[Alexandros] Tour 2016~2017 ~We Come In Peace~ @横浜アリーナ 11/16
- 2016/11/17
- 01:44
もはや日本を代表するバンドになったと言っていいだろう。リリースするシングルはどれも大ヒット、昨年にはアルバム「ALXD」を引っさげて幕張メッセワンマンすらもソールドアウトさせた[Alexandros]が今月早くもニューアルバム「EXIST!」をリリース。しかもバンド初のオリコン1位を獲得するという、過去最高の結果を収めた。
そのアルバム「EXIST!」のリリースツアーが早くも開幕。すでにファンクラブ限定ライブはあったとはいえ、通常のツアーとしては初日となるのが、バンドの地元と言っていい横浜アリーナでのワンマン。すでに幕張メッセでやっているだけに会場が大きいとは感じない存在になっているのがまた恐ろしいところ。
会場はアリーナにも椅子が設置された全席指定方式で、ステージには紗幕がかけられていて、始まる前のステージの様子を知ることはできない。しかしながら横浜アリーナの端から上までを人が埋め尽くしている様は壮観である。
19時を10分ほど過ぎた頃だろうか、会場が暗転すると紗幕に人類が月面に向かう映像が映し出されるとともに、メンバーのクレジットとサポートキーボーディストのROSE、さらにはストリングス隊のクレジットまでも映し出され、大きな歓声が上がる中、壮大なSEに合わせてメンバーがステージに登場するシルエットが紗幕越しに見える。おなじみのSE「Burger Queen」ではないのが新鮮だが、この冒頭の映像で最初に演奏される曲が「EXIST!」のオープニングナンバーである「ムーンソング」であることがわかる。実際、空からの視点であるかのような美しい夜景が映し出される中で演奏がスタートすると、途中で紗幕が落ちて演奏するメンバーの姿があらわになる。
すると髪を編み込んだ新しいスタイルになり、さらに何かを達観した、悟りの境地に達したかのような庄村聡泰(ドラム)の力強いドラムの連打が引っ張る「Burger Queen」からまるでここからライブが始まるかのような雰囲気に。そのまま「For Freedom」と初期のキラーチューンでステージも客席も早くもトップギアに。おそらく客席が椅子席ではなくてスタンディングだったならこの時点でダイバーが発生していたであろう。曲終盤では磯部(ベース)が
「行くぞ横浜ー!」
と叫んで激しいアウトロに突入していく。
すると川上がギターを下ろしてハンドマイクになり、ヒップホップのように英語の歌詞が次々に乱射されていく、「EXIST!」の中でもひときわ目立つ「Kaiju」へ。最初にアルバムのトラックリストを見た時は「なんだこのタイトル?」と思ったが、次々に放たれていく歌詞が映し出される映像に続いてまるでミニチュアのような街並みが映し出される様は、まさに怪獣がこれから踏み潰していく景色であるかのようで、「Monster」ではなくて「Kaiju」というタイトルになったのも非常に納得がいくところ。
序盤からそんな自由っぷりを見せているだけに川上のボーカルは序盤から美しい伸びと鋭さを完備しており、迫力満点のサウンドと日本語によりサビ前のカウントダウンが迫ってくる「Claw」、不穏なデジタルサウンドから始まり、客席を揺らしまくった(会場の耐震構造は大丈夫か?と心配になるほど)「Girl A」とタイプは全く違う曲であっても少しも揺らぐことはない。
再び川上がハンドマイクになる「Kick&Spin」では左右に伸びる花道に川上が歩いて行きながら歌うと、下手の花道に磯部も追随して、最後には肩を組みながら歌う。こういうシーンがロックバンドのロマンとカッコよさをこのバンドから感じさせてくれる。
