Galileo Galilei Last Live ~車輪の軸~ at 日本武道館 10/11
- 2016/10/12
- 20:46
出演者は10代限定の夏フェス「閃光ライオット」の初代優勝者としてシーンに華々しく登場し、メンバーと音楽性を変えながら独自の活動を続けてきたGalileo Galilei。
今年、突然の活動終了宣言をし、ラストアルバム「Sea and The Darkness」のリリースとそのツアーを持って終了かと思いきや、ベストアルバムの発売と、ラストライブを日本武道館で行うことを発表。ツアーが最新作の世界観を構築したものだったので、最後としての集大成感がなかっただけに、これまでの活動にしっかりとケリをつけるであろう、最初で最後の武道館ワンマン。
場内に入ると、ステージは背面に飾り付けこそあるが、いたってシンプルなもので、スクリーンもない。客電も開場中は淡い光のみなので若干薄暗く、何よりも全くBGMがないというのが普段のライブとは全く異なっている。
そんな中、二階席までしっかり埋まった18:30過ぎ、開演を告げるアナウンスが響いたあと、淡い光に包まれていた場内はゆっくりと暗くなった。
近年のライブと同じように、サポートギターとサポートキーボードとともに、尾崎雄貴(ボーカル&ギター)、佐孝仁司(ベース)、尾崎和樹(ドラム)という、最初から最後までGalileo Galileiであり続けた3人がステージに登場。
「Hello」
となぜか英語で一言だけ雄貴が挨拶すると、激しいギターサウンドが鳴り響いて「クライマー」からスタート。
「刹那をくれよ
刹那をくれよ
刹那をくれよ」
という曲後半の雄貴の叫びが今、この瞬間への渇望を強く感じさせる。
「恋の寿命」「嵐のあとで」と時系列的には最新のシングル曲を続けた立ち上がり。ガリレオの最新系は音数を絞れるだけ絞った、UKインディーバンドの影響を強く感じさせるサウンドというイメージが強いが、こうしてシングル曲を続けて聴くと、その要素とともに初期の、アジカンに続くバンドというイメージだった王道ギターロックの要素も強く感じる。雄貴の歌はこの日も凛とした空気を感じさせながらも、広い武道館いっぱいに響いていく。あまりそこを評価される機会は少なかったように思うが、やはり雄貴は歌が本当に上手い。上手いだけじゃなく、この人だから歌える、説得力があると思わせるような声。
客席から歓声が上がったのは「サークルゲーム」。バンド最大の代表曲にして、アニメとの相思相愛なタイアップにより、バンドの存在と楽曲を従来のファンのさらに外まで広げた曲。穏やかな曲調だが、
「曖昧なことも単純なこともみんな花びらのよう」
と歌われるサビでは雄貴の平熱の下に隠された熱い感情がこの広い会場を震わせていく。
さらに「明日へ」「さよならフロンティア」と、バンドがエレクトロの要素を取り入れて、従来のギターロックのさらに先へ進み始めた時期の曲が続くが、音源では強かったそのエレクトロの要素はやや薄く、逆に生のバンドの力強さが増しているのが素晴らしい。その力強さを最もになっているのは和樹のドラムだが、デビュー当初は高校1年生で、演奏は最初から上手かったが完全に子供である見た目だったのが、本当に逞しく成長している。
ここまでの流れでわかる通りに、この日のセトリは徐々に過去の曲にさかのぼっていくという流れだった。雄貴がそのセトリのコンセプトを語ると、呼び込まれたのはかつてはレギュラーサポートメンバーとしてバンドに彩りを与えていた、女性コーラスのChima。(サポート時代はキーボードも弾いていた)
彼女が招かれたということは、演奏されるのは雄貴と彼女のデュエットボーカルによる「青い栞」。「サークルゲーム」と同じアニメのタイアップ曲だが、男女によるデュエット曲ということで「サークルゲーム」よりも青春性が強い。ある意味では世間的にはこの曲のイメージが1番強いバンドなのかもしれない。
基本的にこのバンドはあまりMCをしないし、そもそも喋るのが得意なメンバーもいないが、この日はやはり最後ということもあってか、3人がなんとか少しでも喋ろうとしていた。そんな中で和樹は
「リハやった時は1番上のスタンド席は飾りで、人が入らないと思ってた(笑)斜面が急すぎるから(笑)」
と天然ぶりを発揮して和ませる。
徐々に過去にタイムスリップしていくセトリはついに最初期、アルバムで言うと「パレード」のパートへ。「青い栞」までにあったエレクトロの要素は消え、ストレートなギターロックが続いていくが、そのパートの1曲目である「僕から君へ」を筆頭に、やはり青春性を強く感じるのは、この時期はメンバーが青春の真っ只中にいたからだろうか。(和樹はこの時期はまだ高校生だった)
