中村一義 エドガワQ2017 ~ERA再構築~ @江戸川区総合文化センター 大ホール 2/18
- 2017/02/18
- 23:42
昨年はニューアルバム「海賊盤」のリリースもあり、新たな仲間たちと新曲、新作の制作も行いながら、一方ではかつて全くライブをやっていなかったことにより、ほとんどライブで演奏されることのなかったデビューアルバム「金字塔」の再現ライブを地元である江戸川区のホールで行うなど、現在と過去を両立させた活動を行なっている、中村一義。
この日は自身の42歳の誕生日であり、デビュー20周年を記念して2000年リリースの3rdアルバム「ERA」の再構築ライブを開催。会場はもちろん自身の地元である江戸川区総合文化センター。ライブでは定番である曲も多く収録されているとはいえ、一人きりで作り上げたアルバムをどうやってライブで構築するのだろうか。
会場にはBGMとしてひたすら中村一義が敬愛する、ビートルズの楽曲が流れ続ける中、17時30分を少し過ぎたところで、まずはこの日のバンドメンバーがステージに登場。近年はHermann H. &The Pacemakersのメンバーを中心にした編成であったが、この日のメンバーは
ギター:町田昌弘
ギター:三井律郎 (THE YOUTH,LOST IN TIME)
ベース:TOMOTOMO club (THE BEACHES)
ドラム:マシータ (ex.BEAT CRUSADERS)
キーボード:高野勲 (GRAPEVINEなど)
コーラス、ギターなど:ヨースケ@HOME
コーラスなど:あずままどか
という7人。
ギター2人がステージ前方、他のメンバーは後ろにほぼ一列に並ぶという立ち位置に着くと、スクリーンには10秒から始まるカウントダウンが。アルバムのSE的な役割の「イーラ」である。(曲と言っていいのかわからないけど)
カウントダウンが0になったところで、帽子をかぶった中村一義がステージに登場し、再構築ライブとはいえ、普段のライブでもおなじみの曲である「1,2,3」からスタート。大人数編成でのサウンドは分厚くて力強く、サビでは観客が「1,2,3」というカウントに合わせて指を出すのが楽しい。
TOMOTOMO clubがサビでベースソロを挟みまくるという難解な曲展開の「ロザリオ」からはライブでほとんど聴くことができない、「ERA」再構築ライブならではの曲に。その「ロザリオ」では中村一義が間奏でステージに寝転がり、最後には両手をクロスさせて十字を作る。
この編成ではヨースケ@HOMEとあずままどかという男女のコーラス2名がいるのだが、それによって中村一義は高音コーラスは2人に任せ、100s時代はコーラスも担ってきたバンマスの町田もコーラスはほとんどせず、ギターに専念。しかしながらさすがに「ライブで演奏するのは不可能」と言われていたアルバムの曲を演奏するだけあり、足元には膨大な数のエフェクターが並んでおり、アウトロやイントロでは腰を落としてそのエフェクターを操作する場面も多く見られる。
インタールード的な「スヌーズ・ラグ」では高野が曲出しをし、スクリーンに中村一義が愛犬である芝犬のゴンとこの会場の周りを散歩する映像が流れ、ゴンの可愛さに一気に会場が癒される。
人前で演奏するのは初めて、つまりライブでは初披露となる「ピーナッツ」はヨースケ@HOMEの弾くアコギのサウンドが曲のポップな軽さを引き出し、中村一義が持ち前のハイトーンボイスではなく(序盤はやはりあまり声が出ているとは言えない)、地声で歌い出してからバンドの演奏に突入する「ショートホープ」では、
「飛び込んでいこうよ、この手をつかめ。」
のフレーズで中村一義が客席に向かって手を伸ばすが、まさに
「この一瞬が永遠というものだから。」
のフレーズの通りに、楽しみながらも、この貴重なライブを一瞬たりとも見逃したくないという緊張感が客席には満ちている。
