チャットモンチー チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017 @EX THEATER ROPPONGI 6/19
- 2017/06/20
- 00:20
強力なサポートメンバー陣を加えたバンド編成でのライブにバンド2度目となる日本武道館でのワンマンライブでケリをつけ、最近は2人編成に戻り「チャットモンチー・メカ」として活動している、チャットモンチー。橋本絵莉子はPeople In The Boxの波多野裕文とユニットを結成しているが、チャットモンチーとしても精力的にシングルをリリースしており、この編成で初めて廻る全国ツアーとなる。
3月から始まったツアーもこの東京でのEX THEATERでの2daysでファイナルとなり(4月の札幌と帯広が橋本の体調不良で中止→振替となったので、結果的には北海道でファイナルを迎えることになる)、この日は2daysの初日。
「機械仕掛けの秘密基地」というツアータイトルの通りに、ステージにはビックリするくらいに様々な楽器や機材に加えてオブジェが並んでおり、19時を過ぎるとリズミカルなベースの音が強いSEで2人が登場し、向かい合う形で2人ともキーボードの前に座り、ヘッドホンを装着する。
「何が始まるの?」
という客席の状態の中、同期も使ったツインキーボードという編成で「レディナビゲーション」からスタートし、
あっこ「いやー、みなさんポカンとしてますね~(笑)」
絵莉子「チャットモンチーが東京でワンマンをやるのは武道館以来になります」
あっこ「機械が苦手な我々ですが、その機械と真正面から取っ組み合いたいと思ってます。私たちはメカットモンチーと呼んでます」
と話しだし、同じ編成で「隣の女」、さらには「恋の煙」までも演奏するのだが、スリーピースならではのソリッドなギターロックだったこの曲が、ギターもなければベースもドラムもないこの編成ではダンサブルなアレンジになっており、このツアーが単なる「足りないところを同期で補う」というものではなく、「チャットモンチーの曲を解体し、この編成で再構築する」という、これまでとは全く違う内容のものであることが一発でわかる。
「今日誕生日の人いる?」
と唐突に2人が客席に語りかけると「バースデーケーキの上を歩いて帰った」を演奏するのだが、
「バースデーソングだから、サビになったら今日誕生日の人をみんなでお祝いしてあげよう!」
ということで、サビに入ると3人ほどの誕生日を迎えた人に向けて観客から暖かい拍手が起きる。誕生日とはいえ、まさかこんなにたくさんの人に祝われることになるとはその人たちも思っていなかったであろう。
あっこ「えっちゃん、今どこにいるの?」
絵莉子「築地から豊洲に移動しようとしてるところ」
と時事ネタを交えながら、本人たちいわく「吉本新喜劇的な」小芝居を挟み、絵莉子があっこの横に移動し、あっこがバスドラとキーボード、絵莉子がバスドラ以外のドラム部分を叩くというとんでもない編成で、地元徳島のマラソンのテーマソングになった「止まらん」を演奏。CDでは徳島の後輩であるサポートドラマーを加えた3ピースロックバンドという形態だったが、2人でドラムとキーボードという、CDよりもさらに削ぎ落とされた形になっている。
今度は2人がもともと絵莉子がいた上手側に移動するのだが、その時にもわざわざヘリコプターの音を出しながら、「ヘリコプターで移動する」という小芝居をやりながら移動。
あっこ「六本木と言えば、昔上京したばかりの時に、えっちゃんが屈強そうな黒人の人に「コドモ、ゲンキカ!」って言われたことがあって(笑)
えっちゃんはやっぱり外国の人からは子供に見えるんやな、って(笑)」
と六本木、ひいては東京での思い出を語り、
絵莉子「東京で酔っ払った時に作った曲」
