サンボマスター [今年は何かとはっちゃけたい!] ~2017ワンマンライブ~ @日比谷野外大音楽堂 4/16
- 2017/04/16
- 23:08
この日、北朝鮮がミサイルを発射し、失敗したというニュースが朝から流れてきた。そんな緊迫した社会・世界の情勢。そんな日だからこそ、常に「愛と平和」を叫び続けてきたサンボマスターが平和的な空気を感じさせる日比谷野外大音楽堂でワンマンライブをやるというのは偶然とは思えない。それこそがサンボマスターのロックンロールのメッセージだというようにすら感じる。
1週間くらい前までは雨の予報だったのが完全に青空、しかも夏かというくらいの暖かい気候の中、ステージには何台かの照明が置かれただけの簡素なものというのは普段のサンボマスターのワンマンと変わらない。場内にザ・クロマニヨンズ「キスまで行ける」などのBGMが流れ、そのBGMが徐々に大きくなっていくと、まだ明るい日比谷野音におなじみゴダイゴ「MONKEY MAGIC」のSEが流れ、凄まじい歓声に迎えられてメンバー3人が登場。早くもオイ!オイ!というコールが起こる中、山口隆は歌うでもなく、
「10年ぶりくらいに日比谷野音でやるって言って、チケット即完するのかとスタッフが不安になる中で即完して。マネージャーの徳山君は何週間か前から、「山口さん、日比谷の日は雨です」って言ってたのにこうやって晴れました!俺たちも、あなた達も完全にビハインドを背負ってる人生です!(笑)そんなビハインドから大逆転しませんか!?大逆転!大逆転!」
と、かねてからの雨予報を吹き飛ばした(チケットがソールドアウトするのは当たり前)この日のテーマは「大逆転」に決まり、この後もことあるごとに日比谷公園には「大逆転!大逆転!」というコールが轟くことになる。公園をたまたま通った人からしたらなにがどう大逆転なのか一切わからないような異様な状態である。
そんな、ライブ前から沸騰しまくりな状況の中で放たれた1曲目は山口のギターのイントロから始まる「そのぬくもりに用がある」。
「声が聞こえたのは この日比谷野外音楽堂ですよ!」
とおなじみのフレーズ変えで「今、ここでしかない」実感を感じさせ、間奏とアウトロでは山口が自ら
「自分でも上手すぎてビックリする(笑)」
というギターソロを炸裂させる。
続く木内が叫びまくる「美しき人間の日々」、椅子有りの会場なために衝動を観客が必死に抑えながらも盛り上がりまくる「光のロック」と、パンク的な要素の強い曲を冒頭から続ける。言うまでもなくバンドの演奏や山口の歌に不安な部分は全くない。サンボマスターのライブは常にその安定感と、爆発力を兼ね備えている。
「10代から50代、60代までいるかもしれない。でもこうしてライブに来ていたら、年齢なんて関係なく、みんな青春なんじゃないですか!」
と言っての「青春狂騒曲」など、山口の曲に繋げる語りはもはや名人芸のレベル。これは経験を積んだベテランだからというわけではなく、初期から山口が備えていた能力であるが、そこにユーモアを交えながら軽快に喋れるのはさすが。
「どうせあなた達に日曜日の夜の予定はありません(笑)このライブが終わったあと、そんなあなた達男女が出会ってだな、夜を迎えるわけだ」
と言っての「夜が明けたら」、
「そして夜が明ける前、夜になったら空には月が出ている。夜明けを迎えた2人は、その月に咲く花のようになるの!」
と曲に繋げる名人芸の語りが次々と決まるが、この辺りでは初期のサンボマスターのソウルフルな歌唱と演奏を存分に堪能できる。こうした曲たちがあったからこそ、サンボマスターの初期のライブにはメンバーよりも年上の男性が本当に多かった。メンバーのように、かつてアメリカの黒人によるソウルミュージックを聴いていたような人たち。
そんな初期のソウルフルな曲と、「君を守って 君を愛して」「世界をかえさせておくれよ」のような、近年フェスなどで爆発力を見せてきた曲が等しく「大逆転」のテーマとして響く。とりわけ音源ではキーボードの音が入っている「君を守って 君を愛して」はライブで3人だけの音で聴くことによって、ポップなラブソングからロックンロールナンバーに変貌している。