しかし実に久しぶりにライブで披露される「四つ葉探しの旅人」では雄貴がイントロの入りのギターをミスってやり直すというハプニングに。これはあまりに久しぶりすぎる曲だからだろうか。
続く「夏空」は高校野球アニメのタイアップ曲だっただけあって、バンドの中で随一の爽やかな曲だが、
「好きだった歌が響かなくなったな」
という歌詞もあるが、出会ってからこの日に至るまで、このバンドの好きな曲が響かなくなったことは1度もない。いつだって好きな曲のまま。それはこれから先もずっと変わらないだろう。
佐孝と雄貴が「四つ葉探し~はもう5年ぶりくらいにやった」と思い出を語り始めると、当時はまだ和樹が高校生であったため、夏休み期間を使ってツアーを廻り、機材車で移動している時に和樹は夏休みの宿題をやっていたというエピソードを懐かしそうに話す。今まではこうしたことを話すことはほとんどなかった。それだけに、これで最後というのが否が応でもわかってしまう。
曲はさらに過去へと遡り、メジャーデビュー曲となった「ハマナスの花」へ。今聴くとロック色の強い重い演奏に驚かされるが、
「あの花の色は決して忘れないから」
という(ここでのあの花はハマナスの花のことだが)、まるでそれ以降の活動と幸福なタイアップを予見していたかのようなフレーズがこの時点で歌われている。
リリースツアー以来この曲を全くライブではやっていなかったこと、この曲のMVでも使用しているギターを閃光ライオットの優勝賞金で買ったことを語ると、そのギターを使って演奏された、タイムスリップの終着地というような曲は、閃光ライオット出場時に衝撃を与えた「管制塔」。この曲をすでに10代の時に作っていた、当時はほとんどメジャーシーンにはいなかった10代のバンドのレベルの高さを証明した曲であるが、
「声が変わって背が伸びて自分が大人になっていくのを感じていた」
と子供から大人に変わっていくことへのリアルな葛藤が歌われたこの曲は、この当時じゃないと絶対に作れなかった。そんな、もう大人になった彼らが
「どんな未来でも 受け入れるよ 変わらない僕らのままで」
と自分たちのこれまでの生き方とこれからの生き方を宣言するように歌う。果たしてこの日とここに至るまでの活動は彼らが「望んだ未来」だっただろうか。
タイムスリップはここまでだったが、Galileo Galileiはアルバムのリリースタイミングくらいでしかツアーをやらないし、本人たちも口にしていたように、なかなか過去の曲をライブで演奏しない、常に現在と未来を提示し続けてきたバンドだった。だからこそこの時系列を遡るという最初で最後の総括的なセトリは、これが最後ということを強く感じさせた。
しかしライブはまだ終わりではない。最新アルバムの「鳥と鳥」で時系列を戻すと、
「ここで2人目のゲストを」
と言って白い衣装でステージに現れたのはAimer。当然演奏されるのは彼女が参加した「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」。男女デュエット曲でこそあれど、雄貴の方がキーが高いというなかなかないタイプのデュエットソングだが、その雄貴のハイトーンとAimerの憂いを帯びた声の絡み、そしてサビの後のピアノのフレーズが本当に素晴らしい。これまではライブで演奏される時は雄貴が1人で全パートを歌っていただけに、最後にして本当のこの曲の形をライブで見ることができた。
今でこそ新世代の歌姫的な存在になりつつあるAimerだが、自分が初めてちゃんとその声を聴いたのはこの曲が入ったミニアルバム「See More Glass」がリリースされた時だった。RADWIMPSの野田洋次郎やONE OK ROCKのTakaが曲を提供するはるかに前から、雄貴は彼女の声がロックサウンドに乗ることによって化学反応が起こるということを見抜いていた。その眼力こそがどんなに音楽性が変わっていってもクオリティは全く変わらないというこのバンドの核そのものであったと思う。
普段、アー写なMV、ライブ映像でも顔がちゃんと映らないので、表情が読みにくいAimerも本当に楽しそうな顔で雄貴のことを見ながら歌っていた。そして通常の曲なら曲が終わってから拍手が起こるところが、あまりの素晴らしさにワンコーラス終わるごとに拍手が起こっていた。
そんな特別すぎた瞬間の後は
「ここからはライブの定番曲で締めくくります」
と言って、軽快なエレクトロポップの「老人と海」へ。バンドがエレクトロの要素を取り入れて大進化を果たした「PORTAL」のリリース時から、どんなに音楽性が変わってもライブでやり続けている曲。だからこそここまでに演奏されたどの曲よりも、これまでにいろんな場所で聴いてきたのが脳裏に残っている。当初はまだ5人組で、後に脱退してFOLKSを結成することになるギターの岩井がちょっと持て余し気味だったな、とかいろんなことを思い出す。