と思わぬ形で曲の背景を知ったのは、絵莉子がアコギであっこはベースという、一転して弦楽器だけで演奏された「いたちごっこ」。さらに絵莉子がアコギ、あっこは自身の位置に戻ってキーボードという、アコースティック色が強い形で演奏された「染まるよ」は、元からこうしたアレンジで演奏されるのを想定していたかのように優しく温かく音が広がっていく。
絵莉子がエレキ、あっこがドラムという最小限でのバンド編成になると、
あっこ「ここからはメカットモンチーで上げていきますよ!」
と言ってバスドラに合わせて手拍子も起こり、観客もだんだん2人だけのライブに慣れてきたところで「変身」のgroup_inouによるリミックスバージョンをバンドサウンド+同期という形で披露。ちなみにcpのラップ部分も2人で演奏しながらこなすが、この曲をライブで聴くと、group_inouのライブが見たくなる。それはもう叶わないことなのかもしれないけど。
そのまま「8cmのピンヒール」と続くのだが、絵莉子の声がどこかおかしい。高音部分が明らかに出ておらず、歌い切れていない。それでもなんとか歌える範囲で歌い切ると、
「声がおかしくなってしまった。ごめんな。でも、できるとこまでやるから」
と言って中断することも休憩を取ることもなくそのまま続け、その後もしきりに謝っていたのだが、そのあとは本人が気にするほど声が出なかったりすることはなかった。しかし本人はやはり納得できていなかったのだろうけど、落ち込む素ぶりも全く見せずに曲に向き合う姿勢は、初めてチャットモンチーを聴いた時の
「女子だけのバンドでこんなにカッコいいのか!」
と衝撃を受けた時から全く変わっていない。それは見た目だけではわからない、内面に持っているロックバンド、アーティストとしての誇りのようなもの。
そこからは近年のシングル収録曲が続くが、これらの曲はライブで聴くのはこの編成が初めてなため、CDとはやはり多少はアレンジが違えど、変化した感じはほとんど感じない。
「majority blues」では絵莉子が初めてライブハウスに行った時の感情を
「初めての耳鳴りが不安だった」
とメロディに対して字余り的に歌うのだが、もしかしたら当時の絵莉子と同じように、この日が人生で初めてのライブハウスという人もいるかもしれない。その状況でこの曲を聴いたら、間違いなくこの曲は自分のための曲として聞こえるんだろうな。
あっこ「年末にM-1グランプリを見てこの曲を作ったんやけど、お笑いってすごいよな。普段、いろんなことを考えてしまうんやけど、お笑い番組見てる時だけは絶対全て忘れて笑ってられるもん。だからこの曲は絶対PVにお笑い芸人の人に出てもらいたいと思って、えっちゃんの好きなテツandトモさんに出てもらったんやけど、おかげで全然曲が耳に入ってこないPVとして話題になりました(笑)」
と言って演奏されたのは最新シングル「Magical Fiction」。お笑いのくだりはインタビューでも語っていたので、そういう歌詞になっているのはわかるのだが、サウンドも元からこの編成で演奏するのを念頭に入れていたんだろうか。これまでのチャットモンチーと違って曲先で作られただけに、歌詞と曲のバランスも今までよりも通常のポップフォーマットらしさを感じる。
打ち込みの音の上に絵莉子のギターとあっこのドラムが乗る中で「こころとあたま」「湯気」という疾走感のあるロックチューンはメドレー的にアレンジされる形で演奏されると、爽やかかつダンサブルな打ち込みのサウンドに2人の力強い演奏が融合する「風吹けば恋」と畳み掛けてグングンと熱気に満ち溢れ、それまではじっと演奏を見つめるようだった観客も飛び跳ねたりしながら楽しむようになっていく。
そして最後まで絵莉子は声について謝りながら(もうこの辺りでは全然おかしな感じはしなかったけど)、
「最後は知ってる曲やからみんなで歌って!」
とあっこがベースを持ち、あの独特なベースラインのイントロから始まった「シャングリラ」で大合唱を巻き起こし、やはり少し申し訳なさそうにしながら2人はステージを去っていった。