こうした曲を支持してきたのは、フェスでサンボマスターのライブを見る機会があった若いファンたちが主だが、初期のソウルフルな曲でサンボマスターを見出した年齢を重ねたファンと、近年のフェスでの爆発力でサンボマスターの魅力を知った若いファンが、ワンマンでは全く同じように、年齢に関係なくバンドの音に夢中になって盛り上がっている。本当に美しい光景である。
すでにニューアルバム「YES」が来月リリースされることが発表されているが、そのレコーディングでは音を良くするような技術が全く使われていないという、原始的なやり方に立ち戻ったレコーディングの手法になっていること(ずっとアナログでレコーディングしている、ザ・クロマニヨンズのように)、その手法を選んだことにより、レコーディングが地獄のように大変になっていることを語ると、そのレコーディングの一環で生み出されたであろう最新シングル「オレたちがすすむ道を悲しみで閉ざさないで」を披露。近年の、ライブで爆発力を感じさせる路線の曲で、タイトル通りに聴き手の背中を強く押す曲だが、現在のフェスのセトリの中にずっと入ってくるほどのインパクトではないか。
さらにはそのまま新曲も披露。こちらもまたアッパーなロックンロールチューンで、
「届け 届け 届け 届け」
と連呼されるサビのフレーズが印象的。むしろ「オレたち~」よりもインパクトが強いだけに、アルバムのリードトラック的な位置の曲になるのだろうか。
もはやライブは中盤であるが、山口の熱さは全く止まるところを知らず、
「まだまだミラクル起こせる人ー!」
と「ミラクルをキミとおこしたいんです」で激しく踊らせ、「孤独とランデブー」ではおなじみの3人全員ハンドマイク編成に。山口が歌う中で木内は「オイ!オイ!」と煽りまくり、間奏部分で近藤がベースを持つと、
「近藤洋一!近藤洋一!」
と近藤の名前を叫ばせてからバンド編成で最後のサビを演奏。
基本的にサンボマスターのメンバーは面白い人たちだし、エンターテイナーでもあるが、とにかく歪んだギターと性急な曲に自身の思いを乗せて叫んでいたデビュー当時はこうしたスタイルでライブをやるなんて全く想像できなかった。しかしそんな想像できなかったこのスタイルも、もはやライブで空気をガラッと変えるような大きな武器になっている。
ここまではひたすらにアッパーかつ楽しいライブとなっていたが、山口が10年前のこの会場でのワンマンを回想しながら、
「最初から最後まで楽しいライブができればいいんだけど、そうするにはこの10年の間、悲しいことが多すぎた」
と東北と熊本の震災のことに触れ、キャンドルライトのような照明に照らされながら、「ラブソング」を歌いあげる。
福島出身の山口は震災直後から、猪苗代湖ズを結成し、自身の故郷でもある被災地への支援を行ってきたし、被災地への想いを語って、
「ただ今こうして目の前にいるあんたらに生きていて欲しい」
と言うようになった。
そこには、2011年のROCK IN JAPAN FES.のGRASS STAGEのトップバッターとして出演した際、「I love you & I need you ふくしま」を演奏する前に
「この曲をレコーディングする時、箭内道彦は俺に「山口君、この曲を歌うときは、君は心から歌わなきゃダメだ。今回の震災で亡くなった人の中には、君のライブに来ていた人や、君の音楽を聴いていた人が必ずいる。だからその人たちのためにも、この曲は心から歌わなきゃダメなんだ」って言って、俺たちは泣きながら歌ったんだ」
と言っていた、いなくなってしまった人たちの存在を実感しているからこそ、目の前にいる人たちに生きていて欲しいと言う。
そしてその生への肯定を最大の説得力を持って証明するのが、「可能性」からの終盤。
もはやバンド最大のライブキラーチューンに成長した「できっこないを やらなくちゃ」では
「アイワナビーア 君の全て!」
の大合唱が起こり、バンドの代名詞と言ってもいい代表曲「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では現在の社会や世界に向かって、戦争などの悪意に満ちた争いはやめようぜ、と言わんばかりに老若男女全て含めての「愛と平和!」の大合唱。そんな簡単に世界が変わるわけがないっていうのは知ってるけど、こうしてみんなで笑顔でこの曲を歌っていると、それは決して可能性が0でもなければ、無駄なんかじゃないと思える。
