ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017 「20th Anniversary Live」 @日本武道館 1/11
- 2017/01/12
- 12:31
結成20周年を迎え、昨年にはディスコグラフィーの中で最もヒットしたアルバム「ソルファ」の再録バージョンをリリースした、ASIAN KUNG-FU GENERATION。
昨年末の幕張メッセイベントホールを皮切りに始まった20周年ツアーもいよいよ週末の福岡を残すのみ。この日はそのファイナル直前の日本武道館2daysの2日目。アジカンを武道館で見るのはベストアルバムリリース時の2days以来(その時はアリーナはスタンディングだったが今回は全席座席指定)だが、初日の幕張メッセが素晴らしいライブ(2016年の年間ベストライブ)だっただけに、この日も期待が高まる。
ステージには幕張メッセ同様に全体を囲む紗幕が張られ、そこに緑の証明で照らされた立体の映像が映し出されている。
18:30を過ぎたあたりでAshの曲がBGMでかかったりしていた中で場内が暗転すると、紗幕の中からいきなり山田のベースの音が鳴り、「遥か彼方」からスタート。ライブではアンコールやクライマックスで演奏されてきた曲だが、こうして1曲目に演奏されるとガッとテンションが上がるだけに、この曲を最初に聴くのもいいかもしれない。当然大歓声が起こる客席同様にメンバーもテンションが上がるものなんだろうか。
紗幕の中で演奏するまま、カタカナのメッセージがグルグルと巡る「センスレス」、「イェー!」の大合唱とともに紗幕が落ちる「アンダースタンド」と基本的にツアーなので流れは一緒、というか先に言ってしまうとセトリは幕張メッセの時と全て一緒だったのだが(前日はセトリが違っていたので、2パターン用意しているツアーだと思われる)、紗幕が落ちて姿があらわになった瞬間の山田の笑顔が本当に良い。こうしてこのメンバーで20周年のツアーを巡り、この場所でライブをしているのが本当に楽しいのが伝わってくる。
サポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)も加わっての「暗号のワルツ」、PVの映像が映し出された「ブラックアウト」、「らっせーらっせー!」の大合唱が響いた「君という花」と代表曲もアルバム曲もNANO-MUGEN FES.のコンピレーションの曲も等しく「みんなのアジカン」の曲として鳴り響くと、久保田利伸ライクなパーマヘアに加えて髭も濃くなり、見た目がさらにソウルフルになったゴッチが
「人生でバンドを組むことってそんなにないと思うんだけど。俺はソロもやってるし、潔はなんちゃらトーンズっていうバンドもやってるけど(PHONO TONES)、ソロとなんちゃらトーンズの方が音楽的には豊かなんだけど、やっぱりこの4人が揃った時の変な力には絶対勝てない。こんなバンドは生涯組めないだろうな、っていうのがここ何年かでわかってきて。
健さんは本当に顔でギター弾いてるなって思うし(笑)、山ちゃんみたいな真人間がいないとこのバンドは成り立たないし(笑)、潔はステージドリンクちょっと掲げて?…尿みたいなの飲んでるし(笑)」
とアジカンというバンドの持つマジックを自らの口で説明しつつもやはりメンバーいじり。だけどいじられている側のメンバーも本当に楽しそう。20年を迎えてバンドの状態が過去最高レベルに良いのがわかる、というくらいにかつてあったようなメンバー間のピリピリした空気は全く感じない。
「昔の曲も最近の曲もたくさんやるので。でも「この曲絶対聴きたくない!」みたいな曲ないでしょ?(笑)最近の曲が盛り上がらなくても凹んだりしないから(笑)」
と相変わらずの皮肉というか自虐を込めた後に演奏されたのは最初期の「粉雪」。こうして今のバンドの状態で聴くとギターの重厚さに改めて気付く。