すると一転してROSEのピアノと川上の歌だけでも成り立ちそうなバラード「O2」へ。しかしCDでは断片的に入ってくるだけだったメンバーの演奏がほぼフルに渡って演奏されており、やはりこの4人で演奏されてこそ[Alexandros]の曲であるということを強く実感させてくれるとともに、バラードタイプであってもライブでより生きる曲であることを証明している。ちなみに宇宙船の中で途中から酸素がなくなって無重力状態のようになる映像も実に示唆的で、「ムーンソング」の映像との関連性も感じさせる。
そんな落ち着いた雰囲気から、「EXIST!」を象徴する洗練された、スタイリッシュな雰囲気の「Aoyama」、CM曲として大量オンエアされている「Feel Like」へ。疾走感というよりかは曲のテンポに合わせて軽やかに歩き出したくなるような、世界的にポップミュージックのスタンダードになりつつあるブラックミュージックの要素も取り入れた曲であるが、そうした音楽を中心にしたバンドの曲よりもこのバンドのこの曲たちが圧倒的に名曲に聴こえてくるのは、そうした要素を取り入れながらもこれまでのバンドの武器であるメロディと川上のボーカルという軸さえ変わらなければ必ず[Alexandros]の曲になるという芯の部分をメンバー全員が共有しているから。くるりの最新シングル「琥珀色の街、上海蟹の朝」とは同じようにブラックミュージックのエッセンスを取り入れながらも曲の構造や曲作りの手法は全く違うと思われるが、どちらもバンドの持つ、ここまでシーンの最前線を走ってきた地力を感じさせてくれる。
ちょうど中盤の転換ポイントであるかのように演奏されたインスト曲「tokyo2pm36floor」では最後にもうどうリズムに乗ればいいのかわからなくなるくらいにキメを連発し、前作アルバム「ALXD」に曲の断片が収録され、「EXIST!」でついに待望のフルバージョン収録となった「Buzz Off!」からは獰猛なバンドサウンドに回帰。爆発するようなテンションの「Rocknrolla!」ではまるでメンバーの気合いそのもののようにステージに火柱が上がり、川上は半ば無理矢理に歌詞に「山下公園」とご当地ネタを入れると、
「白井が反応しない」
バージョンの「Cat2」では普段全くMCをしないギターの白井が、
「横浜ー!地元だー!相模原だけど地元みたいなもんだ!そしてここは俺が初めてライブを見にきたライブハウスだ!その時に見たバンドのギターをこれから弾く!」
とテンション上がりっぱなしで叫ぶと、METALLICA「Master of Puppets」のギターをソロにして演奏。この演出はこれまでにも何度もライブでやってはいるが、こうして実際に見ると白井眞輝というギタリストの凄まじさを実感する。時には美しいアルペジオで川上のメロディを引き立てながら、時にはメタル少年そのものの弾きまくりなギターを炸裂させてバンドの勢いを増していく。基本的に普段のライブではほとんど喋ることはないが、それでもこのギターさえあればやはりこの男はこの巨大な存在のバンドのスタープレイヤーでいられる。
そしてバンドの地元と言ってもいいこの場所でこの曲が聴けるのが実に嬉しい「city」から、
「ここはどこですか?私は誰ですか?とcityで歌うほど気持ちいいことはない」
というフレーズ(日本語対訳)が歌詞に入っている、自虐にも似たディス的な歌詞が並ぶ「クソッタレな貴様らへ」と一気に走り抜けていき、曲終わりでは特効が炸裂するという、「え?ここで?」と思ってしまう金の使い方。
ここまでの流れはMC全くなしのノンストップで、メンバーが軽く水分補給する以外(この辺りのタイミングで川上と磯部は乾杯していた)には全く合間が空くことはなく、凄まじく速いペースでライブが展開されていた。それはバンドが曲のアウトロと次の曲のイントロをつなげるというライブならではのアレンジを見せていたからでもあるが。
そんな中でこの日最初にして唯一と言ってもいいくらいのMCでは川上が自身と白井、サトヤスの3人が神奈川県出身であるためにずっとこの会場でライブをやりたかったということを語り、「神奈川県に住んでたことはある」という愛知県出身の磯部に「テレビ神奈川のキャラクターわかる?」と意地悪な質問を出す。当然磯部は答えられるわけもなく。
