[Alexandros] Tour 2016~2017 ~We Come In Peace~ @幕張メッセ 9~11ホール 4/23
- 2017/04/24
- 08:29
11月の横浜アリーナから始まった、オリコン1位を獲得する大ヒットとなった[Alexandros]の「EXIST!」を携えてのツアーも、この幕張メッセでの2daysでいよいよファイナル。この日は2日目の最終日だが、初日の時点ですでに凄まじい完成度を見せていたライブは、全国を回ってどう進化してきたのか。
初日の横浜アリーナ、12月のZepp Tokyo、そしてこの日と、このツアーは3本目の参加。前作のアルバム「ALXD」のツアーファイナルも幕張メッセであり、すっかりこのキャパが当たり前となったが、今回は幕張メッセ2days、しかも両日即完と規模はさらに拡大の一途を辿っている。
18時過ぎにこのバンドのワンマンではおなじみのスタッフによる注意事項のアナウンスが入ると、観客の手拍子に招かれるように場内が暗転し、ステージに張られた紗幕の前に吊られた6連の[]のオブジェが上空に上昇し、紗幕とステージ左右のスクリーンには、美しい夜空と、メンバーの名前が映る映像が。すると紗幕の向こうにはうっすらとメンバーのシルエットが見え、川上洋平の
「カモン、幕張!」
の一声で「ムーンソング」のコーラスの大合唱が起こる。その合唱が響いた後に曲に入り、サビ前で紗幕が落ちてメンバーの姿が現れになる。
冒頭から美しいファルセットを響かせる川上、いつものようにポーカーフェイスでギターを弾く白井、髪の一部が赤く染まった磯部、飄々とテクニカルなドラムを叩くサトヤス。いつもと同じようだが、やはりどこかファイナルならではの気合いが入っているようにも感じる。
サポートキーボードのROSEの音色が効いたバンドの演奏のドライブ感が増すイントロのアレンジが加わったインスト曲「Burger Queen」からはバンドの熱量溢れるアッパーな曲が続くが、やはりメインの見どころは「EXIST!」収録の曲たち。
スクリーンに歌詞が次々と映し出される、ヒップホップの要素を含んだ「Kaiju」ではMVに出演している着物姿の女性ダンサーが登場して踊って華を添え、川上はステージ中央から伸びた花道を歩きながら歌い、コーラス部分をガンガン観客に合唱させる。川上の高速ボーカルが連射される「Claw」もまた歌詞がスクリーンに映し出されるが、歌詞を見ながら聴くたびに、よくこんな曲を全く歌詞を間違えることなく歌えるもんだよなぁ、と感心してしまう。
ギターを抱えた川上が大ジャンプを見せて曲に入る「Girl A」では会場が揺れ、[]のオブジェが花道に降りてきて、まるでゲートのようになると、そこに歩いてきたのは白井。その白井がイントロを刻んで始まった「Kick&Spin」では川上と磯部が両サイドに散るが、途中で白井と入れ替わるように中央に戻ってきた川上は右手にマイクを持ち、左手にはカメラを持っている。そのカメラで撮っている客席の様子がそのままスクリーンに映し出されるという、花道を擁するアリーナだからこその演出を見せるが、最後には川上が自身の歌う顔を自分のカメラで映すと、全てをかっさらっていってしまう。やはりこのバンドのライブにおいては、主役は観客よりも、それぞれ華やかでロックスターのオーラを放ちまくっているメンバーなのである。
宇宙を漂う映像とともに、「EXIST!」における新機軸の一つであるアンビエントな音像の「O2」が始まると、ツアー序盤では音源の通りに抑えた演奏で間を作り出していたのが、サトヤスのドラムを中心に、よりライブだからこそのバンド感を増したアレンジになっている。音源を最初に聴いた時は、「これはバンドでどう演奏するんだ?」「打ち込みで流すのか?」とも思ったが、紛れもなくバンドだからこその曲になっている。歌というよりもサウンドの一部というようなファルセットを響かせる川上の表現力もやはり素晴らしい。
そして晴れやかな街を闊歩しているような映像とともに奏でられたのは、「Aoyama」。これもまた「EXIST!」での新機軸というような、インディーポップ、シティポップという要素を取り入れた曲である。この曲もそうだし、そうした音楽は得てして「オシャレでポップな曲」という、ロックバンドからはかなり飛距離がある形容をされがちだが、オシャレさを含んでいながらもそうした音楽と並列にならないのは、
「君が流していたあのバンドの音耐えられなくて
聴こえなくなるまで己の音で塗り替えた」
