POLYSICS 結成20周年記念2マンTOUR!!! POLYMPIC 2017 ゲスト:銀杏BOYZ @渋谷CLUB QUATTRO 7/9
- 2017/07/09
- 22:29
1997年から1998年において、同時多発的にオルタナティブな価値観、それは海外のロックバンドに触発され、そのサウンドを自身の音楽に取り入れたアーティストが一斉にデビューした。
Dragon Ash、椎名林檎、Cocco、くるり、スーパーカー、NUMBER GIRL、中村一義、GRAPEVINE、TRICERATOPSなど。音楽性も形態もバラバラだが、今なお音楽シーンに大きな影響を与えている面々である。(もちろん、それらのバンドが中学生から高校生の時にデビューした世代である我々も大きな影響を受けてこの歳になった)
その世代が今年デビューからちょうど20周年ということで、Dragon AshやCoccoのように大きな会場で大々的に祝砲を鳴らすアーティストもいれば、GRAPEVINEのように特に例年と変わらぬ活動をするアーティストもいる。
そしてPOLYSICSもそれらのアーティストたちと同期。つまりは20周年を迎えた。で、POLYSICSが20周年で行う企画は、渋谷CLUB QUATTROでの2マンライブ3daysという、さすがというかPOLYSICSだなぁというか、実に「らしい」と思う祝い方となった。
初日はBase Ball Bear、2日目はTHE BACK HORN、そして最終日のこの日は銀杏BOYZという、一筋縄ではいかないようなバンドを呼んだのもPOLYSICSらしいが、一見意外なように見える銀杏BOYZは、POLYSICSと同じく元々はUK PROJECT出身の同世代であり、近年もUKFCやAT FIELDのイベントなどで一緒になっており、ハヤシはそのたびに銀杏BOYZへのリスペクトを口にしている。
・銀杏BOYZ
開演時間の17時を少し過ぎた頃に場内がゆっくり暗転すると、ステージにいつもの緑のコートを着た峯田和伸が登場。この日は弾き語りでのライブということで、後ろにはPOLYSICSのバンドセットがすでにセッティングされた状態になっている。
峯田がアコギを手にすると、
「君が泣いてる夢を見たよ」
と近年のライブではすっかりおなじみのオープニング曲になった「人間」でスタートし、
「だから僕はここに来たんだ 10年ぶりに渋谷CLUB QUATTROに来たんです」
と歌詞を変えて歌う。通常なら途中でバンド編成に切り替わるところで大きなダイナミズムを生む曲だが、弾き語りだとそのままなぶん、峯田の歌い方が昔からだいぶ変わったというか、より声が太く年齢を重ねたことがよくわかる。
続く「若者たち」もバンド編成では2曲目によくやっている曲だが、弾き語りだとパンクというよりも、峯田のルーツの一つであるフォークの要素を強く感じさせる。最初のフレーズを歌い始めるまで何の曲かわからないほどに。
「ステージに立ってる姿を見るとすごい人みたいに見えるけど、全然凄くなんてないから!そういうミュージシャンの錯覚みたいなものを利用している大人の人たちもいますけどね、俺たちはそこに勝負しているわけ!もう全敗、全試合コールド負けだけど!
