男どアホウ サンボマスター 2016 ゲスト:銀杏BOYZ @新木場STUDIO COAST 9/24
- 2016/09/25
- 20:48
サンボマスターおなじみの対バンライブ、男どアホウ甲子園。これまでに10-FEET、東京スカパラダイスオーケストラ、SPECIAL OTHERSらとの共演を繰り広げてきたが、今年は初日に銀杏BOYZ、2日目にキュウソネコカミという豪華な対バン。かつては銀杏BOYZとよくイベントなどで一緒になっていたが、自分がサンボマスターと銀杏BOYZの対バンを見るのは、2007年11月のスパルタローカルズの対バンイベントに両者が出演して以来。
入場時に整理番号の書かれたプラカードを持ったスタッフに引き連れられて入り口に向かうという甲子園の開会式スタイルの入場、客席にはビールの売り子がおり、BGMが高校野球の応援メドレー、ステージをスタッフがグラウンド整備のように掃除するなど、サインボールやメガホンが並ぶ物販とともに、イベントタイトルの元ネタの「男どアホウ甲子園」感は年々増している。
このイベント恒例の「両バンドをNHKの高校野球放送の出場高校のように紹介するVTR」が流れると、(銀杏BOYZは「初恋モード学園附属銀杏BOYZ高校」、サンボマスターはおなじみの佐野日大高校のパクりのサボ日大学園として紹介)サボ日大学園主将の木内泰史による選手宣誓。
「銀杏BOYZとの出会いは、我々がデビューするよりも前。それから10年以上経って、最高の仲間にして最大のライバル。我々がセカンドアルバムを出した時のツアー、銀杏BOYZとの対バン。お互い持ち時間60分のところ、銀杏BOYZの打線が爆発、3時間に及ぶ攻撃が終わり、我々の出番の頃には終電を気にし出した観客が1人また1人と帰っていくという状況になりました(笑)」
と、実に銀杏BOYZとサンボマスターらしいエピソードを語ると、審判が登場して「プレイボール!」と試合開始を宣言。
・銀杏BOYZ
そんなライブ前から盛りだくさん過ぎる状況の中、上半身裸の上におなじみの緑のコートを着た峯田和伸が1人で登場。
アコギを抱えて「生きたい」を弾き語りで歌い始めると、途中でおなじみの山本幹宗、藤原寛、後藤大樹のメンバーが登場してバンドサウンドに突入。峯田はアコギを置いてステージを転がり、マイクでゴンゴンと頭を打ち付けながら歌う。
峯田がエレキを持ち、サビのフレーズを口ずさんでから始まった「若者たち」では客席にダイバーが続出し、峯田自身もギターを抱えたままで何度も客席にダイブ。この日はこうしたパフォーマンスもそうだが、いつにも増して鬼気迫るような歌唱を見せていた。サンボマスターが相手だと1%でも全力を出さなかったら負ける、と自覚しているかのように。
GOING STEADYの「DON'T TRUST OVER THIRTY」のノイズパンクアレンジとでも言うような「大人全滅」はandymori時代から凄腕として名を馳せていた後藤と藤原のリズム隊が格段に整った楽曲として完成させると、
「サンボマスターを初めて見たのは、まだあいつらがCDを出す前。渋谷のちっちゃなライブハウスでまだ20人くらいの前でやってた時だった。俺も20人のうちの1人だったんだけど、本当にとんでもないバンドがいるなと思った。売れるかどうかはわかんないけど、こいつらがメジャーでCDを出すようになったら、世の中が変わるんじゃないか、とすら思えた。
そのあとサンボはメジャーに行ったけど、それで世の中が変わったとは俺は今でも思えない。でも俺はいくら話が来ても全部断ってしまって、メジャーにはいかなかった。でもサンボは今でもメジャーで、俺とは違う場所で戦い続けている。俺はその背中をずっと見てきた。山口隆のあの眼光は、20人の前でやってたあの時と全く変わってない」
と、峯田が自身とサンボマスターについてを、ずっと見てきた者だからこその視点で語り、現状の最新曲である「骨」をポップなバンドサウンドで披露し、
「僕は夏が大嫌いです。なぜなら夏の終わりは、あの子をさらって行ってしまうから!」
と歌詞を引用してから演奏されたのはもちろん「夢で逢えたら」。銀杏BOYZの最初のアルバム2枚が発売されてから、もう10年以上経った。それでもこの曲は10年以上の間、ずっとみんながこうして聴けるのを待ち望んでいた名曲であり続けた。きっとこれからもそうあり続けていく曲になる。