と歌われる、現行のシーンやオーバーグラウンドな音楽への反骨心。耐えられなかったバンドがどんなバンドなのかはわからないが、
「君が流してたあのバンドが聴くに耐えなくて
怒りを通り越して笑えてきてさようならをした」
と、2コーラス目ではそうした音楽を飛び越えて先に進むという意志を示している。オシャレなサウンドには似つかわしくないようなこの歌詞がこの曲をただのオシャレな曲とは一線を画す曲にしている。
続く「Feel Like」も系統的にはそうした曲になるが、MVに出演していたダンサー、[A]Girlsが登場して、花道も使ったフォーメーション抜群のダンスを華麗に披露すると、川上が花道から降りて客席のブロックの間の通路で観客にもみくちゃにされながら歌っている。どんなにオシャレ、洗練という方向に向かっても、このバンドがライブで演奏すれば、泥臭さやロックバンドとしての熱量を孕んでしまう。だからこそどんな音楽性やジャンルの音を取り入れても、この4人で鳴らせば[Alexandros]の音楽になる。「EXIST!」もそうだが、このバンドはアルバムごとにかなりガラッとサウンドが変わるという冒険をしているが、次のアルバムでまた新たな要素を取り入れても、必ずこのバンドだからこその曲になるのだろう。
ROSEのキーボードとサトヤスの細かなドラムが次第に展開していき、白井の忙しない腕と指の動きがバンドサウンドをもだいたんに動かすのは「The & tokyo2pm36floor」というインストのパート。歌がないだけにメンバーの楽器の音のみに集中せざるを得ないが、この複雑極まりない演奏を顔色一つ変えずにやってのけるメンバー(特に白井)はやっぱり上手いな~と改めて思う。その上手さもまた様々な音楽の要素を取り入れる上では重要な能力である。
「ここからもっと騒げますかー!踊れますかー!」
と川上が煽ってから始まったのは、綾野剛との共演がCMで流れた「Buzz Off!」。前回のツアーではまだ完成形と言える状態ではなかっただけに、こうして同じ場所で完成形を聴けるのが感慨深い。
さらに「Kick&Spin」とともに、アルバム「Me No Do Karate.」を象徴する曲であるハイパーな「Stimulator」から、サトヤスのドラムに合わせて観客が「オイ!オイ!」と叫ぶ「Waitress,Waitress!」でさらなる熱狂を生み出す…と思いきや、普段このイントロ部分で煽りまくる磯部が全く煽っておらず、あれ?と思っていると一旦演奏が止まる。どうやらサトヤスが曲順を間違えたらしく、
磯部「まぁ長くやってるとこういうこともある(笑)」
サトヤス「大変失礼いたしました」
と謝り、本来の曲順通りに「言え」へ。川上はラストのサビ前に貯めまくってから
「幕張の屋根吹き飛ばそうぜ!」
と言うと、当然客席からは大合唱が起こる。
そして「Waitress,Waitress!」を今度はしっかりやり切り、「クソッタレな貴様らへ」をこの日の観客に捧げてみせる。
近年このバンドのライブでは本編でMCを入れるのは1回くらいになっており、曲間を繋げたアレンジなどもあって実にテンポの良いライブを展開するようになっているが、この日はここで最初のMCらしいMC。川上が真ん中と後ろの観客に呼びかけると、11月から始まった、長かかったツアーの総括。いわく韓国や台湾でのキャパ250人ほどのキャパでのライブが印象的だったという。また、そうしたアジアでのライブでは観客のノリが日本と全然違うというのも興味深い。全く同じセトリでライブをやったとしても、国が違えば見える景色は全く違うのだろう。
そのMCからストリングスの村田一族を紹介して披露されたのは、アルバム唯一のバラード曲「今まで君が泣いた分取り戻そう」。ドラマの主題歌になったこともあり、実にキャッチーなバラード曲。かつても「涙がこぼれそう」などの名曲を世に送り出しているが、バラードやミドルテンポの曲はこのバンドの持つメロディの美しさを実感させてくれる。そしてそれこそがこのバンドの最大の武器であるということも。
アウトロでは弾き語りのような形で「サテライト」を1コーラスだけ歌ったが、次は是非この曲を久しぶりにフルコーラスで聴きたいところである。
そして「Swan」からはクライマックスへ。川上のボーカルにエフェクトをかけているのも含め、デジタルサウンドを導入した曲だが、アウトロで川上と白井がエフェクターを操作すると、次の「Run Away」のイントロがもはやトランスと言っていいくらいのバキバキなダンスミュージックに進化。
