04 Limited Sazabys @日本武道館 2/11
- 2017/02/12
- 00:10
BOØWY時代の氷室京介がこの場所でライブを行った時に言ったと言われている「ライブハウス日本武道館へようこそ」という一言以来、ロックバンドにとって日本武道館という会場は憧れの会場であり続けてきたわけだが、ロックの中でもパンクというところに絞っていうと、武道館はアリーナをスタンディングにしたとしてもスタンドが椅子席というホールにも似た構造上、なかなか相性の良くない会場であった。(ELLEGARDENでは武道館でやらなかった細美武士がthe HIATUSで武道館ワンマンをやったのもそこと無関係ではないはず)
しかしながらパンクに限っていえば、相性以前にこのキャパを埋めることのできるバンドが現れなかったという事実もパンクと武道館というイメージが結びつかない要因でもあると思われる。(実際に自分もKen Yokoyamaくらいしかパンクのアーティストのライブを武道館で見たことがない。その時はオープニングアクトでBRAHMANも出たが)
しかしながらそんなパンクシーンを出自としながらこのキャパを埋めて余りあるバンドが今のシーンにはいる。その一翼が、すでに自身の主催するフェス、YON FESでは武道館のキャパ以上の人を動員している、名古屋の04 Limited Sazabys(通称フォーリミ)である。(もう一つはもはや武道館すら飛び越えてしまったWANIMA)
もはやパンクという枠から完全に飛び出したアルバム「eureka」を昨年リリースし、メンバーも名古屋から東京に進出という武道館に立つには絶好の状況とタイミング。
最寄駅である九段下駅にはバンドのこれまでの記念碑的なライブの写真などが飾られており、午前中から物販は長蛇の列という、この日会場近辺は完全にこのバンドでジャックされていた。
ステージ両サイドにはモニターが設置され、ステージには白い幕にこの日のライブロゴが映し出されており、ステージの作りを知ることはできないが、客席は2F最後方の立ち見席まで含めて完全に超満員、客席にはこれまで一緒に戦ってきた盟友と言えるバンドのメンバーたちの姿も見える。
17時を少し過ぎた頃、キッズ達が今か今かと待ちわびる中、会場BGMの音量が徐々に大きくなると同時に場内は暗くなっていき、完全に暗転したところでスクリーンにはライブハウスで機材のセッティングをするメンバーの姿。おなじみのSEが鳴ってステージに向かうところで映像が終わり、響くバンドの音。幕には巨大なメンバーのシルエット。記念すべき初武道館の1曲目に鳴らされたのは「monolith」。いきなりの爆発音の特効が炸裂すると、イントロからGENの歌い出しになると幕が落ちてメンバーの姿とステージの全容が明らかに。KOUHEIの背後に巨大なスクリーンはあれど、ライブハウスより広い武道館のステージからするとこじんまりとした、メンバー同士の距離が近い楽器のセッティングでGENのハイトーンボイスが響き、スタンディングのアリーナエリアからは早くもダイバーが続出。
思えば自分がこのバンドの曲を初めて聴いたのはこの曲。リリースされたばかりのミニアルバム「monolith」のタイトル曲であり、一曲目に収録されていた。この曲から始まったことにより、その初めて聴いた時の感覚が蘇ってくる。そんな個人的な感情を全て受け止めるかのようにバンドの演奏とテンションはすでに最高潮と言ってもいいくらいに熱く、力強い。
続く「fiction」からはパンクバンドのライブではまず見られない、レーザー光線が飛び交いまくるという演出。それに加えて照明もめまぐるしく明滅し、バンドだけでなくスタッフも序盤からすべての力とアイデアを結集しているのがよくわかる。
メンバーの見た目が実年齢よりかなり幼く見えるバンドであるが、そのキッズな部分を最も担っている男であるギターのRYU-TAは早くもステージの左右に伸びた花道を駆け回りながらリフを刻み、もう1人のギタリストである、赤い色の派手な髪の割には言葉数が少ないHIROKAZも序盤から「オイ!オイ!」と煽りまくっている。普段のライブではあまり見れない姿だが、これもまた武道館の持つ魔力によるものだろうか。
KOUHEIの激しいドラム連打から始まった「escape」、おなじみの
「フォーリミ!フォーリミ!」
に加えて
「日の丸!日の丸!」「武道館!武道館!」