POLYSICSもそういうバンドだと思うんだけど、POLYSICSとは事務所が同じで、昔デビューする時に同じ月にCD出した同期で。生き別れの兄弟みたいなもんだと思ってて。ハヤシ君は近所に住んでるしね。今日はアコースティックとテクノで全く逆だけど!」
とPOLYSICSとの関係性を改めて語ると、「なんとなく僕たちは大人になるんだ」を弾き語り始める。バンド編成ではほとんどやっていない曲のため、これは弾き語り編成ならではの曲と言えるだろう。
「僕はいつまで経ってもドキドキしてたいんだ」
というフレーズは、我々ファンが銀杏BOYZに対して思っていることであり、それはもう12年前に最初のアルバムが出てこの曲を聴いた時から変わらない。
来月リリースのシングルのカップリングに、現在のバンド編成でアレンジしたバージョンの「援交」というタイトルでリリースされることが発表されている「援助交際」は、歌詞こそ
「メールアドレス」→「LINE ID」
「淫乱」→「メンヘラ」
と現代版にアレンジされているが、ツアーで聴いた「援交」バージョンではなく、従来のバージョンを弾き語りにしたという感じ。なので弾き語りではあるがポップというよりもパンクさを感じる。
今月末から3ヶ月連続でシングルをリリースし、10月には初の武道館公演を行うことを、
「最近はよく働いてると思います。シングルもちゃんと出せますしね。9年間もアルバムが出なかったのはなんだったんだ!っていうくらいに(笑)」
と自分でツッコミを入れつつ、その3ヶ月連続リリースのシングル第1弾である、ロックとの原体験を歌った「エンジェルベイビー」を披露。弾き語りで聴くのは去年、まだバンドアレンジが固まっていない状態で弾き語りしていた時以来だが、その時よりもハッキリとキャッチーなパンクさを纏った曲になったことがわかる。
ツアーでも言っていたように、イギリスのマンチェスターでのアリアナ・グランデのライブで爆破テロが起こってしまったことを嘆きつつ、タダでも音楽が聴ける時代にこうしてチケットを買って見に来てくれる人たちへ感謝を語り、「新訳・銀河鉄道の夜」を歌うと、すぐさま「BABY BABY」を歌うかと思いきや、
「うちの母親はよく「BABY BABY」みたいな曲を作ればメジャーデビューできるかもしれないのに!みたいなことを言うんですけど、多分もうメジャーから声はかからないだろうなぁ。
こう見えても昔はよく声かけてもらったんですよ。焼肉食いに行かせてもらったりしながら話を聞いて。叙々苑の高いとこみたいな店で壺に入ってるカルビとか食べるだけ食べまくって、「メジャーには行きません!」って言って(笑)
ソニーの皆様、その節は申し訳ありませんでした!」
とPOLYSICSが所属しているソニーのスタッフに謝罪。しかし、メジャーに行っていたら間違いなく「援助交際」や「メス豚」みたいな曲はリリースすることができなかっただろうし、自分たちのペースで活動することもできていなかっただろう。
そんな話も挟んでの「BABY BABY」では峯田がマイクを客席に向け、やはり大合唱が起きる。今日はゲストで出ているということを忘れてしまうくらいの大合唱は、POLYSICSのファンにもこの曲が知られていることを実感させてくれるが、こうしてこの曲を知ってる人たちで一緒に歌えるということがどれだけ幸せなことであるか。それはまだ今のバンド形態になる前、峯田がたった1人で銀杏BOYZを背負って弾き語りしていた2年前に痛いくらいに実感してしまった。だからこそ、バンド形態でも大合唱は起きるが、弾き語りでこの曲を合唱していると、その当時のことを思い出してしまう。1人だけになっても続けることを選んでステージに立ってこの曲を歌うからこそ、こうして銀杏BOYZに救われてきた人たちみんなで一緒に歌えるんだと。
「これからも自分の中の良く言うとマグマのような、悪く言うとザーメンのようなものを音楽に昇華していきたいと思います。
POLYSICS、20周年おめでとう!」
とPOLYSICSを讃えると、ギターを置いてタンバリンを持ち、カラオケ形態で最後に「ぽあだむ」を踊りまくりながら歌ってピースサインをしながらステージを去って行った。
やっぱりバンド形態の破壊力は他に代え難いものがあるが、たまにはこうして弾き語りで見るのも悪いことじゃない。でもそれはPOLYSICSが呼んでくれたからということもあるんだろう。月末にはシングルも出るし、来月には山中湖のあのステージでライブが見れる。本当に楽しみ過ぎて仕方がない。きっと3ヶ月後の武道館ワンマンもあっという間にやってくるんだろうな。