「イエス!イエス!イエス!イエス!」の大合唱になった「I DON'T WANNA DIE FOREVER」では再びダイバーがガンガンステージに向かって飛んでいき、峯田もステージ上でおどけたような仕草を見せるのが実に楽しい。峯田も観客も、間違いなくこの瞬間が人生の中で最も自分が生きている実感を感じているはず。
峯田がアコギに持ち替えて演奏されたのは、タイトルとは裏腹の美しいバラード「べろちゅー」。一度は歌いきった峯田は
「生まれてこなければ良かったと思った時もあったけど 生きてて良かったよ」
というサビのフレーズをもう一度口ずさむと、バンドにもう一度サビを演奏するように促し、観客にサビを合唱させる。
今や銀杏BOYZ最大の代表曲と言ってもいい曲になった「BABY BABY」ではさらに大きな合唱が会場を包み、やはり最後には観客の合唱パートとしてもう一度サビを演奏。
この日はあくまでサンボマスターのイベントだからサンボマスターのファンの人が多いという状況だった。でもやはり、観客ほぼ全員がこの曲を知っていて、みんなが歌っていた。それはこの2組の活動を追っていくと、お互いのバンドがその歴史の中で欠かせない存在であるから。実際、自分もGOING STEADYを聴いていて、その流れでサンボマスターというバンドがいることを知った。それからGOING STEADYは銀杏BOYZになったが、今でもずっと両バンドを聴き続けている。
「必ずまた会いましょう、なんて言いません。来れる時間と来れるお金と、チケットぴあに行く余裕がある時にでもまた来てください。でもそのために、死なないでください。覚醒剤やっても援助交際やってもいい。でも死なないでください。どんな汚い手を使っても生き延びてください。入り口でチケット見せる時、「覚醒剤と援助交際やってた人は入れません」とか絶対言われないから。俺はずっと歌い続けていくから、そうやって生き延びてさえいれば、絶対またこうやって会えるから」
と峯田が最近おなじみの実に峯田らしい再会の約束をすると、最前ブロックにはその言葉を聞いて涙を流している女の子もいた。その姿を見た峯田は
「泣くなって!そういうのじゃないんだから!」
と照れくさそうに言いながら、最後の「ぽあだむ」で「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」と歌詞を変えながら、
「涙は似合わないぜ 男の子だから」
とまさに今の状況そのものを歌ってライブを終えた。サンボマスターに寄せまくった内容だったわけではないけど、紛れもなくサンボマスターとの対バンだったからこそ見れた、そんなライブだった。もういなくなったバンドもたくさんいるけど、こうして昔一緒にライブをやっていたバンドたちとまた一緒にライブをやる姿もまた見たいと思う。
1.生きたい
2.若者たち
3.大人全滅
4.骨
5.夢で逢えたら
6.I DON'T WANNA DIE FOREVER
7.べろちゅー
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
ぽあだむ
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・サンボマスター
そしてグラウンド整備という名の転換のあと、サボ日大学園ことサンボマスター。いつものようにゴダイゴ「モンキーマジック」のSEで登場すると、山口隆が曲をやるでもなく、
「あいつ(峯田和伸)、いつから曲やる前にサビのフレーズを歌うようになったんだ(笑)
なんの曲やるかわかって、「あの曲だ!」ってテンション上がっちゃうじゃねぇか(笑)
でも10年前に200人くらいの前でライブやった時もこんな感じだった。それが今では「あれは伝説だった」って言われる。みなさん、サンボマスターと銀杏BOYZとあなたたちで、新しい伝説を作るのは今日でしょう!ミラクルを起こすのは今日でしょう!」
と、てっきり「ミラクルをキミと起こしたいんです」から始まるかと思いきや、山口がイントロのギターを鳴らしたのは、「そのぬくもりに用がある」。この曲がサンボマスター最大の代表曲だった時代によく対バンをしていた銀杏BOYZとの対バンだからだろうか。
「怪我だけはすんなよ!」