武道館がまるで深海の底というか水槽の中のような深く潜るような前半からサビで一気に光の方へ飛び出すアレンジの「マーチングバンド」から、かつてベストアルバムリリース時のこの会場でのワンマンで曲が始まる前のMC中に観客の足踏みが起こってゴッチにカルチャーショックを与えた「踵で愛を打ち鳴らせ」、手拍子とシモリョーの煽りにに合わせての「イェー!イェー!」という掛け声が楽しい「今を生きて」と、ソリッドなギターロックではない、聴き手の日常や生活に寄り添うようなベストアルバム~「ランドマーク」期の曲が続くと、
「この前Oasisの映画を見たんだけど。やっぱり40代になると人間的にしっかりしなきゃな~って常日頃から思うんだけど、あの5人を見てると、自分が10代の頃に憧れたロックスターはもっと無茶苦茶な人たちだったし、そういうところに憧れてたんだよな」
と40代に突入してもやはりロックキッズだった頃の気持ちが失われていないことを語り、そのロックキッズだった頃に使っていた横浜のスタジオの部屋番号を冠した「E」で再び喜多のソリッドかつシャープなギターが鳴り響く。
この日、初日に比べるとゴッチの声もそこまで出ている感じはしなかったのだが、「スタンダード」ではそんな印象を覆すくらいの伸びを見せる。今のゴッチの声にはこの曲のキーやメロディが合っているのだろうし、だからこそアナログフィッシュの下岡晃が以前対バンした時に
「アジカンの中で1番好きな曲なんだけど、それはこの曲は俺に向けて歌ってるからだなって。俺に向けてっていうことはみんなに向けてるっていうことだよ」
と言っていたように一人一人の少年性・少女性をわき上がらせるように響く。
アジカンが開拓したオリエンタルなリフのギターロックのフォーマットに現在の姿で乗っかってみせた「ブラッドサーキュレーター」から、シモリョーのピアノのイントロが美しもあり、
「最後の時が訪れて夢ならば醒めて欲しかったよ」
という別れの切なさを際立たせる「月光」を終えると、残響音を残す中でステージからいったん去っていく4人。するとスクリーンには歴代のアー写が次々に映し出され、やはり「ランドマーク」期の長髪のゴッチの姿に笑いが起こったあと(やはり山田の全く見た目が変わらない感じはすごいというかもはや怖さすら感じる)、12年前の「ソルファ」のアー写から全く同じ構図の現在の4人の姿になると、「ソルファ」のジャケットがプリントされたシャツを着た4人がステージに現れ、今回のツアーの目玉である「ソルファ」の完全再現パートへ。
ノイジーなギターサウンドの「振動覚」からスタートするも、ゴッチがむせたのか最後のサビを半分くらい歌えないという微妙に幸先の悪い出だし。
間奏からのダブパートでの合唱から一気に飛翔するアレンジの最大の代表曲「リライト」、この会場にいる観客の姿とともに歴代のCDのジャケ写がスクリーンに次々に映し出される「ループ&ループ」、ビル街を疾走していくような映像の「君の街まで」というシングル曲こそ普段のライブでも聴く機会はあるが、「マイワールド」からのアルバム曲はもはやこういう機会じゃないと聴けないというか、ライブで演奏されるのは今回のツアーで最後なんじゃないだろうかという気もする。(意外と「ラストシーン」は「マジックディスク」ツアーの柏公演でやったりしているけど)
「「ソルファ」の曲は俺たちの曲の中でも難しい曲が多くて。当時やってた「Re:Re:」ツアーの時に俺が日記を書いてたんだけど、他のメンバーの悪口ばっかり書いてて(笑)自分のことは棚に上げまくってて(笑)
でもそうやってトゲトゲするよりも、最近は柔らかい人になりたいなぁと思っている(笑)」
とアルバムリリース当時を回顧しながら語ると、重厚なサウンドに磨きがかかっている「サイレン」からライブバージョンのアレンジが再録として採用されたような、アジカン屈指の人気曲「Re:Re:」でゴッチが最後のギターをミスるという事態になり、
「ミスった~(笑)」
と少し苦笑いで後悔していた様子。ファイナルの福岡公演では無事に決まるといいのだが。
ジャキジャキと刻むギターの「24時」からパーカッションの音を使ったことにより仮タイトルが「メキシコ」であった「真夜中と真昼の夢」で酩酊感を味あわせると、ドラムセットの後ろにはストリングス隊が登場し、幕張メッセ同様にメンバーが思い描いていたサウンドで演奏できるようになった最終曲「海岸通り」へ。
