lovefilm ~lovefilm 1st tour ”lovefilm”~ @代官山UNIT 11/23
- 2016/11/23
- 23:08
ちょうど一年前、多くの人に愛されたthe telephonesがさいたまスーパーアリーナでのライブをもって活動休止。そのtelephonesの石毛輝とノブが今年の春に結成した新バンド、lovefilm。石毛とともにツインボーカルを務める江夏詩織がバンド初心者ということもあり、新代田FEVERでの初ライブや春のフェスでは鮮烈な初々しさを残したバンドがアルバムの発売、夏フェスやイベントなどの出演、さらにはドラム高橋雅志の突然の脱退などを経てのリリースツアー。大阪と名古屋を経てこの日の代官山UNITワンマンがファイナルとなる。
やはりワンマンであってもtelephonesのライブと違うな、と思うのはわかりやすく動きやすい(SAITAMA Tシャツに短パンみたいな)服装の人がそんなにいないということ。フェスに出まくってたとはいえ、もしかしたら初めてライブを見る人も結構いるかもしれないので探り探りな部分もあるのかもしれない。
予定時間の18時を10分ほど過ぎたところで会場が暗転し、今やこのバンドのライブ開始時にはおなじみとなった、作ったのが石毛でしかないSEが鳴り始めると、観客の手拍子に合わせてメンバーが登場。ショートカットの江夏詩織が登場すると、石毛やノブよりも大きな拍手が起こるあたり、もはや彼女がこのバンドの顔になってきているのがよくわかる。
すると「Vomit」から序盤はひたすらにアッパーな曲で攻める立ち上がり。しかしながらドラムが高橋雅志から福田洋子(BOOM BOOM SATELLITESなど)に変わったことにより、やはりサウンドもだいぶ変わっている。高橋の見た目通りのパワフルなドラムも良かったが、福田洋子の正確無比かつ手数が多いドラムはバンドの演奏をさらに上のレベルに引き上げている。というか本当にドラムが突出するくらいに上手すぎる。
これまでのライブでは一目見ただけで緊張感が伝わってきた江夏も、ギターの演奏にやはり多少の緊張は見えれど、上手く歌おうというよりは素直に今の感情を爆発させるようなボーカルになっている。これは間違いなくライブを重ねてきた成果であるが、この歌い方が序盤のアッパーなギターロック曲、とりわけ「Alien」などの石毛とのツインボーカル曲に実に良く合っている。
その一方で石毛は観客も一緒に歌えて楽しめる「Honey Bee」で
「代官山ー!今日は一つになって楽しもうぜー!」
とサビ前の歌詞を歌わずに代わりに叫び、この曲のシャウトパートでいつにも増して長く叫んだベースのノブ(シンセではなくベースのノブもすっかり見慣れてきた)と揃って大ジャンプを見せ、この日この場をまずは自分たちが最大限に楽しみ、それを観客にも伝えようとする。
そのノブが江夏とスイッチするような形でセンターでギターを弾く「Don't Cry」では江夏の渾身の叫びが響き渡り、
「今日のツアーファイナル最高ー!」
と感情を爆発させる。春の時点ではややたどたどしい感じもあったが、もはやすっかりパンク少女のよう。
ノブが
「今日の夜は雪降るんだっけ?え?明日の朝?まぁ多く見て今日だよね(笑)」
と独特の感性を炸裂させるゆる~いMCから、石毛がメインボーカルで江夏とノブがコーラスを務める「Goodbye,Goodnight」、さらには東京では初披露となる新曲を続ける。イントロだけ聴くと4つ打ちの踊れそうなタイプの曲だが、そこは石毛がそんな単純な曲を作るわけがなく、めまぐるしく曲が展開していく。サポートで入ったばかりだというのにもはや曲を引っ張っているようにすら感じる福田洋子はさすがである。
「新曲ではないけど、東京で初めてやる曲」
と言って演奏されたのは「Our Dawn」。確かにフェスなどでは演奏されていなかっただけにライブで聴くのは初めてだが、江夏が時に歌いつつ奏でるキーボードの音に合わせて
