2016ベストディスクなど
- 2016/12/25
- 15:08
もう今年も残すところあと一週間もなく、自分が参加するライブも28日からのCOUNTDOWN JAPANのみという状況なので、毎年この時期恒例にしている、年間ベストディスクを始めとした2016年のまとめ的なものを。
まずは2016ベストディスクのTOP20を20位から順番に。
20.君の名は。 / RADWIMPS
社会現象にもなっている映画のサントラであるが、サントラということでやはり映画の各場面で使用されている短いインスト曲が中心。(それもRADWIMPSの各メンバーが手がけたものであるが)
そんな中にあって「前前前世」「スパークル」という「人間開花」にも収録された曲、「夢灯籠」「なんでもないや」というこのサントラにのみ収録されたボーカル曲が本当に名曲であるため、RADWIMPSの新曲としての聞き応えがしっかりある一枚になっている。だがやはり映画を見たか見ていないかでこのアルバムの評価はだいぶ変わるだろうというくらいに、聴いていると映画のいろんな名場面が頭の中に浮かんでくる。
前前前世
https://youtu.be/PDSkFeMVNFs
19.27 / SUPER BEAVER
「バンドの歴史を全く知らなくても良いって思える曲が本当に良い曲」とはボーカル渋谷龍太の弁で、確かに全くバンドのことを知らない人にも届くようなポップネスを持っているが、若手のようでいてすでに10年を超えるこのバンドのこれまでの活動歴を知ると、年齢を重ねてもひたすらに青臭さを感じさせる歌詞と渋谷のボーカルからこの上ない説得力を感じさせるし、メンバーの奏でる音の一音一音、さらにはどのフレーズでメンバー全員のコーラスを被せるかというところまで、音楽を作る要素の全てに確固たる意志が宿っていることがわかる。
もはやエモさの化身のようなバンドになった。
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
18.勇気も愛もないなんて / NICO Touches the Walls
先月のインディー時代の青盤、赤盤全曲演奏ライブを見ると、改めて今とは全く違うバンドのように思える。ポストGRAPEVINE的な立ち位置として登場し、若いながらに捻くれまくっていたバンドが30代に突入してここまで自分たち自身のありのままをさらけ出したようなアルバムを作るとは。
今やライブでは過去の曲を超絶的な演奏力でアレンジしまくっているが、そんな演奏力を持ち合わせているにもかかわらず、このアルバムのサウンドは意外なほどにシンプル。(特にリズム隊)しかしそれが同世代の中ではトップクラスの歌唱力を誇るくらいになった光村の歌を前面に押し出すように支えている。
エーキューライセンス
https://youtu.be/M5lESbNTxvs
17.鉛空のスターゲイザー / グッドモーニングアメリカ
自分も2013年の年間ベストディスクの1位に選出したメジャー1stアルバム「未来へのスパイラル」は紛れもなく超名盤であり、このバンドはすぐにアリーナクラスまで行くだろうな、と予感させられるものであった。
しかしながら昨年日本武道館でワンマンを行なったものの、2014年の「inトーキョーシティー」、昨年の「グッドモーニングアメリカ」と1年に1枚のペースを守ってリリースを重ねながらも、バンドの勢いはやや失速してきてしまった感は否めなかったが、今作では1stやインディー時からの最大のバンドの持ち味であったメロディの良さとエモさが完全復活。またここからさらに上を目指して行こうぜと思わせてくれる快盤。
鉛空のスターゲイザー
https://youtu.be/ublP-_POB2o
16.Waltz on Life Line / 9mm Parabellum Bullet
先行作となったクアトロA面シングルがメンバー全員が手がけた曲によって構成されていたため、やはりアルバムも滝の負傷を逆手にとった、メンバー全員が作詞作曲を行なった曲が満遍なく並んだ、9mm史上最もバラエティに富んだ作品になった。(それ故、9mmのアルバムの中では収録時間が飛び抜けて長い)
これまで主に菅原卓郎が作詞を手がけてきただけに、かみじょうちひろの歌詞の独創っぷりに驚くが、全体を通して聴くと、9mmを9mmたらしめてきたのは滝のギターサウンドであるということが逆によくわかる。すでに年明けにリリースされるのが決定している、滝が全ての曲を手がけたというアルバムはこのアルバムよりも9mmらしいものになりそう。
太陽が欲しいだけ
https://youtu.be/gmYqnA1Qwmo
15.Hands of Gravity / the HIATUS
近年はMONOEYESも始動させたことにより、よりthe HIATUSでやる曲は焦点が絞れているというか、もはやシンプルな曲は一切なく、それはリード曲の「Bonfire」を聴いただけでもわかるのだが、そんな曲ばかりの最新アルバムがそれでもポップさを失っていないのは、もはや現在の邦ロックシーンで最高クラスの歌唱力を持った細美武士のボーカルによるもの。しかし密室性の高いように見えながら今までのアルバムよりもどこか開放感に溢れているように感じるのは、やはりMONOEYESを始動させたことによる好影響のように感じる。
Bonfire
https://youtu.be/6Ltxi-8twLk
14.DREAMS / Czecho No Republic
前作「Santa Fe」は武井優心の内面のダークな部分が過去最大に露わになったアルバムだったが、1年も経たずにリリースされた今作では、これまでの、今1番夏の野外が似合うポップな若手バンド、というイメージに沿うような内容となった。
しかしながらイメージは同じであっても、かつての作品と最も異なるのはそのサウンド。バンドサウンドからEDMの影響すら感じさせるエレクトロポップ色が非常に強くなり、武井はライブではもはやベースを弾かずにハンドマイクで歌うことも多くなった。その変化についてはファンからも否定的な意見がよく届くということを武井自身が口にしていたが、常に新しいものを追求していくその姿勢は武井が大きな影響を受けたスーパーカーにも通じるし、様々な楽器を演奏できる今のメンバーが揃ったからこそできること。