そんな微笑ましくもありちょっと微妙な空気になる中、「12/26以降の年末ソング」や「涙がこぼれそう」につらなるバラード曲であり、全日本語歌詞ということで「EXIST!」の中で最も洋楽性が希薄な曲である「今まで君が泣いた分取り戻そう」ではオープニングでクレジットされていたストリングス隊も登場し、生の弦サウンドで曲をさらに壮大に響かせる。
「我々はライブはライブ、音源は音源と思ってやっているので、ライブで聴く時は全然違う曲と思ってもらいたい」
と川上が言うと、その言葉通りにハイブリッドなダンスロックに変貌した「Swan」、「Run Away」をこのライブだからこそのアレンジで演奏してやはり観客を飛び跳ねさせまくり、銀テープまで射出。
そして最後に再びストリングス隊を招いて演奏されたのは、アルバムの最後に収録されていた「NEW WALL」。MVからもバンドの前に次々に立ちはだかる壁を自らの音でもってぶち壊していく、という曲であるが、この日の映像によってまるでこの曲が3人の若者による青春群像劇の主題歌のように響いていた。というか、この日の各曲の映像はどれもそのまま曲のMVに使われてもおかしくないほどの完成度の高さであり、制作したスタッフには大きな拍手を送りたいし、実際に本編終了後の拍手の大きさはメンバーだけでなくこのライブを作り上げた人全員を讃えているようであった。
アンコールではなかなかメンバーがステージに現れない中、客席後方から悲鳴のような声が聞こえてくる。1階スタンド席後方の扉からメンバーが登場し、そのままセンター席とスタンド席の間に作られたサブステージにメンバーが揃ったのである。
メインステージよりもはるかに近くで観客の歓声を浴びながら、白井と磯部はエレキではあるものの、川上がアコギ、サトヤスも普段よりははるかにシンプルなドラムセットでまるでアンプラグドのような編成で演奏されたのは、もはやバンド最大の代表曲と言える存在になった「ワタリドリ」。普段の編成の壮大さ、飛翔感に比べるとやや地に足のついた、どっしりとしたアレンジと言えるが、曲冒頭から観客全員に一緒に歌ってくれと言ってたからか、
「大それた五重奏を奏で終える日まで」
と、メンバー4人の「四重奏」に観客の声を加えて「五重奏」にすることによって、今ここにいる人全てがこのライブを作っているという気分にさせてくれる。磯部も歌詞を変えて歌った川上に曲終わりで親指を立てて「よくやった!」と言わんばかりに讃える。
しかしながらサブステージでもスピーカーはメインステージにあるため、ステージで演奏している音と客席に聴こえる音に時差が生じていることを磯部が身をもって体験させると、もう1曲このステージで演奏されたのは久々の「Forever Young」。ROSEも参加しない本当に4人だけのシンプル極まりないサウンド。バンドごく初期からあるというこの曲だからこそ、この形態での演奏がよく似合う。
「もう1曲だけやってもいいですか!あんまりファンじゃない早く終わって欲しい人も、次の曲で虜にしてみせます!」
と「虜」というワードが出てきたので「Dracula La」かと思いきや、
「最後に爽やかな曲をやります!」
とその後に言ったので、「Don't Fuck~」であることが予想できる。メインステージに戻っての演奏となるため、ROSEとストリングス隊が壮大かつ爽やかなサウンドで間を繋げる中、メンバーは客席にある通路を歩いてメインステージへ。当然観客が押し寄せてもみくちゃ状態になるわけだが、川上らがハイタッチしながらステージに戻るのに対して全く意に介さずステージに向かうサトヤスのクールさが実に面白い。
やはり最後に演奏されたのは、爽やかなのはイントロの数十秒だけである「Don't Fuck~」なのだが、その爽やかなイントロ部分とアウトロ部分だけでストリングス隊を使うという無駄に豪華過ぎるアレンジでの熱い演奏を終えると、メンバーが次々にステージを去る中、川上がエフェクターボードを操作し、いつもの退場SEである「Burger Queen」のアウトロのアナウンス部分が何倍速にもなって流れた。