「ゆらめいて たなびいて 僕たちの夜が明ける」
と歌われるフレーズは、今年始まったばかりのこのバンドの夜明けそのもののように新鮮さを持って響く。
するとステージが暗くなり、石毛以外の3人がステージからいなくなる。1人残った石毛はPCを操作しながらギターを弾き、実験的なソロのようなアブストラクトな音を構築していく。そのうちに加工された江夏のボーカルフレーズが流れ出し、「Kiss」をその場でセルフリミックスしているという、lovefilmのポップさの裏側の石毛のマニアックな音楽探究家っぷりが垣間見える。なかなかワンマン以外ではやる機会がないだろうが、普段からこうして曲を解体・再構築して音と遊んでいるんだろうかと想像してしまう。
メンバーがステージに戻ると、まだタイトルもない新曲を連発。まずは石毛ボーカルの浮遊感のあるダンサブルな曲で、石毛の師匠であるナカコーのやっていたスーパーカーの「Futurama」期あたりを彷彿とさせる。
続いては江夏がメインボーカルのミドルテンポのラブソング。基本的にtelephones時代から石毛の書くラブソングは愛の対象が音楽であるかのように聴こえる曲ばかりだったが、江夏が歌うことによって、石毛の書く曲でも特定の人に向けたラブソングに聴こえてくる。それはやはりtelephonesとは違って全日本語という要素も間違いなくあるだろうけど。
続く新曲は夏フェスでもやっていた、
「愛した人も別れた人も 遠く夢の中」
と江夏が歌う喪失感を強く感じるバラード。こうした喪失感は他のlovefilmの曲でも感じる大きな要素だが、telephones時代にも「Re:Life」などそういったタイプの曲はあった。しかしやはりtelephonesのイメージや石毛のハイトーンな声からはその要素をそこまで強く感じることはできなかったため、江夏のボーカルが石毛の本来持っているそうした要素を引き出していると言える。
するとここでツアーの思い出振り返りコーナー(ノブがひたすら大阪からの帰りの渋滞が凄かったと話すが、食いつきはイマイチ)など、珍しく長々と喋り出すが、
「ただ単に曲が足りないから、ワンマンに来てもらった感を感じてもらうためにたくさん喋ってる(笑)」
と石毛がぶっちゃける。ついには観客からの質問コーナーまで取り入れるのだが、手を挙げたら他に誰も手を挙げておらずに自分が指名されてしまい、
「たくさん夏フェスに出てましたが、印象に残ったところは?」
と質問したら、江夏が
「ロッキン!地元だったから出れて嬉しかった!
あとモンバスで食べたうどんがめちゃくちゃ美味しかった!」
と素直に回答していただいた。石毛とノブが話している時に後ろを向いて咳をしていたのが心配なところでもあったが。
「モンバスはケータリングが日本一美味しいフェス」
とさすがにtelephones時代からあらゆるフェスに出まくってた石毛もモンバスのうどんに太鼓判を押す。
そんなゆる~いやり取りの後もさらなる新曲が。石毛のノイジーなギターサウンドに包まれる、シューゲイズ要素の強い曲だが、タメにタメたサビでいきなりクラシックロックのような壮大な2人のボーカルが響き渡る。予期せぬ展開を見せた曲だけに、この日演奏された新曲群の中で1番インパクトが強い曲だった。
そしてその新曲から連なるように、タイトル通りに神聖なメロディと石毛のノイジーなギターが会場を包む「Holy Wonder」から、これまでのライブでも毎回最後に演奏されてきた「Hours」で、「曲が足りない」という石毛の言葉を裏付けるようにあっという間に終了。まだアルバム1枚、10曲しか持ち曲がないので、その状況からしたら新曲を5曲もやったことにより、予想よりはるかに長い内容だったが。
しかしアンコールで再びメンバーが登場すると、全員ツアーグッズを身にまとっている。江夏は自身がデザインした白いTシャツにニットキャップ、福田は黒いTシャツ、石毛は黒いロゴTシャツにバンダナ、ノブはパーカーにバンダナという出で立ちだが、ノブはバンダナの巻き方が家庭科の料理実習のようになっており、ギャングっぽい巻き方の石毛とは対照的。このようにいろんな巻き方ができるし、弁当包みにもなり、バンダナには様々な用途があるということ。
