GROUND UNDER GROUND 「全方位全肯定 vol.2」 w/ 銀杏BOYZ @LIQUIDROOM 1/24
- 2017/01/25
- 01:11
当初は埼玉県桶川市の友達5人だったGOING UNDER GROUNDも今やメンバーが3人になり、ボーカルの松本素生は今や飲食店の店長としても働いている…という状況でもバンドは止まることなく自分たちのペースで動き続け、昨年にはアルバム「Out Of Blue」をリリース。そして昨年末から対バンイベント「全方位全肯定」を立ち上げ、第一回のTHE COLLECTORSに続き、年明け早々の第二回のゲストは銀杏BOYZ。
かつて銀杏BOYZのデビューアルバムに収録された「BABY BABY」で当時のメンバーの伊藤洋一がキーボードで参加し、昨年末リリースの銀杏BOYZトリビュートアルバムではバンドが「ナイトライダー」で参加するなど、今も昔も変わらぬ距離感を保った同世代バンドの対バンである。(そういえば昔はGOING STEADYとGOING UNDER GROUNDは名前が似てて紛らわしいって言われてたこともあったなぁ…)
開演前には銀杏BOYZトリビュートに「ぽあだむ」のリミックスで参加した、クボタタケシがDJを行い、爆音でザ・クロマニヨンズなどをかけて(しかもちゃんと前後の曲に合わせていろいろ音をいじってる)外の寒さ忘れさせるくらいに客席を熱くさせると、DJブースに松本素生が登場し、
「バンドって本当に大変なんですよ。銀杏BOYZのファンの人たちはみんなわかってると思うけど。辛い時にいろいろ支えてくれたバンドであり、プライベートの友達でもあるけど、対バンするのは12年ぶり。銀杏BOYZ!」
と紹介し、いよいよライブの幕が開く。
・銀杏BOYZ
近年おなじみの姿である緑のコートを着た峯田和伸が走ってステージに登場するというテンションの高さを見せる中、その峯田に続いて藤原寛(ベース)、後藤大樹(ドラム)、山本幹宗(ギター)の3人も早くもステージに現れる。最初は峯田1人の弾き語りで始まることも去年までは多かったようだが、どうやら様子が違うようだ。
「2017年の初ライブです。GOING UNDER GROUND、呼んでくれてありがとうございます。ここは自由な場所だから、歌ってもいいし、踊ってもいいし、じっと立って見ててもいいです!」
と挨拶がわりに言葉を発してからギターを弾き始めたのは、「夜王子と月の姫」。この寒い時期によく似合うバラードだが、峯田は歌詞の「9月の11日」を「3月11日」という、同時多発テロ以降の曲としてというよりも、震災以降の曲として歌った。最後の
「君が星こそ悲しけれ」
というフレーズに藤原のコーラスが載るところは思わず涙腺を刺激されるほどに美しいが、峯田はテンションの高さ同様に声が非常によく出ている。やっぱり決して歌が上手いわけではないけれど。
そんなしっとりとしたロマンチックな立ち上がりだったが、
「この時代に この国に生まれ落ちた俺たち」
とサビのフレーズを口ずさんでから一転して轟音ギターサウンドに包まれ、ダイバーが続出したのは「若者たち」。峯田も間奏ではギターを持ったままダイブし、最後のサビ前でもギターを置いてダイブしたが、観客に引っ張られて歌が始まるまでにステージに戻ってこれず、その分観客の大合唱が響くという状況に。
もともと「若者たち」と「夜王子と月の姫」はGOING STEADY時代に同じシングルの収録曲として世に出たが、その2曲を(順番は逆とはいえ)15年経った今、こうしてライブで聴けるとは。
すでに汗をかきまくったサポートメンバーたちがいったんステージを去ると、アコギを手にした峯田が、
「ロックを初めて聴いた時の衝撃を未だに覚えていて…」
