忘れらんねえよ Zeppワンマン 「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」 @Zepp DiverCity 10/9
- 2016/10/10
- 00:25
ドラマー酒田の脱退という別れもあったが、BAYCAMPで大トリを務めたりと、少しずつではあるが、忘れらんねえよの状況は着実に良くなりつつある。それを証明するのが、この日の初のZeppでのワンマン(新木場あたりでワンマンをやっていないだけに、発表当初は埋まらないんじゃないかという懸念もあった)がソールドアウトしたことである。背伸びした会場ではなくて、しっかりと身の丈にあったキャパとなったこの会場で果たしてどんなライブを見せるのか。同日、BLUE ENCOUNTが武道館でワンマンを行ったこともあり、少し薄れてしまいがちだが、間違いなく記念碑的な1日。
そのBLUE ENCOUNTや東京カランコロンなどの同志と言えるようなバンドや、フラワーカンパニーズなどの先輩と言えるバンドの曲までもがBGMとして流れる中、開演前のアナウンスが
「忘れらんねえ1日にしましょう!」
と煽って期待を募らせる中、18時過ぎに場内が暗転すると、[Alexandros]「ワタリドリ」がSEとして流れ始め、客席後ろの方から柴田(ボーカル&ギター)の叫ぶ声が聞こえると、
「ワタリドリのように俺をステージまで連れて行ってくれ!」
と言って、観客に支えられながらステージへ。辿り着くと梅津(ベース)、マシータ(ドラム)のメンバーを呼び込み、
「ヤバい、すでに泣きそう(笑)」
とこの人で埋め尽くされたZeppのフロアを見て感慨深そうに一言言ってから、
「最初はやっぱりこれでしょう!」
と「バンドワゴン」でスタート。
「高速道路のその先にデカいステージがある」
という歌詞の後には
「ここにあったよー!」
とライブのタイトルにもなっているようにデカいステージだからこそのアドリブを入れる。
基本的に忘れらんねえよは曲が短く、曲間もほとんどないだけに柴田のMCがグダラない限りはテンポが非常に良いのだが、序盤からバンドの代表曲にしてライブの定番曲を連発していくと、「僕らチェンジザワールド」からはロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)がサポートとして参加。曲によってキーボードとギターを持ち替えながら、時に曲に彩りを与え、時には間奏のソロでギターを掻き鳴らしまくる。BEAT CRUSADERS時代から正確であると同時に野性味溢れるドラムを叩いていたマシータとともに、この2人のサポートメンバーがライブのサウンド面での完成度をグッと引き上げている。
「もう周りにはZeppですでにワンマンやってる人たちがいっぱいいるんだけど、その人たちはみんな「初Zeppには魔物がいる」みたいなこと言うんだけど、全然そんなことないじゃん!」
とジンクスを吹き飛ばそうとした矢先に曲に入ろうとした瞬間に柴田のギターが音が出なくてやり直すという魔物の洗礼を受けながらも、序盤はアッパーに飛ばしまくり、客席も休む暇が全くないというくらいの盛り上がりぶりに。
それが変わったのは「バレーコードは握れない」からの、ミディアム~バラードと言ってもいい曲のゾーン。下ネタも逆ギレもない、柴田のメロディセンスと素直な歌詞だけで聴かせる、名曲と言っていいタイプの曲たち。
「このバンドで初めて作った曲」
という「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」から、「夜間飛行」では客席の上にあるミラーボールがロマンチックに輝くのだが、この曲がまだ音源化される前、弾き語りでこの曲の原型を歌っていた時はサビの
「飛んでいくんだ」
が
「陰毛だった」
という超下ネタソングだったことを考えると、歌詞によって曲のイメージは全く変わるし、今の歌詞だからこそこの曲は名曲になったということがよくわかる。
ミディアム~バラードゾーンを終えると場内が暗転し、スポットライトが柴田に当たると、柴田はキュウソネコカミのネズミ君のお面をつけている。しかしすぐさまお面を床に叩きつけると、次は金髪のソバージュっぽいカツラに帽子を装着。WANIMAの健太の真似であり、WANIMAがさいたまスーパーアリーナのワンマンが決まったことを祝うと、さらにピカチュウのお面を着用したが、前の2つがインパクト強すぎたからか、そこまで笑いは起こらず。
