NO NUKES 2017 @豊洲PIT 3/18
- 2017/03/19
- 01:30
「このイベントが開催されなくなるのが目標」というコンセプトのイベントもそうはない。このイベントがなくなった時というのは原発がなくなった時だから。
ということで5回目の開催となった、脱原発を掲げたイベント、NO NUKES。今回も2daysでの開催となり、この日は2日目。会場は風力発電で営業している豊洲PITで、敷地面積を最大限に使って、様々な脱原発の活動のブースや飲食店舗も並ぶ。
主催のロッキンオン・渋谷陽一社長がステージに登場し、TOSHI-LOWいじりをしながらこの日の内容について語るも、袖にいた坂本龍一から「話が長い」と突っ込まれ、まずはアジカンのゴッチを司会者としたトークショー。坂本龍一が司会者をできないのは「滑舌が悪すぎるから(笑)」ということらしい。
第1部は船橋淳、本橋成一という、それぞれチェルノブイリと福島という原発被害にあった土地のドキュメンタリーを制作した映画監督を招いて。チェルノブイリの被害にあった村を久しぶりに再訪した際、かつては50人以上した村人が2人だけになってしまったことを皮切りに、現地を訪れた人だからこそわかる各自治体の現状など、やはりシリアスな話にならざるを得ないが、福島県双葉町の映像と、原発事故前に通っていた小学校がすっかり荒廃した様子を見た15歳の少女の姿は切り裂かれるようなものを感じた。
第2部ではNAMBA69から難波章浩、いとうせいこう、水曜日のカンパネラのコムアイを迎え、途中からエセタイマーズの服を着たBRAHMANのTOSHI-LOWとthe HIATUSの細美武士が合流。ゴッチは坂本龍一に合わせ、助教授というニックネームを授かる。
唯一と言っていい若手・コムアイが震災前、高校生の頃から原発のデモに行っていたという過去が、ライブで鹿の解体をするパフォーマンスにしっかりとつながるという本質的なコムアイの行動原理や思想を感じさせる中、TOSHI-LOWと細美武士は
TOSHI-LOW「コムアイって今いくつ?」
コムアイ「24です」
TOSHI-LOW「じゃあ俺の一個下だ(笑)」
TOSHI-LOW「でもコムアイが毎週末デモに行ってたら、金曜日のカンパネラになっちゃうね(笑)」
細美「それいつから思い付いた?(笑)」
と笑いを提供してくれ、TOSHI-LOWは坂本龍一にも
「何言ってるのか全然わからないから、もっと声張って!(笑)」
と突っ込む。
しかしながら若手がなかなかこのイベントに出てくれないという坂本龍一とゴッチの嘆きに
「閉じてるイメージはあります。なかなか入っていけないような」
と言ってみせたコムアイはさすが。それを受けて坂本龍一は
「出たい人がいっぱいいるんなら日数を増やそう」
と提案し、来年は土日に会場が抑えられないことから開催されないことをゴッチが告げると
コムアイ「来年はそれぞれが別の場所でやればいいんじゃないですかね。同時多発的に」
難波章浩「ここが使えないなら野外でやりましょうよ」
TOSHI-LOW「ROCK IN JAPAN FES.を1日NO NUKESにすればいいんだよ(笑)」
難波章浩「みんなはロッキンに毎回出てるけど、俺はこのイベントにしか呼ばれないからね!(笑)」
TOSHI-LOW「あなたの客はダイブするからダメなんだよ(笑)」
と脱線しながらも今後のこのイベントの展望をそれぞれが口にしていた。
14:30~ いとうせいこう with オータコージ、ZAK
トークショーではさすがの博識ぶりを、テレビでもおなじみの「面白いおじさん」的な感じで披露していた、いとうせいこう。以前にもこのイベントには朗読で参加しているが、今回はエンジニアのZAK、曽我部恵一BANDなどで活躍するドラマー・オータコージとのセッションでの出演。
ウグイスの鳴き声など、ZAKが様々な効果音を出しながらいとうせいこうが「原発のない未来」がテーマであろう詩の朗読を始めると、シンバルを1枚外して手に取り、他のシンバルなどを擦ったりするという、「叩く」ではないドラムの表現方法から、徐々に激しさを増していくオータのドラム。そうするといとうせいこうも足でリズムを取りながら語気も次第に強くなり、ZAKはその声にエフェクトをかけたりと、まさにセッションというこの場とテンションならではの展開に。
いとうせいこうはスペシャはおろか、地上波のテレビでもおなじみと言っていい芸能人だが、今回のような形で見ると、何よりも詩人であることがよくわかる。もともと持っているヒップホップの要素は全く感じさせないものだったが。
15:15~ 水曜日のカンパネラ
10日前に初の日本武道館ワンマンを終えたばかりの水曜日のカンパネラ。武道館後初ライブとなる。
時間になるとステージのモニターに前衛的な映像が映り、尖りまくったエレクトロサウンドのインスト曲「バク」が流れ出す。が、コムアイはステージには不在で、客席は完全に呆気にとられていると、オオルタイチが手がけた民族色の強い「ユタ」でコムアイが登場し、サウンドに身を委ねて心地よく踊りながら、明らかにさらに上手くなっている歌声を響かせる。
北海道の曲こと「シャクシャイン」ではモニターに北海道の地名などが次々と映し出されたりと、映像をフル活用していくライブを展開すると、
「昨日も来てたんですけど、今日はサファリパークみたいですね(笑)野獣ばっかりみたいな(笑)
でも私はもともと坂本龍一さんが始めた2009年のNO NUKESに来ていて。そこで、私の考えてることは絶対に正しいから(笑)、もっと有名になって私の考えを世の中に発信したいと思うようになって。
でも、NO NUKESって一言言うよりも、音に乗せて言葉を届ける方が伝わると思うので。だからみなさんが今日1日を最後まで楽しむのが1番だと思う」
と、普段はなかなか聞けない、真面目なMCをするが、コムアイの表現の核の部分にNO NUKESという思想があることを語った。これは他のライブではまず聞けない、このイベントだからこそだろう。