そして急にもかかわらずサポートを引き受けてバンドを救ってくれた福田洋子への感謝を石毛が口にして暖かい拍手に包まれると、
「これから新曲もレコーディングしたいし。良い曲を作って、良いライブをやるっていう当たり前のことを、誰よりもカッコよくやっていきたい。今日は本当にありがとう!」
と石毛が自身の音楽観(それはtelephones時代から一貫して全くブレることのない)を改めて口にしてから演奏されたのは「Kiss」。
「もう1度抱き合っていたい
君だけを見ていたいさ
もう2度と叶わない」
という歌詞は、前述の喪失感を他のどの曲よりも強く感じさせる。とりわけこの日はツアーファイナル、そこで鳴らされる最後の曲ということもあり、メンバーの演奏と2人の歌声はより一層エモーショナルさを湛えていた。
曲が終わると、ツアーファイナルということで、telephonesのワンマンでもおなじみだった、観客を背景にしての写真撮影。江夏はこうして写真を撮るのも初めての経験とのこと。きっとこれから、数え切れないくらいにこうして写真を撮るようになる。この日石毛が発案した「love!」「film!」という掛け声がそれまで続いているかどうかはわからないけど。
初ライブの時に自分は「lovefilmは江夏詩織の成長にかかっている」と書いたが、フェスやイベントなどへの出演を重ねたことにより、江夏はこれまでの初々しさよりも感情を強く出していた。それにより彼女がバンドマンらしくなり、lovefilm自体のバンド感もさらに増した。わずか半年ですっかり頼もしくなった江夏は、凄腕メンバーたちに囲まれてこれからどうさらに成長していくのだろうか。
この日、ワンマンをやるにしては曲が足りないのは分かりきっていた。だから来ていた人の中にはもしかしたらtelephonesの曲をやるかも?と思っていた人もいるかもしれない。しかしバンドはそれを新曲を5曲やるという方法で乗り越えた。それで良かった。telephonesはあの4人のバンドだし、lovefilmはこの3人(と福田洋子)のバンドだから。
でもソロでだって全然活動できる石毛がひたすらにバンドであることにこだわっているだけに、ドラマーがずっとサポートのままというのも考えにくい。(福田洋子は頼まれればずっとやるだろうけど)果たして新曲とともに今後の編成がどうなるのかというところにも期待である。
しかし石毛はこの日、
「lovefilmのライブが良かったら、友達とかに良かったよ、って伝えてください」
と言っていた。もしかしたら、良い音楽を作っているのにtelephonesのように一気に広がっていかないことにジレンマを感じているのかもしれない。でもそれは仕方ない。lovefilmの音楽はtelephonesのようにみんなで楽しく盛り上がれるというものではないから。だから今のフェスシーンで何万人もの人が一斉に踊るようにはならないかもしれない。だがじっくり聴けば曲そのもののメロディの良さと、青春性溢れるロマンチックな歌詞の良さがよくわかる。それこそが石毛がこのバンドによって最も知らしめたいことなのかもしれない。何よりも石毛の作り出す音楽を信じている自分のような人間にとっては、こうしてライブに行って、どう良かったかを少しでも綴るしかない。だから今年もまだ何本かライブを見に行くし、来年以降もずっと見に行って、こうしてライブのことを書き続けるしかない。
何よりも、telephonesの初ライブも初ワンマンも見れていないだけに、こうしてlovefilmの初ライブと初ワンマンのファイナルを見れているということにこの上ない喜びを感じている。
1.Vomit
2.Alien
3.Honey Bee
4.Don't Cry
5.Goodbye,Goodnight
6.新曲
7.Our Dawn
