クリープハイプ presents 「ストリップ歌小屋 2017」 ゲスト:銀杏BOYZ @Zepp Nagoya 6/15
- 2017/06/16
- 08:35
過去には千原ジュニア(ロックに造詣がある芸人)という非バンドゲストというか、もはやミュージシャンではないゲストを招いて話題になったこともある、クリープハイプの対バンライブ「ストリップ歌小屋」。
今年は東名阪での開催となり、東京のUNISON SQUARE GARDEN、大阪のKANA-BOONに続いてのファイナルとなる名古屋のゲストは、近年急速に親密になった銀杏BOYZ。クリープハイプは銀杏BOYZトリビュートアルバムにも参加しているだけに、その曲の披露、さらにはコラボにも期待がかかる対バン。
・銀杏BOYZ
19時になると、真っ暗な場内の中のステージのセンター部分にスポットライトが当たる。そこに登場してきたのは峯田和伸。近年いつも着ているコートではなく、赤と黒のジャージを着ているのが新鮮である。
そのままアコギを手にすると、
「君が泣いてる夢を見たよ」
と「光」を歌い出してスタート。途中で
「名古屋まで歌いにきました、銀杏BOYZです」
と挨拶して頭を下げると、バンドメンバーたちが登場。ツアー同様にドラムは岡山健二であり、ギターに加藤綾太を加えた5人編成で、加藤と山本幹宗がノイジーなギターで場内を埋め尽くすと、ハンドマイクになった峯田はステージを転げ回りながら熱唱する。
続く「若者たち」では峯田がエレキに持ち替えるのだが、マイクを加えて絶叫するというおなじみのパフォーマンスはあれど、ギターを抱えたままダイブしたりすることはなかったのは、この日は自身の主催ライブではないからか、あるいは先日の新木場でのツアー初日でダイブした際に、客席で将棋倒しが起きて演奏が中断したからか。
今行っているツアーで名古屋に来れないだけに、今回呼んでくれたクリープハイプへの感謝を語ると、軽快なバンドアレンジの「骨」では曲の雰囲気も相まってか、あるいは峯田主演ドラマのテーマ曲としてオンエアされていたからか、一転して会場全体が温かい空気に包まれ、サポートメンバーたちのコーラスが映える「夢で逢えたら」では岡山のタイトかつ熱量を感じるドラムがバンド全体のグルーヴを高めていく。andymori時代は前任の後藤大樹が超人的過ぎたため、比べられることも多かったが、銀杏BOYZではその後藤と村井守のいい部分を併せ持っているという適任っぷりを感じさせる。まだ銀杏BOYZに参加してから数回しかライブを行っていないだけに、これからツアーを経たらどうなるんだろうか。
「名古屋でも結構、援助交際とかあるみたいでね。まぁ生きるためならやったっていいですよ。俺が女でお金なかったら絶対やってるしね。俺が友達とか全くいなくて仕事とかなんもなかったらシャブやってるだろうしね。でもそういうことやってても、生き延びてくれさえしたらいいの」
という近年の峯田が毎回している、峯田なりにこうしてライブで再会することを願うMCから、トリビュートアルバムでGOING UNDER GROUNDがカバーし、後に対バンした時にコラボしてライブで披露してからはライブ定番曲になっている「ナイトライダー」とポップサイドの曲も多く演奏されると、
「クリープハイプはメンバーもみんな大好きだし、曲も大好きだし。でも今日15時くらいに会場入ったら、若い女の子がたくさんいて。やっぱりクリープハイプとライブだと普段と違うな~って思ったけど、いざライブが始まったらいつも通りにブサイクな男とリストカッターの女しかいない気がする(笑)
でもクリープハイプのファンのみなさん、日本にクリープハイプがいることを誇りに思ってください!本当に凄いバンドだから!彼らは水臭いことが好きじゃないと思うので、水臭いことをやります」
とクリープハイプのことを峯田視点で語ってから演奏されたのは、まさかのクリープハイプ「二十九、三十」のカバー。銀杏BOYZ、というか峯田はこれまでTheピーズやコレクターズなどの、自身が影響を受けてきた先輩バンドの曲をカバーすることはあれど、後輩バンドの曲をカバーすることは全くなかったはず。そんな峯田がバンドでカバーするということは、峯田がクリープハイプを本当に人間としても音楽としても大好きであるという証拠である。