おなじみ「桃太郎」では序盤でコムアイが歌詞を飛ばすという珍しい場面もあったが、飛んだ部分を観客が合唱し、それに反応したコムアイはその後も度々客席にマイクを向けた。シュール極まりない歌詞のこのユニットの曲が本当に浸透していることがわかった瞬間だった。
途中からは球体の中に入り、客席を転がりまくるという飛び道具的なパフォーマンス(ロッキンオン主催のイベントでこうしたパフォーマンスが見れるのはこのイベントだけ)を見せると、最後の最新作からの「一休さん」ではコムアイが生身のままで客席に突入し、かなり後方まで到達すると観客の1人に肩車させ、小さいミラーボールを掲げる。するとそのミラーボールにスポットライトが当たり、会場がキラキラと輝くという実に綺麗な演出で締めてみせた。
こうした奔放なライブパフォーマンスを見ていると想像がつかないが、コムアイは学歴もこの日の出演者の中でトップクラスだし、いろんな分野に精通している。(だからこそテレビのワイドショーにコメンテーターとして出演したりしている)
ミュージシャンが政治的なことを口にすると、「ミュージシャンなんかバカばっかだから」と言われがちだが、それはこのユニットには当てはまらない。そしてこの日のライブやトークショーを見ていると、この日の出演者の中で最も今後このイベントをさらに広げていく存在になれるのは、コムアイなんじゃないかという気がする。坂本龍一、ゴッチ、TOSHI-LOW、細美武士がいる中でそう思わせられるのは本当にすごい。
1.バク
2.ユタ
3.シャクシャイン
4.桃太郎
5.一休さん
一休さん
https://youtu.be/EyI_xZKisUw
16:10~ NAMBA69
トークショーではTOSHI-LOWからのいじりを受けていた、難波章浩率いるNAMBA69。かつてはパンク系の出演者に特化した脱原発イベント、NO MORE FUCKIN' NUKESを開催した男でもある。
本人たちが出てきてのサウンドチェックで「TRUE ROMANCE」を演奏すると、まだ本番じゃないのにダイバーが出現し、
「早すぎじゃない?(笑)いきなり来たけど、大丈夫?」
と最前の観客に気を使うという場面もあってからの本番では
「ロックっていうのは社会がどんなに変わっても絶対心の中は変わらないっていう音楽なんだぜ。みんな、ロックしようぜ!」
と言って、「LET IT ROCK」から硬質な2本のギターが鳴りまくるパンクロックを炸裂させまくる。
もはやロッキンオン主催のイベントとは思えないくらいにダイバーが続出した「MY WAY」、激しいサウンドの中にどこか寂しさも感じさせる「SUMMERTIME」、観客に「壁を壊すイメージで!」と言ってタイトルを合唱させる「BREAK IT DOWN NOW」と連発していくと、
「NO NUKES要員のNAMBA69です!さっき、トークショーで俺がロッキンオンの普段のフェスに出れないのはダイブするからだ、ってTOSHI-LOWが言ってたけど、俺ダイブしてねーし!っていうか人の上に立ってるやつに言われたくねーし!(笑)」
とやはりトークショー同様に自虐的なネタで笑いを誘いながら、政治に対して自らの意思を表明し、新曲の「LOOK UP IN THE SKY」でも新曲のノリとは思えないくらいの激しさでダイブが止む気配は一切ない。
「新曲やったから、次はみんなが知ってる曲!福島には故郷に帰れない人たちが今でもたくさんいる。そんなのおかしいだろ!」
と言って「COUNTRY ROAD」のパンクカバーを演奏すると、ラストはこのイベントにぴったりなタイトルの「未来へ ~It's your future」で、怒りではなくあくまで前向きで楽しいパンクのライブに徹してみせた。
NAMBA69は近年ではフェスやイベントではアウェーな時も多い。この日も初見の人が多そうな中だったが、観客に伝わっている感がいつも以上にあった。それは難波章浩の感情が観客と共有され、同化しているようだったから。それはやはりこのイベントに来ている人は難波と同じことを考えているからだろう。
リハ.TRUE ROMANCE
1.LET IT ROCK
2.MY WAY
3.WAKE UP
4.SUMMERTIME
5.BREAK IT DOWN NOW
6.LOOK UP IN THE SKY
7.COUNTRY ROAD
8.未来へ ~It's your future~
LOOK UP IN THE SKY
https://youtu.be/RXnVHKqD8rU
17:15~ the HIATUS
前回のこのイベントにはMONOEYESとして出演した、細美武士。the HIATUSとしてはこの日が今年初ライブとなる。
荘厳さを感じさせる最新作のオープニングナンバーである「Geranium」で始まると、「Storm Racers」ではダイバーが次々に飛んでいき、「The Flare」で各メンバーの卓越した演奏力がぶつかり合いながら一つになっていく。
すると細美武士が
「いろいろ原発のことも勉強したけど、身もふたもないことを言ってしまえば、俺は数が少なくて弱い人たちの味方になりたい。なぜならそっちの方がいつも正しいから。それに数が多くて強い奴らは放っておいてもどうにかなる」
と原発だけではない自身のスタンスを明らかにし、「Bonfire」「Unhurt」ではハンドマイクで歌いながらステージを歩きまわってみせる。
髪の毛を半分金、半分青にするという、細美いわく「アシュラマンみたい」なスタイルに変えたギターのmasasucksが
「この間、俺は悪魔の実を食べた(笑)」
と急に言うと、細美に「何の能力の実?」と聞かれるも、下ネタすぎるらしくて言えず、結局は
「1人1人がしっかりした意思を持って生きていこう!」
というところに落ち着く。
細美武士の抜群の歌声で聴かせる「Radio」からアッパーな「Lone Train Running」で突っ走ると、
「放射線危険のマークあるじゃん?あれって遺跡とかから危険なものが出てきた時に、記号学者の人たちが、後になっても見ただけで危険だっていうことがわかるようなマークを作ろうって言って作ったらしいんだけど、それっておかしくない?
