7日の夜、Twitterで、とあるレコード会社のアカウントによる、
「YANKEE 0508 1830~ o-crest」
というツイートがいきなり投下された。このツイート元のREISSURE RECORDSは、先日リリースしたアルバム「YANKEE」がオリコン初登場2位を記録した米津玄師の所属会社であり、「米津玄師がシークレットでライブをやるのではないか?」という憶測を呼んだ。
ボカロプロデューサー、ハチとしての活動を経て2年前にアルバム「diorama」で本人名義&本人歌唱によってデビューを果たすも、これまでに全くライブ活動を行っておらず、「YANKEE」のリリースライブとなる初ワンマンは代官山UNITという、オリコン2位の人がやるようなキャパの会場ではないだけにチケットが当選するわけもないので、もしも米津本人がライブをするんだとしたら見逃せないところである。
18:30前に到着。ツイートの通りならこの時間であるが、中央のアンプ前に立てられたギターを見て、「これは間違いない」と確信。何故ならそのギターは「リビングデッド・ユース」のPVで米津玄師が弾いていたのと全く同じものだったからである。
そして5分くらい過ぎるとバンドメンバーに続いて、ついに米津玄師が自分の目の前に姿を現す。「リビングデッド・ユース」のような黒ずくめの衣装を纏っており、非常に背が高い。バンドメンバーはギター、ベース、ドラムというオーソドックスな4人編成。
するとギターのサウンドスケープが徐々に会場を包み込んでいき、米津玄師の、深く包み込まれるような声が聴こえる。間違いなく本人だ。
「その献身の先へ 心は行く 強く
その諦観の奥へ 言葉は行く 深く」
と、ボカロではなく己の声で歌うことの決意表明のような、「diorama」のオープニング曲、「米津玄師」としての始まりの曲「街」でスタート。
続いては「YANKEE」からの和なテイストの「百鬼夜行」。ギターとベース、さらにはドラムまでもがコーラスを務め、曲の再現性は高い。「YANKEE」はバンドサウンドでレコーディングされたので、「diorama」と違ってライブで演奏されることを想定したのではないだろうか。
ギターの方の、
「YANKEEというバンドです。今日が初ライブなんですが、大好きな曲ばかり持ってきました」
というMCのあとはこちらも「YANKEE」からの「ホラ吹き猫野郎」。ちょっと米津玄師は明らかに他のメンバーに比べてライブ慣れしておらず、フレーズの歌い出しを歌えてないところも少々あった。
「すごい暑くないですか?目の前の人はわかると思うんですけど、汗ダクです。こんなに暑いとは思わなかった…」
と、やはりライブには慣れていない模様。ちなみにエフェクターのスイッチ踏んだ後に頭をマイクにぶつけるという場面もあった。
「次で最後の曲です。ありがとうございました」
と言っても観客からのリアクションはおこらず。シークレット的な登場なので観客の人数自体が少なかったのもあるが、まだこの人のライブをどういったノリで楽しめばいいのか、米津玄師がライブ慣れしていないように、我々ももちろん米津玄師のライブにまだ慣れていない。
最後に演奏されたのは、すでに今年のベストアルバム候補にも上がっている「YANKEE」の中でも屈指の名曲「WOODEN DOLL」。再現性で言うと難しそうなイメージの曲だったが、ライブで聴いても限りなく名曲。だが、やはりたった4曲では全然足りない。「diorama」の曲も「YANKEE」の曲も全部ライブで聴きたいのだ。これがライブのスタート地点であるのは間違いないが、もっと長い時間この人の作った音楽と声に浸っていたいのだ。
1.街
2.百鬼夜行
3.ホラ吹き猫野郎
4.WOODEN DOLL
そのあと他の出演バンドも最後の最後、トリのアンコールまで楽しませていただく。エネルギッシュかつパワフルなロックを見せた4人組、°Cフーズ、フォークやGSなどの影響も感じつつ豊かな経験を感じさせる演奏力とMCで楽しませたソレカラ、飛び跳ねたくなるようなウキウキしたポップソングを奏でる大阪のPURPLE HUMPTY、ソリッドなスリーピースギターロックと真摯なMCで22時をまわっても観客が全く帰らずこれからの飛躍が目に見えるトリのphononというのがこの日の初見のバンド4組。
3番手で登場した、高校を卒業したばかりの4人組、赤色のグリッターは、3月の赤坂BLITZでのスペシャ列伝のオープニングアクトで見たのだが、10代とは思えないほどの曲と演奏の完成度と、10代ならではの衝動を持ち合わせたバンド。きっとこれからいろんなフェスやライブハウスで見ることになるはず。最後に演奏した、今まで出会った人に感謝を告げた曲が特に良かった。
出番が終わったあと、物販でデモCDを買ってメンバーにサインを入れていただき、ちょっと話したのだが、その瞳は本当にキラキラと輝いていた。これからの飛躍に期待せずにはいられなくなった。近いうちにデモではない流通盤が出るんだろうか。
YANKEEと赤色のグリッター以外は全然どんなバンドなのかも知らなかったけど、そういうバンドのライブ見るのはいい刺激になる。ああ、まだまだ知られてないだけでカッコいいバンドはたくさんいるんだな、って。
WOODEN DOLL / 米津玄師
http://youtu.be/QA_p90T6oy4
アイネクライネ / 米津玄師
http://youtu.be/-EKxzId_Sj4
Live at CDJ13/14 COSMO STAGE 12/29 / 赤色のグリッター
http://youtu.be/D9YFnaddcv4