と音楽との原体験を語り、その体験をそのまま歌詞にしたような新曲を弾き語り。(タイトルは「エンジェルベイビー」と言っていた)
まだバンドアレンジができていないということでの弾き語りだったが、テンポやメロディは「骨」を弾き語りでやっていた時のものに近い。だからこそバンドでアレンジされたものも、「骨」のような軽快なロックチューンになるのかもしれないし、歌詞の前向きさからしてもそうなる可能性は高い。
ロックを初めて聴いた時の衝撃というと自分にとっては峯田がかつて作ったGOING STEADYの「さくらの唄」であり、自分も未だにその瞬間のことを良く覚えている。そういう、自分にも確かに経験のあることを言語化してくれるからこそ、この人の曲や言葉が他人とは思えないくらいに深く刺さってくる。
その「骨」もその直後にバンドメンバーが戻ってきて演奏されたのだが、峯田がアコギから持ち替えたエレキの音に納得できずに歌の頭で止めてもう1回やり直すという場面もあったが、歌詞に「リキッド」という単語を入れたことにより、一気にこの日、この場所だからこそという気分にしてくれる。
「木漏れ日の中で、あの子のスカートが揺れる。木漏れ日の中で…」
と「木漏れ日の中で」という単語を繰り返した後に、
「夢で逢えたら!」
と木漏れ日の中から一気に夢の中に飛んでいく「夢で逢えたら」では爽やかなロックサウンドの中をダイバーがガンガン泳いでいき、
「あの子の元カレのことなんか、この曲で全部忘れさせてやるよ!」
と言って始まった「BABY BABY」ではもちろん近年おなじみの大合唱パートも。こうして銀杏BOYZが好きでしょうがない人たちと今年もこうして一緒にこの曲を大声で歌えるというのが嬉しくてしょうがないし、本当にこの曲はもう時代や世代を超えて、いつか今ここにいる人たちが全員死んでしまった後も歌い継がれていくんだろうな、と思う。
峯田がギターを置いてタンバリンを叩きながら歌った「漂流教室」では夕焼けを思わせるオレンジの照明が曲のイメージに良くマッチし、
「こうしてみんなの前で歌えて嬉しかったです。2017年もたくさんライブやるんで、また会いましょう。生きていればまた必ず会えるから。だから援助交際やろうが、シャブやろうが、生きていてください。どんな汚い手を使ってても生きてください。そうすればまた会える」
とライブの最後のおなじみの言葉で観客へ再会を誓ってから演奏されたのは、「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」と歌詞を変えて歌った「ぽあだむ」。峯田は再び客席にダイブし、観客にもみくちゃにされまくりながら歌ってステージに戻ると、最後にはステージのスピーカーの上によじ登って歌った。相変わらず無茶苦茶だし、また怪我しそうだな、とも思うけど、そういうかつて当たり前のように見ていたけど、一時期は全く見ることができなかった銀杏BOYZのライブを今年もたくさん見れると峯田は言ってくれた。新曲もやってくれたけど、何よりもそれが嬉しかった。
1.夜王子と月の姫
2.若者たち
3.新曲 (弾き語り)
4.骨
5.夢で逢えたら
6.BABY BABY
7.漂流教室
8.ぽあだむ
ぽあだむ
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・GOING UNDER GROUND
銀杏BOYZの後で沸騰しまくったステージに主催のGOING UNDER GROUNDが登場。松本素生、中澤寛規(ギター)、石原聡(ベース)というメンバー3人にサポートドラムの4人編成で、やたらと「石原ー!」という石原を中心とした野太い歓声が飛ぶ中、もうリリースから10年経つ名曲シングル曲「さかさまワールド」でじっくりとスタートするが、松本素生の歌は昔と変わらず伸びがあって、いい声だと思わされる。バンドの演奏も実に力強いが、それはサポートドラマー・冨田政彦のアタック感の強い叩き方もありつつ、中澤がイントロでかつてのメンバー伊藤洋一が担っていた叙情性のあるキーボードを弾いた「グラフィティー」の後に
