ASIAN KUNG-FU GENERATION World Tour 2017 @Zepp DiverCity 6/26
- 2017/06/27
- 00:42
結成20周年のさらにその先へ向かうアジカン。20周年ツアーでは幕張メッセや武道館というアリーナを中心に回り、日本のロックの最前線で戦い続ける巨大なバンドの姿を見せたが、今回のツアーはメインは7月からの南米ツアー。なので「World Tour」というタイトルは決して大げさなものではなく、この日と翌日のZepp DiverCityでの2days後にはバンドは世界へ旅立っていく。
・LUCKY TAPES
この2daysは若手バンドのゲストを迎えるのだが、この日はLUCKY TAPES。フジロックにも出演している3人組である。
3人組ではあるが、ライブではパーカッション、女性コーラスにホーン隊も加えた9人編成で、いかにもcero以降を感じさせる、ワールドミュージックの要素を含んだインディポップというサウンド。
しかしながらトランペット、トロンボーン、サックスというホーン隊の3人は演奏していない時に揃ってステップを踏んだり、EXILEを彷彿とさせるダンスを踊ったり、まさかのヘドバンをしたりと、ただ単に人数と楽器が多くて豊かなサウンドというわけではなく、視覚的にも楽しませてくれる。
そのサウンドの上に乗る高橋海の歌声は実に甘くスイートで、自身の声によく合ったサウンドを選んだ音楽をやっているという印象。
30分足らずという実に短い時間だったが、最後には秋にリリース予定の新曲もいち早く披露され、その曲の演奏時にはスマホでの撮影も許可される。気の合う仲間たちと楽しく音楽を奏でているという雰囲気はよく伝わってきたが、そのサウンドはやはりアジカンというよりもゴッチのソロに近い。そういう意味ではアウェー感はかなりのものだったが、最後にはゆったりと体をサウンドに委ねて聴き入っている人もかなりいた。
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしてアジカン。特になんのSEもなしに19時半過ぎに実にフラッとメンバーと、もはやおなじみのサポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)がステージに現れると、
「あの娘がスケートボード蹴って
表通り 飛ばす」
と相変わらずのパーマっぷりのゴッチが歌い出す最新シングル「荒野を歩け」でスタート。基本的にゴッチの歌は平熱と言っていいような、サビで張り上げたり高くなったりしない曲だが、最後のサビ部分では
「踊れよ 歌えよ ラルラルラ」
というフレーズをぴょんぴょんと小さく飛び跳ねながら歌うくらいに漲っている。
そして何よりこの曲は喜多のギターが最高にカッコいい。歴代の曲の中でも1番と言っていいくらいで、「下北系ギターロック」というシーンの中から出てきたバンドの中で最も巨大と言ってもいい存在になったアジカンが、どんなに若い人に「ギターは音がうるさい」と言われようとも、自分たちはギターロックバンドであり、それが何よりもカッコいいサウンドなんだ、という自負を持って鳴らしているかのよう。20年目にしてこの自己最高を更新していくあたりが今でも最前線にいるバンドたる所以。
ゴッチの喜多のギターの掛け合い的なライブでのイントロアレンジから、伊地知潔が細かくリズムを刻んでいく「ブルートレイン」。イントロの深い底にいるようなキーボードのサウンドから一気にサビで飛翔していくような「踵で愛を打ち鳴らせ」は、シモリョーが単なるサポートメンバーではなく、もはやアジカン第5のメンバーとして欠かせない存在であることがよくわかる。サングラスをかけて演奏していた春フェスでのゴッチバンドの時よりも明らかに笑顔で楽しそうに演奏しているようにも見える。