「この前、EX THEATERでキュウソネコカミと対バンしたんだけど、キュウソって暗転してる時になんか言ったり、なんかやったりしてるのがすごいな~、かっこいいな~って思ってたから今日そういう風にやろうと思ったんだけど、その時に見たらもうそういうことやってなくて、なんか大物になった感じがした(笑)」
と暗転パフォーマンスの真相を語ってからは再びアッパーな、忘れらんねえよがパンクを出自としていることを改めて実感させる曲が続き、客席からはダイバーも発生するくらいの盛り上がりに。
その流れで発売されたばかりの最新ミニアルバム「俺よ届け」収録の「俺の中のドラゴン」を披露。紛れもなく排泄、というか柴田は「うんこの歌」と言い切っていたが、そんなテーマを汚い単語を一切使わずに、むしろ神聖さすら感じるような詩的な歌詞に仕上げているのは柴田の作詞家としての能力の高さを改めて思い知らされる。
そのまま「俺よ届け」の収録曲を続けるのだが、4人編成に加えて今作のプロデューサーの松岡モトキがギターで、アーバンギャルドのおおくぼけいがピアノで参加し、「眠れぬ夜は君の名をググるよ」「まだ知らない世界」という曲の叙情的なムードをさらに高め、ギターが増えたことにより、柴田はより一層歌に集中している。おおくぼが去ってからの「うつくしいひと」は柴田が故郷の熊本を思って書いた曲だが、これが素晴らしかった。シンプルなバラードだが、忘れらんねえよの曲でこんなに感動する曲が今まであっただろうかと思うと同時に普段はそこまで口には出さないが、柴田が熊本のことを本当に大事に思っていることが歌詞と柴田の歌い方から伝わってくる。
「ワンマンはやっぱりいいね。何より敵がいないのがいい(笑)
大きいフェスに出ると最近はすぐサカナクションとかBUMPとかアジカンの裏にされて。ファン層被ってないからいいだろ、みたいな感じで(笑)
いやいやいやいや、同じ人間ですけどみたいな(笑)
でもそれでもそういうフェスは色々こいつらなら大丈夫だろうって考えてくれてるから、なんとかなった。今までで1番なんとかならなかったのは、京都のボロフェスタに出た時。京都まで機材車で来てこれか、っていうくらいの人しかいなくてガラッガラで。そしたらその時間にでんぱ組.incが物販で握手会やっててものすごい混んでて。握手会にボロ負けした(笑)」
とフェスで体験した悔しさを語ると、「ばかばっか」ではもはやお馴染みの客席突入。突入する前にステージに無駄にスモークが噴射される中、オープニング同様に観客に運ばれてPAブースまで辿り着くとそこでビールを受け取り、客席中央までビールをほとんどこぼすことなく移動し、自ら一気コールをしてビールを飲み干す。
すると観客に支えられながら立ち上がり、おもむろにポケットから手紙を取り出し、
「想いを伝えたい人がいる」
と言うと、この日招待した両親に向けて手紙を読み始める。
「この前、JAPAN JAMに招待した時、「俺にはこんなに満員の人がついてるから安心してくれ」って言ったけど、あれはほとんどが次のBLUE ENCOUNTを待ってるファンでした、ごめんなさい(笑)
でも今日ここにいる人たちは本当に俺たちのことを好きでいてくれる人たちです。俺はこの人たちのために音楽をやってます。この人たちがいてくれるから、俺は音楽ができています。
熊本は大変だったけど、2人のことは俺と兄弟がちゃんと守っていくから。安心してくれ」
と感動のスピーチを完遂するとステージに戻って続きを演奏。
「寝てらんねえよ」では歌詞のきゃりーぱみゅぱみゅのくだりを
「番組で共演できた~。ほとんどしゃべれなかったけど(笑)」
と現在進行形の歌詞に変えて歌い、「ばかもののすべて」「バンドやろうぜ」と忘れらんねえよの芯そのものというべき名曲でさらに熱さは増していく。すでに24曲も歌っているにもかかわらず、柴田のボーカルは全くテンションが下がらないどころか、より曲の説得力が増しているかのよう。
最新作のタイトルトラックである「俺よ届け」もその前の2曲と連なるストレートな名曲で、発売前からすでにフェスやイベントでも演奏されてきただけはあり、発売してから数日とは思えないくらいに他の曲と比べても遜色ない盛り上がりぶり。