とこの日ならではのコール&レスポンスを加えたRYU-TAがダンスビートに合わせて左足を高く上げる(上げた高さが年々高くなってる気がする)「Chicken race」とフェスやイベントなどの持ち時間の短いライブでも会場を揺らしてきたキラーチューンを惜しげもなく序盤から畳み掛けると、外人の男性とセクシーな出で立ちの女性2人が車に乗った映像が流れた「Warp」から水が跳ねる音を歌うサビが楽しい「drops」と最新アルバム「eureka」の曲が続いただけにその流れで「eureka」のゾーンに入るかと思いきや、
「2017年2月11日、日本武道館!どこでもない、今ここ!」
と「Now here,No where」でまさに「どこでもない今ここ」にいることを実感させてくれる。
この日、会場には今までにお世話になった人、それこそ親族から同級生、昔のバイト先の店長、そして仲間のバンド達が見に来ていたが、ライブ直前にWANIMAやKEYTALKなどのその仲間が客席に来ているのがわかって歓声が上がったことにわずかばかりの嫉妬を感じさせるMCで笑わせると、実写の猫の顔(エキゾチックショートヘア?)にロボットの体をくっつけた映像がシュールな「labyrinth」の締めのキメがそのままイントロになり、高速4つ打ちビートで踊らせまくり、メンバーの演奏する姿がスクリーンに映るとKOUHEIがコーラスしながらカメラ目線を決める「nem…」と、本当にテンポ良く曲を連発。それはGENが間奏を演奏している間に水分補給をしたりして、曲と曲の間をほとんど作らない(楽器を交換することもほとんどない)というアレンジでライブを行ってることによるものが大きい。
そんな中でGENが
「昔の曲が聴きたいってよく言われるんだけど、ツアーとかで昔の曲をやったら「なにこの曲知らない」みたいな空気になるのはなんなんだ(笑)」
と話した直後にベースを弾きながら歌い始める「Grasshopper」は初期の曲なだけに英語詞のパンクチューン。しかしながらCメロでは
「自分でいてくれよ
なりたい自分の手を離すな」
と日本語での強いメッセージが歌われ、サビ前の
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズはスクリーンに映し出される。この日、この場所でこの曲を聴いてこのメッセージを受け取った自分は、明日はこの日よりもずっと高く飛べる。
RYU-TAのハードコアのルーツを感じさせるボーカル部分では歌詞がスクリーンに映し出され、ステージ前からは火柱も噴き出した「knife」からは先ほどのGENの言葉通りに「lost my way」、「imaginary」と初期の楽曲が続く。パンク要素が強かった当時の曲の中ではそこまで激しい曲ではないが、
「曲は子供みたいなもの。こんな素晴らしい場所で鳴らされて、曲たちも喜んでるはず」
とGENが言ったように、当時はこんな大きな場所で演奏されるようになるとは思っていなかったであろう。
するとここまでテンポ良く進んでいた流れがいったん止まり、会場が真っ暗になると、スクリーンには結成した2008年からの全てのライブの日付と会場がズラッと流れていく。それと同時に当時のライブ映像やアーティスト写真が映し出され(初期の本当にガラッガラのライブハウスで演奏している姿は今となっては信じられない)、日付が「2017年2/11」で止まると、その結成初期から演奏していたであろう「Buster call」がここで放たれる。てっきり終盤、あるいは最後に演奏されるんじゃないかと思っていたが、その結成からの全てのライブがあったからこそ、この日この場所でこの曲が鳴らされている。これほどまでに、どこでもない今ここ、を感じさせてくれる演出もない。
パンクバンドならではのショートチューン「Remember」から「Any」と加速し、「compact karma」では飛び跳ねさせ、演奏するのが実に久しぶりだという「bless you」を情感たっぷりにGENが歌い上げると、この日会場にはたくさんの仲間たちが見に来ていることに再び触れ、
「今日来ていないすごい人たちからもコメント映像をいただいてます!見たい?」
ということでコメント映像を見ることになるのだが、てっきりHi-STANDARDやASIAN KUNG-FU GENERATIONといったすごい人たちなのかと思いきや、スクリーンに映し出されたのはQUEENのフレディ・マーキュリーのコスプレをしたRYU-TA。そのままQUEEN「bicycle race」を歌うと、