アンコールでは2人が物販のロンTに着替えて登場し、若干意味不明なコール&レスポンスをしてから、2人とも帽子をかぶり、あっこがサンプラーを持ちながら、スチャダラパーとコラボした「M4EVER」を披露するという予想だにしない展開。なぜなら2人は演奏せずにフルにラップをしたからである。曲の中で母親役である絵莉子は自身のパートをこなし、スチャダラパーのパートはあっこが担当したのだが、あっこはやはり呂布らとも親交があるだけに、普通にラップができる。また電気グルーヴの「N.O.」のフレーズが入っているところもポイントである。
2人がギターとドラムに戻って曲を締めると、そのまま最後に演奏されたのは「満月に吠えろ」。絵莉子はAメロで手を上げたり振ったりしながら歌うのだがそのたびに
「東京タワーだよ」
とか言ったりするのが実に微笑ましかった。
演奏が終わるとやはり少し申し訳なさそうにしながらステージを去っていったので、気にしすぎだろう!とも思ったし、明日は大丈夫なのだろうか、とも思ったが、かつて久美子が抜けて2人になった直後のライブは、「絶対このバンドを続けてやる」「2人になったから終わったなんて言わせねーぞ」という2人の怨念や執念のようなものが演奏している姿から溢れ出まくっていて、見るたびに泣けてしまっていたのだが、今は当時ほど切迫した空気はなく、むしろ2人で「この曲こうやったら面白いんちゃう?」「それなら鍵盤やな」などのやり取りをしつつ、本人たちが1番楽しんでいるのがよくわかる。とはいえ、まだサポートを入れたバンド編成の先の、2人きりでどうやっていくかを手探りしながらやっている感じもある。ずっとこのやり方でやっていくわけではないと思われるだけに、次はどんなライブで我々を驚かせるんだろうか。
そして3月にBase Ball Bearのライブを見て、その後にRADWIMPSのライブを見て、今月は9mm Parabellum Bulletとチャットモンチーを見た。同年代にして、みんなバンドの形がデビュー当時と変わっても続けることを選んだバンド。
だからこそ、今ミュージックステーションに出たり武道館でワンマンをやるようになったバンドの中にも、10年経ったら形が変わっているバンドも出てくる。何を言ってるんだ、と思われるだろうけど、チャットモンチーをはじめとした同世代のバンドたちも、形が変わるなんてこれっぽっちも思っていなかったから。なぜなら彼らはみんな、誰かがいなくなる時=バンドが終わる時というイメージを持たれていたバンドだったから。
メンバーのキャラの強さという点では今の若手バンドの方が強いバンドが多いし、SNSをやってることによって、それぞれがどんな人なのかも知りやすい。でも、同世代のバンドたちと今の若手バンドの多くが違うのは、同世代のバンドたちは10代の時からずっと同じ場所で活動してきて、メンバー全員がずっと同じ景色を見てきた。(だからメンバー感に年齢差があるバンドや、出身地が離れているメンバーがあまりいない)
どちらがいいという話ではないけれど、そういうメンバーによるバンドだったからこそ、キャラや技術よりも、そのメンバーでいることが何よりも大事だった。だからこそ前述のように誰かがいなくなる=バンドの終わりだと思っていたけれど、彼らはみな止まらずに続けることを選んだ。年齢的に社会に出て10年。バンドじゃなくても、続けることの難しさを身をもって痛感してしまう年齢だ。だからこそ、形が変わっても続けていこうとする姿に、どんな言葉以上に力をもらえる。そういうバンドたちと、これから先もずっと一緒に年齢を重ねて、何十年かしたら、「あの頃は大変だったんだよなぁ」って笑いながら話せるような時が来たら。
1.レディナビゲーション
2.隣の女
3.恋の煙
4.バースデーケーキの上を歩いて帰った
5.止まらん
6.いたちごっこ
7.染まるよ
8.変身 (GLIDER MIX)