そしてラストはここまでのすべての熱量をそのまま曲にしたかのような「この高鳴りをなんと呼ぶ」。サビで金テープが飛ぶという演出は大会場ならではだが、お笑い芸人のばいきんぐ小峠が、以前カラオケで後輩がこの曲を歌っていたのを聴いて衝撃を受けたと言っていた。柴田はこの日何度も
「日常の嫌なこととか、全部ここに置いてきてくれ」
と言っていたが、そうして日々を戦いながら生きている人にこそこの曲は響く。それはこれまで散々バカにされまくってきたこのバンドが誰よりも日常を戦いながら生きてきたからである。
アンコールではメンバーが風船を持ったりして登場すると、男だけでの「柴田!」コール、女だけでの「梅津!」コール、男女全員での「マシータ!」「安田!」コールを起こしてから、すでに2時間以上経過しているからか、MCも控えめに「別れの歌」を演奏。ワンマンでしかまずやらないであろう、脱退した酒田に向けた歌。決して上手いドラマーでは全くなかったけど、在籍時はそれが忘れらんねえよの味になっていた。今、こうしてバンドがZeppを満員にしている景色を、酒田はどう思っているのだろうか。やっぱり自分がいた時にこの景色を見たかったと思うのだろうか。
そしてやはり最後の最後は「忘れらんねえよ」。曲始まりから観客が手を振りながら合唱すると、柴田の呼びかけで携帯の光をサイリウム代わりにして、客席から美しい光が放たれる。最後にはサビを何回も観客に合唱させると、柴田と梅津が肩を組み、安田とマシータもそれに加わり、演奏が一切なくなって、忘れらんねえよを愛する人々による合唱だけが響く。メンバーが持ち場に戻ると、今度は銀テープが放たれ、ライブの終わりを告げた。
演奏を終えたメンバーがステージ前に出てきて揃って肩を組んで一礼し、記念撮影をすると、バンドのロゴの後ろにスクリーンが現れ、来年春のツアーと、初の日比谷野音ワンマンが開催されることが発表された。その瞬間、たくさんの人がまるで自分のことにように飛び跳ねたりして喜んでいた。
ずっとライブを見に来ているバンドだが、どこか「忘れらんねえよはいけても○○までだろうなぁ」と勝手に限界を決めつけていた。しかしその姿を見て、まだまだ先まで行けるバンドであると確信した。それこそ発表の時に柴田がボソッと口に出したように、武道館だって決して果てしなく遠い場所ではなくなってきている。一度は音楽を諦め、それでもやっぱり音楽しか、バンドをやるしかないと30歳にして気付いた男が遠回りしまくりながらもいつか武道館のステージに立ったら…。想像しただけでも泣けてきてしまう。でも、いつかそれも現実にしてくれると信じている。
柴田はこの日、
「やりたいことをやったらいいんだよ。でもやりたいことをやり続けてたら、絶対「それ無理じゃないっすかぁ?」とか言ってくる奴がいる。でもそんなこと言う奴はカッコ悪い。やりたいことをやってるやつのほうがカッコいいし、やりたいことをやり続けられてるっていうことはそいつには力があるっていうこと。
だから俺はもうやりたいことしかやらない」
と決意表明をしていた。今に至るまで、時にはブレたりしていると感じたこともあったが、自他共に認める「クソバンド」であった忘れらんねえよは、当初はひたすら己の感情をぶちまけるようなバンドだった。しかし目の前にいる人の顔が増えてきて段々変わってきた。引っ張るでも背負うでも連れてくでもなく、一緒に行く。だから今日のライブはやはりこれまでの集大成とも言える「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」だった。
1.バンドワゴン
2.戦うときはひとりだ
3.僕らパンクロックで生きていくんだ
4.僕らチェンジザワールド
5.体内ラブ ~大腸と小腸の恋~
6.中年かまってちゃん
7.犬にしてくれ
8.バレーコードは握れない
9.美しいよ
10.ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
11.夜間飛行
12.そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
13.世界であんたはいちばんキレイだ
14.この街には君がいない
15.北極星
16.Cから始まるABC
17.俺の中のドラゴン
18.眠れぬ夜は君の名前をググるよ
19.まだ知らない世界
20.うつくしいひと
21.ばかばっか
22.寝てらんねえよ
23.ばかもののすべて
24.バンドやろうぜ