中村一義がいったんステージから消えると、エドワード・エルガーの原曲をバンドメンバーが演奏してコーラスする「威風堂々 (Part1)」から、中村一義がこのバンド「海賊」の旗を持って再登場して歌う「威風堂々 (Part2)」と、間違いなく再構築ライブでなければ聴けない流れを見せ、曲タイトルの通りにメンバーがそれぞれ7色のスポットライトで照らされながらカラフルな演奏をした「虹の戦士」の、安直に頑張れなんて言わない言葉で背中を押す歌詞に励まされてきた人も多いはず。
ここでようやく一息とばかりに、中村一義が自分で今日が自身の誕生日であるので祝って欲しいと照れながら呼びかけると、メンバー紹介も兼ねた「ジュビリー・ジャム」でメンバー1人ずつ順番に音を重ねていき、作った時はまさか自身の誕生日を祝う場で演奏されることになるなんて全く考えていなかったであろう「ジュビリー」のサビをコーラス2人に合わせて観客が大合唱するという、中村一義ならではの誕生日の祝い方。
一転して「ゲルニカ」ではバンドメンバーが音を鳴らしているにもかかわらず、中村一義が1人で自身の心の深部まで潜って己と対話しているような感覚に陥り、短い「グレゴリオ」を挟んでの「君ノ声」では町田と三井の2人がステージ前に出てきてギターを鳴らし、サビの「ラララ」は観客による大合唱に。
そして圧巻だったのが、ロングバージョンで演奏された「ハレルヤ」。曲が進むにつれて凄みを増していくバンドサウンドと、それに負けじと歌う中村一義。中村一義は最終的には倒れこみながら、涙をこらえるようにして歌っていた。
近年の編成でのライブではおなじみの「ロックンロール」ではバンドの演奏はまさにロックンロールさを発揮し、ギターやキーボード、パーカッションとしても活躍を見せてきたコーラスの2人がハイトーン部分を担う。こうしたアッパーな曲にはマシータのアタック感の強いドラムのサウンドがよく似合う。
そして思わず客席から「これも再現するの?」という意味での苦笑が起きた「21秒間の沈黙」(無音状態が21秒続くだけという、曲としてカウントしていいのかというもの)を挟み、ついに「ERA」の最後を担う「素晴らしき世界」へ。
「コトの終わりに、何か始まる
素晴らしき世界だね」
というフレーズが新たな始まりを予感させる、壮大なバラード。そしてポップ。というよりも、「ERA」(というか中村一義の全てのアルバム)はライブで再現できないんじゃないかと言われるくらいに展開が難解な曲が多いが、メロディ自体はやはり超がつくほどにポップである。さらにこうしてアルバム一枚分を通して聴くと、中村一義の歌詞には特に難解な単語は使われていないが、誰もが知ってる単語の組み合わと、独特な文体によって、中村一義にしか綴れない歌詞になっているということがよくわかる。ポップなんだけど、他の誰も真似することはできない。その言葉の刺さり方は「天才」と称されまくったデビュー時から20年経っても全く色褪せることはない。
「金字塔」の再構築ライブの時もそうだったが、この日も「君ノ声」やロングバージョンの「ハレルヤ」の演奏中、客席には泣いている人がいた。その人たちはいつ中村一義の音楽に出会って、どんな状況の時に「ERA」を聴いていたんだろうか。1つわかるのはその人たちが今でもこの音楽に支えられているということ。
そんな様々な思惑が頭によぎる中、メンバーがステージを去っていくと、15分の休憩を挟んでから第2部が始まることがアナウンスされた。
第2部で再びメンバーがステージに現れると、ここからは海賊パーティーということで、20周年かつ誕生日の記念すべき日に、デビュー曲「犬と猫」が演奏される。もはやライブでは欠かさずに演奏されている曲ではあるが、こうして特別な日に中村一義の地元で聴けるというのはやはり格別。当然「どう?」のフレーズは大合唱に。
「今のはみんな知ってる曲。次にやる曲は「ERA」を全部聴いてるみんなでも知らない曲かもしれない(笑)