8.Kiss (Ishige remix)
9.新曲
10.新曲
11.新曲
12.新曲
13.Holy Wonder
14.Hours
encore
15.Kiss
Kiss
https://youtu.be/YsopBGIO2Bg
Next→ 11/25 NICO Touches the Walls @赤坂BLITZ
やはりワンマンであってもtelephonesのライブと違うな、と思うのはわかりやすく動きやすい(SAITAMA Tシャツに短パンみたいな)服装の人がそんなにいないということ。フェスに出まくってたとはいえ、もしかしたら初めてライブを見る人も結構いるかもしれないので探り探りな部分もあるのかもしれない。
予定時間の18時を10分ほど過ぎたところで会場が暗転し、今やこのバンドのライブ開始時にはおなじみとなった、作ったのが石毛でしかないSEが鳴り始めると、観客の手拍子に合わせてメンバーが登場。ショートカットの江夏詩織が登場すると、石毛やノブよりも大きな拍手が起こるあたり、もはや彼女がこのバンドの顔になってきているのがよくわかる。
すると「Vomit」から序盤はひたすらにアッパーな曲で攻める立ち上がり。しかしながらドラムが高橋雅志から福田洋子(BOOM BOOM SATELLITESなど)に変わったことにより、やはりサウンドもだいぶ変わっている。高橋の見た目通りのパワフルなドラムも良かったが、福田洋子の正確無比かつ手数が多いドラムはバンドの演奏をさらに上のレベルに引き上げている。というか本当にドラムが突出するくらいに上手すぎる。
これまでのライブでは一目見ただけで緊張感が伝わってきた江夏も、ギターの演奏にやはり多少の緊張は見えれど、上手く歌おうというよりは素直に今の感情を爆発させるようなボーカルになっている。これは間違いなくライブを重ねてきた成果であるが、この歌い方が序盤のアッパーなギターロック曲、とりわけ「Alien」などの石毛とのツインボーカル曲に実に良く合っている。
その一方で石毛は観客も一緒に歌えて楽しめる「Honey Bee」で
「代官山ー!今日は一つになって楽しもうぜー!」
とサビ前の歌詞を歌わずに代わりに叫び、この曲のシャウトパートでいつにも増して長く叫んだベースのノブ(シンセではなくベースのノブもすっかり見慣れてきた)と揃って大ジャンプを見せ、この日この場をまずは自分たちが最大限に楽しみ、それを観客にも伝えようとする。
そのノブが江夏とスイッチするような形でセンターでギターを弾く「Don't Cry」では江夏の渾身の叫びが響き渡り、
「今日のツアーファイナル最高ー!」
と感情を爆発させる。春の時点ではややたどたどしい感じもあったが、もはやすっかりパンク少女のよう。
ノブが
「今日の夜は雪降るんだっけ?え?明日の朝?まぁ多く見て今日だよね(笑)」
と独特の感性を炸裂させるゆる~いMCから、石毛がメインボーカルで江夏とノブがコーラスを務める「Goodbye,Goodnight」、さらには東京では初披露となる新曲を続ける。イントロだけ聴くと4つ打ちの踊れそうなタイプの曲だが、そこは石毛がそんな単純な曲を作るわけがなく、めまぐるしく曲が展開していく。サポートで入ったばかりだというのにもはや曲を引っ張っているようにすら感じる福田洋子はさすがである。
「新曲ではないけど、東京で初めてやる曲」
と言って演奏されたのは「Our Dawn」。確かにフェスなどでは演奏されていなかっただけにライブで聴くのは初めてだが、江夏が時に歌いつつ奏でるキーボードの音に合わせて
「ゆらめいて たなびいて 僕たちの夜が明ける」
と歌われるフレーズは、今年始まったばかりのこのバンドの夜明けそのもののように新鮮さを持って響く。