RYU-TA→フレディ・マーキュリー、ルパン三世
GEN→芥川龍之介、卑弥呼
HIROKAZ→くいだおれ人形、マクドナルドのドナルド
KOUHEI→ハリーポッターのハーマイオニー、魔女の宅急便のキキ
という各メンバーの無駄に完成度の高いコスプレでのコメントが次々に流れる。(しかもみんなフォーリミを好きで聴いているという設定)
RYU-TAのルパン三世が最後だったのだが、締めが
「フォーリミはみなさんの大事なものを奪っていきました…」
という「カリオストロの城」での有名なセリフだったのだが、これはルパンではなく銭形警部のセリフであり、スタッフにすぐさま突っ込まれていた。
GENはこの演出を「俺はやりたくなかったけど、KOUHEIがどうしても女装したかったからやった(笑)」とKOUHEIになすりつけ、KOUHEIに
「お前は女々しいんだよ~。男らしいところを見せてみろよ!」
と焚きつけると、KOUHEIが男らしく力強いドラムソロを披露してそのまま「Night on」へ。
すっかりいじられキャラというポジションが定着したKOUHEIだが、アジカンの伊地知潔、[Alexandros]のサトヤス、WANIMAのFujiなど、しっかりしたドラマーが入ってからそれまでの下積みが嘘のように飛躍していくバンドたちがいるように、フォーリミも間違いなくこのKOUHEIが入ってから一気に飛躍した。KOUHEIの場合はそのドラムテクニックとコーラスワークはライブでも充分に確認できるが、曲作りの段階でもバンマスとしてアレンジを手掛けているというから、現在のフォーリミのサウンドを支えているのは間違いなくこの男である。
HIROKAZの不穏なギターとGENのベースが横ノリの快楽感を味あわせてくれる、歌謡曲の要素すら感じる「mahoroba」、サビを歌うのこそGENだがメインボーカルはRYU-TAと言ってもいい「discord」と後半は「eureka」の曲を中心に進む中、「Letter」ではまさに手紙のような映像に歌詞が映し出され、海辺ではしゃぎまわるメンバーたちの楽しそうな姿も。
さらに「milk」では恋人の女性と一緒に河川敷を歩いているかのような映像に少しほっこりとさせられる。詞の内容自体はかなり直接的に性の匂いを感じさせるものではあるけれど。
昨年のYON FESで演奏された時もそうだったが、大会場で鳴らされるのがとても似合う、一気に空気が変わる「hello」ではラスサビでこの日ここまでで1番大きな合唱が会場に響き、アルバムのタイトル曲である「eureka」ではGENが歌い上げる中、ステージ背面には夜空に浮かぶ無数の星のような演出が実にロマンチックに輝く。
またここからライブが始まるんじゃないかとすら思わせるくらいに始まり感を強く感じさせる「Horizon」を演奏すると、
「僕らは金もコネもないし、オーディションで優勝したりもしてない、ただライブハウスでライブを重ねてきたバンドです。そんな僕らが何故ここまで来れたかというと、人に恵まれていたから。人に恵まれたのは、僕らがいい奴らだから(笑)
でも今日来てくれてる仲間もたくさんいるけど、辞めたくなくても辞めざるを得なかった仲間もたくさん見てきて…」
と言葉にしたGENは「あ、今ヤバい」と言って涙を拭った。本当はこの会場にいて欲しかった、ずっと一緒に戦っていきたかった仲間もたくさんいたのだろう。
そんな思いを全て背負った上で、
「みんなに出会えたから、この最低な世界を愛せるようになった」
と前置きして演奏された「再会の歌」こと「Terminal」は本当に感動的であり、最後には「swim」でフォーリミの未来と我々観客の未来、そしてロックシーンの未来に光を当てた。フォーリミは本当にロックバンドの力を信じているからこそ、自分たちで仲間のロックバンドを集めてフェスをやったりと、自分たちだけが上に行ければいいというマインドではなく、すごい奴らと刺激し合いながら肩を組んで一緒に上に行きたいという姿勢を示している。そしてその戦い方こそが、ロックバンド以外の形態のアーティストではなかなかできることではないということを尊敬する先輩のバンドたちから学んでいる。そういうバンドだからこそ、4人がステージに立って、4人が出す音と声だけで演奏するという姿に何よりも感動してしまう。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「まだまだ行けるよ俺たち!一緒にもっと行こう!革命を起こそう!」
