amazarashi Live Tour 2017 「メッセージボトル」 追加公演 @中野サンプラザ 6/23
- 2017/06/23
- 21:55
すでに東京では今月に豊洲PITでもワンマンが行われているが、今回のツアーの追加公演として行われる(延期になった北海道の振替公演も来週に控えているが)のが、amazarashiにとってはもはやホームとも言える、中野サンプラザでのワンマン。豊洲PITはライブハウスであったが、今回はホールということで、すでに見ている内容のツアーでも違った見え方がするはず。
19時を少し過ぎた頃、amazarashiのライブではおなじみの紗幕の向こう側にうっすらとメンバーが登場する姿が見えると、ゆっくりと場内が暗転し、紗幕にバンドロゴが映し出され、その後にイチゴが次々に潰されていく映像とともに秋田ひろむのポエトリーリーディングが高い天井のホールに響き渡る「ポエジー」でライブは幕を開ける。
基本的なライブの流れ自体は同じツアーなので豊洲PITの時とほとんど変わらないが、やはりライブハウスとホールという会場が異なることによって雰囲気は全く違う。曲が終わった際の観客の拍手がライブハウスの方が音が大きかったのは人が密集しているという状況によるものだが、ホールだと視界に他の観客の姿がほとんど入らないため、より「個」としてamazarashiの曲と映像に向き合うことになる。ただでさえ曲を聴いていると「人は誰しも1人である」という事実を受け止めなくてはならないが、それを実感する場としてホールというシチュエーションほど絶好なものはない。
秋田が凄まじいほどの量の歌詞を次々に発していき、映像も相待って徐々に不穏さを増していき、
「これは全部想像だ、今日、電車に飛び込んだ男についての」
と想像を絶する帰結の仕方を見せる「メーデーメーデー」から、豊洲の時は「無題」をやったセクションで演奏されたのは、
「中野のアーケード」
という歌詞が登場する、中野だからこその「ピアノ泥棒の歌」。なぜ追加公演が中野なのか、なぜamazarashiのライブでこの会場が最もホーム感を感じるのか。それはこの曲を始め、amazarashiの曲には中野が舞台になっている曲がいくつもあるから。だから曲を聴いていて頭に思い浮かぶ景色はこの会場の周りであることが多い。(渋谷が舞台になっている曲もあるけど)
その中野で生きるというか、息を潜めている罪人やクズ人間という主人公たちがこのサブカル臭の強いこの街の空気に実によく合っている。
かつては本物のピアノが天井から吊るされている、という演出は映像によるものに変わっていたが、演出やライブ自体の流れが完全に固まっているだけになかなかセトリの変更が難しい中、こうして「その街、会場だからこそ」という曲をその時だけに演奏してくれると、その日がさらに特別なものになる。
秋田のamazarashiの根幹そのもの、というような「メッセージボトル」などのフレーズが含まれた詩の朗読から繋がるように演奏されたのは、その朗読のようにamazarashiの根幹と言える曲であり、「メッセージボトル」で2017年バージョンが再録された「つじつま合わせに生まれた僕ら」。再録バージョンに合わせて新しく作られたMVが流れるが、まさに雨曝し状態で歌う秋田の周りには、秋田の言語感覚を構成してきたであろう様々な本が並んでいる。このMVに登場する本を読むことは、amazarashiの曲を聴くことに匹敵するくらいに秋田の内面や思考の理解に繋がるのかもしれない。
「メッセージボトル」に初期の、秋田と豊川真奈美の2人だけだった時代の音源が収録された「少年少女」は、カタカナの言葉たちが降り注ぐ映像の中、その初期の形で演奏されるのだが、秋田の
「思い出なんて消えてしまえ」
という叫びにも似たボーカルのみが本当に切実に胸に響く。この曲の歌詞のように、辛いことばかりの少年少女時代を過ごしていたら、そう思ってしまうんだろうか。
そんなことを考えていると、なかなか次の曲が始まらない。普段、amazarashiは機材を変えるのにそんなに時間がかかるわけでもないのにな、と思っていると、紗幕の向こうにいたはずのメンバーは全員いなくなっており、
「ステージトラブルの影響により、一時ライブを中断させていただきます」
というアナウンスが流れ、客電が点いた。通常のロックバンドとは異なり、amazarashiは紗幕の向こう側にいるため、実際に何がどうなってこうなったのかはよくわからないため、中断中も観客も何も話すことはない。というか何に心配すればいいのかも全くわからないのである。
そんな、場内が明るい中でもライブ中と変わらない厳粛な雰囲気の中、ようやく暗転して再開かと思いきや、秋田が1人で登場し、
「ドラムの真さんが体調不良により、これ以上ライブを続けることができません。申し訳ありません。最後に1曲だけ歌います。必ずまたやりますので、チケットは捨てずに取っておいてください」