「ループ&ループ」で未来に繋がるように終わるオリジナル版の曲順も良かったが、こうして最後に演奏されることを考えると、完全再現ライブにおいてはこの曲の方が余韻が残って良い終わり方だと思う。バラードにストリングスが乗るといかにもな泣かせ系ラブソングのJ-POPになってしまいがちだが、この曲にストリングスが入っても全くそうはならないのは、
「海岸通りに春が舞う」
というフレーズから浮かぶ情景をストリングスの麗しいサウンドが奏でているから。そしてそのサウンドはこうした広い会場でこそ本当によく似合う。
アンコールではまずはゴッチが1人で登場。幕張メッセの時は客席の後方にサブステージを作っていたが、さすがにこの日はそんな演出ができるわけもなく、ステージ上で弾き語り。まずは「ソラニン」を演奏して観客を喜ばせると、
「あらゆるアーティストは曲を作る時は孤独なもので。いつも部屋で1人きりで作るところから始まる。そうやってできたデモ音源をメンバーにメールで送って。なんも返信来ないとすごいムカつくんだけど(笑)、送ったものにみんなのテンションが上がったりするのが本当にやってて良かったって思う。ありがとう」
と言って「Wonder Future」を弾き語ったが、この感謝は我々この場所に来た人にというよりも、メンバー3人が横にいないからこそ言える感謝のように聞こえた。
ゴッチと入れ替わりでシモリョーを含めた4人がステージに現れると、手拍子に包まれる中、喜多がメインボーカルの実にアジカンらしいサウンドの「タイムトラベラー」を演奏し、
「まさか武道館でメインボーカルをやることになるなんて…(笑)」
と感慨深げに語りながら
「バンドが始まった頃の、地元の金沢八景を思い浮かべて作った曲」
と喜多なりに20年を迎えたバンドを今回想する(「ブラッドサーキュレーター」のカップリング)が、この後にゴッチも言っていたように、この日の喜多のボーカルは普段よりもはるかに伸びが良かった。
「酒で濁ったドブ声ファルセット感がなかったから、今日夜の12時くらいに1人で武道館の周りで歌ってるかもしれない(笑)」
と戻ってきたゴッチが褒めてるようでやっぱりいじってる言葉を口にしながらストリングス隊を加えて演奏されたのは、スクリーンに次々に曲の歌詞が映し出される「さよならロストジェネレイション」。かつてのベストアルバムリリース時のこの会場でのライブでもクライマックス的な位置で演奏されたが、
「暗いねって君が嘆くような 時代なんてもう僕らで終わりにしよう」
というサビのフレーズはゴッチが政治というか社会に対して常に自分の考えを発信してきた理由そのもののよう。もうリリースされてから結果な年月が経ったが、未だに鮮烈に響くというのはゴッチの作詞家としての力に改めて驚かされる。
またこの曲から写真撮影がOKになったのだが、それによって客席の人たちが携帯のバックライトを点灯させているのをドラムセットの後ろのカメラから映し出した映像が本当にキレイで、ステージからはこうやって見えるのかというのがよくわかるナイスアングルだった。
そしてラストは開演前と同じ立体の映像がスクリーンに映し出され、こちらもストリングス隊を加えて演奏された「新世紀のラブソング」。武道館の最後の曲というと演奏中に客電が一気について明るく温かい空気の中で終わるというのがおなじみのパターンだが、その演出もなしに、最後の最後まで「俺たちはこれからこうやってやっていく。君たちはどうする?」という問いかけを投げかけて終わるのが実にアジカン(というかゴッチ)らしいし、
「息を吸って命を食べて 排泄するだけの猿じゃないと云えるかい?」
という最後のフレーズはライブが終わったあとの爽快感や余韻だけではなく、これから、明日からどうやってどう考えて生きていくかというのを改めて考えさせられる。
演奏が終わったメンバーはステージ前に並んで手を繋いで一礼してからステージを去って行った。ゴッチはこの日
「もしかしたら武道館の規模ではできなくなるかもしれないけど、これからもこのバンドは続けていきます」