と「climb」、そして
「あー、バンド辞めないで良かった!辞めようとした時もいっぱいあったけど!」
とこの日1番本音を曝け出したであろう言葉から「Feel」を演奏し、まさにこの感覚を肌にこびり付かせて颯爽とステージを去っていった。
しかしこれで終わるわけもなく、再びメンバーがステージに登場。満員であってもこの日は大赤字であると裏側の事情を明かし、
「だから物販を買ってください(笑)
我々は物販を持ってきている、みんなは財布を持ってきている。なんという奇跡(笑)」
と笑わせながら、
「東京に来てもう4ヶ月。東京って意外と星が見える」
と、東京に住むようになったからこその言葉に続いて演奏されたのはやはり「midnight cruising」。星空が見える野外の会場ではないが、曲が始まるとステージの端に置かれたミラーボールたちが輝き出し、「eureka」の時と同様にステージ背面の星も輝くという粋な演出。これは武道館だからこそ映える演出だし、メンバーの演奏はいつも通りだが、武道館でフォーリミがライブをやってくれて良かった、そしてこうして武道館で見れて良かったと思わせてくれる。
そして、
「僕らはみんなの青春になりたくない!一緒に歳を取っていきたい!できれば一生一緒に!」
とGENが言って、最後の最後に演奏されたのはその言葉がそのまま歌詞になっている「Give me」。「cubic」もそうだが、シングルのカップリングという立ち位置の曲がこんなにキラーチューンになっているという曲のクオリティの高さ。
銀テープが客席に放たれる中、もはやフォーリミのメンバーは青春という時期をとっくに超えた年齢である。それはメンバーより年上な自分もそう。とかくパンクという音楽はその初期衝動からくる蒼さによって青春の音楽とされがちだし、それはかつて青春パンクでロックに目覚め、今となっては当時のバンドの曲やライブがすっかり青春の中の1ページと化してしまった自分には痛いくらいによくわかる。
でもそんな青春をとっくに終えた我々はこうしてフォーリミのライブで演奏する側と聴く側に分かれてこそいるが、もはや青春にはなりようもないのに毎回顔を合わせている。ということは、青春じゃなくても曲を聴いてライブを見ても楽しめたり感動できたりする、そういう力がフォーリミにはあるということである。だからできたらバンドが続く限りはずっとこのまま、これからも一緒に歳を取っていきたい。
「歳を取ったからアコースティックでみんなも椅子に座ったままで…」とかではなく、あくまで今のスタイルのままで。
演奏が終わると明るくなった会場の中、メンバーが写真撮影をし、ステージ左右の花道で観客に手を振り、真ん中に集まると肩を組んで深々と頭を下げてからステージを去り、強烈な余韻を残したまま、BGMとしてこの日演奏されなかった曲が流れていた。
やはりこれまでの活動の集大成的な内容のライブになったが、だからこそフォーリミが他のパンクバンドの中から飛び抜けた存在になり、ここまで来れたのは、何よりも楽曲が良いからであるというのがよくわかる。(日本語だからというのもあるだろうけど)
それは、冒頭の「monolith」を初めて聴いた時に感じた、「他のパンクバンドとは全く違う!」という衝撃にも似たきらめきを感じた時から全く変わっていない。
GENが言っていたように人に恵まれたというのもあるし、その象徴となるのはやはりYON FES。2回目の開催となる今年はトリビュート盤に参加することが発表されているアジカンという大物までもが名を連ねている。こうして最高なライブを見たからには、やっぱりまたあの場所で「他のどこでもない今ここ」を実感したいのだ。そう思える限り、「まだ夢は続く」。
1.monolith
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.Warp
6.drops
7.Now here,No where
8.labyrinth
9.nem…
10.Grasshopper
11.knife
12.lost my way
13.imaginary
14.Buster call
15.Remember
16.Any
17.compact karma
18.bless you
19.Night on
20.mahoroba
21.cubic
22.discord
23.Letter
24.milk
25.hello
26.eureka
27.Horizon
28.Terminal