だから処理できないものが少しでも少なくなればいいと俺は思ってます」
と原発に対する意見を表明し、細美の歌う「Save me」というフレーズが痛切に場内を切り裂く「Insomnia」から、ラストは会場の客電が点いて明るくなった状態で演奏されたのが武道館でのライブを思い出させる「紺碧の夜に」で笑顔で終了。このイベントでは毎回そうだが、masasucksが最後に深々とお辞儀をしてからステージを去る姿が印象に残る。それは彼も原発に対して細美と同じ意思、意見だからだろう。
最後にライブをしたのが去年の大晦日なので、3ヶ月も空いたのに、今年初ライブとは思えないくらいの鉄壁さはさすが。そして細美武士は前に小泉純一郎が出演した時にも躊躇なく話しかけに行ったらしいし、坂本龍一にもいたってフラットに接している。さらなる若手がこのイベントに出た時に、その若手を大御所に繋いでくれる役目を果たしてくれそう、という意味でももはやこの男はこのイベントに欠かせない存在。
リハ.Silver Birch
1.Geranium
2.Storm Racers
3.The Flare
4.Bonfire
5.Unhurt
6.Radio
7.Lone Train Running
8.Insomnia
9.紺碧の夜に
Bonfire
https://youtu.be/6Ltxi-8twLk
18:20~ BRAHMAN
ロッキン、CDJともに2012年以降はOAUとして出演しているだけに、ロッキンオンのフェスにBRAHMANとして出るのはこのイベントくらいになっているが、だからこそこのイベントの象徴的な存在になっている。(TOSHI-LOWの存在感の大きさも含めて)
ワンマンなどで使われているバンド登場時の映像が流れた後にTOSHI-LOW以外のメンバーが登場すると、ステージ背面を覆い尽くすように巨大なバンドのフラッグがせり上がり、TOSHI-LOWが登場。最初はアイヌ語で歌われる「Kamuy-Pirma」でゆっくりとスタート。
しかしながら「FOR ONE'S LIFE」からはいつものようにTOSHI-LOWを始めとしたメンバーがステージ上で暴れまくりながら自分たちの魂を叩きつけるかのように激しいパフォーマンスを展開していく。
当然そうするとダイブ、モッシュの嵐となっていくわけだが、そんな中でこの日印象的だったのは、「其限」「空谷の跫音」という聴かせるタイプの曲たち。特に「空谷の跫音」はTOSHI-LOWの歌心に改めて気づくし、どこか故郷を失ってしまった人たちのために歌われているように思えた。
しかしながら「警醒」ではやはりTOSHI-LOWがキックを繰り出すかのように客席に突入し、ダイバーにもみくちゃにされまくりながら歌う。TOSHI-LOWに抱き抱えられるようなダイバーもいれば、叩かれるダイバーもいるが、そのどちらにも愛を感じる。
するとTOSHI-LOWのMCへ。
「時代は変わる。今日、俺は時代が変わったのをこの目で見た。難波章浩が、「MCが下手な難波章浩です」って言った。…今さら!?(笑)
時代を変えるためには、己の弱いところに向き合わなくてはならない。難波章浩がようやく自分の弱いところを認めた(笑)
朝、会場に着いて、楽屋に入った時に「おはようございます!」って大きな声で挨拶をした。そしたらカーテンをピシャッと閉められた(笑)水曜日のカンパネラだった(笑)時代を変えるのは難しい(笑)
でも本当はNO NUKESじゃなくて、YES ONE LOVEみたいなタイトルのフェスを福島でやりたい。せっかく今日みたいなすごいメンツがいるんだから、このメンバーみんなで。
でも、みんなで楽しく歌ったり踊ったりすれば時代は変わるのか?俺はそうは思えねぇ。それは怒ってるからなんだよ。怒りっていうのも時代を変える大きな力になる。怒りの曲、新曲」
とさすがのMCから演奏されたのはまさに怒りの新曲というのがぴったりな、ラウドなサウンドの「不倶戴天」。今まで何度となく「かっこいい」と思わされ続けてきたBRAHMANのかっこよさをさらに更新するかのような曲。
そして最後はこのイベントでは欠かさずに演奏されている、福島第1原発で働く人たちの映像が流れた「鼎の問」。ワンマンでもこの映像とともに演奏されることもよくあるが、やはりこのイベントで聴くと説得力が全く違うし、涙を堪えながら聴くのが本当に難しい。しかしこれはまぎれもない現実。この映像を見るたびに、やっぱり原発はダメだ、と改めて思う。