Dream Beach Sunset
https://youtu.be/7sy1_Cv5cpk
13.Dr.Izzy / UNISON SQUARE GARDEN
去年の「シュガーソングとビターステップ」の大ヒットがあったことにより、次のアルバムはバンド史上最大のヒット作になるであろうことは明らかだったし、実際にその通りになったのだが、バンドの司令塔である田淵智也は「シュガーソング~」のような曲を量産することを一切せずにそれを成し遂げた。
「シュガーソング~」のような曲を期待していた人からしたら肩透かしをくらうような曲ばかりかもしれないが、それがライブにおいても独自の美学を貫き続けてきたこのバンドらしさそのもの。過去の曲を聴いてきたファンはタイトルを見ただけで思わずニヤリとするような曲が入っているあたりもさすがである。
mix juiceのいうとおり
https://youtu.be/SHVq0tEH8Mc
12.フレデリズム / フレデリック
フレデリックのイメージというとやはり未だに「オドループ」であり、実際その「オドループ」を始め、「オワラセナイト」に「ハローグッバイ」というこれまでのミニアルバムのリード曲であり、バンドの代表曲までも含めた1stフルアルバムはそのイメージにしっかりと応える、これまでの集大成的な作品になった。
しかしながらその中では明らかに異質にして新機軸なアコースティックサイケ「POOLSIDE DOG」、ホーンサウンドをふんだんに使った「サービスナーバス」あたりはこのバンドの引き出しの多さと、これからの音楽性の広がりの予感を感じさせてくれる。ライブではおなじみではある「ふしだらフラミンゴ」もようやく再録されたのは嬉しいところ。
リリリピート
https://youtu.be/VjAxLbmy83E
11.デも/demo / 有村竜太朗
バンドのボーカルのソロというとアジカンの後藤正文によるGotch、ストレイテナーのホリエアツシによるent、the telephones時代の石毛輝からスーパーカー時代に始めたナカコーのNYANTRAに至るまで、バンドではできない個人の趣向を出した、母体のバンドと比べると割とマニアックなものになりがちだが、Plastic Treeの有村竜太朗による初のソロアルバムは、ビックリするくらいバンドのイメージに近い、シューゲイザーを基調としたギターロックサウンドが鳴っている。
それはそもそもがこのアルバムのために新たに作った曲ではなく、バンド結成後から貯まっていったがバンドでは使わなかったストック的な曲で構成されているから、というのもあるが、THE NOVEMBERS小林祐介、People In The Box波多野裕文らをゲストに、Chouchou merged syrups.のリズム隊をレギュラーサポートとして作ったバンド形態になったというのも大きい。リリース直後にChouchou merged syrups.が解散を発表したのは若干の後味の悪さもあるが。
恋と幻 / rentogen
https://youtu.be/YhkNggivEK8
10.V.A / きれいなひとりぼっちたち (銀杏BOYZトリビュートアルバム)
基本的にベストアルバムは入れる意味がないと思っているので、本来は既発曲しかないトリビュートアルバムを年間ベストに入れるのはいかがなものかとも思うのだが、あまりにも内容が良い&収録曲に思い入れがありすぎるために選考対象に。
銀杏BOYZと親交のある先輩バンドや同世代のバンド、影響を受けてきた後輩まで幅広いアーティストが銀杏BOYZの名曲をカバーしているのだが、やはり一際インパクトがあるのは、ドラマや映画で峯田和伸と度々共演している女優・麻生久美子による、瑞々しく過ぎて本当に夢で逢いたくなるような「夢で逢えたら」。
他にも銀杏BOYZのかつてのメンバーたちのテンションが乗り移ったかのようにシャウトしまくるクリープハイプの「援助交際」、意外なほどにしっとりと始まるアレンジの盟友サンボマスター「NO FUTURE NO CRY」と聞きどころばかりだが、お互いに何度も解散するタイミングはあったはずなのに未だにロックバンドとしての変わらぬ青さが滲み出るGOING UNDER GROUND「ナイトライダー」に胸が締め付けられる。
きれいなひとりぼっちたち コラボレーショントレイラー映像
https://youtu.be/QSX74KStnyI
9.eureka / 04 Limited Sazabys
先輩バンドであるBIGMAMAや、今年復活を果たした175Rの例にもあるように、メロコアを起点としたバンドの多くは3枚目くらいのフルアルバムでさらに幅広い音楽性へと足を踏み出していく傾向にある。
フォーリミこと04 Limited Sazabysは2枚目のフルアルバムにして早くもその領域に達した。もちろんツービートのメロコアらしい曲もあるが、J-POPのシーンでも戦っていけるくらいにポップな曲や歌謡曲の要素を持った曲など、メンバーが本当に様々な音楽を消化して、自分たちの音楽として血肉化しているのがよくわかる。来年には初の座席有りの会場である武道館ワンマンも決定しているというのも、このバンドがメロコア・パンクに重心は残しながらもそこをはるかに超えた広い支持を獲得しようとしていることの表れ。
Horizon
https://youtu.be/KKf2M6vc74Y
8.世界観 / クリープハイプ
特に初期のアルバムが名盤であればあるほど、すでに何枚もアルバムをリリースしているバンドが過去の作品を超えるようなアルバムを作るのは実に難しい。現にクリープハイプも前作まではメジャー1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」の幻影を追い求めていたというか、同じ方法論で「死ぬまで~」を超える作品を生み出そうとしていた。