と山口が言っての「光のロック」では言葉通りにダイバー続出の激しさとなり、「世界を変えさせておくれよ」と息のつく暇もないくらいの展開に。
「あんなすげえライブやられたらもうどうすりゃいいんだ」
と言っていた銀杏BOYZ相手なだけに、選曲はもちろん、演奏の気合いも凄まじいものがある。
「俺はあんたらに幸せになって欲しいって思ってるわけ。普段どんだけクソみたいなことばっかりでも、今だけは本当に幸せだって思って欲しい」
という今のサンボマスターのライブの空気そのもののような言葉を発してからの「愛してる 愛してほしい」で踊らせると、
「最初に会ったのは2002年のクリスマスイブ。新宿の歌舞伎町で。挨拶されたんだけど、早口すぎて何言ってるかわかんないから、「早口ですね」って言ったら「あんたも早口だよ」って言われて(笑)
「訛ってるね」って言ったら「あんたも訛ってるよ」って言われて(笑)俺は「訛ってねえべよ!」って訛りながら返したりして(笑)
しかもドラムのやつがいつまで経ってもずっと訛ってるままだなぁと思ったら、そいつが村井守で(笑)
俺らがCD出す前からずっと一緒にライブやってきたし、俺は本当に憧れてた。大好きなバンド。でも一つ残念だったのは、俺はあんたらみたいには聴けなかった。俺も気持ち悪がられるくらいにツアーとか追いかけまくって、CD買ってコピバンやりたかった」
と、GOING STEADY時代の峯田との出会いから、ともにステージに立つ存在だからこそただのファンにはなれなかった感情を語り、近藤洋一が座ってアコギを弾き、山口がギターを弾かずにソウルフルな歌声を響かせたのは、先日発表された銀杏BOYZのトリビュートアルバムでサンボマスターがカバーすることが明らかになった「NO FUTURE NO CRY」。原曲が熱いパンクな曲なだけに、このアコースティックなアレンジには「え!?こう来るの!?」と驚いたが、ワンコーラス終わると山口がギター、近藤がベース、木内がドラムという通常のバンド編成になる。この途中からバンドサウンドになるというアレンジは銀杏BOYZが「人間」からこの日演奏した「生きたい」に至るまで続けてきたアレンジだが、そこに対するオマージュ的な意味合いもあるアレンジなのだろうか。
「未来はないけど泣いちゃダメさ」
という歌詞を最後の最後に
「未来はあるから泣いちゃダメさ」
と、絶望の中から手を伸ばすのではなく、絶望の中から見える希望を知った上で手を伸ばす歌詞に変えて歌ったのは実にサンボマスターらしい。
そのまま突入した「美しき人間の日々」でも「NO FUTURE NO CRY」のフレーズを何度も挟み、この日の合言葉的な「銀杏サンボ!銀杏サンボ!」の大合唱をただの対バンではない形で示してみせる。
「可能性」と続けて後半にさらにギアをあげると、
「世の中はどんどん悪い方向に向かっていく。未だに銃声は鳴り止まない。でもだからといって諦めたのか?サンボマスターは歌うのをやめたのか?銀杏BOYZは、峯田和伸は歌うのをやめたのか?やめてねえだろ!」
という熱さの極みのようなMCから、「できっこないを やらなくちゃ」へ。この曲のイントロが始まった瞬間の客席の空気の変わり方と、
「アイワナビーア君の全て!」
の大合唱。サンボマスターには代表曲と言えるような曲が何曲もあるが、今や最大の代表曲はこの曲かもしれない。リリース時はあまり売れたとは言えない曲だったが、この曲はライブでやり続けてきたことによって、そうして代表曲と言えるような曲になった。
そして「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で「愛と平和!」の大合唱を巻き起こすと、最後にさらなるミラクルと伝説を起こすべく、「ミラクルをキミと起こしたいんです」でこの日最大級の熱狂を持って、伝説的とも言える本編は終了。
アンコールではサンボマスターの3人とともに、なんと峯田和伸がステージに。
山口「あんたなんで近ちゃんにばっかり優しいの!」
峯田「だって俺と近ちゃん同い年だもん。でもあんた俺より2つ年上だけど、全然尊敬なんかしてないからな!」
山口「なんでだよ!年上だぞ!ちょっとは敬えよ!」
峯田「俺の方がデビューしたの早いから先輩だもんね!」
山口「GOING STEADY時代をキャリアに含めるなよ!