1.人間
2.若者たち
3.なんとなく僕たちは大人になるんだ
4.援助交際
5.骨
6.エンジェルベイビー
7.新訳・銀河鉄道の夜
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
エンジェルベイビー (予告編)
https://youtu.be/IWtKlscmWi8
・POLYSICS
すでに銀杏BOYZのライブ中もセッティングした状態だったからか、転換時間はわずか10分ほどという凄まじい速さで場内が暗転。すると流れ出すのは「Absolute POLYSICS」のSE的なナンバー「P!」。メンバーは鮮やかな黄色いツナギにバイザー着用といういつもの出で立ちだが、やはりハヤシは登場から非常にテンションが高い。SEを生演奏に切り替えると、恒例の「トイス!」の挨拶も行い、いきなりの「シーラカンス イズ アンドロイド」「Shout Aloud!」で早くも熱狂を通り越していると言っていいくらいの盛り上がりぶりで、ダイバーも続出。
競馬の実況のようなナレーションが入る、POLYSICSじゃなかったら絶対成立しないような「ムチとホース」ではハヤシに合わせて観客がタオルを回しまくり、低音でバンドを支えるフミもヴォコーダーと通常のマイクを使い分けながら「Digital Coffee」で踊らせまくり、アニメ主題歌になったのが今になってもなかなか信じられない「Rocket」では手を頭の上でひらひらさせながら、サビでパンクバンドのような爆発を見せる。もう序盤から楽しすぎる。
「おめでトイス!」
と20周年を祝うバージョンのトイス!を観客が完璧に決めてバンドを祝うと、ほぼインストと言ってもいい「MAD MAC」からの「カジャカジャグー」ではハヤシが前に出てきてこれでもかというくらいにギターを弾きまくり、ポリの音楽性が高い演奏技術に裏打ちされたものであるということを実感させてくれるが、今年リアレンジアルバム「Replay!」をリリースし、これまでの代表曲たちを現在の編成でのアレンジにバージョンアップさせたため、どの曲も今が最強だと思えるような一分の隙もない進化を遂げている。
その「Replay!」でリプレイされていない、ノンリプレイな曲として演奏されたのは、2001年の「NEW WAVE JACKET」収録の「SPARK」。これはたまーにライブでやっているというレア曲なだけに、ヘビーポリシックなファンには嬉しい選曲だろう。
「峯田君とはGOING STEADYがデビューした時からずっと同じ事務所でやってきてて。
俺、この前ギックリ腰やっちゃったんだけど、その時に使ってた車椅子は、峯田君が骨折した時に使ってたやつを借りたの(笑)
座ってライブしてる時に使ってた椅子も、峯田君から借りた(笑)」
と近所に住んでるからこその仲睦まじいエピソードを語りながら、「人生の灰」では客席から投げ込まれた無数のタオルをハヤシがツナギの下に入れて自身を巨乳化させ(タオルはしっかり客席に返した)、「I My Me Mine」ではかつてカヨ在籍時にリコーダーで吹いていたメロディをハヤシとフミがカズーを吹きながら演奏するという3人だからこそ、同期を使うところは同期で、演奏できるものはメンバーで演奏するという3人の創意工夫が最大限に感じられる。
もはやバンド随一のキラーチューンと化した「Let's ダバダバ」では観客が手拍子する中、スマホをセルフィースティックに装着したハヤシが客席に飛び込みながら客席の盛り上がりぶりを身を以て撮影し、終盤はハヤシが客席に勢いよく飛び込んだ「Young OH! OH!」からさらに加速。
「Replay!」に収録された新曲「Tune Up!」はポリならではの疾走感溢れるデジタルチューンだが、どこか民族音楽的な要素も感じる。「MEGA OVER DRIVE」ではハヤシがショルダーキーボードというか、シンセを無理矢理肩に担いで弾きまくると、スタッフに水をかけられながら、倒れそうになりながらも「URGE ON!!」を合唱させ、ラストはファミコンのようなイントロからヴォコーダーボイスで爆裂テクノパンクの狂騒感で満たしていく「SUN ELECTRIC」とやり切ると、ハヤシは倒れこみ、全ての体力を使い切ったかのようにグッタリとしながらステージを去って行ったので、アンコールが若干心配になった。
しかしステージに再び現れたハヤシはやはり元気以外の何者でもなく、
「いつもならここで普通にアンコールやるんだけど、もう10年前かな?前にやった新宿LOFTが2007年だから。それ以来にせっかく峯田君とやるんだから、なんか一緒にやりたいなぁって」