しかしそこに衝動を上回る作為がある以上、1stを超えることはできない。それに気付いたのかどうなのかはわからないが、シングル「鬼」でブラックミュージックのエッセンスを初めてバンドに持ち込むと、その直後にリリースされたこのアルバムではラッパーのチプルソを招いたりして、これまでとは全く違うベクトルの名盤を生み出すことに成功した。「破花」「愛の点滅」というシングル曲の存在が霞んでしまうほどに「5%」「バンド」という、これまでのアルバムだったら絶対収録されていなかったであろうアルバム曲の素晴らしさが際立っている。
鬼
https://youtu.be/TEviDZgKl1w
7.lovefilm / lovefilm
昨年the telephonesを活動休止した石毛輝とノブの2人が今年になって突如始動させた新バンドのデビューアルバム。the telephonesのようなフェスでひたすら楽しく踊らせまくるような音楽(それだけのバンドでは決してなかったが)でもなく、石毛のソロのような比較的マニアックな音楽でもなく、バンド初心者の江夏詩織のフレッシュなボーカルに合わせたかのように青春性を強く感じさせるギターロックになっている。
そうした音楽性を選んだことにより、the telephones時代にはあまり評価されていなかったように感じる、石毛の持つ元々のメロディの良さを改めて実感できるようなアルバムになったし、30歳を過ぎたおっさん達でもバンドであればずっと楽しい青春の真っ只中にいられることを教えてくれる。ドラムの高橋雅志が早くも脱退してしまったのは残念だが、すでにライブでは新曲をやりまくっているだけに来年にはまたアルバムが聴けそうな予感。
Kiss
https://youtu.be/YsopBGIO2Bg
6.EXIST! / [Alexandros]
[Champagne]時代からこのバンドはアルバムごとにかなり大胆に作風を変化させてきたバンドだったが(初期のアルバムからは「ワタリドリ」のような曲ができるとは全く想像だにしていなかった)、幕張メッセでのワンマンをソールドアウトさせるくらいの存在になっても全くその探究心と好奇心は変わらないことを示すかのように、今作もこれまでで最大と言っていいくらいの変化作となった。
具体的には「Feel like」「Aoyama」といった曲ではアーバンなポップサウンドを、「O2」ではもはやバンドサウンドでなくてもいいようなアンビエントサウンドを獲得し、これまでの作品の中では最も「洗練」を感じさせる内容になっている。そうした洗練さはこのバンドの持ち味でもあるロックバンドとしての獰猛さとは対極にあると言ってもいいものだが、そこはさすが[Alexandros]というべきか、その対極の要素が存在していても全く違和感がないくらいに全ての曲が[Alexandros]の曲でしかない。(ただオシャレなだけの曲だったら自分は絶対聴かない)
そんなアルバムがバンド初となるオリコン1位を獲得と、さらなるモンスターバンドとしての進化にも期待させられる1枚。
Feel like
https://youtu.be/Sjq9cZ2-1qA
5.人間開花 / RADWIMPS
正直、前作の「×と○と罪と」も、前々作「絶体絶命」も名盤であったが、気軽に聴けるような内容ではない重さが全体を通してあった。だが20位の「君の名は。」のサントラ、野田洋次郎のソロillionの新作と同じ年にリリースされることになったこのアルバムは、タイトル通りにRADWIMPS史上最も開かれたものになった。
打ち込みも使って制作されたillionの方法論を持ち込んだスタイルの曲もあるが、基本的には近年のバンドのイメージでもある複雑な演奏によるミクスチャーは影を潜め、シンプルな演奏でのギターロックが中心。洋次郎の書く歌詞も、ドラムの山口智史が休養に入った影響からか、これまでよりも過去を回顧するようなものが多くなっており、改めてこのバンドの歩みを実感させられる。それが最も現れたのが「トアルハルノヒ」であり、このバンドが止まらずに走り続けることを選んだことに心から感謝するとともに、ロックバンドなんてものを聴いてきて本当に良かった、と思わせてくれる。
光
https://youtu.be/WuU6C8oXzIA
4.世界収束ニ一一六 / amazarashi
「スターライト」や「もう一度」が収録された前作フルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」がこれまでのamazarashiの中では最も希望を感じさせるものになり、ライブ「スターライト」もそうしたものであっただけに、ひたすらに重くて暗かったamazarashiもこれからは希望に向かっていくんだろうか、と思っていたが、早くもリリースされたフルアルバム「世界収束ニ一一六」は「世界の終焉」をテーマにした、秋田ひろむの変わらなさ、変われなさを改めて証明するものとなった。
なので全体を通底しているのはやはり「生と死」や「社会への違和感」というこれまでのamazarashiと同様に楽観的なサウンドになり得ない重苦しいムードだが、かといって聴いていて絶望的な気分にはならないのは、今作に多く収録されたバラード曲に微かでも確かな希望の光が差し込んでいるから。今年はさらにミニアルバム「虚無病」もリリースされたが、こちらも含めて後ろ向きではなく、どんなに小さくても明日への一歩を踏み出すための音楽。
多数決
https://youtu.be/EG8TUKnBIcQ
3.TWELVE / Mrs.GREEN APPLE
今年はこのアルバム後に「サママ・フェスティバル!」「In the Morning」というシングルをリリースし、ライブではさらなる新曲も披露しまくっているだけに、今年リリースだっけ?と時間軸がブレそうになってしまうが、紛れもなく今年初頭リリースのアルバム。
去年の「Progressive」「Variety」というミニアルバムとそれに伴うライブからすでに確信はあったが、現在数多くいる20代前半~半ばの若手バンドの中では曲、歌詞、歌、演奏などの全ての要素において圧倒的な完成度を誇るバンドである。(このアルバムリリース時は大森元貴は19才だったが)
ライブでのキラーチューンである「愛情と矛先」から始まるこのアルバムはその完成度を誇る若きバンドの最初の集大成とも言える内容で、もはや2010年代後半のギターロックの最高到達点であるとすら思えてくるくらいにどの曲もひたすらにポップかつキャッチーであるのにロックバンドとしてのエッジが立った作品であるが、早くも年明けにリリースが決定しているセルフタイトルのアルバムはそのギターロックバンドというイメージに早くも別れを告げるような、新たなフェーズに突入するものになりそう。