ゴッチが軽く挨拶すると、バンドのダイナミズムが炸裂する「アフターダーク」、山田の堅実なベースのイントロからセッション的に展開していくイントロがシングルカットされたバージョンのアレンジに生かされた「Re:Re:」と、ワールドツアー用らしい、アジカンのど真ん中というか、最もわかりやすい部分を行くような曲が続いていく。
NUMBER GIRLから強い影響を受けた、東洋的なインパクトの強いイントロのギターリフの「N.G.S」は、以前ゴッチがインタビューで
「やっぱりこの曲みたいな東洋的なギターと日本的なメロディを融合させた曲が1番世界でもアジカンのサウンドとして認知されているというか、いろんな国に行っても盛り上がるんだよね」
と語っていただけに、ワールドツアーならではのキラーチューンとも言える。
近年ではあまり演奏されなくなった曲だが、その印象的な喜多のリフとユニゾンするシモリョーのキーボードがさらに疾走感を際立たせており、こういう部分はトリビュートアルバムでこの曲をカバーした、夜の本気ダンスの影響もあるのかもしれない。
そのままアウトロから繋がるように演奏された、「荒野を歩け」のカップリング曲「お祭りのあと」は近年カップリングで活躍を見せる、喜多ボーカル曲。ゴッチとは対照的なハイトーンボイスは長い尺のライブの中ではいいアクセントになっており、ギターに専念するゴッチもどこか解放感を感じる。
しかしながらMCでは
ゴッチ「今の曲はワールドツアーで自らをアピールすべく、絶対やりたい曲って健さんが言い出して(笑)」
とすぐさまいじられ、
喜多「一言も言ってないですよ(笑)」
と弁解しながら、
「ベッドルームから一歩 別世界に連れ出したいから」
というフレーズがまさにライブ会場という別世界に連れ出されたかのように響く「夜のコール」、言葉遊びとイントロのギターサウンドが面白い人気曲「稲村ヶ崎ジェーン」と続き、「アンダースタンド」では観客が飛び跳ねながら「イェー!」と叫ぶのだが、当のゴッチ本人は最初に叫ぶ部分で思いっきり
「イエス」
と言っていたので、少し肩透かしを食らったような気分になる(笑)
バンド感の強かった前半からは一転して打ち込みのサウンドとリズムが会場を包み、そのサウンドに合わせるように演奏されたのは「1.2.3.4.5.6. Baby」。ゴッチの歌唱は素晴らしい伸びを見せているが、歌詞の内容からして、この曲も「N.G.S」同様にワールドツアーだからこそセトリに入った曲なのかもしれない。打ち込みのサウンドも含めてアレンジはバンドの最新系というような形に変わっているが。
「ちょうどいい規模感だよね。武道館とか幕張メッセはちょっと広すぎる(笑)
昔、全然売れてない頃に川崎クラブチッタでライブやらせてもらったことがあるんだけど、友達呼びまくっても最前列くらいにしか人がいなくて。それより後ろは誰もいない(笑)
それで終わったらノルマで6万円くらい取られた(笑)
今日は後ろの方とか2階席もいっぱいで…俺は背が低いから全員は見えないけど(笑)、1番後ろまで届くように演奏するから。
歳を取って、聴いてくれる人が全滅してきたら、下北沢SHELTERとかでやり続けるから(笑)」
とやはり独特の自虐を含めたユーモアを交えながらも、アジカンを一生続けていくという宣言。さすがにSHELTERくらいまではいかないというか、この規模はずっと満員のままで続いていくと思うけれど。
「健さんのリクエストで」
と前置きされた「惑星」からは再び力強いバンドサウンドに戻り、もはやどの曲よりもバンドの代名詞的な曲になった「リライト」含め、間奏ではセッション的な演奏が展開される。
さらにバンドのサウンドが力強さを増していくのは「Easter」「Little Lennon」という「Wonder Future」収録曲だが、このアルバムがアジカンの基礎筋肉をさらに底上げして、当時活動が本格化してきていたゴッチのソロとアジカン本体との役割の違いを明確にしたアルバムであるということが、ライブ終盤になってさらに強さと、さらには重さまでも増していくサウンドによってよくわかる。(個人的にはこのアルバムからなら「Planet of the Apes」も聴きたいところだが)