続く「Starrrrrrr」も含めて、この辺りの曲や「Kick&Spin」などは、こうしたワンマンでも、フェスやイベントなどでも毎回演奏される。それだけに年間だと何十回も聴く機会があるのだが、どれだけ聴いても全く飽きないし、ライブで聴くと毎回熱狂してしまう。どんなに良い曲でもたくさん聴くと飽きてきてしまうが、このバンドがそうならないのはアレンジを変えたりしていることもあるが、1回1回違う熱量を込めているから。それが1本1本のライブをその日だけでしかない特別なものにしているのだが、わかってはいてもそう思えるバンドってなかなかいない。そうした部分がこのバンドがこの規模まで来れた理由の一つであると思う。
そして再び村田一族が登場して壮大なサウンドを奏でるのは、若者の青春群像のような映像が実によくマッチしている「NEW WALL」。川上はハンドマイク状態で花道を歩きながら歌い、時には指揮者のように両手を振って、音をコントロールしているかのよう。そして合唱が響く客席に向かって銀テープが射出されると、本編最後に鳴らされたのは「Adventure」。かつては川上はこの曲の時にハンドマイクで歌っていたが、今ではしっかりギターを弾きながら、
「大胆な作戦で 言葉にならないマスタープランで いつだって僕たちは君を 連れて行くんだ 連れて行くんだ」
と歌う。果たして、次は我々をどんなところに連れていってくれるのだろうか。
アンコールを待つ観客の前に、スクリーンに映し出されたのは、物販などがある11ホールにメンバーがいる映像。開演前にはたくさんの人が並んでいた[]の撮影スポットで写真を撮り、柱にサインを入れるメンバー。4人がその[]の間の黒幕をくぐると、そこは客席最後方。つまり完全に生中継であり、Bブロックの間を歩いて、客席のど真ん中に作られた小さいサブステージへ。このステージも真上から見ると[]が描かれているという凝りっぷり。
ROSEも加え、川上がアコギで、このサブステージではすっかりおなじみとなった(横浜アリーナでもやっていた)「ワタリドリ」を披露し、
「みんなももう[Alexandros]のメンバーだから!」
としてサビでは合唱を促すも、やはりこの曲はちょっとキーが高すぎるので他の曲ほどの大合唱にはならず。
そして村田一族からバイオリン奏者を招き、ツアー開始時はまだリリースされていなかった最新シングル「SNOW SOUND」もこのステージで演奏される。もうすっかり季節は冬を通り越して春になったが、この曲が鳴っている時だけは冬だと言わんばかりに天井からは粉雪が降り注ぐという曲にぴったりのロマンチックな演出も。
メンバーがサブステージから降りるも、川上だけはアコギを手にしてステージに残り、
「こうして1人になると、バンド組んだ大学一年生の時を思い出す。大学入ってすぐ[Champagne]を組んだんだけど、1週間後には全員いなくなってて(笑)
それから磯部君が入って、何年かして白井君が入って。デビューしてドラムが辞めて、また悔しい思いをした時にサトヤスが入って…だからメンバーには本当に感謝してます。もしかしたらバンドをやってる人もこの中にはいるかもしれないけど、ここにいる全てのバンドマンに捧げます」
と、目の前にいない時に感謝の言葉を口にするのが川上らしいが、そう言って弾き語りをした「かえりみち」では「感極まり過ぎた(笑)」という理由でやり直し、最後にも歌詞を間違えるという珍しい場面も。
しかしながら、普段このバンドはこうした苦労話や弱い部分をほとんど口にしない。いつも今が最高、俺たちが最強という自信に満ち溢れている。しかしながらその自信を得るようになるまでバンドを突き動かしてきた原動力になっていたのは、悔しさであるということがよくわかるMCだったし、ロックスターであると同時に我々と同じ人間であるということもよくわかる。
川上がサブステージを降りる前にすでにメインステージには他のメンバーたちがスタンバイしており、川上はイントロに合わせてコーラスを何度も観客に合唱させながらステージへ向かう。イントロでコーラスを合唱できる曲といえば…そう、「Dracula La」である。もう最後だからこそ、バンドの演奏はかなり走りまくっていたが、それがさらなる疾走感とライブ感につながり、白井もマイクは通さずともはっきりと曲を口ずさんでいる。合唱も含めて、ポップな、楽しい曲であるにもかかわらず、聴いていて泣けてくるような感覚に陥ったのは、あまりに素晴らしいライブだったから。それはこの曲もそうだし、この曲にいたるまでのこの日のライブの全てが。