Speaking
https://youtu.be/4KUA-1DvQZk
2.woman's / My Hair is Bad
いわゆるよくある男女の「ラブソング」というものが好きではない。「そんな個人的なものを聴いても何も共感できないし何も感じない」というのもあるし、「そんな歌詞はこれまでに数え切れないくらい他の人が歌ってきたじゃん」というのもある。
去年から今年に一気に勢いを増しているMy Hair is Badのメジャー初のフルアルバム「woman's」も終わった後の視点の曲が多いとはいえ、タイトル通りに「ラブソング」と括られるような曲が多いアルバムである。ではあるが、このアルバム(というかこのバンド)に冒頭のようなツッコミを入れる気に全くならないのは、フリースタイルラッパーとしても生きていけそうな男・椎木知仁が繰り出す、他の人がこれまで使ってこなかった言葉の圧倒的な情報量と「そんなとこまで言わなくても」と思ってしまうくらいに赤裸々に全てを曝け出すかのような歌詞だから。そんな中にあって、先行シングルになった「戦争を知らない大人たち」のシリアスなポエトリーリーディングは胸を打つ。
毎週毎週何処かの会場で全ての力を出し切るようなライブをやり、このアルバムを作るという過酷なスケジュールによるものか、夏の時点でガラガラに涸れてしまった椎木の喉はポリープの手術を受けるくらいになってしまった。しかし間違いなくこのバンドはすぐに戻ってくるだろう。まだずっと叫んでいる若者であるが、「いつか死んでしまうんだ」ということを誰よりもよくわかっているバンドだから。
告白
https://youtu.be/yR0KgP7OrSw
1.We love Tank-Top / ヤバイTシャツ屋さん
かつてアジカンのゴッチがインタビューで、「音に関してはよっぽど斬新な楽器や機材が開発されない限りはもう出尽くしている。でも歌詞ならまだまだ新しいものが生み出せるんじゃないかなって」と自身の歌詞への姿勢を語っていた。
先日、岡崎体育との対談でスチャダラパーのBOSEが、「ヤバイTシャツ屋さんの歌詞に「~しがち」っていう歌詞があるんですよ。もうそれってRGのネタっていうか、あるあるじゃないですか。それって誰もやろうとしなかったことだし、日本語の歌詞ってここまで広がってきたのかって」と、ゴッチの言葉をこのヤバイTシャツ屋さんが見事に実践してみせた証明とも言えるような解説をしていた。
そのスタイル自体はキュウソネコカミ以降というものであるが、その歌詞を彼らはダンスロックではなく、メロコア・パンクサウンドに融合させてみせた。あまりにもコミカルな要素が強いためにWANIMAや04 Limited Sazabysという新世代メロコア・パンクバンドとはあまりに飛距離があり過ぎるように見えるが、「パンクって1番進化を拒む音楽じゃん」と難波章浩が言っていたように、ある意味ではすっかり硬直してしまった(悪く言えばあまり興味ない人が聴いたらどのバンドも同じに聴こえてしまう)、このメロコア・パンクという音楽の最新の進化形とも言えるし、「キャッチーかつポップなメロディとカッコいいサウンドのアレンジ、その人じゃなければ歌えない歌詞」という自分が音楽を聴く上で最も重視する要素を全て兼ね備えた、文句なしの2016年ナンバーワン。願うことは一つだけ。長くサバイブして欲しい。
あつまれ!パーティーピーポー
https://youtu.be/J5oytYDMWHA
今年はどちらかというと下半期に有力な作品が揃ってリリースされたという印象。その中でもヤバイTシャツ屋さんとMy Hair is Badは今の熱狂し続ける状況からくる期待にしっかりと応えたアルバムをともにメジャー1stで作り上げた。
そうした若手バンドの突き上げが激しいことによって、近年はもはや自分と同世代のバンドたちが次々に世代交代の対象になってきている。しかしそんな声を振り払うかのようにこれまでで最高の結果を残したRADWIMPSやUNISON SQUARE GARDENの存在は本当に頼もしいし、まだまだ負けないで欲しい。
続いて2016年の10曲。
愛情と矛先 / Mrs. GREEN APPLE
サママ・フェスティバル! / Mrs. GREEN APPLE
あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
ウェイウェイ大学生 / ヤバイTシャツ屋さん
戦争を知らない大人たち / My Hair is Bad
スパークル / RADWIMPS
ともに / WANIMA
climb / 04 Limited Sazabys
Alien / lovefilm
骨 / 銀杏BOYZ
最後に2016年の表彰的なやつを。
MVP
My Hair is Bad
新人王
ヤバイTシャツ屋さん
最優秀公演賞
12/17 ASIAN KUNG-FU GENERATION @幕張メッセイベントホール
特別表彰
RADWIMPS
yonige
今年はロックシーンにおいては紛れもなくRADWIMPSの年だったが、個人的なMVPは素晴らしいアルバムを作り、数え切れないくらいに様々なフェスやイベントでその日その場所でしか見れないライブを見せてくれた、My Hair is Bad。新人王は次点はlovefilmとyonige。
年末のCDJを除くと今年は99本のライブを見てきたが、その中でもアジカンの20周年ライブは本当に素晴らしかった。あえて次点を挙げるならば銀杏BOYZのDiverCityワンマンだろうか。Czecho No Republicの男子限定ライブも本当に楽しかったけど。
ヤバTは去年のこの時期は全くのノーマークだっただけに、来年はどんなすごいバンドが出てきて驚かせてくれるんだろうか。個人的にはa flood of circleの新作はかなり来年の上位に入ってきそうな予感。
Next→ 12/28 COUNTDOWN JAPAN 16/17 @幕張メッセ