「俺はライブを通して上着を着続けることはできなかった(笑)」
と上着を着たままライブをやった峯田と自身を比べて笑わせた松本が、
「銀杏BOYZのライブが素晴らしすぎて。もういつもとは違うスイッチ入っちゃってるから。その辺(最前上手あたり)にいる人、気をつけてね。テンション上がりすぎてダイブしちゃうかもしれないから」
と言ったように、銀杏BOYZのライブの熱さにバンドが引っ張られているという要素もあったはず。
「なんだよ、ダイブに体重制限あるっていうのかよ~(笑)」
とすぐさま自身の体型をネタにして笑いを取っていたのにはもはやベテランらしさすら感じるが。
モータウン的なリズムを取り入れた「45rpm」や観客も一体となっての手拍子が演奏を引っ張る「Driffting Drive」と最新作の曲も披露して、かつてのようなペースでは活動していないもののバンドの現在の姿も見せつつ、「石原の結婚式でメンバーが揃って演奏する」設定のMVも秀逸な「同じ月を見てた」と過去の名曲も演奏してくれるのは、ライブの本数が少なくなっているだけに実に嬉しいところ。演奏中はMVの姿と同じように石原がマイクを通さずに歌詞を口ずさんでいた。(マイクを通すと非常に歌が下手な男である)
中澤がまるで変わらない少年のような甲高い声で歌う「ショートバケーション」から、銀杏BOYZの新曲同様にロックンロールの原体験を歌詞にした「LONG WAY TO GO」では歌詞を
「壁に貼ったポスターは銀杏とWEEZERで」
と銀杏BOYZへのリスペクトに満ちたものに変えてみせる。
松本が口笛を吹いてから始まる「天国の口、終わりの楽園」は観客の合唱によって曲が完成するというくらいにライブで映える曲であり、ロック要素の強い最新作はライブを想定されて作られたんじゃないだろうかと思わざるを得ない。
それまでの楽しい雰囲気から一転した静寂が曲と曲の間に訪れる中、
「鉄塔のガイコツ…」
と松本が歌い始めたのはもちろん、バンド最大の代表曲である「トワイライト」。「グラフィティー」や「同じ月を見てた」もそうだが、GOINGの名曲たちは今聴いても全く色褪せていない。だからこそネットがまだなかった時代にもかかわらず、いろんなところで聴く機会があったし、音楽をそこまで掘り下げて聴かないような層の人たち(自分の親世代とか)でも曲とバンドの存在を知ることができた。その普遍性はこれからもずっと変わらないはず。
そして、
「いろいろあったけど、銀杏BOYZも俺たちも、終わらなかったんじゃない、終われなかったんだよ!だから銀杏BOYZはこれからも続くでしょう!GOING UNDER GROUNDもこれからも続くでしょう!だからまた会える。またやろう!」
と、互いにメンバーの脱退があったバンドだからこそ説得力のあるセリフのあとに演奏されたのは、ロックとの原体験が「LONG WAY TO GO」だとするなら、バンドを組んだ時の衝動や原体験を今の年齢のメンバーたちが描いた、最新作の「the band」。いつまでたっても変わらぬ青さを感じさせるロックサウンドに乗る
「窓硝子さえも割れない奴らが
教室の隅で組んだようなバンド」
というフレーズは今だからこそ書ける名フレーズだし、かつて桶川の少年だったこのバンドのことをたった2行だけで言い当ててしまっている。そして最後に歌われる
「あなたよりもあなたを
愛してあげる きっといつも
欲望も卑しさも
信じてあげるずっと
だから全部を俺にくれないか?