演奏が終わるとエフェクターを操作し、「Burger Queen」のアウトロのアナウンス音が流れて終了…というのがいつものパターンなのだが、この日はそれでも客電が点かず、川上とサトヤスが2人でステージに現れ、
「終わりたくないから、自発的にアンコールやりにきました!」
と言い、川上がアコギ、もちろんサトヤスはドラムだが、ギターとドラムだけという、White Stripesな編成で「Kaiju」を演奏。重厚なバンドサウンドからアコースティック主体になるとイメージが全く変わるというか、ヒップホップ色すらも薄れたように聴こえるのが不思議。当然このサウンドでは本編で出てきたダンサーが出てくることもない。
そんな、ライブでしか聴けないアレンジの後に最後に演奏されたのは、「You're So Sweet & I Love You」。この曲がリリースされた時、「早くも川上洋平が敬愛するOasisのような、スタジアムで鳴り響くためのアンセムができた!」と思ったが、しばらくするとなかなかライブでやらない曲になってしまった。(それ以降にもアンセムと呼べる曲がたくさん作られてきた証でもあるのだが)
しかし、この日タイトルのコーラスフレーズを川上やメンバーが歌うよりも前に観客だけで大合唱している様を見て、やはりこの曲こそがこうしたバンド最大規模の場所で最も輝く曲なんだ、ということを改めて認識した。それだけに、次はドームやスタジアムで、この曲をみんなで合唱したいと思う。
もう完全にこれで大団円。実にいいライブの締めだったが、「「city」やらなかったのって珍しいな」と思っていたら、直後にトドメとばかりに「city」もやった。前日もツアー序盤も、本編中盤で演奏されていたが、最後の最後に演奏されることによって、
「ここはどこですか? 私は誰ですか?」
という最後の合唱フレーズが、「紛れもなく自分自身が今ここにいて、この曲を聴いている」という事実を浮かび上がらせてくる。「Where's My Potato?」リリース時にはイマイチ[Champagne]にピンときてなかった自分が、スペシャで大量オンエアされているのを聴いて「これはすごい曲だ!」とバンドの真価に気付き、すぐさまCD買いに行った曲。それはこの曲リリース時点でサトヤスが加入し、このメンバーになったというのが何よりもデカかったというのが今になると本当によくわかる。
演奏が終わると4人は肩を組んで花道を歩き、拍手に包まれながらステージを後にしていくと、川上は
「愛してるぜ、幕張!」
と、リップサービスでは決してなく、ありったけの感情を込めて叫んだ。
大会場だからこその演出もふんだんにあったが、核にあったのはやはり、さらに強度を増したバンドの演奏と川上洋平の歌であるというのがわかるツアーファイナルだった。これこそが[Alexandros]をこの領域まで連れてきた要因だし、どんなに大きくなってもこれだけは絶対変わらないから、もっと大きな会場で見たくなる。
しかし驚くのは、[Champagne]時代から川上洋平は「今日、声出てないな」とか「高音キツそうだな」と心配になるような時が全くない。[Alexandros]になってからは、歌うのがさらに難しい曲が増えているにも関わらず、常に絶好調。その裏には凄まじい努力があるというのは想像に難くないが、ボーカルに何の不安要素もない、同じ曲を何度ライブで聴いても飽きない。そうした少しでもネガティヴになるような要素がこのバンドのライブには全くない。だから同じツアーに何本も足を運びたくなるし、フェスで他に見たいバンドと被っていても、このバンドを選んでしまうのである。
もちろん幕張メッセならではの音の問題というのはこれからも向き合っていかなければいけない部分ではあったが、それすらも自らの熱量でねじ伏せていた。クールでカッコいいというイメージのメンバーだが、何よりも汗にまみれて演奏している姿がよく似合う。本当にもう完全に、あなたの虜。終演後にスクリーンに映し出された川上の小芝居によって発表された、名古屋で開催されるVIP PARTYも行こうかな、って思うくらいに。
1.ムーンソング
2.Burger Queen
3.For Freedom
4.Kaiju
5.Claw
6.Girl A
7.Kick&Spin
8.O2
9.Aoyama
10.Feel Like
11.The & tokyo2pm36floor
12.Buzz Off!
13.Stimulator
14.言え
15.Waitress,Waitress!