「あんたらをロックンロールって呼んでもいいか」
と、ロックンロールの申し子である山口がここにいる全員をロックンロールそのものとして、ロックンロールのテーマのように最後に鳴らしたのは、「ロックンロールイズ ノットデッド」。最後には泣いている観客に、
「こんなおっさん達がやってるんですから(笑)」
と自虐して笑わせ、全員笑顔の大団円で本編は終了した。
すっかり暗くなった中、客席から轟く
「ロックンロール!ロックンロール!」
のアンコールを求める声。その中にメンバーが登場する前に流れたのは「愛しき日々」。スタッフが樽酒をステージに置き、メンバーが鏡開きをすると、ステージにはまさかの
「祝 12月3日 サンボマスター初の日本武道館ワンマン決定」
という文字が。会場に響く大歓声と泣き声。すでに10月に武道館ワンマンをやることを発表している盟友の銀杏BOYZ以上に、サンボマスターはやろうと思えば武道館ができるタイミングはあったはず。それこそ、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」が「電車男」の主題歌になった時にやろうと思えば絶対できた。しかしバンドはライブハウスにこだわり、あえて武道館を避けるかのように両国国技館でワンマンをやったりした。だから、サンボマスターは武道館ではライブをやらないバンドだと思っていた。
そう思っていたからこそ、この発表は本当に嬉しかった。武道館の敷居を高くし過ぎるのもどうかと思っているので、若手バンドのチャレンジの場にするのも全然アリだと思っているが、その武道館で見ることはないと思っていた、銀杏BOYZとサンボマスターを同じ年に武道館で見れる。こんなに嬉しいことはない。これも山口や峯田和伸が言う通りに、お互いにずっと死なずに生きてきたから。果たして、今まで想像することすらなかった武道館でサンボマスターはどんなライブをするのだろうか。やっと、頭の中で3人があの日の丸の下に立つ姿を思い描くことができる。
そして間髪入れずに、昨年の男どアホウサンボマスターでは銀杏BOYZの峯田和伸とコラボした「夜汽車でやってきたアイツ」でお祝いモードを熱狂モードに切り替えると、
「このコーナーがやってきました。このコーナーは我々だけでは制御できないので、この方にお任せしたいと思います。日本のエド・サリヴァン、日本のアンディ・ウィリアムス、小堺一機!」
と呼び込み、まさかの小堺一機がステージに登場。「小堺!小堺!」コールに応えて
「今日のライブを見ていたら、私もスパイダースでまたライブをやりたくなりました。サンボマスター、星三つです!」
と堺正章のモノマネを披露。しかし無意味に出てきたわけではなく、小堺が司会を務める番組に山口が出演した際、萩原健一の話で盛り上がったということで、この日のスペシャルゲスト、萩原健一を呼び込む役目を果たす。
サングラスに白スーツ姿というオーラ出まくりな萩原健一は、サンボマスターのファンになぜか英語で感謝を告げ、自身のヒット曲である「SHOKEN TRAIN」をサンボマスターとコラボ。ギターを弾き、山口とボーカルを分け合いながら、さらにはハーモニカまでも吹くという66歳とは思えないバイタリティを見せ、最後にはステージ前まで出てきてギターを弾くと、山口と近藤にも「お前らも前に来い」と手招きし、密着する形で演奏するという、もはや何が起きているのか冷静に判断できない状態に。演奏終了後に
山口「ショーケンさんが前に出てめちゃ姿勢を低くして弾くから、もうどっちが低く弾けるかみたいになっちゃった(笑)」
近藤「もう飲み会のサラリーマンみたいでしたね。土下座しながら酒を注ぐみたいな(笑)」
山口「近ちゃん、だから俺たちダメなんだよ(笑)
3人に戻ったらいきなり大学サークルのバンド活動みたいになっちゃう(笑)」
とその瞬間を振り返り、最後に
「日比谷の声を聞かせてくれ」
と言って演奏されたのは「歌声よおこれ」で、そのタイトル通り、そして曲のMVのサンボマスターのファン達が歌うように大きな合唱に包まれ、最後の
「歌声よおこれ!」
のフレーズとともに銀テープが発射されるという幕引きだった。結果的にはバンドの歴史を総ざらいするかのような、シングル曲や代表曲ばかりのセトリに。これはアルバム発売前の、野音という特別な場所でのワンマンだったからこそ。