1.Kamuy-Pirma
2.FOR ONE'S LIFE
3.賽の河原
4.BEYOND THE MOUNTAIN
5.DEEP
6.SPECULATION
7.其限
8.空谷の跫音
9.守破離
10.警醒
11.不倶戴天
12.鼎の問
不倶戴天
https://youtu.be/lIkf2ik3hHg
19:25~ ASIAN KUNG-FU GENERATION
トリはこのフェス最大の旗振り役にして、この日は助教授ことゴッチがトークショーの司会も務めるという活躍っぷりを見せたアジカン。
SEもなしにメンバーがステージに登場すると、「センスレス」からじっくりとスタートし、サビに向かってじわじわと温度を高めていき、このフェスのテーマソングと言っていい「N2」(NO NUKES)はやはり今回も演奏される。
しかしながらこの日はゴッチが実に楽しそうだった。「リライト」を演奏している時も笑顔だったし、声も実によく出ていた。それはこのイベントの出演者たちのライブなどの力によるものもあると思うが。
ゴッチの挨拶的なMCを挟むと、ここで新曲「荒野を歩け」をライブ初披露。リフ主体で言葉数が多めの曲だが、一聴しただけで名曲だとわかる。こうしてアジカンの新曲が発売前にライブで聴けて、それが良い曲であるというのは実に幸せなことである。
客席からの「助教授!」という歓声に対し、
「もう助教授っていう職業はないんだよ。准教授になったから(笑)確かに髪型とかは助教授っぽいパーマではあるけれど(笑)
でもこうしてこういうライブで新曲をやるのもいいよね。やっぱりまずは音楽ありきだと思ってるから。音楽を置き去りにしたくないというか。
でもああいうこと(震災)があると、自分が前に作った曲が別の意味を帯びてくるっていうか。少女が街の真ん中で歌って、そこにたくさんの人が集まってくるっていうイメージの曲を作ったんだけど、デモに行った時にSEALDsの人たちが声を上げていて。若い人にばかり任せて申し訳ないなとも思うんだけど、俺はこの光景のためにこの曲を作ったんだなって思って」
と言って演奏されたのは「Standard」。ゴッチはリリース時からその曲のイメージをよく語っていたが、確かに今となっては曲がそれ以外のイメージまでも帯びてきている。
ゴッチのボーカルがさらにエモーショナルになりながらも、高いキーの部分までもしっかりと歌いあげる「Little Lennon」と近年の曲を続けると、これもまたこのイベントに実によく似合う「新世紀のラブソング」で強いメッセージを歌詞に込めて終了した。
アンコールではメンバーとともに作業着を着た細美武士とTOSHI-LOW、さらにはいとうせいこうと坂本龍一までもがステージに。ゴッチもサングラスにヘルメットという出で立ちは完全にエセタイマーズ。
ゴッチのピックを細美武士とTOSHI-LOWがばら撒きまくると、細美武士が
「人のを投げるのって気持ちいいね(笑)」
と全く悪びれる様子なく投げまくると、難波章浩といとうせいこうも加えて、それぞれが交代で少しずつ歌う、RCサクセション「サマータイムブルース」のカバー。いとうせいこうのラップ含め、歌詞も現代のバージョンに変わっているのだが、間奏でTOSHI-LOWの無茶振りにより、坂本龍一から順番にアジカンメンバーのソロ回しへ。
坂本龍一と同じ鍵盤という楽器のサポートメンバーのシモリョーは
「坂本龍一を超えろシモリョー!」
と無茶振りの極みみたいなものをしっかりと乗りこなすと、いとうせいこうのフリースタイルに続き、TOSHI-LOWもフリースタイルさせられるという、アジカンメンバーへの無茶振りがブーメランのように戻ってくる。当然ラップはできないが、それを細美武士が歌でしっかりとカバー。このあたりのチームワークはもはや抜群。震災前まではTOSHI-LOWは坂本龍一はもちろん、ゴッチとも細美武士ともほとんど仲良くなかったとは思えないくらいに。
演奏が終わるとアンコールに出た面々が一列に並び、客席に一礼。去り際にTOSHI-LOWが最後の一言。
「次はもうちょっと練習してからやんないとなぁ(笑)」
次も本当に楽しみにしてます。
1.センスレス
2.N2
3.リライト
4.荒野を歩け
5.Standard
6.Little Lennon
7.新世紀のラブソング
encore
8.サマータイムブルース feat.エセタイマーズ、坂本龍一、難波章浩、いとうせいこう
リライト 2016ver.