するとステージが暗くなり、石毛以外の3人がステージからいなくなる。1人残った石毛はPCを操作しながらギターを弾き、実験的なソロのようなアブストラクトな音を構築していく。そのうちに加工された江夏のボーカルフレーズが流れ出し、「Kiss」をその場でセルフリミックスしているという、lovefilmのポップさの裏側の石毛のマニアックな音楽探究家っぷりが垣間見える。なかなかワンマン以外ではやる機会がないだろうが、普段からこうして曲を解体・再構築して音と遊んでいるんだろうかと想像してしまう。
メンバーがステージに戻ると、まだタイトルもない新曲を連発。まずは石毛ボーカルの浮遊感のあるダンサブルな曲で、石毛の師匠であるナカコーのやっていたスーパーカーの「Futurama」期あたりを彷彿とさせる。
続いては江夏がメインボーカルのミドルテンポのラブソング。基本的にtelephones時代から石毛の書くラブソングは愛の対象が音楽であるかのように聴こえる曲ばかりだったが、江夏が歌うことによって、石毛の書く曲でも特定の人に向けたラブソングに聴こえてくる。それはやはりtelephonesとは違って全日本語という要素も間違いなくあるだろうけど。
続く新曲は夏フェスでもやっていた、
「愛した人も別れた人も 遠く夢の中」
と江夏が歌う喪失感を強く感じるバラード。こうした喪失感は他のlovefilmの曲でも感じる大きな要素だが、telephones時代にも「Re:Life」などそういったタイプの曲はあった。しかしやはりtelephonesのイメージや石毛のハイトーンな声からはその要素をそこまで強く感じることはできなかったため、江夏のボーカルが石毛の本来持っているそうした要素を引き出していると言える。
するとここでツアーの思い出振り返りコーナー(ノブがひたすら大阪からの帰りの渋滞が凄かったと話すが、食いつきはイマイチ)など、珍しく長々と喋り出すが、
「ただ単に曲が足りないから、ワンマンに来てもらった感を感じてもらうためにたくさん喋ってる(笑)」
と石毛がぶっちゃける。ついには観客からの質問コーナーまで取り入れるのだが、手を挙げたら他に誰も手を挙げておらずに自分が指名されてしまい、
「たくさん夏フェスに出てましたが、印象に残ったところは?」
と質問したら、江夏が
「ロッキン!地元だったから出れて嬉しかった!
あとモンバスで食べたうどんがめちゃくちゃ美味しかった!」
と素直に回答していただいた。石毛とノブが話している時に後ろを向いて咳をしていたのが心配なところでもあったが。
「モンバスはケータリングが日本一美味しいフェス」
とさすがにtelephones時代からあらゆるフェスに出まくってた石毛もモンバスのうどんに太鼓判を押す。
そんなゆる~いやり取りの後もさらなる新曲が。石毛のノイジーなギターサウンドに包まれる、シューゲイズ要素の強い曲だが、タメにタメたサビでいきなりクラシックロックのような壮大な2人のボーカルが響き渡る。予期せぬ展開を見せた曲だけに、この日演奏された新曲群の中で1番インパクトが強い曲だった。
そしてその新曲から連なるように、タイトル通りに神聖なメロディと石毛のノイジーなギターが会場を包む「Holy Wonder」から、これまでのライブでも毎回最後に演奏されてきた「Hours」で、「曲が足りない」という石毛の言葉を裏付けるようにあっという間に終了。まだアルバム1枚、10曲しか持ち曲がないので、その状況からしたら新曲を5曲もやったことにより、予想よりはるかに長い内容だったが。
しかしアンコールで再びメンバーが登場すると、全員ツアーグッズを身にまとっている。江夏は自身がデザインした白いTシャツにニットキャップ、福田は黒いTシャツ、石毛は黒いロゴTシャツにバンダナ、ノブはパーカーにバンダナという出で立ちだが、ノブはバンダナの巻き方が家庭科の料理実習のようになっており、ギャングっぽい巻き方の石毛とは対照的。このようにいろんな巻き方ができるし、弁当包みにもなり、バンダナには様々な用途があるということ。
そして急にもかかわらずサポートを引き受けてバンドを救ってくれた福田洋子への感謝を石毛が口にして暖かい拍手に包まれると、