演奏が終わると、カーティス・メイフィールドの「Move on Up」が流れる中、客席を背景に写真を撮り、木内がスティックを投げ込み、最後までバンドへの大きな感謝の意味の拍手と歓声に包まれながら、メンバーはステージを後にしていった。もはや大逆転ではなく、最初から最後まで無失点コールドでの圧倒的な勝利のライブだった。
トピックス的にはやはり萩原健一と小堺一機が出てきたということになるだろうが、この日の本質はそこではない。サンボマスターによる、圧倒的な生への肯定。そしてその生きた先の再会の場所としての初の日本武道館ワンマンの発表。それこそがこの日のライブの全てだった。
武道館決定のような、よくこうした嬉しい出来事があった時に、「自分のことのように」という形容が使われる。しかし、銀杏BOYZとサンボマスターに出会って人生が変わって、こういう音楽まみれの人生を送るようになった自分のような人間にとっては、自分のことのようにというよりも、これはもはや自分のことなのである。というくらいに銀杏BOYZとサンボマスターは自分の人生の中に入り込み過ぎている。そんな、これまで全く武道館でやろうとしなかった2組を同じ年に武道館で見れるなんて、夢のようでもあり、奇跡のようでもある。
サンボマスターが生きている限り、ロックンロールは死なないし、自分も絶対に死にたくない。
1.そのぬくもりに用がある
2.美しき人間の日々
3.光のロック
4.青春狂騒曲
5.夜が明けたら
6.月に咲く花のようになるの
7.君を守って 君を愛して
8.世界をかえさせておくれよ
9.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
10.新曲
11.ミラクルをキミとおこしたいんです
12.孤独とランデブー
13.ラブソング
14.可能性
15.できっこないを やらなくちゃ
16.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
17.ロックンロール イズ ノットデッド
encore
18.夜汽車でやってきたアイツ
19.SHOKEN TRAIN feat.萩原健一
20.歌声よおこれ
歌声よおこれ
https://youtu.be/qH25HScuwQ8
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1週間くらい前までは雨の予報だったのが完全に青空、しかも夏かというくらいの暖かい気候の中、ステージには何台かの照明が置かれただけの簡素なものというのは普段のサンボマスターのワンマンと変わらない。場内にザ・クロマニヨンズ「キスまで行ける」などのBGMが流れ、そのBGMが徐々に大きくなっていくと、まだ明るい日比谷野音におなじみゴダイゴ「MONKEY MAGIC」のSEが流れ、凄まじい歓声に迎えられてメンバー3人が登場。早くもオイ!オイ!というコールが起こる中、山口隆は歌うでもなく、
「10年ぶりくらいに日比谷野音でやるって言って、チケット即完するのかとスタッフが不安になる中で即完して。マネージャーの徳山君は何週間か前から、「山口さん、日比谷の日は雨です」って言ってたのにこうやって晴れました!俺たちも、あなた達も完全にビハインドを背負ってる人生です!(笑)そんなビハインドから大逆転しませんか!?大逆転!大逆転!」
と、かねてからの雨予報を吹き飛ばした(チケットがソールドアウトするのは当たり前)この日のテーマは「大逆転」に決まり、この後もことあるごとに日比谷公園には「大逆転!大逆転!」というコールが轟くことになる。公園をたまたま通った人からしたらなにがどう大逆転なのか一切わからないような異様な状態である。
そんな、ライブ前から沸騰しまくりな状況の中で放たれた1曲目は山口のギターのイントロから始まる「そのぬくもりに用がある」。
「声が聞こえたのは この日比谷野外音楽堂ですよ!」
とおなじみのフレーズ変えで「今、ここでしかない」実感を感じさせ、間奏とアウトロでは山口が自ら
「自分でも上手すぎてビックリする(笑)」
というギターソロを炸裂させる。