9.8cmのピンヒール
10.消えない星
11.majority blues
12.Magical Fiction
13.こころとあたま
14.湯気
15.風吹けば恋
16.シャングリラ
encore
17.M4EVER
18.満月に吠えろ
Next→ 6/23 amazarashi @中野サンプラザ
3月から始まったツアーもこの東京でのEX THEATERでの2daysでファイナルとなり(4月の札幌と帯広が橋本の体調不良で中止→振替となったので、結果的には北海道でファイナルを迎えることになる)、この日は2daysの初日。
「機械仕掛けの秘密基地」というツアータイトルの通りに、ステージにはビックリするくらいに様々な楽器や機材に加えてオブジェが並んでおり、19時を過ぎるとリズミカルなベースの音が強いSEで2人が登場し、向かい合う形で2人ともキーボードの前に座り、ヘッドホンを装着する。
「何が始まるの?」
という客席の状態の中、同期も使ったツインキーボードという編成で「レディナビゲーション」からスタートし、
あっこ「いやー、みなさんポカンとしてますね~(笑)」
絵莉子「チャットモンチーが東京でワンマンをやるのは武道館以来になります」
あっこ「機械が苦手な我々ですが、その機械と真正面から取っ組み合いたいと思ってます。私たちはメカットモンチーと呼んでます」
と話しだし、同じ編成で「隣の女」、さらには「恋の煙」までも演奏するのだが、スリーピースならではのソリッドなギターロックだったこの曲が、ギターもなければベースもドラムもないこの編成ではダンサブルなアレンジになっており、このツアーが単なる「足りないところを同期で補う」というものではなく、「チャットモンチーの曲を解体し、この編成で再構築する」という、これまでとは全く違う内容のものであることが一発でわかる。
「今日誕生日の人いる?」
と唐突に2人が客席に語りかけると「バースデーケーキの上を歩いて帰った」を演奏するのだが、
「バースデーソングだから、サビになったら今日誕生日の人をみんなでお祝いしてあげよう!」
ということで、サビに入ると3人ほどの誕生日を迎えた人に向けて観客から暖かい拍手が起きる。誕生日とはいえ、まさかこんなにたくさんの人に祝われることになるとはその人たちも思っていなかったであろう。
あっこ「えっちゃん、今どこにいるの?」
絵莉子「築地から豊洲に移動しようとしてるところ」
と時事ネタを交えながら、本人たちいわく「吉本新喜劇的な」小芝居を挟み、絵莉子があっこの横に移動し、あっこがバスドラとキーボード、絵莉子がバスドラ以外のドラム部分を叩くというとんでもない編成で、地元徳島のマラソンのテーマソングになった「止まらん」を演奏。CDでは徳島の後輩であるサポートドラマーを加えた3ピースロックバンドという形態だったが、2人でドラムとキーボードという、CDよりもさらに削ぎ落とされた形になっている。
今度は2人がもともと絵莉子がいた上手側に移動するのだが、その時にもわざわざヘリコプターの音を出しながら、「ヘリコプターで移動する」という小芝居をやりながら移動。
あっこ「六本木と言えば、昔上京したばかりの時に、えっちゃんが屈強そうな黒人の人に「コドモ、ゲンキカ!」って言われたことがあって(笑)
えっちゃんはやっぱり外国の人からは子供に見えるんやな、って(笑)」
と六本木、ひいては東京での思い出を語り、
絵莉子「東京で酔っ払った時に作った曲」
と思わぬ形で曲の背景を知ったのは、絵莉子がアコギであっこはベースという、一転して弦楽器だけで演奏された「いたちごっこ」。さらに絵莉子がアコギ、あっこは自身の位置に戻ってキーボードという、アコースティック色が強い形で演奏された「染まるよ」は、元からこうしたアレンジで演奏されるのを想定していたかのように優しく温かく音が広がっていく。
絵莉子がエレキ、あっこがドラムという最小限でのバンド編成になると、