実は以前にアイドルに曲を提供したことがあるんですけど、その曲をやってみようかな、と。まっちぃ(町田)がこの曲のデモを聴いてすごい気に入ってて」
町田「いや、本当にいい曲なんだって!あと…本人が歌った方が絶対いいんだよ!(笑)」
と、たまにあるシンガーソングライターやバンドがアイドルに曲提供した時にファンみんなが思うことを町田が代弁し、アイドルソングということで、紅一点メンバーのあずままどかとのデュエットバージョンになったのだが、中村一義とあずまがあたかもアイドルのようなアクションをしながら歌っているのが実に微笑ましい。曲の方は4つ打ちの軽快なポップサウンドで、確かに歌詞は中村一義色が強い。中村一義に依頼するってどんなアイドルだ、と思ったら、ワンリルキスというサニーデイサービスの田中貴がプロデュースしたアイドルグループとのことで、繋がりがあるだけに納得。
去年リリースの「海賊盤」のリード曲にして、ライブでの観客のコーラスをレコーディングしたことにより、みんなで歌ううたになった「スカイライン」と新旧の代表曲が演奏されると、町田のギターに合わせて中村一義が歌い出す名曲「永遠なるもの」。…と思いきや、町田がまさかのミスをし、やり直すという珍しい場面も。この曲を貫く博愛精神はやはり中村一義のど真ん中というか、魂そのものであると実感する。
そして
「やって良さそうなのに、まだやってない曲があるよね!?こんな楽しんでるみんなが死ぬように生きてるわけがない!」
と言うと、曲を演奏する前にこの日の会場内に出店していた、リヤカーの駄菓子屋「駄菓子屋ROCK」の店長がギターを持ってステージに登場し、さらには海賊のバンドメンバーである平床政治とウルフのHermann H.&The Pacemakersの2人もステージに。平床はもはやおなじみの良い声を披露し、いつも通り赤ジャージ姿のウルフは翌週東京マラソンに出場することを告知する。
そうなると、「Hermann H.&The Pacemakersのボーカルの岡本洋平は?」となるが、中村一義から岡本が去年、下咽頭癌を患って闘病生活をし、一時は命さえ危ういステージ4まで癌が進行していたことを話し、先日退院したことを告げると、復活の場としてこのステージに登場。やはりかつてよりかなり痩せており(元から痩せてはいたが)、まだあまり喋ってはいけないということで、この日はアコギのみという参加の仕方になったが、こうした背景があっての「キャノンボール」の、
「僕は死ぬように生きていたくない そこで愛が待つゆえに。」
という、これまでに中村一義のファンを何度も救ってきた歌詞が今までで最もリアルに響いてきた。最後には
「みんな死ぬように生きてる場合じゃない」
と歌詞を変えて歌われ、アウトロでは
「これが愛だ」
などのフレーズのコール&レスポンスも行われ、20周年バージョンにアップデートされていた。
演奏が終わると岡本は自身の後任を託した三井とがっちりと握手して抱き合い、病からの復活の一歩を踏み出した。そして近年自らの音楽を支えてくれていた親友のその姿に中村一義は涙を流していたが、最後にステージに去る際には先ほど映像にも出てきた愛犬のゴンを抱き抱えていた。
中村一義からこの日はアンコールがないことが告げられるも、まだ何かお楽しみがあるということで再び時間を置くと、この日ステージに上がった12人全員が再びステージに登場し、「キャノンボール」のMVを撮影することに。
「カメラ角度を変えて撮影するので、3回は通しで撮ります。あと、撮影なんで生演奏ではないです」
というMV監督のコメントから、「同じ曲を3回も、音源で聴いたら飽きるだろ~」と思ってしまったが、結果的には全く飽きなかったのは、メンバーが3回全て全く違うアクションを見せていた(それぞれが楽器を交換したり、楽器を置いてはしゃいだり)ことと、何よりやっぱり「キャノンボール」が超がつくくらいの名曲だから。直前に演奏されたように、アウトロではコール&レスポンスも行われるという20周年バージョン。