29.swim
encore1
30.climb
31.Feel
encore2
32.midnight cruising
33.Give me
monolith
https://youtu.be/8HrcVdrj-Eg
swim
https://youtu.be/447cO8LTq9A
Next→2/15 The Mirraz @千葉LOOK



しかしながらパンクに限っていえば、相性以前にこのキャパを埋めることのできるバンドが現れなかったという事実もパンクと武道館というイメージが結びつかない要因でもあると思われる。(実際に自分もKen Yokoyamaくらいしかパンクのアーティストのライブを武道館で見たことがない。その時はオープニングアクトでBRAHMANも出たが)
しかしながらそんなパンクシーンを出自としながらこのキャパを埋めて余りあるバンドが今のシーンにはいる。その一翼が、すでに自身の主催するフェス、YON FESでは武道館のキャパ以上の人を動員している、名古屋の04 Limited Sazabys(通称フォーリミ)である。(もう一つはもはや武道館すら飛び越えてしまったWANIMA)
もはやパンクという枠から完全に飛び出したアルバム「eureka」を昨年リリースし、メンバーも名古屋から東京に進出という武道館に立つには絶好の状況とタイミング。
最寄駅である九段下駅にはバンドのこれまでの記念碑的なライブの写真などが飾られており、午前中から物販は長蛇の列という、この日会場近辺は完全にこのバンドでジャックされていた。
ステージ両サイドにはモニターが設置され、ステージには白い幕にこの日のライブロゴが映し出されており、ステージの作りを知ることはできないが、客席は2F最後方の立ち見席まで含めて完全に超満員、客席にはこれまで一緒に戦ってきた盟友と言えるバンドのメンバーたちの姿も見える。
17時を少し過ぎた頃、キッズ達が今か今かと待ちわびる中、会場BGMの音量が徐々に大きくなると同時に場内は暗くなっていき、完全に暗転したところでスクリーンにはライブハウスで機材のセッティングをするメンバーの姿。おなじみのSEが鳴ってステージに向かうところで映像が終わり、響くバンドの音。幕には巨大なメンバーのシルエット。記念すべき初武道館の1曲目に鳴らされたのは「monolith」。いきなりの爆発音の特効が炸裂すると、イントロからGENの歌い出しになると幕が落ちてメンバーの姿とステージの全容が明らかに。KOUHEIの背後に巨大なスクリーンはあれど、ライブハウスより広い武道館のステージからするとこじんまりとした、メンバー同士の距離が近い楽器のセッティングでGENのハイトーンボイスが響き、スタンディングのアリーナエリアからは早くもダイバーが続出。
思えば自分がこのバンドの曲を初めて聴いたのはこの曲。リリースされたばかりのミニアルバム「monolith」のタイトル曲であり、一曲目に収録されていた。この曲から始まったことにより、その初めて聴いた時の感覚が蘇ってくる。そんな個人的な感情を全て受け止めるかのようにバンドの演奏とテンションはすでに最高潮と言ってもいいくらいに熱く、力強い。
続く「fiction」からはパンクバンドのライブではまず見られない、レーザー光線が飛び交いまくるという演出。それに加えて照明もめまぐるしく明滅し、バンドだけでなくスタッフも序盤からすべての力とアイデアを結集しているのがよくわかる。
メンバーの見た目が実年齢よりかなり幼く見えるバンドであるが、そのキッズな部分を最も担っている男であるギターのRYU-TAは早くもステージの左右に伸びた花道を駆け回りながらリフを刻み、もう1人のギタリストである、赤い色の派手な髪の割には言葉数が少ないHIROKAZも序盤から「オイ!オイ!」と煽りまくっている。普段のライブではあまり見れない姿だが、これもまた武道館の持つ魔力によるものだろうか。
KOUHEIの激しいドラム連打から始まった「escape」、おなじみの
「フォーリミ!フォーリミ!」
に加えて
「日の丸!日の丸!」「武道館!武道館!」
とこの日ならではのコール&レスポンスを加えたRYU-TAがダンスビートに合わせて左足を高く上げる(上げた高さが年々高くなってる気がする)「Chicken race」とフェスやイベントなどの持ち時間の短いライブでも会場を揺らしてきたキラーチューンを惜しげもなく序盤から畳み掛けると、外人の男性とセクシーな出で立ちの女性2人が車に乗った映像が流れた「Warp」から水が跳ねる音を歌うサビが楽しい「drops」と最新アルバム「eureka」の曲が続いただけにその流れで「eureka」のゾーンに入るかと思いきや、