とアジカンを続けていくことを宣言していたが、やはり自分はアジカンにはこうやって大きい会場でその音楽を鳴らして欲しいし、その音楽をこうしてたくさんの人で一緒に分かち合いたい。それが何よりも似合うバンドだし、そこを背負うことを決意して活動してきたバンドだから。
ライブ自体は初日の方が良かったけど、普通はライブの次の日はなんもやる気が起きないし仕事なんか行きたくないんだが、これまでのワンマンやNANO-MUGEN FES.もそうだけど、アジカンのライブを見るといつも「明日からも頑張ろう」って前向きな気持ちになる。決して熱く背中を押したりはしてないのにもかかわらず。もう15年近く、ずっとそうやってアジカンの音楽とライブに力をもらってこれまで生きてきたんだから、これからもずっとそうでありたい。そう思えるのは、アジカンがデビューからずっと変わらぬメンバーで、一度も止まることなく活動を続けてきたから。同世代のバンドでそんなバンドはほとんどいないだけに、それがどれだけすごいことかが本当によくわかる。
そして満員の会場に10代の若者から50代くらいのメンバーより年上っぽい人まで。普段からいろんなバンドのライブに行ってるであろう人たちがたくさん武道館に来ていた。そういう人たちみんなの原点であったりど真ん中であったりする。そんな存在であり続けるアジカンは本当にすごいバンドだ。これからもどっちかがくたばるまで、ずっとよろしく。
1.遥か彼方
2.センスレス
3.アンダースタンド
4.暗号のワルツ
5.ブラックアウト
6.君という花
7.粉雪
8.マーチングバンド
9.踵で愛を打ち鳴らせ
10.今を生きて
11.E
12.スタンダード
13.ブラッドサーキュレーター
14.月光
15.振動覚
16.リライト
17.ループ&ループ
18.君の街まで
19.マイワールド
20.夜の向こう
21.ラストシーン
22.サイレン
23.Re:Re:
24.24時
25.真夜中と真昼の夢
26.海岸通り
encore
27.ソラニン (弾き語り)
28.Wonder Future (弾き語り)
29.タイムトラベラー
30.八景
31.さよならロストジェネレイション
32.新世紀のラブソング
リライト (2016ver.)
https://youtu.be/bOZixNTn_ck
Next→ 1/22 フレデリック @新木場STUDIO COAST (チケットないためまだ予定)
昨年末の幕張メッセイベントホールを皮切りに始まった20周年ツアーもいよいよ週末の福岡を残すのみ。この日はそのファイナル直前の日本武道館2daysの2日目。アジカンを武道館で見るのはベストアルバムリリース時の2days以来(その時はアリーナはスタンディングだったが今回は全席座席指定)だが、初日の幕張メッセが素晴らしいライブ(2016年の年間ベストライブ)だっただけに、この日も期待が高まる。
ステージには幕張メッセ同様に全体を囲む紗幕が張られ、そこに緑の証明で照らされた立体の映像が映し出されている。
18:30を過ぎたあたりでAshの曲がBGMでかかったりしていた中で場内が暗転すると、紗幕の中からいきなり山田のベースの音が鳴り、「遥か彼方」からスタート。ライブではアンコールやクライマックスで演奏されてきた曲だが、こうして1曲目に演奏されるとガッとテンションが上がるだけに、この曲を最初に聴くのもいいかもしれない。当然大歓声が起こる客席同様にメンバーもテンションが上がるものなんだろうか。
紗幕の中で演奏するまま、カタカナのメッセージがグルグルと巡る「センスレス」、「イェー!」の大合唱とともに紗幕が落ちる「アンダースタンド」と基本的にツアーなので流れは一緒、というか先に言ってしまうとセトリは幕張メッセの時と全て一緒だったのだが(前日はセトリが違っていたので、2パターン用意しているツアーだと思われる)、紗幕が落ちて姿があらわになった瞬間の山田の笑顔が本当に良い。こうしてこのメンバーで20周年のツアーを巡り、この場所でライブをしているのが本当に楽しいのが伝わってくる。