16.クソッタレな貴様らへ
17.今まで君が泣いた分取り戻そう ~ サテライト
18.Swan
19.Run Away
20.Starrrrrrr
21.NEW WALL
22.Adventure
encore
23.ワタリドリ
24.SNOW SOUND
25.かえりみち (弾き語り)
26.Dracula La
encore2
27.Kaiju (アコースティック)
28.You're So Sweet & I Love You
29.city
Kaiju
https://youtu.be/ld7ynrmsW1U
Feel Like
https://youtu.be/Sjq9cZ2-1qA
Next→ 4/29 The Mirraz @新宿MARZ

初日の横浜アリーナ、12月のZepp Tokyo、そしてこの日と、このツアーは3本目の参加。前作のアルバム「ALXD」のツアーファイナルも幕張メッセであり、すっかりこのキャパが当たり前となったが、今回は幕張メッセ2days、しかも両日即完と規模はさらに拡大の一途を辿っている。
18時過ぎにこのバンドのワンマンではおなじみのスタッフによる注意事項のアナウンスが入ると、観客の手拍子に招かれるように場内が暗転し、ステージに張られた紗幕の前に吊られた6連の[]のオブジェが上空に上昇し、紗幕とステージ左右のスクリーンには、美しい夜空と、メンバーの名前が映る映像が。すると紗幕の向こうにはうっすらとメンバーのシルエットが見え、川上洋平の
「カモン、幕張!」
の一声で「ムーンソング」のコーラスの大合唱が起こる。その合唱が響いた後に曲に入り、サビ前で紗幕が落ちてメンバーの姿が現れになる。
冒頭から美しいファルセットを響かせる川上、いつものようにポーカーフェイスでギターを弾く白井、髪の一部が赤く染まった磯部、飄々とテクニカルなドラムを叩くサトヤス。いつもと同じようだが、やはりどこかファイナルならではの気合いが入っているようにも感じる。
サポートキーボードのROSEの音色が効いたバンドの演奏のドライブ感が増すイントロのアレンジが加わったインスト曲「Burger Queen」からはバンドの熱量溢れるアッパーな曲が続くが、やはりメインの見どころは「EXIST!」収録の曲たち。
スクリーンに歌詞が次々と映し出される、ヒップホップの要素を含んだ「Kaiju」ではMVに出演している着物姿の女性ダンサーが登場して踊って華を添え、川上はステージ中央から伸びた花道を歩きながら歌い、コーラス部分をガンガン観客に合唱させる。川上の高速ボーカルが連射される「Claw」もまた歌詞がスクリーンに映し出されるが、歌詞を見ながら聴くたびに、よくこんな曲を全く歌詞を間違えることなく歌えるもんだよなぁ、と感心してしまう。
ギターを抱えた川上が大ジャンプを見せて曲に入る「Girl A」では会場が揺れ、[]のオブジェが花道に降りてきて、まるでゲートのようになると、そこに歩いてきたのは白井。その白井がイントロを刻んで始まった「Kick&Spin」では川上と磯部が両サイドに散るが、途中で白井と入れ替わるように中央に戻ってきた川上は右手にマイクを持ち、左手にはカメラを持っている。そのカメラで撮っている客席の様子がそのままスクリーンに映し出されるという、花道を擁するアリーナだからこその演出を見せるが、最後には川上が自身の歌う顔を自分のカメラで映すと、全てをかっさらっていってしまう。やはりこのバンドのライブにおいては、主役は観客よりも、それぞれ華やかでロックスターのオーラを放ちまくっているメンバーなのである。
宇宙を漂う映像とともに、「EXIST!」における新機軸の一つであるアンビエントな音像の「O2」が始まると、ツアー序盤では音源の通りに抑えた演奏で間を作り出していたのが、サトヤスのドラムを中心に、よりライブだからこそのバンド感を増したアレンジになっている。音源を最初に聴いた時は、「これはバンドでどう演奏するんだ?」「打ち込みで流すのか?」とも思ったが、紛れもなくバンドだからこその曲になっている。歌というよりもサウンドの一部というようなファルセットを響かせる川上の表現力もやはり素晴らしい。
そして晴れやかな街を闊歩しているような映像とともに奏でられたのは、「Aoyama」。これもまた「EXIST!」での新機軸というような、インディーポップ、シティポップという要素を取り入れた曲である。この曲もそうだし、そうした音楽は得てして「オシャレでポップな曲」という、ロックバンドからはかなり飛距離がある形容をされがちだが、オシャレさを含んでいながらもそうした音楽と並列にならないのは、
「君が流していたあのバンドの音耐えられなくて
聴こえなくなるまで己の音で塗り替えた」