「これから新曲もレコーディングしたいし。良い曲を作って、良いライブをやるっていう当たり前のことを、誰よりもカッコよくやっていきたい。今日は本当にありがとう!」
と石毛が自身の音楽観(それはtelephones時代から一貫して全くブレることのない)を改めて口にしてから演奏されたのは「Kiss」。
「もう1度抱き合っていたい
君だけを見ていたいさ
もう2度と叶わない」
という歌詞は、前述の喪失感を他のどの曲よりも強く感じさせる。とりわけこの日はツアーファイナル、そこで鳴らされる最後の曲ということもあり、メンバーの演奏と2人の歌声はより一層エモーショナルさを湛えていた。
曲が終わると、ツアーファイナルということで、telephonesのワンマンでもおなじみだった、観客を背景にしての写真撮影。江夏はこうして写真を撮るのも初めての経験とのこと。きっとこれから、数え切れないくらいにこうして写真を撮るようになる。この日石毛が発案した「love!」「film!」という掛け声がそれまで続いているかどうかはわからないけど。
初ライブの時に自分は「lovefilmは江夏詩織の成長にかかっている」と書いたが、フェスやイベントなどへの出演を重ねたことにより、江夏はこれまでの初々しさよりも感情を強く出していた。それにより彼女がバンドマンらしくなり、lovefilm自体のバンド感もさらに増した。わずか半年ですっかり頼もしくなった江夏は、凄腕メンバーたちに囲まれてこれからどうさらに成長していくのだろうか。
この日、ワンマンをやるにしては曲が足りないのは分かりきっていた。だから来ていた人の中にはもしかしたらtelephonesの曲をやるかも?と思っていた人もいるかもしれない。しかしバンドはそれを新曲を5曲やるという方法で乗り越えた。それで良かった。telephonesはあの4人のバンドだし、lovefilmはこの3人(と福田洋子)のバンドだから。
でもソロでだって全然活動できる石毛がひたすらにバンドであることにこだわっているだけに、ドラマーがずっとサポートのままというのも考えにくい。(福田洋子は頼まれればずっとやるだろうけど)果たして新曲とともに今後の編成がどうなるのかというところにも期待である。
しかし石毛はこの日、
「lovefilmのライブが良かったら、友達とかに良かったよ、って伝えてください」
と言っていた。もしかしたら、良い音楽を作っているのにtelephonesのように一気に広がっていかないことにジレンマを感じているのかもしれない。でもそれは仕方ない。lovefilmの音楽はtelephonesのようにみんなで楽しく盛り上がれるというものではないから。だから今のフェスシーンで何万人もの人が一斉に踊るようにはならないかもしれない。だがじっくり聴けば曲そのもののメロディの良さと、青春性溢れるロマンチックな歌詞の良さがよくわかる。それこそが石毛がこのバンドによって最も知らしめたいことなのかもしれない。何よりも石毛の作り出す音楽を信じている自分のような人間にとっては、こうしてライブに行って、どう良かったかを少しでも綴るしかない。だから今年もまだ何本かライブを見に行くし、来年以降もずっと見に行って、こうしてライブのことを書き続けるしかない。
何よりも、telephonesの初ライブも初ワンマンも見れていないだけに、こうしてlovefilmの初ライブと初ワンマンのファイナルを見れているということにこの上ない喜びを感じている。
1.Vomit
2.Alien
3.Honey Bee
4.Don't Cry
5.Goodbye,Goodnight
6.新曲
7.Our Dawn
8.Kiss (Ishige remix)
9.新曲
10.新曲
11.新曲
12.新曲
13.Holy Wonder
14.Hours
encore
15.Kiss
Kiss
https://youtu.be/YsopBGIO2Bg
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