「2017年2月11日、日本武道館!どこでもない、今ここ!」
と「Now here,No where」でまさに「どこでもない今ここ」にいることを実感させてくれる。
この日、会場には今までにお世話になった人、それこそ親族から同級生、昔のバイト先の店長、そして仲間のバンド達が見に来ていたが、ライブ直前にWANIMAやKEYTALKなどのその仲間が客席に来ているのがわかって歓声が上がったことにわずかばかりの嫉妬を感じさせるMCで笑わせると、実写の猫の顔(エキゾチックショートヘア?)にロボットの体をくっつけた映像がシュールな「labyrinth」の締めのキメがそのままイントロになり、高速4つ打ちビートで踊らせまくり、メンバーの演奏する姿がスクリーンに映るとKOUHEIがコーラスしながらカメラ目線を決める「nem…」と、本当にテンポ良く曲を連発。それはGENが間奏を演奏している間に水分補給をしたりして、曲と曲の間をほとんど作らない(楽器を交換することもほとんどない)というアレンジでライブを行ってることによるものが大きい。
そんな中でGENが
「昔の曲が聴きたいってよく言われるんだけど、ツアーとかで昔の曲をやったら「なにこの曲知らない」みたいな空気になるのはなんなんだ(笑)」
と話した直後にベースを弾きながら歌い始める「Grasshopper」は初期の曲なだけに英語詞のパンクチューン。しかしながらCメロでは
「自分でいてくれよ
なりたい自分の手を離すな」
と日本語での強いメッセージが歌われ、サビ前の
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズはスクリーンに映し出される。この日、この場所でこの曲を聴いてこのメッセージを受け取った自分は、明日はこの日よりもずっと高く飛べる。
RYU-TAのハードコアのルーツを感じさせるボーカル部分では歌詞がスクリーンに映し出され、ステージ前からは火柱も噴き出した「knife」からは先ほどのGENの言葉通りに「lost my way」、「imaginary」と初期の楽曲が続く。パンク要素が強かった当時の曲の中ではそこまで激しい曲ではないが、
「曲は子供みたいなもの。こんな素晴らしい場所で鳴らされて、曲たちも喜んでるはず」
とGENが言ったように、当時はこんな大きな場所で演奏されるようになるとは思っていなかったであろう。
するとここまでテンポ良く進んでいた流れがいったん止まり、会場が真っ暗になると、スクリーンには結成した2008年からの全てのライブの日付と会場がズラッと流れていく。それと同時に当時のライブ映像やアーティスト写真が映し出され(初期の本当にガラッガラのライブハウスで演奏している姿は今となっては信じられない)、日付が「2017年2/11」で止まると、その結成初期から演奏していたであろう「Buster call」がここで放たれる。てっきり終盤、あるいは最後に演奏されるんじゃないかと思っていたが、その結成からの全てのライブがあったからこそ、この日この場所でこの曲が鳴らされている。これほどまでに、どこでもない今ここ、を感じさせてくれる演出もない。
パンクバンドならではのショートチューン「Remember」から「Any」と加速し、「compact karma」では飛び跳ねさせ、演奏するのが実に久しぶりだという「bless you」を情感たっぷりにGENが歌い上げると、この日会場にはたくさんの仲間たちが見に来ていることに再び触れ、
「今日来ていないすごい人たちからもコメント映像をいただいてます!見たい?」
ということでコメント映像を見ることになるのだが、てっきりHi-STANDARDやASIAN KUNG-FU GENERATIONといったすごい人たちなのかと思いきや、スクリーンに映し出されたのはQUEENのフレディ・マーキュリーのコスプレをしたRYU-TA。そのままQUEEN「bicycle race」を歌うと、
RYU-TA→フレディ・マーキュリー、ルパン三世
GEN→芥川龍之介、卑弥呼
HIROKAZ→くいだおれ人形、マクドナルドのドナルド
KOUHEI→ハリーポッターのハーマイオニー、魔女の宅急便のキキ