サポートキーボードのシモリョー(the chef cooks me)も加わっての「暗号のワルツ」、PVの映像が映し出された「ブラックアウト」、「らっせーらっせー!」の大合唱が響いた「君という花」と代表曲もアルバム曲もNANO-MUGEN FES.のコンピレーションの曲も等しく「みんなのアジカン」の曲として鳴り響くと、久保田利伸ライクなパーマヘアに加えて髭も濃くなり、見た目がさらにソウルフルになったゴッチが
「人生でバンドを組むことってそんなにないと思うんだけど。俺はソロもやってるし、潔はなんちゃらトーンズっていうバンドもやってるけど(PHONO TONES)、ソロとなんちゃらトーンズの方が音楽的には豊かなんだけど、やっぱりこの4人が揃った時の変な力には絶対勝てない。こんなバンドは生涯組めないだろうな、っていうのがここ何年かでわかってきて。
健さんは本当に顔でギター弾いてるなって思うし(笑)、山ちゃんみたいな真人間がいないとこのバンドは成り立たないし(笑)、潔はステージドリンクちょっと掲げて?…尿みたいなの飲んでるし(笑)」
とアジカンというバンドの持つマジックを自らの口で説明しつつもやはりメンバーいじり。だけどいじられている側のメンバーも本当に楽しそう。20年を迎えてバンドの状態が過去最高レベルに良いのがわかる、というくらいにかつてあったようなメンバー間のピリピリした空気は全く感じない。
「昔の曲も最近の曲もたくさんやるので。でも「この曲絶対聴きたくない!」みたいな曲ないでしょ?(笑)最近の曲が盛り上がらなくても凹んだりしないから(笑)」
と相変わらずの皮肉というか自虐を込めた後に演奏されたのは最初期の「粉雪」。こうして今のバンドの状態で聴くとギターの重厚さに改めて気付く。
武道館がまるで深海の底というか水槽の中のような深く潜るような前半からサビで一気に光の方へ飛び出すアレンジの「マーチングバンド」から、かつてベストアルバムリリース時のこの会場でのワンマンで曲が始まる前のMC中に観客の足踏みが起こってゴッチにカルチャーショックを与えた「踵で愛を打ち鳴らせ」、手拍子とシモリョーの煽りにに合わせての「イェー!イェー!」という掛け声が楽しい「今を生きて」と、ソリッドなギターロックではない、聴き手の日常や生活に寄り添うようなベストアルバム~「ランドマーク」期の曲が続くと、
「この前Oasisの映画を見たんだけど。やっぱり40代になると人間的にしっかりしなきゃな~って常日頃から思うんだけど、あの5人を見てると、自分が10代の頃に憧れたロックスターはもっと無茶苦茶な人たちだったし、そういうところに憧れてたんだよな」
と40代に突入してもやはりロックキッズだった頃の気持ちが失われていないことを語り、そのロックキッズだった頃に使っていた横浜のスタジオの部屋番号を冠した「E」で再び喜多のソリッドかつシャープなギターが鳴り響く。
この日、初日に比べるとゴッチの声もそこまで出ている感じはしなかったのだが、「スタンダード」ではそんな印象を覆すくらいの伸びを見せる。今のゴッチの声にはこの曲のキーやメロディが合っているのだろうし、だからこそアナログフィッシュの下岡晃が以前対バンした時に
「アジカンの中で1番好きな曲なんだけど、それはこの曲は俺に向けて歌ってるからだなって。俺に向けてっていうことはみんなに向けてるっていうことだよ」
と言っていたように一人一人の少年性・少女性をわき上がらせるように響く。
アジカンが開拓したオリエンタルなリフのギターロックのフォーマットに現在の姿で乗っかってみせた「ブラッドサーキュレーター」から、シモリョーのピアノのイントロが美しもあり、
「最後の時が訪れて夢ならば醒めて欲しかったよ」
という別れの切なさを際立たせる「月光」を終えると、残響音を残す中でステージからいったん去っていく4人。するとスクリーンには歴代のアー写が次々に映し出され、やはり「ランドマーク」期の長髪のゴッチの姿に笑いが起こったあと(やはり山田の全く見た目が変わらない感じはすごいというかもはや怖さすら感じる)、12年前の「ソルファ」のアー写から全く同じ構図の現在の4人の姿になると、「ソルファ」のジャケットがプリントされたシャツを着た4人がステージに現れ、今回のツアーの目玉である「ソルファ」の完全再現パートへ。