でも本当に俺はあんたに憧れてっからね!目の前で褒められんの1番苦手だから、この人(笑)」
とお互いに仲良く口撃しながらも、本当にお互いのことをよく理解していることがわかるやり取りから、
山口「ミック・ジャガーとジェームス・ブラウンは飛行機で来た。ロックスターには新幹線で来るやつもいるだろう。でも、銀杏BOYZは今日何で来たんだ?」
峯田「近ちゃん、木内君、山口君、俺たちは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃないよねぇ!」
と曲の歌詞を引用してから演奏されたのは、峯田が初めてサンボマスターのライブを見た時からやっていたという「夜汽車でやってきたアイツ」。もちろん峯田と山口によるツインボーカル。まさか、こんな瞬間が見れる瞬間が来るとは。今までこの2組のライブに行き続けてきたのは間違いじゃなかったし、峯田が言った通りに、それは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃなかった。そうやって、この10年以上の全てが肯定されたかのような瞬間だった。
演奏を終えると、4人でステージ中央に集まって写真撮影をし、ピックやスティックだけならず、ステージ上に置いてあったベース(楽器のベースじゃなくて、野球の塁のほう)までも客席に投げ入れられて、男どアホウサンボマスターの初日は終了した。
銀杏BOYZが久しぶりにアルバムを出して、同時にメンバー脱退が発表された直後、ワンマンでもフェスのアンコールでもサンボマスターは「友達のバンドの銀杏BOYZに捧げます!」と言って「ロックンロール イズ ノットデッド」をやっていた。銀杏BOYZを待ってた人はたくさんいるし、いろんなミュージシャンが銀杏BOYZの復活を喜んでいた。でも最も待ってたバンドは間違いなくサンボだと思う。それを裏付けるかのような、サンボの銀杏BOYZへの愛に溢れた一夜だった。
終演後、今までのこのイベントではサンボマスターの惨敗だったのに
「初恋モード学園附属銀杏BOYZ高校とサボ日大学園の試合は延長の末、雨天コールドで順延となりました。またの対戦をお待ちください」
とアナウンスが流れた。きっとまた近い将来、この2組でのライブが見れる日がくる。
1.そのぬくもりに用がある
2.光のロック
3.世界を変えさせておくれよ
4.愛してる 愛してほしい
5.NO FUTURE NO CRY
6.美しき人間の日々
7.可能性
8.できっこないを やらなくちゃ
9.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
10.ミラクルをキミと起こしたいんです
encore
11.夜汽車でやってきたアイツ feat.峯田和伸
ミラクルをキミとおこしたいんです
https://youtu.be/5yEA5K1TFw8
銀杏BOYZとサンボマスター。ライブハウスに行くようになって10年以上経ったが、その2組の対バンだとその同時に、昔に戻ったようにも感じる。でも銀杏は峯田だけになり、サンボもライブの空気は当時とは変わった。でも今でも自分はその2組の音楽とライブに支えられて生きてるのは全く変わってない。それはこれからもずっと変わらないと思うし、変わらないでいて欲しいと自分自身に対して思う。
Next→ 9/25 サンボマスター × キュウソネコカミ @新木場STUDIO COAST
入場時に整理番号の書かれたプラカードを持ったスタッフに引き連れられて入り口に向かうという甲子園の開会式スタイルの入場、客席にはビールの売り子がおり、BGMが高校野球の応援メドレー、ステージをスタッフがグラウンド整備のように掃除するなど、サインボールやメガホンが並ぶ物販とともに、イベントタイトルの元ネタの「男どアホウ甲子園」感は年々増している。
