アジカンのゴッチが編集長を務める、未来を考える新聞「THE FUTURE TIMES」。これまで春と秋に刊行されてきたこの新聞のトーク&ゴッチの弾き語りという形でのイベントがGW中に渋谷タワレコで開催。今日は初日。
8階のギャラリースペースにはTHE FUTURE TIMESの記事を飾った写真や、今年に入ってからの被災地の写真などが展示され、1番奥にトークショー用にテーブルが用意されている。
18時半になると、ゴッチがふらっとステージに。挨拶をしてから今日のトークショーの相手の渋谷敦志、佐藤慧の両写真家を招き、「震災から3年経って」をテーマにトークを展開。
去年の紙面にも登場した、福島でまだ見つかっていない自分の家族を探している消防団員の方の話、震災以降の日本や人々の話、写真展を見にくるという行為から展開してアナログとデジタルの話など、
「もう居酒屋でやれやって感じ(笑)」
と最後にゴッチが言うくらいに話はつきない。
「iTunesでダウンロードしても購入日時は出るけど、買った日のことなんか覚えてないじゃん。でも店に足を運んで買うと、その日がどんな日で、そのあと何したかとか覚えてると思うんだよ。
だからそうしてもらえるようにレコードを作りましょう。洋楽聴いてる人が減ってきてるなら自分達でフェスやりましょう」
と、ゴッチの行動理念そのもののような話も。
しかし渋谷敦志も佐藤慧も、自分達で被災地に赴いて写真を撮っている(佐藤慧に至っては陸前高田の出身で、家族が被災している)だけに、その言葉に本当に重みと説得力がある。
「ネットでもたくさん素晴らしい写真は見れるけど、こうして写真展に見にくるっていう能動的な行為には意味があると思う。
一つの写真を30分見ていようが、すぐ移動しようが、その人自身で決められるんですから」
という話はゴッチの音楽に対する話と言いたいことは一緒なのだと思った。
トークショーが終わるとゴッチの弾き語り。アジカンの「ひかり」から「夜を越えて」「アネモネの咲く春に」と、震災以降を強く意識した曲が続く。
「夜を越えて」の、
「闇と瓦礫を掻き分けて」
のフレーズを、先述の福島の消防団員の方たちの前では歌えなかったとゴッチは話した。「瓦礫」を「人ごみ」に変えて歌ったと。それは自分達の家財道具を瓦礫と言われたくないだろうという配慮があったという。いつか、被災地でも歌詞の通りに歌える日が来るんだろうか。
後半はリリースされたばかりのソロアルバムの曲を披露。アルバムでは色とりどりの打ち込みのサウンドが印象的だったが、こうしてアコギとボーカルだけでも本当に曲と歌詞が良いのがよくわかる。特にソロで最初にリリースした「Lost」はようやく聴けて嬉しい限り。途中歌詞間違えてやり直すという事態にもなったけど。
ところどころしゃべりで笑わせながら、最後には新曲のサビを観客全員にコーラスさせ、暖かい空気に包まれながら終了。
「今日のチケットの料金は次のTHE FUTURE TIMESの製作資金に使わせてもらいます。でもこうして来てくれて、本当に襟を正される思いです」
とゴッチは言っていたが、THE FUTURE TIMESを読むと、まさにいつも襟を正される思いになる。いつも震災や被災地のことだけを考える必要はないと思うけど、つい忘れてしまいそうになることもある。それこそトークショーで言っていた、オリンピックを東京でやるのはいいけど、もっとちゃんと目を向けるところがあるんじゃないか?というように、まだまだ苦しんでる人もいる(それこそ何度となく話に出てきた福島の消防団員の方のように)し、原発などの解決してない問題もたくさんある。THE FUTURE TIMESはそういうことを思い出させてくれるし、考えるきっかけを与えてくれる。
批判もされまくってるだろうし、大変なことばかりだと思うけど、「次は5年」まで、そして「いつか本当の笑顔を見れる日」まで続けて欲しいと思う。
1.ひかり
2.夜を越えて
3.アネモネの咲く春に
4.Blackbird Sings at Night / 黒歌鳥は夜に鳴く
5.A Girl in Love / 恋する乙女
6.Lost / 喪失
7.新曲
そして終了後、ソロアルバムのレコードにサインをしていただく。アジカンの「崩壊アンプリファー」のレコードも持ってきたのだが、
「1人で二つも、しかもソロじゃなくてアジカンのだしなぁ」
という葛藤に負けてそれは出せなかったのだが、そのあとの人は普通にアジカンのパネルみたいのに何枚もサインしてもらっていたので、
「せっかくなんだからもっとアグレッシブに行けばよかった!」
と後悔した。