あっこ「ここからはメカットモンチーで上げていきますよ!」
と言ってバスドラに合わせて手拍子も起こり、観客もだんだん2人だけのライブに慣れてきたところで「変身」のgroup_inouによるリミックスバージョンをバンドサウンド+同期という形で披露。ちなみにcpのラップ部分も2人で演奏しながらこなすが、この曲をライブで聴くと、group_inouのライブが見たくなる。それはもう叶わないことなのかもしれないけど。
そのまま「8cmのピンヒール」と続くのだが、絵莉子の声がどこかおかしい。高音部分が明らかに出ておらず、歌い切れていない。それでもなんとか歌える範囲で歌い切ると、
「声がおかしくなってしまった。ごめんな。でも、できるとこまでやるから」
と言って中断することも休憩を取ることもなくそのまま続け、その後もしきりに謝っていたのだが、そのあとは本人が気にするほど声が出なかったりすることはなかった。しかし本人はやはり納得できていなかったのだろうけど、落ち込む素ぶりも全く見せずに曲に向き合う姿勢は、初めてチャットモンチーを聴いた時の
「女子だけのバンドでこんなにカッコいいのか!」
と衝撃を受けた時から全く変わっていない。それは見た目だけではわからない、内面に持っているロックバンド、アーティストとしての誇りのようなもの。
そこからは近年のシングル収録曲が続くが、これらの曲はライブで聴くのはこの編成が初めてなため、CDとはやはり多少はアレンジが違えど、変化した感じはほとんど感じない。
「majority blues」では絵莉子が初めてライブハウスに行った時の感情を
「初めての耳鳴りが不安だった」
とメロディに対して字余り的に歌うのだが、もしかしたら当時の絵莉子と同じように、この日が人生で初めてのライブハウスという人もいるかもしれない。その状況でこの曲を聴いたら、間違いなくこの曲は自分のための曲として聞こえるんだろうな。
あっこ「年末にM-1グランプリを見てこの曲を作ったんやけど、お笑いってすごいよな。普段、いろんなことを考えてしまうんやけど、お笑い番組見てる時だけは絶対全て忘れて笑ってられるもん。だからこの曲は絶対PVにお笑い芸人の人に出てもらいたいと思って、えっちゃんの好きなテツandトモさんに出てもらったんやけど、おかげで全然曲が耳に入ってこないPVとして話題になりました(笑)」
と言って演奏されたのは最新シングル「Magical Fiction」。お笑いのくだりはインタビューでも語っていたので、そういう歌詞になっているのはわかるのだが、サウンドも元からこの編成で演奏するのを念頭に入れていたんだろうか。これまでのチャットモンチーと違って曲先で作られただけに、歌詞と曲のバランスも今までよりも通常のポップフォーマットらしさを感じる。
打ち込みの音の上に絵莉子のギターとあっこのドラムが乗る中で「こころとあたま」「湯気」という疾走感のあるロックチューンはメドレー的にアレンジされる形で演奏されると、爽やかかつダンサブルな打ち込みのサウンドに2人の力強い演奏が融合する「風吹けば恋」と畳み掛けてグングンと熱気に満ち溢れ、それまではじっと演奏を見つめるようだった観客も飛び跳ねたりしながら楽しむようになっていく。
そして最後まで絵莉子は声について謝りながら(もうこの辺りでは全然おかしな感じはしなかったけど)、
「最後は知ってる曲やからみんなで歌って!」
とあっこがベースを持ち、あの独特なベースラインのイントロから始まった「シャングリラ」で大合唱を巻き起こし、やはり少し申し訳なさそうにしながら2人はステージを去っていった。
アンコールでは2人が物販のロンTに着替えて登場し、若干意味不明なコール&レスポンスをしてから、2人とも帽子をかぶり、あっこがサンプラーを持ちながら、スチャダラパーとコラボした「M4EVER」を披露するという予想だにしない展開。なぜなら2人は演奏せずにフルにラップをしたからである。曲の中で母親役である絵莉子は自身のパートをこなし、スチャダラパーのパートはあっこが担当したのだが、あっこはやはり呂布らとも親交があるだけに、普通にラップができる。また電気グルーヴの「N.O.」のフレーズが入っているところもポイントである。