3回目には再びゴンも登場してメンバーの一員になっていたが、デビュー時、アルバムを全て1人だけで作り上げ、孤高の天才と言われていた中村一義が、こんなにたくさんの仲間たちと笑い合いながら音楽を奏でるようになった。
中村一義はもう年齢的に若くはないし、かつてのようにシーンを変える天才という期待感もすっかりなくなりつつある。しかしそれでもずっと音楽を続けてきたからこそ、こうしてたくさんの仲間に出会えた。かつて1人きりだった中村一義に、20年後にこんな未来が待っているって言ったら信じるだろうか。いや、自身も認めるくらいの天邪鬼だから、きっと信じないだろうな。
しかし、なぜ今になって「キャノンボール」のMV撮影だったのか。その答えは終演後のスクリーンに映し出された。
「5/24 20周年記念セルフカバーアルバム「最高築」リリース」
「キャノンボール」も新たなアレンジが加わっていただけに、他にどんな曲が収録されて、どんなアレンジになるのか。そしてこのアルバムが出るということは、今年また中村一義のワンマンが見れる日が必ず来るはず。そこではベスト的な選曲のライブを見せてくれるとして、次のエドガワQでは「100s」の再構築ライブ(2ndアルバムの「太陽」は飛ばされたからやらなそう)が見たいな、とメンバー全員が「Q」ポーズをしていた写真撮影を見ながら思っていた。
1.イーラ
2.1,2,3
3.ロザリオ
4.メロウ
5.スヌーズ・ラグ (GON ver.)
6.ピーナッツ
7.ショートホープ
8.威風堂々 (Part1)
9.威風堂々 (Part2)
10.虹の戦士
11.ジュビリー・ジャム
12.ジュビリー
13.ゲルニカ
14.グレゴリオ
15.君ノ声
16.ハレルヤ
17.バイ・CDJ
18.ロックンロール
19.21秒間の沈黙
20.素晴らしき世界
21.犬と猫
22.ワンリルキス
23.スカイライン
24.永遠なるもの
25.キャノンボール
君ノ声
https://youtu.be/8Xi3_9Grxbc
キャノンボール
https://youtu.be/QSaydVwiNqs
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この日は自身の42歳の誕生日であり、デビュー20周年を記念して2000年リリースの3rdアルバム「ERA」の再構築ライブを開催。会場はもちろん自身の地元である江戸川区総合文化センター。ライブでは定番である曲も多く収録されているとはいえ、一人きりで作り上げたアルバムをどうやってライブで構築するのだろうか。
会場にはBGMとしてひたすら中村一義が敬愛する、ビートルズの楽曲が流れ続ける中、17時30分を少し過ぎたところで、まずはこの日のバンドメンバーがステージに登場。近年はHermann H. &The Pacemakersのメンバーを中心にした編成であったが、この日のメンバーは
ギター:町田昌弘
ギター:三井律郎 (THE YOUTH,LOST IN TIME)
ベース:TOMOTOMO club (THE BEACHES)
ドラム:マシータ (ex.BEAT CRUSADERS)
キーボード:高野勲 (GRAPEVINEなど)
コーラス、ギターなど:ヨースケ@HOME
コーラスなど:あずままどか
という7人。
ギター2人がステージ前方、他のメンバーは後ろにほぼ一列に並ぶという立ち位置に着くと、スクリーンには10秒から始まるカウントダウンが。アルバムのSE的な役割の「イーラ」である。(曲と言っていいのかわからないけど)
カウントダウンが0になったところで、帽子をかぶった中村一義がステージに登場し、再構築ライブとはいえ、普段のライブでもおなじみの曲である「1,2,3」からスタート。大人数編成でのサウンドは分厚くて力強く、サビでは観客が「1,2,3」というカウントに合わせて指を出すのが楽しい。