そしてその基礎筋肉の向上と、「アジカンはスケールの大きなロックを鳴らすバンドである」という認識の再確認が、「荒野を歩け」や「ブラッドサーキュレーター」という近年のシングルの名曲連発っぷりに繋がっている部分は間違いなくあるはず。
ゴッチが鳴らすささやかなギターの音色に大歓声があがったのは、ファンの人気投票1位、つまりファンに最も愛されている曲である「ソラニン」。作詞がゴッチではないというリリース当時の賛否両論も遥か彼方、トリビュートアルバムでこの曲をエモーショナルが爆発するようにカバーして本格ブレイクの足がかりにしたyonigeに触発されたかのように、この日はゴッチのボーカルとアウトロの喜多の轟音ギターが今までよりも一層エモーショナルに響いた。この曲はそうしたアレンジの方が情景をさらに呼び起こせるということがわかったのだろう。
そしてこの日が旅の始まりであるとはいえ、
「旅の先にどんな結末が待っていたって
走り出してしまったんだ」
とさらにその先を見据えているかのような「Wonder Future」から、シモリョーに導かれるようにして手拍子とコーラスに観客が参加することによって、アジカンとともに今を生きている、ということを実感させてくれる「今を生きて」で多幸感に包まれながら、メンバーたちはゆっくりとステージを去って行った。
アンコールでは特になんの変わりもなく登場し、
「アジカンTシャツくらい着て出てくればいいんだけどね、自分のTシャツ着たくないんだよね(笑)
みんなが着てきてくれるのはいいんだけど。そしてみんながライブ以外の場所で着てくれるのも嬉しいんだけど。でもライブ以外の場所では俺は絶対着たくない(笑)見つけて欲しい人みたいになっちゃうから(笑)」
と物販ネタで笑わせつつ、特になんの告知もないと言いながら自身のソロの新作が物販にあることをちゃっかりアピールし、近年はライブ中にところどころ歌詞が飛ぶ部分があるものの、ゴッチのファルセットボーカルは歳を重ねるごとに上手くなってきているのを実感させられる「未来の破片」から、「自分の信じたことを自分の意志を曲げずに続けていればいつかそれは身を結ぶ」という近年のアジカンのまさにスタンダードな姿勢そのものを少女に投影して歌った「Standard」でゴッチは歌いながら自身のギターを高く掲げる。その姿は
「誰にも見向きをされなくて」
という時代を乗り越えて、こうして今でもこのステージに立っているという誇りを感じさせた。
で、最後は「遥か彼方」かな?と思っていたら、これで終わりだった。あまりにも終わり感のない終わり方だっただけに、メンバーが楽器を置いてステージから去る時には「え!?終わりなの!?」みたいな空気が会場に充満していた。この空気はメンバーも明らかに感じ取っていただけに、翌日以降はどうするのだろうか。
この後、バンドは7月から南米を廻る。海外ツアーではスタッフが最小人数しかいないだけに、必然的にメンバー間の会話やコミュニケーションが増えると聞く。アジカンはなかなかツアー中もメンバーが揃って行動するようなバンドではないだけに、今回の海外での生活と経験がどうバンドの活動にフィードバックされていくか。きっとドキュメンタリー的な映像も回すと思われるけれど。
そしてワールドツアーだけに、こうして見るとアジカンの代表曲的な部分を軸にしつつ(とはいえ「君という花」や「ループ&ループ」はやっていないが)、久々の曲もやるという内容。アジカンは昔はこういうバンドではなかった。むしろツアーはおろか、フェスでもマニアックな曲をやって客席を固まらせるということも何度もあった。
でも今はもうそういうことはしない。これまでの活動の中で手に入れた、「みんなのアジカン」に応えるようなライブをやり、まだまだこの席は譲らねぇぞ、とばかりにロックシーンの最前線とど真ん中を背負っている。そしてトリビュートや対バンなどで若いバンドから新たな刺激をもらい、それを燃料にしてさらなる名曲を生み出してライブをやりながら進んでいく。その姿は他のどのバンドよりもロックの王道を歩んでいる。