2人がギターとドラムに戻って曲を締めると、そのまま最後に演奏されたのは「満月に吠えろ」。絵莉子はAメロで手を上げたり振ったりしながら歌うのだがそのたびに
「東京タワーだよ」
とか言ったりするのが実に微笑ましかった。
演奏が終わるとやはり少し申し訳なさそうにしながらステージを去っていったので、気にしすぎだろう!とも思ったし、明日は大丈夫なのだろうか、とも思ったが、かつて久美子が抜けて2人になった直後のライブは、「絶対このバンドを続けてやる」「2人になったから終わったなんて言わせねーぞ」という2人の怨念や執念のようなものが演奏している姿から溢れ出まくっていて、見るたびに泣けてしまっていたのだが、今は当時ほど切迫した空気はなく、むしろ2人で「この曲こうやったら面白いんちゃう?」「それなら鍵盤やな」などのやり取りをしつつ、本人たちが1番楽しんでいるのがよくわかる。とはいえ、まだサポートを入れたバンド編成の先の、2人きりでどうやっていくかを手探りしながらやっている感じもある。ずっとこのやり方でやっていくわけではないと思われるだけに、次はどんなライブで我々を驚かせるんだろうか。
そして3月にBase Ball Bearのライブを見て、その後にRADWIMPSのライブを見て、今月は9mm Parabellum Bulletとチャットモンチーを見た。同年代にして、みんなバンドの形がデビュー当時と変わっても続けることを選んだバンド。
だからこそ、今ミュージックステーションに出たり武道館でワンマンをやるようになったバンドの中にも、10年経ったら形が変わっているバンドも出てくる。何を言ってるんだ、と思われるだろうけど、チャットモンチーをはじめとした同世代のバンドたちも、形が変わるなんてこれっぽっちも思っていなかったから。なぜなら彼らはみんな、誰かがいなくなる時=バンドが終わる時というイメージを持たれていたバンドだったから。
メンバーのキャラの強さという点では今の若手バンドの方が強いバンドが多いし、SNSをやってることによって、それぞれがどんな人なのかも知りやすい。でも、同世代のバンドたちと今の若手バンドの多くが違うのは、同世代のバンドたちは10代の時からずっと同じ場所で活動してきて、メンバー全員がずっと同じ景色を見てきた。(だからメンバー感に年齢差があるバンドや、出身地が離れているメンバーがあまりいない)
どちらがいいという話ではないけれど、そういうメンバーによるバンドだったからこそ、キャラや技術よりも、そのメンバーでいることが何よりも大事だった。だからこそ前述のように誰かがいなくなる=バンドの終わりだと思っていたけれど、彼らはみな止まらずに続けることを選んだ。年齢的に社会に出て10年。バンドじゃなくても、続けることの難しさを身をもって痛感してしまう年齢だ。だからこそ、形が変わっても続けていこうとする姿に、どんな言葉以上に力をもらえる。そういうバンドたちと、これから先もずっと一緒に年齢を重ねて、何十年かしたら、「あの頃は大変だったんだよなぁ」って笑いながら話せるような時が来たら。
1.レディナビゲーション
2.隣の女
3.恋の煙
4.バースデーケーキの上を歩いて帰った
5.止まらん
6.いたちごっこ
7.染まるよ
8.変身 (GLIDER MIX)
9.8cmのピンヒール
10.消えない星
11.majority blues
12.Magical Fiction
13.こころとあたま
14.湯気
15.風吹けば恋
16.シャングリラ
encore
17.M4EVER
18.満月に吠えろ
Next→ 6/23 amazarashi @中野サンプラザ