俺にくれないか?」
というフレーズは、その少年だったメンバーが憧れていたロックバンドに言って欲しかったことであり、今このバンドの音楽を聴いている下の世代の人たちに最も言いたいことなんじゃないかと思う。
アンコールでは何やらスタッフが慌ただしくセッティングをする中、このイベントのTシャツに着替えたメンバーが再登場すると松本が、
「俺は音楽でこれまでに3回のビッグバンを喰らったことがあって。中学校の時のブルーハーツと、高校中退した時に聴いたサニーデイ・サービス。そして22歳くらいの時に出会ったGOING STEADY。
俺たちもGOINGっていう単語がつくし、GOINGって略して呼ばれてるから、当時GOING STEADYのライブと間違えて俺たちのライブに来たお客さんにアンケートでボロクソに書かれたこととかもあって(笑)
だからずっとどんなバンドなのか気になってたんだけど、スピッツ先輩がZepp Sendaiでやってたイベントで初めて一緒になって。その時にライブ見たら本当に衝撃で。それが3回目にして、最後のビッグバンだった。もう大人になったからこれからはそういう衝撃を受けることもないだろうから。
年も近かったからそれから仲良くなって。俺たちがメンバー辞めたりした時も、あの人は他の人には触れられたくないところを撫でてくれたりする優しい人で」
と、かつて峯田がやっていたGOING STEADYとの出会いを語る。確かに15年くらい前、お互いのバンドが世に認知され始めた頃はよく間違われていたし、自分も友達に「どっちがメガネでどっちがアフロだっけ?」と聞かれたこともあった。その両者がこうして一緒にライブをやっているというのは実に感慨深いものがある。
そんなことを思い出していると、やはり峯田もアコギを持ってステージに登場。GOINGが銀杏BOYZトリビュートに参加して「ナイトライダー」をカバーしてくれたことを本当に嬉しく思っているらしく、
「昔、僕がまだ女の子とそんなことしてない学生時代にですね、8人くらいの男で集まってお互いのアソコを舐め合ってたんですよ(笑)
その時に、峯田が1番舐めるのが上手い、って言われてたんで、メンバー全員舐めたい気分です(笑)」
と歪んだ愛情(このエピソードはかつていろんな場所で語っており、松本も知っていた)をぶつけるも松本からは丁重にお断りされる。
そして「ライブでは8年くらいやっていない」(「光」のカップリングであったため、シングルリリース後はちょこちょこやってた)と峯田が言うと、
「良い曲なんだからライブでやらないと!みんなそう思ってるよ!」
と松本が観客の思いを代弁し、「ナイトライダー」のコラボ。峯田と松本はボーカルを分け合いながら歌うが、アルバムを聴いた時も思った通り、やはりGOINGが演奏すると何故だかオリジナルバージョンよりも青さを感じる。もはやとっくにおっさんになり、青春や運命共同体としてのバンドの形は終わりを告げているのに。
この「ナイトライダー」には「君からメールが来ないから」や「しょうもない写メールを撮って」というフレーズがある。今や自分も連絡を取り合う時はLINEが主になり、メールはほとんど使わなくなったし、写メールという単語ももう使われていないだけに、数十年後にはこの曲を聴いても歌詞の意味がわからない世代と社会になっているかもしれない。そう思うと自分はリアルタイムでこの曲が聴けて、この曲の歌詞が理解できる世代でいられて本当に良かった。この曲が好きなだけになおさら。
しかし、こうしてライブで長らくやっていない曲もトリビュートに参加した人と対バンすることによってライブで聴けるという点では、1番見たい対バンは「援助交際」をカバーしたクリープハイプ。
ということを思いながら演奏が終わると、速やかにステージから去るGOINGのメンバーに対して、名残惜しいのか最後までステージにとどまって観客に手を振っていた峯田なのであった。
1.さかさまワールド
2.グラフィティー
3.45rpm