大学生の時に結成してからもう20年。潔が入ってからも19年くらい。時によって様々なサポートメンバーを加えたりしたが、自分はこの4人のアジカンしか知らない。それはメンバーが変わっていないから当然の話なのだが、アジカンの背中を見て音楽を始めて、すでに何度もアジカンと同じステージに立った一回り下、つまり結成10年を超えたバンドたちには、メンバーやバンドの形が変わらざるを得なくなってしまったバンドも多い。その姿を見ていると、アジカンがこの4人でずっと続いてきたこと、加えて今でもアリーナクラスでライブができることの物凄さが本当によくわかるし、形が変わってしまったバンドたちも、本当はアジカンのような境地に達したかったはずだと思う。
だからこそ、アジカンはこの4人でなければいけないというのがライブを見ていると年月を経るたびに強くなってきている。どんなに地味でも、ボーカル以外がほとんど喋らなくても、この4人が揃って演奏しているところを、それこそゴッチが言ったように、ライブに来ていた人がくたばりはじめてSHELTERがようやく埋まる、みたいな状況になっても見続けていたい。
かつて自分が海外のロックバンドを聴くようになったり、音楽の幅が一気に広がったのはアジカンに出会って、NANO-MUGEN FES.に行ったりするようになってから。そうした様々な音楽の入り口になるという意味でも、アジカンが今でもこうして最前線にいる意義は本当に大きい。これからも、いけるところまでその役割を担っていて欲しい。
1.荒野を歩け
2.ブルートレイン
3.踵で愛を打ち鳴らせ
4.アフターダーク
5.Re:Re:
6.N.G.S
7.お祭りのあと
8.夜のコール
9.稲村ヶ崎ジェーン
10.アンダースタンド
11.1.2.3.4.5.6. Baby
12.惑星
13.リライト
14.Easter
15.Little Lennon
16.ソラニン
17.Wonder Future
18.今を生きて
encore
19.未来の破片
20.Standard
荒野を歩け
https://youtu.be/AbaGY7TWq8A
Next→ 7/1 musicる!fes (NICO Touches the Walls,キュウソネコカミ,ヤバイTシャツ屋さん,GLIM SPANKY) @Zepp Tokyo
・LUCKY TAPES
この2daysは若手バンドのゲストを迎えるのだが、この日はLUCKY TAPES。フジロックにも出演している3人組である。
3人組ではあるが、ライブではパーカッション、女性コーラスにホーン隊も加えた9人編成で、いかにもcero以降を感じさせる、ワールドミュージックの要素を含んだインディポップというサウンド。
しかしながらトランペット、トロンボーン、サックスというホーン隊の3人は演奏していない時に揃ってステップを踏んだり、EXILEを彷彿とさせるダンスを踊ったり、まさかのヘドバンをしたりと、ただ単に人数と楽器が多くて豊かなサウンドというわけではなく、視覚的にも楽しませてくれる。
そのサウンドの上に乗る高橋海の歌声は実に甘くスイートで、自身の声によく合ったサウンドを選んだ音楽をやっているという印象。
30分足らずという実に短い時間だったが、最後には秋にリリース予定の新曲もいち早く披露され、その曲の演奏時にはスマホでの撮影も許可される。気の合う仲間たちと楽しく音楽を奏でているという雰囲気はよく伝わってきたが、そのサウンドはやはりアジカンというよりもゴッチのソロに近い。そういう意味ではアウェー感はかなりのものだったが、最後にはゆったりと体をサウンドに委ねて聴き入っている人もかなりいた。
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしてアジカン。特になんのSEもなしに19時半過ぎに実にフラッとメンバーと、もはやおなじみのサポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)がステージに現れると、