TOMOTOMO clubがサビでベースソロを挟みまくるという難解な曲展開の「ロザリオ」からはライブでほとんど聴くことができない、「ERA」再構築ライブならではの曲に。その「ロザリオ」では中村一義が間奏でステージに寝転がり、最後には両手をクロスさせて十字を作る。
この編成ではヨースケ@HOMEとあずままどかという男女のコーラス2名がいるのだが、それによって中村一義は高音コーラスは2人に任せ、100s時代はコーラスも担ってきたバンマスの町田もコーラスはほとんどせず、ギターに専念。しかしながらさすがに「ライブで演奏するのは不可能」と言われていたアルバムの曲を演奏するだけあり、足元には膨大な数のエフェクターが並んでおり、アウトロやイントロでは腰を落としてそのエフェクターを操作する場面も多く見られる。
インタールード的な「スヌーズ・ラグ」では高野が曲出しをし、スクリーンに中村一義が愛犬である芝犬のゴンとこの会場の周りを散歩する映像が流れ、ゴンの可愛さに一気に会場が癒される。
人前で演奏するのは初めて、つまりライブでは初披露となる「ピーナッツ」はヨースケ@HOMEの弾くアコギのサウンドが曲のポップな軽さを引き出し、中村一義が持ち前のハイトーンボイスではなく(序盤はやはりあまり声が出ているとは言えない)、地声で歌い出してからバンドの演奏に突入する「ショートホープ」では、
「飛び込んでいこうよ、この手をつかめ。」
のフレーズで中村一義が客席に向かって手を伸ばすが、まさに
「この一瞬が永遠というものだから。」
のフレーズの通りに、楽しみながらも、この貴重なライブを一瞬たりとも見逃したくないという緊張感が客席には満ちている。
中村一義がいったんステージから消えると、エドワード・エルガーの原曲をバンドメンバーが演奏してコーラスする「威風堂々 (Part1)」から、中村一義がこのバンド「海賊」の旗を持って再登場して歌う「威風堂々 (Part2)」と、間違いなく再構築ライブでなければ聴けない流れを見せ、曲タイトルの通りにメンバーがそれぞれ7色のスポットライトで照らされながらカラフルな演奏をした「虹の戦士」の、安直に頑張れなんて言わない言葉で背中を押す歌詞に励まされてきた人も多いはず。
ここでようやく一息とばかりに、中村一義が自分で今日が自身の誕生日であるので祝って欲しいと照れながら呼びかけると、メンバー紹介も兼ねた「ジュビリー・ジャム」でメンバー1人ずつ順番に音を重ねていき、作った時はまさか自身の誕生日を祝う場で演奏されることになるなんて全く考えていなかったであろう「ジュビリー」のサビをコーラス2人に合わせて観客が大合唱するという、中村一義ならではの誕生日の祝い方。
一転して「ゲルニカ」ではバンドメンバーが音を鳴らしているにもかかわらず、中村一義が1人で自身の心の深部まで潜って己と対話しているような感覚に陥り、短い「グレゴリオ」を挟んでの「君ノ声」では町田と三井の2人がステージ前に出てきてギターを鳴らし、サビの「ラララ」は観客による大合唱に。
そして圧巻だったのが、ロングバージョンで演奏された「ハレルヤ」。曲が進むにつれて凄みを増していくバンドサウンドと、それに負けじと歌う中村一義。中村一義は最終的には倒れこみながら、涙をこらえるようにして歌っていた。
近年の編成でのライブではおなじみの「ロックンロール」ではバンドの演奏はまさにロックンロールさを発揮し、ギターやキーボード、パーカッションとしても活躍を見せてきたコーラスの2人がハイトーン部分を担う。こうしたアッパーな曲にはマシータのアタック感の強いドラムのサウンドがよく似合う。
そして思わず客席から「これも再現するの?」という意味での苦笑が起きた「21秒間の沈黙」(無音状態が21秒続くだけという、曲としてカウントしていいのかというもの)を挟み、ついに「ERA」の最後を担う「素晴らしき世界」へ。
「コトの終わりに、何か始まる
素晴らしき世界だね」