という各メンバーの無駄に完成度の高いコスプレでのコメントが次々に流れる。(しかもみんなフォーリミを好きで聴いているという設定)
RYU-TAのルパン三世が最後だったのだが、締めが
「フォーリミはみなさんの大事なものを奪っていきました…」
という「カリオストロの城」での有名なセリフだったのだが、これはルパンではなく銭形警部のセリフであり、スタッフにすぐさま突っ込まれていた。
GENはこの演出を「俺はやりたくなかったけど、KOUHEIがどうしても女装したかったからやった(笑)」とKOUHEIになすりつけ、KOUHEIに
「お前は女々しいんだよ~。男らしいところを見せてみろよ!」
と焚きつけると、KOUHEIが男らしく力強いドラムソロを披露してそのまま「Night on」へ。
すっかりいじられキャラというポジションが定着したKOUHEIだが、アジカンの伊地知潔、[Alexandros]のサトヤス、WANIMAのFujiなど、しっかりしたドラマーが入ってからそれまでの下積みが嘘のように飛躍していくバンドたちがいるように、フォーリミも間違いなくこのKOUHEIが入ってから一気に飛躍した。KOUHEIの場合はそのドラムテクニックとコーラスワークはライブでも充分に確認できるが、曲作りの段階でもバンマスとしてアレンジを手掛けているというから、現在のフォーリミのサウンドを支えているのは間違いなくこの男である。
HIROKAZの不穏なギターとGENのベースが横ノリの快楽感を味あわせてくれる、歌謡曲の要素すら感じる「mahoroba」、サビを歌うのこそGENだがメインボーカルはRYU-TAと言ってもいい「discord」と後半は「eureka」の曲を中心に進む中、「Letter」ではまさに手紙のような映像に歌詞が映し出され、海辺ではしゃぎまわるメンバーたちの楽しそうな姿も。
さらに「milk」では恋人の女性と一緒に河川敷を歩いているかのような映像に少しほっこりとさせられる。詞の内容自体はかなり直接的に性の匂いを感じさせるものではあるけれど。
昨年のYON FESで演奏された時もそうだったが、大会場で鳴らされるのがとても似合う、一気に空気が変わる「hello」ではラスサビでこの日ここまでで1番大きな合唱が会場に響き、アルバムのタイトル曲である「eureka」ではGENが歌い上げる中、ステージ背面には夜空に浮かぶ無数の星のような演出が実にロマンチックに輝く。
またここからライブが始まるんじゃないかとすら思わせるくらいに始まり感を強く感じさせる「Horizon」を演奏すると、
「僕らは金もコネもないし、オーディションで優勝したりもしてない、ただライブハウスでライブを重ねてきたバンドです。そんな僕らが何故ここまで来れたかというと、人に恵まれていたから。人に恵まれたのは、僕らがいい奴らだから(笑)
でも今日来てくれてる仲間もたくさんいるけど、辞めたくなくても辞めざるを得なかった仲間もたくさん見てきて…」
と言葉にしたGENは「あ、今ヤバい」と言って涙を拭った。本当はこの会場にいて欲しかった、ずっと一緒に戦っていきたかった仲間もたくさんいたのだろう。
そんな思いを全て背負った上で、
「みんなに出会えたから、この最低な世界を愛せるようになった」
と前置きして演奏された「再会の歌」こと「Terminal」は本当に感動的であり、最後には「swim」でフォーリミの未来と我々観客の未来、そしてロックシーンの未来に光を当てた。フォーリミは本当にロックバンドの力を信じているからこそ、自分たちで仲間のロックバンドを集めてフェスをやったりと、自分たちだけが上に行ければいいというマインドではなく、すごい奴らと刺激し合いながら肩を組んで一緒に上に行きたいという姿勢を示している。そしてその戦い方こそが、ロックバンド以外の形態のアーティストではなかなかできることではないということを尊敬する先輩のバンドたちから学んでいる。そういうバンドだからこそ、4人がステージに立って、4人が出す音と声だけで演奏するという姿に何よりも感動してしまう。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「まだまだ行けるよ俺たち!一緒にもっと行こう!革命を起こそう!」
と「climb」、そして
「あー、バンド辞めないで良かった!辞めようとした時もいっぱいあったけど!」
とこの日1番本音を曝け出したであろう言葉から「Feel」を演奏し、まさにこの感覚を肌にこびり付かせて颯爽とステージを去っていった。