一転して重厚なギターサウンドが会場を埋め尽くす「星を落とす」。こちらも常にライブのクライマックスで演奏されてきた曲。フェスに出た時もこの曲で本編を締めくくるという場面が非常に多かった。
「僕には聴こえるんだ すばらしき音楽と涙の落ちる音」
というフレーズの通りに、この日この場所にいた人にはこのバンドの奏でるすばらしい音楽が聴こえていた。
それと同時に背面には無数の星を思わせる照明が。武道館でありながらも演出らしい演出がここまで一切なかった、いつもと変わらないこのバンドのライブだっただけに、この景色はこのライブで最も美しい光景としてこれからも脳内と心に残っていくはず。
そして最後に演奏されたのは「Birthday」。いつの間にかChimaが再び登場していたが、こちらも今までのライブではアンコールなどでよく演奏されていた曲。
「最後なんでみんなで一緒に歌える曲を」
と雄貴は言っていたが、なかなか一緒に歌うのは難しいというか、一体感のある盛り上がり的なライブとははるかに距離のあるライブをするバンドだっただけに、声を出して歌う人はほとんどいなかったと思う。それでも心の中で歌っていた人はたくさんいただろうし、サビに入る瞬間に客電が全部点いて、この日会場が最も明るくなるという武道館の最後の曲ならではの演出をこのバンドも最後に踏襲してみせた。
ラストとはいえ曲数自体はそれほど多くない(というかこのバンドはワンマンでもだいたいいつもこのくらいの曲数だった)が、やはりアンコールに応えてメンバーが再び登場。本編と違うのは、雄貴の立ち位置にギターではなくてキーボードが置かれていること。
その編成で演奏されたのは「PORTAL」の冒頭を飾る「Imaginary Friends」。イントロからエレクトロ要素が強いこの曲が1曲目から流れてきた時は、それまでのギターロックサウンドからかけ離れていただけにかなりびっくりしたが、その時期の曲がこうしてこの最後の場で鳴らされているということは、本人たちとしてもあの作品にかなり手ごたえを感じていたんじゃないかと思う。
そしてラストに演奏されたのは最新アルバムの最後を飾る「Sea and The Darkness II (Totally Black)」。徹底的に削ぎ落とされ、音数が少なくなったサウンドの上に雄貴の凛としていながらもちょっとくぐもったボーカルが乗る。いつの間にかステージに登場していたサックス奏者が音の隙間を埋めるように生のサウンドを発していく。あくまで最新のバンドの曲を最後に見せるというこのバンドのスタイルは変わらなかった。
しかしまだ場内は暗いまま。そしてやるだろうと思ってはいたが、まだやっていない曲もある。そう思っているとやはりメンバーが再びステージに。ここでは雄貴がキーボードからギターに戻っており、この武道館で最後にライブができたことについて語るが、やはり上手く言葉が出てこない。それは感極まっているのではなく、このバンドのMCはいつもこういう感じだった。だから最後の最後までMCは上手くならなかったけど、それが逆に最後まで変わらなかったGalileo Galileiの姿そのものでもあった。
そして演奏されたのは、4月のリキッドルームでのライブで最後に演奏された「ハローグッバイ」。明らかに別れの歌である、切ないギターロック。初期の曲はほとんどライブではやっていなかったバンドであるが、この曲はたまにライブでもやっていた。その時は再開の歌として聴いていたのが、この日はやはり別れの歌としてしか聴こえてこなかった。そしてバンドも
「ハローグッバイ 言えたよ」
と自らの活動に別れを告げるかのように歌った。
しかしそれでもまだ終わらず、Galileo Galileiとして最後にバンドで演奏した曲は、ベストアルバムに収録された最新曲「車輪の軸」。
「武道館のために作った曲」
と雄貴が言ったように、
「キスしてさよならだ 過ぎ去ってく日々に
手を持つ誰かは 君に似ている」
と歌われる歌詞はバンドの活動の終わりを意識して作ったもの以外のなにものでもなかった。
そしてそのサウンドが原点回帰的な軽快なギターロックであるというのも、最後の最後の曲で自分たちのやりたいことではなく、初めてファンが聴きたいであろうガリレオのサウンドの曲を作ったと思わされる。
演奏が終わって、ステージを去る際もメンバーが並んだり、写真撮影をしたり、ピックなどを撒いたりということは全くしなかった。しかしながらメンバーがいなくなった後のステージ背面にはメンバーからの「バイバイ」というメッセージが。直接気持ちを言葉にするのが苦手だったこのバンドらしい終わり方。そのメッセージをしっかりと見せるためか、なかなか客電はつかなかった。