これで終わりかと思いきや、まだ客電は点かず。しかし始まったのはバンドの演奏ではなく、公開されたばかりの「Kaiju」のMV。この日使われた映像とは異なり、江戸時代の賭場のような雰囲気の中で踊り子とともに演奏するメンバーの姿が面白いが、本編後の川上のNGのような場面には会場中の女子から「可愛い~」という声が漏れるという実に珍しいライブの締め方であった。
「EXIST!」は「スタイリッシュな、洗練されたアルバム」というイメージで、「Aoyama」~「Feel Like」など実際にその一面を強く見せる場面もあったが、その部分と本来のこのバンドの持ち味であるロックバンドとしての獰猛さが完璧に両立していた。それをアリーナ規模で出来るバンドを[Alexandros]以外に知らない。本当にとんでもないバンドだ。しかもこれでツアー初日。これまでのキラーチューンであった「Dracula La」すらもやっていないのにこの満足度。ファイナルの幕張メッセ2daysまでにどこまで進化を果たしてしまうんだろうか。
1.ムーンソング
2.Burger Queen
3.For Freedom
4.Kaiju
5.Claw
6.Girl A
7.Kick&Spin
8.O2
9.Aoyama
10.Feel Like
11.tokyo2pm36floor
12.Buzz Off!
13.Rocknrolla!
14.Cat2
15.city
16.クソッタレな貴様らへ
17.今まで君が泣いた分取り戻そう
18.Swan
19.Run Away
20.NEW WALL
encore
21.ワタリドリ
22.Forever Young
23.Don't Fuck With Yoohei Kawakami
Kaiju
https://youtu.be/ld7ynrmsW1U
Next→ 11/23 lovefilm @代官山UNIT
そのアルバム「EXIST!」のリリースツアーが早くも開幕。すでにファンクラブ限定ライブはあったとはいえ、通常のツアーとしては初日となるのが、バンドの地元と言っていい横浜アリーナでのワンマン。すでに幕張メッセでやっているだけに会場が大きいとは感じない存在になっているのがまた恐ろしいところ。
会場はアリーナにも椅子が設置された全席指定方式で、ステージには紗幕がかけられていて、始まる前のステージの様子を知ることはできない。しかしながら横浜アリーナの端から上までを人が埋め尽くしている様は壮観である。
19時を10分ほど過ぎた頃だろうか、会場が暗転すると紗幕に人類が月面に向かう映像が映し出されるとともに、メンバーのクレジットとサポートキーボーディストのROSE、さらにはストリングス隊のクレジットまでも映し出され、大きな歓声が上がる中、壮大なSEに合わせてメンバーがステージに登場するシルエットが紗幕越しに見える。おなじみのSE「Burger Queen」ではないのが新鮮だが、この冒頭の映像で最初に演奏される曲が「EXIST!」のオープニングナンバーである「ムーンソング」であることがわかる。実際、空からの視点であるかのような美しい夜景が映し出される中で演奏がスタートすると、途中で紗幕が落ちて演奏するメンバーの姿があらわになる。
すると髪を編み込んだ新しいスタイルになり、さらに何かを達観した、悟りの境地に達したかのような庄村聡泰(ドラム)の力強いドラムの連打が引っ張る「Burger Queen」からまるでここからライブが始まるかのような雰囲気に。そのまま「For Freedom」と初期のキラーチューンでステージも客席も早くもトップギアに。おそらく客席が椅子席ではなくてスタンディングだったならこの時点でダイバーが発生していたであろう。曲終盤では磯部(ベース)が
「行くぞ横浜ー!」