https://youtu.be/bOZixNTn_ck
このイベントに出演するのは、アーティスト側からしたらメリットはほとんどないというのは毎回書いている。ギャラも出ないし、批判されたりネットとかで絡んでくるような奴もいる。それでも出ているというのは脱原発というのを中途半端な気持ちではなく、心からそう思っているからだが、それに加えて、バンドで1人でも違う意見の人がいたら、こういうイベントには出れない。だから出演者は全員、同じ意思を共有している。今日の出演者たちが素晴らしいライブをするバンドなのは、演奏力よりもそうした人間性が一致しているからというのが本当に大きいと思う。
自分自身、たまに忘れそうになることをこのイベントに来るといつも思い出す。処理できない放射性廃棄物質の映像や、福島から避難した子供が学校でいじめられているというニュースなど…。原発に賛成できない理由がたくさんあるっていうこと。それは絶対これからも変わらない。
イベントの性質や空気はシリアスだった開催初期よりもかなり楽しい感じになってきているが、それは出演者同士の関係の変化はもちろん、やっぱり楽しく戦っていくということは音楽じゃないとできないことだからだと思う。これからもこのイベントが役割を終えて、なくなるまで足を運ぶ。それが自分の意思表示になるから。
Next→ 3/19 WANIMA @さいたまスーパーアリーナ
ということで5回目の開催となった、脱原発を掲げたイベント、NO NUKES。今回も2daysでの開催となり、この日は2日目。会場は風力発電で営業している豊洲PITで、敷地面積を最大限に使って、様々な脱原発の活動のブースや飲食店舗も並ぶ。
主催のロッキンオン・渋谷陽一社長がステージに登場し、TOSHI-LOWいじりをしながらこの日の内容について語るも、袖にいた坂本龍一から「話が長い」と突っ込まれ、まずはアジカンのゴッチを司会者としたトークショー。坂本龍一が司会者をできないのは「滑舌が悪すぎるから(笑)」ということらしい。
第1部は船橋淳、本橋成一という、それぞれチェルノブイリと福島という原発被害にあった土地のドキュメンタリーを制作した映画監督を招いて。チェルノブイリの被害にあった村を久しぶりに再訪した際、かつては50人以上した村人が2人だけになってしまったことを皮切りに、現地を訪れた人だからこそわかる各自治体の現状など、やはりシリアスな話にならざるを得ないが、福島県双葉町の映像と、原発事故前に通っていた小学校がすっかり荒廃した様子を見た15歳の少女の姿は切り裂かれるようなものを感じた。
第2部ではNAMBA69から難波章浩、いとうせいこう、水曜日のカンパネラのコムアイを迎え、途中からエセタイマーズの服を着たBRAHMANのTOSHI-LOWとthe HIATUSの細美武士が合流。ゴッチは坂本龍一に合わせ、助教授というニックネームを授かる。
唯一と言っていい若手・コムアイが震災前、高校生の頃から原発のデモに行っていたという過去が、ライブで鹿の解体をするパフォーマンスにしっかりとつながるという本質的なコムアイの行動原理や思想を感じさせる中、TOSHI-LOWと細美武士は
TOSHI-LOW「コムアイって今いくつ?」
コムアイ「24です」
TOSHI-LOW「じゃあ俺の一個下だ(笑)」
TOSHI-LOW「でもコムアイが毎週末デモに行ってたら、金曜日のカンパネラになっちゃうね(笑)」
細美「それいつから思い付いた?(笑)」
と笑いを提供してくれ、TOSHI-LOWは坂本龍一にも
「何言ってるのか全然わからないから、もっと声張って!(笑)」
と突っ込む。
しかしながら若手がなかなかこのイベントに出てくれないという坂本龍一とゴッチの嘆きに
「閉じてるイメージはあります。なかなか入っていけないような」
と言ってみせたコムアイはさすが。それを受けて坂本龍一は
「出たい人がいっぱいいるんなら日数を増やそう」
と提案し、来年は土日に会場が抑えられないことから開催されないことをゴッチが告げると
コムアイ「来年はそれぞれが別の場所でやればいいんじゃないですかね。同時多発的に」
難波章浩「ここが使えないなら野外でやりましょうよ」
TOSHI-LOW「ROCK IN JAPAN FES.を1日NO NUKESにすればいいんだよ(笑)」
難波章浩「みんなはロッキンに毎回出てるけど、俺はこのイベントにしか呼ばれないからね!(笑)」
TOSHI-LOW「あなたの客はダイブするからダメなんだよ(笑)」
と脱線しながらも今後のこのイベントの展望をそれぞれが口にしていた。
14:30~ いとうせいこう with オータコージ、ZAK
トークショーではさすがの博識ぶりを、テレビでもおなじみの「面白いおじさん」的な感じで披露していた、いとうせいこう。以前にもこのイベントには朗読で参加しているが、今回はエンジニアのZAK、曽我部恵一BANDなどで活躍するドラマー・オータコージとのセッションでの出演。
ウグイスの鳴き声など、ZAKが様々な効果音を出しながらいとうせいこうが「原発のない未来」がテーマであろう詩の朗読を始めると、シンバルを1枚外して手に取り、他のシンバルなどを擦ったりするという、「叩く」ではないドラムの表現方法から、徐々に激しさを増していくオータのドラム。そうするといとうせいこうも足でリズムを取りながら語気も次第に強くなり、ZAKはその声にエフェクトをかけたりと、まさにセッションというこの場とテンションならではの展開に。
いとうせいこうはスペシャはおろか、地上波のテレビでもおなじみと言っていい芸能人だが、今回のような形で見ると、何よりも詩人であることがよくわかる。もともと持っているヒップホップの要素は全く感じさせないものだったが。
15:15~ 水曜日のカンパネラ
10日前に初の日本武道館ワンマンを終えたばかりの水曜日のカンパネラ。武道館後初ライブとなる。
時間になるとステージのモニターに前衛的な映像が映り、尖りまくったエレクトロサウンドのインスト曲「バク」が流れ出す。が、コムアイはステージには不在で、客席は完全に呆気にとられていると、オオルタイチが手がけた民族色の強い「ユタ」でコムアイが登場し、サウンドに身を委ねて心地よく踊りながら、明らかにさらに上手くなっている歌声を響かせる。
北海道の曲こと「シャクシャイン」ではモニターに北海道の地名などが次々と映し出されたりと、映像をフル活用していくライブを展開すると、
「昨日も来てたんですけど、今日はサファリパークみたいですね(笑)野獣ばっかりみたいな(笑)
でも私はもともと坂本龍一さんが始めた2009年のNO NUKESに来ていて。そこで、私の考えてることは絶対に正しいから(笑)、もっと有名になって私の考えを世の中に発信したいと思うようになって。