まずは2016ベストディスクのTOP20を20位から順番に。
20.君の名は。 / RADWIMPS
社会現象にもなっている映画のサントラであるが、サントラということでやはり映画の各場面で使用されている短いインスト曲が中心。(それもRADWIMPSの各メンバーが手がけたものであるが)
そんな中にあって「前前前世」「スパークル」という「人間開花」にも収録された曲、「夢灯籠」「なんでもないや」というこのサントラにのみ収録されたボーカル曲が本当に名曲であるため、RADWIMPSの新曲としての聞き応えがしっかりある一枚になっている。だがやはり映画を見たか見ていないかでこのアルバムの評価はだいぶ変わるだろうというくらいに、聴いていると映画のいろんな名場面が頭の中に浮かんでくる。
前前前世
https://youtu.be/PDSkFeMVNFs
19.27 / SUPER BEAVER
「バンドの歴史を全く知らなくても良いって思える曲が本当に良い曲」とはボーカル渋谷龍太の弁で、確かに全くバンドのことを知らない人にも届くようなポップネスを持っているが、若手のようでいてすでに10年を超えるこのバンドのこれまでの活動歴を知ると、年齢を重ねてもひたすらに青臭さを感じさせる歌詞と渋谷のボーカルからこの上ない説得力を感じさせるし、メンバーの奏でる音の一音一音、さらにはどのフレーズでメンバー全員のコーラスを被せるかというところまで、音楽を作る要素の全てに確固たる意志が宿っていることがわかる。
もはやエモさの化身のようなバンドになった。
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
18.勇気も愛もないなんて / NICO Touches the Walls
先月のインディー時代の青盤、赤盤全曲演奏ライブを見ると、改めて今とは全く違うバンドのように思える。ポストGRAPEVINE的な立ち位置として登場し、若いながらに捻くれまくっていたバンドが30代に突入してここまで自分たち自身のありのままをさらけ出したようなアルバムを作るとは。
今やライブでは過去の曲を超絶的な演奏力でアレンジしまくっているが、そんな演奏力を持ち合わせているにもかかわらず、このアルバムのサウンドは意外なほどにシンプル。(特にリズム隊)しかしそれが同世代の中ではトップクラスの歌唱力を誇るくらいになった光村の歌を前面に押し出すように支えている。
エーキューライセンス
https://youtu.be/M5lESbNTxvs
17.鉛空のスターゲイザー / グッドモーニングアメリカ
自分も2013年の年間ベストディスクの1位に選出したメジャー1stアルバム「未来へのスパイラル」は紛れもなく超名盤であり、このバンドはすぐにアリーナクラスまで行くだろうな、と予感させられるものであった。
しかしながら昨年日本武道館でワンマンを行なったものの、2014年の「inトーキョーシティー」、昨年の「グッドモーニングアメリカ」と1年に1枚のペースを守ってリリースを重ねながらも、バンドの勢いはやや失速してきてしまった感は否めなかったが、今作では1stやインディー時からの最大のバンドの持ち味であったメロディの良さとエモさが完全復活。またここからさらに上を目指して行こうぜと思わせてくれる快盤。
鉛空のスターゲイザー
https://youtu.be/ublP-_POB2o
16.Waltz on Life Line / 9mm Parabellum Bullet
先行作となったクアトロA面シングルがメンバー全員が手がけた曲によって構成されていたため、やはりアルバムも滝の負傷を逆手にとった、メンバー全員が作詞作曲を行なった曲が満遍なく並んだ、9mm史上最もバラエティに富んだ作品になった。(それ故、9mmのアルバムの中では収録時間が飛び抜けて長い)
これまで主に菅原卓郎が作詞を手がけてきただけに、かみじょうちひろの歌詞の独創っぷりに驚くが、全体を通して聴くと、9mmを9mmたらしめてきたのは滝のギターサウンドであるということが逆によくわかる。すでに年明けにリリースされるのが決定している、滝が全ての曲を手がけたというアルバムはこのアルバムよりも9mmらしいものになりそう。
太陽が欲しいだけ
https://youtu.be/gmYqnA1Qwmo
15.Hands of Gravity / the HIATUS
近年はMONOEYESも始動させたことにより、よりthe HIATUSでやる曲は焦点が絞れているというか、もはやシンプルな曲は一切なく、それはリード曲の「Bonfire」を聴いただけでもわかるのだが、そんな曲ばかりの最新アルバムがそれでもポップさを失っていないのは、もはや現在の邦ロックシーンで最高クラスの歌唱力を持った細美武士のボーカルによるもの。しかし密室性の高いように見えながら今までのアルバムよりもどこか開放感に溢れているように感じるのは、やはりMONOEYESを始動させたことによる好影響のように感じる。
Bonfire
https://youtu.be/6Ltxi-8twLk
14.DREAMS / Czecho No Republic
前作「Santa Fe」は武井優心の内面のダークな部分が過去最大に露わになったアルバムだったが、1年も経たずにリリースされた今作では、これまでの、今1番夏の野外が似合うポップな若手バンド、というイメージに沿うような内容となった。
しかしながらイメージは同じであっても、かつての作品と最も異なるのはそのサウンド。バンドサウンドからEDMの影響すら感じさせるエレクトロポップ色が非常に強くなり、武井はライブではもはやベースを弾かずにハンドマイクで歌うことも多くなった。その変化についてはファンからも否定的な意見がよく届くということを武井自身が口にしていたが、常に新しいものを追求していくその姿勢は武井が大きな影響を受けたスーパーカーにも通じるし、様々な楽器を演奏できる今のメンバーが揃ったからこそできること。
Dream Beach Sunset
https://youtu.be/7sy1_Cv5cpk
13.Dr.Izzy / UNISON SQUARE GARDEN