と叫んで激しいアウトロに突入していく。
すると川上がギターを下ろしてハンドマイクになり、ヒップホップのように英語の歌詞が次々に乱射されていく、「EXIST!」の中でもひときわ目立つ「Kaiju」へ。最初にアルバムのトラックリストを見た時は「なんだこのタイトル?」と思ったが、次々に放たれていく歌詞が映し出される映像に続いてまるでミニチュアのような街並みが映し出される様は、まさに怪獣がこれから踏み潰していく景色であるかのようで、「Monster」ではなくて「Kaiju」というタイトルになったのも非常に納得がいくところ。
序盤からそんな自由っぷりを見せているだけに川上のボーカルは序盤から美しい伸びと鋭さを完備しており、迫力満点のサウンドと日本語によりサビ前のカウントダウンが迫ってくる「Claw」、不穏なデジタルサウンドから始まり、客席を揺らしまくった(会場の耐震構造は大丈夫か?と心配になるほど)「Girl A」とタイプは全く違う曲であっても少しも揺らぐことはない。
再び川上がハンドマイクになる「Kick&Spin」では左右に伸びる花道に川上が歩いて行きながら歌うと、下手の花道に磯部も追随して、最後には肩を組みながら歌う。こういうシーンがロックバンドのロマンとカッコよさをこのバンドから感じさせてくれる。
すると一転してROSEのピアノと川上の歌だけでも成り立ちそうなバラード「O2」へ。しかしCDでは断片的に入ってくるだけだったメンバーの演奏がほぼフルに渡って演奏されており、やはりこの4人で演奏されてこそ[Alexandros]の曲であるということを強く実感させてくれるとともに、バラードタイプであってもライブでより生きる曲であることを証明している。ちなみに宇宙船の中で途中から酸素がなくなって無重力状態のようになる映像も実に示唆的で、「ムーンソング」の映像との関連性も感じさせる。
そんな落ち着いた雰囲気から、「EXIST!」を象徴する洗練された、スタイリッシュな雰囲気の「Aoyama」、CM曲として大量オンエアされている「Feel Like」へ。疾走感というよりかは曲のテンポに合わせて軽やかに歩き出したくなるような、世界的にポップミュージックのスタンダードになりつつあるブラックミュージックの要素も取り入れた曲であるが、そうした音楽を中心にしたバンドの曲よりもこのバンドのこの曲たちが圧倒的に名曲に聴こえてくるのは、そうした要素を取り入れながらもこれまでのバンドの武器であるメロディと川上のボーカルという軸さえ変わらなければ必ず[Alexandros]の曲になるという芯の部分をメンバー全員が共有しているから。くるりの最新シングル「琥珀色の街、上海蟹の朝」とは同じようにブラックミュージックのエッセンスを取り入れながらも曲の構造や曲作りの手法は全く違うと思われるが、どちらもバンドの持つ、ここまでシーンの最前線を走ってきた地力を感じさせてくれる。
ちょうど中盤の転換ポイントであるかのように演奏されたインスト曲「tokyo2pm36floor」では最後にもうどうリズムに乗ればいいのかわからなくなるくらいにキメを連発し、前作アルバム「ALXD」に曲の断片が収録され、「EXIST!」でついに待望のフルバージョン収録となった「Buzz Off!」からは獰猛なバンドサウンドに回帰。爆発するようなテンションの「Rocknrolla!」ではまるでメンバーの気合いそのもののようにステージに火柱が上がり、川上は半ば無理矢理に歌詞に「山下公園」とご当地ネタを入れると、
「白井が反応しない」
バージョンの「Cat2」では普段全くMCをしないギターの白井が、
「横浜ー!地元だー!相模原だけど地元みたいなもんだ!そしてここは俺が初めてライブを見にきたライブハウスだ!その時に見たバンドのギターをこれから弾く!」