Galileo Galileiの曲は、どんなにサウンドが変わっても一貫したものがあった。それは割と早い時期から、メジャーにいるにもかかわらず大人が介在することなくメンバーだけで秘密基地のようなスタジオを北海道に作り、そこでひたすら実験を繰り返して作っていたことによる手作りのような温かさ。だからどんなに電子音が増えても、その音からは確かな感情を感じたし、どの時期の曲にもバンドとメンバーの意志が宿っていた。だから彼らの曲はこれだけたくさんの人に愛されてきた。
メンバーより若干年上なだけに、Galileo Galileiの曲は自分には青春というものではなかった。でも「青い栞」や「夏空」を聴くと、青春時代に聴いていたかのような、いや、この曲みたいな青春を過ごしてみたかったと思わされた。
だからこそ、音楽性を進化&深化させていくバンドに対して、聴いている側はそうした青春性のある曲を求めてしまう。しかしバンドはもうそこに留まるつもりも戻るつもりもなかった。それこそが彼らが活動終了発表時に発した「おもちゃの車から降りる時がきた」ということなんだろう。
それと同じように、このバンドはあまりバンドの音楽を知らない人には甘く見られていたバンドだと思っている。初期の頃の曲を聴いて、聴かないという選択をした人はきっと彼らの後期の音楽的進化を知らない。むしろ、後期の音楽はそうした若いバンドの音楽を好まない人にこそ聴かれるような音楽だった。だからこそUSのインディーバンドにはこのバンドの音楽に共鳴するバンドも出てきた。だからこれからこのバンドの音楽を知らない人に勧める時は、一曲だけとか一時期の曲だけでなく、いろんな時期のいろんな曲を勧めたいと思う。
そしてこれは何度かこのバンドのライブの時に触れてきたが、Galileo Galileiは初期は特になかなか音源のクオリティをライブが超えないバンドだっただけに、ライブはイマイチと言われることも多々あった。しかし今日の最後のライブは、そう言われていたのが嘘だったかのように素晴らしいライブだった。それだけに、まだまだライブを見たかった。
Galileo Galileiが閃光ライオットから登場した後、多くの10代バンドが出てくるようになった。それぞれ音楽性も全く違うバンドだったが、ガリレオを始めすぐ武道館まで行きそうなバンドばかりだった。でも彼らはここに立てていない。ガリレオだって最後という特殊な機会だからこそここに立てた。でもまだまだ、これからの人生の方が長い。The SALOVERSやTHE☆米騒動などすでにいなくなってしまったバンドも多いが、OKAMOTO'Sやねごとなど、ガリレオと同じ時代を生きてきて今も変わらずに続けているバンドだって、いつかこの場所に立てる時が必ずくる。
その瞬間を楽しみにすると同時にまたガリレオの3人がステージに立つ日が「いつの日か来るんでしょう それを待っているんだ」。
1.クライマー
2.恋の寿命
3.嵐のあとで
4.サークルゲーム
5.明日へ
6.さよならフロンティア
7.青い栞
8.僕から君へ
9.四つ葉探しの旅人
10.夏空
11.ハマナスの花
12.管制塔
13.鳥と鳥
14.バナナフィッシュの浜辺と黒い虹 feat.Aimer
15.老人と海
16.星を落とす
17.Birthday
encore1
18.Imaginary Friends
19.Sea and The Darkness II (Totally Black)
encore2
20.ハローグッバイ
21.車輪の軸
この日の昼、ながらく脳腫瘍と戦い続けてきたBOOM BOOM SATELLITESの川島道行が亡くなったことが発表された。
人はいつか死ぬし、バンドもいつか終わる。それを改めて痛感した日だからこそ、終わりの時が来た時に「もっと見に行けば良かった」って後悔しないように、会いたい人には会いたい時にちゃんと会いに行きたい。少なくともGalileo GalileiとBOOM BOOM SATELLITESに自分は後悔はない。悲しいけど、そこだけは間違いなく幸せだった。
夏空
https://youtu.be/X1Vm1YnDbj4
サークルゲーム
https://youtu.be/GTczqGRu7Ms
バナナフィッシュの浜辺と黒い虹
https://youtu.be/iubApGbf04I
管制塔 (Acoustic)
https://youtu.be/nIA6gcxLfKw
Next→ 10/15 amazarashi @幕張メッセイベントホール