「あの娘がスケートボード蹴って
表通り 飛ばす」
と相変わらずのパーマっぷりのゴッチが歌い出す最新シングル「荒野を歩け」でスタート。基本的にゴッチの歌は平熱と言っていいような、サビで張り上げたり高くなったりしない曲だが、最後のサビ部分では
「踊れよ 歌えよ ラルラルラ」
というフレーズをぴょんぴょんと小さく飛び跳ねながら歌うくらいに漲っている。
そして何よりこの曲は喜多のギターが最高にカッコいい。歴代の曲の中でも1番と言っていいくらいで、「下北系ギターロック」というシーンの中から出てきたバンドの中で最も巨大と言ってもいい存在になったアジカンが、どんなに若い人に「ギターは音がうるさい」と言われようとも、自分たちはギターロックバンドであり、それが何よりもカッコいいサウンドなんだ、という自負を持って鳴らしているかのよう。20年目にしてこの自己最高を更新していくあたりが今でも最前線にいるバンドたる所以。
ゴッチの喜多のギターの掛け合い的なライブでのイントロアレンジから、伊地知潔が細かくリズムを刻んでいく「ブルートレイン」。イントロの深い底にいるようなキーボードのサウンドから一気にサビで飛翔していくような「踵で愛を打ち鳴らせ」は、シモリョーが単なるサポートメンバーではなく、もはやアジカン第5のメンバーとして欠かせない存在であることがよくわかる。サングラスをかけて演奏していた春フェスでのゴッチバンドの時よりも明らかに笑顔で楽しそうに演奏しているようにも見える。
ゴッチが軽く挨拶すると、バンドのダイナミズムが炸裂する「アフターダーク」、山田の堅実なベースのイントロからセッション的に展開していくイントロがシングルカットされたバージョンのアレンジに生かされた「Re:Re:」と、ワールドツアー用らしい、アジカンのど真ん中というか、最もわかりやすい部分を行くような曲が続いていく。
NUMBER GIRLから強い影響を受けた、東洋的なインパクトの強いイントロのギターリフの「N.G.S」は、以前ゴッチがインタビューで
「やっぱりこの曲みたいな東洋的なギターと日本的なメロディを融合させた曲が1番世界でもアジカンのサウンドとして認知されているというか、いろんな国に行っても盛り上がるんだよね」
と語っていただけに、ワールドツアーならではのキラーチューンとも言える。
近年ではあまり演奏されなくなった曲だが、その印象的な喜多のリフとユニゾンするシモリョーのキーボードがさらに疾走感を際立たせており、こういう部分はトリビュートアルバムでこの曲をカバーした、夜の本気ダンスの影響もあるのかもしれない。
そのままアウトロから繋がるように演奏された、「荒野を歩け」のカップリング曲「お祭りのあと」は近年カップリングで活躍を見せる、喜多ボーカル曲。ゴッチとは対照的なハイトーンボイスは長い尺のライブの中ではいいアクセントになっており、ギターに専念するゴッチもどこか解放感を感じる。
しかしながらMCでは
ゴッチ「今の曲はワールドツアーで自らをアピールすべく、絶対やりたい曲って健さんが言い出して(笑)」
とすぐさまいじられ、
喜多「一言も言ってないですよ(笑)」
と弁解しながら、
「ベッドルームから一歩 別世界に連れ出したいから」
というフレーズがまさにライブ会場という別世界に連れ出されたかのように響く「夜のコール」、言葉遊びとイントロのギターサウンドが面白い人気曲「稲村ヶ崎ジェーン」と続き、「アンダースタンド」では観客が飛び跳ねながら「イェー!」と叫ぶのだが、当のゴッチ本人は最初に叫ぶ部分で思いっきり
「イエス」
と言っていたので、少し肩透かしを食らったような気分になる(笑)
バンド感の強かった前半からは一転して打ち込みのサウンドとリズムが会場を包み、そのサウンドに合わせるように演奏されたのは「1.2.3.4.5.6. Baby」。ゴッチの歌唱は素晴らしい伸びを見せているが、歌詞の内容からして、この曲も「N.G.S」同様にワールドツアーだからこそセトリに入った曲なのかもしれない。打ち込みのサウンドも含めてアレンジはバンドの最新系というような形に変わっているが。