25.俺よ届け
26.この高鳴りをなんと呼ぶ
encore
27.別れの歌
28.忘れらんねえよ
俺よ届け
https://youtu.be/ypCsqWgf8XI
Next→ 10/12 Galileo Galilei @日本武道館
そのBLUE ENCOUNTや東京カランコロンなどの同志と言えるようなバンドや、フラワーカンパニーズなどの先輩と言えるバンドの曲までもがBGMとして流れる中、開演前のアナウンスが
「忘れらんねえ1日にしましょう!」
と煽って期待を募らせる中、18時過ぎに場内が暗転すると、[Alexandros]「ワタリドリ」がSEとして流れ始め、客席後ろの方から柴田(ボーカル&ギター)の叫ぶ声が聞こえると、
「ワタリドリのように俺をステージまで連れて行ってくれ!」
と言って、観客に支えられながらステージへ。辿り着くと梅津(ベース)、マシータ(ドラム)のメンバーを呼び込み、
「ヤバい、すでに泣きそう(笑)」
とこの人で埋め尽くされたZeppのフロアを見て感慨深そうに一言言ってから、
「最初はやっぱりこれでしょう!」
と「バンドワゴン」でスタート。
「高速道路のその先にデカいステージがある」
という歌詞の後には
「ここにあったよー!」
とライブのタイトルにもなっているようにデカいステージだからこそのアドリブを入れる。
基本的に忘れらんねえよは曲が短く、曲間もほとんどないだけに柴田のMCがグダラない限りはテンポが非常に良いのだが、序盤からバンドの代表曲にしてライブの定番曲を連発していくと、「僕らチェンジザワールド」からはロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)がサポートとして参加。曲によってキーボードとギターを持ち替えながら、時に曲に彩りを与え、時には間奏のソロでギターを掻き鳴らしまくる。BEAT CRUSADERS時代から正確であると同時に野性味溢れるドラムを叩いていたマシータとともに、この2人のサポートメンバーがライブのサウンド面での完成度をグッと引き上げている。
「もう周りにはZeppですでにワンマンやってる人たちがいっぱいいるんだけど、その人たちはみんな「初Zeppには魔物がいる」みたいなこと言うんだけど、全然そんなことないじゃん!」
とジンクスを吹き飛ばそうとした矢先に曲に入ろうとした瞬間に柴田のギターが音が出なくてやり直すという魔物の洗礼を受けながらも、序盤はアッパーに飛ばしまくり、客席も休む暇が全くないというくらいの盛り上がりぶりに。
それが変わったのは「バレーコードは握れない」からの、ミディアム~バラードと言ってもいい曲のゾーン。下ネタも逆ギレもない、柴田のメロディセンスと素直な歌詞だけで聴かせる、名曲と言っていいタイプの曲たち。
「このバンドで初めて作った曲」
という「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」から、「夜間飛行」では客席の上にあるミラーボールがロマンチックに輝くのだが、この曲がまだ音源化される前、弾き語りでこの曲の原型を歌っていた時はサビの
「飛んでいくんだ」
が
「陰毛だった」
という超下ネタソングだったことを考えると、歌詞によって曲のイメージは全く変わるし、今の歌詞だからこそこの曲は名曲になったということがよくわかる。
ミディアム~バラードゾーンを終えると場内が暗転し、スポットライトが柴田に当たると、柴田はキュウソネコカミのネズミ君のお面をつけている。しかしすぐさまお面を床に叩きつけると、次は金髪のソバージュっぽいカツラに帽子を装着。WANIMAの健太の真似であり、WANIMAがさいたまスーパーアリーナのワンマンが決まったことを祝うと、さらにピカチュウのお面を着用したが、前の2つがインパクト強すぎたからか、そこまで笑いは起こらず。
「この前、EX THEATERでキュウソネコカミと対バンしたんだけど、キュウソって暗転してる時になんか言ったり、なんかやったりしてるのがすごいな~、かっこいいな~って思ってたから今日そういう風にやろうと思ったんだけど、その時に見たらもうそういうことやってなくて、なんか大物になった感じがした(笑)」
と暗転パフォーマンスの真相を語ってからは再びアッパーな、忘れらんねえよがパンクを出自としていることを改めて実感させる曲が続き、客席からはダイバーも発生するくらいの盛り上がりに。
