのバンドが今年トリを任されたのか。それはメンバーが登場して、演奏を始める前に渋谷が行ったこの言葉に集約されている。
「思い返せば第1回のこのフェスでトップバッターだったのが我々でした。今年トリだって聞いた時はなんで我々なんだ?と思ったけど、内心では俺たちしかいないだろうと思ってました。東京は渋谷のO-Crestから来ました、SUPER BEAVERです」
今や野音やZeppという大会場すらもソールドアウトさせるようになったこのバンドが、あくまで自分たちの居場所はO-Crestであり、このフェスの始まりの瞬間を生み出したことに何よりも誇りを持っている。だからこそ真っ正面からこの言葉を口に出せる。
「思っていることがあるなら、言わないと。言葉にしないと」
と言って演奏されたのは、このフェスに関わる全ての人への感謝の気持ちを込めて鳴らされた「ありがとう」。渋谷の歌とメンバーの音からは、潰れかけたバンドに居場所を与えてくれたこのフェスへの「ありがとう」が込められていた。この曲をライブで聴くたび、自分は感謝を伝えたい人にちゃんとこのバンドのように「ありがとう」と口に出せているだろうか。人間らしく生きていられているだろうか、と思わされる。
「最後は第一回のこのフェスで最初に演奏した曲で終わろうと思います」
と言って最後に演奏されたのは「歓びの明日に」。回帰的なセトリだったが、そこにもちゃんとこのバンドとしての意志があった。
「続けるのは難しい。いや、続けるだけなら簡単なのかもしれない。意志を持って続けるのが難しい」
とこのフェスを形容していたが、それはこのフェスだけでなく、このバンドもそうだ。
最前の観客たちが「秘密」のコーラス部分を合唱してメンバーを待つ。それがだんだんと広がっていくと、少し照れたような顔でメンバーがステージに戻り、
「最後は、貴方が締めなくては。ここにいてくれていること、当たり前とは思っておりません」
と言って、渋谷が客席に突入し、先ほどは観客だけで合唱していた「秘密」をメンバーも含めた全員で歌った。バンドだけじゃなく、観客だけでもなく、ここにいた全員がこのフェスを締めた。
演奏を終えると、メンバーと入れ替わるように主催のムロ氏がステージに現れ、最後の挨拶を行なった。感極まっていたのはわかるが、あまりにもその挨拶は長すぎた(笑)
「他に良い音楽もたくさんあるのに、ロックバンドばかり神聖視されるのはなんなんだ」
という類のコメントをよくネット上で見ることがある。それは知っている。わかっている。ロックバンドだけを聴いているわけではないし、いろんな形態のアーティストのライブも見ている。でもそれをわかった上で、他のどの音楽の形態よりもロックバンドが好きで、ロックバンドを信じている。それはロックバンドはその日、その瞬間の感情や想いを自分たちの音に込めることができるから。だから同じ曲であっても、場所や時間、時期によって聴こえ方が全く違う。そしてそれをこの日最も「感謝」という感情で体現していたのがSUPER BEAVERだった。
このフェスはこれまで、常にアルカラとグッドモーニングアメリカの2組がトリを務めてきた。それはその2組がこのフェスを作り、育て、背負ってきた存在であり、そうしてこのフェス以外のところに飛び出していくほどに大きくなったから。
しかし、今年SUPER BEAVERがトリをやったのは、アルカラがいなかったからという消極的な理由だけではない。このバンドがトリになってもおかしくない位置にまでこのフェスに出続けることで成長し、このフェスを背負うような存在にまでなったから。
単に動員力だけなら初日はストレイテナーやandropがトリをやってもおかしくないが、このフェスはそういうフェスではない。むしろそうしたバンドよりも、トリに近いのはircleやLACCO TOWERというバンドたち。SUPER BEAVERやグッドモーニングアメリカに並ぶような存在になれるかはわからないが、彼らもまた確かにこのフェスを背負っているし、きっと彼らもトリをやる日が来たら
「渋谷O-Crestから来ました」
と宣言するはず。そうしてこのフェスは続いていく。ムロ氏も「一生続けます!」と思い切って宣言してしまうほど(多分まだ来年以降の会場は決まっていない)、この日はロックバンドを信じ続けてきて良かったと思える1日だった。また、来年もここに来ればそう思えるはず。何たってこのフェスはひたすらにライブをやり続けることで生きているロックバンドしか出ていないフェスなのだから。
1.東京流星群
2.青い春
3.ありがとう
4.歓びの明日に
encore
5.秘密
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
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アルカラ ア・ル・カ・ラ 15th. Anniversary GIG 「KAGEKI」 @新木場STUDIO COAST 7/30 ホーム
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