今年、突然の活動終了宣言をし、ラストアルバム「Sea and The Darkness」のリリースとそのツアーを持って終了かと思いきや、ベストアルバムの発売と、ラストライブを日本武道館で行うことを発表。ツアーが最新作の世界観を構築したものだったので、最後としての集大成感がなかっただけに、これまでの活動にしっかりとケリをつけるであろう、最初で最後の武道館ワンマン。
場内に入ると、ステージは背面に飾り付けこそあるが、いたってシンプルなもので、スクリーンもない。客電も開場中は淡い光のみなので若干薄暗く、何よりも全くBGMがないというのが普段のライブとは全く異なっている。
そんな中、二階席までしっかり埋まった18:30過ぎ、開演を告げるアナウンスが響いたあと、淡い光に包まれていた場内はゆっくりと暗くなった。
近年のライブと同じように、サポートギターとサポートキーボードとともに、尾崎雄貴(ボーカル&ギター)、佐孝仁司(ベース)、尾崎和樹(ドラム)という、最初から最後までGalileo Galileiであり続けた3人がステージに登場。
「Hello」
となぜか英語で一言だけ雄貴が挨拶すると、激しいギターサウンドが鳴り響いて「クライマー」からスタート。
「刹那をくれよ
刹那をくれよ
刹那をくれよ」
という曲後半の雄貴の叫びが今、この瞬間への渇望を強く感じさせる。
「恋の寿命」「嵐のあとで」と時系列的には最新のシングル曲を続けた立ち上がり。ガリレオの最新系は音数を絞れるだけ絞った、UKインディーバンドの影響を強く感じさせるサウンドというイメージが強いが、こうしてシングル曲を続けて聴くと、その要素とともに初期の、アジカンに続くバンドというイメージだった王道ギターロックの要素も強く感じる。雄貴の歌はこの日も凛とした空気を感じさせながらも、広い武道館いっぱいに響いていく。あまりそこを評価される機会は少なかったように思うが、やはり雄貴は歌が本当に上手い。上手いだけじゃなく、この人だから歌える、説得力があると思わせるような声。
客席から歓声が上がったのは「サークルゲーム」。バンド最大の代表曲にして、アニメとの相思相愛なタイアップにより、バンドの存在と楽曲を従来のファンのさらに外まで広げた曲。穏やかな曲調だが、
「曖昧なことも単純なこともみんな花びらのよう」
と歌われるサビでは雄貴の平熱の下に隠された熱い感情がこの広い会場を震わせていく。
さらに「明日へ」「さよならフロンティア」と、バンドがエレクトロの要素を取り入れて、従来のギターロックのさらに先へ進み始めた時期の曲が続くが、音源では強かったそのエレクトロの要素はやや薄く、逆に生のバンドの力強さが増しているのが素晴らしい。その力強さを最もになっているのは和樹のドラムだが、デビュー当初は高校1年生で、演奏は最初から上手かったが完全に子供である見た目だったのが、本当に逞しく成長している。
ここまでの流れでわかる通りに、この日のセトリは徐々に過去の曲にさかのぼっていくという流れだった。雄貴がそのセトリのコンセプトを語ると、呼び込まれたのはかつてはレギュラーサポートメンバーとしてバンドに彩りを与えていた、女性コーラスのChima。(サポート時代はキーボードも弾いていた)
彼女が招かれたということは、演奏されるのは雄貴と彼女のデュエットボーカルによる「青い栞」。「サークルゲーム」と同じアニメのタイアップ曲だが、男女によるデュエット曲ということで「サークルゲーム」よりも青春性が強い。ある意味では世間的にはこの曲のイメージが1番強いバンドなのかもしれない。
基本的にこのバンドはあまりMCをしないし、そもそも喋るのが得意なメンバーもいないが、この日はやはり最後ということもあってか、3人がなんとか少しでも喋ろうとしていた。そんな中で和樹は
「リハやった時は1番上のスタンド席は飾りで、人が入らないと思ってた(笑)斜面が急すぎるから(笑)」
と天然ぶりを発揮して和ませる。
徐々に過去にタイムスリップしていくセトリはついに最初期、アルバムで言うと「パレード」のパートへ。「青い栞」までにあったエレクトロの要素は消え、ストレートなギターロックが続いていくが、そのパートの1曲目である「僕から君へ」を筆頭に、やはり青春性を強く感じるのは、この時期はメンバーが青春の真っ只中にいたからだろうか。(和樹はこの時期はまだ高校生だった)
しかし実に久しぶりにライブで披露される「四つ葉探しの旅人」では雄貴がイントロの入りのギターをミスってやり直すというハプニングに。これはあまりに久しぶりすぎる曲だからだろうか。
続く「夏空」は高校野球アニメのタイアップ曲だっただけあって、バンドの中で随一の爽やかな曲だが、
「好きだった歌が響かなくなったな」