また、クリープハイプの曲は尾崎以外の声で歌うと良さが全く引き出されない(カラオケに行って歌おうとするとよくわかる)という難しさだが、峯田が尾崎とは全く異なるあの掠れが入った声で歌っても違和感を感じなかったのは、やはり峯田が歌ってもおかしくない歌詞を尾崎が綴っているからだろう。
「前に進め 前に進め」
という最後のフレーズを歌う峯田は、観客に対して、クリープハイプに対して、自分自身に対して歌っているように見えた。
そして憧れの人が自分の曲を歌っているのを、尾崎はどんな気持ちで見ていたのだろうか。この瞬間の尾崎の様子を映した映像を見てみたい。
そしてロックと出会った時の衝動を曲にした新曲「エンジェルベイビー」が、この曲でロックと出会った人たちに衝撃を与えようとしているかのように原点回帰的なパンクアレンジで響き、GOING STEADY時代から長い年月を経てバンド最大の代表曲になった「BABY BABY」では、この日は
「僕が夢の中で何度あなたを抱きしめたか、あなたはどうせわからないでしょう」
という曲終わりのセリフ部分の後にもう一度サビを繰り返し、峯田はマイクから離れて観客たちに歌を任せると、対バンのゲストとは思えないくらいの大合唱が起きる。この曲の純粋なメロディの強さを感じさせてくれる瞬間である。
そしてラストはキラッキラにポップな「ぽあだむ」。峯田はタンバリン片手にステージを歩き回りながらハンドマイクで歌い、膝を強打したんじゃないかと思うくらいの大ジャンプを最後のサビ前で見せると、その後はステージに座り込んで最後まで歌った。
銀杏BOYZやGOING STEADYの影響を受けたと語る、銀杏BOYZ以降のバンドは非常に多いが、その中でも峯田もそのバンドから影響を受けているという点において、クリープハイプは少し違った、というか特別な存在のバンドであるというのがよくわかるライブだった。だってこれから毎月のように銀杏BOYZのライブは見れるけど、「二十九、三十」のカバーは間違いなくこの日、この瞬間でしか聴ける日は他にないだろうから。
1.光
2.若者たち
3.骨
4.夢で逢えたら
5.ナイトライダー
6.二十九、三十
7.エンジェルベイビー
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
光
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・クリープハイプ
そしてこの対バンツアーの最後のステージにクリープハイプが登場。いつものようにSEも何もなしにメンバーが現れると、曲が始まる前に尾崎が口を開く。
「銀杏BOYZが「二十九、三十」をカバーしてくれて。本当に嬉しかったんだけど、憧れの人が自分の作った曲を歌ってくれた、演奏してくれた、っていう気持ちは全然なくて。むしろ曲のフレーズの通りに
「あーなんかもう恥ずかしい位いける様な気がしてる」
っていう感じなんで、負けたくないって思ってます。でも銀杏BOYZの大ファンなカオナシは銀杏BOYZのTシャツ着てるし(笑)
カオナシさん、いけるんですか?」
とカオナシに問いかけると、また髪がさっぱりしたように見えるカオナシが、
「憧れのバンドに勝ちにいきます。かかってきなさい!」
といつもの飄々とした感じとはまるっきり違う、冒頭からテンションが上がりまくっているのがよくわかる一言から、そのままイントロのベースを弾き始め、「HE IS MINE」からスタートするという飛ばしっぷり。
「なんだ名古屋はこんなもんかよ」
と尾崎は歌詞を変えて歌うが、もちろんのっけから「セックスしよう!」の大合唱で、「愛の標識」「寝癖」という疾走感のあるギターロック曲の演奏からも、少しでも良くないライブをしたら銀杏BOYZに絶対負けてしまう、だからこそペース配分など考えずにずっと全力で飛ばし続けなければ、というバンドの勢いが感じられる。そのため、普段は序盤はキツそうな時も多い尾崎の声も絶好調ではないが序盤から全てを振り絞るように歌う。
「フェスとかだと時間が短いんで、おなじみの曲を並べるだけで終わっちゃって。ツイッターとかでも「安定のセットリスト(笑)」みたいに書かれたりするんだけど、こうして長い時間ライブをやれる時はそうじゃない曲もやりたいな、と。これからもこの曲たちをライブでやるかどうかは、皆さんの盛り上がりにかかってますからね」