4.同じ月を見てた
5.Driffting Drive
6.ショート バケーション
7.LONG WAY TO GO
8.天国の口、終わりの楽園
9.トワイライト
10.the band
encore
11.ナイトライダー w/峯田和伸
the band
https://youtu.be/B4YpDuOy-KM
銀杏BOYZもGOING UNDER GROUNDも、解散してもおかしくないタイミングはあったし、前述したように、青春や運命共同体としてのバンドとしての形ではなくなっている。そうした変遷は、両バンドに出会った時の少年から大人になり、社会人になって今に至り、音楽を聴くことがもはや青春ではなくなってしまった自分にも重なってくる。
しかしバンドはそれでも終われず、今でもこうして続いていて、ライブをしては「また会おう」「また会える」と自分のことを受け入れてくれる。その姿を見て、自分はどう思うか。いろいろ変わってしまった、変わらざるを得なかったこともあるけど、これからもこうして生きているうちはライブを見ていたいし、ライブがあることを楽しみにしながら日々を生きていきたい。それだけである。
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かつて銀杏BOYZのデビューアルバムに収録された「BABY BABY」で当時のメンバーの伊藤洋一がキーボードで参加し、昨年末リリースの銀杏BOYZトリビュートアルバムではバンドが「ナイトライダー」で参加するなど、今も昔も変わらぬ距離感を保った同世代バンドの対バンである。(そういえば昔はGOING STEADYとGOING UNDER GROUNDは名前が似てて紛らわしいって言われてたこともあったなぁ…)
開演前には銀杏BOYZトリビュートに「ぽあだむ」のリミックスで参加した、クボタタケシがDJを行い、爆音でザ・クロマニヨンズなどをかけて(しかもちゃんと前後の曲に合わせていろいろ音をいじってる)外の寒さ忘れさせるくらいに客席を熱くさせると、DJブースに松本素生が登場し、
「バンドって本当に大変なんですよ。銀杏BOYZのファンの人たちはみんなわかってると思うけど。辛い時にいろいろ支えてくれたバンドであり、プライベートの友達でもあるけど、対バンするのは12年ぶり。銀杏BOYZ!」
と紹介し、いよいよライブの幕が開く。
・銀杏BOYZ
近年おなじみの姿である緑のコートを着た峯田和伸が走ってステージに登場するというテンションの高さを見せる中、その峯田に続いて藤原寛(ベース)、後藤大樹(ドラム)、山本幹宗(ギター)の3人も早くもステージに現れる。最初は峯田1人の弾き語りで始まることも去年までは多かったようだが、どうやら様子が違うようだ。
「2017年の初ライブです。GOING UNDER GROUND、呼んでくれてありがとうございます。ここは自由な場所だから、歌ってもいいし、踊ってもいいし、じっと立って見ててもいいです!」
と挨拶がわりに言葉を発してからギターを弾き始めたのは、「夜王子と月の姫」。この寒い時期によく似合うバラードだが、峯田は歌詞の「9月の11日」を「3月11日」という、同時多発テロ以降の曲としてというよりも、震災以降の曲として歌った。最後の
「君が星こそ悲しけれ」
というフレーズに藤原のコーラスが載るところは思わず涙腺を刺激されるほどに美しいが、峯田はテンションの高さ同様に声が非常によく出ている。やっぱり決して歌が上手いわけではないけれど。
そんなしっとりとしたロマンチックな立ち上がりだったが、
「この時代に この国に生まれ落ちた俺たち」
とサビのフレーズを口ずさんでから一転して轟音ギターサウンドに包まれ、ダイバーが続出したのは「若者たち」。峯田も間奏ではギターを持ったままダイブし、最後のサビ前でもギターを置いてダイブしたが、観客に引っ張られて歌が始まるまでにステージに戻ってこれず、その分観客の大合唱が響くという状況に。