しかしこれで終わるわけもなく、再びメンバーがステージに登場。満員であってもこの日は大赤字であると裏側の事情を明かし、
「だから物販を買ってください(笑)
我々は物販を持ってきている、みんなは財布を持ってきている。なんという奇跡(笑)」
と笑わせながら、
「東京に来てもう4ヶ月。東京って意外と星が見える」
と、東京に住むようになったからこその言葉に続いて演奏されたのはやはり「midnight cruising」。星空が見える野外の会場ではないが、曲が始まるとステージの端に置かれたミラーボールたちが輝き出し、「eureka」の時と同様にステージ背面の星も輝くという粋な演出。これは武道館だからこそ映える演出だし、メンバーの演奏はいつも通りだが、武道館でフォーリミがライブをやってくれて良かった、そしてこうして武道館で見れて良かったと思わせてくれる。
そして、
「僕らはみんなの青春になりたくない!一緒に歳を取っていきたい!できれば一生一緒に!」
とGENが言って、最後の最後に演奏されたのはその言葉がそのまま歌詞になっている「Give me」。「cubic」もそうだが、シングルのカップリングという立ち位置の曲がこんなにキラーチューンになっているという曲のクオリティの高さ。
銀テープが客席に放たれる中、もはやフォーリミのメンバーは青春という時期をとっくに超えた年齢である。それはメンバーより年上な自分もそう。とかくパンクという音楽はその初期衝動からくる蒼さによって青春の音楽とされがちだし、それはかつて青春パンクでロックに目覚め、今となっては当時のバンドの曲やライブがすっかり青春の中の1ページと化してしまった自分には痛いくらいによくわかる。
でもそんな青春をとっくに終えた我々はこうしてフォーリミのライブで演奏する側と聴く側に分かれてこそいるが、もはや青春にはなりようもないのに毎回顔を合わせている。ということは、青春じゃなくても曲を聴いてライブを見ても楽しめたり感動できたりする、そういう力がフォーリミにはあるということである。だからできたらバンドが続く限りはずっとこのまま、これからも一緒に歳を取っていきたい。
「歳を取ったからアコースティックでみんなも椅子に座ったままで…」とかではなく、あくまで今のスタイルのままで。
演奏が終わると明るくなった会場の中、メンバーが写真撮影をし、ステージ左右の花道で観客に手を振り、真ん中に集まると肩を組んで深々と頭を下げてからステージを去り、強烈な余韻を残したまま、BGMとしてこの日演奏されなかった曲が流れていた。
やはりこれまでの活動の集大成的な内容のライブになったが、だからこそフォーリミが他のパンクバンドの中から飛び抜けた存在になり、ここまで来れたのは、何よりも楽曲が良いからであるというのがよくわかる。(日本語だからというのもあるだろうけど)
それは、冒頭の「monolith」を初めて聴いた時に感じた、「他のパンクバンドとは全く違う!」という衝撃にも似たきらめきを感じた時から全く変わっていない。
GENが言っていたように人に恵まれたというのもあるし、その象徴となるのはやはりYON FES。2回目の開催となる今年はトリビュート盤に参加することが発表されているアジカンという大物までもが名を連ねている。こうして最高なライブを見たからには、やっぱりまたあの場所で「他のどこでもない今ここ」を実感したいのだ。そう思える限り、「まだ夢は続く」。
1.monolith
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.Warp
6.drops
7.Now here,No where
8.labyrinth
9.nem…
10.Grasshopper
11.knife
12.lost my way
13.imaginary
14.Buster call
15.Remember
16.Any
17.compact karma
18.bless you
19.Night on
20.mahoroba
21.cubic
22.discord
23.Letter
24.milk
25.hello
26.eureka
27.Horizon
28.Terminal
29.swim
encore1
30.climb
31.Feel
encore2
32.midnight cruising
33.Give me
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