と言って「ABCDC」からは確かにもはやフェスでは演奏されない曲が続く。間奏ではもはや煽る必要もなく軽快な手拍子が起きる、尾崎の作家性の潜在能力を改めて感じさせる初期の代表曲「蜂蜜と風呂場」、
「名古屋の大学生」
と近くに大学があるこの会場に実にリアリティを持たせるように歌詞を変えて歌われた「週刊誌」と、確かに今や定番曲とは言えなくなった曲たちだが、ワンマンでは演奏される頻度も高い曲たちであるため、さすがに「秘宝館」のライブと比べると、そこまでレア曲という感じはしないが、フェスではやらないけど人気のある曲、というマニアックになり過ぎないようにバランスを取った選曲とも言える。
「今日は凄く機嫌が良いので、イケメンとデュエットします」
と言って尾崎がアコギに持ち替えてカオナシとのツインボーカルを披露した「グレーマンのせいにする」からは、それまでの縦ノリとは変わって、体を揺らしながらじっくりそのメロディと歌に聴き入るような空気に。
「今日のライブのことも忘れてしまうだろうけど、忘れてしまうようなことよりも、忘れられないことを少しでも増やしていけたら。今日のことも、5%くらいでいいから忘れられないことになれたら」
と言って、尾崎はギターを置いてピンボーカル、カオナシはベースからキーボードに変わり、ギターも最低限の音しか鳴らないくらいに削ぎ落とされたサウンドだからこそ「5%」は、
「この気持ちは一番搾りでも 君はスーパードライで」
というビールの銘柄を使った、上手過ぎる歌詞がしっかり頭に入ってくる。
さらに「鬼」で新たに獲得した、黒いグルーヴを全開にすると、
「10年以上前に、クラブチッタ川崎で銀杏BOYZが出たライブイベントに行って。終電なくなるくらいに時間押しまくったんだけど(笑)、銀杏BOYZのライブが始まる時に峯田さんが客席の後ろから出てきて。その時に峯田さんの腕にぶつかったんですよ。こんな形で触れ合いたくなかったな~と思いながら、峯田さんの腕はすごくつるっつるで(笑)
いざ銀杏BOYZのライブが始まったら、隣にいた、「こんな子と付き合いたいな~」って思うくらいに可愛い女の子が、人が変わったみたいに我を忘れて叫びまくってて。それが本当に悔しくて。今からそうやって、我を忘れるくらいになるような曲をやります。その時も、こうして長いMCをした後でした」
と、かつて自身が銀杏BOYZのライブを1人の観客として見に行っていた時のエピソードを話す。この時に限らず、こうしてライブを見に行っていた経験があるからこそ、尾崎は銀杏BOYZのライブの凄さを見に染みてわかっているだろうし、そのバンドに勝てるようなライブができれば、自分たちももっと凄いバンドになれるということもわかっているはず。ある意味ではこの日のライブは子供が親を超えていくための儀式のようでもある。
そして尾崎が見に行ったという「10年以上前のクラブチッタ川崎での銀杏BOYZが出たライブイベント」。「終電がなくなるくらい時間が押した」「長いMCがあった」という情報を照合すると、2004年か2006年の夏のSET YOU FREEの時だろう。2004年の時ならば、長いMCというのは、「峯田が家族ぐるみで仲良くしていた同級生の男子のイジメに加担してしまい、その男子の父親に謝りに行ったら、父親に「峯田君、なんで君までが…」と言われてしまった」というエピソードだった。
そして言葉通りに「百八円の恋」からは小川の特徴的なギターリフが曲を引っ張るアッパーな曲を連発。「社会の窓と同じ構成」からの「社会の窓」というコンボで
「最高です!」
と大合唱させると、
「お待たせしました、ヒットシングルをやります」
と言って、映画のタイアップになった最新シングル「イト」を演奏。「糸」と「意図」を巧みに使い分けた作詞は本当に素晴らしいが、サウンドもホーンの音が同期で入っていたりと、バンドのライブでの新たな扉を開いている。歌詞は元からだが、「5%」でのキーボードやブラックミュージックのグルーヴなども含め、音やバンドの構成的にも、もはや禁じ手はなく、曲を最も良い形で世に送り出したいという一心だけなのだろう。
「銀杏BOYZは昔の曲も新しい曲もやっていて。昔の曲も今やると、いい年の取り方をしてるなぁって思えるようになってて。次にやる曲も、いい年の取り方をしていけたらいいな、と思っている曲です」