このイベント恒例の「両バンドをNHKの高校野球放送の出場高校のように紹介するVTR」が流れると、(銀杏BOYZは「初恋モード学園附属銀杏BOYZ高校」、サンボマスターはおなじみの佐野日大高校のパクりのサボ日大学園として紹介)サボ日大学園主将の木内泰史による選手宣誓。
「銀杏BOYZとの出会いは、我々がデビューするよりも前。それから10年以上経って、最高の仲間にして最大のライバル。我々がセカンドアルバムを出した時のツアー、銀杏BOYZとの対バン。お互い持ち時間60分のところ、銀杏BOYZの打線が爆発、3時間に及ぶ攻撃が終わり、我々の出番の頃には終電を気にし出した観客が1人また1人と帰っていくという状況になりました(笑)」
と、実に銀杏BOYZとサンボマスターらしいエピソードを語ると、審判が登場して「プレイボール!」と試合開始を宣言。
・銀杏BOYZ
そんなライブ前から盛りだくさん過ぎる状況の中、上半身裸の上におなじみの緑のコートを着た峯田和伸が1人で登場。
アコギを抱えて「生きたい」を弾き語りで歌い始めると、途中でおなじみの山本幹宗、藤原寛、後藤大樹のメンバーが登場してバンドサウンドに突入。峯田はアコギを置いてステージを転がり、マイクでゴンゴンと頭を打ち付けながら歌う。
峯田がエレキを持ち、サビのフレーズを口ずさんでから始まった「若者たち」では客席にダイバーが続出し、峯田自身もギターを抱えたままで何度も客席にダイブ。この日はこうしたパフォーマンスもそうだが、いつにも増して鬼気迫るような歌唱を見せていた。サンボマスターが相手だと1%でも全力を出さなかったら負ける、と自覚しているかのように。
GOING STEADYの「DON'T TRUST OVER THIRTY」のノイズパンクアレンジとでも言うような「大人全滅」はandymori時代から凄腕として名を馳せていた後藤と藤原のリズム隊が格段に整った楽曲として完成させると、
「サンボマスターを初めて見たのは、まだあいつらがCDを出す前。渋谷のちっちゃなライブハウスでまだ20人くらいの前でやってた時だった。俺も20人のうちの1人だったんだけど、本当にとんでもないバンドがいるなと思った。売れるかどうかはわかんないけど、こいつらがメジャーでCDを出すようになったら、世の中が変わるんじゃないか、とすら思えた。
そのあとサンボはメジャーに行ったけど、それで世の中が変わったとは俺は今でも思えない。でも俺はいくら話が来ても全部断ってしまって、メジャーにはいかなかった。でもサンボは今でもメジャーで、俺とは違う場所で戦い続けている。俺はその背中をずっと見てきた。山口隆のあの眼光は、20人の前でやってたあの時と全く変わってない」
と、峯田が自身とサンボマスターについてを、ずっと見てきた者だからこその視点で語り、現状の最新曲である「骨」をポップなバンドサウンドで披露し、
「僕は夏が大嫌いです。なぜなら夏の終わりは、あの子をさらって行ってしまうから!」
と歌詞を引用してから演奏されたのはもちろん「夢で逢えたら」。銀杏BOYZの最初のアルバム2枚が発売されてから、もう10年以上経った。それでもこの曲は10年以上の間、ずっとみんながこうして聴けるのを待ち望んでいた名曲であり続けた。きっとこれからもそうあり続けていく曲になる。
「イエス!イエス!イエス!イエス!」の大合唱になった「I DON'T WANNA DIE FOREVER」では再びダイバーがガンガンステージに向かって飛んでいき、峯田もステージ上でおどけたような仕草を見せるのが実に楽しい。峯田も観客も、間違いなくこの瞬間が人生の中で最も自分が生きている実感を感じているはず。
峯田がアコギに持ち替えて演奏されたのは、タイトルとは裏腹の美しいバラード「べろちゅー」。一度は歌いきった峯田は
「生まれてこなければ良かったと思った時もあったけど 生きてて良かったよ」