と歌われる、現行のシーンやオーバーグラウンドな音楽への反骨心。耐えられなかったバンドがどんなバンドなのかはわからないが、
「君が流してたあのバンドが聴くに耐えなくて
怒りを通り越して笑えてきてさようならをした」
と、2コーラス目ではそうした音楽を飛び越えて先に進むという意志を示している。オシャレなサウンドには似つかわしくないようなこの歌詞がこの曲をただのオシャレな曲とは一線を画す曲にしている。
続く「Feel Like」も系統的にはそうした曲になるが、MVに出演していたダンサー、[A]Girlsが登場して、花道も使ったフォーメーション抜群のダンスを華麗に披露すると、川上が花道から降りて客席のブロックの間の通路で観客にもみくちゃにされながら歌っている。どんなにオシャレ、洗練という方向に向かっても、このバンドがライブで演奏すれば、泥臭さやロックバンドとしての熱量を孕んでしまう。だからこそどんな音楽性やジャンルの音を取り入れても、この4人で鳴らせば[Alexandros]の音楽になる。「EXIST!」もそうだが、このバンドはアルバムごとにかなりガラッとサウンドが変わるという冒険をしているが、次のアルバムでまた新たな要素を取り入れても、必ずこのバンドだからこその曲になるのだろう。
ROSEのキーボードとサトヤスの細かなドラムが次第に展開していき、白井の忙しない腕と指の動きがバンドサウンドをもだいたんに動かすのは「The & tokyo2pm36floor」というインストのパート。歌がないだけにメンバーの楽器の音のみに集中せざるを得ないが、この複雑極まりない演奏を顔色一つ変えずにやってのけるメンバー(特に白井)はやっぱり上手いな~と改めて思う。その上手さもまた様々な音楽の要素を取り入れる上では重要な能力である。
「ここからもっと騒げますかー!踊れますかー!」
と川上が煽ってから始まったのは、綾野剛との共演がCMで流れた「Buzz Off!」。前回のツアーではまだ完成形と言える状態ではなかっただけに、こうして同じ場所で完成形を聴けるのが感慨深い。
さらに「Kick&Spin」とともに、アルバム「Me No Do Karate.」を象徴する曲であるハイパーな「Stimulator」から、サトヤスのドラムに合わせて観客が「オイ!オイ!」と叫ぶ「Waitress,Waitress!」でさらなる熱狂を生み出す…と思いきや、普段このイントロ部分で煽りまくる磯部が全く煽っておらず、あれ?と思っていると一旦演奏が止まる。どうやらサトヤスが曲順を間違えたらしく、
磯部「まぁ長くやってるとこういうこともある(笑)」
サトヤス「大変失礼いたしました」
と謝り、本来の曲順通りに「言え」へ。川上はラストのサビ前に貯めまくってから
「幕張の屋根吹き飛ばそうぜ!」
と言うと、当然客席からは大合唱が起こる。
そして「Waitress,Waitress!」を今度はしっかりやり切り、「クソッタレな貴様らへ」をこの日の観客に捧げてみせる。
近年このバンドのライブでは本編でMCを入れるのは1回くらいになっており、曲間を繋げたアレンジなどもあって実にテンポの良いライブを展開するようになっているが、この日はここで最初のMCらしいMC。川上が真ん中と後ろの観客に呼びかけると、11月から始まった、長かかったツアーの総括。いわく韓国や台湾でのキャパ250人ほどのキャパでのライブが印象的だったという。また、そうしたアジアでのライブでは観客のノリが日本と全然違うというのも興味深い。全く同じセトリでライブをやったとしても、国が違えば見える景色は全く違うのだろう。
そのMCからストリングスの村田一族を紹介して披露されたのは、アルバム唯一のバラード曲「今まで君が泣いた分取り戻そう」。ドラマの主題歌になったこともあり、実にキャッチーなバラード曲。かつても「涙がこぼれそう」などの名曲を世に送り出しているが、バラードやミドルテンポの曲はこのバンドの持つメロディの美しさを実感させてくれる。そしてそれこそがこのバンドの最大の武器であるということも。
アウトロでは弾き語りのような形で「サテライト」を1コーラスだけ歌ったが、次は是非この曲を久しぶりにフルコーラスで聴きたいところである。
そして「Swan」からはクライマックスへ。川上のボーカルにエフェクトをかけているのも含め、デジタルサウンドを導入した曲だが、アウトロで川上と白井がエフェクターを操作すると、次の「Run Away」のイントロがもはやトランスと言っていいくらいのバキバキなダンスミュージックに進化。