という歌詞もあるが、出会ってからこの日に至るまで、このバンドの好きな曲が響かなくなったことは1度もない。いつだって好きな曲のまま。それはこれから先もずっと変わらないだろう。
佐孝と雄貴が「四つ葉探し~はもう5年ぶりくらいにやった」と思い出を語り始めると、当時はまだ和樹が高校生であったため、夏休み期間を使ってツアーを廻り、機材車で移動している時に和樹は夏休みの宿題をやっていたというエピソードを懐かしそうに話す。今まではこうしたことを話すことはほとんどなかった。それだけに、これで最後というのが否が応でもわかってしまう。
曲はさらに過去へと遡り、メジャーデビュー曲となった「ハマナスの花」へ。今聴くとロック色の強い重い演奏に驚かされるが、
「あの花の色は決して忘れないから」
という(ここでのあの花はハマナスの花のことだが)、まるでそれ以降の活動と幸福なタイアップを予見していたかのようなフレーズがこの時点で歌われている。
リリースツアー以来この曲を全くライブではやっていなかったこと、この曲のMVでも使用しているギターを閃光ライオットの優勝賞金で買ったことを語ると、そのギターを使って演奏された、タイムスリップの終着地というような曲は、閃光ライオット出場時に衝撃を与えた「管制塔」。この曲をすでに10代の時に作っていた、当時はほとんどメジャーシーンにはいなかった10代のバンドのレベルの高さを証明した曲であるが、
「声が変わって背が伸びて自分が大人になっていくのを感じていた」
と子供から大人に変わっていくことへのリアルな葛藤が歌われたこの曲は、この当時じゃないと絶対に作れなかった。そんな、もう大人になった彼らが
「どんな未来でも 受け入れるよ 変わらない僕らのままで」
と自分たちのこれまでの生き方とこれからの生き方を宣言するように歌う。果たしてこの日とここに至るまでの活動は彼らが「望んだ未来」だっただろうか。
タイムスリップはここまでだったが、Galileo Galileiはアルバムのリリースタイミングくらいでしかツアーをやらないし、本人たちも口にしていたように、なかなか過去の曲をライブで演奏しない、常に現在と未来を提示し続けてきたバンドだった。だからこそこの時系列を遡るという最初で最後の総括的なセトリは、これが最後ということを強く感じさせた。
しかしライブはまだ終わりではない。最新アルバムの「鳥と鳥」で時系列を戻すと、
「ここで2人目のゲストを」
と言って白い衣装でステージに現れたのはAimer。当然演奏されるのは彼女が参加した「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」。男女デュエット曲でこそあれど、雄貴の方がキーが高いというなかなかないタイプのデュエットソングだが、その雄貴のハイトーンとAimerの憂いを帯びた声の絡み、そしてサビの後のピアノのフレーズが本当に素晴らしい。これまではライブで演奏される時は雄貴が1人で全パートを歌っていただけに、最後にして本当のこの曲の形をライブで見ることができた。
今でこそ新世代の歌姫的な存在になりつつあるAimerだが、自分が初めてちゃんとその声を聴いたのはこの曲が入ったミニアルバム「See More Glass」がリリースされた時だった。RADWIMPSの野田洋次郎やONE OK ROCKのTakaが曲を提供するはるかに前から、雄貴は彼女の声がロックサウンドに乗ることによって化学反応が起こるということを見抜いていた。その眼力こそがどんなに音楽性が変わっていってもクオリティは全く変わらないというこのバンドの核そのものであったと思う。
普段、アー写なMV、ライブ映像でも顔がちゃんと映らないので、表情が読みにくいAimerも本当に楽しそうな顔で雄貴のことを見ながら歌っていた。そして通常の曲なら曲が終わってから拍手が起こるところが、あまりの素晴らしさにワンコーラス終わるごとに拍手が起こっていた。
そんな特別すぎた瞬間の後は
「ここからはライブの定番曲で締めくくります」
と言って、軽快なエレクトロポップの「老人と海」へ。バンドがエレクトロの要素を取り入れて大進化を果たした「PORTAL」のリリース時から、どんなに音楽性が変わってもライブでやり続けている曲。だからこそここまでに演奏されたどの曲よりも、これまでにいろんな場所で聴いてきたのが脳裏に残っている。当初はまだ5人組で、後に脱退してFOLKSを結成することになるギターの岩井がちょっと持て余し気味だったな、とかいろんなことを思い出す。
一転して重厚なギターサウンドが会場を埋め尽くす「星を落とす」。こちらも常にライブのクライマックスで演奏されてきた曲。フェスに出た時もこの曲で本編を締めくくるという場面が非常に多かった。