と言うと、峯田和伸も再びステージに登場し、
峯田「中学生の時に後藤君っていう同級生がいて。そいつは休み時間もずっと机に伏して寝てるような、友達がいないやつだったんだけど、美術の時間に自由に想像して好きな風景を描きなさいっていう授業があって。その後藤君が描いた絵が今でも覚えてるくらいに衝撃で。青い空の中に千切れて血が出まくってる耳が100個くらい描いてあんの。怖っ!って思ったらその絵のタイトルが「空耳」で(笑)
それで俺は後藤君が気になっちゃって、家に遊びに行ったの。そしたら部屋の中にテクノのレコードばっかり(笑)中3でDEVOとか聴いてんの。だからハヤシ君を見るたびに俺は後藤君を思い出すの」
ハヤシ「後藤君を通すことで俺がヤバいやつみたいになってるじゃん!(笑)」
という爆笑トークを展開するのだが、普段は他の共演者と話す時はどこか気を遣った、よそよそしい感じになる峯田が、いたって自然体で話していた。それはやはりハヤシとはこうして気を遣ったり緊張することなく話せる間柄だからなのだろう。実際、峯田は「トイス!」を何度も叫んでいたし。さすがにバイザーは着けていなかったけど。
そしてヤノとフミが登場することなく、ハヤシと峯田の2人だけでトラックを流し、ハヤシがギターを弾くという形で演奏されたのは、銀杏BOYZの「I DON'T WANNA DIE FOREVER」。ハヤシはギターを弾きながら観客とともに「イエス!」のフレーズをヴォコーダー越しに叫び、峯田はハヤシに触発されたかのように勢いよく客席にダイブするという熱いコラボに。演奏が終わると2人はガッチリと抱き合い、2人の関係が20年という月日をかけて育まれてきたものであるということを実感させてくれた。
峯田と入れ替わるようにフミとヤノもステージに登場すると、このツアーの追加公演が渋谷のO-EASTと大阪の心斎橋BIG CATで開催されることを発表してファンを喜ばせるとともに、20周年をまだまだ盛り上げていくことを告げる。
ハヤシはギターを持たずに
「歌って踊ってねー!」
と叫ぶと、サビで一斉に手拍子が鳴る「Baby BIAS」。歌っているのはリリース時のカヨではないが、この曲の多幸感は全く変わらない。
そしてラストはこれぞPOLYSICSな、インストのキラーチューン「BUGGIE TECHNICA」。振り付けも全員ばっちり揃い、3人が音を合わせて締めると、20年間続いてきたバンドに対して
「ありがとうー!」
という感謝の言葉と拍手に包まれながらメンバーは満足そうな、でもまだまだこれで終わりじゃない、という表情でステージを去って行った。
よくライブで観客の層が幅広い時に「老若男女」という形容を使う。この日、客席にはハヤシのような1人で家でマニアックな音楽を聴いている感じの人から、いかにも渋谷にいそうな金髪のギャル、さらには頭に鉢巻を巻いた外国人まで(外国人が結構たくさんいた)、POLYSICSのライブじゃなければ絶対同じ空間にいないであろう人たちが集まっていた。それはPOLYSICSが日本のありとあらゆる場所、さらには海外でも精力的にライブをやりまくってきた成果。そんな景色を作れるバンドはなかなかいない。ただなんとなく20年続いたバンドではなく、自分たちのやりたいことをひたすらに追求しまくりながらも常に挑戦を続けてきたPOLYSICSだから見れる景色。
POLYSICSも銀杏BOYZも、辞めようと思えば辞められるキリのいいタイミングがあった。それはお互いにメンバーがいなくなった時。20年ずっと同じメンバーで続いてるバンドなんて、本当に数えられるくらいしかいない。でも体制が変わっても2組とも続けることを選んだ。まだまだこのバンドでやりたいことがあるから。そうしてお互いに続けることを選んだからこそ、一緒にステージに立つ瞬間までも見ることができた。
ハヤシが
「次はバンド編成の銀杏BOYZと対バンしたい!」
と言っていたように、また近いうちにこの2組で。自分はそうして好きなバンドの音楽で、「いつまで経ってもドキドキしてたいんだ」。
1.P!
2.シーラカンス イズ アンドロイド
3.Shout Aloud!
4.ムチとホース
5.Digital Coffee
6.Rocket
7.MAD MAC
8.カジャカジャグー
9.SPARK
10.人生の灰
11.I My Me Mine
12.Let's ダバダバ
13.Young OH! OH!
14.Tune Up!
15.MEGA OVER DRIVE
16.URGE ON!!