でも、NO NUKESって一言言うよりも、音に乗せて言葉を届ける方が伝わると思うので。だからみなさんが今日1日を最後まで楽しむのが1番だと思う」
と、普段はなかなか聞けない、真面目なMCをするが、コムアイの表現の核の部分にNO NUKESという思想があることを語った。これは他のライブではまず聞けない、このイベントだからこそだろう。
おなじみ「桃太郎」では序盤でコムアイが歌詞を飛ばすという珍しい場面もあったが、飛んだ部分を観客が合唱し、それに反応したコムアイはその後も度々客席にマイクを向けた。シュール極まりない歌詞のこのユニットの曲が本当に浸透していることがわかった瞬間だった。
途中からは球体の中に入り、客席を転がりまくるという飛び道具的なパフォーマンス(ロッキンオン主催のイベントでこうしたパフォーマンスが見れるのはこのイベントだけ)を見せると、最後の最新作からの「一休さん」ではコムアイが生身のままで客席に突入し、かなり後方まで到達すると観客の1人に肩車させ、小さいミラーボールを掲げる。するとそのミラーボールにスポットライトが当たり、会場がキラキラと輝くという実に綺麗な演出で締めてみせた。
こうした奔放なライブパフォーマンスを見ていると想像がつかないが、コムアイは学歴もこの日の出演者の中でトップクラスだし、いろんな分野に精通している。(だからこそテレビのワイドショーにコメンテーターとして出演したりしている)
ミュージシャンが政治的なことを口にすると、「ミュージシャンなんかバカばっかだから」と言われがちだが、それはこのユニットには当てはまらない。そしてこの日のライブやトークショーを見ていると、この日の出演者の中で最も今後このイベントをさらに広げていく存在になれるのは、コムアイなんじゃないかという気がする。坂本龍一、ゴッチ、TOSHI-LOW、細美武士がいる中でそう思わせられるのは本当にすごい。
1.バク
2.ユタ
3.シャクシャイン
4.桃太郎
5.一休さん
一休さん
https://youtu.be/EyI_xZKisUw
16:10~ NAMBA69
トークショーではTOSHI-LOWからのいじりを受けていた、難波章浩率いるNAMBA69。かつてはパンク系の出演者に特化した脱原発イベント、NO MORE FUCKIN' NUKESを開催した男でもある。
本人たちが出てきてのサウンドチェックで「TRUE ROMANCE」を演奏すると、まだ本番じゃないのにダイバーが出現し、
「早すぎじゃない?(笑)いきなり来たけど、大丈夫?」
と最前の観客に気を使うという場面もあってからの本番では
「ロックっていうのは社会がどんなに変わっても絶対心の中は変わらないっていう音楽なんだぜ。みんな、ロックしようぜ!」
と言って、「LET IT ROCK」から硬質な2本のギターが鳴りまくるパンクロックを炸裂させまくる。
もはやロッキンオン主催のイベントとは思えないくらいにダイバーが続出した「MY WAY」、激しいサウンドの中にどこか寂しさも感じさせる「SUMMERTIME」、観客に「壁を壊すイメージで!」と言ってタイトルを合唱させる「BREAK IT DOWN NOW」と連発していくと、
「NO NUKES要員のNAMBA69です!さっき、トークショーで俺がロッキンオンの普段のフェスに出れないのはダイブするからだ、ってTOSHI-LOWが言ってたけど、俺ダイブしてねーし!っていうか人の上に立ってるやつに言われたくねーし!(笑)」
とやはりトークショー同様に自虐的なネタで笑いを誘いながら、政治に対して自らの意思を表明し、新曲の「LOOK UP IN THE SKY」でも新曲のノリとは思えないくらいの激しさでダイブが止む気配は一切ない。
「新曲やったから、次はみんなが知ってる曲!福島には故郷に帰れない人たちが今でもたくさんいる。そんなのおかしいだろ!」
と言って「COUNTRY ROAD」のパンクカバーを演奏すると、ラストはこのイベントにぴったりなタイトルの「未来へ ~It's your future」で、怒りではなくあくまで前向きで楽しいパンクのライブに徹してみせた。
NAMBA69は近年ではフェスやイベントではアウェーな時も多い。この日も初見の人が多そうな中だったが、観客に伝わっている感がいつも以上にあった。それは難波章浩の感情が観客と共有され、同化しているようだったから。それはやはりこのイベントに来ている人は難波と同じことを考えているからだろう。
リハ.TRUE ROMANCE
1.LET IT ROCK
2.MY WAY
3.WAKE UP
4.SUMMERTIME
5.BREAK IT DOWN NOW
6.LOOK UP IN THE SKY
7.COUNTRY ROAD
8.未来へ ~It's your future~
LOOK UP IN THE SKY
https://youtu.be/RXnVHKqD8rU
17:15~ the HIATUS
前回のこのイベントにはMONOEYESとして出演した、細美武士。the HIATUSとしてはこの日が今年初ライブとなる。
荘厳さを感じさせる最新作のオープニングナンバーである「Geranium」で始まると、「Storm Racers」ではダイバーが次々に飛んでいき、「The Flare」で各メンバーの卓越した演奏力がぶつかり合いながら一つになっていく。
すると細美武士が
「いろいろ原発のことも勉強したけど、身もふたもないことを言ってしまえば、俺は数が少なくて弱い人たちの味方になりたい。なぜならそっちの方がいつも正しいから。それに数が多くて強い奴らは放っておいてもどうにかなる」
と原発だけではない自身のスタンスを明らかにし、「Bonfire」「Unhurt」ではハンドマイクで歌いながらステージを歩きまわってみせる。
髪の毛を半分金、半分青にするという、細美いわく「アシュラマンみたい」なスタイルに変えたギターのmasasucksが
「この間、俺は悪魔の実を食べた(笑)」
と急に言うと、細美に「何の能力の実?」と聞かれるも、下ネタすぎるらしくて言えず、結局は
「1人1人がしっかりした意思を持って生きていこう!」
というところに落ち着く。
細美武士の抜群の歌声で聴かせる「Radio」からアッパーな「Lone Train Running」で突っ走ると、
「放射線危険のマークあるじゃん?あれって遺跡とかから危険なものが出てきた時に、記号学者の人たちが、後になっても見ただけで危険だっていうことがわかるようなマークを作ろうって言って作ったらしいんだけど、それっておかしくない?