もともと「若者たち」と「夜王子と月の姫」はGOING STEADY時代に同じシングルの収録曲として世に出たが、その2曲を(順番は逆とはいえ)15年経った今、こうしてライブで聴けるとは。
すでに汗をかきまくったサポートメンバーたちがいったんステージを去ると、アコギを手にした峯田が、
「ロックを初めて聴いた時の衝撃を未だに覚えていて…」
と音楽との原体験を語り、その体験をそのまま歌詞にしたような新曲を弾き語り。(タイトルは「エンジェルベイビー」と言っていた)
まだバンドアレンジができていないということでの弾き語りだったが、テンポやメロディは「骨」を弾き語りでやっていた時のものに近い。だからこそバンドでアレンジされたものも、「骨」のような軽快なロックチューンになるのかもしれないし、歌詞の前向きさからしてもそうなる可能性は高い。
ロックを初めて聴いた時の衝撃というと自分にとっては峯田がかつて作ったGOING STEADYの「さくらの唄」であり、自分も未だにその瞬間のことを良く覚えている。そういう、自分にも確かに経験のあることを言語化してくれるからこそ、この人の曲や言葉が他人とは思えないくらいに深く刺さってくる。
その「骨」もその直後にバンドメンバーが戻ってきて演奏されたのだが、峯田がアコギから持ち替えたエレキの音に納得できずに歌の頭で止めてもう1回やり直すという場面もあったが、歌詞に「リキッド」という単語を入れたことにより、一気にこの日、この場所だからこそという気分にしてくれる。
「木漏れ日の中で、あの子のスカートが揺れる。木漏れ日の中で…」
と「木漏れ日の中で」という単語を繰り返した後に、
「夢で逢えたら!」
と木漏れ日の中から一気に夢の中に飛んでいく「夢で逢えたら」では爽やかなロックサウンドの中をダイバーがガンガン泳いでいき、
「あの子の元カレのことなんか、この曲で全部忘れさせてやるよ!」
と言って始まった「BABY BABY」ではもちろん近年おなじみの大合唱パートも。こうして銀杏BOYZが好きでしょうがない人たちと今年もこうして一緒にこの曲を大声で歌えるというのが嬉しくてしょうがないし、本当にこの曲はもう時代や世代を超えて、いつか今ここにいる人たちが全員死んでしまった後も歌い継がれていくんだろうな、と思う。
峯田がギターを置いてタンバリンを叩きながら歌った「漂流教室」では夕焼けを思わせるオレンジの照明が曲のイメージに良くマッチし、
「こうしてみんなの前で歌えて嬉しかったです。2017年もたくさんライブやるんで、また会いましょう。生きていればまた必ず会えるから。だから援助交際やろうが、シャブやろうが、生きていてください。どんな汚い手を使ってても生きてください。そうすればまた会える」
とライブの最後のおなじみの言葉で観客へ再会を誓ってから演奏されたのは、「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」と歌詞を変えて歌った「ぽあだむ」。峯田は再び客席にダイブし、観客にもみくちゃにされまくりながら歌ってステージに戻ると、最後にはステージのスピーカーの上によじ登って歌った。相変わらず無茶苦茶だし、また怪我しそうだな、とも思うけど、そういうかつて当たり前のように見ていたけど、一時期は全く見ることができなかった銀杏BOYZのライブを今年もたくさん見れると峯田は言ってくれた。新曲もやってくれたけど、何よりもそれが嬉しかった。
1.夜王子と月の姫
2.若者たち
3.新曲 (弾き語り)
4.骨
5.夢で逢えたら
6.BABY BABY
7.漂流教室
8.ぽあだむ
ぽあだむ
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・GOING UNDER GROUND