17.SUN ELECTRIC
encore
18.I DON'T WANNA DIE FOREVER w/峯田和伸
19.Baby BIAS
20.BUGGIE TECHNICA
Tune Up!
https://youtu.be/zHTYsFo5UCE
Next→7/13 TOKYO INV. 出演:踊Foot Works / 石毛輝(new band) / MONO NO AWARE / 斉藤浩樹 @下北沢GARAGE
Dragon Ash、椎名林檎、Cocco、くるり、スーパーカー、NUMBER GIRL、中村一義、GRAPEVINE、TRICERATOPSなど。音楽性も形態もバラバラだが、今なお音楽シーンに大きな影響を与えている面々である。(もちろん、それらのバンドが中学生から高校生の時にデビューした世代である我々も大きな影響を受けてこの歳になった)
その世代が今年デビューからちょうど20周年ということで、Dragon AshやCoccoのように大きな会場で大々的に祝砲を鳴らすアーティストもいれば、GRAPEVINEのように特に例年と変わらぬ活動をするアーティストもいる。
そしてPOLYSICSもそれらのアーティストたちと同期。つまりは20周年を迎えた。で、POLYSICSが20周年で行う企画は、渋谷CLUB QUATTROでの2マンライブ3daysという、さすがというかPOLYSICSだなぁというか、実に「らしい」と思う祝い方となった。
初日はBase Ball Bear、2日目はTHE BACK HORN、そして最終日のこの日は銀杏BOYZという、一筋縄ではいかないようなバンドを呼んだのもPOLYSICSらしいが、一見意外なように見える銀杏BOYZは、POLYSICSと同じく元々はUK PROJECT出身の同世代であり、近年もUKFCやAT FIELDのイベントなどで一緒になっており、ハヤシはそのたびに銀杏BOYZへのリスペクトを口にしている。
・銀杏BOYZ
開演時間の17時を少し過ぎた頃に場内がゆっくり暗転すると、ステージにいつもの緑のコートを着た峯田和伸が登場。この日は弾き語りでのライブということで、後ろにはPOLYSICSのバンドセットがすでにセッティングされた状態になっている。
峯田がアコギを手にすると、
「君が泣いてる夢を見たよ」
と近年のライブではすっかりおなじみのオープニング曲になった「人間」でスタートし、
「だから僕はここに来たんだ 10年ぶりに渋谷CLUB QUATTROに来たんです」
と歌詞を変えて歌う。通常なら途中でバンド編成に切り替わるところで大きなダイナミズムを生む曲だが、弾き語りだとそのままなぶん、峯田の歌い方が昔からだいぶ変わったというか、より声が太く年齢を重ねたことがよくわかる。
続く「若者たち」もバンド編成では2曲目によくやっている曲だが、弾き語りだとパンクというよりも、峯田のルーツの一つであるフォークの要素を強く感じさせる。最初のフレーズを歌い始めるまで何の曲かわからないほどに。
「ステージに立ってる姿を見るとすごい人みたいに見えるけど、全然凄くなんてないから!そういうミュージシャンの錯覚みたいなものを利用している大人の人たちもいますけどね、俺たちはそこに勝負しているわけ!もう全敗、全試合コールド負けだけど!
POLYSICSもそういうバンドだと思うんだけど、POLYSICSとは事務所が同じで、昔デビューする時に同じ月にCD出した同期で。生き別れの兄弟みたいなもんだと思ってて。ハヤシ君は近所に住んでるしね。今日はアコースティックとテクノで全く逆だけど!」
とPOLYSICSとの関係性を改めて語ると、「なんとなく僕たちは大人になるんだ」を弾き語り始める。バンド編成ではほとんどやっていない曲のため、これは弾き語り編成ならではの曲と言えるだろう。
「僕はいつまで経ってもドキドキしてたいんだ」
というフレーズは、我々ファンが銀杏BOYZに対して思っていることであり、それはもう12年前に最初のアルバムが出てこの曲を聴いた時から変わらない。
来月リリースのシングルのカップリングに、現在のバンド編成でアレンジしたバージョンの「援交」というタイトルでリリースされることが発表されている「援助交際」は、歌詞こそ
「メールアドレス」→「LINE ID」
「淫乱」→「メンヘラ」
と現代版にアレンジされているが、ツアーで聴いた「援交」バージョンではなく、従来のバージョンを弾き語りにしたという感じ。なので弾き語りではあるがポップというよりもパンクさを感じる。