と言って最後に演奏されたのは、初期からある曲であり、バンドの代表曲の一つである「イノチミジカシコイセヨオトメ」。確かに、「When I was young,I'd listen to the radio」に収録されていた時とも(この時とはメンバーも違うが)、「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」に収録された時とも、今こうして聴くとだいぶ感触が違う。ひたすらに1人の女性の孤独を感じさせる曲だったのが、今はどこか温かさを感じさせるのは、歌っている尾崎世界観がもはや1人ではなく、「バンド」で歌ったように大切なメンバーや、こうしてわざわざお金を払ってライブに来てくれる人がたくさんいるのを実感しているからだろう。完全にフィクションな歌詞だが、実はこれは尾崎の一人称の曲なのかもしれない。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「いやー、やっぱり銀杏BOYZが「二十九、三十」をやってくれたのは嬉しかったなぁ。銀杏BOYZが他のバンドのカバーをライブでやるって多分初めてなんじゃないかと思うんだけど…。
やってくれたからこっちもやるっていうんじゃ、峯田さんは喜ばないと思うんですよねぇ」
と尾崎が言った瞬間、カオナシが
「ワンツースリーフォー!」
と叫び、銀杏BOYZトリビュートでカバーした「援助交際」を披露。1番のサビを歌うと、ドラムセットの後ろを回るように、髪を後ろで束ねた峯田もステージに登場し、尾崎とボーカルを分け合う形で歌う。この曲、銀杏BOYZはツアーでもやっているが、やるようになったのは間違いなくクリープハイプがこうしてカバーしてくれたからだろうし(峯田は尾崎との対談で「カバーしてくれたのを聴いて「援助交際」ってこんなに良い曲だったんだと改めて気付いた、と語っていた)、原曲のパンクなアレンジではなく、メロディも多少変えてポップなアレンジで演奏しているのも、クリープハイプのバージョンの影響が間違いなくあるはず。尾崎は峯田に歌って貰おうとマイクから少し離れたが、峯田も歌わずにワンフレーズ飛ぶという部分もあったが、この日、自分はこの瞬間をこの目で見るために、この場所まで来た。そう思えた瞬間だったし、本当に見れて良かったと思える瞬間だった。
峯田が曲終わりであっさりとステージから去ると、
「せっかくだからもう1曲…。なんの曲やろうかな」
と言ってメンバー同士で話し合うという急遽曲を決めた感が出まくりの状態で演奏されたのは、
「全部、夏のせいにしてしまいましょう!」
と言ってからの「ラブホテル」で、もう夏がすぐそこまで来ているのを実感させた。
演奏が終わり、メンバーがステージから去っていく中、なかなか帰ろうとしない尾崎は、
「これからも、本当に末長くよろしくお願いします!」
と言って投げキスを連発してからステージを去って行った。その様子からは、誰よりも自分がこの日のライブを最も楽しんだということがよく伝わってきた。
実際、クリープハイプがこの日銀杏BOYZに勝てたかどうかはわからない。しかし、少なくとも負けはしなかったのは間違いない。憧れのバンドとのライブはこのバンドをさらに強くするきっかけに絶対なるはずだし、尾崎は「いつかこうしてライブに来てる人もみんないなくなってしまうんじゃないか」と、これだけ巨大な存在になっているのに未だに心配性が抜けきらないが、新曲が次々にサウンドの広がりを見せているのを見ると、このバンドはこれからもっと「いける様な気がしてる」。
いつかまた、この2組がこうして対バンする日が来たら、名古屋どころか、北海道でも沖縄でも行ってやる、そんな気持ちになっている。つまり、メンヘラと言われることも多いクリープハイプのライブで自分は非常に前向きになれている。
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.寝癖
4.ABCDC
5.蜂蜜と風呂場
6.週刊誌
7.グレーマンのせいにする
8.5%
9.鬼
10.百八円の恋
11.社会の窓と同じ構成
12.社会の窓
13.イト
14.イノチミジカシコイセヨオトメ
encore
15.援助交際 w/ 峯田和伸
16.ラブホテル
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
援助交際