というサビのフレーズをもう一度口ずさむと、バンドにもう一度サビを演奏するように促し、観客にサビを合唱させる。
今や銀杏BOYZ最大の代表曲と言ってもいい曲になった「BABY BABY」ではさらに大きな合唱が会場を包み、やはり最後には観客の合唱パートとしてもう一度サビを演奏。
この日はあくまでサンボマスターのイベントだからサンボマスターのファンの人が多いという状況だった。でもやはり、観客ほぼ全員がこの曲を知っていて、みんなが歌っていた。それはこの2組の活動を追っていくと、お互いのバンドがその歴史の中で欠かせない存在であるから。実際、自分もGOING STEADYを聴いていて、その流れでサンボマスターというバンドがいることを知った。それからGOING STEADYは銀杏BOYZになったが、今でもずっと両バンドを聴き続けている。
「必ずまた会いましょう、なんて言いません。来れる時間と来れるお金と、チケットぴあに行く余裕がある時にでもまた来てください。でもそのために、死なないでください。覚醒剤やっても援助交際やってもいい。でも死なないでください。どんな汚い手を使っても生き延びてください。入り口でチケット見せる時、「覚醒剤と援助交際やってた人は入れません」とか絶対言われないから。俺はずっと歌い続けていくから、そうやって生き延びてさえいれば、絶対またこうやって会えるから」
と峯田が最近おなじみの実に峯田らしい再会の約束をすると、最前ブロックにはその言葉を聞いて涙を流している女の子もいた。その姿を見た峯田は
「泣くなって!そういうのじゃないんだから!」
と照れくさそうに言いながら、最後の「ぽあだむ」で「銀杏BOYZみたいにポップになれんだ」と歌詞を変えながら、
「涙は似合わないぜ 男の子だから」
とまさに今の状況そのものを歌ってライブを終えた。サンボマスターに寄せまくった内容だったわけではないけど、紛れもなくサンボマスターとの対バンだったからこそ見れた、そんなライブだった。もういなくなったバンドもたくさんいるけど、こうして昔一緒にライブをやっていたバンドたちとまた一緒にライブをやる姿もまた見たいと思う。
1.生きたい
2.若者たち
3.大人全滅
4.骨
5.夢で逢えたら
6.I DON'T WANNA DIE FOREVER
7.べろちゅー
8.BABY BABY
9.ぽあだむ
ぽあだむ
https://youtu.be/wSIRyLtgXSY
・サンボマスター
そしてグラウンド整備という名の転換のあと、サボ日大学園ことサンボマスター。いつものようにゴダイゴ「モンキーマジック」のSEで登場すると、山口隆が曲をやるでもなく、
「あいつ(峯田和伸)、いつから曲やる前にサビのフレーズを歌うようになったんだ(笑)
なんの曲やるかわかって、「あの曲だ!」ってテンション上がっちゃうじゃねぇか(笑)
でも10年前に200人くらいの前でライブやった時もこんな感じだった。それが今では「あれは伝説だった」って言われる。みなさん、サンボマスターと銀杏BOYZとあなたたちで、新しい伝説を作るのは今日でしょう!ミラクルを起こすのは今日でしょう!」
と、てっきり「ミラクルをキミと起こしたいんです」から始まるかと思いきや、山口がイントロのギターを鳴らしたのは、「そのぬくもりに用がある」。この曲がサンボマスター最大の代表曲だった時代によく対バンをしていた銀杏BOYZとの対バンだからだろうか。
「怪我だけはすんなよ!」
と山口が言っての「光のロック」では言葉通りにダイバー続出の激しさとなり、「世界を変えさせておくれよ」と息のつく暇もないくらいの展開に。
「あんなすげえライブやられたらもうどうすりゃいいんだ」
と言っていた銀杏BOYZ相手なだけに、選曲はもちろん、演奏の気合いも凄まじいものがある。
「俺はあんたらに幸せになって欲しいって思ってるわけ。普段どんだけクソみたいなことばっかりでも、今だけは本当に幸せだって思って欲しい」