去年の「シュガーソングとビターステップ」の大ヒットがあったことにより、次のアルバムはバンド史上最大のヒット作になるであろうことは明らかだったし、実際にその通りになったのだが、バンドの司令塔である田淵智也は「シュガーソング~」のような曲を量産することを一切せずにそれを成し遂げた。
「シュガーソング~」のような曲を期待していた人からしたら肩透かしをくらうような曲ばかりかもしれないが、それがライブにおいても独自の美学を貫き続けてきたこのバンドらしさそのもの。過去の曲を聴いてきたファンはタイトルを見ただけで思わずニヤリとするような曲が入っているあたりもさすがである。
mix juiceのいうとおり
https://youtu.be/SHVq0tEH8Mc
12.フレデリズム / フレデリック
フレデリックのイメージというとやはり未だに「オドループ」であり、実際その「オドループ」を始め、「オワラセナイト」に「ハローグッバイ」というこれまでのミニアルバムのリード曲であり、バンドの代表曲までも含めた1stフルアルバムはそのイメージにしっかりと応える、これまでの集大成的な作品になった。
しかしながらその中では明らかに異質にして新機軸なアコースティックサイケ「POOLSIDE DOG」、ホーンサウンドをふんだんに使った「サービスナーバス」あたりはこのバンドの引き出しの多さと、これからの音楽性の広がりの予感を感じさせてくれる。ライブではおなじみではある「ふしだらフラミンゴ」もようやく再録されたのは嬉しいところ。
リリリピート
https://youtu.be/VjAxLbmy83E
11.デも/demo / 有村竜太朗
バンドのボーカルのソロというとアジカンの後藤正文によるGotch、ストレイテナーのホリエアツシによるent、the telephones時代の石毛輝からスーパーカー時代に始めたナカコーのNYANTRAに至るまで、バンドではできない個人の趣向を出した、母体のバンドと比べると割とマニアックなものになりがちだが、Plastic Treeの有村竜太朗による初のソロアルバムは、ビックリするくらいバンドのイメージに近い、シューゲイザーを基調としたギターロックサウンドが鳴っている。
それはそもそもがこのアルバムのために新たに作った曲ではなく、バンド結成後から貯まっていったがバンドでは使わなかったストック的な曲で構成されているから、というのもあるが、THE NOVEMBERS小林祐介、People In The Box波多野裕文らをゲストに、Chouchou merged syrups.のリズム隊をレギュラーサポートとして作ったバンド形態になったというのも大きい。リリース直後にChouchou merged syrups.が解散を発表したのは若干の後味の悪さもあるが。
恋と幻 / rentogen
https://youtu.be/YhkNggivEK8
10.V.A / きれいなひとりぼっちたち (銀杏BOYZトリビュートアルバム)
基本的にベストアルバムは入れる意味がないと思っているので、本来は既発曲しかないトリビュートアルバムを年間ベストに入れるのはいかがなものかとも思うのだが、あまりにも内容が良い&収録曲に思い入れがありすぎるために選考対象に。
銀杏BOYZと親交のある先輩バンドや同世代のバンド、影響を受けてきた後輩まで幅広いアーティストが銀杏BOYZの名曲をカバーしているのだが、やはり一際インパクトがあるのは、ドラマや映画で峯田和伸と度々共演している女優・麻生久美子による、瑞々しく過ぎて本当に夢で逢いたくなるような「夢で逢えたら」。
他にも銀杏BOYZのかつてのメンバーたちのテンションが乗り移ったかのようにシャウトしまくるクリープハイプの「援助交際」、意外なほどにしっとりと始まるアレンジの盟友サンボマスター「NO FUTURE NO CRY」と聞きどころばかりだが、お互いに何度も解散するタイミングはあったはずなのに未だにロックバンドとしての変わらぬ青さが滲み出るGOING UNDER GROUND「ナイトライダー」に胸が締め付けられる。
きれいなひとりぼっちたち コラボレーショントレイラー映像
https://youtu.be/QSX74KStnyI
9.eureka / 04 Limited Sazabys
先輩バンドであるBIGMAMAや、今年復活を果たした175Rの例にもあるように、メロコアを起点としたバンドの多くは3枚目くらいのフルアルバムでさらに幅広い音楽性へと足を踏み出していく傾向にある。
フォーリミこと04 Limited Sazabysは2枚目のフルアルバムにして早くもその領域に達した。もちろんツービートのメロコアらしい曲もあるが、J-POPのシーンでも戦っていけるくらいにポップな曲や歌謡曲の要素を持った曲など、メンバーが本当に様々な音楽を消化して、自分たちの音楽として血肉化しているのがよくわかる。来年には初の座席有りの会場である武道館ワンマンも決定しているというのも、このバンドがメロコア・パンクに重心は残しながらもそこをはるかに超えた広い支持を獲得しようとしていることの表れ。
Horizon
https://youtu.be/KKf2M6vc74Y
8.世界観 / クリープハイプ
特に初期のアルバムが名盤であればあるほど、すでに何枚もアルバムをリリースしているバンドが過去の作品を超えるようなアルバムを作るのは実に難しい。現にクリープハイプも前作まではメジャー1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」の幻影を追い求めていたというか、同じ方法論で「死ぬまで~」を超える作品を生み出そうとしていた。
しかしそこに衝動を上回る作為がある以上、1stを超えることはできない。それに気付いたのかどうなのかはわからないが、シングル「鬼」でブラックミュージックのエッセンスを初めてバンドに持ち込むと、その直後にリリースされたこのアルバムではラッパーのチプルソを招いたりして、これまでとは全く違うベクトルの名盤を生み出すことに成功した。「破花」「愛の点滅」というシングル曲の存在が霞んでしまうほどに「5%」「バンド」という、これまでのアルバムだったら絶対収録されていなかったであろうアルバム曲の素晴らしさが際立っている。
鬼