銀杏BOYZの後で沸騰しまくったステージに主催のGOING UNDER GROUNDが登場。松本素生、中澤寛規(ギター)、石原聡(ベース)というメンバー3人にサポートドラムの4人編成で、やたらと「石原ー!」という石原を中心とした野太い歓声が飛ぶ中、もうリリースから10年経つ名曲シングル曲「さかさまワールド」でじっくりとスタートするが、松本素生の歌は昔と変わらず伸びがあって、いい声だと思わされる。バンドの演奏も実に力強いが、それはサポートドラマー・冨田政彦のアタック感の強い叩き方もありつつ、中澤がイントロでかつてのメンバー伊藤洋一が担っていた叙情性のあるキーボードを弾いた「グラフィティー」の後に
「俺はライブを通して上着を着続けることはできなかった(笑)」
と上着を着たままライブをやった峯田と自身を比べて笑わせた松本が、
「銀杏BOYZのライブが素晴らしすぎて。もういつもとは違うスイッチ入っちゃってるから。その辺(最前上手あたり)にいる人、気をつけてね。テンション上がりすぎてダイブしちゃうかもしれないから」
と言ったように、銀杏BOYZのライブの熱さにバンドが引っ張られているという要素もあったはず。
「なんだよ、ダイブに体重制限あるっていうのかよ~(笑)」
とすぐさま自身の体型をネタにして笑いを取っていたのにはもはやベテランらしさすら感じるが。
モータウン的なリズムを取り入れた「45rpm」や観客も一体となっての手拍子が演奏を引っ張る「Driffting Drive」と最新作の曲も披露して、かつてのようなペースでは活動していないもののバンドの現在の姿も見せつつ、「石原の結婚式でメンバーが揃って演奏する」設定のMVも秀逸な「同じ月を見てた」と過去の名曲も演奏してくれるのは、ライブの本数が少なくなっているだけに実に嬉しいところ。演奏中はMVの姿と同じように石原がマイクを通さずに歌詞を口ずさんでいた。(マイクを通すと非常に歌が下手な男である)
中澤がまるで変わらない少年のような甲高い声で歌う「ショートバケーション」から、銀杏BOYZの新曲同様にロックンロールの原体験を歌詞にした「LONG WAY TO GO」では歌詞を
「壁に貼ったポスターは銀杏とWEEZERで」
と銀杏BOYZへのリスペクトに満ちたものに変えてみせる。
松本が口笛を吹いてから始まる「天国の口、終わりの楽園」は観客の合唱によって曲が完成するというくらいにライブで映える曲であり、ロック要素の強い最新作はライブを想定されて作られたんじゃないだろうかと思わざるを得ない。
それまでの楽しい雰囲気から一転した静寂が曲と曲の間に訪れる中、
「鉄塔のガイコツ…」
と松本が歌い始めたのはもちろん、バンド最大の代表曲である「トワイライト」。「グラフィティー」や「同じ月を見てた」もそうだが、GOINGの名曲たちは今聴いても全く色褪せていない。だからこそネットがまだなかった時代にもかかわらず、いろんなところで聴く機会があったし、音楽をそこまで掘り下げて聴かないような層の人たち(自分の親世代とか)でも曲とバンドの存在を知ることができた。その普遍性はこれからもずっと変わらないはず。
そして、
「いろいろあったけど、銀杏BOYZも俺たちも、終わらなかったんじゃない、終われなかったんだよ!だから銀杏BOYZはこれからも続くでしょう!GOING UNDER GROUNDもこれからも続くでしょう!だからまた会える。またやろう!」
と、互いにメンバーの脱退があったバンドだからこそ説得力のあるセリフのあとに演奏されたのは、ロックとの原体験が「LONG WAY TO GO」だとするなら、バンドを組んだ時の衝動や原体験を今の年齢のメンバーたちが描いた、最新作の「the band」。いつまでたっても変わらぬ青さを感じさせるロックサウンドに乗る
「窓硝子さえも割れない奴らが
教室の隅で組んだようなバンド」
というフレーズは今だからこそ書ける名フレーズだし、かつて桶川の少年だったこのバンドのことをたった2行だけで言い当ててしまっている。そして最後に歌われる
「あなたよりもあなたを
愛してあげる きっといつも
欲望も卑しさも
信じてあげるずっと
だから全部を俺にくれないか?