続く「Starrrrrrr」も含めて、この辺りの曲や「Kick&Spin」などは、こうしたワンマンでも、フェスやイベントなどでも毎回演奏される。それだけに年間だと何十回も聴く機会があるのだが、どれだけ聴いても全く飽きないし、ライブで聴くと毎回熱狂してしまう。どんなに良い曲でもたくさん聴くと飽きてきてしまうが、このバンドがそうならないのはアレンジを変えたりしていることもあるが、1回1回違う熱量を込めているから。それが1本1本のライブをその日だけでしかない特別なものにしているのだが、わかってはいてもそう思えるバンドってなかなかいない。そうした部分がこのバンドがこの規模まで来れた理由の一つであると思う。
そして再び村田一族が登場して壮大なサウンドを奏でるのは、若者の青春群像のような映像が実によくマッチしている「NEW WALL」。川上はハンドマイク状態で花道を歩きながら歌い、時には指揮者のように両手を振って、音をコントロールしているかのよう。そして合唱が響く客席に向かって銀テープが射出されると、本編最後に鳴らされたのは「Adventure」。かつては川上はこの曲の時にハンドマイクで歌っていたが、今ではしっかりギターを弾きながら、
「大胆な作戦で 言葉にならないマスタープランで いつだって僕たちは君を 連れて行くんだ 連れて行くんだ」
と歌う。果たして、次は我々をどんなところに連れていってくれるのだろうか。
アンコールを待つ観客の前に、スクリーンに映し出されたのは、物販などがある11ホールにメンバーがいる映像。開演前にはたくさんの人が並んでいた[]の撮影スポットで写真を撮り、柱にサインを入れるメンバー。4人がその[]の間の黒幕をくぐると、そこは客席最後方。つまり完全に生中継であり、Bブロックの間を歩いて、客席のど真ん中に作られた小さいサブステージへ。このステージも真上から見ると[]が描かれているという凝りっぷり。
ROSEも加え、川上がアコギで、このサブステージではすっかりおなじみとなった(横浜アリーナでもやっていた)「ワタリドリ」を披露し、
「みんなももう[Alexandros]のメンバーだから!」
としてサビでは合唱を促すも、やはりこの曲はちょっとキーが高すぎるので他の曲ほどの大合唱にはならず。
そして村田一族からバイオリン奏者を招き、ツアー開始時はまだリリースされていなかった最新シングル「SNOW SOUND」もこのステージで演奏される。もうすっかり季節は冬を通り越して春になったが、この曲が鳴っている時だけは冬だと言わんばかりに天井からは粉雪が降り注ぐという曲にぴったりのロマンチックな演出も。
メンバーがサブステージから降りるも、川上だけはアコギを手にしてステージに残り、
「こうして1人になると、バンド組んだ大学一年生の時を思い出す。大学入ってすぐ[Champagne]を組んだんだけど、1週間後には全員いなくなってて(笑)
それから磯部君が入って、何年かして白井君が入って。デビューしてドラムが辞めて、また悔しい思いをした時にサトヤスが入って…だからメンバーには本当に感謝してます。もしかしたらバンドをやってる人もこの中にはいるかもしれないけど、ここにいる全てのバンドマンに捧げます」
と、目の前にいない時に感謝の言葉を口にするのが川上らしいが、そう言って弾き語りをした「かえりみち」では「感極まり過ぎた(笑)」という理由でやり直し、最後にも歌詞を間違えるという珍しい場面も。
しかしながら、普段このバンドはこうした苦労話や弱い部分をほとんど口にしない。いつも今が最高、俺たちが最強という自信に満ち溢れている。しかしながらその自信を得るようになるまでバンドを突き動かしてきた原動力になっていたのは、悔しさであるということがよくわかるMCだったし、ロックスターであると同時に我々と同じ人間であるということもよくわかる。
川上がサブステージを降りる前にすでにメインステージには他のメンバーたちがスタンバイしており、川上はイントロに合わせてコーラスを何度も観客に合唱させながらステージへ向かう。イントロでコーラスを合唱できる曲といえば…そう、「Dracula La」である。もう最後だからこそ、バンドの演奏はかなり走りまくっていたが、それがさらなる疾走感とライブ感につながり、白井もマイクは通さずともはっきりと曲を口ずさんでいる。合唱も含めて、ポップな、楽しい曲であるにもかかわらず、聴いていて泣けてくるような感覚に陥ったのは、あまりに素晴らしいライブだったから。それはこの曲もそうだし、この曲にいたるまでのこの日のライブの全てが。
演奏が終わるとエフェクターを操作し、「Burger Queen」のアウトロのアナウンス音が流れて終了…というのがいつものパターンなのだが、この日はそれでも客電が点かず、川上とサトヤスが2人でステージに現れ、
「終わりたくないから、自発的にアンコールやりにきました!」
と言い、川上がアコギ、もちろんサトヤスはドラムだが、ギターとドラムだけという、White Stripesな編成で「Kaiju」を演奏。重厚なバンドサウンドからアコースティック主体になるとイメージが全く変わるというか、ヒップホップ色すらも薄れたように聴こえるのが不思議。当然このサウンドでは本編で出てきたダンサーが出てくることもない。