https://youtu.be/TEviDZgKl1w
7.lovefilm / lovefilm
昨年the telephonesを活動休止した石毛輝とノブの2人が今年になって突如始動させた新バンドのデビューアルバム。the telephonesのようなフェスでひたすら楽しく踊らせまくるような音楽(それだけのバンドでは決してなかったが)でもなく、石毛のソロのような比較的マニアックな音楽でもなく、バンド初心者の江夏詩織のフレッシュなボーカルに合わせたかのように青春性を強く感じさせるギターロックになっている。
そうした音楽性を選んだことにより、the telephones時代にはあまり評価されていなかったように感じる、石毛の持つ元々のメロディの良さを改めて実感できるようなアルバムになったし、30歳を過ぎたおっさん達でもバンドであればずっと楽しい青春の真っ只中にいられることを教えてくれる。ドラムの高橋雅志が早くも脱退してしまったのは残念だが、すでにライブでは新曲をやりまくっているだけに来年にはまたアルバムが聴けそうな予感。
Kiss
https://youtu.be/YsopBGIO2Bg
6.EXIST! / [Alexandros]
[Champagne]時代からこのバンドはアルバムごとにかなり大胆に作風を変化させてきたバンドだったが(初期のアルバムからは「ワタリドリ」のような曲ができるとは全く想像だにしていなかった)、幕張メッセでのワンマンをソールドアウトさせるくらいの存在になっても全くその探究心と好奇心は変わらないことを示すかのように、今作もこれまでで最大と言っていいくらいの変化作となった。
具体的には「Feel like」「Aoyama」といった曲ではアーバンなポップサウンドを、「O2」ではもはやバンドサウンドでなくてもいいようなアンビエントサウンドを獲得し、これまでの作品の中では最も「洗練」を感じさせる内容になっている。そうした洗練さはこのバンドの持ち味でもあるロックバンドとしての獰猛さとは対極にあると言ってもいいものだが、そこはさすが[Alexandros]というべきか、その対極の要素が存在していても全く違和感がないくらいに全ての曲が[Alexandros]の曲でしかない。(ただオシャレなだけの曲だったら自分は絶対聴かない)
そんなアルバムがバンド初となるオリコン1位を獲得と、さらなるモンスターバンドとしての進化にも期待させられる1枚。
Feel like
https://youtu.be/Sjq9cZ2-1qA
5.人間開花 / RADWIMPS
正直、前作の「×と○と罪と」も、前々作「絶体絶命」も名盤であったが、気軽に聴けるような内容ではない重さが全体を通してあった。だが20位の「君の名は。」のサントラ、野田洋次郎のソロillionの新作と同じ年にリリースされることになったこのアルバムは、タイトル通りにRADWIMPS史上最も開かれたものになった。
打ち込みも使って制作されたillionの方法論を持ち込んだスタイルの曲もあるが、基本的には近年のバンドのイメージでもある複雑な演奏によるミクスチャーは影を潜め、シンプルな演奏でのギターロックが中心。洋次郎の書く歌詞も、ドラムの山口智史が休養に入った影響からか、これまでよりも過去を回顧するようなものが多くなっており、改めてこのバンドの歩みを実感させられる。それが最も現れたのが「トアルハルノヒ」であり、このバンドが止まらずに走り続けることを選んだことに心から感謝するとともに、ロックバンドなんてものを聴いてきて本当に良かった、と思わせてくれる。
光
https://youtu.be/WuU6C8oXzIA
4.世界収束ニ一一六 / amazarashi
「スターライト」や「もう一度」が収録された前作フルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」がこれまでのamazarashiの中では最も希望を感じさせるものになり、ライブ「スターライト」もそうしたものであっただけに、ひたすらに重くて暗かったamazarashiもこれからは希望に向かっていくんだろうか、と思っていたが、早くもリリースされたフルアルバム「世界収束ニ一一六」は「世界の終焉」をテーマにした、秋田ひろむの変わらなさ、変われなさを改めて証明するものとなった。
なので全体を通底しているのはやはり「生と死」や「社会への違和感」というこれまでのamazarashiと同様に楽観的なサウンドになり得ない重苦しいムードだが、かといって聴いていて絶望的な気分にはならないのは、今作に多く収録されたバラード曲に微かでも確かな希望の光が差し込んでいるから。今年はさらにミニアルバム「虚無病」もリリースされたが、こちらも含めて後ろ向きではなく、どんなに小さくても明日への一歩を踏み出すための音楽。
多数決
https://youtu.be/EG8TUKnBIcQ
3.TWELVE / Mrs.GREEN APPLE
今年はこのアルバム後に「サママ・フェスティバル!」「In the Morning」というシングルをリリースし、ライブではさらなる新曲も披露しまくっているだけに、今年リリースだっけ?と時間軸がブレそうになってしまうが、紛れもなく今年初頭リリースのアルバム。
去年の「Progressive」「Variety」というミニアルバムとそれに伴うライブからすでに確信はあったが、現在数多くいる20代前半~半ばの若手バンドの中では曲、歌詞、歌、演奏などの全ての要素において圧倒的な完成度を誇るバンドである。(このアルバムリリース時は大森元貴は19才だったが)
ライブでのキラーチューンである「愛情と矛先」から始まるこのアルバムはその完成度を誇る若きバンドの最初の集大成とも言える内容で、もはや2010年代後半のギターロックの最高到達点であるとすら思えてくるくらいにどの曲もひたすらにポップかつキャッチーであるのにロックバンドとしてのエッジが立った作品であるが、早くも年明けにリリースが決定しているセルフタイトルのアルバムはそのギターロックバンドというイメージに早くも別れを告げるような、新たなフェーズに突入するものになりそう。
Speaking
https://youtu.be/4KUA-1DvQZk