続く木内が叫びまくる「美しき人間の日々」、椅子有りの会場なために衝動を観客が必死に抑えながらも盛り上がりまくる「光のロック」と、パンク的な要素の強い曲を冒頭から続ける。言うまでもなくバンドの演奏や山口の歌に不安な部分は全くない。サンボマスターのライブは常にその安定感と、爆発力を兼ね備えている。
「10代から50代、60代までいるかもしれない。でもこうしてライブに来ていたら、年齢なんて関係なく、みんな青春なんじゃないですか!」
と言っての「青春狂騒曲」など、山口の曲に繋げる語りはもはや名人芸のレベル。これは経験を積んだベテランだからというわけではなく、初期から山口が備えていた能力であるが、そこにユーモアを交えながら軽快に喋れるのはさすが。
「どうせあなた達に日曜日の夜の予定はありません(笑)このライブが終わったあと、そんなあなた達男女が出会ってだな、夜を迎えるわけだ」
と言っての「夜が明けたら」、
「そして夜が明ける前、夜になったら空には月が出ている。夜明けを迎えた2人は、その月に咲く花のようになるの!」
と曲に繋げる名人芸の語りが次々と決まるが、この辺りでは初期のサンボマスターのソウルフルな歌唱と演奏を存分に堪能できる。こうした曲たちがあったからこそ、サンボマスターの初期のライブにはメンバーよりも年上の男性が本当に多かった。メンバーのように、かつてアメリカの黒人によるソウルミュージックを聴いていたような人たち。
そんな初期のソウルフルな曲と、「君を守って 君を愛して」「世界をかえさせておくれよ」のような、近年フェスなどで爆発力を見せてきた曲が等しく「大逆転」のテーマとして響く。とりわけ音源ではキーボードの音が入っている「君を守って 君を愛して」はライブで3人だけの音で聴くことによって、ポップなラブソングからロックンロールナンバーに変貌している。
こうした曲を支持してきたのは、フェスでサンボマスターのライブを見る機会があった若いファンたちが主だが、初期のソウルフルな曲でサンボマスターを見出した年齢を重ねたファンと、近年のフェスでの爆発力でサンボマスターの魅力を知った若いファンが、ワンマンでは全く同じように、年齢に関係なくバンドの音に夢中になって盛り上がっている。本当に美しい光景である。
すでにニューアルバム「YES」が来月リリースされることが発表されているが、そのレコーディングでは音を良くするような技術が全く使われていないという、原始的なやり方に立ち戻ったレコーディングの手法になっていること(ずっとアナログでレコーディングしている、ザ・クロマニヨンズのように)、その手法を選んだことにより、レコーディングが地獄のように大変になっていることを語ると、そのレコーディングの一環で生み出されたであろう最新シングル「オレたちがすすむ道を悲しみで閉ざさないで」を披露。近年の、ライブで爆発力を感じさせる路線の曲で、タイトル通りに聴き手の背中を強く押す曲だが、現在のフェスのセトリの中にずっと入ってくるほどのインパクトではないか。
さらにはそのまま新曲も披露。こちらもまたアッパーなロックンロールチューンで、
「届け 届け 届け 届け」
と連呼されるサビのフレーズが印象的。むしろ「オレたち~」よりもインパクトが強いだけに、アルバムのリードトラック的な位置の曲になるのだろうか。
もはやライブは中盤であるが、山口の熱さは全く止まるところを知らず、
「まだまだミラクル起こせる人ー!」
と「ミラクルをキミとおこしたいんです」で激しく踊らせ、「孤独とランデブー」ではおなじみの3人全員ハンドマイク編成に。山口が歌う中で木内は「オイ!オイ!」と煽りまくり、間奏部分で近藤がベースを持つと、
「近藤洋一!近藤洋一!」
と近藤の名前を叫ばせてからバンド編成で最後のサビを演奏。
基本的にサンボマスターのメンバーは面白い人たちだし、エンターテイナーでもあるが、とにかく歪んだギターと性急な曲に自身の思いを乗せて叫んでいたデビュー当時はこうしたスタイルでライブをやるなんて全く想像できなかった。しかしそんな想像できなかったこのスタイルも、もはやライブで空気をガラッと変えるような大きな武器になっている。
ここまではひたすらにアッパーかつ楽しいライブとなっていたが、山口が10年前のこの会場でのワンマンを回想しながら、
「最初から最後まで楽しいライブができればいいんだけど、そうするにはこの10年の間、悲しいことが多すぎた」