「ちょうどいい規模感だよね。武道館とか幕張メッセはちょっと広すぎる(笑)
昔、全然売れてない頃に川崎クラブチッタでライブやらせてもらったことがあるんだけど、友達呼びまくっても最前列くらいにしか人がいなくて。それより後ろは誰もいない(笑)
それで終わったらノルマで6万円くらい取られた(笑)
今日は後ろの方とか2階席もいっぱいで…俺は背が低いから全員は見えないけど(笑)、1番後ろまで届くように演奏するから。
歳を取って、聴いてくれる人が全滅してきたら、下北沢SHELTERとかでやり続けるから(笑)」
とやはり独特の自虐を含めたユーモアを交えながらも、アジカンを一生続けていくという宣言。さすがにSHELTERくらいまではいかないというか、この規模はずっと満員のままで続いていくと思うけれど。
「健さんのリクエストで」
と前置きされた「惑星」からは再び力強いバンドサウンドに戻り、もはやどの曲よりもバンドの代名詞的な曲になった「リライト」含め、間奏ではセッション的な演奏が展開される。
さらにバンドのサウンドが力強さを増していくのは「Easter」「Little Lennon」という「Wonder Future」収録曲だが、このアルバムがアジカンの基礎筋肉をさらに底上げして、当時活動が本格化してきていたゴッチのソロとアジカン本体との役割の違いを明確にしたアルバムであるということが、ライブ終盤になってさらに強さと、さらには重さまでも増していくサウンドによってよくわかる。(個人的にはこのアルバムからなら「Planet of the Apes」も聴きたいところだが)
そしてその基礎筋肉の向上と、「アジカンはスケールの大きなロックを鳴らすバンドである」という認識の再確認が、「荒野を歩け」や「ブラッドサーキュレーター」という近年のシングルの名曲連発っぷりに繋がっている部分は間違いなくあるはず。
ゴッチが鳴らすささやかなギターの音色に大歓声があがったのは、ファンの人気投票1位、つまりファンに最も愛されている曲である「ソラニン」。作詞がゴッチではないというリリース当時の賛否両論も遥か彼方、トリビュートアルバムでこの曲をエモーショナルが爆発するようにカバーして本格ブレイクの足がかりにしたyonigeに触発されたかのように、この日はゴッチのボーカルとアウトロの喜多の轟音ギターが今までよりも一層エモーショナルに響いた。この曲はそうしたアレンジの方が情景をさらに呼び起こせるということがわかったのだろう。
そしてこの日が旅の始まりであるとはいえ、
「旅の先にどんな結末が待っていたって
走り出してしまったんだ」
とさらにその先を見据えているかのような「Wonder Future」から、シモリョーに導かれるようにして手拍子とコーラスに観客が参加することによって、アジカンとともに今を生きている、ということを実感させてくれる「今を生きて」で多幸感に包まれながら、メンバーたちはゆっくりとステージを去って行った。
アンコールでは特になんの変わりもなく登場し、
「アジカンTシャツくらい着て出てくればいいんだけどね、自分のTシャツ着たくないんだよね(笑)
みんなが着てきてくれるのはいいんだけど。そしてみんながライブ以外の場所で着てくれるのも嬉しいんだけど。でもライブ以外の場所では俺は絶対着たくない(笑)見つけて欲しい人みたいになっちゃうから(笑)」
と物販ネタで笑わせつつ、特になんの告知もないと言いながら自身のソロの新作が物販にあることをちゃっかりアピールし、近年はライブ中にところどころ歌詞が飛ぶ部分があるものの、ゴッチのファルセットボーカルは歳を重ねるごとに上手くなってきているのを実感させられる「未来の破片」から、「自分の信じたことを自分の意志を曲げずに続けていればいつかそれは身を結ぶ」という近年のアジカンのまさにスタンダードな姿勢そのものを少女に投影して歌った「Standard」でゴッチは歌いながら自身のギターを高く掲げる。その姿は