とテンション上がりっぱなしで叫ぶと、METALLICA「Master of Puppets」のギターをソロにして演奏。この演出はこれまでにも何度もライブでやってはいるが、こうして実際に見ると白井眞輝というギタリストの凄まじさを実感する。時には美しいアルペジオで川上のメロディを引き立てながら、時にはメタル少年そのものの弾きまくりなギターを炸裂させてバンドの勢いを増していく。基本的に普段のライブではほとんど喋ることはないが、それでもこのギターさえあればやはりこの男はこの巨大な存在のバンドのスタープレイヤーでいられる。
そしてバンドの地元と言ってもいいこの場所でこの曲が聴けるのが実に嬉しい「city」から、
「ここはどこですか?私は誰ですか?とcityで歌うほど気持ちいいことはない」
というフレーズ(日本語対訳)が歌詞に入っている、自虐にも似たディス的な歌詞が並ぶ「クソッタレな貴様らへ」と一気に走り抜けていき、曲終わりでは特効が炸裂するという、「え?ここで?」と思ってしまう金の使い方。
ここまでの流れはMC全くなしのノンストップで、メンバーが軽く水分補給する以外(この辺りのタイミングで川上と磯部は乾杯していた)には全く合間が空くことはなく、凄まじく速いペースでライブが展開されていた。それはバンドが曲のアウトロと次の曲のイントロをつなげるというライブならではのアレンジを見せていたからでもあるが。
そんな中でこの日最初にして唯一と言ってもいいくらいのMCでは川上が自身と白井、サトヤスの3人が神奈川県出身であるためにずっとこの会場でライブをやりたかったということを語り、「神奈川県に住んでたことはある」という愛知県出身の磯部に「テレビ神奈川のキャラクターわかる?」と意地悪な質問を出す。当然磯部は答えられるわけもなく。
そんな微笑ましくもありちょっと微妙な空気になる中、「12/26以降の年末ソング」や「涙がこぼれそう」につらなるバラード曲であり、全日本語歌詞ということで「EXIST!」の中で最も洋楽性が希薄な曲である「今まで君が泣いた分取り戻そう」ではオープニングでクレジットされていたストリングス隊も登場し、生の弦サウンドで曲をさらに壮大に響かせる。
「我々はライブはライブ、音源は音源と思ってやっているので、ライブで聴く時は全然違う曲と思ってもらいたい」
と川上が言うと、その言葉通りにハイブリッドなダンスロックに変貌した「Swan」、「Run Away」をこのライブだからこそのアレンジで演奏してやはり観客を飛び跳ねさせまくり、銀テープまで射出。
そして最後に再びストリングス隊を招いて演奏されたのは、アルバムの最後に収録されていた「NEW WALL」。MVからもバンドの前に次々に立ちはだかる壁を自らの音でもってぶち壊していく、という曲であるが、この日の映像によってまるでこの曲が3人の若者による青春群像劇の主題歌のように響いていた。というか、この日の各曲の映像はどれもそのまま曲のMVに使われてもおかしくないほどの完成度の高さであり、制作したスタッフには大きな拍手を送りたいし、実際に本編終了後の拍手の大きさはメンバーだけでなくこのライブを作り上げた人全員を讃えているようであった。
アンコールではなかなかメンバーがステージに現れない中、客席後方から悲鳴のような声が聞こえてくる。1階スタンド席後方の扉からメンバーが登場し、そのままセンター席とスタンド席の間に作られたサブステージにメンバーが揃ったのである。
メインステージよりもはるかに近くで観客の歓声を浴びながら、白井と磯部はエレキではあるものの、川上がアコギ、サトヤスも普段よりははるかにシンプルなドラムセットでまるでアンプラグドのような編成で演奏されたのは、もはやバンド最大の代表曲と言える存在になった「ワタリドリ」。普段の編成の壮大さ、飛翔感に比べるとやや地に足のついた、どっしりとしたアレンジと言えるが、曲冒頭から観客全員に一緒に歌ってくれと言ってたからか、
「大それた五重奏を奏で終える日まで」
と、メンバー4人の「四重奏」に観客の声を加えて「五重奏」にすることによって、今ここにいる人全てがこのライブを作っているという気分にさせてくれる。磯部も歌詞を変えて歌った川上に曲終わりで親指を立てて「よくやった!」と言わんばかりに讃える。