https://youtu.be/Y2MGtwB-oFc
Next→6/16 ヤバイTシャツ屋さん @新木場STUDIO COAST
今年は東名阪での開催となり、東京のUNISON SQUARE GARDEN、大阪のKANA-BOONに続いてのファイナルとなる名古屋のゲストは、近年急速に親密になった銀杏BOYZ。クリープハイプは銀杏BOYZトリビュートアルバムにも参加しているだけに、その曲の披露、さらにはコラボにも期待がかかる対バン。
・銀杏BOYZ
19時になると、真っ暗な場内の中のステージのセンター部分にスポットライトが当たる。そこに登場してきたのは峯田和伸。近年いつも着ているコートではなく、赤と黒のジャージを着ているのが新鮮である。
そのままアコギを手にすると、
「君が泣いてる夢を見たよ」
と「光」を歌い出してスタート。途中で
「名古屋まで歌いにきました、銀杏BOYZです」
と挨拶して頭を下げると、バンドメンバーたちが登場。ツアー同様にドラムは岡山健二であり、ギターに加藤綾太を加えた5人編成で、加藤と山本幹宗がノイジーなギターで場内を埋め尽くすと、ハンドマイクになった峯田はステージを転げ回りながら熱唱する。
続く「若者たち」では峯田がエレキに持ち替えるのだが、マイクを加えて絶叫するというおなじみのパフォーマンスはあれど、ギターを抱えたままダイブしたりすることはなかったのは、この日は自身の主催ライブではないからか、あるいは先日の新木場でのツアー初日でダイブした際に、客席で将棋倒しが起きて演奏が中断したからか。
今行っているツアーで名古屋に来れないだけに、今回呼んでくれたクリープハイプへの感謝を語ると、軽快なバンドアレンジの「骨」では曲の雰囲気も相まってか、あるいは峯田主演ドラマのテーマ曲としてオンエアされていたからか、一転して会場全体が温かい空気に包まれ、サポートメンバーたちのコーラスが映える「夢で逢えたら」では岡山のタイトかつ熱量を感じるドラムがバンド全体のグルーヴを高めていく。andymori時代は前任の後藤大樹が超人的過ぎたため、比べられることも多かったが、銀杏BOYZではその後藤と村井守のいい部分を併せ持っているという適任っぷりを感じさせる。まだ銀杏BOYZに参加してから数回しかライブを行っていないだけに、これからツアーを経たらどうなるんだろうか。
「名古屋でも結構、援助交際とかあるみたいでね。まぁ生きるためならやったっていいですよ。俺が女でお金なかったら絶対やってるしね。俺が友達とか全くいなくて仕事とかなんもなかったらシャブやってるだろうしね。でもそういうことやってても、生き延びてくれさえしたらいいの」
という近年の峯田が毎回している、峯田なりにこうしてライブで再会することを願うMCから、トリビュートアルバムでGOING UNDER GROUNDがカバーし、後に対バンした時にコラボしてライブで披露してからはライブ定番曲になっている「ナイトライダー」とポップサイドの曲も多く演奏されると、
「クリープハイプはメンバーもみんな大好きだし、曲も大好きだし。でも今日15時くらいに会場入ったら、若い女の子がたくさんいて。やっぱりクリープハイプとライブだと普段と違うな~って思ったけど、いざライブが始まったらいつも通りにブサイクな男とリストカッターの女しかいない気がする(笑)
でもクリープハイプのファンのみなさん、日本にクリープハイプがいることを誇りに思ってください!本当に凄いバンドだから!彼らは水臭いことが好きじゃないと思うので、水臭いことをやります」
とクリープハイプのことを峯田視点で語ってから演奏されたのは、まさかのクリープハイプ「二十九、三十」のカバー。銀杏BOYZ、というか峯田はこれまでTheピーズやコレクターズなどの、自身が影響を受けてきた先輩バンドの曲をカバーすることはあれど、後輩バンドの曲をカバーすることは全くなかったはず。そんな峯田がバンドでカバーするということは、峯田がクリープハイプを本当に人間としても音楽としても大好きであるという証拠である。
また、クリープハイプの曲は尾崎以外の声で歌うと良さが全く引き出されない(カラオケに行って歌おうとするとよくわかる)という難しさだが、峯田が尾崎とは全く異なるあの掠れが入った声で歌っても違和感を感じなかったのは、やはり峯田が歌ってもおかしくない歌詞を尾崎が綴っているからだろう。
「前に進め 前に進め」