と東北と熊本の震災のことに触れ、キャンドルライトのような照明に照らされながら、「ラブソング」を歌いあげる。
福島出身の山口は震災直後から、猪苗代湖ズを結成し、自身の故郷でもある被災地への支援を行ってきたし、被災地への想いを語って、
「ただ今こうして目の前にいるあんたらに生きていて欲しい」
と言うようになった。
そこには、2011年のROCK IN JAPAN FES.のGRASS STAGEのトップバッターとして出演した際、「I love you & I need you ふくしま」を演奏する前に
「この曲をレコーディングする時、箭内道彦は俺に「山口君、この曲を歌うときは、君は心から歌わなきゃダメだ。今回の震災で亡くなった人の中には、君のライブに来ていた人や、君の音楽を聴いていた人が必ずいる。だからその人たちのためにも、この曲は心から歌わなきゃダメなんだ」って言って、俺たちは泣きながら歌ったんだ」
と言っていた、いなくなってしまった人たちの存在を実感しているからこそ、目の前にいる人たちに生きていて欲しいと言う。
そしてその生への肯定を最大の説得力を持って証明するのが、「可能性」からの終盤。
もはやバンド最大のライブキラーチューンに成長した「できっこないを やらなくちゃ」では
「アイワナビーア 君の全て!」
の大合唱が起こり、バンドの代名詞と言ってもいい代表曲「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では現在の社会や世界に向かって、戦争などの悪意に満ちた争いはやめようぜ、と言わんばかりに老若男女全て含めての「愛と平和!」の大合唱。そんな簡単に世界が変わるわけがないっていうのは知ってるけど、こうしてみんなで笑顔でこの曲を歌っていると、それは決して可能性が0でもなければ、無駄なんかじゃないと思える。
「あんたらをロックンロールって呼んでもいいか」
と、ロックンロールの申し子である山口がここにいる全員をロックンロールそのものとして、ロックンロールのテーマのように最後に鳴らしたのは、「ロックンロールイズ ノットデッド」。最後には泣いている観客に、
「こんなおっさん達がやってるんですから(笑)」
と自虐して笑わせ、全員笑顔の大団円で本編は終了した。
すっかり暗くなった中、客席から轟く
「ロックンロール!ロックンロール!」
のアンコールを求める声。その中にメンバーが登場する前に流れたのは「愛しき日々」。スタッフが樽酒をステージに置き、メンバーが鏡開きをすると、ステージにはまさかの
「祝 12月3日 サンボマスター初の日本武道館ワンマン決定」
という文字が。会場に響く大歓声と泣き声。すでに10月に武道館ワンマンをやることを発表している盟友の銀杏BOYZ以上に、サンボマスターはやろうと思えば武道館ができるタイミングはあったはず。それこそ、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」が「電車男」の主題歌になった時にやろうと思えば絶対できた。しかしバンドはライブハウスにこだわり、あえて武道館を避けるかのように両国国技館でワンマンをやったりした。だから、サンボマスターは武道館ではライブをやらないバンドだと思っていた。
そう思っていたからこそ、この発表は本当に嬉しかった。武道館の敷居を高くし過ぎるのもどうかと思っているので、若手バンドのチャレンジの場にするのも全然アリだと思っているが、その武道館で見ることはないと思っていた、銀杏BOYZとサンボマスターを同じ年に武道館で見れる。こんなに嬉しいことはない。これも山口や峯田和伸が言う通りに、お互いにずっと死なずに生きてきたから。果たして、今まで想像することすらなかった武道館でサンボマスターはどんなライブをするのだろうか。やっと、頭の中で3人があの日の丸の下に立つ姿を思い描くことができる。
そして間髪入れずに、昨年の男どアホウサンボマスターでは銀杏BOYZの峯田和伸とコラボした「夜汽車でやってきたアイツ」でお祝いモードを熱狂モードに切り替えると、
「このコーナーがやってきました。このコーナーは我々だけでは制御できないので、この方にお任せしたいと思います。日本のエド・サリヴァン、日本のアンディ・ウィリアムス、小堺一機!」
と呼び込み、まさかの小堺一機がステージに登場。「小堺!小堺!」コールに応えて