というフレーズが新たな始まりを予感させる、壮大なバラード。そしてポップ。というよりも、「ERA」(というか中村一義の全てのアルバム)はライブで再現できないんじゃないかと言われるくらいに展開が難解な曲が多いが、メロディ自体はやはり超がつくほどにポップである。さらにこうしてアルバム一枚分を通して聴くと、中村一義の歌詞には特に難解な単語は使われていないが、誰もが知ってる単語の組み合わと、独特な文体によって、中村一義にしか綴れない歌詞になっているということがよくわかる。ポップなんだけど、他の誰も真似することはできない。その言葉の刺さり方は「天才」と称されまくったデビュー時から20年経っても全く色褪せることはない。
「金字塔」の再構築ライブの時もそうだったが、この日も「君ノ声」やロングバージョンの「ハレルヤ」の演奏中、客席には泣いている人がいた。その人たちはいつ中村一義の音楽に出会って、どんな状況の時に「ERA」を聴いていたんだろうか。1つわかるのはその人たちが今でもこの音楽に支えられているということ。
そんな様々な思惑が頭によぎる中、メンバーがステージを去っていくと、15分の休憩を挟んでから第2部が始まることがアナウンスされた。
第2部で再びメンバーがステージに現れると、ここからは海賊パーティーということで、20周年かつ誕生日の記念すべき日に、デビュー曲「犬と猫」が演奏される。もはやライブでは欠かさずに演奏されている曲ではあるが、こうして特別な日に中村一義の地元で聴けるというのはやはり格別。当然「どう?」のフレーズは大合唱に。
「今のはみんな知ってる曲。次にやる曲は「ERA」を全部聴いてるみんなでも知らない曲かもしれない(笑)
実は以前にアイドルに曲を提供したことがあるんですけど、その曲をやってみようかな、と。まっちぃ(町田)がこの曲のデモを聴いてすごい気に入ってて」
町田「いや、本当にいい曲なんだって!あと…本人が歌った方が絶対いいんだよ!(笑)」
と、たまにあるシンガーソングライターやバンドがアイドルに曲提供した時にファンみんなが思うことを町田が代弁し、アイドルソングということで、紅一点メンバーのあずままどかとのデュエットバージョンになったのだが、中村一義とあずまがあたかもアイドルのようなアクションをしながら歌っているのが実に微笑ましい。曲の方は4つ打ちの軽快なポップサウンドで、確かに歌詞は中村一義色が強い。中村一義に依頼するってどんなアイドルだ、と思ったら、ワンリルキスというサニーデイサービスの田中貴がプロデュースしたアイドルグループとのことで、繋がりがあるだけに納得。
去年リリースの「海賊盤」のリード曲にして、ライブでの観客のコーラスをレコーディングしたことにより、みんなで歌ううたになった「スカイライン」と新旧の代表曲が演奏されると、町田のギターに合わせて中村一義が歌い出す名曲「永遠なるもの」。…と思いきや、町田がまさかのミスをし、やり直すという珍しい場面も。この曲を貫く博愛精神はやはり中村一義のど真ん中というか、魂そのものであると実感する。
そして
「やって良さそうなのに、まだやってない曲があるよね!?こんな楽しんでるみんなが死ぬように生きてるわけがない!」
と言うと、曲を演奏する前にこの日の会場内に出店していた、リヤカーの駄菓子屋「駄菓子屋ROCK」の店長がギターを持ってステージに登場し、さらには海賊のバンドメンバーである平床政治とウルフのHermann H.&The Pacemakersの2人もステージに。平床はもはやおなじみの良い声を披露し、いつも通り赤ジャージ姿のウルフは翌週東京マラソンに出場することを告知する。
そうなると、「Hermann H.&The Pacemakersのボーカルの岡本洋平は?」となるが、中村一義から岡本が去年、下咽頭癌を患って闘病生活をし、一時は命さえ危ういステージ4まで癌が進行していたことを話し、先日退院したことを告げると、復活の場としてこのステージに登場。やはりかつてよりかなり痩せており(元から痩せてはいたが)、まだあまり喋ってはいけないということで、この日はアコギのみという参加の仕方になったが、こうした背景があっての「キャノンボール」の、