ノイジーなギターサウンドの「振動覚」からスタートするも、ゴッチがむせたのか最後のサビを半分くらい歌えないという微妙に幸先の悪い出だし。
間奏からのダブパートでの合唱から一気に飛翔するアレンジの最大の代表曲「リライト」、この会場にいる観客の姿とともに歴代のCDのジャケ写がスクリーンに次々に映し出される「ループ&ループ」、ビル街を疾走していくような映像の「君の街まで」というシングル曲こそ普段のライブでも聴く機会はあるが、「マイワールド」からのアルバム曲はもはやこういう機会じゃないと聴けないというか、ライブで演奏されるのは今回のツアーで最後なんじゃないだろうかという気もする。(意外と「ラストシーン」は「マジックディスク」ツアーの柏公演でやったりしているけど)
「「ソルファ」の曲は俺たちの曲の中でも難しい曲が多くて。当時やってた「Re:Re:」ツアーの時に俺が日記を書いてたんだけど、他のメンバーの悪口ばっかり書いてて(笑)自分のことは棚に上げまくってて(笑)
でもそうやってトゲトゲするよりも、最近は柔らかい人になりたいなぁと思っている(笑)」
とアルバムリリース当時を回顧しながら語ると、重厚なサウンドに磨きがかかっている「サイレン」からライブバージョンのアレンジが再録として採用されたような、アジカン屈指の人気曲「Re:Re:」でゴッチが最後のギターをミスるという事態になり、
「ミスった~(笑)」
と少し苦笑いで後悔していた様子。ファイナルの福岡公演では無事に決まるといいのだが。
ジャキジャキと刻むギターの「24時」からパーカッションの音を使ったことにより仮タイトルが「メキシコ」であった「真夜中と真昼の夢」で酩酊感を味あわせると、ドラムセットの後ろにはストリングス隊が登場し、幕張メッセ同様にメンバーが思い描いていたサウンドで演奏できるようになった最終曲「海岸通り」へ。
「ループ&ループ」で未来に繋がるように終わるオリジナル版の曲順も良かったが、こうして最後に演奏されることを考えると、完全再現ライブにおいてはこの曲の方が余韻が残って良い終わり方だと思う。バラードにストリングスが乗るといかにもな泣かせ系ラブソングのJ-POPになってしまいがちだが、この曲にストリングスが入っても全くそうはならないのは、
「海岸通りに春が舞う」
というフレーズから浮かぶ情景をストリングスの麗しいサウンドが奏でているから。そしてそのサウンドはこうした広い会場でこそ本当によく似合う。
アンコールではまずはゴッチが1人で登場。幕張メッセの時は客席の後方にサブステージを作っていたが、さすがにこの日はそんな演出ができるわけもなく、ステージ上で弾き語り。まずは「ソラニン」を演奏して観客を喜ばせると、
「あらゆるアーティストは曲を作る時は孤独なもので。いつも部屋で1人きりで作るところから始まる。そうやってできたデモ音源をメンバーにメールで送って。なんも返信来ないとすごいムカつくんだけど(笑)、送ったものにみんなのテンションが上がったりするのが本当にやってて良かったって思う。ありがとう」
と言って「Wonder Future」を弾き語ったが、この感謝は我々この場所に来た人にというよりも、メンバー3人が横にいないからこそ言える感謝のように聞こえた。
ゴッチと入れ替わりでシモリョーを含めた4人がステージに現れると、手拍子に包まれる中、喜多がメインボーカルの実にアジカンらしいサウンドの「タイムトラベラー」を演奏し、
「まさか武道館でメインボーカルをやることになるなんて…(笑)」
と感慨深げに語りながら
「バンドが始まった頃の、地元の金沢八景を思い浮かべて作った曲」
と喜多なりに20年を迎えたバンドを今回想する(「ブラッドサーキュレーター」のカップリング)が、この後にゴッチも言っていたように、この日の喜多のボーカルは普段よりもはるかに伸びが良かった。
「酒で濁ったドブ声ファルセット感がなかったから、今日夜の12時くらいに1人で武道館の周りで歌ってるかもしれない(笑)」
と戻ってきたゴッチが褒めてるようでやっぱりいじってる言葉を口にしながらストリングス隊を加えて演奏されたのは、スクリーンに次々に曲の歌詞が映し出される「さよならロストジェネレイション」。かつてのベストアルバムリリース時のこの会場でのライブでもクライマックス的な位置で演奏されたが、