今月末から3ヶ月連続でシングルをリリースし、10月には初の武道館公演を行うことを、
「最近はよく働いてると思います。シングルもちゃんと出せますしね。9年間もアルバムが出なかったのはなんだったんだ!っていうくらいに(笑)」
と自分でツッコミを入れつつ、その3ヶ月連続リリースのシングル第1弾である、ロックとの原体験を歌った「エンジェルベイビー」を披露。弾き語りで聴くのは去年、まだバンドアレンジが固まっていない状態で弾き語りしていた時以来だが、その時よりもハッキリとキャッチーなパンクさを纏った曲になったことがわかる。
ツアーでも言っていたように、イギリスのマンチェスターでのアリアナ・グランデのライブで爆破テロが起こってしまったことを嘆きつつ、タダでも音楽が聴ける時代にこうしてチケットを買って見に来てくれる人たちへ感謝を語り、「新訳・銀河鉄道の夜」を歌うと、すぐさま「BABY BABY」を歌うかと思いきや、
「うちの母親はよく「BABY BABY」みたいな曲を作ればメジャーデビューできるかもしれないのに!みたいなことを言うんですけど、多分もうメジャーから声はかからないだろうなぁ。
こう見えても昔はよく声かけてもらったんですよ。焼肉食いに行かせてもらったりしながら話を聞いて。叙々苑の高いとこみたいな店で壺に入ってるカルビとか食べるだけ食べまくって、「メジャーには行きません!」って言って(笑)
ソニーの皆様、その節は申し訳ありませんでした!」
とPOLYSICSが所属しているソニーのスタッフに謝罪。しかし、メジャーに行っていたら間違いなく「援助交際」や「メス豚」みたいな曲はリリースすることができなかっただろうし、自分たちのペースで活動することもできていなかっただろう。
そんな話も挟んでの「BABY BABY」では峯田がマイクを客席に向け、やはり大合唱が起きる。今日はゲストで出ているということを忘れてしまうくらいの大合唱は、POLYSICSのファンにもこの曲が知られていることを実感させてくれるが、こうしてこの曲を知ってる人たちで一緒に歌えるということがどれだけ幸せなことであるか。それはまだ今のバンド形態になる前、峯田がたった1人で銀杏BOYZを背負って弾き語りしていた2年前に痛いくらいに実感してしまった。だからこそ、バンド形態でも大合唱は起きるが、弾き語りでこの曲を合唱していると、その当時のことを思い出してしまう。1人だけになっても続けることを選んでステージに立ってこの曲を歌うからこそ、こうして銀杏BOYZに救われてきた人たちみんなで一緒に歌えるんだと。
「これからも自分の中の良く言うとマグマのような、悪く言うとザーメンのようなものを音楽に昇華していきたいと思います。
POLYSICS、20周年おめでとう!」
とPOLYSICSを讃えると、ギターを置いてタンバリンを持ち、カラオケ形態で最後に「ぽあだむ」を踊りまくりながら歌ってピースサインをしながらステージを去って行った。
やっぱりバンド形態の破壊力は他に代え難いものがあるが、たまにはこうして弾き語りで見るのも悪いことじゃない。でもそれはPOLYSICSが呼んでくれたからということもあるんだろう。月末にはシングルも出るし、来月には山中湖のあのステージでライブが見れる。本当に楽しみ過ぎて仕方がない。きっと3ヶ月後の武道館ワンマンもあっという間にやってくるんだろうな。
1.人間
2.若者たち
3.なんとなく僕たちは大人になるんだ
4.援助交際
5.骨
6.エンジェルベイビー
7.新訳・銀河鉄道の夜
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
エンジェルベイビー (予告編)
https://youtu.be/IWtKlscmWi8
・POLYSICS
すでに銀杏BOYZのライブ中もセッティングした状態だったからか、転換時間はわずか10分ほどという凄まじい速さで場内が暗転。すると流れ出すのは「Absolute POLYSICS」のSE的なナンバー「P!」。メンバーは鮮やかな黄色いツナギにバイザー着用といういつもの出で立ちだが、やはりハヤシは登場から非常にテンションが高い。SEを生演奏に切り替えると、恒例の「トイス!」の挨拶も行い、いきなりの「シーラカンス イズ アンドロイド」「Shout Aloud!」で早くも熱狂を通り越していると言っていいくらいの盛り上がりぶりで、ダイバーも続出。