「誰にも見向きをされなくて」
という時代を乗り越えて、こうして今でもこのステージに立っているという誇りを感じさせた。
で、最後は「遥か彼方」かな?と思っていたら、これで終わりだった。あまりにも終わり感のない終わり方だっただけに、メンバーが楽器を置いてステージから去る時には「え!?終わりなの!?」みたいな空気が会場に充満していた。この空気はメンバーも明らかに感じ取っていただけに、翌日以降はどうするのだろうか。
この後、バンドは7月から南米を廻る。海外ツアーではスタッフが最小人数しかいないだけに、必然的にメンバー間の会話やコミュニケーションが増えると聞く。アジカンはなかなかツアー中もメンバーが揃って行動するようなバンドではないだけに、今回の海外での生活と経験がどうバンドの活動にフィードバックされていくか。きっとドキュメンタリー的な映像も回すと思われるけれど。
そしてワールドツアーだけに、こうして見るとアジカンの代表曲的な部分を軸にしつつ(とはいえ「君という花」や「ループ&ループ」はやっていないが)、久々の曲もやるという内容。アジカンは昔はこういうバンドではなかった。むしろツアーはおろか、フェスでもマニアックな曲をやって客席を固まらせるということも何度もあった。
でも今はもうそういうことはしない。これまでの活動の中で手に入れた、「みんなのアジカン」に応えるようなライブをやり、まだまだこの席は譲らねぇぞ、とばかりにロックシーンの最前線とど真ん中を背負っている。そしてトリビュートや対バンなどで若いバンドから新たな刺激をもらい、それを燃料にしてさらなる名曲を生み出してライブをやりながら進んでいく。その姿は他のどのバンドよりもロックの王道を歩んでいる。
大学生の時に結成してからもう20年。潔が入ってからも19年くらい。時によって様々なサポートメンバーを加えたりしたが、自分はこの4人のアジカンしか知らない。それはメンバーが変わっていないから当然の話なのだが、アジカンの背中を見て音楽を始めて、すでに何度もアジカンと同じステージに立った一回り下、つまり結成10年を超えたバンドたちには、メンバーやバンドの形が変わらざるを得なくなってしまったバンドも多い。その姿を見ていると、アジカンがこの4人でずっと続いてきたこと、加えて今でもアリーナクラスでライブができることの物凄さが本当によくわかるし、形が変わってしまったバンドたちも、本当はアジカンのような境地に達したかったはずだと思う。
だからこそ、アジカンはこの4人でなければいけないというのがライブを見ていると年月を経るたびに強くなってきている。どんなに地味でも、ボーカル以外がほとんど喋らなくても、この4人が揃って演奏しているところを、それこそゴッチが言ったように、ライブに来ていた人がくたばりはじめてSHELTERがようやく埋まる、みたいな状況になっても見続けていたい。
かつて自分が海外のロックバンドを聴くようになったり、音楽の幅が一気に広がったのはアジカンに出会って、NANO-MUGEN FES.に行ったりするようになってから。そうした様々な音楽の入り口になるという意味でも、アジカンが今でもこうして最前線にいる意義は本当に大きい。これからも、いけるところまでその役割を担っていて欲しい。
1.荒野を歩け
2.ブルートレイン
3.踵で愛を打ち鳴らせ
4.アフターダーク
5.Re:Re:
6.N.G.S
7.お祭りのあと
8.夜のコール
9.稲村ヶ崎ジェーン
10.アンダースタンド
11.1.2.3.4.5.6. Baby
12.惑星
13.リライト
14.Easter
15.Little Lennon
16.ソラニン
17.Wonder Future
18.今を生きて
encore
19.未来の破片
20.Standard
荒野を歩け
https://youtu.be/AbaGY7TWq8A
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