という最後のフレーズを歌う峯田は、観客に対して、クリープハイプに対して、自分自身に対して歌っているように見えた。
そして憧れの人が自分の曲を歌っているのを、尾崎はどんな気持ちで見ていたのだろうか。この瞬間の尾崎の様子を映した映像を見てみたい。
そしてロックと出会った時の衝動を曲にした新曲「エンジェルベイビー」が、この曲でロックと出会った人たちに衝撃を与えようとしているかのように原点回帰的なパンクアレンジで響き、GOING STEADY時代から長い年月を経てバンド最大の代表曲になった「BABY BABY」では、この日は
「僕が夢の中で何度あなたを抱きしめたか、あなたはどうせわからないでしょう」
という曲終わりのセリフ部分の後にもう一度サビを繰り返し、峯田はマイクから離れて観客たちに歌を任せると、対バンのゲストとは思えないくらいの大合唱が起きる。この曲の純粋なメロディの強さを感じさせてくれる瞬間である。
そしてラストはキラッキラにポップな「ぽあだむ」。峯田はタンバリン片手にステージを歩き回りながらハンドマイクで歌い、膝を強打したんじゃないかと思うくらいの大ジャンプを最後のサビ前で見せると、その後はステージに座り込んで最後まで歌った。
銀杏BOYZやGOING STEADYの影響を受けたと語る、銀杏BOYZ以降のバンドは非常に多いが、その中でも峯田もそのバンドから影響を受けているという点において、クリープハイプは少し違った、というか特別な存在のバンドであるというのがよくわかるライブだった。だってこれから毎月のように銀杏BOYZのライブは見れるけど、「二十九、三十」のカバーは間違いなくこの日、この瞬間でしか聴ける日は他にないだろうから。
1.光
2.若者たち
3.骨
4.夢で逢えたら
5.ナイトライダー
6.二十九、三十
7.エンジェルベイビー
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
光
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・クリープハイプ
そしてこの対バンツアーの最後のステージにクリープハイプが登場。いつものようにSEも何もなしにメンバーが現れると、曲が始まる前に尾崎が口を開く。
「銀杏BOYZが「二十九、三十」をカバーしてくれて。本当に嬉しかったんだけど、憧れの人が自分の作った曲を歌ってくれた、演奏してくれた、っていう気持ちは全然なくて。むしろ曲のフレーズの通りに
「あーなんかもう恥ずかしい位いける様な気がしてる」
っていう感じなんで、負けたくないって思ってます。でも銀杏BOYZの大ファンなカオナシは銀杏BOYZのTシャツ着てるし(笑)
カオナシさん、いけるんですか?」
とカオナシに問いかけると、また髪がさっぱりしたように見えるカオナシが、
「憧れのバンドに勝ちにいきます。かかってきなさい!」
といつもの飄々とした感じとはまるっきり違う、冒頭からテンションが上がりまくっているのがよくわかる一言から、そのままイントロのベースを弾き始め、「HE IS MINE」からスタートするという飛ばしっぷり。
「なんだ名古屋はこんなもんかよ」
と尾崎は歌詞を変えて歌うが、もちろんのっけから「セックスしよう!」の大合唱で、「愛の標識」「寝癖」という疾走感のあるギターロック曲の演奏からも、少しでも良くないライブをしたら銀杏BOYZに絶対負けてしまう、だからこそペース配分など考えずにずっと全力で飛ばし続けなければ、というバンドの勢いが感じられる。そのため、普段は序盤はキツそうな時も多い尾崎の声も絶好調ではないが序盤から全てを振り絞るように歌う。
「フェスとかだと時間が短いんで、おなじみの曲を並べるだけで終わっちゃって。ツイッターとかでも「安定のセットリスト(笑)」みたいに書かれたりするんだけど、こうして長い時間ライブをやれる時はそうじゃない曲もやりたいな、と。これからもこの曲たちをライブでやるかどうかは、皆さんの盛り上がりにかかってますからね」
と言って「ABCDC」からは確かにもはやフェスでは演奏されない曲が続く。間奏ではもはや煽る必要もなく軽快な手拍子が起きる、尾崎の作家性の潜在能力を改めて感じさせる初期の代表曲「蜂蜜と風呂場」、
「名古屋の大学生」