その流れで発売されたばかりの最新ミニアルバム「俺よ届け」収録の「俺の中のドラゴン」を披露。紛れもなく排泄、というか柴田は「うんこの歌」と言い切っていたが、そんなテーマを汚い単語を一切使わずに、むしろ神聖さすら感じるような詩的な歌詞に仕上げているのは柴田の作詞家としての能力の高さを改めて思い知らされる。
そのまま「俺よ届け」の収録曲を続けるのだが、4人編成に加えて今作のプロデューサーの松岡モトキがギターで、アーバンギャルドのおおくぼけいがピアノで参加し、「眠れぬ夜は君の名をググるよ」「まだ知らない世界」という曲の叙情的なムードをさらに高め、ギターが増えたことにより、柴田はより一層歌に集中している。おおくぼが去ってからの「うつくしいひと」は柴田が故郷の熊本を思って書いた曲だが、これが素晴らしかった。シンプルなバラードだが、忘れらんねえよの曲でこんなに感動する曲が今まであっただろうかと思うと同時に普段はそこまで口には出さないが、柴田が熊本のことを本当に大事に思っていることが歌詞と柴田の歌い方から伝わってくる。
「ワンマンはやっぱりいいね。何より敵がいないのがいい(笑)
大きいフェスに出ると最近はすぐサカナクションとかBUMPとかアジカンの裏にされて。ファン層被ってないからいいだろ、みたいな感じで(笑)
いやいやいやいや、同じ人間ですけどみたいな(笑)
でもそれでもそういうフェスは色々こいつらなら大丈夫だろうって考えてくれてるから、なんとかなった。今までで1番なんとかならなかったのは、京都のボロフェスタに出た時。京都まで機材車で来てこれか、っていうくらいの人しかいなくてガラッガラで。そしたらその時間にでんぱ組.incが物販で握手会やっててものすごい混んでて。握手会にボロ負けした(笑)」
とフェスで体験した悔しさを語ると、「ばかばっか」ではもはやお馴染みの客席突入。突入する前にステージに無駄にスモークが噴射される中、オープニング同様に観客に運ばれてPAブースまで辿り着くとそこでビールを受け取り、客席中央までビールをほとんどこぼすことなく移動し、自ら一気コールをしてビールを飲み干す。
すると観客に支えられながら立ち上がり、おもむろにポケットから手紙を取り出し、
「想いを伝えたい人がいる」
と言うと、この日招待した両親に向けて手紙を読み始める。
「この前、JAPAN JAMに招待した時、「俺にはこんなに満員の人がついてるから安心してくれ」って言ったけど、あれはほとんどが次のBLUE ENCOUNTを待ってるファンでした、ごめんなさい(笑)
でも今日ここにいる人たちは本当に俺たちのことを好きでいてくれる人たちです。俺はこの人たちのために音楽をやってます。この人たちがいてくれるから、俺は音楽ができています。
熊本は大変だったけど、2人のことは俺と兄弟がちゃんと守っていくから。安心してくれ」
と感動のスピーチを完遂するとステージに戻って続きを演奏。
「寝てらんねえよ」では歌詞のきゃりーぱみゅぱみゅのくだりを
「番組で共演できた~。ほとんどしゃべれなかったけど(笑)」
と現在進行形の歌詞に変えて歌い、「ばかもののすべて」「バンドやろうぜ」と忘れらんねえよの芯そのものというべき名曲でさらに熱さは増していく。すでに24曲も歌っているにもかかわらず、柴田のボーカルは全くテンションが下がらないどころか、より曲の説得力が増しているかのよう。
最新作のタイトルトラックである「俺よ届け」もその前の2曲と連なるストレートな名曲で、発売前からすでにフェスやイベントでも演奏されてきただけはあり、発売してから数日とは思えないくらいに他の曲と比べても遜色ない盛り上がりぶり。
そしてラストはここまでのすべての熱量をそのまま曲にしたかのような「この高鳴りをなんと呼ぶ」。サビで金テープが飛ぶという演出は大会場ならではだが、お笑い芸人のばいきんぐ小峠が、以前カラオケで後輩がこの曲を歌っていたのを聴いて衝撃を受けたと言っていた。柴田はこの日何度も
「日常の嫌なこととか、全部ここに置いてきてくれ」
と言っていたが、そうして日々を戦いながら生きている人にこそこの曲は響く。それはこれまで散々バカにされまくってきたこのバンドが誰よりも日常を戦いながら生きてきたからである。