だから処理できないものが少しでも少なくなればいいと俺は思ってます」
と原発に対する意見を表明し、細美の歌う「Save me」というフレーズが痛切に場内を切り裂く「Insomnia」から、ラストは会場の客電が点いて明るくなった状態で演奏されたのが武道館でのライブを思い出させる「紺碧の夜に」で笑顔で終了。このイベントでは毎回そうだが、masasucksが最後に深々とお辞儀をしてからステージを去る姿が印象に残る。それは彼も原発に対して細美と同じ意思、意見だからだろう。
最後にライブをしたのが去年の大晦日なので、3ヶ月も空いたのに、今年初ライブとは思えないくらいの鉄壁さはさすが。そして細美武士は前に小泉純一郎が出演した時にも躊躇なく話しかけに行ったらしいし、坂本龍一にもいたってフラットに接している。さらなる若手がこのイベントに出た時に、その若手を大御所に繋いでくれる役目を果たしてくれそう、という意味でももはやこの男はこのイベントに欠かせない存在。
リハ.Silver Birch
1.Geranium
2.Storm Racers
3.The Flare
4.Bonfire
5.Unhurt
6.Radio
7.Lone Train Running
8.Insomnia
9.紺碧の夜に
Bonfire
https://youtu.be/6Ltxi-8twLk
18:20~ BRAHMAN
ロッキン、CDJともに2012年以降はOAUとして出演しているだけに、ロッキンオンのフェスにBRAHMANとして出るのはこのイベントくらいになっているが、だからこそこのイベントの象徴的な存在になっている。(TOSHI-LOWの存在感の大きさも含めて)
ワンマンなどで使われているバンド登場時の映像が流れた後にTOSHI-LOW以外のメンバーが登場すると、ステージ背面を覆い尽くすように巨大なバンドのフラッグがせり上がり、TOSHI-LOWが登場。最初はアイヌ語で歌われる「Kamuy-Pirma」でゆっくりとスタート。
しかしながら「FOR ONE'S LIFE」からはいつものようにTOSHI-LOWを始めとしたメンバーがステージ上で暴れまくりながら自分たちの魂を叩きつけるかのように激しいパフォーマンスを展開していく。
当然そうするとダイブ、モッシュの嵐となっていくわけだが、そんな中でこの日印象的だったのは、「其限」「空谷の跫音」という聴かせるタイプの曲たち。特に「空谷の跫音」はTOSHI-LOWの歌心に改めて気づくし、どこか故郷を失ってしまった人たちのために歌われているように思えた。
しかしながら「警醒」ではやはりTOSHI-LOWがキックを繰り出すかのように客席に突入し、ダイバーにもみくちゃにされまくりながら歌う。TOSHI-LOWに抱き抱えられるようなダイバーもいれば、叩かれるダイバーもいるが、そのどちらにも愛を感じる。
するとTOSHI-LOWのMCへ。
「時代は変わる。今日、俺は時代が変わったのをこの目で見た。難波章浩が、「MCが下手な難波章浩です」って言った。…今さら!?(笑)
時代を変えるためには、己の弱いところに向き合わなくてはならない。難波章浩がようやく自分の弱いところを認めた(笑)
朝、会場に着いて、楽屋に入った時に「おはようございます!」って大きな声で挨拶をした。そしたらカーテンをピシャッと閉められた(笑)水曜日のカンパネラだった(笑)時代を変えるのは難しい(笑)
でも本当はNO NUKESじゃなくて、YES ONE LOVEみたいなタイトルのフェスを福島でやりたい。せっかく今日みたいなすごいメンツがいるんだから、このメンバーみんなで。
でも、みんなで楽しく歌ったり踊ったりすれば時代は変わるのか?俺はそうは思えねぇ。それは怒ってるからなんだよ。怒りっていうのも時代を変える大きな力になる。怒りの曲、新曲」
とさすがのMCから演奏されたのはまさに怒りの新曲というのがぴったりな、ラウドなサウンドの「不倶戴天」。今まで何度となく「かっこいい」と思わされ続けてきたBRAHMANのかっこよさをさらに更新するかのような曲。
そして最後はこのイベントでは欠かさずに演奏されている、福島第1原発で働く人たちの映像が流れた「鼎の問」。ワンマンでもこの映像とともに演奏されることもよくあるが、やはりこのイベントで聴くと説得力が全く違うし、涙を堪えながら聴くのが本当に難しい。しかしこれはまぎれもない現実。この映像を見るたびに、やっぱり原発はダメだ、と改めて思う。
1.Kamuy-Pirma
2.FOR ONE'S LIFE
3.賽の河原
4.BEYOND THE MOUNTAIN
5.DEEP
6.SPECULATION
7.其限
8.空谷の跫音
9.守破離
10.警醒
11.不倶戴天
12.鼎の問
不倶戴天
https://youtu.be/lIkf2ik3hHg
19:25~ ASIAN KUNG-FU GENERATION
トリはこのフェス最大の旗振り役にして、この日は助教授ことゴッチがトークショーの司会も務めるという活躍っぷりを見せたアジカン。
SEもなしにメンバーがステージに登場すると、「センスレス」からじっくりとスタートし、サビに向かってじわじわと温度を高めていき、このフェスのテーマソングと言っていい「N2」(NO NUKES)はやはり今回も演奏される。