と近くに大学があるこの会場に実にリアリティを持たせるように歌詞を変えて歌われた「週刊誌」と、確かに今や定番曲とは言えなくなった曲たちだが、ワンマンでは演奏される頻度も高い曲たちであるため、さすがに「秘宝館」のライブと比べると、そこまでレア曲という感じはしないが、フェスではやらないけど人気のある曲、というマニアックになり過ぎないようにバランスを取った選曲とも言える。
「今日は凄く機嫌が良いので、イケメンとデュエットします」
と言って尾崎がアコギに持ち替えてカオナシとのツインボーカルを披露した「グレーマンのせいにする」からは、それまでの縦ノリとは変わって、体を揺らしながらじっくりそのメロディと歌に聴き入るような空気に。
「今日のライブのことも忘れてしまうだろうけど、忘れてしまうようなことよりも、忘れられないことを少しでも増やしていけたら。今日のことも、5%くらいでいいから忘れられないことになれたら」
と言って、尾崎はギターを置いてピンボーカル、カオナシはベースからキーボードに変わり、ギターも最低限の音しか鳴らないくらいに削ぎ落とされたサウンドだからこそ「5%」は、
「この気持ちは一番搾りでも 君はスーパードライで」
というビールの銘柄を使った、上手過ぎる歌詞がしっかり頭に入ってくる。
さらに「鬼」で新たに獲得した、黒いグルーヴを全開にすると、
「10年以上前に、クラブチッタ川崎で銀杏BOYZが出たライブイベントに行って。終電なくなるくらいに時間押しまくったんだけど(笑)、銀杏BOYZのライブが始まる時に峯田さんが客席の後ろから出てきて。その時に峯田さんの腕にぶつかったんですよ。こんな形で触れ合いたくなかったな~と思いながら、峯田さんの腕はすごくつるっつるで(笑)
いざ銀杏BOYZのライブが始まったら、隣にいた、「こんな子と付き合いたいな~」って思うくらいに可愛い女の子が、人が変わったみたいに我を忘れて叫びまくってて。それが本当に悔しくて。今からそうやって、我を忘れるくらいになるような曲をやります。その時も、こうして長いMCをした後でした」
と、かつて自身が銀杏BOYZのライブを1人の観客として見に行っていた時のエピソードを話す。この時に限らず、こうしてライブを見に行っていた経験があるからこそ、尾崎は銀杏BOYZのライブの凄さを見に染みてわかっているだろうし、そのバンドに勝てるようなライブができれば、自分たちももっと凄いバンドになれるということもわかっているはず。ある意味ではこの日のライブは子供が親を超えていくための儀式のようでもある。
そして尾崎が見に行ったという「10年以上前のクラブチッタ川崎での銀杏BOYZが出たライブイベント」。「終電がなくなるくらい時間が押した」「長いMCがあった」という情報を照合すると、2004年か2006年の夏のSET YOU FREEの時だろう。2004年の時ならば、長いMCというのは、「峯田が家族ぐるみで仲良くしていた同級生の男子のイジメに加担してしまい、その男子の父親に謝りに行ったら、父親に「峯田君、なんで君までが…」と言われてしまった」というエピソードだった。
そして言葉通りに「百八円の恋」からは小川の特徴的なギターリフが曲を引っ張るアッパーな曲を連発。「社会の窓と同じ構成」からの「社会の窓」というコンボで
「最高です!」
と大合唱させると、
「お待たせしました、ヒットシングルをやります」
と言って、映画のタイアップになった最新シングル「イト」を演奏。「糸」と「意図」を巧みに使い分けた作詞は本当に素晴らしいが、サウンドもホーンの音が同期で入っていたりと、バンドのライブでの新たな扉を開いている。歌詞は元からだが、「5%」でのキーボードやブラックミュージックのグルーヴなども含め、音やバンドの構成的にも、もはや禁じ手はなく、曲を最も良い形で世に送り出したいという一心だけなのだろう。
「銀杏BOYZは昔の曲も新しい曲もやっていて。昔の曲も今やると、いい年の取り方をしてるなぁって思えるようになってて。次にやる曲も、いい年の取り方をしていけたらいいな、と思っている曲です」