「僕には聴こえるんだ すばらしき音楽と涙の落ちる音」
というフレーズの通りに、この日この場所にいた人にはこのバンドの奏でるすばらしい音楽が聴こえていた。
それと同時に背面には無数の星を思わせる照明が。武道館でありながらも演出らしい演出がここまで一切なかった、いつもと変わらないこのバンドのライブだっただけに、この景色はこのライブで最も美しい光景としてこれからも脳内と心に残っていくはず。
そして最後に演奏されたのは「Birthday」。いつの間にかChimaが再び登場していたが、こちらも今までのライブではアンコールなどでよく演奏されていた曲。
「最後なんでみんなで一緒に歌える曲を」
と雄貴は言っていたが、なかなか一緒に歌うのは難しいというか、一体感のある盛り上がり的なライブとははるかに距離のあるライブをするバンドだっただけに、声を出して歌う人はほとんどいなかったと思う。それでも心の中で歌っていた人はたくさんいただろうし、サビに入る瞬間に客電が全部点いて、この日会場が最も明るくなるという武道館の最後の曲ならではの演出をこのバンドも最後に踏襲してみせた。
ラストとはいえ曲数自体はそれほど多くない(というかこのバンドはワンマンでもだいたいいつもこのくらいの曲数だった)が、やはりアンコールに応えてメンバーが再び登場。本編と違うのは、雄貴の立ち位置にギターではなくてキーボードが置かれていること。
その編成で演奏されたのは「PORTAL」の冒頭を飾る「Imaginary Friends」。イントロからエレクトロ要素が強いこの曲が1曲目から流れてきた時は、それまでのギターロックサウンドからかけ離れていただけにかなりびっくりしたが、その時期の曲がこうしてこの最後の場で鳴らされているということは、本人たちとしてもあの作品にかなり手ごたえを感じていたんじゃないかと思う。
そしてラストに演奏されたのは最新アルバムの最後を飾る「Sea and The Darkness II (Totally Black)」。徹底的に削ぎ落とされ、音数が少なくなったサウンドの上に雄貴の凛としていながらもちょっとくぐもったボーカルが乗る。いつの間にかステージに登場していたサックス奏者が音の隙間を埋めるように生のサウンドを発していく。あくまで最新のバンドの曲を最後に見せるというこのバンドのスタイルは変わらなかった。
しかしまだ場内は暗いまま。そしてやるだろうと思ってはいたが、まだやっていない曲もある。そう思っているとやはりメンバーが再びステージに。ここでは雄貴がキーボードからギターに戻っており、この武道館で最後にライブができたことについて語るが、やはり上手く言葉が出てこない。それは感極まっているのではなく、このバンドのMCはいつもこういう感じだった。だから最後の最後までMCは上手くならなかったけど、それが逆に最後まで変わらなかったGalileo Galileiの姿そのものでもあった。
そして演奏されたのは、4月のリキッドルームでのライブで最後に演奏された「ハローグッバイ」。明らかに別れの歌である、切ないギターロック。初期の曲はほとんどライブではやっていなかったバンドであるが、この曲はたまにライブでもやっていた。その時は再開の歌として聴いていたのが、この日はやはり別れの歌としてしか聴こえてこなかった。そしてバンドも
「ハローグッバイ 言えたよ」
と自らの活動に別れを告げるかのように歌った。
しかしそれでもまだ終わらず、Galileo Galileiとして最後にバンドで演奏した曲は、ベストアルバムに収録された最新曲「車輪の軸」。
「武道館のために作った曲」
と雄貴が言ったように、
「キスしてさよならだ 過ぎ去ってく日々に
手を持つ誰かは 君に似ている」
と歌われる歌詞はバンドの活動の終わりを意識して作ったもの以外のなにものでもなかった。
そしてそのサウンドが原点回帰的な軽快なギターロックであるというのも、最後の最後の曲で自分たちのやりたいことではなく、初めてファンが聴きたいであろうガリレオのサウンドの曲を作ったと思わされる。
演奏が終わって、ステージを去る際もメンバーが並んだり、写真撮影をしたり、ピックなどを撒いたりということは全くしなかった。しかしながらメンバーがいなくなった後のステージ背面にはメンバーからの「バイバイ」というメッセージが。直接気持ちを言葉にするのが苦手だったこのバンドらしい終わり方。そのメッセージをしっかりと見せるためか、なかなか客電はつかなかった。