アンコールではメンバーが風船を持ったりして登場すると、男だけでの「柴田!」コール、女だけでの「梅津!」コール、男女全員での「マシータ!」「安田!」コールを起こしてから、すでに2時間以上経過しているからか、MCも控えめに「別れの歌」を演奏。ワンマンでしかまずやらないであろう、脱退した酒田に向けた歌。決して上手いドラマーでは全くなかったけど、在籍時はそれが忘れらんねえよの味になっていた。今、こうしてバンドがZeppを満員にしている景色を、酒田はどう思っているのだろうか。やっぱり自分がいた時にこの景色を見たかったと思うのだろうか。
そしてやはり最後の最後は「忘れらんねえよ」。曲始まりから観客が手を振りながら合唱すると、柴田の呼びかけで携帯の光をサイリウム代わりにして、客席から美しい光が放たれる。最後にはサビを何回も観客に合唱させると、柴田と梅津が肩を組み、安田とマシータもそれに加わり、演奏が一切なくなって、忘れらんねえよを愛する人々による合唱だけが響く。メンバーが持ち場に戻ると、今度は銀テープが放たれ、ライブの終わりを告げた。
演奏を終えたメンバーがステージ前に出てきて揃って肩を組んで一礼し、記念撮影をすると、バンドのロゴの後ろにスクリーンが現れ、来年春のツアーと、初の日比谷野音ワンマンが開催されることが発表された。その瞬間、たくさんの人がまるで自分のことにように飛び跳ねたりして喜んでいた。
ずっとライブを見に来ているバンドだが、どこか「忘れらんねえよはいけても○○までだろうなぁ」と勝手に限界を決めつけていた。しかしその姿を見て、まだまだ先まで行けるバンドであると確信した。それこそ発表の時に柴田がボソッと口に出したように、武道館だって決して果てしなく遠い場所ではなくなってきている。一度は音楽を諦め、それでもやっぱり音楽しか、バンドをやるしかないと30歳にして気付いた男が遠回りしまくりながらもいつか武道館のステージに立ったら…。想像しただけでも泣けてきてしまう。でも、いつかそれも現実にしてくれると信じている。
柴田はこの日、
「やりたいことをやったらいいんだよ。でもやりたいことをやり続けてたら、絶対「それ無理じゃないっすかぁ?」とか言ってくる奴がいる。でもそんなこと言う奴はカッコ悪い。やりたいことをやってるやつのほうがカッコいいし、やりたいことをやり続けられてるっていうことはそいつには力があるっていうこと。
だから俺はもうやりたいことしかやらない」
と決意表明をしていた。今に至るまで、時にはブレたりしていると感じたこともあったが、自他共に認める「クソバンド」であった忘れらんねえよは、当初はひたすら己の感情をぶちまけるようなバンドだった。しかし目の前にいる人の顔が増えてきて段々変わってきた。引っ張るでも背負うでも連れてくでもなく、一緒に行く。だから今日のライブはやはりこれまでの集大成とも言える「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」だった。
1.バンドワゴン
2.戦うときはひとりだ
3.僕らパンクロックで生きていくんだ
4.僕らチェンジザワールド
5.体内ラブ ~大腸と小腸の恋~
6.中年かまってちゃん
7.犬にしてくれ
8.バレーコードは握れない
9.美しいよ
10.ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
11.夜間飛行
12.そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
13.世界であんたはいちばんキレイだ
14.この街には君がいない
15.北極星
16.Cから始まるABC
17.俺の中のドラゴン
18.眠れぬ夜は君の名前をググるよ
19.まだ知らない世界
20.うつくしいひと
21.ばかばっか
22.寝てらんねえよ
23.ばかもののすべて
24.バンドやろうぜ
25.俺よ届け
26.この高鳴りをなんと呼ぶ
encore
27.別れの歌
28.忘れらんねえよ
俺よ届け
https://youtu.be/ypCsqWgf8XI
Next→ 10/12 Galileo Galilei @日本武道館

Galileo Galilei Last Live ~車輪の軸~ at 日本武道館 10/11 ホーム
「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティー 出演:奥田民生 / NICO Touches the Walls @豊洲PIT 10/4