と言って最後に演奏されたのは、初期からある曲であり、バンドの代表曲の一つである「イノチミジカシコイセヨオトメ」。確かに、「When I was young,I'd listen to the radio」に収録されていた時とも(この時とはメンバーも違うが)、「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」に収録された時とも、今こうして聴くとだいぶ感触が違う。ひたすらに1人の女性の孤独を感じさせる曲だったのが、今はどこか温かさを感じさせるのは、歌っている尾崎世界観がもはや1人ではなく、「バンド」で歌ったように大切なメンバーや、こうしてわざわざお金を払ってライブに来てくれる人がたくさんいるのを実感しているからだろう。完全にフィクションな歌詞だが、実はこれは尾崎の一人称の曲なのかもしれない。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「いやー、やっぱり銀杏BOYZが「二十九、三十」をやってくれたのは嬉しかったなぁ。銀杏BOYZが他のバンドのカバーをライブでやるって多分初めてなんじゃないかと思うんだけど…。
やってくれたからこっちもやるっていうんじゃ、峯田さんは喜ばないと思うんですよねぇ」
と尾崎が言った瞬間、カオナシが
「ワンツースリーフォー!」
と叫び、銀杏BOYZトリビュートでカバーした「援助交際」を披露。1番のサビを歌うと、ドラムセットの後ろを回るように、髪を後ろで束ねた峯田もステージに登場し、尾崎とボーカルを分け合う形で歌う。この曲、銀杏BOYZはツアーでもやっているが、やるようになったのは間違いなくクリープハイプがこうしてカバーしてくれたからだろうし(峯田は尾崎との対談で「カバーしてくれたのを聴いて「援助交際」ってこんなに良い曲だったんだと改めて気付いた、と語っていた)、原曲のパンクなアレンジではなく、メロディも多少変えてポップなアレンジで演奏しているのも、クリープハイプのバージョンの影響が間違いなくあるはず。尾崎は峯田に歌って貰おうとマイクから少し離れたが、峯田も歌わずにワンフレーズ飛ぶという部分もあったが、この日、自分はこの瞬間をこの目で見るために、この場所まで来た。そう思えた瞬間だったし、本当に見れて良かったと思える瞬間だった。
峯田が曲終わりであっさりとステージから去ると、
「せっかくだからもう1曲…。なんの曲やろうかな」
と言ってメンバー同士で話し合うという急遽曲を決めた感が出まくりの状態で演奏されたのは、
「全部、夏のせいにしてしまいましょう!」
と言ってからの「ラブホテル」で、もう夏がすぐそこまで来ているのを実感させた。
演奏が終わり、メンバーがステージから去っていく中、なかなか帰ろうとしない尾崎は、
「これからも、本当に末長くよろしくお願いします!」
と言って投げキスを連発してからステージを去って行った。その様子からは、誰よりも自分がこの日のライブを最も楽しんだということがよく伝わってきた。
実際、クリープハイプがこの日銀杏BOYZに勝てたかどうかはわからない。しかし、少なくとも負けはしなかったのは間違いない。憧れのバンドとのライブはこのバンドをさらに強くするきっかけに絶対なるはずだし、尾崎は「いつかこうしてライブに来てる人もみんないなくなってしまうんじゃないか」と、これだけ巨大な存在になっているのに未だに心配性が抜けきらないが、新曲が次々にサウンドの広がりを見せているのを見ると、このバンドはこれからもっと「いける様な気がしてる」。
いつかまた、この2組がこうして対バンする日が来たら、名古屋どころか、北海道でも沖縄でも行ってやる、そんな気持ちになっている。つまり、メンヘラと言われることも多いクリープハイプのライブで自分は非常に前向きになれている。
1.HE IS MINE
2.愛の標識
3.寝癖
4.ABCDC
5.蜂蜜と風呂場
6.週刊誌
7.グレーマンのせいにする
8.5%
9.鬼
10.百八円の恋
11.社会の窓と同じ構成
12.社会の窓
13.イト
14.イノチミジカシコイセヨオトメ
encore
15.援助交際 w/ 峯田和伸
16.ラブホテル
イト
https://youtu.be/cxuqBH9jOSw
援助交際
https://youtu.be/Y2MGtwB-oFc
Next→6/16 ヤバイTシャツ屋さん @新木場STUDIO COAST

ヤバイTシャツ屋さん ”どうぶつえんツアー”ツアー 2017 ~ワンマン~ 追加公演 @新木場STUDIO COAST 6/16 ホーム
9mm Parabellum Bullet TOUR OF BABEL @神奈川県民ホール 6/11