「暗いねって君が嘆くような 時代なんてもう僕らで終わりにしよう」
というサビのフレーズはゴッチが政治というか社会に対して常に自分の考えを発信してきた理由そのもののよう。もうリリースされてから結果な年月が経ったが、未だに鮮烈に響くというのはゴッチの作詞家としての力に改めて驚かされる。
またこの曲から写真撮影がOKになったのだが、それによって客席の人たちが携帯のバックライトを点灯させているのをドラムセットの後ろのカメラから映し出した映像が本当にキレイで、ステージからはこうやって見えるのかというのがよくわかるナイスアングルだった。
そしてラストは開演前と同じ立体の映像がスクリーンに映し出され、こちらもストリングス隊を加えて演奏された「新世紀のラブソング」。武道館の最後の曲というと演奏中に客電が一気について明るく温かい空気の中で終わるというのがおなじみのパターンだが、その演出もなしに、最後の最後まで「俺たちはこれからこうやってやっていく。君たちはどうする?」という問いかけを投げかけて終わるのが実にアジカン(というかゴッチ)らしいし、
「息を吸って命を食べて 排泄するだけの猿じゃないと云えるかい?」
という最後のフレーズはライブが終わったあとの爽快感や余韻だけではなく、これから、明日からどうやってどう考えて生きていくかというのを改めて考えさせられる。
演奏が終わったメンバーはステージ前に並んで手を繋いで一礼してからステージを去って行った。ゴッチはこの日
「もしかしたら武道館の規模ではできなくなるかもしれないけど、これからもこのバンドは続けていきます」
とアジカンを続けていくことを宣言していたが、やはり自分はアジカンにはこうやって大きい会場でその音楽を鳴らして欲しいし、その音楽をこうしてたくさんの人で一緒に分かち合いたい。それが何よりも似合うバンドだし、そこを背負うことを決意して活動してきたバンドだから。
ライブ自体は初日の方が良かったけど、普通はライブの次の日はなんもやる気が起きないし仕事なんか行きたくないんだが、これまでのワンマンやNANO-MUGEN FES.もそうだけど、アジカンのライブを見るといつも「明日からも頑張ろう」って前向きな気持ちになる。決して熱く背中を押したりはしてないのにもかかわらず。もう15年近く、ずっとそうやってアジカンの音楽とライブに力をもらってこれまで生きてきたんだから、これからもずっとそうでありたい。そう思えるのは、アジカンがデビューからずっと変わらぬメンバーで、一度も止まることなく活動を続けてきたから。同世代のバンドでそんなバンドはほとんどいないだけに、それがどれだけすごいことかが本当によくわかる。
そして満員の会場に10代の若者から50代くらいのメンバーより年上っぽい人まで。普段からいろんなバンドのライブに行ってるであろう人たちがたくさん武道館に来ていた。そういう人たちみんなの原点であったりど真ん中であったりする。そんな存在であり続けるアジカンは本当にすごいバンドだ。これからもどっちかがくたばるまで、ずっとよろしく。
1.遥か彼方
2.センスレス
3.アンダースタンド
4.暗号のワルツ
5.ブラックアウト
6.君という花
7.粉雪
8.マーチングバンド
9.踵で愛を打ち鳴らせ
10.今を生きて
11.E
12.スタンダード
13.ブラッドサーキュレーター
14.月光
15.振動覚
16.リライト
17.ループ&ループ
18.君の街まで
19.マイワールド
20.夜の向こう
21.ラストシーン
22.サイレン
23.Re:Re:
24.24時
25.真夜中と真昼の夢
26.海岸通り
encore
27.ソラニン (弾き語り)
28.Wonder Future (弾き語り)
29.タイムトラベラー
30.八景
31.さよならロストジェネレイション
32.新世紀のラブソング
リライト (2016ver.)
https://youtu.be/bOZixNTn_ck
Next→ 1/22 フレデリック @新木場STUDIO COAST (チケットないためまだ予定)