しかしながらこの日はゴッチが実に楽しそうだった。「リライト」を演奏している時も笑顔だったし、声も実によく出ていた。それはこのイベントの出演者たちのライブなどの力によるものもあると思うが。
ゴッチの挨拶的なMCを挟むと、ここで新曲「荒野を歩け」をライブ初披露。リフ主体で言葉数が多めの曲だが、一聴しただけで名曲だとわかる。こうしてアジカンの新曲が発売前にライブで聴けて、それが良い曲であるというのは実に幸せなことである。
客席からの「助教授!」という歓声に対し、
「もう助教授っていう職業はないんだよ。准教授になったから(笑)確かに髪型とかは助教授っぽいパーマではあるけれど(笑)
でもこうしてこういうライブで新曲をやるのもいいよね。やっぱりまずは音楽ありきだと思ってるから。音楽を置き去りにしたくないというか。
でもああいうこと(震災)があると、自分が前に作った曲が別の意味を帯びてくるっていうか。少女が街の真ん中で歌って、そこにたくさんの人が集まってくるっていうイメージの曲を作ったんだけど、デモに行った時にSEALDsの人たちが声を上げていて。若い人にばかり任せて申し訳ないなとも思うんだけど、俺はこの光景のためにこの曲を作ったんだなって思って」
と言って演奏されたのは「Standard」。ゴッチはリリース時からその曲のイメージをよく語っていたが、確かに今となっては曲がそれ以外のイメージまでも帯びてきている。
ゴッチのボーカルがさらにエモーショナルになりながらも、高いキーの部分までもしっかりと歌いあげる「Little Lennon」と近年の曲を続けると、これもまたこのイベントに実によく似合う「新世紀のラブソング」で強いメッセージを歌詞に込めて終了した。
アンコールではメンバーとともに作業着を着た細美武士とTOSHI-LOW、さらにはいとうせいこうと坂本龍一までもがステージに。ゴッチもサングラスにヘルメットという出で立ちは完全にエセタイマーズ。
ゴッチのピックを細美武士とTOSHI-LOWがばら撒きまくると、細美武士が
「人のを投げるのって気持ちいいね(笑)」
と全く悪びれる様子なく投げまくると、難波章浩といとうせいこうも加えて、それぞれが交代で少しずつ歌う、RCサクセション「サマータイムブルース」のカバー。いとうせいこうのラップ含め、歌詞も現代のバージョンに変わっているのだが、間奏でTOSHI-LOWの無茶振りにより、坂本龍一から順番にアジカンメンバーのソロ回しへ。
坂本龍一と同じ鍵盤という楽器のサポートメンバーのシモリョーは
「坂本龍一を超えろシモリョー!」
と無茶振りの極みみたいなものをしっかりと乗りこなすと、いとうせいこうのフリースタイルに続き、TOSHI-LOWもフリースタイルさせられるという、アジカンメンバーへの無茶振りがブーメランのように戻ってくる。当然ラップはできないが、それを細美武士が歌でしっかりとカバー。このあたりのチームワークはもはや抜群。震災前まではTOSHI-LOWは坂本龍一はもちろん、ゴッチとも細美武士ともほとんど仲良くなかったとは思えないくらいに。
演奏が終わるとアンコールに出た面々が一列に並び、客席に一礼。去り際にTOSHI-LOWが最後の一言。
「次はもうちょっと練習してからやんないとなぁ(笑)」
次も本当に楽しみにしてます。
1.センスレス
2.N2
3.リライト
4.荒野を歩け
5.Standard
6.Little Lennon
7.新世紀のラブソング
encore
8.サマータイムブルース feat.エセタイマーズ、坂本龍一、難波章浩、いとうせいこう
リライト 2016ver.
https://youtu.be/bOZixNTn_ck
このイベントに出演するのは、アーティスト側からしたらメリットはほとんどないというのは毎回書いている。ギャラも出ないし、批判されたりネットとかで絡んでくるような奴もいる。それでも出ているというのは脱原発というのを中途半端な気持ちではなく、心からそう思っているからだが、それに加えて、バンドで1人でも違う意見の人がいたら、こういうイベントには出れない。だから出演者は全員、同じ意思を共有している。今日の出演者たちが素晴らしいライブをするバンドなのは、演奏力よりもそうした人間性が一致しているからというのが本当に大きいと思う。
自分自身、たまに忘れそうになることをこのイベントに来るといつも思い出す。処理できない放射性廃棄物質の映像や、福島から避難した子供が学校でいじめられているというニュースなど…。原発に賛成できない理由がたくさんあるっていうこと。それは絶対これからも変わらない。
イベントの性質や空気はシリアスだった開催初期よりもかなり楽しい感じになってきているが、それは出演者同士の関係の変化はもちろん、やっぱり楽しく戦っていくということは音楽じゃないとできないことだからだと思う。これからもこのイベントが役割を終えて、なくなるまで足を運ぶ。それが自分の意思表示になるから。
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