2.woman's / My Hair is Bad
いわゆるよくある男女の「ラブソング」というものが好きではない。「そんな個人的なものを聴いても何も共感できないし何も感じない」というのもあるし、「そんな歌詞はこれまでに数え切れないくらい他の人が歌ってきたじゃん」というのもある。
去年から今年に一気に勢いを増しているMy Hair is Badのメジャー初のフルアルバム「woman's」も終わった後の視点の曲が多いとはいえ、タイトル通りに「ラブソング」と括られるような曲が多いアルバムである。ではあるが、このアルバム(というかこのバンド)に冒頭のようなツッコミを入れる気に全くならないのは、フリースタイルラッパーとしても生きていけそうな男・椎木知仁が繰り出す、他の人がこれまで使ってこなかった言葉の圧倒的な情報量と「そんなとこまで言わなくても」と思ってしまうくらいに赤裸々に全てを曝け出すかのような歌詞だから。そんな中にあって、先行シングルになった「戦争を知らない大人たち」のシリアスなポエトリーリーディングは胸を打つ。
毎週毎週何処かの会場で全ての力を出し切るようなライブをやり、このアルバムを作るという過酷なスケジュールによるものか、夏の時点でガラガラに涸れてしまった椎木の喉はポリープの手術を受けるくらいになってしまった。しかし間違いなくこのバンドはすぐに戻ってくるだろう。まだずっと叫んでいる若者であるが、「いつか死んでしまうんだ」ということを誰よりもよくわかっているバンドだから。
告白
https://youtu.be/yR0KgP7OrSw
1.We love Tank-Top / ヤバイTシャツ屋さん
かつてアジカンのゴッチがインタビューで、「音に関してはよっぽど斬新な楽器や機材が開発されない限りはもう出尽くしている。でも歌詞ならまだまだ新しいものが生み出せるんじゃないかなって」と自身の歌詞への姿勢を語っていた。
先日、岡崎体育との対談でスチャダラパーのBOSEが、「ヤバイTシャツ屋さんの歌詞に「~しがち」っていう歌詞があるんですよ。もうそれってRGのネタっていうか、あるあるじゃないですか。それって誰もやろうとしなかったことだし、日本語の歌詞ってここまで広がってきたのかって」と、ゴッチの言葉をこのヤバイTシャツ屋さんが見事に実践してみせた証明とも言えるような解説をしていた。
そのスタイル自体はキュウソネコカミ以降というものであるが、その歌詞を彼らはダンスロックではなく、メロコア・パンクサウンドに融合させてみせた。あまりにもコミカルな要素が強いためにWANIMAや04 Limited Sazabysという新世代メロコア・パンクバンドとはあまりに飛距離があり過ぎるように見えるが、「パンクって1番進化を拒む音楽じゃん」と難波章浩が言っていたように、ある意味ではすっかり硬直してしまった(悪く言えばあまり興味ない人が聴いたらどのバンドも同じに聴こえてしまう)、このメロコア・パンクという音楽の最新の進化形とも言えるし、「キャッチーかつポップなメロディとカッコいいサウンドのアレンジ、その人じゃなければ歌えない歌詞」という自分が音楽を聴く上で最も重視する要素を全て兼ね備えた、文句なしの2016年ナンバーワン。願うことは一つだけ。長くサバイブして欲しい。
あつまれ!パーティーピーポー
https://youtu.be/J5oytYDMWHA
今年はどちらかというと下半期に有力な作品が揃ってリリースされたという印象。その中でもヤバイTシャツ屋さんとMy Hair is Badは今の熱狂し続ける状況からくる期待にしっかりと応えたアルバムをともにメジャー1stで作り上げた。
そうした若手バンドの突き上げが激しいことによって、近年はもはや自分と同世代のバンドたちが次々に世代交代の対象になってきている。しかしそんな声を振り払うかのようにこれまでで最高の結果を残したRADWIMPSやUNISON SQUARE GARDENの存在は本当に頼もしいし、まだまだ負けないで欲しい。
続いて2016年の10曲。
愛情と矛先 / Mrs. GREEN APPLE
サママ・フェスティバル! / Mrs. GREEN APPLE
あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
ウェイウェイ大学生 / ヤバイTシャツ屋さん
戦争を知らない大人たち / My Hair is Bad
スパークル / RADWIMPS
ともに / WANIMA
climb / 04 Limited Sazabys
Alien / lovefilm
骨 / 銀杏BOYZ
最後に2016年の表彰的なやつを。
MVP
My Hair is Bad
新人王
ヤバイTシャツ屋さん
最優秀公演賞
12/17 ASIAN KUNG-FU GENERATION @幕張メッセイベントホール
特別表彰
RADWIMPS
yonige
今年はロックシーンにおいては紛れもなくRADWIMPSの年だったが、個人的なMVPは素晴らしいアルバムを作り、数え切れないくらいに様々なフェスやイベントでその日その場所でしか見れないライブを見せてくれた、My Hair is Bad。新人王は次点はlovefilmとyonige。
年末のCDJを除くと今年は99本のライブを見てきたが、その中でもアジカンの20周年ライブは本当に素晴らしかった。あえて次点を挙げるならば銀杏BOYZのDiverCityワンマンだろうか。Czecho No Republicの男子限定ライブも本当に楽しかったけど。
ヤバTは去年のこの時期は全くのノーマークだっただけに、来年はどんなすごいバンドが出てきて驚かせてくれるんだろうか。個人的にはa flood of circleの新作はかなり来年の上位に入ってきそうな予感。
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COUNTDOWN JAPAN 16/17 day1 @幕張メッセ 12/28 ホーム
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017 「20th Anniversary Live」 @幕張メッセイベントホール 12/17