と紗幕の向こう側の事実を語り、本来なら全員でライブの最後にやるはずだったであろう「命にふさわしい」を弾き語り。残念な結果になってしまったが、1番悔しいのは秋田本人である、ということがその歌声からは痛いほどに伝わるくらい、前回豊洲で聴いた時とは声の強さが違っていた。それは歌とアコギのみという編成によるものでは決してなかったはずだ。
曲が終わると
「申し訳ありませんでした」
とだけ告げ、客電が点き、いつものように紗幕には終演を告げるバンドロゴが映し出された。
もともと、amazarashiは始まりは秋田1人だけだっただけに、やろうと思えば残りの曲も全て1人だけでやることもできるだろうし、豊川との2人編成でやることもできるはず。しかし近年秋田はライブで「バンド」という言葉を使って自分たちのことを紹介する。バンドで夢破れて今の形態になったamazarashiも、今や完全にバンドになった。バンドだからこそ見せられる景色や、バンドの音があるからこそ映える演出や映像ができた。だからこそ、代わりに一人きりでやってこの日のライブは終了、ではなく、バンド編成で最後までやり抜いてこそ、チケット代を払ってもらえるライブであるという意識なのだろう。
中止になっても、文句を言う人は全くいなかった。放心状態のような感じで席から立てない人もいたが、みんな暖かい拍手を送り、この場所に居合わせたからこそ、次にまたここで見れることを楽しみに待てるというような空気が溢れていた。
すでにこのツアーではギターでありプロデューサーである出羽良彰が体調不良で離脱し、北海道が延期になっている。それを経てもその後のツアーを続けられたからこそ秋田は
「このツアーを終えたら、バンドはもっと強くなれる」
と豊洲でのステージで言った。ベストアルバムとそのツアーでこれまでのamazarashiの歴史を総括し、さらに追加公演として決まった8月の地元である青森でのワンマンを経てバンドは新たな季節へ、という流れが見えていただけに残念ではあるが、中野という街が舞台の曲を、この中野という街でまた聴けるのを楽しみにしながら、メンバー全員が万全の状態になるのを待ちたい。その時にはきっと、過去最高に体と心が震えるライブになるはず。できれば近い将来、この中野サンプラザがなくなってしまう前に。
1.ポエジー
2.ヒーロー
3.ヨクト
4.タクシードライバー
5.ワンルーム叙事詩
6.奇跡
7.メーデーメーデー
8.ピアノ泥棒の歌
9.つじつま合わせに生まれた僕等
10.少年少女
11.命にふさわしい
つじつま合わせに生まれた僕等(2017)
https://youtu.be/Vaq2LOeFFW0
Next→ 6/24 The Mirraz @千葉LOOK
19時を少し過ぎた頃、amazarashiのライブではおなじみの紗幕の向こう側にうっすらとメンバーが登場する姿が見えると、ゆっくりと場内が暗転し、紗幕にバンドロゴが映し出され、その後にイチゴが次々に潰されていく映像とともに秋田ひろむのポエトリーリーディングが高い天井のホールに響き渡る「ポエジー」でライブは幕を開ける。
基本的なライブの流れ自体は同じツアーなので豊洲PITの時とほとんど変わらないが、やはりライブハウスとホールという会場が異なることによって雰囲気は全く違う。曲が終わった際の観客の拍手がライブハウスの方が音が大きかったのは人が密集しているという状況によるものだが、ホールだと視界に他の観客の姿がほとんど入らないため、より「個」としてamazarashiの曲と映像に向き合うことになる。ただでさえ曲を聴いていると「人は誰しも1人である」という事実を受け止めなくてはならないが、それを実感する場としてホールというシチュエーションほど絶好なものはない。
秋田が凄まじいほどの量の歌詞を次々に発していき、映像も相待って徐々に不穏さを増していき、
「これは全部想像だ、今日、電車に飛び込んだ男についての」
と想像を絶する帰結の仕方を見せる「メーデーメーデー」から、豊洲の時は「無題」をやったセクションで演奏されたのは、
「中野のアーケード」
という歌詞が登場する、中野だからこその「ピアノ泥棒の歌」。なぜ追加公演が中野なのか、なぜamazarashiのライブでこの会場が最もホーム感を感じるのか。それはこの曲を始め、amazarashiの曲には中野が舞台になっている曲がいくつもあるから。だから曲を聴いていて頭に思い浮かぶ景色はこの会場の周りであることが多い。(渋谷が舞台になっている曲もあるけど)
その中野で生きるというか、息を潜めている罪人やクズ人間という主人公たちがこのサブカル臭の強いこの街の空気に実によく合っている。
かつては本物のピアノが天井から吊るされている、という演出は映像によるものに変わっていたが、演出やライブ自体の流れが完全に固まっているだけになかなかセトリの変更が難しい中、こうして「その街、会場だからこそ」という曲をその時だけに演奏してくれると、その日がさらに特別なものになる。