という今のサンボマスターのライブの空気そのもののような言葉を発してからの「愛してる 愛してほしい」で踊らせると、
「最初に会ったのは2002年のクリスマスイブ。新宿の歌舞伎町で。挨拶されたんだけど、早口すぎて何言ってるかわかんないから、「早口ですね」って言ったら「あんたも早口だよ」って言われて(笑)
「訛ってるね」って言ったら「あんたも訛ってるよ」って言われて(笑)俺は「訛ってねえべよ!」って訛りながら返したりして(笑)
しかもドラムのやつがいつまで経ってもずっと訛ってるままだなぁと思ったら、そいつが村井守で(笑)
俺らがCD出す前からずっと一緒にライブやってきたし、俺は本当に憧れてた。大好きなバンド。でも一つ残念だったのは、俺はあんたらみたいには聴けなかった。俺も気持ち悪がられるくらいにツアーとか追いかけまくって、CD買ってコピバンやりたかった」
と、GOING STEADY時代の峯田との出会いから、ともにステージに立つ存在だからこそただのファンにはなれなかった感情を語り、近藤洋一が座ってアコギを弾き、山口がギターを弾かずにソウルフルな歌声を響かせたのは、先日発表された銀杏BOYZのトリビュートアルバムでサンボマスターがカバーすることが明らかになった「NO FUTURE NO CRY」。原曲が熱いパンクな曲なだけに、このアコースティックなアレンジには「え!?こう来るの!?」と驚いたが、ワンコーラス終わると山口がギター、近藤がベース、木内がドラムという通常のバンド編成になる。この途中からバンドサウンドになるというアレンジは銀杏BOYZが「人間」からこの日演奏した「生きたい」に至るまで続けてきたアレンジだが、そこに対するオマージュ的な意味合いもあるアレンジなのだろうか。
「未来はないけど泣いちゃダメさ」
という歌詞を最後の最後に
「未来はあるから泣いちゃダメさ」
と、絶望の中から手を伸ばすのではなく、絶望の中から見える希望を知った上で手を伸ばす歌詞に変えて歌ったのは実にサンボマスターらしい。
そのまま突入した「美しき人間の日々」でも「NO FUTURE NO CRY」のフレーズを何度も挟み、この日の合言葉的な「銀杏サンボ!銀杏サンボ!」の大合唱をただの対バンではない形で示してみせる。
「可能性」と続けて後半にさらにギアをあげると、
「世の中はどんどん悪い方向に向かっていく。未だに銃声は鳴り止まない。でもだからといって諦めたのか?サンボマスターは歌うのをやめたのか?銀杏BOYZは、峯田和伸は歌うのをやめたのか?やめてねえだろ!」
という熱さの極みのようなMCから、「できっこないを やらなくちゃ」へ。この曲のイントロが始まった瞬間の客席の空気の変わり方と、
「アイワナビーア君の全て!」
の大合唱。サンボマスターには代表曲と言えるような曲が何曲もあるが、今や最大の代表曲はこの曲かもしれない。リリース時はあまり売れたとは言えない曲だったが、この曲はライブでやり続けてきたことによって、そうして代表曲と言えるような曲になった。
そして「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で「愛と平和!」の大合唱を巻き起こすと、最後にさらなるミラクルと伝説を起こすべく、「ミラクルをキミと起こしたいんです」でこの日最大級の熱狂を持って、伝説的とも言える本編は終了。
アンコールではサンボマスターの3人とともに、なんと峯田和伸がステージに。
山口「あんたなんで近ちゃんにばっかり優しいの!」
峯田「だって俺と近ちゃん同い年だもん。でもあんた俺より2つ年上だけど、全然尊敬なんかしてないからな!」
山口「なんでだよ!年上だぞ!ちょっとは敬えよ!」
峯田「俺の方がデビューしたの早いから先輩だもんね!」
山口「GOING STEADY時代をキャリアに含めるなよ!