俺にくれないか?」
というフレーズは、その少年だったメンバーが憧れていたロックバンドに言って欲しかったことであり、今このバンドの音楽を聴いている下の世代の人たちに最も言いたいことなんじゃないかと思う。
アンコールでは何やらスタッフが慌ただしくセッティングをする中、このイベントのTシャツに着替えたメンバーが再登場すると松本が、
「俺は音楽でこれまでに3回のビッグバンを喰らったことがあって。中学校の時のブルーハーツと、高校中退した時に聴いたサニーデイ・サービス。そして22歳くらいの時に出会ったGOING STEADY。
俺たちもGOINGっていう単語がつくし、GOINGって略して呼ばれてるから、当時GOING STEADYのライブと間違えて俺たちのライブに来たお客さんにアンケートでボロクソに書かれたこととかもあって(笑)
だからずっとどんなバンドなのか気になってたんだけど、スピッツ先輩がZepp Sendaiでやってたイベントで初めて一緒になって。その時にライブ見たら本当に衝撃で。それが3回目にして、最後のビッグバンだった。もう大人になったからこれからはそういう衝撃を受けることもないだろうから。
年も近かったからそれから仲良くなって。俺たちがメンバー辞めたりした時も、あの人は他の人には触れられたくないところを撫でてくれたりする優しい人で」
と、かつて峯田がやっていたGOING STEADYとの出会いを語る。確かに15年くらい前、お互いのバンドが世に認知され始めた頃はよく間違われていたし、自分も友達に「どっちがメガネでどっちがアフロだっけ?」と聞かれたこともあった。その両者がこうして一緒にライブをやっているというのは実に感慨深いものがある。
そんなことを思い出していると、やはり峯田もアコギを持ってステージに登場。GOINGが銀杏BOYZトリビュートに参加して「ナイトライダー」をカバーしてくれたことを本当に嬉しく思っているらしく、
「昔、僕がまだ女の子とそんなことしてない学生時代にですね、8人くらいの男で集まってお互いのアソコを舐め合ってたんですよ(笑)
その時に、峯田が1番舐めるのが上手い、って言われてたんで、メンバー全員舐めたい気分です(笑)」
と歪んだ愛情(このエピソードはかつていろんな場所で語っており、松本も知っていた)をぶつけるも松本からは丁重にお断りされる。
そして「ライブでは8年くらいやっていない」(「光」のカップリングであったため、シングルリリース後はちょこちょこやってた)と峯田が言うと、
「良い曲なんだからライブでやらないと!みんなそう思ってるよ!」
と松本が観客の思いを代弁し、「ナイトライダー」のコラボ。峯田と松本はボーカルを分け合いながら歌うが、アルバムを聴いた時も思った通り、やはりGOINGが演奏すると何故だかオリジナルバージョンよりも青さを感じる。もはやとっくにおっさんになり、青春や運命共同体としてのバンドの形は終わりを告げているのに。
この「ナイトライダー」には「君からメールが来ないから」や「しょうもない写メールを撮って」というフレーズがある。今や自分も連絡を取り合う時はLINEが主になり、メールはほとんど使わなくなったし、写メールという単語ももう使われていないだけに、数十年後にはこの曲を聴いても歌詞の意味がわからない世代と社会になっているかもしれない。そう思うと自分はリアルタイムでこの曲が聴けて、この曲の歌詞が理解できる世代でいられて本当に良かった。この曲が好きなだけになおさら。
しかし、こうしてライブで長らくやっていない曲もトリビュートに参加した人と対バンすることによってライブで聴けるという点では、1番見たい対バンは「援助交際」をカバーしたクリープハイプ。
ということを思いながら演奏が終わると、速やかにステージから去るGOINGのメンバーに対して、名残惜しいのか最後までステージにとどまって観客に手を振っていた峯田なのであった。
1.さかさまワールド
2.グラフィティー
3.45rpm
4.同じ月を見てた
5.Driffting Drive
6.ショート バケーション
7.LONG WAY TO GO
8.天国の口、終わりの楽園
9.トワイライト
10.the band
encore
11.ナイトライダー w/峯田和伸
the band
https://youtu.be/B4YpDuOy-KM
銀杏BOYZもGOING UNDER GROUNDも、解散してもおかしくないタイミングはあったし、前述したように、青春や運命共同体としてのバンドとしての形ではなくなっている。そうした変遷は、両バンドに出会った時の少年から大人になり、社会人になって今に至り、音楽を聴くことがもはや青春ではなくなってしまった自分にも重なってくる。
しかしバンドはそれでも終われず、今でもこうして続いていて、ライブをしては「また会おう」「また会える」と自分のことを受け入れてくれる。その姿を見て、自分はどう思うか。いろいろ変わってしまった、変わらざるを得なかったこともあるけど、これからもこうして生きているうちはライブを見ていたいし、ライブがあることを楽しみにしながら日々を生きていきたい。それだけである。
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魔法少女になり隊 ワンマンツアー2017 ~メロディア王国にさよならバイバイ ワタシはみんなと旅に出る~ @TSUTAYA O-WEST 1/29 ホーム
フレデリック フレデリズムツアー2016-2017 @新木場STUDIO COAST 1/22