秋田のamazarashiの根幹そのもの、というような「メッセージボトル」などのフレーズが含まれた詩の朗読から繋がるように演奏されたのは、その朗読のようにamazarashiの根幹と言える曲であり、「メッセージボトル」で2017年バージョンが再録された「つじつま合わせに生まれた僕ら」。再録バージョンに合わせて新しく作られたMVが流れるが、まさに雨曝し状態で歌う秋田の周りには、秋田の言語感覚を構成してきたであろう様々な本が並んでいる。このMVに登場する本を読むことは、amazarashiの曲を聴くことに匹敵するくらいに秋田の内面や思考の理解に繋がるのかもしれない。
「メッセージボトル」に初期の、秋田と豊川真奈美の2人だけだった時代の音源が収録された「少年少女」は、カタカナの言葉たちが降り注ぐ映像の中、その初期の形で演奏されるのだが、秋田の
「思い出なんて消えてしまえ」
という叫びにも似たボーカルのみが本当に切実に胸に響く。この曲の歌詞のように、辛いことばかりの少年少女時代を過ごしていたら、そう思ってしまうんだろうか。
そんなことを考えていると、なかなか次の曲が始まらない。普段、amazarashiは機材を変えるのにそんなに時間がかかるわけでもないのにな、と思っていると、紗幕の向こうにいたはずのメンバーは全員いなくなっており、
「ステージトラブルの影響により、一時ライブを中断させていただきます」
というアナウンスが流れ、客電が点いた。通常のロックバンドとは異なり、amazarashiは紗幕の向こう側にいるため、実際に何がどうなってこうなったのかはよくわからないため、中断中も観客も何も話すことはない。というか何に心配すればいいのかも全くわからないのである。
そんな、場内が明るい中でもライブ中と変わらない厳粛な雰囲気の中、ようやく暗転して再開かと思いきや、秋田が1人で登場し、
「ドラムの真さんが体調不良により、これ以上ライブを続けることができません。申し訳ありません。最後に1曲だけ歌います。必ずまたやりますので、チケットは捨てずに取っておいてください」
と紗幕の向こう側の事実を語り、本来なら全員でライブの最後にやるはずだったであろう「命にふさわしい」を弾き語り。残念な結果になってしまったが、1番悔しいのは秋田本人である、ということがその歌声からは痛いほどに伝わるくらい、前回豊洲で聴いた時とは声の強さが違っていた。それは歌とアコギのみという編成によるものでは決してなかったはずだ。
曲が終わると
「申し訳ありませんでした」
とだけ告げ、客電が点き、いつものように紗幕には終演を告げるバンドロゴが映し出された。
もともと、amazarashiは始まりは秋田1人だけだっただけに、やろうと思えば残りの曲も全て1人だけでやることもできるだろうし、豊川との2人編成でやることもできるはず。しかし近年秋田はライブで「バンド」という言葉を使って自分たちのことを紹介する。バンドで夢破れて今の形態になったamazarashiも、今や完全にバンドになった。バンドだからこそ見せられる景色や、バンドの音があるからこそ映える演出や映像ができた。だからこそ、代わりに一人きりでやってこの日のライブは終了、ではなく、バンド編成で最後までやり抜いてこそ、チケット代を払ってもらえるライブであるという意識なのだろう。
中止になっても、文句を言う人は全くいなかった。放心状態のような感じで席から立てない人もいたが、みんな暖かい拍手を送り、この場所に居合わせたからこそ、次にまたここで見れることを楽しみに待てるというような空気が溢れていた。
すでにこのツアーではギターでありプロデューサーである出羽良彰が体調不良で離脱し、北海道が延期になっている。それを経てもその後のツアーを続けられたからこそ秋田は
「このツアーを終えたら、バンドはもっと強くなれる」
と豊洲でのステージで言った。ベストアルバムとそのツアーでこれまでのamazarashiの歴史を総括し、さらに追加公演として決まった8月の地元である青森でのワンマンを経てバンドは新たな季節へ、という流れが見えていただけに残念ではあるが、中野という街が舞台の曲を、この中野という街でまた聴けるのを楽しみにしながら、メンバー全員が万全の状態になるのを待ちたい。その時にはきっと、過去最高に体と心が震えるライブになるはず。できれば近い将来、この中野サンプラザがなくなってしまう前に。
1.ポエジー
2.ヒーロー
3.ヨクト
4.タクシードライバー
5.ワンルーム叙事詩
6.奇跡
7.メーデーメーデー
8.ピアノ泥棒の歌
9.つじつま合わせに生まれた僕等
10.少年少女
11.命にふさわしい
つじつま合わせに生まれた僕等(2017)
https://youtu.be/Vaq2LOeFFW0
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