そんな、ライブでしか聴けないアレンジの後に最後に演奏されたのは、「You're So Sweet & I Love You」。この曲がリリースされた時、「早くも川上洋平が敬愛するOasisのような、スタジアムで鳴り響くためのアンセムができた!」と思ったが、しばらくするとなかなかライブでやらない曲になってしまった。(それ以降にもアンセムと呼べる曲がたくさん作られてきた証でもあるのだが)
しかし、この日タイトルのコーラスフレーズを川上やメンバーが歌うよりも前に観客だけで大合唱している様を見て、やはりこの曲こそがこうしたバンド最大規模の場所で最も輝く曲なんだ、ということを改めて認識した。それだけに、次はドームやスタジアムで、この曲をみんなで合唱したいと思う。
もう完全にこれで大団円。実にいいライブの締めだったが、「「city」やらなかったのって珍しいな」と思っていたら、直後にトドメとばかりに「city」もやった。前日もツアー序盤も、本編中盤で演奏されていたが、最後の最後に演奏されることによって、
「ここはどこですか? 私は誰ですか?」
という最後の合唱フレーズが、「紛れもなく自分自身が今ここにいて、この曲を聴いている」という事実を浮かび上がらせてくる。「Where's My Potato?」リリース時にはイマイチ[Champagne]にピンときてなかった自分が、スペシャで大量オンエアされているのを聴いて「これはすごい曲だ!」とバンドの真価に気付き、すぐさまCD買いに行った曲。それはこの曲リリース時点でサトヤスが加入し、このメンバーになったというのが何よりもデカかったというのが今になると本当によくわかる。
演奏が終わると4人は肩を組んで花道を歩き、拍手に包まれながらステージを後にしていくと、川上は
「愛してるぜ、幕張!」
と、リップサービスでは決してなく、ありったけの感情を込めて叫んだ。
大会場だからこその演出もふんだんにあったが、核にあったのはやはり、さらに強度を増したバンドの演奏と川上洋平の歌であるというのがわかるツアーファイナルだった。これこそが[Alexandros]をこの領域まで連れてきた要因だし、どんなに大きくなってもこれだけは絶対変わらないから、もっと大きな会場で見たくなる。
しかし驚くのは、[Champagne]時代から川上洋平は「今日、声出てないな」とか「高音キツそうだな」と心配になるような時が全くない。[Alexandros]になってからは、歌うのがさらに難しい曲が増えているにも関わらず、常に絶好調。その裏には凄まじい努力があるというのは想像に難くないが、ボーカルに何の不安要素もない、同じ曲を何度ライブで聴いても飽きない。そうした少しでもネガティヴになるような要素がこのバンドのライブには全くない。だから同じツアーに何本も足を運びたくなるし、フェスで他に見たいバンドと被っていても、このバンドを選んでしまうのである。
もちろん幕張メッセならではの音の問題というのはこれからも向き合っていかなければいけない部分ではあったが、それすらも自らの熱量でねじ伏せていた。クールでカッコいいというイメージのメンバーだが、何よりも汗にまみれて演奏している姿がよく似合う。本当にもう完全に、あなたの虜。終演後にスクリーンに映し出された川上の小芝居によって発表された、名古屋で開催されるVIP PARTYも行こうかな、って思うくらいに。
1.ムーンソング
2.Burger Queen
3.For Freedom
4.Kaiju
5.Claw
6.Girl A
7.Kick&Spin
8.O2
9.Aoyama
10.Feel Like
11.The & tokyo2pm36floor
12.Buzz Off!
13.Stimulator
14.言え
15.Waitress,Waitress!
16.クソッタレな貴様らへ
17.今まで君が泣いた分取り戻そう ~ サテライト
18.Swan
19.Run Away
20.Starrrrrrr
21.NEW WALL
22.Adventure
encore
23.ワタリドリ
24.SNOW SOUND
25.かえりみち (弾き語り)
26.Dracula La
encore2
27.Kaiju (アコースティック)
28.You're So Sweet & I Love You
29.city
Kaiju
https://youtu.be/ld7ynrmsW1U
Feel Like
https://youtu.be/Sjq9cZ2-1qA
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