Galileo Galileiの曲は、どんなにサウンドが変わっても一貫したものがあった。それは割と早い時期から、メジャーにいるにもかかわらず大人が介在することなくメンバーだけで秘密基地のようなスタジオを北海道に作り、そこでひたすら実験を繰り返して作っていたことによる手作りのような温かさ。だからどんなに電子音が増えても、その音からは確かな感情を感じたし、どの時期の曲にもバンドとメンバーの意志が宿っていた。だから彼らの曲はこれだけたくさんの人に愛されてきた。
メンバーより若干年上なだけに、Galileo Galileiの曲は自分には青春というものではなかった。でも「青い栞」や「夏空」を聴くと、青春時代に聴いていたかのような、いや、この曲みたいな青春を過ごしてみたかったと思わされた。
だからこそ、音楽性を進化&深化させていくバンドに対して、聴いている側はそうした青春性のある曲を求めてしまう。しかしバンドはもうそこに留まるつもりも戻るつもりもなかった。それこそが彼らが活動終了発表時に発した「おもちゃの車から降りる時がきた」ということなんだろう。
それと同じように、このバンドはあまりバンドの音楽を知らない人には甘く見られていたバンドだと思っている。初期の頃の曲を聴いて、聴かないという選択をした人はきっと彼らの後期の音楽的進化を知らない。むしろ、後期の音楽はそうした若いバンドの音楽を好まない人にこそ聴かれるような音楽だった。だからこそUSのインディーバンドにはこのバンドの音楽に共鳴するバンドも出てきた。だからこれからこのバンドの音楽を知らない人に勧める時は、一曲だけとか一時期の曲だけでなく、いろんな時期のいろんな曲を勧めたいと思う。
そしてこれは何度かこのバンドのライブの時に触れてきたが、Galileo Galileiは初期は特になかなか音源のクオリティをライブが超えないバンドだっただけに、ライブはイマイチと言われることも多々あった。しかし今日の最後のライブは、そう言われていたのが嘘だったかのように素晴らしいライブだった。それだけに、まだまだライブを見たかった。
Galileo Galileiが閃光ライオットから登場した後、多くの10代バンドが出てくるようになった。それぞれ音楽性も全く違うバンドだったが、ガリレオを始めすぐ武道館まで行きそうなバンドばかりだった。でも彼らはここに立てていない。ガリレオだって最後という特殊な機会だからこそここに立てた。でもまだまだ、これからの人生の方が長い。The SALOVERSやTHE☆米騒動などすでにいなくなってしまったバンドも多いが、OKAMOTO'Sやねごとなど、ガリレオと同じ時代を生きてきて今も変わらずに続けているバンドだって、いつかこの場所に立てる時が必ずくる。
その瞬間を楽しみにすると同時にまたガリレオの3人がステージに立つ日が「いつの日か来るんでしょう それを待っているんだ」。
1.クライマー
2.恋の寿命
3.嵐のあとで
4.サークルゲーム
5.明日へ
6.さよならフロンティア
7.青い栞
8.僕から君へ
9.四つ葉探しの旅人
10.夏空
11.ハマナスの花
12.管制塔
13.鳥と鳥
14.バナナフィッシュの浜辺と黒い虹 feat.Aimer
15.老人と海
16.星を落とす
17.Birthday
encore1
18.Imaginary Friends
19.Sea and The Darkness II (Totally Black)
encore2
20.ハローグッバイ
21.車輪の軸
この日の昼、ながらく脳腫瘍と戦い続けてきたBOOM BOOM SATELLITESの川島道行が亡くなったことが発表された。
人はいつか死ぬし、バンドもいつか終わる。それを改めて痛感した日だからこそ、終わりの時が来た時に「もっと見に行けば良かった」って後悔しないように、会いたい人には会いたい時にちゃんと会いに行きたい。少なくともGalileo GalileiとBOOM BOOM SATELLITESに自分は後悔はない。悲しいけど、そこだけは間違いなく幸せだった。
夏空
https://youtu.be/X1Vm1YnDbj4
サークルゲーム
https://youtu.be/GTczqGRu7Ms
バナナフィッシュの浜辺と黒い虹
https://youtu.be/iubApGbf04I
管制塔 (Acoustic)
https://youtu.be/nIA6gcxLfKw
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yonige presents かたつむりは投げつけないツアー ファイナル @高田馬場PHASE 10/14 ホーム
忘れらんねえよ Zeppワンマン 「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」 @Zepp DiverCity 10/9