「今日のライブを見ていたら、私もスパイダースでまたライブをやりたくなりました。サンボマスター、星三つです!」
と堺正章のモノマネを披露。しかし無意味に出てきたわけではなく、小堺が司会を務める番組に山口が出演した際、萩原健一の話で盛り上がったということで、この日のスペシャルゲスト、萩原健一を呼び込む役目を果たす。
サングラスに白スーツ姿というオーラ出まくりな萩原健一は、サンボマスターのファンになぜか英語で感謝を告げ、自身のヒット曲である「SHOKEN TRAIN」をサンボマスターとコラボ。ギターを弾き、山口とボーカルを分け合いながら、さらにはハーモニカまでも吹くという66歳とは思えないバイタリティを見せ、最後にはステージ前まで出てきてギターを弾くと、山口と近藤にも「お前らも前に来い」と手招きし、密着する形で演奏するという、もはや何が起きているのか冷静に判断できない状態に。演奏終了後に
山口「ショーケンさんが前に出てめちゃ姿勢を低くして弾くから、もうどっちが低く弾けるかみたいになっちゃった(笑)」
近藤「もう飲み会のサラリーマンみたいでしたね。土下座しながら酒を注ぐみたいな(笑)」
山口「近ちゃん、だから俺たちダメなんだよ(笑)
3人に戻ったらいきなり大学サークルのバンド活動みたいになっちゃう(笑)」
とその瞬間を振り返り、最後に
「日比谷の声を聞かせてくれ」
と言って演奏されたのは「歌声よおこれ」で、そのタイトル通り、そして曲のMVのサンボマスターのファン達が歌うように大きな合唱に包まれ、最後の
「歌声よおこれ!」
のフレーズとともに銀テープが発射されるという幕引きだった。結果的にはバンドの歴史を総ざらいするかのような、シングル曲や代表曲ばかりのセトリに。これはアルバム発売前の、野音という特別な場所でのワンマンだったからこそ。
演奏が終わると、カーティス・メイフィールドの「Move on Up」が流れる中、客席を背景に写真を撮り、木内がスティックを投げ込み、最後までバンドへの大きな感謝の意味の拍手と歓声に包まれながら、メンバーはステージを後にしていった。もはや大逆転ではなく、最初から最後まで無失点コールドでの圧倒的な勝利のライブだった。
トピックス的にはやはり萩原健一と小堺一機が出てきたということになるだろうが、この日の本質はそこではない。サンボマスターによる、圧倒的な生への肯定。そしてその生きた先の再会の場所としての初の日本武道館ワンマンの発表。それこそがこの日のライブの全てだった。
武道館決定のような、よくこうした嬉しい出来事があった時に、「自分のことのように」という形容が使われる。しかし、銀杏BOYZとサンボマスターに出会って人生が変わって、こういう音楽まみれの人生を送るようになった自分のような人間にとっては、自分のことのようにというよりも、これはもはや自分のことなのである。というくらいに銀杏BOYZとサンボマスターは自分の人生の中に入り込み過ぎている。そんな、これまで全く武道館でやろうとしなかった2組を同じ年に武道館で見れるなんて、夢のようでもあり、奇跡のようでもある。
サンボマスターが生きている限り、ロックンロールは死なないし、自分も絶対に死にたくない。
1.そのぬくもりに用がある
2.美しき人間の日々
3.光のロック
4.青春狂騒曲
5.夜が明けたら
6.月に咲く花のようになるの
7.君を守って 君を愛して
8.世界をかえさせておくれよ
9.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
10.新曲
11.ミラクルをキミとおこしたいんです
12.孤独とランデブー
13.ラブソング
14.可能性
15.できっこないを やらなくちゃ
16.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
17.ロックンロール イズ ノットデッド
encore
18.夜汽車でやってきたアイツ
19.SHOKEN TRAIN feat.萩原健一
20.歌声よおこれ
歌声よおこれ
https://youtu.be/qH25HScuwQ8
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