でも本当に俺はあんたに憧れてっからね!目の前で褒められんの1番苦手だから、この人(笑)」
とお互いに仲良く口撃しながらも、本当にお互いのことをよく理解していることがわかるやり取りから、
山口「ミック・ジャガーとジェームス・ブラウンは飛行機で来た。ロックスターには新幹線で来るやつもいるだろう。でも、銀杏BOYZは今日何で来たんだ?」
峯田「近ちゃん、木内君、山口君、俺たちは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃないよねぇ!」
と曲の歌詞を引用してから演奏されたのは、峯田が初めてサンボマスターのライブを見た時からやっていたという「夜汽車でやってきたアイツ」。もちろん峯田と山口によるツインボーカル。まさか、こんな瞬間が見れる瞬間が来るとは。今までこの2組のライブに行き続けてきたのは間違いじゃなかったし、峯田が言った通りに、それは誰に後ろめたいことをしてきたわけじゃなかった。そうやって、この10年以上の全てが肯定されたかのような瞬間だった。
演奏を終えると、4人でステージ中央に集まって写真撮影をし、ピックやスティックだけならず、ステージ上に置いてあったベース(楽器のベースじゃなくて、野球の塁のほう)までも客席に投げ入れられて、男どアホウサンボマスターの初日は終了した。
銀杏BOYZが久しぶりにアルバムを出して、同時にメンバー脱退が発表された直後、ワンマンでもフェスのアンコールでもサンボマスターは「友達のバンドの銀杏BOYZに捧げます!」と言って「ロックンロール イズ ノットデッド」をやっていた。銀杏BOYZを待ってた人はたくさんいるし、いろんなミュージシャンが銀杏BOYZの復活を喜んでいた。でも最も待ってたバンドは間違いなくサンボだと思う。それを裏付けるかのような、サンボの銀杏BOYZへの愛に溢れた一夜だった。
終演後、今までのこのイベントではサンボマスターの惨敗だったのに
「初恋モード学園附属銀杏BOYZ高校とサボ日大学園の試合は延長の末、雨天コールドで順延となりました。またの対戦をお待ちください」
とアナウンスが流れた。きっとまた近い将来、この2組でのライブが見れる日がくる。
1.そのぬくもりに用がある
2.光のロック
3.世界を変えさせておくれよ
4.愛してる 愛してほしい
5.NO FUTURE NO CRY
6.美しき人間の日々
7.可能性
8.できっこないを やらなくちゃ
9.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
10.ミラクルをキミと起こしたいんです
encore
11.夜汽車でやってきたアイツ feat.峯田和伸
ミラクルをキミとおこしたいんです
https://youtu.be/5yEA5K1TFw8
銀杏BOYZとサンボマスター。ライブハウスに行くようになって10年以上経ったが、その2組の対バンだとその同時に、昔に戻ったようにも感じる。でも銀杏は峯田だけになり、サンボもライブの空気は当時とは変わった。でも今でも自分はその2組の音楽とライブに支えられて生きてるのは全く変わってない。それはこれからもずっと変わらないと思うし、変わらないでいて欲しいと自分自身に対して思う。
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くるり featuring Flip Philipp and Ambassade Orchester 20th ANNIVERSARY 「NOW AND 弦」 @Bunkamura オーチャードホール 9/21