競馬の実況のようなナレーションが入る、POLYSICSじゃなかったら絶対成立しないような「ムチとホース」ではハヤシに合わせて観客がタオルを回しまくり、低音でバンドを支えるフミもヴォコーダーと通常のマイクを使い分けながら「Digital Coffee」で踊らせまくり、アニメ主題歌になったのが今になってもなかなか信じられない「Rocket」では手を頭の上でひらひらさせながら、サビでパンクバンドのような爆発を見せる。もう序盤から楽しすぎる。
「おめでトイス!」
と20周年を祝うバージョンのトイス!を観客が完璧に決めてバンドを祝うと、ほぼインストと言ってもいい「MAD MAC」からの「カジャカジャグー」ではハヤシが前に出てきてこれでもかというくらいにギターを弾きまくり、ポリの音楽性が高い演奏技術に裏打ちされたものであるということを実感させてくれるが、今年リアレンジアルバム「Replay!」をリリースし、これまでの代表曲たちを現在の編成でのアレンジにバージョンアップさせたため、どの曲も今が最強だと思えるような一分の隙もない進化を遂げている。
その「Replay!」でリプレイされていない、ノンリプレイな曲として演奏されたのは、2001年の「NEW WAVE JACKET」収録の「SPARK」。これはたまーにライブでやっているというレア曲なだけに、ヘビーポリシックなファンには嬉しい選曲だろう。
「峯田君とはGOING STEADYがデビューした時からずっと同じ事務所でやってきてて。
俺、この前ギックリ腰やっちゃったんだけど、その時に使ってた車椅子は、峯田君が骨折した時に使ってたやつを借りたの(笑)
座ってライブしてる時に使ってた椅子も、峯田君から借りた(笑)」
と近所に住んでるからこその仲睦まじいエピソードを語りながら、「人生の灰」では客席から投げ込まれた無数のタオルをハヤシがツナギの下に入れて自身を巨乳化させ(タオルはしっかり客席に返した)、「I My Me Mine」ではかつてカヨ在籍時にリコーダーで吹いていたメロディをハヤシとフミがカズーを吹きながら演奏するという3人だからこそ、同期を使うところは同期で、演奏できるものはメンバーで演奏するという3人の創意工夫が最大限に感じられる。
もはやバンド随一のキラーチューンと化した「Let's ダバダバ」では観客が手拍子する中、スマホをセルフィースティックに装着したハヤシが客席に飛び込みながら客席の盛り上がりぶりを身を以て撮影し、終盤はハヤシが客席に勢いよく飛び込んだ「Young OH! OH!」からさらに加速。
「Replay!」に収録された新曲「Tune Up!」はポリならではの疾走感溢れるデジタルチューンだが、どこか民族音楽的な要素も感じる。「MEGA OVER DRIVE」ではハヤシがショルダーキーボードというか、シンセを無理矢理肩に担いで弾きまくると、スタッフに水をかけられながら、倒れそうになりながらも「URGE ON!!」を合唱させ、ラストはファミコンのようなイントロからヴォコーダーボイスで爆裂テクノパンクの狂騒感で満たしていく「SUN ELECTRIC」とやり切ると、ハヤシは倒れこみ、全ての体力を使い切ったかのようにグッタリとしながらステージを去って行ったので、アンコールが若干心配になった。
しかしステージに再び現れたハヤシはやはり元気以外の何者でもなく、
「いつもならここで普通にアンコールやるんだけど、もう10年前かな?前にやった新宿LOFTが2007年だから。それ以来にせっかく峯田君とやるんだから、なんか一緒にやりたいなぁって」
と言うと、峯田和伸も再びステージに登場し、
峯田「中学生の時に後藤君っていう同級生がいて。そいつは休み時間もずっと机に伏して寝てるような、友達がいないやつだったんだけど、美術の時間に自由に想像して好きな風景を描きなさいっていう授業があって。その後藤君が描いた絵が今でも覚えてるくらいに衝撃で。青い空の中に千切れて血が出まくってる耳が100個くらい描いてあんの。怖っ!って思ったらその絵のタイトルが「空耳」で(笑)
それで俺は後藤君が気になっちゃって、家に遊びに行ったの。そしたら部屋の中にテクノのレコードばっかり(笑)中3でDEVOとか聴いてんの。だからハヤシ君を見るたびに俺は後藤君を思い出すの」
ハヤシ「後藤君を通すことで俺がヤバいやつみたいになってるじゃん!(笑)」