「僕は死ぬように生きていたくない そこで愛が待つゆえに。」
という、これまでに中村一義のファンを何度も救ってきた歌詞が今までで最もリアルに響いてきた。最後には
「みんな死ぬように生きてる場合じゃない」
と歌詞を変えて歌われ、アウトロでは
「これが愛だ」
などのフレーズのコール&レスポンスも行われ、20周年バージョンにアップデートされていた。
演奏が終わると岡本は自身の後任を託した三井とがっちりと握手して抱き合い、病からの復活の一歩を踏み出した。そして近年自らの音楽を支えてくれていた親友のその姿に中村一義は涙を流していたが、最後にステージに去る際には先ほど映像にも出てきた愛犬のゴンを抱き抱えていた。
中村一義からこの日はアンコールがないことが告げられるも、まだ何かお楽しみがあるということで再び時間を置くと、この日ステージに上がった12人全員が再びステージに登場し、「キャノンボール」のMVを撮影することに。
「カメラ角度を変えて撮影するので、3回は通しで撮ります。あと、撮影なんで生演奏ではないです」
というMV監督のコメントから、「同じ曲を3回も、音源で聴いたら飽きるだろ~」と思ってしまったが、結果的には全く飽きなかったのは、メンバーが3回全て全く違うアクションを見せていた(それぞれが楽器を交換したり、楽器を置いてはしゃいだり)ことと、何よりやっぱり「キャノンボール」が超がつくくらいの名曲だから。直前に演奏されたように、アウトロではコール&レスポンスも行われるという20周年バージョン。
3回目には再びゴンも登場してメンバーの一員になっていたが、デビュー時、アルバムを全て1人だけで作り上げ、孤高の天才と言われていた中村一義が、こんなにたくさんの仲間たちと笑い合いながら音楽を奏でるようになった。
中村一義はもう年齢的に若くはないし、かつてのようにシーンを変える天才という期待感もすっかりなくなりつつある。しかしそれでもずっと音楽を続けてきたからこそ、こうしてたくさんの仲間に出会えた。かつて1人きりだった中村一義に、20年後にこんな未来が待っているって言ったら信じるだろうか。いや、自身も認めるくらいの天邪鬼だから、きっと信じないだろうな。
しかし、なぜ今になって「キャノンボール」のMV撮影だったのか。その答えは終演後のスクリーンに映し出された。
「5/24 20周年記念セルフカバーアルバム「最高築」リリース」
「キャノンボール」も新たなアレンジが加わっていただけに、他にどんな曲が収録されて、どんなアレンジになるのか。そしてこのアルバムが出るということは、今年また中村一義のワンマンが見れる日が必ず来るはず。そこではベスト的な選曲のライブを見せてくれるとして、次のエドガワQでは「100s」の再構築ライブ(2ndアルバムの「太陽」は飛ばされたからやらなそう)が見たいな、とメンバー全員が「Q」ポーズをしていた写真撮影を見ながら思っていた。
1.イーラ
2.1,2,3
3.ロザリオ
4.メロウ
5.スヌーズ・ラグ (GON ver.)
6.ピーナッツ
7.ショートホープ
8.威風堂々 (Part1)
9.威風堂々 (Part2)
10.虹の戦士
11.ジュビリー・ジャム
12.ジュビリー
13.ゲルニカ
14.グレゴリオ
15.君ノ声
16.ハレルヤ
17.バイ・CDJ
18.ロックンロール
19.21秒間の沈黙
20.素晴らしき世界
21.犬と猫
22.ワンリルキス
23.スカイライン
24.永遠なるもの
25.キャノンボール
君ノ声
https://youtu.be/8Xi3_9Grxbc
キャノンボール
https://youtu.be/QSaydVwiNqs
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