しかしながらサブステージでもスピーカーはメインステージにあるため、ステージで演奏している音と客席に聴こえる音に時差が生じていることを磯部が身をもって体験させると、もう1曲このステージで演奏されたのは久々の「Forever Young」。ROSEも参加しない本当に4人だけのシンプル極まりないサウンド。バンドごく初期からあるというこの曲だからこそ、この形態での演奏がよく似合う。
「もう1曲だけやってもいいですか!あんまりファンじゃない早く終わって欲しい人も、次の曲で虜にしてみせます!」
と「虜」というワードが出てきたので「Dracula La」かと思いきや、
「最後に爽やかな曲をやります!」
とその後に言ったので、「Don't Fuck~」であることが予想できる。メインステージに戻っての演奏となるため、ROSEとストリングス隊が壮大かつ爽やかなサウンドで間を繋げる中、メンバーは客席にある通路を歩いてメインステージへ。当然観客が押し寄せてもみくちゃ状態になるわけだが、川上らがハイタッチしながらステージに戻るのに対して全く意に介さずステージに向かうサトヤスのクールさが実に面白い。
やはり最後に演奏されたのは、爽やかなのはイントロの数十秒だけである「Don't Fuck~」なのだが、その爽やかなイントロ部分とアウトロ部分だけでストリングス隊を使うという無駄に豪華過ぎるアレンジでの熱い演奏を終えると、メンバーが次々にステージを去る中、川上がエフェクターボードを操作し、いつもの退場SEである「Burger Queen」のアウトロのアナウンス部分が何倍速にもなって流れた。
これで終わりかと思いきや、まだ客電は点かず。しかし始まったのはバンドの演奏ではなく、公開されたばかりの「Kaiju」のMV。この日使われた映像とは異なり、江戸時代の賭場のような雰囲気の中で踊り子とともに演奏するメンバーの姿が面白いが、本編後の川上のNGのような場面には会場中の女子から「可愛い~」という声が漏れるという実に珍しいライブの締め方であった。
「EXIST!」は「スタイリッシュな、洗練されたアルバム」というイメージで、「Aoyama」~「Feel Like」など実際にその一面を強く見せる場面もあったが、その部分と本来のこのバンドの持ち味であるロックバンドとしての獰猛さが完璧に両立していた。それをアリーナ規模で出来るバンドを[Alexandros]以外に知らない。本当にとんでもないバンドだ。しかもこれでツアー初日。これまでのキラーチューンであった「Dracula La」すらもやっていないのにこの満足度。ファイナルの幕張メッセ2daysまでにどこまで進化を果たしてしまうんだろうか。
1.ムーンソング
2.Burger Queen
3.For Freedom
4.Kaiju
5.Claw
6.Girl A
7.Kick&Spin
8.O2
9.Aoyama
10.Feel Like
11.tokyo2pm36floor
12.Buzz Off!
13.Rocknrolla!
14.Cat2
15.city
16.クソッタレな貴様らへ
17.今まで君が泣いた分取り戻そう
18.Swan
19.Run Away
20.NEW WALL
encore
21.ワタリドリ
22.Forever Young
23.Don't Fuck With Yoohei Kawakami
Kaiju
https://youtu.be/ld7ynrmsW1U
Next→ 11/23 lovefilm @代官山UNIT

lovefilm ~lovefilm 1st tour ”lovefilm”~ @代官山UNIT 11/23 ホーム
BOOM BOOM SATELLITES MICHIYUKI KAWASHIMA FAREWELL EVENT @新木場STUDIO COAST 11/15