という爆笑トークを展開するのだが、普段は他の共演者と話す時はどこか気を遣った、よそよそしい感じになる峯田が、いたって自然体で話していた。それはやはりハヤシとはこうして気を遣ったり緊張することなく話せる間柄だからなのだろう。実際、峯田は「トイス!」を何度も叫んでいたし。さすがにバイザーは着けていなかったけど。
そしてヤノとフミが登場することなく、ハヤシと峯田の2人だけでトラックを流し、ハヤシがギターを弾くという形で演奏されたのは、銀杏BOYZの「I DON'T WANNA DIE FOREVER」。ハヤシはギターを弾きながら観客とともに「イエス!」のフレーズをヴォコーダー越しに叫び、峯田はハヤシに触発されたかのように勢いよく客席にダイブするという熱いコラボに。演奏が終わると2人はガッチリと抱き合い、2人の関係が20年という月日をかけて育まれてきたものであるということを実感させてくれた。
峯田と入れ替わるようにフミとヤノもステージに登場すると、このツアーの追加公演が渋谷のO-EASTと大阪の心斎橋BIG CATで開催されることを発表してファンを喜ばせるとともに、20周年をまだまだ盛り上げていくことを告げる。
ハヤシはギターを持たずに
「歌って踊ってねー!」
と叫ぶと、サビで一斉に手拍子が鳴る「Baby BIAS」。歌っているのはリリース時のカヨではないが、この曲の多幸感は全く変わらない。
そしてラストはこれぞPOLYSICSな、インストのキラーチューン「BUGGIE TECHNICA」。振り付けも全員ばっちり揃い、3人が音を合わせて締めると、20年間続いてきたバンドに対して
「ありがとうー!」
という感謝の言葉と拍手に包まれながらメンバーは満足そうな、でもまだまだこれで終わりじゃない、という表情でステージを去って行った。
よくライブで観客の層が幅広い時に「老若男女」という形容を使う。この日、客席にはハヤシのような1人で家でマニアックな音楽を聴いている感じの人から、いかにも渋谷にいそうな金髪のギャル、さらには頭に鉢巻を巻いた外国人まで(外国人が結構たくさんいた)、POLYSICSのライブじゃなければ絶対同じ空間にいないであろう人たちが集まっていた。それはPOLYSICSが日本のありとあらゆる場所、さらには海外でも精力的にライブをやりまくってきた成果。そんな景色を作れるバンドはなかなかいない。ただなんとなく20年続いたバンドではなく、自分たちのやりたいことをひたすらに追求しまくりながらも常に挑戦を続けてきたPOLYSICSだから見れる景色。
POLYSICSも銀杏BOYZも、辞めようと思えば辞められるキリのいいタイミングがあった。それはお互いにメンバーがいなくなった時。20年ずっと同じメンバーで続いてるバンドなんて、本当に数えられるくらいしかいない。でも体制が変わっても2組とも続けることを選んだ。まだまだこのバンドでやりたいことがあるから。そうしてお互いに続けることを選んだからこそ、一緒にステージに立つ瞬間までも見ることができた。
ハヤシが
「次はバンド編成の銀杏BOYZと対バンしたい!」
と言っていたように、また近いうちにこの2組で。自分はそうして好きなバンドの音楽で、「いつまで経ってもドキドキしてたいんだ」。
1.P!
2.シーラカンス イズ アンドロイド
3.Shout Aloud!
4.ムチとホース
5.Digital Coffee
6.Rocket
7.MAD MAC
8.カジャカジャグー
9.SPARK
10.人生の灰
11.I My Me Mine
12.Let's ダバダバ
13.Young OH! OH!
14.Tune Up!
15.MEGA OVER DRIVE
16.URGE ON!!
17.SUN ELECTRIC
encore
18.I DON'T WANNA DIE FOREVER w/峯田和伸
19.Baby BIAS
20.BUGGIE TECHNICA
Tune Up!
https://youtu.be/zHTYsFo5UCE
Next→7/13 TOKYO INV. 出演:踊Foot Works / 石毛輝(new band) / MONO NO AWARE / 斉藤浩樹 @下北沢GARAGE

TOKYO INV. 出演:踊Foot Works / MONO NO AWARE / 石毛輝 @下北沢GARAGE ホーム
9mm Parabellum Bullet ”TOUR OF BABEL II” @昭和女子大学 人見記念講堂 7/2